(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の光学ユニットのうち第1の光学ユニットの走査回数をA1(回/s)、前記複数の光学ユニットのうち第2の光学ユニットの走査回数をA2(回/s)、前記カメラの撮像回数をD(回/s)、m,nを自然数とすると、下記式(ex.1)、(ex.2)
mD<A1<(m+0.5)Dまたは(m+0.5)D<A1<(m+1)D・・・(ex.1)
nD<A2<(n+0.5)Dまたは(n+0.5)D<A2<(n+1)D・・・(ex.2)
を満たすことを特徴とする請求項2に記載の車両監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0043】
本発明の光学ユニットは、種々の車両用灯具に用いることができる。以下では、車両用灯具のうち車両用前照灯に本発明の光学ユニットを適用した場合について説明する。
【0044】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。車両用前照灯10は、自動車の前端部の右側に搭載される右側前照灯であり、左側に搭載される前照灯と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、右側の車両用前照灯10について詳述し、左側の車両用前照灯については説明を省略する。
【0045】
図1に示すように、車両用前照灯10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、2つのランプユニット18,20が車幅方向に並んで配置された状態で収容される空間として機能する。
【0046】
これらランプユニットのうち外側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては
図1に示す上側に配置されたランプユニット20は、レンズを備えたランプユニットであり、可変ハイビームを照射するように構成されている。一方、これらランプユニットのうち内側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては
図1に示す下側に配置されたランプユニット18は、ロービームを照射するように構成されている。
【0047】
ロービーム用のランプユニット18は、リフレクタ22とリフレクタ22に支持された光源バルブ(白熱バルブ)24と、不図示のシェードとを有し、リフレクタ22は図示しない既知の手段、例えば、エイミングスクリューとナットを使用した手段によりランプボディ12に対して傾動自在に支持されている。
【0048】
ランプユニット20は、
図1に示すように、回転リフレクタ26と、LED28と、回転リフレクタ26の前方に配置された投影レンズとしての凸レンズ30と、を備える。なお、LED28の代わりにEL素子やLD素子などの半導体発光素子を光源として用いることも可能である。特に後述する配光パターンの一部を遮光するための制御には、点消灯が短時間に精度よく行える光源が好ましい。凸レンズ30の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズが用いられる。本実施の形態では、凸レンズ30として非球面レンズを用いている。
【0049】
回転リフレクタ26は、不図示のモータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転リフレクタ26は、LED28から出射した光を回転しながら反射し、所望の配光パターンを形成するように構成された反射面を備えている。本実施の形態では、回転リフレクタ26が光学ユニットを構成している。
【0050】
図2は、本実施の形態に係る光学ユニットを含むランプユニット20の構成を模式的に示した上面図である。
図3は、
図1に示すA方向からランプユニット20を見た場合の側面図である。
【0051】
回転リフレクタ26は、反射面として機能する、形状の同じ3枚のブレード26aが筒状の回転部26bの周囲に設けられている。回転リフレクタ26の回転軸Rは、光軸Axに対して斜めになっており、光軸AxとLED28とを含む平面内に設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査するLED28の光(照射ビーム)の走査平面に略平行に設けられている。これにより、光学ユニットの薄型化が図られる。ここで、走査平面とは、例えば、走査光であるLED28の光の軌跡を連続的につなげることで形成される扇形の平面ととらえることができる。また、本実施の形態に係るランプユニット20においては、備えているLED28は比較的小さく、LED28が配置されている位置も回転リフレクタ26と凸レンズ30との間であって光軸Axよりずれている。そのため、従来のプロジェクタ方式のランプユニットのように、光源とリフレクタとレンズとが光軸上に一列に配列されている場合と比較して、車両用前照灯10の奥行き方向(車両前後方向)を短くできる。
【0052】
また、回転リフレクタ26のブレード26aの形状は、反射によるLED28の2次光源が凸レンズ30の焦点付近に形成されるように構成されている。また、ブレード26aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、
図2に示すようにLED28の光を用いた走査が可能となる。この点について更に詳述する。
【0053】
図4(a)〜
図4(e)は、本実施の形態に係るランプユニットにおいて回転リフレクタ26の回転角に応じたブレードの様子を示す斜視図である。
図4(f)〜
図4(j)は、
図4(a)〜
図4(e)の状態に対応して光源からの光を反射する方向が変化する点を説明するための図である。
【0054】
図4(a)は、LED28が2つのブレード26a1,26a2の境界領域を照射するように配置されている状態を示している。この状態では、
図4(f)に示すように、LED28の光は、ブレード26a1の反射面Sで光軸Axに対して斜めの方向に反射される。その結果、配光パターンが形成される車両前方の領域のうち、左右両端部の一方の端部領域が照射される。その後、回転リフレクタ26が回転し、
図4(b)に示す状態になると、ブレード26a1が捩れているため、LED28の光を反射するブレード26a1の反射面S(反射角)が変化する。その結果、
図4(g)に示すように、LED28の光は、
図4(f)に示す反射方向よりも光軸Axに近い方向に反射される。
【0055】
続いて、回転リフレクタ26が
図4(c)、
図4(d)、
図4(e)に示すように回転すると、LED28の光の反射方向は、配光パターンが形成される車両前方の領域のうち、左右両端部の他方の端部に向かって変化することになる。本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、120度回転することで、LED28の光によって前方を一方向(水平方向)に1回走査できるように構成されている。換言すると、1枚のブレード26aがLED28の前を通過することで、車両前方の所望の領域がLED28の光によって1回走査されることになる。なお、
図4(f)〜
図4(j)に示すように、2次光源(光源虚像)32は、凸レンズ30の焦点近傍で左右に移動している。ブレード26aの数や形状、回転リフレクタ26の回転速度は、必要とされる配光パターンの特性や走査される像のちらつきを考慮して実験やシミュレーションの結果に基づいて適宜設定される。また、種々の配光制御に応じて回転速度を変えられる駆動部としてモータが好ましい。これにより、走査するタイミングを簡便に変えることができる。このようなモータとしては、モータ自身から回転タイミング情報を得られるものが好ましい。具体的には、DCブラシレスモータが挙げられる。DCブラシレスモータを用いた場合、モータ自身から回転タイミング情報を得られるため、エンコーダなどの機器を省略することができる。
【0056】
このように、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、ブレード26aの形状や回転速度を工夫することで、LED28の光を用いて車両前方を左右方向に走査することができる。
図5(a)〜
図5(e)は、回転リフレクタが
図4(f)〜
