(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御ユニットが、レーザーの軌道及びパラメータに基づいて、レーザー制御モジュールが前記レーザービームを制御するための電力信号、レーザーヘッドユニット制御モジュールが前記走査レーザーヘッドユニットを制御するための軌道データ、及びロボットマニピュレータ制御モジュールが前記ロボットマニピュレータを作動させるためのロボット位置データを生成する軌道生成モジュールを備える、請求項1に記載の装置。
前記エンドエフェクタが、デブリ管理装置、光学素子、センサ、放射線エミッタ、及び材料ディスペンサのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の装置。
前記レーザービームが、レーザーの軌道及びパラメータに基づいて、レーザー制御モジュールが前記レーザービームを制御するための電力信号、レーザーヘッドユニット制御モジュールが前記走査レーザーヘッドユニットを制御するための軌道データ、及びロボットマニピュレータ制御モジュールが前記ロボットマニピュレータを作動させるためのロボット位置データを生成する軌道生成モジュールによって制御される、請求項8に記載の方法。
前記制御工程が、レーザーの軌道及びパラメータに基づいて、レーザー制御モジュールが前記レーザービームを制御するための電力信号、レーザーヘッドユニット制御モジュールが前記走査レーザーヘッドユニットを制御するための軌道データ、及びロボットマニピュレータ制御モジュールが前記ロボットマニピュレータを作動させるためのロボット位置データを生成する軌道生成モジュールを備える制御ユニットによって実行される、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、フライングオプティク(非走査)レーザー加工システム10は、床などの安定表面に設置されている、固定式の平坦なテーブル12を含む。ワークピース14は、テーブル12上に安置されるか、又は方向Aに沿ってテーブル12を横断して移動する。平行レール部材16、18の内部に、方向A及び方向Bに沿って移動するクロスバー20を含む、剛性のガントリ様機構15が、テーブル12上に設置される。レーザーヘッドユニット22が、クロスバー20に沿って、方向C及び方向Dで移動する。レーザー(図示せず)によるレーザービームが、光学トレイン24によって、レール部材16、18に沿って、レーザーヘッドユニット22に送達される。レーザーヘッドユニット22によって送達されるビームの向きは固定されているため、平行レール部材16、18は、比較的大きい距離にわたって、クロスバー20及び/又はレーザーヘッドユニット22を迅速に移動させることが可能であるべきである。平行レール部材16、18及びクロスバー20は、ワークピース14にわたって、レーザーヘッドユニット22を素早く正確に移動させるために、剛性にするべきであり、したがって、テーブル12のサイズ及び加工されるワークピース14の面積を有する、嵩高な、質量の規模である。レーザービームの方向を加速及び/又は変化させるために、ガントリ機構15の構成要素及びレーザーヘッドユニット22の著しい慣性を克服しなければならない。非走査レーザーシステム10の設計では、レーザーヘッドユニット22及びワークピース14は、互いに比較的近接している場合が多く、このことにより、システム10の潜在的な最終用途が制限される。
【0014】
非走査レーザーシステム10では、レーザーヘッドユニット22及びワークピース14は、一体に近接して位置決めすることができるため、ワークピース14上のレーザースポット付近に、加工機能を追加することは、比較的単純である。例えば、レーザー切断の後にワークピース14から遊離したデブリを管理するために、レーザーヘッドユニット22は、真空システム又は圧縮空気源に取り付けられるノズル28を含み得る。しかしながら、ノズル28などの追加的加工機器はまた、レーザーヘッドユニット22の質量も増大させ、このことにより、レーザービームの方向を加速及び/又は変化させる能力が、更に制限される。
【0015】
図2の走査レーザーシステム30は、床などの安定表面に固定設置される、固定式の平坦なワークピース処理表面32を含む。ワークピース34は、この表面32上に安置されるか、又は方向Aに沿って表面32を横断して移動する。レーザーヘッドユニット36は、テーブル32及びワークピース34に対して固定することができ、又は移動可能とすることもできる。レーザービーム38は、レーザー(
