(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382095
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】タイヤゴム部材間の接続構造及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
B29D30/30
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-255425(P2014-255425)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112849(P2016-112849A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】大田 和貴
【審査官】
河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−052251(JP,A)
【文献】
特開2014−058114(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/099473(WO,A1)
【文献】
特開2006−248435(JP,A)
【文献】
特開平07−308984(JP,A)
【文献】
特開2008−265082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
B60C 1/00−19/12
B29C 63/00−63/48
65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面を貫通する複数のガス抜き孔を有するタイヤゴム部材同士を接続するジョイント部を備えたタイヤゴム部材間の接続構造であって、
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔の数を、他の部位に比べて10〜30%多くしたことを特徴とするタイヤゴム部材間の接続構造。
【請求項2】
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔の内径寸法を、他の部位に比べて大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤゴム部材間の接続構造。
【請求項3】
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔の内径寸法を、他の部位に比べて5〜10%大きくしたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤゴム部材間の接続構造。
【請求項4】
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔は、表面から内径寸法が徐々に小さくなる第1テーパ部と、裏面から内径寸法が徐々に小さくなる第2テーパ部とで構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤゴム部材間の接続構造。
【請求項5】
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔は、一方の面に開口する第1テーパ部の内径寸法Aが、2mm<A≦4mmを満足し、他方の面に開口する第2テーパ部の内径寸法Bが、B=1/2Aを満足し、第1テーパ部と第2テーパ部の合流地点での内径寸法Cが、C=1/3Aを満足することを特徴とする請求項4に記載のタイヤゴム部材間の接続構造。
【請求項6】
前記タイヤゴム部材は、同一部材であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤゴム部材間の接続構造。
【請求項7】
前記タイヤゴム部材は、異種部材であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤゴム部材間の接続構造。
【請求項8】
前記請求項1から7のいずれか1項に記載の接続構造を備えたタイヤゴム部材で加工したことを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤゴム部材間の接続構造及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤゴム部材として、カーカストリート層に接する面を内面とし、内面と略平行に形成された面を外面とした場合、内面から外面へ貫通する穴を複数備え、穴の内面の開口部直径は、外面の開口部直径よりも大きくした構成が公知である(例えば、特許文献1参照)。これら穴は、ゴム部材とカーカストリート層との間の空気を排出し、ベアが発生することを防ぐことを目的とするものである。ここに、ベアとは、残留空気により発生するゴム欠損であり、加硫成型後に得られる製品タイヤの外観不良の原因となる。
【0003】
しかしながら、前記従来のタイヤゴム部材では、複数の穴を備える構成が開示されているだけであり、互いに貼り合わせるジョイント部でのガス抜きについては考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ジョイント部であってもガス抜きを確実に行わせることができるタイヤゴム部材間の接続構造及びタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
表裏面を貫通する複数のガス抜き孔を有するタイヤゴム部材同士を接続するジョイント部を備えたタイヤゴム部材間の接続構造であって、
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔の数を、他の部位に比べて多くしたことを特徴とするタイヤゴム部材間の接続構造を提供する。
【0007】
