(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382236
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】使用済核燃料棒キャニスタ、使用済核燃料棒を管理するシステム、及び使用済核燃料棒により発生した崩壊熱を散逸させる方法
(51)【国際特許分類】
G21F 5/008 20060101AFI20180820BHJP
G21F 5/012 20060101ALI20180820BHJP
G21F 5/10 20060101ALI20180820BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
G21F5/008
G21F5/012
G21F5/10 N
G21C19/32 P
G21C19/32 W
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-561424(P2015-561424)
(86)(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公表番号】特表2016-509235(P2016-509235A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2014019072
(87)【国際公開番号】WO2014189582
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年1月24日
(31)【優先権主張番号】13/786,643
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511117093
【氏名又は名称】ニュースケール パワー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】レイエス ジュニア、 ホセ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】コルバート、 クリストファー
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0069291(US,A1)
【文献】
特公昭37−011749(JP,B1)
【文献】
特表2011−503614(JP,A)
【文献】
特開平02−240596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/008
G21C 19/32
G21F 5/012
G21F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済核燃料棒キャニスタであって、
密封された内部キャビティを画定するケーシングを含む浸漬可能圧力容器と、
前記内部キャビティの中に封入されかつ一以上の使用済核燃料棒を支持するべく構成されたラックと、
第1の流体経路を画定するライザと、
前記ライザと前記ケーシングとの間に画定された第2の流体経路と
を含み、
前記ケーシングは、耐食性かつ熱伝導性の材料を含み、
前記第1の流体経路は前記密封された内部キャビティの頂部と前記密封された内部キャビティの底部との間において前記ライザを貫通し、
前記ラックは、前記ライザの前記第1の流体経路の中に位置決めされ、
前記第2の流体経路は前記第1の流体経路に流体的に結合され、
前記第1の流体経路及び前記第2の流体経路はそれぞれが、前記ケーシングの前記密封された内部キャビティの中に封入される使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項2】
前記ケーシングの頂端において前記ケーシングに結合された第1半球状エンクロージャをさらに含み、
第1半球状エンクロージャは前記内部キャビティの頂部を画定する丸み付き内表面を含む請求項1の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項3】
前記ケーシングの底端において前記ケーシングに結合された第2半球状エンクロージャをさらに含み、
前記第2半球状エンクロージャは前記内部キャビティの底部を画定する丸み付き内表面を含む請求項2の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項4】
前記ライザと前記ケーシングとの間に画定された開放アニュラスをさらに含み、
前記第2の流体経路は前記開放アニュラスの中に位置決めされる請求項1の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項5】
前記内部キャビティにおいて前記ライザと前記内部キャビティの底部との間に位置決めされた燃料バスケットをさらに含む請求項4の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項6】
前記燃料バスケットは、
使用済核燃料棒ラックと、
前記使用済核燃料棒ラックの底表面に隣接する多孔付き支持板と
を含み、
前記第1の流体経路は前記多孔付き支持板を通って前記内部キャビティの前記底部に流体的に結合される請求項5の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項7】
前記浸漬可能圧力容器の前記ケーシングに取り付けられた熱交換器をさらに含む請求項1の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項8】
前記熱交換器は、少なくとも一部が前記ケーシングの外部に配置されかつ前記内部キャビティと流体連通する少なくとも一つの導管を含む請求項7の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項9】
前記浸漬可能圧力容器には放射線遮蔽材料が存在しない請求項1の使用済核燃料棒キャニスタ。
【請求項10】
使用済核燃料棒を管理するシステムであって、
熱伝達液体を包含する使用済燃料プールと、
複数の使用済燃料キャニスタと
を含み、
前記複数の使用済燃料キャニスタはそれぞれが、
液体冷却材によって少なくとも一部が充填される密封された内部キャビティを画定するケーシングを含む浸漬可能圧力容器と、
前記内部キャビティの中に封入されたラックと、
