特許第6382089号(P6382089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382089軌道工事用継手ユニットおよびこれを用いた軌道工事方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382089
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】軌道工事用継手ユニットおよびこれを用いた軌道工事方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 9/68 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   E01B9/68
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-246952(P2014-246952)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-108813(P2016-108813A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大川 英哲
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−180634(JP,A)
【文献】 実開昭61−140288(JP,U)
【文献】 特表2011−512499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 9/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内を充填材入りの袋体で埋める軌道工事において、前記袋体と、前記袋体に前記充填材を供給する供給管と、を接続するための軌道工事用継手ユニットであって、
前記軌道工事用継手ユニットは、
少なくとも一端部の外表面に周状凸部が所定間隔毎に複数設けられた略直管状の継手本体部と、
前記袋体の注入口内に前記継手本体部の一端部を挿通させた状態で、前記袋体の注入口と前記継手本体部の一端部とを締結するための袋体側締結具と、
前記供給管内に前記継手本体部の他端部を挿通させた状態で、前記供給管と前記継手本体部の他端部とを締結するための供給管側締結具と、
を備え、
前記継手本体部の一端部の外表面に設けられた前記周状凸部と周状凸部との間には、周状平面部が設けられ、前記周状平面部内に前記袋体側締結具が配設されるよう構成されており、
前記供給管側締結具が、ロッキングプライヤーであることを特徴とする軌道工事用継手ユニット。
【請求項2】
前記継手本体部の一端部に設けられた周状凸部のそれぞれの断面形状が、
前記一端部から他端部に向かって漸時拡開する略三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の軌道工事用継手ユニット。
【請求項3】
前記袋体側締結具が、結束バンドであることを特徴とする請求項1または2に記載の軌道工事用継手ユニット。
【請求項4】
前記継手本体部の他端部の外表面には、
所定間隔毎に複数の周状凸部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軌道工事用継手ユニット。
【請求項5】
前記継手本体部の他端部の外表面に設けられた前記周状凸部と周状凸部との間には、周状平面部が設けられ、前記周状平面部内に前記供給管側締結具が配設されるよう構成されていることを特徴とする請求項4に記載の軌道工事用継手ユニット。
【請求項6】
前記継手本体部の他端部に設けられた周状凸部のそれぞれの断面形状が、
前記他端部から一端部に向かって漸時拡開する略三角形状であることを特徴とする請求項4または5に記載の軌道工事用継手ユニット。
【請求項7】
鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内を充填材入りの袋体で埋める軌道工事方法であって、
前記袋体を前記軌道構造物相互間の空隙部内に装填する工程と、
前記空隙部に装填された前記袋体の注入口内に請求項1〜のいずれかに記載の軌道工事用継手ユニットの継手本体部の一端部を挿通させ、前記袋体の注入口と前記継手本体部の一端部とを袋体側締結具で締結する工程と、
前記継手本体部の他端部を、前記充填材を供給する供給管内に挿通させ、前記供給管と前記継手本体部の他端部とを供給管側締結具で締結する工程と、
前記供給管を介して袋体内に前記充填材を注入する工程と、
前記袋体内に注入した前記充填材を硬化させる工程と、
を少なくとも有することを特徴とする軌道工事方法。
【請求項8】
前記供給管を介して袋体内に前記充填材を注入する工程において、