図4(j)の状態に対応した走査位置における投影イメージを示した図である。図の縦軸および横軸の単位は度(°)であり、照射範囲および照射位置を示している。
図5(a)〜
図5(e)に示すように、回転リフレクタ26の回転によって投影イメージは水平方向に移動する。
【0057】
図6(a)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて光軸に対して左右±5度の範囲を走査した場合の配光パターンを示す図、
図6(b)は、
図6(a)に示す配光パターンの光度分布を示す図、
図6(c)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち一箇所を遮光した状態を示す図、
図6(d)は、
図6(c)に示す配光パターンの光度分布を示す図、
図6(e)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち複数箇所を遮光した状態を示す図、
図6(f)は、
図6(e)に示す配光パターンの光度分布を示す図である。
【0058】
図6(a)に示すように、本実施の形態に係る車両用前照灯10は、LED28の光を回転リフレクタ26で反射させ、反射した光で前方を走査することで実質的に水平方向に横長形状のハイビーム用配光パターンを形成することができる。このように、回転リフレクタ26の一方向の回転により所望の配光パターンを形成することができるため、共振ミラーのような特殊な機構による駆動が必要なく、また、共振ミラーのように反射面の大きさに対する制約が少ない。そのため、より大きな反射面を有する回転リフレクタ26を選択することで、光源から出射した光を照明に効率よく利用することができる。つまり、配光パターンにおける最大光度を高めることができる。なお、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、凸レンズ30の直径とほぼ同じ直径であり、ブレード26aの面積もそれに応じて大きくすることが可能である。
【0059】
また、本実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯10は、LED28の点消灯のタイミングや発光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させることで、
図6(c)、
図6(e)に示すように任意の領域が遮光されたハイビーム用配光パターンを形成することができる。また、回転リフレクタ26の回転に同期させてLED28の発光光度を変化(点消灯)させてハイビーム用配光パターンを形成する場合、光度変化の位相をずらすことで配光パターン自体をスイブルするような制御も可能である。
【0060】
上述のように、本実施の形態に係る車両用前照灯は、LEDの光を走査することで配光パターンを形成するとともに、発光光度の変化を制御することで配光パターンの一部に任意に遮光部を形成することができる。そのため、複数のLEDの一部を消灯して遮光部を形成する場合と比較して、少ない数のLEDで所望の領域を精度よく遮光することができる。また、車両用前照灯10は、複数の遮光部を形成することができるため、前方に複数の車両が存在する場合であっても、個々の車両に対応する領域を遮光することが可能となる。
【0061】
また、車両用前照灯10は、基本となる配光パターンを動かさずに遮光制御することが可能なため、遮光制御時にドライバに与える違和感を低減できる。また、ランプユニット20を動かさずに配光パターンをスイブルすることができるため、ランプユニット20の機構を簡略化することができる。そのため、車両用前照灯10は、配光可変制御のための駆動部としては回転リフレクタ26の回転に必要なモータを有していればよく、構成の簡略化と低コスト化、小型化が図られている。
【0062】
また、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、
図1や
図2に示すように、その前面にLED28が配置されており、LED28に向かって風を送る冷却ファンを兼ねている。そのため、冷却ファンと回転リフレクタを別個に設ける必要がなく、光学ユニットの構成を簡略化できる。また、回転リフレクタ26で生じた風によりLED28を空冷することで、LED28を冷却するためのヒートシンクを省略あるいは小型化することが可能となり、光学ユニットの小型化や低コスト化、軽量化が図られる。
【0063】
なお、このような冷却ファンは、必ずしも光源に向かって直接風を送る機能を有していなくてもよく、ヒートシンクなどの放熱部に対流を生じさせるものでもよい。例えば、回転リフレクタ26による風がLED28とは別に設けられているヒートシンクなどの放熱部の近傍に対流を生じさせることで、LED28の冷却を行うように回転リフレクタ26やヒートシンクの配置を設定してもよい。なお、放熱部は、ヒートシンクのように別体の部材だけでなく、光源の一部であってもよい。
【0064】
(第2の実施の形態)
LEDの光を反射して投影レンズで前方に投影した場合、投影イメージの形状は、必ずしもLEDの発光面の形状と一致しない。
図7(a)は、LEDの光を平面ミラーで反射させ、非球面レンズにより投影した場合の投影イメージを示した図、
図7(b)は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図、
図7(c)は、第2の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図である。
【0065】
図7(a)に示すように、反射面が平面であれば投影イメージはLEDの発光面の形状と相似する。しかしながら、第1の実施の形態に係る回転リフレクタ26では、反射面となるブレード26aが捩れているため、投影イメージは
図7(b)に示すように歪んだものとなる。具体的には、第1の実施の形態では、投影イメージがぼける(照射範囲が広がる)とともに傾いている。そのため、投影イメージを走査して形成される配光パターンや遮光部の形状が傾くとともに、遮光部と照射部との境界が不明瞭となる場合がある。
【0066】
そこで、第2の実施の形態では、曲面で反射することで歪んだ像を補正するように光学ユニットを構成した。具体的には、第2の実施の形態に係る車両用前照灯では、凸レンズとして自由曲面レンズが用いられている。
図8は、第2の実施の形態に係る光学ユニットの正面図である。
【0067】
第2の実施の形態に係る光学ユニットは、回転リフレクタ26と投影レンズ130とを備える。投影レンズ130は、回転リフレクタ26で反射された光を光学ユニットの光照射方向に投影する。投影レンズ130は、回転リフレクタ26の反射面で反射されることで歪んだLEDの像を、光源自体の形状(LEDの発光面の形状)に近付くよう補正する自由曲面レンズである。自由曲面レンズの形状は、ブレードの捩れや形状に応じて適宜設計すればよい。本実施の形態に係る光学ユニットによれば、
図7(c)に示すように、光源の形状である矩形に近い形状に補正されている。また、第1の実施の形態に係る光学ユニットによる投影イメージの最大光度が100000cd(
図7(b)参照)であるのに対して、第2の実施の形態に係る光学ユニットによる投影イメージの最大光度は146000cdに増大している。
【0068】
図9(a)〜
図9(e)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにおいて回転リフレクタを30°ずつ回転させた際の投影イメージを示した図である。
図9(a)〜
図9(e)に示すように、第1の実施の形態と比較して、ぼけが少ない投影イメージが形成されており、所望の領域を精度よく明るい光で照射することができる。
【0069】
なお、LED28から発する光は、そのままでは広がりがあるため、一部の光が回転リフレクタ26で反射されずに無駄になってしまう場合がある。また、回転リフレクタ26で反射されたとしても、投影イメージが大きくなると遮光部の分解能が低下する傾向にある。そこで、本実施の形態における光源は、LED28とLED28の光を集光する複合放物面集光器(CPC: Compound Parabolic Concentrator)32とで構成されている。
図10(a)は、第2の実施の形態に係る光源の斜視図、