図2には示さず)によってレーザーヘッドユニット36に送達され、ガルバノメータ走査ユニット41の一部を形成する小型反射鏡42、44の構成体を横断する。ガルバノメータ走査ユニット41は、任意数の反射鏡42、44、並びに特定の用途に関して必要とされるような集束光学系を含み得るものであり、
図2に示す構成体は、使用することが可能な1つの設計の、単なる実施例に過ぎない。ガルバノメータ走査ユニット41内の反射鏡42、44は、軸50、52を介して、モーター46、48に取り付けられる。反射鏡42は、モーター46によって角度θ
1の範囲内で回転し、反射鏡44は、モーター48によって角度θ
2の範囲内で回転する。反射鏡42、44の移動は、操向レーザービーム40を、ワークピース34の随所に操向する。反射鏡42、44は、小型かつ軽量であるため、操向レーザービーム40を操作するために、これらの部品を素早く正確に移動させるために克服しなければならない慣性は、比較的小さいものであり、操向ビーム40を素早く加速させて、ワークピース34上の加工区域55内に正確に配置することができる。
【0016】
走査レーザー加工システム30では、レーザーヘッドユニット36とワークピース34との間の作動距離は、
図1の非走査システム10でのレーザーヘッドユニット22とワークピース14との間の作動距離と比較して、相対的に大きい。
【0017】
図2のデバイス30などの走査レーザー加工システムは、多くの望ましい特性(高い動的性能、増大した作動距離、及び大きい加工区域)を有するが、追加的加工機能を加工区域55内で実行することは、困難な場合がある。例えば、走査システム30に対するデブリ管理は、空気又は水を送達して、排出された粒子を加工区域55から真空システム62内に移動させるための、流体供給デバイス60を含み得るものであり、このことにより、排出された粒子が、ワークピース34上に沈積してレーザー伝送に干渉することが防止される。これらの大域的加工方法の有効性は、レーザーヘッドユニット36とワークピース34との間の大きい作動距離によって制限されるものであり、この大きい作動距離は、最終的に、レーザー加工から生じるあらゆる汚染物が、加工部品上に沈積し、かつ/又は加工部品を汚損する機会を、より多く提供する。
【0018】
本開示で説明される走査レーザーシステムは、ワークピースの加工区域に対して局所的(近位)に追加的加工機能を実行するために選択された、低慣性エンドエフェクタを使用して、ワークピースに遠位のレーザーヘッドユニットによって操向されるレーザービームを追跡することを可能にする。加工速度に対する影響を最小限に抑えた、迅速かつ正確なワークピース加工が所望される場合、レーザー走査システムによって提供される、加工区域への高度に動的なビーム送達は、低慣性エンドエフェクタを使用する、加工区域内での局所加工能力と相まって、重要なものとなり得る。例えば、走査レーザービームを追跡する低慣性ノズルは、そのレーザーがワークピースの随所に移動する際、その加工区域に空気又は真空を送達することができる。この局所的なデブリ管理は、レーザーによってワークピースから遊離した粒子を、より有効に除去することができ、このことにより、ディスプレイパネル、光学フィルム、テープなどの、敏感な製品に関する品質を向上させることができる。
【0019】
図3は、床などの安定表面に固定設置された、固定式の平坦なワークピース処理表面102を含む、走査レーザー材料加工システム100の実施形態を示す。ワークピース104は、ワークピース処理表面102上に安置されるか、又は方向Aに沿ってワークピース処理表面102を横断して移動する。レーザーヘッドユニット106は、ワークピース処理表面102及びワークピース104に対して固定することができ、又は移動可能とすることもできる。レーザービーム108は、レーザー(図示せず)によってレーザーヘッドユニット106に送達される。
【0020】
ガルバノメータ走査ユニット141は、レーザービーム108を操向するために移動させることが可能な、モーター駆動反射鏡の構成体を含む。ガルバノメータ走査ユニット141は、任意数の反射鏡、並びに特定の用途に関して必要とされる集束光学系を含み得るものであり、