この構成により、ジョイント部でのガス抜き孔の接続不良を抑制して他の部位と同様な流路断面積の合計値を確保することができる。したがって、ジョイント部で残留空気が発生してゴム欠損が起こり、製品タイヤで外観不良となる可能性を抑制することができる。
【0008】
この場合、前記ジョイント部に形成するガス抜き孔の数を、他の部位に比べて10〜30%多くするのが好ましい。
【0009】
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔の内径寸法を、他の部位に比べて大きくするようにしてもよい。
【0010】
この場合、前記ジョイント部に形成するガス抜き孔の内径寸法を、他の部位に比べて5〜10%大きくするのが好ましい。
【0011】
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔は、表面から内径寸法が徐々に小さくなる第1テーパ部と、裏面から内径寸法が徐々に小さくなる第2テーパ部とで構成するのが好ましい。
【0012】
前記ジョイント部に形成するガス抜き孔は、一方の面に開口する第1テーパ部の内径寸法Aが、2mm<A≦4mmを満足し、他方の面に開口する第2テーパ部の内径寸法Bが、B=1/2Aを満足し、第1テーパ部と第2テーパ部の合流地点での内径寸法Cが、C=1/3Aを満足すればよい。
【0013】
前記タイヤゴム部材は、同一部材であってもよい。
【0014】
前記タイヤゴム部材は、異種部材であってもよい。
【0015】
また本発明は、前記課題を解決するための手段として、
前記いずれかの接続構造を備えたタイヤゴム部材で加工したことを特徴とするタイヤを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ジョイント部に形成するガス抜き孔の数を、他の部位に比べて多くしたので、ジョイント部で多少の位置ずれ等があったとしても、ガス抜き孔を確実に連通させることができる。したがって、残留空気を抑えてゴム欠損の発生を防止することで、製品タイヤでの外観不良を阻止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤの子午線に於ける半断面図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤを形成するための生タイヤのガス抜き孔を示す部分断面図である。
【
図3】
図1の空気入りタイヤを形成するための生タイヤの製造工程のうち、サイドウォール部となるゴム部材を貼着する様子を示す断面図である。
【
図4】
図3のゴム部材にガス抜き孔を形成する工程を示す概略説明図である。
【
図5】
図3のゴム部材のジョイント部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の子午線に於ける半断面図を示す。この空気入りタイヤ1は、両側のビード部2と、中央部のトレッド部3と、ビード部2とトレッド部3とを結ぶサイドウォール部4とで構成されている。
【0020】
ビード部2には、ビードコア5と、各ビードコア5に連接されるビードフィラー6とが配置されている。
【0021】
ビードコア5は、詳細については図示しないが、1本のビードワイヤ(スチールワイヤ)を複数回巻き重ねて環状とし、1つに束ねた構成である。ビードコア5は、タイヤの両側に配置され、空気入りタイヤ1を図示しないホイールのリムフランジ部に固定すると共に、空気入りタイヤ1の内圧によって発生するカーカス8のコード張力を支える。
【0022】
ビードフィラー6は、ゴム材料を、断面三角形状で、ビードコア5の環状上面に沿う環状となるように形成したもので、ビードコア5を補強する。
【0023】
トレッド部3には、ベルト7が内蔵されている。ベルト7は、有機繊維(ナイロン(登録商標)、ポリエステル、レーヨン、アラミド等)又はスチール等からなる複数のコードを平行に配置してゴム材で被覆したものを、2層以上に積層した多層構造である。ベルト7は、タイヤ周方向に延び、環状に繋がっている。ベルト7の内周側にはカーカス8が配置されている。
【0024】
カーカス8は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。カーカス8は、両側のビードコア5の間に架け渡されており、ビード部2で軸方向内側から外側に向かって折り返されている。カーカス8の折り返し部分の外面には、サイドウォール部4の内面が沿っている。
【0025】
サイドウォール部4は、次のようにして帯状に形成されたゴム部材9を環状に繋いで、前記カーカス8の折り返し部分の外面に貼着することにより形成される。詳しくは、ゴム部材9を貼着することにより生タイヤが形成され、この生タイヤを図示しない金型で加硫成型することにより製品としての空気入りタイヤが完成する。
【0026】
ゴム部材9は、図示しないが、スクリュ押出機から押し出されたゴム材料を、口金を通過させることで帯状とすることにより得られる。そして、ゴム部材9は、サイドウォール部4を形成するために必要な長さに切断される。このとき、一端部は先端縁に向かうに従って表面側へと徐々に薄くなるように斜めに切断され、他端部は逆に裏面側へと徐々に薄くなるように斜めに切断される。さらに、切断により得られた傾斜面同士を貼り合わせてジョイント部10を形成することにより環状となる。
【0027】
ゴム部材9には、複数のガス抜き孔11が形成される。ガス抜き孔11は、
図3に示すように、搬送ローラ12によって搬送する際、回動可能なアームの先端に回転可能に設けた押さえローラ13を押し付けることにより形成される。すなわち、搬送ローラ12及び押さえローラ13の外周面には複数の針部が形成されており、これら針部をゴム部材9に突き刺すことによりガス抜き孔11を形成することができるようになっている。なお、ガス抜き孔11の形成は、両端部を斜めに切断する前に行う。
【0028】
ガス抜き孔11は、