図10(b)は、
図10(a)のB−B断面図である。
【0070】
複合放物面集光器32は、底部にLED28が配置された箱形の集光器である。複合放物面集光器32の4つの側面は、LED28またはその近傍領域に焦点を有する放物線形状となるように鏡面加工されている。これにより、LED28が発する光は、集光されて前方へ照射される。この場合、複合放物面集光器32の矩形の開口部32aは、光源の発光面とみなすことができる。
【0071】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態に係る光学ユニットは、自由曲面レンズの働きにより投影イメージの形状を光源の形状である矩形に近い形状に補正することができる。しかしながら、このように補正した投影イメージを走査して配光パターンを形成した場合、なお改良の余地がある。
【0072】
図11(a)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、
図11(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。
図12(a)は、LED28を備える複合放物面集光器32の長手方向が鉛直方向となるように配置した状態を示した図、
図12(b)は、複合放物面集光器32の長手方向が鉛直方向に対して斜めになるように配置した状態を示した図である。
【0073】
光源が
図12(a)に示す状態の場合、照射パターンは、
図11(a)に示すように、水平線に対して約10°傾いている。また、光源が
図12(a)に示す状態の場合、各投影イメージは、
図11(b)に示すように、鉛直線に対して約20°傾いている。そこで、本実施の形態では、これらの傾きを補正するための構成について説明する。
【0074】
はじめに、照射パターンの傾きは、自由曲面レンズである投影レンズ130(
図8参照)と回転リフレクタ26とLED28とを含む光学系全体を、光軸に対して10°回転させることで補正可能である。また、各投影イメージの傾きは、LED28と複合放物面集光器32とを備える光源を傾かせることで補正可能である。具体的には、
図12(b)に示すように、光源の発光面は、投影レンズ130により前方に投影される投影イメージが直立に近くなるように、発光面の各辺が鉛直方向に対して20°傾いて設けられている。
【0075】
図13(a)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、
図13(b)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。
図13に示すように、照射パターンや各投影イメージの傾きは補正されており、理想的な配光パターンの形成が可能となる。また、投影レンズ130やLED28や回転リフレクタ26を含む光学系全体を傾けるだけで照射パターンや投影イメージの補正が可能なため、所望の配光パターンを得るための調整が容易となる。
【0076】
(第4の実施の形態)
上述の実施の形態の光学ユニットのように、一つの光源でハイビーム用配光パターンを形成することは可能である。しかしながら、より明るい照射パターンを必要とする場合や、低コスト化のために低光度のLEDを用いる場合も考えられる。そこで、本実施の形態では、光源を複数備えた光学ユニットについて説明する。
【0077】
図14は、第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した側面図である。
図15は、第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した上面図である。第4の実施の形態に係るランプユニット120は、投影レンズ130と、回転リフレクタ26と、2つのLED28a,28bとを備える。
図16は、回転リフレクタ26が
図14の状態における投影イメージを示した図である。投影イメージIaは、投影レンズ130に近い前方に配置されているLED28aの光によって形成されており、投影イメージIbは、投影レンズ130から離れた後方に配置されているLED28bの光によって形成されている。
【0078】
図17(a)は、前方のLED28aによって形成された照射パターンを示す図、
図17(b)は、後方のLED28bによって形成された照射パターンを示す図、
図17(c)は、2つのLEDによって形成された合成配光パターンを示す図である。
図17(c)に示すように、複数のLEDを用いることでも所望の配光パターンを形成することができる。また、合成された配光パターンでは、一つのLEDだけでは困難な最大光度も達成されている。
【0079】
次に、ランプユニット120を用いて配光パターンに遮光部を形成する場合について説明する。
図18(a)は、前方のLED28aによって形成された、遮光部を有する照射パターンを示す図、
図18(b)は、後方のLED28bによって形成された、遮光部を有する照射パターンを示す図、
図18(c)は、2つのLEDによって形成された、遮光部を有する合成配光パターンを示す図である。
図18(a)および
図18(b)に示す配光パターンを形成するためには、それぞれの遮光部の位置を合わせるために、各LEDの点消灯タイミングを適宜ずらしている。
図18(c)に示すように、複数のLEDを用いることでも遮光部を有する所望の配光パターンを形成することができる。また、合成された配光パターンでは、一つのLEDだけでは困難な最大光度も達成されている。
【0080】
(第5の実施の形態)
図19は、第5の実施の形態に係る光学ユニットを含む構成を模式的に示した上面図である。
【0081】
本実施の形態に係る光学ユニット150は、回転リフレクタ26と、発光素子としてのLEDを有する複数の光源と、を備えている。複数の光源のうち一方の光源152は、複数のLEDユニット152a,152b,152cを有する。複数のLEDユニット152a,152b,152cは、集光用のLEDユニットであり、ハイビーム用配光パターンに適した進行方向正面への強い集光を実現するように配置されている。複数の光源のうち他方の光源154は、複数のLEDユニット154a,154bを有する。複数のLEDユニット154a,154bは、拡散用のLEDユニットであり、ハイビーム用配光パターンに適した広い範囲を照射する拡散光を実現するように配置されている。なお、各光源が有するLEDユニットは必ずしも複数である必要はなく、十分な明るさを実現できればLEDユニットは一つでもよい。また、常に全てのLEDユニットを点灯させる必要はなく、車両の走行状況や前方の状態に応じて一部のLEDユニットのみを点灯させてもよい。
【0082】
光源152および光源154は、それぞれ出射した光が、回転リフレクタ26の各ブレードによって異なる位置で反射されるように配置されている。具体的には、光源152が有する集光用のLEDユニット152a,152b,152cは、出射した光が第1の投影レンズ156からより離れた位置にある扇形のブレード26aで反射されるように配置されている。そのため、扇形のブレード26aで反射されたことで生じる光源152の位置変化を、焦点距離が長い(投影倍率が低い)第1の投影レンズ156で前方へ投影することができる。その結果、回転リフレクタ26を回転させ、光源152から出射した光を用いて前方を走査した場合に、走査範囲が余り広くならず、狭い範囲をより明るく照らす配光パターンを形成することができる。
【0083】
一方、光源154が有する拡散用のLEDユニット154a,154bは、出射した光が第2の投影レンズ158により近い位置にある扇側のブレード26aで反射されるように配置されている。そのため、扇形のブレード26aで反射されたことで生じる光源154の位置変化を、焦点距離が短い(投影倍率が高い)第2の投影レンズ158で投影することができる。その結果、回転リフレクタ26を回転させ、光源154から出射した光を用いて前方を走査した場合に、走査範囲が広がり、広い範囲を照らす配光パターンを形成することができる。
【0084】
このように、複数の光源152,154を、それぞれの出射した光が回転リフレクタ26の反射面の異なる位置で反射するように配置することにより、複数の配光パターンを形成できるとともに、それらの配光パターンを合成して新たな配光パターンを形成することも可能なため、より理想的な配光パターンの設計が容易となる。