前記ラックにおいて支持された一以上の使用済核燃料棒と、
第1の流体経路を画定するライザと、
前記ライザと前記ケーシングとの間に画定された第2の流体経路と
を含み、
前記第1の流体経路は前記ライザを貫通し、
前記ラックは、前記ライザの前記第1の流体経路の中に位置決めされ、
前記第2の流体経路は前記第1の流体経路に流体的に結合され、
前記第1の流体経路及び前記第2の流体経路はそれぞれが、前記ケーシングの前記密封された内部キャビティの中に封入されるシステム。
【請求項11】
前記液体冷却材は水を含む請求項10のシステム。
【請求項12】
前記熱伝達液体は水又は周囲空気の少なくとも一つを含む請求項10のシステム。
【請求項13】
各キャニスタの熱除去速度は約0.3MWから0.8MWである請求項10のシステム。
【請求項14】
使用済核燃料棒により発生した崩壊熱を散逸させる方法であって、
流体冷却材によって少なくとも一部が充填された密封された内部キャビティを含む使用済燃料キャニスタの中に少なくとも一つの使用済核燃料棒を装荷することと、
使用済燃料プールに包含された熱伝達流体の中に前記使用済燃料キャニスタを浸漬させることと、
前記使用済核燃料棒から前記流体冷却材へと崩壊熱を伝達させることと、
前記流体冷却材から前記使用済燃料プールにおける熱伝達流体へと前記崩壊熱を伝達させることと
を含み、
前記密封された内部キャビティは、前記流体冷却材のための第1の流体経路を有する方法。
【請求項15】
前記使用済核燃料棒から熱が伝達される速度は、前記使用済核燃料棒が崩壊熱を生成する速度と少なくとも同じ程度に大きい請求項14の方法。
【請求項16】
前記使用済燃料キャニスタの前記内部キャビティの中で自然循環を介して前記流体冷却材を循環させることをさらに含む請求項14の方法。
【請求項17】
前記使用済燃料キャニスタの外表面を周囲空気に露出することをさらに含む請求項14の方法。
【請求項18】
前記周囲空気に露出することに基づいて、前記使用済燃料キャニスタにおいて前記流体冷却材の一部を液体から気体へ相変化させることと、
前記気体と前記周囲空気との間の熱伝達に少なくとも部分的に基づいて前記気体を前記使用済燃料キャニスタの内表面上の液体凝縮物へと戻るように相変化させることとをさらに含む請求項17の方法。
【請求項19】
前記内表面上の液体凝縮物の少なくとも一部を、前記使用済燃料キャニスタの底部へと循環させることをさらに含む請求項18の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、使用済核燃料を格納及び管理するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済燃料プールにより、原子炉から取り出されたばかりの燃料からの崩壊熱が長期間除去される。取り出されたばかりの炉心は典型的に、使用済燃料プール内の最大の熱発生源を代表する。原子力発電所の完全な電源喪失事象の場合、使用済燃料プール用の冷却システムは、燃料の崩壊熱を除去するべく利用可能とはならない。燃料が取り出されたばかりの原子力発電所の停電状態が長引くと、使用済燃料プール内の水がすべて沸騰してなくなることにより、使用済燃料バンドルが過熱した後に損傷する可能性が存在する。これは、環境への放射能放出をもたらし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0069291(A1)号明細書
【発明の概要】
【0004】
本開示は、原子炉からの使用済燃料棒を取り扱い、格納し、さもなくば管理するシステム、装置及び方法に関連する技術を記載する。一つの一般的実装において、使用済核燃料棒キャニスタが、内部キャビティを画定するケーシングを含む浸漬可能圧力容器と、当該内部キャビティの中に封入されかつ一以上の使用済核燃料棒を支持するべく構成されたラックとを含み、当該ケーシングは、約7.0W・m
−1・K
−1を上回る熱伝導率を有する耐食性かつ熱伝導性の材料を含む。
【0005】
一般的実装と組み合わせ可能な第1側面はさらに、ケーシングの頂端において当該ケーシングに結合された第1半球状エンクロージャを含む。
【0006】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第2側面において、第1半球状エンクロージャは、内部キャビティの頂部を画定する丸み付き内表面を含む。
【0007】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第3側面はさらに、ケーシングの底端において当該ケーシングに結合された第2半球状エンクロージャを含む。
【0008】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第4側面において、第2半球状エンクロージャは、内部キャビティの底部を画定する丸み付き内表面を含む。
【0009】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第5側面はさらに、流体経路を画定するライザを含み、当該流体経路は内部キャビティの頂部と当該内部キャビティの底部との間において当該ライザを貫通する。
【0010】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第6側面はさらに、ライザとケーシングとの間に画定されたアニュラスを含む。
【0011】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第7側面はさらに、内部キャビティにおいてライザと当該内部キャビティの底部との間に位置決めされた燃料バスケットを含む。
【0012】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第8側面において、燃料バスケットは使用済核燃料棒ラックを含む。
【0013】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第9側面において、燃料バスケットは、ラックの底表面に隣接した多孔付き支持板を含み、流体経路は当該多孔付き支持板を通って内部キャビティの底部に流体的に結合される。
【0014】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第10側面はさらに、圧力容器のケーシングに取り付けられた熱交換器を含む。