図3に概略的に示す構成体は、使用することが可能な1つの設計の、単なる実施例に過ぎない。ガルバノメータ走査ユニット141内の反射鏡142、144は、軸150、152を介して、モーター146、148に取り付けられる。反射鏡142は、モーター146によって角度θ
1の範囲内で回転し、反射鏡144は、モーター148によって角度θ
2の範囲内で回転する。それゆえ、反射鏡142、144の移動を使用して、操向レーザービーム110を、ワークピース104の随所に方向付けることができる。反射鏡142、144は、小型かつ軽量であるため、レーザービーム110を操向するために、これらの部品を素早く正確に移動させるために克服しなければならない慣性は、比較的小さいものであり、操向ビーム110を素早く加速させて、ワークピース104上の加工区域155内に正確に配置することができる。
【0021】
システム100は、ロボットマニピュレータ170によってワークピース104に対して移動される、エンドエフェクタ160を更に含む。この実施形態では、ロボットマニピュレータは、3つの軸を含むデルタロボットであり、エンドエフェクタ160が完全な3自由度を有するように、ワークピース104に対してx方向、y方向、及びz方向のいずれにもエンドエフェクタ160を移動させるように適合させることができる。
【0022】
図3の実施形態では、ロボットマニピュレータ170は、静止ベース部172、及び上部アーム174の構成体を含み、これらの上部アーム174は、それぞれ、静止ベース部172上のフレキシブルジョイント173に取り付けられた第1端部174Aを有する。上部アーム174は、それぞれ、肘関節176に取り付けられた第2端部174Bを有し、この肘関節176は、下部アーム178の第1端部178Aに接続される。下部アーム178のそれぞれの第2端部178Bは、エンドエフェクタ160に接続される。
【0023】
操向レーザービーム110が、ワークピース104上の加工区域155の随所に移動して、切断、穿孔、スクライビング、切削などによってワークピース104を加工する際、エンドエフェクタ160は、レーザービームがワークピース104上に入射する位置156を、既定のスタンドオフ距離dの範囲内で追跡する。この既定のスタンドオフ距離dは、エンドエフェクタ160の意図された用途に応じて、多様に変化し得るが、一部の実施形態では、エンドエフェクタ160は、常に、レーザースポット156の約±100ミリメートル(mm)のスタンドオフ距離dの範囲内に存在する。他の実施形態では、dは、レーザースポット156の±5mmの範囲内、又はレーザースポット156の±0.1mmの範囲内である。
【0024】
エンドエフェクタ160は、レーザースポット156に隣接する区域内での、意図される加工用途に応じて、多様に変化し得る。エンドエフェクタ160は、ロボットマニピュレータ170が、必要とされる加工区域155にわたって、エンドエフェクタ160を迅速に移動させて、特定の用途に関して必要とされるスタンドオフ距離(例えば、上述のような±100mm)で、ワークピース104上のレーザースポット156を追跡することができるように、十分な低質量を有する任意のタイプのデバイスから選択することができる。例えば、エンドエフェクタ160によってアクセス可能な加工区域155は、典型的には約50×50mm〜約500×500mmである(この場合、デブリは、250×250mm〜500×500mmの範囲で、より大きい問題となる)が、多くの他のサイズも可能である。エンドエフェクタ160は、最大毎秒150m/秒の変化率で、ロボットマニピュレータ170によってエンドエフェクタ160を加速させることができるように、十分な低質量を有するべきである。エンドエフェクタ160は、典型的には、加工区域155の内部で、約1m/秒〜約5m/秒の速度で移動するが、このことは、製造設定での変換動作に関して極めて有用である。
【0025】
エンドエフェクタ160は、任意選択的に、供給源182への適切な可撓性ケーブル、チューブ、光ファイバ、配線、又はこれらの組み合わせ180に接続することができる。供給源182は、例えば、真空ポンプ、空気、不活性ガス、若しくは水などの加圧流体源、ワークピースの表面上で焼結するための粉末合金混合物のような固体反応物源、ワークピースを作製している材料(又は、ワークピースの表面上の別の化学物質)と反応する液体化学物質源、又はワークピースの表面上に化学反応(例えば、硬化)を引き起こすための紫外線(UV)などの放射線源のうちのいずれか、あるいは全てから選択することができる。