【0085】
次に、各投影レンズの位置について説明する。上述のように、光源152および光源154から出射した光は、ブレード26aで反射されることによって、各投影レンズに入射する。このことは、各投影レンズにとって、ブレード26aの裏側に仮想的に形成された、光源152や光源154の2次光源から光線が入射することと等価である。光を走査して配光パターンを形成する場合、分解能を向上させるためには、できるだけピンぼけのないクリアな光源像を投影し、走査することが重要である。
【0086】
したがって、各投影レンズの位置は、レンズ焦点が2次光源と一致することが好ましい。なお、光源152および光源154の2次光源の位置がブレード26aの回転に伴い変化すること、および、要求される種々の照射パターン、を考慮すると、必ずしも全ての2次光源が投影レンズの焦点に一致する必要はない。
【0087】
このような知見を踏まえ、例えば、第1の投影レンズ156は、ブレード26aの反射により形成される光源152の2次光源のうち少なくとも一つが第1の投影レンズ156の焦点付近を通過するように、配置されている。また、第2の投影レンズ158は、ブレード26aの反射により形成される光源154の2次光源のうち少なくとも一つが第2の投影レンズ158の焦点付近を通過するように、配置されている。
【0088】
図20は、第5の実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯により形成された配光パターンを模式的に示した図である。
図20に示すハイビーム用配光パターンPHは、光源152により形成され、車両前方正面を遠方まで明るく照射する第1の配光パターンPH1と、光源154により形成され、車両前方の広い範囲を照射する第2の配光パターンPH2とからなる。
【0089】
なお、本実施の形態に係る光学ユニット150は、光源152から出射され、回転リフレクタ26で反射された光を、光学ユニットの光照射方向に第1の配光パターンPH1として投影する第1の投影レンズ156と、光源154から出射され、回転リフレクタ26で反射された光を、光学ユニットの光照射方向に第2の配光パターンPH2として投影する第2の投影レンズ158と、を更に備えている。これにより、各投影レンズを適宜選択することで、異なる配光パターンを一つの回転リフレクタで形成できる。
【0090】
次に、第1の配光パターンPH1および第2の配光パターンPH2を形成する各LEDによる照射パターンについて説明する。
図21(a)は、光源152および光源154により形成した配光パターンを示した図、
図21(b)〜
図21(f)は、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bのそれぞれにより形成された照射パターンを示した図である。
図21(b)〜
図21(d)に示すように、LEDユニット152a,152b,152cにより形成された照射パターンは、照射領域が狭く最大光度が大きなものである。一方、
図21(e)、
図21(f)に示すように、LEDユニット154a,154bにより形成された照射パターンは、最大光度は小さいものの照射領域が広いものである。そして、各LEDの照射パターンを重ね合わせることで
図21(a)に示すハイビーム用配光パターンが形成される。
【0091】
次に、光源152および光源154が備えるLEDユニットについて更に詳述する。
図22(a)は、第5の実施の形態に係るLEDユニットの斜視図、
図22(b)は、
図22(a)のC−C断面図、
図22(c)は、
図22(a)のD−D断面図である。本実施の形態に係る光源152が備えるLEDユニット152aは、LED160とLED160の光を集光する複合放物面集光器162とで構成されている。なお、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bはそれぞれ同様の構成であるため、以下では、LEDユニット152aを例に説明する。
【0092】
複合放物面集光器162は、底部にLED160が配置され、開口部162aが矩形の部材である。複合放物面集光器162は、LED160の光を集光するように底部から開口部162aに向かって形成された4つの側面(集光面)162b〜162eを有している。4つの側面162b〜162eは、LED160またはその近傍領域に焦点を有する放物線形状となるように鏡面加工されている。これにより、LED160が発する光は、集光されて前方へ照射される。ところで、LED160から発した光は、
図22(c)に示す点線の矢印のように、開口部162aの長手方向において拡散しやすい。そのため、側面の高さが全て同じだとすると、LED160が発した光のうち開口部162aの長手方向に向かう光を十分に集光することができない場合がある。つまり、側面で反射されずにそのまま開口部より斜めに出射した光の一部は、回転リフレクタ26の反射面に到達しない。
【0093】
そこで、本実施の形態に係る複合放物面集光器162においては、4つの側面のそれぞれは、開口部162aの長手方向の端部にある側面162b,162cの高さH1が、開口部162aの短手方向の端部にある側面162d,162eの高さH2より高くなるように形成されている。これにより、LED160の光のうち回転リフレクタの反射面に到達しない拡散光の発生が低減され、各投影レンズへの入射光が増加するため、光源の光を照明に効率よく利用できる。
【0094】
なお、本実施の形態に係る光学ユニット150を用いることでも配光パターンに遮光部を形成することができる。
図23(a)は、光源152および光源154により形成した、遮光部を有する配光パターンを示した図、
図23(b)〜
図23(f)は、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bのそれぞれにより形成された遮光部を有する照射パターンを示した図である。
図23(b)〜
図23(d)に示すように、LEDユニット152a,152b,152cにより形成された遮光部を有する照射パターンは、照射領域が狭く最大光度が大きなものである。一方、
図23(e)、
図21(f)に示すように、LEDユニット154a,154bにより形成された遮光部を有する照射パターンは、最大光度は小さいものの照射領域が広いものである。そして、各LEDの照射パターンを重ね合わせることで、
図23(a)に示す、遮光部を有するハイビーム用配光パターンが形成される。
【0095】
(第6の実施の形態)
上述の各実施の形態に係る光学ユニットでは、隣接するブレードの双方に同時に光が入射すると、異なる方向に2つの照射ビームが同時に出現するため、配光パターンの両端部が同時に光ることになる。このような場合、配光パターンの両端部の照射状態を独立に制御することが難しい。そこで、隣接するブレードの双方に同時に光が入射するようなタイミングで光源を消灯することで、配光パターンの両端部を同時に照射しないようにしている。一方、前述のタイミングで光源を一時的に消灯すると、配光パターンの両端部の明るさがある程度低下してしまう。
【0096】
そこで、本実施の形態に係る回転リフレクタは、隣接するブレードの間に仕切り部材を設けることで、配光パターンの明るさの低下を抑制している。
図24は、第6の実施の形態に係る回転リフレクタの斜視図である。
図24に示す回転リフレクタ164は、上述の回転リフレクタ26と同様の形状である3つのブレード164aが筒状の回転部164bの周方向に配列されている。各ブレード164aは反射面として機能する。また、回転リフレクタ164は、隣接するブレード164a同士の間に設けられ、回転軸方向に延伸した3つの矩形の仕切り部材164cを更に備えている。仕切り部材164cは、隣接する一方のブレードの反射面に光源からの光が入射している状態で、隣接する他方のブレードの反射面に光源からの光が入射することを抑制するように構成されている。これにより、一のブレードの端部を照射している光源の光のうち、隣接しているブレードの端部に向かう光をある程度遮光できる。つまり、隣接するブレードの双方に同時に光が入射する時間が短くなるため、それに応じて光源を消灯する時間も短くでき、照射効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0097】