【0015】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第11側面において、熱交換器は、少なくとも一部がケーシングの外部に配置されかつ内部キャビティと流体連通する少なくとも一つの導管を含む。
【0016】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第12側面において、耐食性材料は高放射能伝導材料を含む。
【0017】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第13側面において、容器には放射線遮蔽材料が存在しない。
【0018】
他の一般的実装において、使用済核燃料棒管理システムが、熱伝達液体を包含する使用済燃料プールと、複数の使用済燃料キャニスタとを含み、当該キャニスタはそれぞれが、液体冷却材によって少なくとも一部が充填される内部キャビティを画定するケーシングを含む浸漬可能圧力容器と、当該内部キャビティの中に封入されたラックと、当該ラックにおいて支持された一以上の使用済核燃料棒とを含む。
【0019】
一般的実装と組み合わせ可能な第1側面において、液体冷却材は水を含む。
【0020】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第2側面において、熱伝達流体は水又は周囲空気の少なくとも一方を含む。
【0021】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第3側面において、各キャニスタの熱除去速度は約0.3MWから0.8MWである。
【0022】
他の一般的実装において、方法は、使用済核燃料棒により発生した崩壊熱を散逸させる方法が、流体冷却材によって少なくとも一部が充填された内部キャビティを含む使用済燃料キャニスタの中に少なくとも一つの使用済核燃料棒を装荷することと、使用済燃料プールに包含された熱伝達流体の中に当該使用済燃料キャニスタを浸漬させることと、当該使用済核燃料棒から当該流体冷却材へと崩壊熱を伝達させることと、当該流体冷却材から当該使用済燃料プールにおける熱伝達流体へと当該崩壊熱を伝達させることとを含む。
【0023】
一般的実装と組み合わせ可能な第1側面において、使用済燃料棒から熱が伝達される速度は、使用済核燃料棒が崩壊熱を生成する速度と少なくとも同じ程度に大きい。
【0024】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第2側面はさらに、使用済燃料キャニスタの内部キャビティの中で自然循環を介して流体冷却材を循環させることを含む。
【0025】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第3側面はさらに、使用済燃料キャニスタの外表面を周囲空気に露出することを含む。
【0026】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第4側面はさらに、周囲空気に露出することに基づいて、使用済燃料キャニスタにおいて流体冷却材の一部を液体から気体へ相変化させることと、当該気体と周囲空気との間の熱伝達に少なくとも部分的に基づいて当該気体を使用済燃料キャニスタの内表面上の液体凝縮物へと戻るように相変化させることとをさらに含む。
【0027】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第5側面はさらに、当該内表面上の液体凝縮物の少なくとも一部をキャニスタの底部にある流体冷却材のプールへと循環させることを含む。
【0028】
他の一般的実装において、使用済燃料棒を管理する方法が、第1バッチの使用済燃料棒を原子炉から除去することと、第1時刻に、第1崩壊熱速度で崩壊熱を生成する第1バッチの使用済燃料棒を使用済燃料キャニスタの中に搭載することと、当該使用済燃料キャニスタを熱伝達流体の中に浸漬させて当該第1バッチの使用済燃料棒から崩壊熱を除去することと、当該第1崩壊熱速度よりも大きな速度で一定時間、当該使用済燃料キャニスタを使用して当該第1バッチの使用済燃料棒から崩壊熱を除去することと、当該第1時刻に引き続いての第2時刻に、当該第1崩壊熱速度よりも大きな第2崩壊熱速度で崩壊熱を生成する第2バッチの使用済燃料棒を当該使用済燃料キャニスタの中に搭載することと、当該第1及び第2崩壊熱速度の合計と少なくとも同じ程度に大きい速度で当該第1バッチ及び第2バッチの使用済燃料棒から崩壊熱を除去することとを含む。
【0029】
一般的実装と組み合わせ可能な第1側面において、第1バッチの使用済燃料棒を使用済燃料キャニスタの中に搭載することは、当該第1バッチの使用済燃料棒を原子炉から直接的に使用済燃料キャニスタの中に搭載することを含む。
【0030】
上記側面のいずれかと組み合わせ可能な第2側面はさらに、第1バッチの使用済燃料棒の少なくとも一部を除去することと、当該一部をドライキャスクの中に搭載することとを含む。
【0031】
本開示に記載される様々な実装は、以下の特徴を皆無で、一つ、いくつか又はすべて含み得る。例えば、使用済核燃料からの崩壊熱除去を、プールへ直接というよりもむしろキャニスタを介してプールの中へと達成することができる。これにより、使用済核燃料の取り扱い容易性が増大するので、核分裂生成物放出に対する追加的な安全障壁が得られる。さらに、例えば電源喪失事故に起因するプール液体喪失又はプール液体(例えば水)の再循環喪失の場合、使用済核燃料からの崩壊熱除去を、キャニスタを通して周囲空気へと達成することができる。崩壊熱除去速度は、正常運転状態の間にプールへと達成される速度と実質的に類似又は同一である。いくつかの実装において、所望の崩壊熱除去が、操作員の行為又は電力をなんら必要とすることなく達成できる。
【0032】
本明細書に記載される主題の一以上の実装の詳細が、添付図面及び以下の説明に記載される。他の特徴、側面及び利点が、当該記載、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】原子炉システムのための使用済燃料管理システムを例示するブロック図である。
【
図2A】1スタック又は2スタックの使用済燃料棒を有する正常状態で運転される使用済燃料キャニスタの代表的な実装の模式図を例示する。
【