前記充填材が袋体から漏れ出すまで圧力を加えて注入がなされることを特徴とする請求項に記載の軌道工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内へ袋体を装填し、袋体内へ充填材を注入して硬化させることで、空隙部内を充填材入りの袋体で埋める軌道工事において、袋体と、袋体に充填材を供給する供給管と、を接続するための軌道工事用継手ユニットおよびこれを用いた軌道工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道では、従来よりレールを支えるまくら木と、コンクリート路盤(または橋梁桁)と、の間隙を取り囲むように型枠を設置し、この型枠内に充填材を流し込んで硬化させてなる軌道構造物が広く採用されている。
【0003】
このような軌道構造物100では、図5(a)に示したように、コンクリート路盤102にプラスチックアンカー108が設置され、軌道構造物100の施工工事の際には、まくら木104をレール(図示せず)と締結部材(図示せず)で締結して位置調整を行い、さらにプラスチックアンカー108にT字ボルト106を装着し、まくら木104に設けられた貫通孔(図示せず)にT字ボルト106を通して、T字ボルト106の所定の高さ位置で締結することで、まくら木104をコンクリート路盤102に隙間を生じさせた状態で固定している。
【0004】
そして、まくら木104を取り囲むようにコンクリート路盤102上に型枠110を設置し、次いで図5(b)に示したように型枠110内に充填材を充填して硬化させることで、まくら木104とコンクリート路盤102との隙間内に、緩衝材としての充填層112を形成する。
【0005】
そして図5(c)に示したように型枠110を取り外すことで、まくら木104を充填層112を介してコンクリート路盤102と直結させている。
しかしながらこの工法は、充填層112を形成するための型枠110の設置や除去に多くの時間や労力を要し、作業効率の良いものではなかった。
【0006】
このため新たな軌道構造物200では、図6(a)に示したように、レールを支えるまくら木204と、コンクリート路盤202(または橋梁桁)と、の間隙に、ポリエステル製不織布などから成る袋体210を挿設し、図6(b)に示したようにこの袋体210内に充填材を注入して硬化させることで、型枠110の設置や除去を要することなく空隙内に充填層212を形成するようにした工法が採用されている(例えば特許文献1,2)。なお図6中、符号206はT字ボルト、符号208はプラスチックアンカーである。
【0007】
この工法においては、袋体210の端部に液浸透性の少ないポリアミド合成繊維でできた注入口(図示せず)が設置してあり、注入口と充填材の供給管(図示せず)とを締結してから、袋体210内と注入口内とを充填材で満たして注入口を閉じ、さらに注入口を圧縮して袋体210の表面から充填材を滲み出させることで、空隙内にこの充填材入りの袋体210を配設するとともに、まくら木204と袋体210との間、コンクリート路盤202と袋体210との間が、滲み出された充填材によって接着されるようにしている。
【0008】
この工法では、型枠の設置や除去を行う必要がなく、充填材の袋体内および注入口内への注入は電動ポンプ(図示せず)などを利用して行っており、充填材の注入作業の際には、袋体210の注入口と電動ポンプに連結された充填材の供給管との間を、継手部材を介して固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59−199902号公報
【特許文献2】特開2012−180634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで袋体の注入口と充填材の供給管との間を固定する際に用いる継手部材は、例えば金属製や樹脂製などの硬質であるものの、袋体の注入口は継手部材のように硬質ではなく、ポリアミド合成繊維などでできた可撓性のものであり、さらに注入口の口径サイズも継手部材の外径サイズと比べて格段に大きいため、継手部材と注入口との接続はし難く煩雑であり、また接続を行っても袋体内へ充填材を注入する際に、電動ポンプから送られて来た充填材の圧力により、継手部材と注入口との接続が外れてしまう場合もあり、作業遅延が生ずる場合もあった。
【0011】
したがって、袋体内への充填材の注入作業を円滑に進めることができ、これにより工事の必要な多くの箇所へ短時間のうちに充填材を注入することのできる新たな軌道工事用器具およびこれを用いて行われる軌道工事方法の開発が熱望されているのが実情である。
【0012】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内へ充填材入りの袋体で埋める軌道工事において、袋体内への充填材の注入作業を円滑に進めることができ、これにより工事の必要な多くの箇所へ短時間のうちに充填材を注入することのできる軌道工事用継手ユニットおよびこれを用いた軌道工事方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の軌道工事用継手ユニットは、
鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内を充填材入りの袋体で埋める軌道工事において、前記袋体と、前記袋体に前記充填材を供給する供給管と、を接続するための軌道工事用継手ユニットであって、
前記軌道工事用継手ユニットは、
少なくとも一端部の外表面に周状凸部が所定間隔毎に複数設けられた略直管状の継手本体部と、
前記袋体の注入口内に前記継手本体部の一端部を挿通させた状態で、前記袋体の注入口と前記継手本体部の一端部とを締結するための袋体側締結具と、
前記供給管内に前記継手本体部の他端部を挿通させた状態で、前記供給管と前記継手本体部の他端部とを締結するための供給管側締結具と、
を備え、
前記継手本体部の一端部の外表面に設けられた前記周状凸部と周状凸部との間には、周状平面部が設けられ、前記周状平面部内に前記袋体側締結具が配設されるよう構成されており、
前記供給管側締結具が、ロッキングプライヤーであることを特徴とする。
【0014】
このように構成されていれば、袋体の注入口と継手本体部の一端部とを強固に締結させることができるため、充填材を例えば電動ポンプで注入する際に、高い圧力が生じたとしても、袋体の注入口と継手本体部の一端部とが外れてしまうことがなく、確実に袋体内への充填材の注入を行うことができる。
【0015】
特に袋体の注入口の口径サイズは、継手本体部の一端部の外径サイズよりも広く、通常であれば両者の接続は非常に煩雑であるが、本発明の軌道工事用継手ユニットでは、継手本体部の一端部の外表面に設けられた周状凸部と周状凸部との間に周状平面部が設けられ、この周状平面部内に袋体側締結具が配設される構造であるため、袋体の注入口と継手本体部の一端部とを強固に接続して固定することができる。
【0016】
したがって、袋体の注入口と継手本体部の一端部とを作業者が押さえておく必要もなく、さらに高い圧力で充填材を注入することができるため、注入時間を早めることができ、作業を効率的に行うことができる。
また供給管側締結具が、ロッキングプライヤーであれば、着脱を素早く行うことができ、入手も容易であるため、短時間により多くの箇所へ充填材を注入することが求められる軌道工事において好適である。
【0017】
また、本発明の軌道工事用継手ユニットは、
前記継手本体部の一端部に設けられた周状凸部のそれぞれの断面形状が、
前記一端部から他端部に向かって漸時拡開する略三角形状であることを特徴とする。
このように構成されていれば、この略三角形状の部分が抜け止めの役目をなし、袋体の注入口と継手本体部の一端部とを強固に接続して固定することができる。
【0018】
また、本発明の軌道工事用継手ユニットは、
前記袋体側締結具が、結束バンドであることを特徴とする。
【0019】
このように結束バンドであれば、幅や長さも豊富であるとともに入手も容易であるため、継手本体部の一端部の外表面に設けられた周状凸部と周状凸部との間に設けられた周状平面部内に配設されるのに好適である。
【0020】
また、本発明の軌道工事用継手ユニットは、
前記継手本体部の他端部の外表面には、
所定間隔毎に複数の周状凸部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
このように構成されていれば、継手本体部の他端部と供給管との接続の際に、供給管から継手本体部の他端部が抜け難くすることができるため、袋体内への充填材の供給を効率的に行うことができる。
【0022】
また、本発明の軌道工事用継手ユニットは、
前記継手本体部の他端部の外表面に設けられた前記周状凸部と周状凸部との間には、周状平面部が設けられ、前記周状平面部内に前記供給管側締結具が配設されるよう構成されていることを特徴とする。
【0023】
このように構成されていれば、充填材の供給管と継手本体部の他端部とを強固に締結させることができるため、例えば充填材を電動ポンプで注入する際に、高い圧力が生じたとしても、供給管と継手本体部の他端部とが外れてしまうことがなく、確実でしかも短時間に袋体内への充填材の注入を行うことができる。
【0024】
また本発明の軌道工事用継手ユニットでは、継手本体部の他端部の外表面に設けられた周状凸部と周状凸部との間に周状平面部が設けられ、この周状平面部内に供給管側締結具が配設される構造であるため、供給管と継手本体部の他端部とを強固に接続して固定することができる。
【0025】
また、本発明の軌道工事用継手ユニットは、
前記継手本体部の他端部に設けられた周状凸部のそれぞれの断面形状が、
前記他端部から一端部に向かって漸時拡開する略三角形状であることを特徴とする。
このように構成されていれば、この略三角形状の部分が抜け止めの役目をなし、充填材の供給管と継手本体部の他端部とを強固に接続して固定することができる。