次に、回転リフレクタが備えるブレードの枚数として適切な数について検討する。上述の各実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯は、回転リフレクタのブレードが回転しながら光源の光を反射し前方を走査することで前方の照射物(例えば、車両や歩行者。)を照射する。そのため、照射物は、光が照射され明るくなっているときと、光が照射されずに暗くなっているときがあり、条件によっては照射物がちらついて見えることがある。このように静止状態で明滅する照射物がちらつきとして知覚されなくなる明滅周波数は、一般的には80Hz以上必要とされている。
【0098】
また、前方の照射物が視線移動で粒々状に見える現象(いわゆるストロボ効果)を低減するには、明滅周波数は300Hz以上必要とされている。このように、ちらつきやストロボ効果を考慮すると、照射パターン全体は300Hz以上の走査周波数が必要となる。ただし、照射パターンのごく狭い領域だけであれば、走行中にその領域でストロボ効果は生じにくいため、その狭い領域においては走査周波数は80Hz以上であればよい。
【0099】
このような知見に基づいてブレードの枚数や回転リフレクタの回転数を決定するとよい。なお、複数のブレードのそれぞれの形状が全く同じではない場合、それぞれのブレードで走査された照射パターン形状も完全には一致しない。
図25(a)は、各ブレードの形状が完全に同一である場合の理想的な照射パターンを示した図、
図25(b)は、各ブレードの形状に誤差がある場合の照射パターンを示した図である。なお、
図25に示す照射パターンは、ブレードが2枚の回転リフレクタを100回転/秒の速さで回転させた場合に形成されるものである。
【0100】
図25(a)に示すように、各ブレードの形状が完全に同一である場合、いずれのブレードにより走査された照射パターンであっても完全に重なる。そのため、このような照射パターンにより照射物を照射した場合、200Hzで明滅していることになる。一方、
図25(b)に示すように、各ブレードの形状に誤差がある場合、照射パターンの中央部分は重なっているが、照射パターンの外周部近傍は走査するブレードによってずれる。そのため、照射パターンの中央部分に存在する照射物は200Hzで明滅するが、照射パターンの外周部近傍に存在する照射物は回転リフレクタの回転数と同じ100Hzで明滅することになる。このように、ブレード形状に誤差がある場合、照射パターンの照射領域によって明滅周波数が異なることが考えられる。
【0101】
前述のように、ストロボ効果の影響が大きい照射パターン中央部では、照射物の明滅周波数が300Hz以上となるように、回転リフレクタの回転数とブレードの枚数を決定するとよい。一方、照射パターンの外周部近傍は狭い領域であるためストロボ効果は生じにくい。そこで、静止状態で明滅する照射物のちらつきが知覚されないように、照射物の明滅周波数が80Hz以上となるように、回転リフレクタの回転数とブレードの枚数を決定するとよい。
【0102】
例えば、回転リフレクタのブレードの枚数が2枚の場合、回転リフレクタの回転数が150回転/秒以上であれば、照射パターンの中央部での走査周波数が300Hz以上、照射パターンの外周部近傍での走査周波数が150Hz以上となる。同様に、回転リフレクタのブレードの枚数が3枚の場合、回転リフレクタの回転数が100回転/秒以上であれば、照射パターンの中央部での走査周波数が300Hz以上、照射パターンの外周部近傍での走査周波数が100Hz以上となる。また、回転リフレクタのブレードの枚数が4枚の場合、回転リフレクタの回転数が80回転/秒以上であれば、照射パターンの中央部での走査周波数が320Hz以上、照射パターンの外周部近傍での走査周波数が80Hz以上となる。また、回転リフレクタのブレードの枚数が5枚の場合、回転リフレクタの回転数が80回転/秒以上であれば、照射パターンの中央部での走査周波数が400Hz以上、照射パターンの外周部近傍での走査周波数が80Hz以上となる。また、回転リフレクタのブレードの枚数が6枚の場合、回転リフレクタの回転数が80回転/秒以上であれば、照射パターンの中央部での走査周波数が480Hz以上、照射パターンの外周部近傍での走査周波数が80Hz以上となる。
【0103】
このように、回転リフレクタのブレードの枚数や回転数を適宜選択することで照射パターン内にある照射物のちらつきやストロボ効果の発生が低減される。なお、回転リフレクタを駆動する駆動源(例えばモータ)の耐久性の観点からは回転数は低い方が好ましい。一方、前述のように、光源は隣接するブレードの境界部を照射するようなタイミングで消灯するため、ブレードの枚数が多いと消灯時間が増加する。そのため、光源の光を効率よく利用するという観点からは、ブレードの枚数は少ない方が好ましい。したがって、本実施の形態に係る回転リフレクタは、回転数が80回転/秒以上150回転/秒未満がよい。また、ブレードの枚数は2枚、または3枚、または4枚が好ましい。
【0104】
以下に、ブレード枚数が4枚の回転リフレクタについて説明する。このように、ブレードの枚数を多くすることで光学ユニットの送風能力が増大する。
図26は、第6の実施の形態の変形例に係る回転リフレクタの斜視図である。
図27は、
図26に示す回転リフレクタの側面図である。
【0105】
図26、
図27に示す回転リフレクタ166は、ブレード166aが筒状の回転部166bの周方向に4つ配列されている。ブレード166aは中心角が90度の扇形であり、上述の回転リフレクタと同様に捩れている。各ブレード166aは反射面として機能する。また、回転リフレクタ166は、隣接するブレード166a同士の間に設けられ、回転軸方向に延伸した4つの仕切り板166cを更に備えている。仕切り板166cは、隣接する一方のブレードの反射面に光源からの光が入射している状態で、隣接する他方のブレードの反射面に光源からの光が入射することを抑制するように構成されている。これにより、一のブレードの端部を照射している光源の光のうち、隣接しているブレードの端部に向かう光をある程度遮光できる。つまり、隣接するブレードの双方に同時に光が入射する時間が短くなるため、それに応じて光源を消灯する時間も短くでき、照射効率の低下を最小限に抑えることができる。なお、仕切り板166cは、回転軸に対して斜めとなっている2つの斜辺166c1,166c2を上部に有している。
【0106】
図28は、第6の実施の形態に係る光学ユニットを含む構成を模式的に示した上面図である。なお、前述の各実施の形態に係る光学ユニットと同様の構成や部材については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0107】
本実施の形態に係る光学ユニット170は、前述の回転リフレクタ166と、前述の複数の光源152,154と、を備えている。回転リフレクタ166は、隣接するブレード166aの間に仕切り板166cが設けられている。光学ユニット170においては、回転リフレクタ166の回転軸Rが光学ユニット170の光軸Axに対して斜めになるように、回転リフレクタ166が配置されている。
【0108】
仕切り板166cの斜辺166c1は、光源152と対向する位置で各LEDユニット152a,152b,152cの開口部近傍を通過するように形状が設定されている。また、斜辺166c1は、各LEDユニット152a,152b,152cの前方を通過する際に、各LEDユニット152a,152b,152cの配列方向とほぼ平行となるような形状である。そのため、斜辺166c1が各LEDユニット152a,152b,152cの前方を通過する際の、斜辺166c1と各LEDユニットの距離(隙間G1)が一様になる。その結果、それぞれのLEDユニットの消灯タイミングを揃えることができる。なお、隙間G1は、1〜2mm程度が好ましい。これにより、隣接する一方のブレードの反射面に光源からの光が入射している状態で、光源が仕切り板の直上を通過する直前まで、隣接する他方のブレードの反射面に光源からの光が入射することが防止される。
【0109】