図2B】1スタック又は2スタックの使用済燃料棒を有する正常状態で運転される使用済燃料キャニスタの代表的な実装の模式図を例示する。
【
図2C】1スタック又は2スタックの使用済燃料棒を有する正常状態で運転される使用済燃料キャニスタの代表的な実装の模式図を例示する。
【
図3】
図3A〜3Bは、使用済燃料棒を保持する代表的なラックの模式図を例示する。
【
図4】異常状態で運転される使用済燃料キャニスタの代表的な実装の模式図を例示する。
【
図5A】外部熱交換器を含みかつ正常状態で運転されている使用済燃料キャニスタの代表的な実装の模式図を例示する。
【
図5B】外部熱交換器を含みかつ正常状態で運転されている使用済燃料キャニスタ代表的な実装の模式図を例示する。
【
図5C】外部熱交換器を含みかつ異常状態で運転されている使用済燃料キャニスタの代表的な実装の模式図を例示する。
【
図6A】外部熱交換器を含みかつ正常状態で運転されている使用済燃料キャニスタの他の代表的な実装の模式図を例示する。
【
図6B】外部熱交換器を含みかつ正常状態で運転されている使用済燃料キャニスタの他の代表的な実装の模式図を例示する。
【
図6C】外部熱交換器を含みかつ異常状態で動作されている使用済燃料キャニスタ他の代表的な実装の模式図を例示する。
【
図7】使用済燃料棒により発生した崩壊熱を散逸させる代表的な方法を例示するフローチャートである。
【
図8】原子炉システムからの使用済燃料棒を管理する代表的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、原子炉発電システム150における一以上の原子炉152からの使用済燃料104を管理する手法を例示するブロック図である。この手法は、使用済核燃料棒104を原子炉152から除去することと、使用済燃料棒104が生成する残留崩壊熱の除去を容易とするべく使用済燃料棒104を使用済燃料管理システム154へと移送することとを含む。使用済燃料管理システム154は、流体158が充填された使用済燃料プール156の中に浸漬された多数の使用済燃料キャニスタ100を含む。流体158は、使用済燃料棒104からの崩壊熱を受容かつ散逸させるヒートシンクを与える。以下に詳述されるように、キャニスタ100は、正常状態及び異常緊急状態の双方のもとで、例えば操作員の介入又は監督なしで受動的に運転されるべく構成することができる。いくつかの例において、キャニスタ100は、使用済燃料棒104の長期間にわたる崩壊熱除去のソリューションを与える。例えば、キャニスタ100は、様々な正常及び異常運転状態において、実質的に不変の熱除去速度(例えば、約0.3MW、0.4MW又は0.8MWの熱除去速度)の達成が可能となり得る。
図1における原子炉152及びキャニスタ100の数は、任意の特定実装又は実装を示唆するものではなく、例示のみを目的として描かれている。
【0035】
原子炉152に関し、炉心20が、円筒形状又はカプセル形状の炉容器70の底部に位置決めされる。炉心20は、一定量の核燃料棒(例えば、制御された核反応を生成する核分裂性材料)及び随意的に一以上の制御棒(図示せず)を含む。いくつかの実装において、原子炉152は、正常運転中に又は緊急状態においても、操作員の介入又は監督なしに少なくともある程度の所定時間、原子炉152の安全運転が維持されることを確実にするべく、物理法則を用いた受動運転システムによって設計される。円筒形状又はカプセル形状の格納容器10は、炉容器70を取り囲み、かつ、一部又は全体が炉プールの中に、炉ベイ5内で水位90を下回るように浸漬される。炉容器70と格納容器10との間の容積は、炉容器70から炉プールへの熱伝達を低減するべく、一部又は全体が真空にされる。しかしながら、他の実装において、炉容器70と格納容器10との間の容積は少なくとも一部が、炉と格納容器との間の熱伝達を増大させる気体及び/又は液体によって充填される。
【0036】
特定の実装において、炉心20は、ホウ素又は他の添加物を含み得る水のような液体の中に浸漬される。当該液体は、炉心表面に接触した後にチャネル30の中へと上昇する。加熱された冷却材の上方向への動きは、チャネル30内の矢印40によって代表される。冷却材は熱交換器50及び60の頂部を超えるように進行し、密度差により炉容器70の内壁に沿って下方へと引っ張られるので、当該冷却材の熱交換器50及び60への熱付与が許容される。炉容器の底部に到達した後、炉心20との接触により冷却材の加熱がもたらされ、これが再びチャネル30を通るように上昇する。
【0037】
熱交換器50及び60は
図1において2つの別個の要素として示されるが、熱交換器50及び60は、チャネル30の少なくとも一部に巻き付けられた任意数のらせんコイルを代表してもよい。
【0038】
原子炉モジュールの正常運転は、加熱された冷却材がチャネル30を通って上昇して熱交換器50及び60に接触する態様で進行する。冷却材は、熱交換器50及び60との接触後、熱サイホンプロセスを引き起こす態様で炉容器
70の底に向かって沈む。
図1の例において、炉容器70内の冷却材は、大気圧を上回る圧力に維持されるので、気化(例えば沸騰)することなく高温を維持することが許容される。
【0039】
熱交換器50及び60内の冷却材は温度が上昇するので沸騰し始める。熱交換器50及び60内の冷却材が沸騰し始めると、蒸気のような気化した冷却材は、蒸気の熱ポテンシャルエネルギーを電気エネルギーへと変換する一以上のタービンを駆動するべく使用される。冷却材は凝縮後、熱交換器50及び60の基部近くの箇所まで戻る。
【0040】
図2A〜2Cは、1スタック又は2スタックの使用済燃料棒を有する正常状態で運転される使用済燃料キャニスタ200の代表的な実装の模式図を例示する。キャニスタ200は、使用済燃料棒204と、使用済燃料棒204を取り囲む冷却材206とを包含する浸漬可能容器202を含む。
図2Aに模式的に示されるように、キャニスタ200(冷却材レベル201まで充填)は、流体258(例えば水又は所定の他の適切な冷却材)が充填された使用済燃料プール256の中に支持される。いくつかの実装において、使用済燃料プール256における流体258(流体レベル203まで充填)は、容器202と流体258との間の熱伝達を改善するべく、ポンプ又は他の機器によって連続的に又は断続的に循環される。流体258の循環は、いくつかの側面において、キャニスタ200と流体258との間の対流熱伝達の有効性を増大させる。