【0026】
例えば、デブリ管理のために好適な実施形態では、
図4のエンドエフェクタ160は、真空182Aと、空気、不活性ガス、又は水などの加圧流体182Bとを含む供給源182に、可撓性チューブ180(
図3)を介して接続されるノズルである。この実施形態では、レーザービーム110は、ワークピース表面104Aを加工して、粒子及びヒューム185を含む、デブリのプルームを生じさせる。粒子及びヒューム185は、表面104A付近のレーザービーム110の伝送を変化させて、潜在的に燃焼を引き起こし、加工される製品の品質に悪影響を及ぼす恐れがある。実質的に、表面104Aから粒子及びヒューム185を連続的に除去するために、エンドエフェクタ160は、流体供給182Bからの加圧流体を表面104A上に方向付ける、流体供給ノズル部分190を含む。流体供給ノズル部分190からの加圧流体の流れは、表面104Aから粒子及びヒューム185を遊離させる。次いで、遊離した粒子及びヒューム185は、真空源182Aからの真空流に引き込まれ、真空ノズル192の構成体を介して、表面104Aから除去される。
【0027】
上述のように、上記の、
図4で説明された特定のデブリ管理の実施形態に加えて、エンドエフェクタ160は、例えば、カメラ若しくは他のレンズ系などの光学素子、加工中のワークピースの検査のためのセンサ、放射線エミッタ、固体若しくは液体材料ディスペンサ、及びこれらの組み合わせから選択することができる。本明細書で説明されるエンドエフェクタは、ワークピースのレーザー変換で特に良好に機能し、移動ウェブのライン及び一般のオンライン加工などの、制約された空間内で利益をもたらすために使用することができる。しかしながら、本明細書で説明される、低質量、高速のエンドエフェクタは、能動的局所運動(切断、加熱、真空引きなど)若しくは受動的局所運動(目視検査、プロセス監視など)又は双方の組み合わせを含めた、高速局所運動により利益を得ることが可能な、任意の用途で使用することができる。
【0028】
図5は、床などの安定表面に固定設置された、固定式の平坦なワークピース処理表面202を含む、走査レーザー材料加工システム200の別の実施形態の概略図である。ワークピース204は、ワークピース処理表面202上に安置されるか、又は方向Aに沿ってワークピース処理表面202を横断して移動する。レーザーヘッドユニット206は、ワークピース処理表面202及びワークピース204に対して固定することができ、又は移動可能とすることもできる。レーザービーム208は、レーザー(図示せず)によってレーザーヘッドユニット206に送達される。
【0029】
ガルバノメータ走査ユニット241は、レーザービーム208を操向するために移動させることが可能な、モーター駆動反射鏡の構成体を含む。ガルバノメータ走査ユニット241は、任意数の反射鏡、並びに特定の用途に関して必要とされる集束光学系を含み得るものであり、
図5に概略的に示す構成体は、使用することが可能な1つの設計の、単なる実施例に過ぎない。ガルバノメータ走査ユニット241内の反射鏡242、244は、軸250、252を介して、モーター246、248に取り付けられる。反射鏡242は、モーター246によって角度θ
1の範囲内で回転し、反射鏡244は、モーター248によって角度θ
2の範囲内で回転する。それゆえ、反射鏡242、244の移動を使用して、操向レーザービーム210を、ワークピース204の随所に方向付けることができる。反射鏡242、244は、小型かつ軽量であるため、操向レーザービーム210を方向付けるために、これらの部品を素早く正確に移動させるために克服しなければならない慣性は、比較的小さいものであり、操向ビーム210を素早く加速させて、ワークピース204上の加工区域255内に正確に配置することができる。
【0030】
システム200は、ロボットマニピュレータ270によってワークピース204に対して移動される、エンドエフェクタ260を更に含む。この実施形態では、ロボットマニピュレータ270は、複数の張力を加えられたケーブル272によって操作されるケーブルロボットである。ケーブル272の相対的張力を変化させることによって、エンドエフェクタ260の位置、速度、及び加速度を正確に制御し、ワークピース204上のレーザービームスポット256を追跡することができる。このロボットマニピュレータ270のケーブル懸架形態により、ロボットマニピュレータ270の慣性は、懸架ケーブル272及びアクチュエータ内部構造物(図示せず)の慣性のみに更に低減されるため、ロボットマニピュレータ270は、