一方、仕切り板166cの斜辺166c2は、光源154と対向する位置で各LEDユニット154a,154bの開口部近傍を通過するように形状が設定されている。また、斜辺166c2は、各LEDユニット154a,154bの前方を通過する際に、各LEDユニット154a,154bの配列方向とほぼ平行となるような形状である。そのため、斜辺166c2が各LEDユニット154a,154bの前方を通過する際の、斜辺166c2と各LEDユニットの距離(隙間G2)が一様になる。その結果、それぞれのLEDユニットの消灯タイミングを揃えることができる。なお、隙間G2は、1〜2mm程度が好ましい。これにより、隣接する一方のブレードの反射面に光源からの光が入射している状態で、光源が仕切り板の直上を通過する直前まで、隣接する他方のブレードの反射面に光源からの光が入射することが防止される。
【0110】
このように、仕切り板166cは、隣接する一方のブレードの反射面に光源からの光が入射している状態で、隣接する他方のブレードの反射面に光源からの光が入射することを抑制することができるため、光源の消灯時間を短縮できる。その結果、光学ユニットしての照射効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0111】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態に係る車両監視装置は、回転リフレクタや共振ミラー等により照射ビームを左右方向(若しくは上下方向)に走査させ、人間の目の残像効果によって車両前方に配光パターンを形成する光学ユニットと、車両前方を撮像するカメラと、を備えている。一般的なカメラの撮像時間はミリ秒やサブミリ秒のため、カメラで撮像した画像には、配光パターンの一部の領域が照射ビームにより照射された状態が記録されることになる。
【0112】
視線誘導標(デリニエータ)や看板など光を反射する反射物は、照射ビームで照射されている場合は明るく輝いた輝点として撮像されるが、照射ビーム位置と異なる位置に存在する場合は明るい輝点としては撮像されない。そこで、撮像タイミング毎に照射ビームの照射位置が異なるように走査速度とカメラの撮像タイミングを設定し、連続するあるいは複数の撮像画像を解析することで、光度が高く変動しない輝点は街灯や前走車の灯具等の自発光体として、光度が大きく変動する輝点は反射物として識別することができる。加えて、光度や距離、色、角度、移動方向、路面線形との位置関係などの情報を加味して車両灯具などの移動体と、街灯など固定物との識別を行うことができる。
【0113】
図30は、第7の実施の形態に係る車両監視装置のブロック図である。
図30に示す車両用前照灯10は、回転リフレクタ26とLED28とを有するランプユニット20と、回転リフレクタ26を回転駆動するモータ1034と、LED28およびモータ1034の制御を行う制御ユニット1036と、を備える。
【0114】
制御ユニット1036は、CPU1038、ROM1040およびRAM1042が配設されているとともに、回転リフレクタ26を回転駆動するモータ1034を制御するモータ制御部1044と、LED28を制御する光源制御部1046とが設けられている。ROM1040には複数の配光制御プログラムが格納され、CPU1038がこれらのプログラムを選択的に実行し、モータ制御部1044と光源制御部1046とに動作指令を出力し、車両前方の配光パターンを制御する。また、制御ユニット1036は自動車の画像処理装置1048と接続されている。画像処理装置1048は、車載カメラ1050の撮像データを解析して、車両前方の路面情報を制御ユニット1036に提供する。
【0115】
本実施の形態に係る車両監視装置は、車両前方に照射ビームを走査して配光パターンを形成するランプユニット20と、車両前方を撮像する車載カメラ1050と、車両前方に反射体が存在するか判定する判定装置とを備えている。また、本実施の形態に係る判定装置は、CPU1038および画像処理装置1048とで構成されており、配光パターンに含まれる一部の領域が照射ビームで照射されているときに車載カメラ1050によって撮像された画像と、一部の領域が照射ビームで照射されていないときに車載カメラ1050カメラで撮像された画像とに基づいて、照射ビームを反射する反射体が一部の領域に存在するか判定する。
【0116】
図31は、配光パターンに含まれる一部の領域(車両前方中央)が照射ビームで照射されている状態を模式的に示した図である。
図32は、配光パターンに含まれる一部の領域(車両前方中央)が照射ビームで照射されていない状態を模式的に示した図である。
図31は、車両が片側1車線(両側2車線)の直線舗装道路を走行している場合において、自車前方を透視的に見て示す図に、車両用前照灯10から照射される光により車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHを重ねて示す図である。また、
図31には、センタラインCL、自車線側ラインMRL、対向車線側ラインORLが図示されている。自車線側ラインMRLは、透視図の消失点であるH−V点(水平線H−H線と鉛直線V−V線との交点)から左下方向に延びており、センタラインCLおよび対向車線側ラインORLは、H−V点から右下方向に延びている。なお、
図31および
図32には、左右の路肩に設けられた複数のデリニエータ600a〜600fが示されている。
【0117】
ロービーム用配光パターンPLは、ロービーム用のランプユニット18からの照射光により形成される。
図31に示すロービーム用配光パターンPLは、交通法規が左側通行の地域において、市街地走行などの走行で対向車や歩行者にグレアを与えないように配慮された配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2、CL3を有している。カットオフラインCL1は、車両用前照灯10のV−V線よりも右側に、対向車線側カットオフラインとして水平方向に延びるようにして形成されている。カットオフラインCL2は、V−V線よりも左側に、自車線側カットオフラインとしてカットオフラインCL1よりも高い位置で水平方向に延びるようにして形成されている。そして、カットオフラインCL3は、カットオフラインCL2におけるV−V線側の端部とカットオフラインCL1のV−V線側の端部とをつなぐ斜めカットオフラインとして形成されている。カットオフラインCL3は、カットオフラインCL1とV−V線との交点から左斜め上方へ45°の傾斜角で延びている。
【0118】
ハイビーム用配光パターンPHは、ハイビーム用のランプユニット20からの照射光により形成される。このハイビーム用配光パターンPHは、ロービーム用配光パターンPLに対して、付加的に形成されるようになっている。
【0119】
図31に示すように、ハイビーム用配光パターンPHの配光領域は、水平方向に長辺を有する略矩形形状である。なお、ハイビーム用配光パターンPHは、前述のように照射ビームを走査することで形成されている。そのため、照射ビームが車両前方中央部を走査しているタイミングで車両前方を撮像すると、光源の投影イメージに対応する領域Iaは照射ビームで照射されているため明るく、その両側の領域Ib、Icは暗くなっている画像が得られる。この画像を解析すると、配光パターンに含まれる一部の領域である車両前方中央部においては、デリニエータ600cおよび600dからの反射光、並びに前走車1052のテールランプTLが輝点として検出される。
【0120】
次に、
図31に示す撮像タイミングとは異なるタイミングで車両前方を撮像すると(
図32参照)、車両前方中央部よりも右方に移動した光源の投影イメージに対応する領域Ia’は照射ビームで照射されているため明るく、その両側の領域Ib’、Ic’は暗くなっている画像が得られる。この画像を解析すると、領域Ib’に含まれている車両前方中央部においては、前走車1052のテールランプTLは輝点として検出されるが、デリニエータ600cおよび600dは、照射ビームにより照射されていないため、明るい輝点としては検出されない。
【0121】
このように、デリニエータは照射ビームにより照射されているか否かによって、画像中に輝点として現れるか否かが決まる。そこで、このような性質を利用して、デリニエータや標識などの反射体と前走車の灯具とを判別する処理について説明する。
【0122】