【0041】
容器202は、代表的な実装において、多数の使用済燃料棒204からの崩壊熱の散逸を容易にする。この例において、容器202は、両端に2つの長円状又は半球状のヘッド(例えば上ヘッド205及び下ヘッド207)を伴う円筒状本体を有する細長いカプセル形状の入れ物である。この例において容器202の形状は、(例えば利用可能な容積に対して)相対的に大きな量の表面積を与えることにより、容器202内に包含された冷却材206、使用済燃料プール256の中で容器256を取り囲む流体258双方の対流熱伝達を容易にする。容器202の形状はまた、包含された冷却材206重力駆動の自然循環も容易にする。いくつかの例において容器202は、約2.1〜3.7メートル(約7〜12フィート)の外径及び約22.0メートル(約72フィート)の長さを画定する。いくつかの例において容器202は、約149平方メートル(約1600平方フィート)の表面積を画定する。容器202は、典型的な商用使用済核燃料プールの中に収容可能な長さ及び直径のサイズ(例えば長さ9.1〜15.2メートル(30〜50フィート))にすることができる。
【0042】
この例において容器202は、密封されて仕様上の設計限界(例えば2758〜3447kPa(400〜500psia))まで加圧することができる。以下に述べるように、容器202の設計限界圧力は、異常運転状態にある容器熱除去にとって特に有意である。この例において容器202の円筒状シェル208は、耐食性かつ熱伝導性の材料(例えば鋼)から作られた薄壁構造とされる。一般に、円筒状シェル208は、熱伝導性であり、かつ、圧力、熱、放射線及び地震に起因する応力に耐性がある。円筒状シェル208は、原子炉圧力容器における使用に対して認可された材料を使用して製造することができる。例えば、いくつかの実装において、円筒状シェル208は、タイプ308L、309Lタイプ304のオーステナイト系ステンレス鋼によって被覆されたSA302グレードB、SA533グレードB、クラス1、SA508クラス2、又はSA508クラス3のような鋼ベース材料を含む。他のベース材料は、Sv07Kh25N13及び/又はSv08Kh19N10G2Bオーステナイト系被覆を備えた16MnD5、20MnMoNi55、22NiMoCr37、15Kh2MFA(A)、15Kh2NMFA(A)であり得る。いくつかの例において円筒状シェル208は、使用済燃料棒204が生成する潜在的に有害放射線をブロックし又は抑制する遮蔽体を与えることがない。しかしながら、いくつかの他例において、円筒状シェル208には放射線遮蔽体が設けられる。円筒状シェル208は、圧延板又はリング鍛造を使用して製造することができる。円筒状シェル208の壁厚は、約3.8〜11.5センチメートル(約1.5〜4.5インチ)とすることができる。いずれにせよ、円筒状シェル208の材料及び厚さは、設計限界圧力に関連する応力に耐えるのに十分な強度を与える。
【0043】
使用済燃料棒204は、ライザチャネル216内側における容器202の底近くの所定位置に固定されて下支持板214(例えば
図2Bに示す)及び下支持構造物211により支持される。図示のように、下支持板214及びライザチャネル216は、使用済燃料棒204を抱えて冷却材206の自然循環を容易にする「バスケット」を形成する。この例において、燃料バレル支持体/遮蔽体210は、燃料バレルと複数の個別ラック212を支持する放射線遮蔽体とを含む。これは、下支持板214及びチャネルライザ216に取り付けられる。チャネルライザ216は、上支持リング218及び上支持構造物213によって支持される。ラック212は、各使用済燃料棒204を受容して相対的に安定に、例えば非臨界状態に保持する。例えば、ラック212は、臨界事象を抑制する中性子吸収材(例えばホウ素)を含む材料から作ることができる。
図2Aが単一スタックの使用済燃料204を示す一方、
図2Cは二重スタックの使用済燃料204を示す。
【0044】
図3Aは、それぞれが使用済燃料棒を収容する特定数(例えば37)の利用可能なラック312aを備えた第1の代表的な燃料バレル支持体/遮蔽構造物310aを示す。
図3Bは、他の数(例えば97)の燃料収容ラック312bを備えた第2の代表的な燃料バレル支持体/遮蔽構造物310bを示す。支持構造物310bは、支持構造物310aよりも有意に大きいので、大きな容器を必要とする。例えば、支持構造物310aは、外径が2.1メートル(7フィート)の容器の中に組み入れ可能だが、支持構造物310bは、外径が3.7メートル(12フィート)の容器の中に組み入れ可能である。ラックは、沸騰水炉に典型的な広範な燃料タイプ(例えば8×8、9×9又は10×10燃料集合体)又は大規模加圧水炉燃料集合体(例えば17×17燃料バンドル)を収容するべく配列することができる。
【0045】
これらの例示において、ラック312a及び312bは断面が、それぞれ約11及び28平方フィートの開放エリアを画定する矩形である。もちろん、他の適切な形状(例えば円形、六角形、三角形等)サイズも実装可能である。さらに、図示のように、ラック312a及び312bは、対称な稠密ハニカム構成に配列される。いくつかの例において、この幾何学的構成は、熱除去及び臨界緩和という二重の目的により設けられる。しかしながら、他の適切な構成も有効に実装することができる。例えば、ラック312a及び312bは、(稠密状態とは対照的に)互いに離間すること、又は、ハニカム形状とは対照的ないくつかの他の対称構成(例えば四辺形構成)に配列することもできる。
【0046】
図2Aに戻ると、上支持リング218及び下支持板214が、ライザチャネル216の支持ベースを形成する。加えて、下支持板214は、使用済燃料棒204の重さに耐えるのに十分な強度を有する。下支持板214によって冷却材206は、使用済燃料棒204を通過して上方へと流れることができるので、使用済燃料棒204から当該冷却材への対流熱伝達がなされる。例えば、下支持板214は小さな多孔又は大きな複数開口を含み得る。これにより、自然循環冷却材206は当該支持板を通って上へと流れ、使用済燃料棒204を通過することができる。
【0047】