図3のロボットマニピュレータ170よりも低い慣性を有する。ケーブルロボット270は、任意数のケーブル272を含み得るものであり、
図5の実施例では、4つのケーブルを含み、エンドエフェクタ260の移動に関して3自由度を提供する。7つのケーブル272を使用すると、ロボット270は、最大6の自由度を有することが可能であり、ワークピース204に対して、x方向、y方向、及びz方向のいずれにも(及び回転式に)エンドエフェクタ260を移動させるように、適合させることができる。
【0031】
図5の実施形態では、ケーブル272は、それぞれ、エンドエフェクタ260に取り付けられた第1端部272A、及びケーブル制御機構275に取り付けられた第2端部272Bを含む。
図6は、単一のケーブル272に関する、ケーブル制御機構275の実施例を示す。このケーブル制御機構は、ケーブル272の張力及び有効長を制御するものであり、ウインチドラム278が設置されている出力軸を有する、モーター276を含む。ウインチドラム278は、ケーブル272の第2端部272Bに係合する。張力負荷セル284を経て、案内プーリー286の周囲を通過した後、ケーブル272の第1端部272Aは、エンドエフェクタ260に接続する。
【0032】
この設計を使用すると、エンドエフェクタ260は、ワークピース204と接触することなく、ケーブル制御機構275によってケーブル272内に維持される張力を介して、加工区域255の上に懸架される。エンドエフェクタ260に作用する重力による、ケーブル272内のあらゆる垂下は、任意選択的に、エンドエフェクタ260を可撓性チューブ280に接続し、その可撓性チューブ280を、空気などの加圧ガスの供給源282に接続することによって、低減及び/又は排除することができる。次いで、エンドエフェクタは、エンドエフェクタ260から流出する加圧ガスを、加工区域255の上方にエンドエフェクタ260を維持するための、空気支持構造として使用することができる。
【0033】
操向レーザービーム210が、ワークピース204上の加工区域255の随所に移動して、切断、穿孔、スクライビング、切削などによってワークピース204を加工する際、エンドエフェクタ260は、レーザービームがワークピース204上に入射する位置256を、既定のスタンドオフ距離dの範囲内で追跡する。この既定のスタンドオフ距離dは、エンドエフェクタ260の意図された用途に応じて、多様に変化し得るが、一部の実施形態では、エンドエフェクタ260は、常に、レーザースポット256の約±100ミリメートル(mm)のスタンドオフ距離dの範囲内に存在する。他の実施形態では、dは、レーザースポット256の±5mmの範囲内、又はレーザースポット256の±0.1mmの範囲内である。
【0034】
エンドエフェクタ260は、意図された用途に応じて、多様に変化し得るものであり、ロボットマニピュレータ270が、必要とされる加工区域255にわたって、エンドエフェクタ260を迅速に移動させて、特定の用途に関して必要とされるスタンドオフ距離(例えば、上述のような±100mm)で、ワークピース204上のレーザースポット256を追跡することができるように、十分な低質量を有する任意のタイプのデバイスから選択することができる。例えば、ケーブル懸架式ロボット270を使用して、エンドエフェクタ260によってアクセス可能な加工区域255は、典型的には約50×50mm〜約500×500mmであるが、多くの他のサイズも可能である。エンドエフェクタ260は、最大毎秒200m/秒の変化率(重力Gの20倍)で、ロボットマニピュレータ270によって加速されることにより、エンドエフェクタ260が少なくとも約5m/秒の速度に到達することができるように、十分な低質量を有するべきである。
【0035】
エンドエフェクタ260は、任意選択的に、供給源282への可撓性ケーブル、チューブ、光ファイバ、配線、又はこれらの組み合わせ280に接続することができる。供給源282は、例えば、真空ポンプ、空気、不活性ガス、若しくは水などの加圧流体源、ワークピースの表面上で焼結するための粉末合金混合物のような固体反応物源、ワークピースを作製している材料(又は、ワークピースの表面上の別の化学物質)と反応する液体化学物質源、又はワークピースの表面上に化学反応(例えば、硬化)を引き起こすための、紫外線(UV)などの放射線源のうちのいずれか、あるいは全てから選択することができる。