図33は、本実施の形態に係る反射体の判定処理を示すフローチャートである。運転者の選択や走行環境の状況によってハイビーム用配光パターンによる前方照射が要求されると、車両用前照灯10から出射された照射ビームによる車両前方の走査が開始される(S10)。次に、画像処理装置1048は、車載カメラ1050によって撮像された車両前方の画像データを取得し(S12)、画像処理し(S14)、CPU1038に送信する。CPU1038は、画像処理された画像データに基づいて輝点を抽出する(S16)。CPU1038は、異なるタイミングで撮像した複数の画像データに対しても輝点を抽出し、複数の画像を比較する(S18)。
【0123】
なお、複数の画像には、注目する領域(本実施の形態では車両前方中央部)が照射ビームで照射されている場合の画像と、照射されていない場合の画像とが含まれている。配光パターンに含まれる車両前方中央部が照射ビームで照射されているときにカメラによって撮像された画像からは、前方に存在する前走車1052のテールランプTLだけではなく、照射ビームを反射するデリニエータ600c,600dが検出可能である。一方、車両前方中央部が照射ビームで照射されていないときにカメラで撮像された画像からは、前方に存在する前走車1052のテールランプTLは検出可能であるが、照射ビームで照射されていないデリニエータ600c,600dは検出されない。
【0124】
したがって、一部の領域が照射ビームで照射されているときの画像と、同じく一部の領域が照射ビームで照射されていないときの画像とを比較することで、一部の領域に反射体や自発光体が存在するか否かが判別される。
【0125】
CPU1038は、前述の複数の画像の解析結果に基づいて一部の領域に反射体が存在するか否かを判別する(S20)。具体的には、一部の領域が照射ビームで照射されたときの画像において一部の領域に相当する位置に検出された輝点が、一部の領域が照射ビームで照射されていないときの画像において消失している、あるいは非常に暗い点として検出されている場合、その輝点は反射体であると判定される(S20のYes)。この場合、ハイビーム用配光パターンによる前方照射を続けてもグレアを与える心配がないため、処理を一旦終了する。一方、一部の領域が照射ビームで照射されていないときの画像において、一部の領域に相当する位置に輝点が検出された場合、一部の領域には自発光体が存在すると判定される(S20のNo)。
【0126】
自発光体には前走車のテールランプTLやヘッドランプHL以外に、街灯や照明灯なども存在する。そこで、CPU1038は、自発光体が前走車か否かを判定する(S22)。自発光体が前走車か否かの判定は、輝点の光度や距離、色、角度、移動方向、相対速度、路面線形との位置関係などの情報を加味して行われる。自発光体が前走車でないと判定された場合(S22のNo)、ハイビーム用配光パターンによる前方照射を続けてもグレアを与える心配がないため、処理を一旦終了する。一方、自発光体が前走車であると判定された場合(S22のYes)、ハイビーム用配光パターンによる前方照射を続けると前走車にグレアを与えることになるため、前走車を含む領域を遮光する制御が行われる(S24)。
【0127】
本実施の形態に係る車両監視装置は、上述のように通常のハイビーム用配光パターンを形成しながら前方の反射体を判別することができる。そのため、前方車両を検知するために特別な配光制御をする必要がなく、運転者に違和感を与えることがない。また、本実施の形態に係る車両監視装置は、デリニエータをはじめとする反射体の誤検知を抑制できるため、夜間に前方を走行する車両を精度よく簡易に検出することができる。
【0128】
前述の各実施の形態で説明したように、車両用前照灯10は、LED28を点消灯することでハイビーム用配光パターンの一部を遮光することが可能な構成である。
図34は、ハイビーム用配光パターンの一部を遮光した状態を説明するための図である。
【0129】
図34に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、遮光部Zと、その両側の領域Ib”,Ic”とからなる。本実施の形態に係る車両用前照灯10によれば、前走車にグレアを与えない範囲でハイビーム用配光パターンによる配光制御が可能であり、前方視認性の向上が可能である。
【0130】
次に、水平に走査する照射ビームの照射位置と撮影タイミングについて説明する。
図35は、照射位置と撮影タイミングを説明するために模式的に示した図である。実施の形態に係る光学ユニットは、カメラによる複数回の撮像タイミングのそれぞれにおいて、照射ビームによって照射する領域が異なるように、照射ビームを走査している。つまり、光学ユニットは、車載カメラ1050によるN回目(ここで、Nは自然数)の撮像タイミングにおいて照射ビームによって照射する領域と、前記車載カメラ1050による(N+1)回目の撮像タイミングにおいて照射ビームによって照射する領域とが異なるように、照射ビームを走査している。なお、撮像する画像は必ずしも連続する画像でなくてもよい。また、3〜10コマ程度の画像データを平均化したものを一つの画像として扱ってもよい。
【0131】
図35に示すように、水平に走査する照射ビームの照射位置と撮影タイミングについて、横軸を時間軸にして表示すると、走査周期に対する撮影タイミングのズレ量「E」は、1秒あたりの走査回数を撮影回数で割った余りとなる。なお、
図35は、走査回数7回/秒、撮像回数3回/秒の場合である。この場合、走査周期に対する撮影タイミングのズレ量Eは、7/3の余り1/3となる。
【0132】
図36は、連続する撮像画像において同じ領域を連続して照射することがない条件を説明するために模式的に示した図である。
【0133】
図36に示すように、前回の撮像画像における照射ビームの照射位置を走査領域の左端(
図36におけるゼロ位置)と仮定すると、次の撮像タイミングで照射位置が
図36のFの範囲にあれば、連続する撮像画像において同じ領域を照射することがないことになる。
【0134】
したがって、光学ユニットの走査回数をA[回/s]、走査速度をB[deg/s]、照射ビームの幅をC[deg]とし、カメラの撮像回数をD[回/s]とすると以下の式(1)を満たす場合、最新の撮像画像と直前の撮像画像とで照射ビームの照射範囲が一致しないことになる。
C≦(A/Dの少数部分)×(B/A)≦(B/A)−C・・・式(1)
【0135】
ここで、走査回数Aは、60〜1000[回/s]程度が好ましい。また、走査速度Bは、10〜60[deg/s]程度が好ましい。また、照射ビームの幅Cは、1〜5[deg]程度が好ましい。また、カメラの撮像回数Dは、10〜60[回/s]程度が好ましい。これにより、ある領域が照射ビームで照射されているときの画像と照射されていないときの画像を撮像することができる。
【0136】
なお、M枚連続で同じ位置を照射しない条件としては、例えば、以下の式(2)を満たすとよい。
C/(N−1)≦(A/Dの少数部分)×(B/A)≦(B/A)−C(N−1)・・・式(2)
【0137】
(第8の実施の形態)
上述の各実施の形態では、光学ユニットとして回転リフレクタを例に説明したが、共振ミラーを用いてもよい。以下、本実施の形態を図面に基づいて説明する。
図37は、第8の実施の形態に係る車両用前照灯の全体的な構成を示した概略構成図である。
図38は、ミラーユニットと光源ユニットを示した斜視図である。
図39は、光源と成形用光学系とミラーの組合せを模式的に示した図である。なお、上述の実施の形態と同様の構成については、同一の符号は付し説明を適宜省略する。
【0138】
図37に示すように、第8の実施の形態に係る車両用前照灯110は、車体の前部に設置されるハウジング1060を備えている。ハウジング1060の前面は透光カバー1062で覆われ、ハウジング1060の中央部にミラーユニット1064が設置されている。ミラーユニット1064のベース1066は傾斜した状態でブラケット1068によりハウジング1060に取り付けられ、ベース1066と透光カバー1062との間にエクステンション1070が配設されている。ミラーユニット1064の下側において、ハウジング1060の底壁部には光源ユニット1072と制御ユニット1036とが設置されている。光源ユニット1072の設置部位は、図示例に限定されず、ハウジング1060の側壁部とすることもできる。
【0139】