【0027】
また、本発明の軌道工事方法は、
鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内を充填材入りの袋体で埋める軌道工事方法であって、
前記袋体を前記軌道構造物相互間の空隙部内に装填する工程と、
前記空隙部に装填された前記袋体の注入口内に上述した軌道工事用継手ユニットの継手本体部の一端部を挿通させ、前記袋体の注入口と前記継手本体部の一端部とを袋体側締結具で締結する工程と、
前記継手本体部の他端部を、前記充填材を供給する供給管内に挿通させ、前記供給管と前記継手本体部の他端部とを供給管側締結具で締結する工程と、
前記供給管を介して袋体内に前記充填材を注入する工程と、
前記袋体内に注入した前記充填材を硬化させる工程と、
を少なくとも有することを特徴とする。
【0028】
このような軌道工事方法であれば、上記した軌道工事用継手ユニットを用いて行われるため、充填材の注入時に圧力が高まっても袋体の注入口と供給管との間が抜けてしまうようなおそれもなく、またこの部位に作業者を配置する必要もなく、効率的に軌道工事を進めることができる。
【0029】
また、本発明の軌道工事方法は、
前記供給管を介して袋体内に前記充填材を注入する工程において、
前記充填材が袋体から漏れ出すまで圧力を加えて注入がなされることを特徴とする。
【0030】
このように袋体から充填材が漏れ出すように圧力を加えて注入を行えば、空隙部を区画する周囲の面に充填材入りの袋体が接着されることとなり、確実に空隙内に袋体を留めることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内へ充填材入りの袋体で埋める軌道工事において、継手本体部の少なくとも一端部の周状凸部と周状凸部との間に周状平面部が設けられ、この周状平面部内に袋体側締結具が配設されるように構成されているので、継手本体部の一端部と袋体の注入口とを袋体側締結具で締結させれば、袋体内への充填材の注入を行って圧力が高まっても、袋体の注入口と継手本体部の一端部とが外れてしまうことがなく、確実に注入を行うことができ、例えばこの部位に作業者を配置する必要もなく、袋体内への充填材の注入作業を円滑に進めることができ、これにより工事の必要な多くの箇所へ短時間のうちに充填材を注入することのできる軌道工事用継手ユニットおよびこれを用いた軌道工事方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の軌道工事用継手ユニットを用いて行われる軌道工事の概略図である。
図2図2は、本発明の軌道工事用継手ユニットの継手本体部と袋体側締結具との接続状態、および継手本体部と供給管側締結具との接続状態を説明するための説明図である。
図3図3は、本発明の軌道工事用継手ユニットの継手本体部と袋体側締結具との接続工程を説明するための工程図である。
図4図4は、本発明の軌道工事用継手ユニットの継手本体部と供給管側締結具との接続工程を説明するための工程図である。
図5図5は、従来の軌道構造物の軌道工事の説明図であり、図5(a)は型枠内に充填材を注入する前の状態図、図5(b)は型枠内に充填材を注入した後の状態図、図5(c)は型枠を取り外した後の状態図である。
図6図6は、従来の軌道構造物の別の軌道工事の説明図であり、図6(a)は袋体内に充填材を注入する前の状態図、図6(b)は袋体内に充填材を注入した後の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
本発明の軌道工事用継手ユニットおよびこれを用いた軌道工事方法は、鉄道軌道の軌道構造物相互間の空隙部内へ袋体を装填し、袋体内へ充填材を注入して硬化させることで、空隙部内を充填材入りの袋体で埋める軌道工事において、袋体と、袋体に充填材を供給する供給管と、を接続するためのものである。
【0034】
<軌道工事用継手ユニット10>
本発明の軌道工事用継手ユニット10は、図1および図2に示したように、少なくとも一端部20aの外表面に周状凸部22が所定間隔毎に複数設けられた略直管状の継手本体部20と、袋体50の注入口52内に継手本体部20の一端部20aを挿通させた状態で、袋体50の注入口52と継手本体部20の一端部20aとを締結するための袋体側締結具30と、供給管62内に継手本体部20の他端部20bを挿通させた状態で、供給管62と継手本体部20の他端部20bとを締結するための供給管側締結具40と、を備えている。
【0035】
そして、継手本体部20の一端部20aの外表面に設けられた周状凸部22と周状凸部22との間には、周状平面部24が設けられ、周状平面部24内に前述した袋体側締結具30が配設されるよう構成されている。
【0036】
すなわち、周状凸部22と周状凸部22との間に設けられた周状平面部24の幅t1よりも、袋体側締結具30の幅t2を小さくすることで、周状凸部22と周状凸部22との間に、袋体側締結具30がしっかりと留まり、継手本体部20の一端部20aと袋体の注入口52とを確実に接続することができる。