図2に示すように、一方の面から断面積が徐々に小さくなる第1テーパ部14と、他方の面から断面積が徐々に小さくなる第2テーパ部15とで構成されている。第1テーパ部14と第2テーパ部15とは先端側で連通(合流)している。第1テーパ部14側がカーカス8の折り返し部分に貼着される内面、第2テーパ部15側がその反対側の外面である。内面に開口する第1テーパ部14の内径寸法Aに対して外面に開口する第2テーパ部15の内径寸法Bは、B=1/2Aとなるように設定されている。また、第1テーパ部14と第2テーパ部15の連通部分(合流地点)の内径寸法Cは、C=1/3Aとなるように設定されている。
【0029】
またガス抜き孔11は、
図5に示すように、ゴム部材9の長手方向の領域で形成される数量が相違している。ジョイント部10となる領域(ジョイント領域)は、それ以外の領域に比べてガス抜き孔11の数量が多く設定されている。ここでは、ジョイント領域でのガス抜き孔11の数量を、それ以外の領域の1.1〜1.3倍としている。
【0030】
ガス抜き孔11の形状及びサイズは全て同じであるが、数量をジョイント領域とそれ以外の領域とで相違させた理由は以下の通りである。ジョイント部10では、
図6に示すように、傾斜面同士を貼り合わせる際に若干の位置ずれが発生することがある(ここでは、長手方向の位置ずれについて示したが、幅方向等、他の方向への位置ずれも含まれる。)。このとき、ゴム部材9の各端部に形成したガス抜き孔11の位置もずれ、連通部分の断面積が小さくなる。しかしながら、ジョイント領域ではガス抜き孔11の数量が多くなるようにしている。このため、1つ1つの連通部分の断面積が小さくなったとしても、連通するガス抜き孔11の数量は増大している。したがって、ジョイント部10の全体では、連通部分の断面積の合計は、このジョイント部10の面積に相当する他の部位での断面積の合計とほぼ同一となる。このため、カーカス8の折り返し部分に対してゴム部材9を押し付ける際、ジョイント部10でガス抜き状態が不十分になるといった不具合は発生しない。
【0031】
さらにガス抜き孔11は、
図1中、タイヤ断面高さをHとした場合、位置P1(ゴム部材9の一端位置)から高さhまでの範囲に設けるようにすればよい。この場合、0.3H≦h≦0.6Hを満足する範囲とするのが好ましい。この範囲では、内部構成部品(ビードコア5、ビードフィラー6、カーカス8)が多く、残留ガスを発生させやすいが、この範囲にガス抜き孔11を形成することで、効果的に排出することができる。
【0032】
カーカス8の折り返し部分へのゴム部材9の貼り付けは、
図4に示すように、ゴム部材9に対してローラ16を押し付け、このローラ16をビード部2側からトレッド部3側に向かって回転させながら移動させることにより行う。ビード部2は、ビードコア5、ビードフィラー6、カーカス8を備えており、内部にガスが残留しやすい。ローラ16をビード部2側から押し付けていくことにより、残留ガスをガス抜き孔11を介してスムーズに排出することができる。またガス抜き孔11自体はローラ16を押し付けられることにより閉鎖される。
【0033】
このように、ゴム部材9の両端部の各ジョイント領域でのガス抜き孔11の数量を増大させているので、貼り合わせ位置が多少ずれたとしても、ジョイント部10でのガス抜き孔11の断面積が小さくなって排出不良を生じることがない。つまり、ジョイント部10を有するゴム部材9であっても、ガス抜き孔11を介してムラなく確実に内部の残留ガスを排出することができる。
【0034】
ゴム部材9を貼着されて得られた生タイヤは、図示しない金型に挿入して加硫成型することにより空気入りタイヤとなる。生タイヤには、前述のように、ジョイント部10であっても残留ガスを排出したものが使用されている。したがって、完成した空気入りタイヤでは、ゴム欠損が起こることがなく、製品タイヤの外観不良が発生することもない。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
前記実施形態では、ジョイント領域とそれ以外の領域とでガス抜き孔11の数量を相違させるようにしたが、内径寸法を相違させるようにしてもよい。すなわち、ジョイント領域でのガス抜き孔11の内径寸法を、それ以外の領域に比べて5〜10%大きくすればよい。これにより、ジョイント部10での貼着部分での位置ずれに対してガス抜き孔11の連通部分の断面積を確保することができる。5%未満の増大量では位置ずれに対して有効ではなく(連通部分に対して所望の断面積を確保できない恐れがある。)、10%を超えるとガス抜き孔11の強度が低下し、亀裂等が発生する恐れがある。
【0036】
またジョイント領域とそれ以外の領域とでガス抜き孔11の数量及び内径寸法の両方を変更することも可能である。すなわち、ジョイント領域でのガス抜き孔11の数量を他の領域よりも多くすると共に内径寸法を大きくする。これにより、ジョイント部10での位置ずれに対して連通部分に所望の断面積を確保することがより一層容易となる。
【0037】
前記実施形態では、ジョイント部10に形成するガス抜き孔11の数量又は内径寸法あるいはその両方を変更する構成について、ゴム部材9を同一部材間、前記例ではサイドウォール部4の両端部間で接続する場合に関して説明したが、異種部材、例えば、サイドウォール部4とトレッド部3の間で接続する場合であっても、同様に採用することができる。
【0038】
この場合、トレッド部3となるゴム部材9に形成されるガス抜き孔11は、トレッド部3の幅寸法Lとした場合、幅寸法lの範囲に設けるようにすればよく、0.7L≦l≦Lを満足する範囲とするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、タイヤの種類如何に拘わらず、その構成部品であるゴム部材に採用される接続構造の全般に採用することができるものである。
【符号の説明】
【0040】
1…空気入りタイヤ
2…ビード部
3…トレッド部
4…サイドウォール部
5…ビードコア
6…ビードフィラー
7…ベルト
8…カーカス
9…ゴム部材
10…ジョイント部
11…ガス抜き孔
12…搬送ローラ
13…押さえローラ
14…第1テーパ部
15…第2テーパ部
16…ローラ