例示のライザ216は、ラック212の中に支持される燃料バレル支持体/遮蔽体210及び使用済燃料棒204を取り囲むべく、下支持板214から上方へと延びる。図示のように、ライザ216は、下支持板214の頂部近くの点から、容器の上ヘッドフランジ219までの近似的に中間点となる上支持リング218の頂部へと延びる。例えば、ライザ216は高さが約9.1メートル(約30フィート)である。いくつかの例において、ライザ216は、自然循環冷却材206における形状損失を低減するべく、丸まった形状の出口を備えた円筒状の形とされる。
【0048】
代表的なライザ216は、冷却材206を容器202の内部を通って上方へと向けるのに役立つ中空ボア220と、冷却材を容器202の内壁に沿って下方へと向ける狭いアニュラス222とを画定する。上支持リング218は、円筒状シェル208からライザ216の頂部へと径方向内向きにめくれている。支持板214と同様、上支持リング218も、多孔又は大きな複数開口を含む。これにより、自然循環する冷却材206は、上支持リング218及びアニュラス222を通って下方へ通過することができる。
【0049】
容器202は、当初は一定量の液体冷却材206によって充填される。具体的には、容器202は、少なくとも液体レベル201を上支持リング218の頂部を上回るように配置させるのに十分な冷却材206によって充填される。いくつかの例において、容器202は、約35立方メートルの液体冷却材206によって充填される。冷却材は、水及び/又は所定の付加的なタイプの冷却材を含み得る。例えば、自然循環状態にある冷却材206は、円筒状シェル208の内表面において約1000〜2500(W/m
2K)の対流熱伝達係数をもたらす。冷却材206は、以下の詳述されるように異常運転状態において熱除去速度を実質的に不変のレベルに保持するべく、一定の条件下で(例えば使用済燃料プール256における周囲流体258への対流熱伝達が有意に減少した場合に)液体から気体への相変化を受けるように設計することができる。
【0050】
図2Aに示されるような正常状態のもとで運転される場合(例えば、電源喪失又は流体258喪失がない場合)、容器202は使用済燃料プール流体258の中に浸漬される。容器202内側での冷却材206の自然循環は、使用済燃料204に接触する熱い冷却材206とアニュラス222内の冷たい冷却材206との密度差及び高度差の結果として生じる浮力によって確立される。すなわち、使用済燃料204に接触する冷却材206が、使用済燃料棒204から発散される崩壊熱によって加熱されると、冷却材206は低密度となって上昇し始める。上昇する冷却材206は、使用済燃料棒204を保持するラック212を通って上方へと向けられる。冷却材206は、使用済燃料棒204を通過して上へと流れるとさらに多くの熱を受けるので、上方へ流れ続ける。ライザ216は、加熱された冷却材206を、ボア220を通って上方へと、使用済燃料棒204から離れるように、そして上支持リング218の頂部近くのチャネルライザ216出口の方へと向かわせる。ライザ216から出現する冷却材206は、容器202の内表面との対流熱伝達を介して冷却される。熱は、容器202の壁を通って伝導した後、対流によって使用済燃料プール流体258へと伝達される。冷たい冷却材206は、高密度となるので重力によって下方へと引っ張られる。沈みゆく冷却材206は、支持構造物210の多孔付き上支持リング218を通り、アニュラス222を通り、多孔付き下支持板214を通り、そして究極的には容器202の下ヘッド207まで戻る。
【0051】
図4は、異常状態で運転される使用済燃料キャニスタ200の代表的な実装の模式図を例示する。いくつかの実装において、使用済燃料キャニスタ200は、異常運転状態において運転される一方で実質的に不変の崩壊熱除去速度を維持するように設計される。いくつかの側面において、異常運転状態は、使用済燃料プール256が排液され又は流体258が蒸発した緊急事態である(
図4に図示)。しかしながら、他のタイプの異常運転状態も生じ得る(例えば使用済燃料プール256における流体循環喪失)。かかる異常運転状態において、容器202とそれを取り囲む周囲環境との間の一定量の対流熱伝達が有意に低減される。液体冷却材206は、低減された熱伝達速度により究極的に、使用済燃料204と接触して液体から気体への相変化を受ける。低密度の二相冷却材混合物206cが、使用済燃料204を通って上昇し、ライザチャネル216の頂部から出る。ライザ216の頂部において、気相冷却材206a及び液相冷却材206bは重力により、二相冷却材206cから分離される。液相冷却材206bは、多孔付き上支持リング218を通って下方へと進行してアニュラス222内に入る。気相冷却材206aは、容器202において上方へと進行し続けて上ヘッド205に至る。気相冷却材206aは、容器202の内壁に接触すると当該壁と熱交換をして凝縮物206dをもたらす。凝縮物206dは、容器202の内壁に沿って下方へと進行する液膜又は液滴の形態であり得る。凝縮物206dは、上支持リング218の上方の領域に集められ、下方へと流れる液体冷却材206bに混合される。凝縮物206d及び液相冷却材206bは、アニュラスを通って下方へと進行し、多孔付き下支持板214及び下ヘッド207プレナムを通り、そして使用済燃料ラック212を通って上方へと戻る。
【0052】
この例において、キャニスタは、操作員の行為又は外部電源を必要とすることなく、使用済燃料プール256において液冷(例えば水)から空冷へと遷移する。上述のように、空冷キャニスタ200の熱除去速度は、液冷キャニスタ200の熱除去速度と実質的に等しい。特に、液体から気体への相変化が、容器202の内部キャビティの加圧を引き起こす。容器202の加圧により、容器202内の飽和温度が上昇するので、容器202外表面の温度が上昇する。容器202の上昇した外表面温度は、周囲への熱放射熱伝達速度と、(正常運転状態の間の使用済燃料プールにある液体258とは対照的な)周囲空気260による自由対流熱伝達速度との双方を、キャニスタ200の全体的な熱除去速度が許容可能となる点まで増大させる。例えば、容器202の大きな表面積及び高い表面温度が、燃料プール流体258によるものと実質的に同じ速度でキャニスタ200から周囲空気260への熱除去をするには十分となり得る。
【0053】