【0037】
なお、周状凸部22の形状は特に限定されるものではないが、断面形状が、継手本体部20の一端部20aから他端部20bに向かって漸時拡開する略三角形状であることが好ましい。
【0038】
このように略三角形状であれば、この略三角形状の部分が袋体50の注入口52に引っかかり、抜け止めの役目をなし、袋体50の注入口52と継手本体部20の一端部20aとを強固に接続して固定することができる。
【0039】
また袋体側締結具30についても、特に限定されるものではないが、結束バンドであることが好ましい。結束バンドであれば、幅や長さも豊富であるとともに入手も容易であるため、継手本体部20の一端部20aの外表面に設けられた周状凸部22と周状凸部22との間に設けられた周状平面部24内に配設される袋体側締結具30として好適である。
【0040】
本発明の軌道工事用継手ユニット10においては、最低限、継手本体部20の一端部20aの形状を、上記したように特殊な形態とすることで、袋体50の注入口52と継手本体部20の一端部20aとを袋体側締結具30を介して確実に接続することができるものであるが、継手本体部20の他端部20bにおいても、一端部20aと同様の構造を有することが好ましい。
【0041】
すなわち、継手本体部20の他端部20bの外表面にも、所定間隔毎に複数の周状凸部26が設けられていることが好ましい。
このように周状凸部26が設けられていれば、継手本体部20の他端部20bと供給管62との接続の際に、供給管62から継手本体部20の他端部20bが抜け難くすることができるため、袋体50内への充填材の供給を効率的に行うことができる。
【0042】
さらに継手本体部20の他端部20bの外表面に設けられた周状凸部26と周状凸部26との間には、周状平面部28が設けられ、周状平面部28内に供給管側締結具40が配設されるよう構成されていることが好ましい。
【0043】
すなわち、周状凸部26と周状凸部26との間に設けられた周状平面部28の幅t3よりも、供給管側締結具40の幅t4を小さくすることで、周状凸部26と周状凸部26との間に、供給管側締結具40がしっかりと留まり、継手本体部20の他端部20bと供給管62とを確実に接続することができる。
【0044】
また、充填材の供給管62と継手本体部20の他端部20bとを強固に締結させることができるため、例えば充填材を電動ポンプ60で注入する際に、高い圧力が生じたとしても、供給管62と継手本体部20の他端部20bとが外れてしまうことがなく、確実でしかも短時間に袋体50内への充填材の注入を行うことができる。
【0045】
供給管側締結具40は、特に限定されるものではないが、着脱自在な締結具、例えばロッキングプライヤーであれば、着脱を素早く行うことができるとともに容易に入手可能であるため、短時間により多くの箇所へ充填材を注入することが求められる軌道工事において好適である。
【0046】
また継手本体部20の材質については、特に限定されるものではないが、充填材によって高い圧力を受けるとともに、袋体側締結具30や供給管側締結具40で強く締結されるため、これらの圧力に耐え得る金属製または樹脂製であることが好ましい。
【0047】
さらに充填材としては、充填後に硬化するものであれば一般的に用いられるものを用いることができるが、合成樹脂を含有するものが充填性,硬化性の点から好ましい。
合成樹脂としては、ポリウレタン樹脂に限らず、ビニルエステル樹脂,ポリエステルアクリレート樹脂などのラジカル重合型樹脂,エポキシ樹脂などでも良いものである。
【0048】
また、必要に応じ、合成樹脂を硬化させるために硬化剤や硬化促進剤を適量用いればよい。さらに充填材は、合成樹脂に体質顔料(シリカ,炭酸カルシウム等)や骨材(硅砂等)を配合させることが、充填材硬化物の機械的強度、耐久性や経済性の面から好ましい。例えば、充填材中に、体質顔料(シリカ,炭酸カルシウム等)であれば10〜60重量%、骨材(硅砂等)であれば20〜80重量%の割合で含有させればよい。
【0049】
充填材42の調製は、主剤成分である第I液と、硬化剤成分である第II液とをミキサ(図示せず)を介して混合する。
ここで、主剤成分である第I液,硬化剤成分である第II液としては、出願人が販売する商品名「CUS−UB10 A材(ポリウレタン樹脂),B材(ポリウレタン樹脂)」が好適である。ミキサによって得られる最終混合物は、重量比で、第I液と第II液の混合比が、約100:25となるように混合するのが好ましい。
【0050】
さらにこのような本発明の軌道工事用継手ユニット10が用いられる軌道工事において使用される袋体50については、従来より公知のものであって特に限定されるものではないものである。
【0051】
袋体50の例としては、本体部分がポリエステル不織布から成り、注入口52部分が液浸透性の少ないポリアミド合成繊維から成るものが挙げられる。