【0036】
上記の
図4で説明された特定のデブリ管理の実施形態に加えて、エンドエフェクタ260は、例えば、カメラ若しくは他のレンズ系などの光学素子、加工中のワークピースの検査のためのセンサ、放射線エミッタ、固体若しくは液体材料ディスペンサ、及びこれらの組み合わせから選択することができる。本明細書で説明されるエンドエフェクタ260は、ワークピースのレーザー変換で特に良好に機能し、移動ウェブのライン及び一般のオンライン加工などの、制約された空間内で利益をもたらすために使用することができる。しかしながら、低質量、高速のエンドエフェクタは、能動的局所運動(切断、加熱、真空引きなど)若しくは受動的局所運動(目視検査、プロセス監視など)又は双方の組み合わせを含めた、高速局所運動により利益を得ることが可能な、任意の用途で使用することができる。
【0037】
図7は、ワークピース304の表面にわたるレーザービーム310の移動を、エンドエフェクタ360に追跡させるように構成されたプロセッサを含む、制御ユニット300の実施形態を示す、概略的な流れ図である(
図5、6もまた参照されたい)。ワークピース304に対するレーザービーム310の移動を制御するために、オペレータは、最初に、ワークピース304上の場所、ワークピース304の上方の場所、又はワークピース304の下方の場所の、ワークピース座標の形態で、制御ユニット300内に、軌道パラメータ301を伴うレーザー軌道データを入力する。制御ユニット300は、このレーザーの軌道及びパラメータ301に基づいて、レーザー制御モジュール303に関する電力信号、レーザーヘッドユニット制御モジュール304に関する軌道データ、及びロボットマニピュレータ制御モジュール306に対するロボット位置データを生成する、軌道生成モジュール302を含む。
【0038】
レーザー制御モジュール303は、レーザーコントローラ307にレーザー制御信号を提供して、レーザー309に電力供給する。レーザーヘッドユニット制御モジュール304は、レーザーヘッドユニットコントローラ308に、ガルバノメータ341内の反射鏡アレイに関する回転位置データとして、レーザーヘッドユニット制御信号を提供し、ガルバノメータ341は、レーザー309によって放出される操向レーザービーム310の、ワークピース304に対する軌道を制御する。
【0039】
ロボットマニピュレータ制御モジュール306によって提供されるロボット位置データとしては、例えば、ウインチドラムに関する角度位置データ、及びロボットマニピュレータのケーブルに関する張力データが挙げられる(
図5、6)。ロボットマニピュレータ制御モジュール306は、張力負荷セル384及びケーブル372の構成体を制御する、ケーブル機構375を作動させる。例えば、一部の実施形態では、ロボット位置データは、ウインチドラムの角度(またそれゆえ、有効ケーブル長)に対応する回転データとして、ケーブル機構375に提供することができる。これらの信号は、対応する張力負荷セル384への入力に関する位置フィードバックに基づいて、トルクデータに変換することができる。上記により、取り込まれたアートワーク及びパラメータ301によって指定されるような、ワークピース304に対する場所356に、エンドエフェクタ360を位置決めするための、対応するケーブル内の適正な相対的張力がもたらされる。
【0040】
レーザーヘッドユニット制御信号及びロボットマニピュレータ制御信号は、エンドエフェクタ360が、ワークピース304上にレーザービーム310が入射する位置356から既定のスタンドオフ距離d(
図5)の範囲内で、操向レーザービーム310の移動を追跡するように、コントローラ300内のプロセッサによって調整される。
【0041】