図5A〜5Bは、外部熱交換器424を含みかつ正常状態で運転されている使用済燃料キャニスタ400の代表的な実装の模式図を例示する。図示のように、熱交換器424は、一連のC字状垂直方向熱交換器配管226によって一緒にまとめられた水平方向上配管ヘッダ223a及び水平方向下配管ヘッダ223bを含む。熱交換器の配管は、直径が5.1〜10.2センチメートル(2〜4インチ)かつ長さが4.6〜6.1メートル(15〜20フィート)となり得る。この例において上配管ヘッダ223aは、冷却材レベル201の下方かつ上支持リング218の上方においてヘッダ導管225aを介して円筒状シェル208に接続される。下配管ヘッダ223bは、ヘッダ導管225bを介してアニュラス222に接続される。いくつかの例においてヘッダ導管225a及び225bは、当該導管を通って流れる液体が常に下方向を向くように傾斜される。熱交換器424は、正常及び異常状態の間、フルの圧力及び温度に耐えるように設計される。
【0054】
図5Aに示されるように、正常状態の間、熱い液体冷却材206はボア220を通ってライザ216の出口へと上昇する。液体冷却材206の近似的に半分が、上ヘッダ導管225aから入り熱交換器424に至る。ここで、使用済燃料プール流体258への熱交換がなされる。液体冷却材の残りの半分は、多孔付き上支持リング218を通ってアニュラス222まで進行する。ここで、使用済燃料プール流体258への熱交換が、対流及び容器202壁を介した伝導による熱伝達によってなされる。この例において冷却材206の流れ経路は、ボア220とアニュラス222との冷却材の密度差及びこれらの熱中心の相対的高さが確立した浮力がもたらす自然循環によって確立される。
【0055】
図5Cは、外部熱交換器424を含みかつ異常状態で運転されている使用済燃料キャニスタ400の代表的な実装の模式図を例示する。この例において、
図4に例示されたものと類似するが、熱交換器424の追加により、自然循環冷却のための追加表面積が得られる。配管内側の対流熱伝達が、キャニスタの熱除去速度性能を増大させるので、キャニスタの全体高さを低減することができる。本例において、管長4.9メートル(16フィート)の65個の配管の熱交換器が、キャニスタの高さを約30%だけ(例えば22メートル(72フィート)から15.2メートル(50フィート)まで)低減することができる一方、周囲空気206への同じ量の熱すなわち0.35MWを拒絶する。いくつかの例において、熱交換器424は、65個の配管の熱交換器又は近似的に150個の配管の熱交換器である。熱交換器配管226の数及び長さは、広範な所望熱除去速度を与えるべく選択することができる。
【0056】
図6A〜6Bは、外部熱交換器
524を含みかつ正常状態で運転されている使用済燃料キャニスタ500の他の代表的な実装の模式図である。図示のように、熱交換器524は、一連のC字状垂直方向熱交換器配管226によって一緒にまとめられた水平方向上配管ヘッダ223a及び水平方向下配管ヘッダ223bを含む。熱交換器の配管は、直径が5.1〜10.2センチメートル(2〜4インチ)かつ長さが4.6〜6.1メートル(15〜20フィート)となり得る。図示の例において、熱交換器
524は、レベル201と上支持リング218との間においてヘッダ導管225aを介して円筒状シェル208に接続される。下配管ヘッダ223bは、ヘッダ導管225bを介してアニュラス222に接続される。ヘッダ導管225a及び225bは、当該導管を通って流れる液体が常に下方向を向くように傾斜される。いくつかの側面において熱交換器524は、正常及び異常状態の間、フルの圧力及び温度に耐えるように設計される。正常状態の間、熱伝達機構は、
図2Aに対して記載されたのと同じものと同一又は実質的に類似する。
【0057】
図6Cは、異常状態のもとで運転されて周囲空気206への熱を拒絶するキャニスタ500を示す。液相冷却材は、
図4に対して上述されたように挙動する。しかしながら、熱交換器524がキャニスタの気相領域に(例えばライザ216を介して)接続されるので、気相冷却材206aの一部は熱交換器配管の内側で凝縮する。これにより、配管526内側に低圧力領域がもたらされるので、追加の気相冷却材206aが当該配管内に引き込まれる。配管526内側の凝縮物206dは、重力により配管526を通って落下し、円筒状シェルに至る。凝縮物は、上支持リング218の上方の領域において二相冷却材206cに混合される。液相冷却材206bは、重力により多孔付き上支持リング218を通って下方へと進行してアニュラス222に至り、多孔付き下支持板214を通り、下ヘッド207により形成されたプレナムを通る。これは、使用済燃料ラック212を通って上方へと流れるので、使用済燃料204を冷却する。
【0058】
本開示の他の実装は、使用済燃料棒が生成する崩壊熱を散逸させる様々な方法を特徴とする。
図7は、崩壊熱を散逸させる代表的な方法700を例示する。方法は、ステップ702において、使用済燃料キャニスタを、使用済燃料プールに包含された熱伝達流体の中に浸漬する。上述のように、使用済燃料キャニスタは、使用済燃料棒を包含する内部キャビティを画定する円筒状シェルを含み得る。ステップ704において、崩壊熱が使用済燃料棒から、キャニスタ内に包含された液体冷却材へと伝達される。いくつかの実装において、冷却材は、熱伝達を容易にするべくキャニスタ内において自然循環を介して循環される。ステップ706において、崩壊熱は、冷却材から、キャニスタの壁を通して使用済燃料プールの熱伝達流体へと伝達される。使用済燃料棒から熱が伝達される速度は、使用済燃料棒が崩壊熱を生成する速度と少なくとも同じ程度に大きい。
【0059】
方法700は随意的に、ステップ708において、使用済燃料プール流体喪失ゆえにキャニスタを周囲空気に露出することも含む。ステップ710において、周囲空気の露出に基づいて、キャニスタ内側の冷却材の一部が、液体から気体へと相変化する。ステップ712において、熱が、キャニスタの壁を通して気相冷却材から周囲空気へと伝達される。ステップ714において、気相冷却材が凝縮されて液体に戻り、(例えば自然循環を介して)キャニスタ内を循環される。
【0060】
本開示のさらに他の実装は、使用済燃料棒を、使用済燃料キャニスタを通して循環させることにより管理する様々な方法を特徴とする。
