(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382263
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】コンクリートブロック
(51)【国際特許分類】
E04B 2/02 20060101AFI20180820BHJP
E04B 2/08 20060101ALI20180820BHJP
E04C 1/39 20060101ALI20180820BHJP
E01C 5/06 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
E04B2/02 112
E04B2/08
E04C1/39 111
E04C1/39 104
E04C1/39 112
E01C5/06
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-144186(P2016-144186)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-13008(P2018-13008A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204170
【氏名又は名称】太陽エコブロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】石井 克侑
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭64−019715(JP,U)
【文献】
仏国特許出願公開第02531988(FR,A1)
【文献】
国際公開第2010/131083(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0318902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/02−2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に形成したフェイスシェルをウェブで接続してなるコンクリートブロックのフェイスシェルの四辺に、各辺と隣接するコンクリートブロックのフェイスシェルの辺と嵌合することによって、フェイスシェル面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部をそれぞれ形成したコンクリートブロックにおいて、前記フェイスシェル面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部が、フェイスシェルの一辺に形成した両側に水平部を有する台形状の山部と、当該辺と平行をなす辺に形成した両側に水平部を有する台形状の谷部とからなるようにするとともに、ウェブの上面位置が、フェイスシェルの高さより低くなるように形成し、該ウェブの上面に横筋を載置するための凹溝を形成し、両方のフェイスシェルの横幅方向の両端部に、内側に向けて延出する、ウェブの高さと同じ高さの突出部を形成し、該突出部により、フェイスシェル間に形成された空洞部が、コンクリートブロックの厚さ方向の中央で鉛直方向に延びるスリットを除いて囲われるようにしたことを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項2】
前記フェイスシェルを、コンクリートブロックの横幅方向の中央に位置する1つのウェブで接続してなることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロック。
【請求項3】
前記ウェブを、フェイスシェルの高さより低く形成し、上面に横筋を載置するための溝を、2本、平行に形成してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートブロックに関し、特に、フェイスシェル面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部を形成したコンクリートブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁や塀等のコンクリートブロック構造体を構築するのに用いられてきた空洞をもったコンクリートブロックの形状は、縦横に隣接して配置されるコンクリートブロック同士が面する上下方向に向く面及び横方向に向く面が平坦な直方体状のものが一般的であった。
そうした形状のコンクリートブロックは、製造が容易で量産することができることから安価な建築材料として普及してきた。
【0003】
直方体状のコンクリートブロックを縦横に配置し連結してコンクリートブロック構造体を構築する際には、目地と呼ばれる連結部にモルタルや漆喰などの目地材と呼ばれる接着材が用いられる。
この目地を形成するに当たっては、例えば、縦横に隣接して配置されるコンクリートブロック同士を接着材、すなわち、横打ち込み目地及び縦打ち込み目地で予備接着し、コンクリートやモルタルが充填されて目地(打ち込み目地)となる。
【0004】
しかし、モルタルや漆喰などの目地材の接着強度が弱い場合や、接着材の材料強度そのものが低い場合、コンクリートブロックの連結部分が力学的に弱点となる。
この力学的な弱点を補い、コンクリートブロック構造体として一体性を確保するために、コンクリートブロックの空洞部に、縦筋と称される鉄筋や横筋と称される鉄筋とを縦横に所定間隔で組み込むようにするとともに、棒鋼を挿入し棒鋼の周りにコンクリートやモルタルが充填されるが、コンクリートブロック構造体に外力が作用した際に生じる剪断応力に対しては、コンクリートブロックの空洞部内に充填されたコンクリートやモルタル、空洞部内に挿入された鉄筋が負担するだけで、高強度のコンクリートブロックや煉瓦を用いてもコンクリートブロック構造体の強度を高めることは困難であった。
さらに、コンクリートブロックの空洞部内に充填されるコンクリートやモルタルの強度が弱い場合や充填不良が起きた場合は、コンクリートブロック構造体の力学的性能(耐力)が低く、棒鋼が何らかの要因により錆びた場合、さらに耐力が低下する。
【0005】
ところで、このような問題を解決するために、本件出願人は、先に、コンクリートブロック(コンクリートブロック構造体)の面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部を形成した、いわゆる、インターロッキング構造のコンクリートブロック(コンクリートブロック構造体)を提案した(特許文献1〜2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−8491号公報