レーザーヘッドユニット制御信号及びロボットマニピュレータ制御信号は、1つ以上のハードウェアマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は任意の他の同等の集積論理回路若しくはディスクリート論理回路、並びにそのような構成要素の任意の組み合わせを含めた、制御ユニット300のモジュール内の1つ以上のプロセッサによって実行される、ソフトウェア命令として生成することができる。それらのソフトウェア命令は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク、カセット、磁気媒体、光媒体、又は他のコンピュータ可読記憶媒体などの、非一時的コンピュータ可読媒体内に記憶させることができる。
【0042】
上述の加工システムは、ロールツーロール製造プロセスでの、ウェブ材料の変換及び加工に関して、特に良好に適している。そのようなプロセスでは、ワークピースは、走査レーザーを使用して高速で変換される、材料の移動ウェブであり、低慣性エンドエフェクタを使用して、走査レーザービームによって変換された区域を更に加工することができる。例えば、本明細書で説明される低慣性材料加工システムは、レーザー加工を通じた清浄な変換により利益を受けることが可能な(又は、そのような変換を必要とする)任意のそのような高スループットプロセスで、有用とすることができる。具体的には、本明細書の低慣性材料加工システムは、例えば、LCDパネル、落書き防止フィルム、及びテープなどの、最終製品の光学品質が重要である、デブリに敏感なフィルム製品の、清浄なレーザー変換に関して有用である。
【0043】
図7のコントローラ300は、製造工場の内部に配置することができ、又は製造工場の外部に、あるいは双方の組み合わせに、例えば、中央の場所又は変換の現場に配置することができる。説明された構成要素は、単一のコンピューティングプラットフォーム上で実行することができ、又は同じソフトウェアシステム内に統合することもできる。
【実施例】
【0044】
低慣性のレーザー走査及びエンドエフェクタ運動を使用する材料加工システムを、
図5に示すような2軸レーザー走査ヘッド及び3自由度のケーブル懸架式ロボットを使用して構築した。表1には、以下で説明される実施例を構築する際に使用した、市販の機器のリストを記載する。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に記載したレーザー走査ヘッドを、204mmの作動距離のレンズを使用して設置することにより、140×140mmの照射野サイズを生じさせた。表1に含まれる電子機器、モーター、及びドライブを使用して、ケーブル懸架式ロボットを注文制作した。4つのケーブル案内組立体(
図6の、張力負荷セル284及び案内プーリー286)を、1.4×0.83メートルの矩形の角部に案内プーリー286を配置した状態で、矩形の配置構成で設置することにより、約1.2×0.6メートルのエンドエフェクタ作業空間を生じさせた。
【0047】
この材料加工システムを、
図7で概説したスキームによって制御した。制御ユニット300の構成要素は、ローカルホストPCと表1に記載の埋め込みコントローラとの間で分散させ、Ethernet(登録商標)を介してそれらの2つを接続した。レーザー制御モジュール303、レーザーヘッドユニット制御モジュール304、ロボットマニピュレータ制御モジュール306は、ローカルホストパーソナルコンピュータ(PC)上に実装した。レーザーコントローラ307及びレーザーヘッドユニットコントローラ308は、入手可能なFPGAリソースを利用して、埋め込みコントローラ上に実装した。
【0048】
コントローラ307、308に関する設定点は、ホストPC上のモジュール303、304、306を介して、オフラインで計算した。指定の軌道を与えることにより、レーザースポット位置356及びエンドエフェクタノズル360の位置に関して、軌道生成モジュール302によってデカルト座標を生成した。軌道生成モジュール302はまた、全ての必要な遅延及びオフセットを考慮して、レーザー制御モジュール303に、レーザーコントローラ307への送信(すなわち、ワット単位でのレーザー出力電力)に関して、対応するレーザー制御信号も提供するものとした。
【0049】
次いで、ガルバノメータ341及びエンドエフェクタ360に関するデカルト座標を、それぞれ、レーザーヘッドユニット制御モジュール304及びロボットマニピュレータ制御モジュール306に渡して、ガルバノメータ341及びケーブルコントローラ375の固有座標系へと変換した。これらの固有座標は、ガルバノメータ341に関する反射鏡の角度、及びケーブルコントローラ375に関するウインチドラムの回転を説明する。各設定点に関して、指定の最小ケーブル張力、並びにロボットの物理特性及びエンドエフェクタ360の位置によって判定された構造マトリックスに基づいて、ロボットマニピュレータ制御モジュール306によって、対応する最適張力を算出した。説明される実施例の、設定及び予期される動的性能を前提とすると、15〜20Nの最小張力値が良好な値であることが見出された。