本体部分については、充填材を袋体から漏れ出させることで、袋体が空隙部内により留まるようにする場合があるため、一定の充填圧で袋体から充填材が漏れ出す構造のものを採用する場合が多い。なお、充填材が漏れ出さない構造のものであっても場合によっては用いられる。注入口52部分については、充填材が漏れ出してしまうと作業性が悪くなるため、液浸透性が少ない材質であることが望ましい。また充填材の注入後、最終的に注入口部分を切り取って施工工事を終了する場合があるため、切断のし易い材質であることも望ましい。
次に本発明の軌道工事用継手ユニット10を用いた軌道工事方法について説明する。
【0052】
<軌道工事用継手ユニット10を用いた軌道工事方法>
まず図3(a)に示したように、袋体50の注入口52に対し、継手本体部20の一端部20aを位置合わせする。
次いで図3(b)に示したように、袋体50の注入口52内に継手本体部20の一端部20aを挿入する。
【0053】
そして図3(c)に示したように、袋体50の注入口52の上から、継手本体部20の周状凸部22と周状凸部22の間に設けられた周状平面部24内に袋体側締結具30を配設して締結することで、袋体50の注入口52と継手本体部20の一端部20aとを強固に接続する。なお、袋体側締結具30は一つであっても複数でも良いものであり、作業性などを考慮して幾つにするか決めることが望ましい。本実施形態においては結束バンドを用いている。
【0054】
次いで、今度は図4(a)に示したように、継手本体部20の他端部20bを供給管62内に挿入し、最後に図4(b)に示したように、継手本体部20の周状凸部26と周状凸部26の間に設けられた周状平面部28内に供給管側締結具40を配設して締結することで、供給管62と継手本体部20の他端部20bとを強固に接続する。供給管62としては、特に限定されるものではないが、例えば耐圧ホースが好適である。耐圧ホースの具体例としてはテトロンブレードホースが挙げられる。
【0055】
継手本体部20の他端部20bと供給管62との接続は、袋体50の設置工事の必要な箇所の数だけ繰り返し行われることとなるため、着脱を素早く行うことのできる供給管側締結具40を用いることが作業性を高める上で望ましい。本実施形態においては、ロッキングプライヤーを用いている。
【0056】
このようにして袋体50と供給管62とを接続した後、供給管62に連結された電動ポンプ60を介して充填材を袋体50に満充填し、袋体50から充填材を滲み出させる。
次いで電動ポンプ60からの供給を停止して注入口52の、継手本体部20の一端部20aと接続された位置よりも袋体50側の部分を結束バンドなどで縛って注入口52を塞ぎ、さらに供給管側締結具40を取り外し、継手本体部20の他端部20bから、供給管62を取り外す。
【0057】
そして充填材が流動しなくなる程度まで硬化するのを待って、袋体50から注入口52部分を切り離すことで、軌道構造物相互間の空隙部内に、充填材入りの袋体50のみが残り、これにて軌道構造物相互間の空隙部内を充填材入りの袋体50で埋める軌道工事が終了となる。すなわち、袋体50の注入口52部分と継手本体部20と袋体側締結具30は、最終的には鉄道軌道に残らず、廃棄されるか、またはリサイクル利用がなされる。
【0058】
なお、充填材が流動しなくなる程度まで硬化するのに要する時間は、充填材の種類や施工温度などにより大きく異なるが、例えば上述のポリウレタン樹脂を20℃で施工した場合には、1時間程度となる。充填材の硬化は流動性が無くなった後も経時で徐々に進むが、ポリウレタン樹脂で20℃であれば、流動性が無くなった時から1日程度はカッターナイフなどで容易に袋体50から注入口52部分を切り離すことができる。それを過ぎると、電動切断機などを用いなければ袋体50から注入口52部分を切り離すことが困難となる傾向にある。
【0059】
以上、本発明の軌道工事用継手ユニット10およびこれを用いた軌道工事方法の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0060】
10 軌道工事用継手ユニット
20 継手本体部
20a 一端部
20b 他端部
22 一端部の周状凸部
24 一端部の周状平面部
26 他端部の周状凸部
28 他端部の周状平面部
30 袋体側締結具
40 供給管側締結具
50 袋体
52 注入口
60 電動ポンプ
62 供給管
t1 一端部の周状平面部の幅
t2 袋体側締結具の幅
t3 他端部の周状平面部の幅
t4 供給管側締結具の幅
100 軌道構造物
102 コンクリート路盤
104 まくら木
106 T字ボルト
108 プラスチックアンカー
110 型枠
112 充填層
200 軌道構造物
202 コンクリート路盤
204 まくら木
206 T字ボルト
208 プラスチックアンカー
210 袋体
212 充填層
図1
図2
図3
図4
図5
図6