図8は、使用済燃料棒を管理する代表的な方法800を例示する。方法は、ステップ802において、第1バッチの使用済燃料棒を原子炉から除去する。ステップ804において、第1時刻(T1)に第1バッチの使用済燃料棒が使用済燃料キャニスタ(例えば使用済燃料キャニスタ100)の中に搭載される。ステップ806において、使用済燃料キャニスタが熱伝達流体の中に(例えば、包含された使用済燃料プール156の中に)浸漬される。ステップ808において、キャニスタが一定時間(T)、崩壊熱を第1バッチの使用済燃料棒から除去する。ステップ810において、第2時刻(T2)に第2バッチの使用済燃料棒が使用済燃料キャニスタの中に搭載される。使用済燃料キャニスタの熱除去速度は、T2における第1及び第2バッチの使用済燃料棒の組み合わせ崩壊熱速度と少なくとも同じ程度に大きい。以下の第1例及び第2例の文脈で述べるように、
図8の代表的な方法は、原子炉からの使用済燃料を連続的に管理するべく使用することができる。
【0061】
いくつかの側面において、使用済燃料プール及び本開示に係る多数の使用済燃料キャニスタ(例えば使用済燃料キャニスタ100、200、400及び/又は500)を含む代表的な使用済燃料管理システム(例えば使用済燃料管理システム154)は、原子炉(例えば1〜12個の原子炉152)からの使用済燃料を管理する。当該原子炉はそれぞれ、24月ごとに一度有効に燃料補充され、2分の1の炉心の使用済燃料バッチすなわち近似的に18個の燃料集合体が2月ごとに除去される。各バッチの使用済燃料は、20日後には近似的に0.2MWの、6月後には0.1MWの崩壊熱出力を生成する。6月間崩壊した使用済燃料を、使用済燃料キャニスタから取り出して、例えば、典型的な液体冷却材充填の非加圧使用済燃料プールの中に入れることができる。追加の冷却期間、例えば5〜10年の後、使用済燃料を取り出してドライキャスクに入れることができる。この例において、使用済燃料プール156の中には、周囲空気による冷却へと遷移する前に20日の冷却を与えるのに十分な液体冷却材158が存在する。システムは、2つの使用済燃料キャニスタを含む。それぞれは、使用済燃料プール冷却材158の中に完全に浸漬されている場合に少なくとも0.5MWの崩壊熱除去を、及び20日の遷移冷却期間の後に0.35MWの崩壊熱除去を達成することができる。下の表1は、原子炉からの使用済燃料を収容するキャニスタ装荷及び装荷解除の代表的な線形シーケンスを例示する。表1において、「T」は月単位であり、「B#」は特定の使用済燃料バッチを代表する。「+」はバッチがキャニスタへと装荷されることを示し、「−」はバッチが除去されることを示す。
【表1】
【0062】
表1に提示される代表的なシーケンスにおいて、使用済燃料バッチのすべては、取り出しに先立ち8月間崩壊する。このアプローチは、いくつかの側面において、高出力密度使用済燃料を低出力密度使用済燃料のすぐ隣りに配置することに関連する潜在的なリスクをなくす。高出力密度使用済燃料は、使用済燃料プール水158喪失事象の場合に空気中でのジルコニウム被覆発火の大きなリスクを代表する。これは、潜在的に低出力密度使用済燃料も発火させ得る。
【0063】
他の代表的な使用済燃料管理システムにおいて、当該システムは、原子炉(例えば1〜12個の原子炉152)からの使用済燃料を管理する。当該原子炉はそれぞれ、24月ごとに一度有効に燃料補充され、2分の1の炉心の使用済燃料バッチが2月ごとに除去される。各バッチの使用済燃料は、20日後には0.2MWの、6月後には0.1MWの崩壊熱出力を与える。6月間崩壊した使用済燃料を、使用済燃料キャニスタから取り出して、例えば、典型的な液体冷却材充填の非加圧使用済燃料プールの中に入れることができる。追加の冷却期間、例えば5〜10年の後、使用済燃料を取り出してドライキャスクに入れることができる。システムは単一の使用済燃料キャニスタを含む。これは、使用済燃料プール冷却材158の中に完全に浸漬されている場合に少なくとも0.65MWの崩壊熱除去を、及び20日の遷移冷却期間の後に0.45MWの崩壊熱除去を達成することができる。下の表2は、大きな使用済燃料キャニスタを使用しての、原子炉からの使用済燃料を収容するキャニスタ装荷及び装荷解除の線形シーケンスを例示する。
【表2】
【0064】
なお、この大きな使用済燃料キャニスタは、いくつかの側面において、使用済燃料バッチの6月取り出し分を収容するのに十分な空間を与える。
【0065】
他の代表的な使用済燃料管理システムにおいて、当該システムは単一の原子炉からの使用済燃料を管理する。当該原子炉は、48月ごとに一度有効に燃料補充され、一つの完全炉心の使用済燃料バッチ(例えば37個の集合体)が除去かつ交換される。各バッチの使用済燃料は、20日後には0.4MWの、6月後には0.2MWの崩壊熱出力を生成する。6月間崩壊した使用済燃料を、使用済燃料キャニスタから取り出して、例えば、典型的な液体冷却材充填の非加圧使用済燃料プールの中に入れることができる。追加の冷却期間、例えば5〜10年の後、使用済燃料を取り出してドライキャスクに入れることができる。システムは単一の使用済燃料キャニスタを含む。これは、使用済燃料プール冷却材158の中に完全に浸漬されている場合に少なくとも0.85MWの崩壊熱除去を、20日の遷移冷却期間の後に0.6MWの崩壊熱除去を達成することができる。下の表3は、大きな使用済燃料キャニスタを使用しての、原子炉からの使用済燃料を収容するキャニスタ装荷及び装荷解除の線形シーケンスを例示する。
【表3】
【0066】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたる「前」、「後」、「頂」、「底」、「超」、「上方」、「下方」のような用語の使用は、ここに記載されるシステムの様々なコンポーネント及び他の要素の相対的な位置を記述することを目的とする。同様に、要素を記載する任意の水平方向又は垂直方向の用語は、ここに記載されるシステムの様々な成分及び他の要素の相対的な配向を記述することを目的とする。特に明示しない限り、かかる用語の使用は、地球重力若しくは地球の地面の方向に対するシステム若しくは他の成分の特定の位置若しくは配向、又は、システムの他の要素が動作、製造及び輸送の間に置かれ得る他の特定の位置若しくは配向を示唆するものではない。
【0067】
一定数の実装が記載されてきた。それにもかかわらず、様々な修正がなし得ることが理解される。例えば、開示の手法のステップが異なるシーケンスで行われた場合、開示のシステムが異なる態様で組み合わされた場合、又はコンポーネントが他のコンポーネントによって置換若しくは補完された場合、有利な結果を達成することができる。したがって、他の実装も以下の特許請求の範囲内にある。