【0050】
上述の固有の軌道データから、表1に記載の埋め込みコントローラのFPGA上で実行される、対応するコントローラ307、308、375によって、適切な制御信号を生成した。レーザーコントローラ307は、軌道電力データを取得して、対応するTTL波形を生成することにより、レーザー出力を駆動する。レーザーヘッドユニットコントローラ308は、計算されたガルバノ反射鏡の角度を、XY2−100スキャナプロトコルを介して、ガルバノスキャナ341に送信するが、これらの信号は、9401デジタルI/Oモジュールによって生成するものとした。ケーブルコントローラ375は、(トルクとしての)最適張力、並びに所望のウインチ角度位置を受理して、モーターエンコーダからのフィードバックを考慮しつつ、表1に記載のモータードライブを使用する張力負荷セル384に、適切なトルク値を送信する。全てのトルク指令は、ケーブルコントローラ375によって、9516ドライブインタフェースモジュールを介して張力負荷セル384に送信される。
【0051】
全ての軌道データ(設定点、レーザー制御、及び最適張力)を、0.5ミリ秒の時間ステップで生成することにより、2kHzの更新率を生じさせた。レーザーコントローラ307、ガルバノコントローラ308、ケーブルコントローラ375は、20kHzで動作させた。
【0052】
実行経路は、作業空間の原点を中心とする、40ミリメートルの正方形からなるものとした。この経路は、原点から開始して、左上の角部まで、x軸に沿って負に、及びy軸に沿って正に移動し、次いで、左下の角部までy軸に沿って負に移動し、次いで、右下の角部までx軸に沿って正に移動し、次いで、右上の角部までy軸に沿って正に移動し、次いで、左上の角部までx軸に沿って負に移動して戻り、次いで、最終的に原点に戻るものとした。軌道生成モジュール302によって生成された軌道は、毎秒150m/秒に制限された加速度で、速度を最大化するように設定されることにより、区分的に一定な加速プロファイル、連続的な速度プロファイル、及び連続微分可能な位置プロファイルを生じさせた。
【0053】
レーザーヘッドユニットコントローラ308への入力座標は、収集されたガルバノスキャナ較正データに基づく共一次内挿法を使用して、レーザーヘッドユニット制御モジュール304によって生成するものとした。
【0054】
ケーブルコントローラ375への入力は、ロボットマニピュレータ制御モジュール306によって生成するものとした。これらの計算は、ケーブル機構、及び作業空間内部でのそれらの場所を含む、この機械システムのジオメトリからもたらされる、相対的ケーブル長に基づいて実施した。
【0055】
ケーブルコントローラ375によって提供された座標を、ロボットマニピュレータ制御モジュール306によって算出された最適な静的張力によって補完した。これらの張力は、(それ自体がエンドエフェクタ位置の関数である)システムの構造マトリックスと共に、提供される最小許容ケーブル張力に基づいて算出される。
【0056】
エンドエフェクタ360は、17グラムの質量を有するものとした。このシステムの出力(レーザー309とエンドエフェクタ360との複合同期運動)を、高速ビデオキャプチャを使用して検証した。較正されたビデオからの実世界デカルト座標が、
図8に示され、x軸及びy軸に沿ったエンドエフェクタ360の位置が、それぞれ、実線及び破線で表され、x軸及びy軸に沿ったレーザースポット位置が、それぞれ、一点鎖線及び点線によって表される。エンドエフェクタ360とレーザースポット位置356との相対位置誤差が、
図9に示され、相対x誤差及び相対y誤差が、それぞれ、破線及び一点鎖線によって表される。実線は、軌道の長さに沿った、システムの全相対誤差(二乗和の平方根)を示す。この特定の設定では、軌道の全体に沿って、3mm未満の相対誤差が観察された。
【0057】
本発明の様々な実施形態が説明されてきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範疇にある。