【特許文献2】意匠登録第1521439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1〜2に記載のコンクリートブロック(コンクリートブロック構造体)は、隣接するコンクリートブロックと嵌合する嵌合部を形成することによって、コンクリートブロック(コンクリートブロック構造体)の面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担することで、構築されたコンクリートブロック構造体の力学的性能(耐力)を高められる反面、コンクリートブロックの角部に強度的に脆弱な箇所が発生しやすいため、コンクリートブロックの製造に高強度のコンクリートを使用する必要があったり、構造が複雑で、コンクリートブロックの空洞部内にコンクリートやモルタルを充填したり、鉄筋を組み込むのに手数を要する等、コンクリートブロックの製造やコンクリートブロック構造体の構築にコストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来のインターロッキング構造のコンクリートブロック(コンクリートブロック構造体)の有する問題点に鑑み、コンクリートブロックに部分的に脆弱な箇所が発生しにくく、また、構造が簡単で、コンクリートブロックの製造やコンクリートブロック構造体の構築にコストがかからず、フェイスシェル面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部を形成したコンクリートブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のコンクリートブロックは、平行に形成したフェイスシェルをウェブで接続してなるコンクリートブロックのフェイスシェルの四辺に、各辺と隣接するコンクリートブロックのフェイスシェルの辺と嵌合することによって、フェイスシェル面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部をそれぞれ形成したコンクリートブロックにおいて、前記フェイスシェル面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部が、フェイスシェルの一辺に形成した両側に水平部を有する台形状の山部と、当該辺と平行をなす辺に形成した両側に水平部を有する台形状の谷部とからなるようにするとともに、ウェブの上面位置が、フェイスシェルの高さより低くなるように形成し、該ウェブの上面に横筋を載置するための凹溝を形成し、
両方のフェイスシェルの
横幅方向の両端部に、内側に向けて延出する、ウェブの高さと同じ高さの突出部を形成し、該突出部により、フェイスシェル間に形成された空洞部が、
コンクリートブロックの厚さ方向の中央で鉛直方向に延びるスリットを除いて囲われるようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記フェイスシェルを、コンクリートブロックの幅方向の中央に位置する1つのウェブで接続してなるようにすることができる。
【0011】
また、前記ウェブを、フェイスシェルの高さより低く形成し、上面に横筋を載置するための溝を、2本、平行に形成してなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリートブロックによれば、平行に形成したフェイスシェルをウェブで接続してなるコンクリートブロックという、汎用のコンクリートブロックの形状をし、コンクリートブロックのフェイスシェルの四辺に、各辺と隣接するコンクリートブロックのフェイスシェルの辺と嵌合することによって、フェイスシェル面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部をそれぞれ形成したコンクリートブロックにおいて、前記フェイスシェル面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部が、フェイスシェルの一辺に形成した両側に水平部を有する台形状の山部と、当該辺と平行をなす辺に形成した両側に水平部を有する台形状の谷部とからなるようにすることにより、フェイスシェル面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担するようにしながら、コンクリートブロックに部分的に脆弱な箇所が発生しにくく、また、構造が簡単で、コンクリートブロックの製造やコンクリートブロック構造体の構築にコストがかからないようにすることができる。
【0013】
また、前記フェイスシェルを、コンクリートブロックの幅方向の中央に位置する1つのウェブで接続してなるようにすることにより、コンクリートブロックの空洞部内にコンクリートやモルタルを充填する作業を容易に行うことができるとともに、充填したコンクリートやモルタルによって、フェイスシェル面内の水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担することができる。
【0014】
また、前記ウェブを、フェイスシェルの高さより低く形成し、上面に横筋を載置するための溝を、2本、平行に形成してなるようにすることにより、横筋の重なり部を正確に、安定して設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1-1】本発明のコンクリートブロックの第1実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図(背面図)、(c)は底面図、(d)は左側面図である。
【
図1-2】同コンクリートブロックを示し、(e)は右側面図、(f)は
図1−1(a)のX−X断面図、(g)は斜視図である。
【
図2-1】本発明のコンクリートブロックの第2実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図(背面図)、(c)は底面図、(d)は左側面図である。
【
図2-2】同コンクリートブロックを示し、(e)は右側面図、(f)は
図2−1(a)のY−Y断面図、(g)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のコンクリートブロックの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1−1〜
図1−2に、本発明のコンクリートブロックの第1実施例を示す。
このコンクリートブロックは、平行に形成したフェイスシェル1をウェブ2で接続してなるコンクリートブロックのフェイスシェル1の四辺11、12、13、14に、各辺11、12、13、14と隣接するコンクリートブロックのフェイスシェルの辺と嵌合することによって、フェイスシェル1の面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部11a、12a及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部13a、14aを形成したコンクリートブロックにおいて、フェイスシェル1の面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部11a、12aが、フェイスシェル1の水平方向の一辺11に形成した両側に水平部を有する台形状の山部と、当該辺11と平行をなす辺12に形成した両側に水平部を有する台形状の谷部とからなるようにしている。
【0018】
この場合において、本実施例においては、嵌合部11a、12aは、それぞれ2つの台形状の山部と、台形状の谷部とからなるようにしているが、台形状の山部と台形状の谷部の数は、2つずつに限定されず、コンクリートブロックの大きさ等に応じて、1つ又は3つ以上に設定することができる。
【0019】
一方、フェイスシェル1の面内の水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部13a、14aは、フェイスシェル1の鉛直方向の一辺13に形成した鉛直方向に延びる凸条と、当該辺13と平行をなす辺14に形成した鉛直方向に延びる凹溝(本実施例においては、切欠溝。)とからなるようにしている。
【0020】
そして、フェイスシェル1は、コンクリートブロックの幅方向の中央に位置する1つのウェブ2で接続するようにしている。
これにより、コンクリートブロックの空洞部内にコンクリートやモルタルを充填する作業を容易に行うことができるとともに、充填したコンクリートやモルタルによって、フェイスシェル1の面内の水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担することができるようにしている。
【0021】
このフェイスシェル1を接続するウェブ2の数は、1つに限定されず、コンクリートブロックの大きさ等に応じて、2つ以上に設定することができる。
【0022】
例えば、本実施例においては、フェイスシェル1の両側に、内側に向けて延出する突出部3を形成するようにして、コンクリートやモルタルが充填するための空洞部4が、鉛直方向に延びるスリット5を除いてほぼ囲われるようにしたが、さらに、突出部3を延長することによって、スリット5をなくし、フェイスシェル1を接続するウェブとすることもできる。
【0023】
また、
図2−1〜
図2−2に示す、本発明のコンクリートブロックの第2実施例のように、突出部3を省略し、フェイスシェル1の両側を開放して空洞部4に連なるようにすることもできる。
【0024】
ウェブ2は、その上面位置が、フェイスシェル1の高さより低くなるように形成し、その上面に、横筋を安定して載置できるようにするための凹溝21を形成するようにしている。
この横筋を載置するための凹溝21は、横筋の重なりを考慮して、2本、平行に形成するようにしている。
これにより、横筋の重なり部を正確に、安定して設置することができる。
【0025】
このコンクリートブロックは、平行に形成したフェイスシェル1をウェブ2で接続してなるコンクリートブロックという、汎用のコンクリートブロックの形状をし、コンクリートブロックのフェイスシェル1の四辺11、12、13、14に、各辺11、12、13、14と隣接するコンクリートブロックのフェイスシェルの辺と嵌合することによって、フェイスシェル1の面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部11a、12a及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部13a、14aを形成したコンクリートブロックにおいて、前記フェイスシェル1の面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部11a、12aが、フェイスシェル1の水平方向の一辺11に形成した両側に水平部を有する台形状の山部と、当該辺11と平行をなす辺12に形成した両側に水平部を有する台形状の谷部とからなるようにすることにより、フェイスシェル1の面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担するようにしながら、コンクリートブロックに部分的に脆弱な箇所が発生しにくく、また、構造が簡単で、コンクリートブロックの製造やコンクリートブロック構造体の構築にコストがかからないようにすることができる。
【0026】
また、このコンクリートブロックは、フェイスシェル1の面内の水平方向の剪断応力を負担する嵌合部11a、12a及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担する嵌合部13a、14aが、構造が簡単な噛み合わせ構造のため、コンクリートブロック自体で、フェイスシェル1の面内の水平方向の剪断応力及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を負担することができるとともに、施工性が良好で、施工時間を短縮化することができ、例えば、縦横に隣接して配置されるコンクリートブロック同士を接着材、すなわち、横打ち込み目地及び縦打ち込み目地で予備接着する工程を省略することもできる。
【0027】
以上、本発明のコンクリートブロックについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のコンクリートブロックは、コンクリートブロックに部分的に脆弱な箇所が発生しにくく、また、構造が簡単で、コンクリートブロックの製造やコンクリートブロック構造体の構築にコストがかからず、フェイスシェル面内の水平方向及び該水平方向と直交する水平方向の剪断応力を嵌合部によって負担することができるという特性を有していることから、耐震性に優れたコンクリートブロック塀のほか、擁壁、護岸、建築構造物の壁体等の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 フェイスシェル
11、12、13、14 辺
11a、12a、13a、14a 嵌合部
2 ウェブ
21 凹溝
3 突出部
4 空洞部
5 スリット