制御ユニット1036は、CPU1038、ROM1040およびRAM1042とが配設されるとともに、ミラーユニット1064の走査用アクチュエータ1074(
図38参照)を制御するアクチュエータ制御部1076と、光源ユニット1072の光源1078を制御する光源制御部1046とが設けられている。ROM1040には複数の配光制御プログラムが格納され、CPU1038がこれらのプログラムを選択的に実行し、アクチュエータ制御部1076と光源制御部1046とに動作指令を出力し、車両前方の配光パターンを制御する。また、制御ユニット1036は自動車の画像処理装置1048と接続されている。画像処理装置1048は、車載カメラ1050の撮像データを解析して、車両前方の路面情報を制御ユニット1036に提供する。
【0140】
図38に示すように、ミラーユニット1064のベース1066は開口部1080の内側に回動体1082を備え、回動体1082の表面にミラー1084ミラー1084がメッキまたは蒸着等の手段で被着されている。回動体1082は垂直方向のトーションバー1086でベース1066に対し左右へ回動可能に支持され、ベース1066の左右にトーションバー1086と直交する磁界を形成する永久磁石1088が配設されている。回動体1082にはコイル1090が配線され、端子部1092を介して制御ユニット1036に接続されている。そして、永久磁石1088とコイル1090が走査用アクチュエータ1074を構成し、アクチュエータ制御部1076がコイル1090に流れる駆動電流の大きさと向きを制御し、回動体1082がミラー1084と一体に垂直軸線(O)の周りで往復回動するようになっている。
【0141】
光源ユニット1072は、ケーシング1094(
図37参照)の下部に光源1078を備え、ケーシング1094の上部に成形用光学系としての平凸レンズ1096を備えている。光源1078は複数の発光素子1098からなり、発光素子1098が光源基板1100上に配列され、光源基板1100の下面に発光素子1098を冷却するヒートシンク1102が設けられている。発光素子1098には拡散光DRを放射するLEDが用いられ、複数のLEDが所定の素子配列で光源基板1100上に並べられている。そして、平凸レンズ1096が光源1078からの光をミラー1084の大きさに合わせて成形して、ミラー1084に入れるようになっている。したがって、複数の発光素子1098の光を有効に利用して、ミラー1084の反射光を明るくすることができる。
【0142】
この実施例の車両用前照灯110では、成形用光学系に平凸レンズ1096を使用しているので、
図39に示すように、光源1078の出射光(LEDの拡散光DR)が平凸レンズ1096で成形された後に、平行光PRとしてミラー1084に入る。このため、ミラー1084は平行光をそのまま反射し、反射光RRを車両前方で直接走査できる。したがって、ミラー1084の前方から投影レンズ等の集光用光学系を省き、車両用前照灯110の光学系部品の数を削減できる。また、集光用光学系の制限を受けることなく、ミラー1084を大きな角度で回動し、車両前方を広範囲にスキャンできる利点もある。
【0143】
(第9の実施の形態)
第7の実施の形態では、左右の車両用前照灯10のうち一方に備えられた一つの回転リフレクタを用いた車両監視装置について説明したが、本発明は必ずしもこの組合せに限られるものではない。本実施の形態では、左右の車両用前照灯10のそれぞれのランプユニット20に備えられた複数の回転リフレクタ26を用いた車両監視装置について説明する。なお、本実施の形態において、前述の各実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0144】
一般的な車両は、車両用前照灯10を左右一対備えている。そこで、本実施の形態では、左右の車両用前照灯10が備える2つの光学ユニットの照射ビームによって形成される配光パターンを撮像する場合について説明する。
【0145】
本実施の形態に係る車両監視装置は、車両前方に照射ビームを走査して配光パターンを形成する2つのランプユニット20と、車両前方を撮像する車載カメラ1050と、車両前方に反射体が存在するか判定する判定装置とを備えている。2つのランプユニット20は、車両の左右に設けられた前述の車両用前照灯10のそれぞれに内蔵されている。また、本実施の形態に係る判定装置は、CPU1038および画像処理装置1048とで構成されており、配光パターンに含まれる一部の領域が照射ビームで照射されているときに車載カメラ1050によって撮像された画像と、一部の領域が照射ビームで照射されていないときに車載カメラ1050で撮像された画像とに基づいて、照射ビームを反射する反射体が一部の領域に存在するか判定する。
【0146】
図40は、配光パターンに含まれる一部の領域が2つの照射ビームで照射されている状態を模式的に示した図である。
図40では、あるタイミングにおいて、右側の車両用前照灯10が備える第1の光学ユニットの照射領域をS1、左側の車両用前照灯10が備える第2の光学ユニットの照射領域をS2としている。本実施の形態に係る車両監視装置は、車載カメラ1050による複数の撮像タイミングにおいて、配光パターンの中の照射領域が変化するように、各光学ユニット(回転リフレクタ26)を駆動している。換言すると、本実施の形態に係る車両監視装置は、車載カメラ1050による各撮像タイミングにおいて、配光パターンの中の照射領域が同じにならないように、回転リフレクタ26を駆動している。
【0147】
各撮像タイミングにおいて、配光パターンを形成する照射ビームの照射領域が変わらない条件は、以下に説明する2つのケースが考えられる。はじめに、
図40に示すケース1では、2つの回転リフレクタ26のそれぞれの照射ビームの照射領域が各撮像タイミングで変化しない場合である。つまり、
図40に示すケース1では、右側の車両用前照灯10が備える第1の回転リフレクタの照射領域であるS1と、左側の車両用前照灯10が備える第2の回転リフレクタの照射領域であるS2は、共に各撮像タイミング(1コマ目〜4コマ目)でその位置が変化していない。
【0148】
このようになる条件は、各回転リフレクタの走査周波数がカメラの撮像周波数の整数倍となる場合である。より詳述すると、第1の回転リフレクタの走査回数(走査周波数)をA1(回/s)、第2の回転リフレクタの走査回数(走査周波数)をA2(回/s)、車載カメラ1050の撮像回数(撮像周波数)をD(回/s)、m,nを自然数とすると、
mD=A1、nD=A2を満たす場合である。
【0149】
次に、
図40に示すケース2は、各回転リフレクタによる照射ビームの照射領域は撮像タイミング毎に変化するが、2つの回転リフレクタによる照射ビームを合成した照射領域(S1+S2)が見かけ上変化しない場合である。つまり、
図40に示すケース2では、車載カメラ1050が撮像する1コマ目(3コマ目)における、第1の回転リフレクタによる照射ビームの照射領域はS1であり、第2の回転リフレクタによる照射ビームの照射領域はS2となっている。そして、車載カメラ1050が撮像する2コマ目(4コマ目)における、第1の回転リフレクタによる照射ビームの照射領域S1’は、車載カメラ1050が撮像した1コマ目(3コマ目)における、第2の回転リフレクタによる照射ビームの照射領域S2と同じである。同様に、車載カメラ1050が撮像する2コマ目(4コマ目)における、第2の回転リフレクタによる照射ビームの照射領域S2’は、車載カメラ1050が撮像した1コマ目(3コマ目)における、第1の回転リフレクタによる照射ビームの照射領域S1と同じである。したがって、ケース2では、2つの回転リフレクタによる照射ビームを合成した照射領域(S1+S2)が各撮像タイミング(1コマ目〜4コマ目)で見かけ上変化しない。
【0150】
このようになる条件は、各回転リフレクタの走査周波数がカメラの撮像周波数の(整数+0.5)倍であり、各回転リフレクタによる照射ビームの位相が互いに半周期ずれている場合である。より詳述すると、第1の回転リフレクタの走査回数(走査周波数)をA1(回/s)、第2の回転リフレクタの走査回数(走査周波数)をA2(回/s)、車載カメラ1050の撮像回数(撮像周波数)をD(回/s)、m,nを自然数とすると、
(m+0.5)D=A1、(n+0.5)D=A2を満たす場合である。
【0151】
本実施の形態に係る車両監視装置は、各回転リフレクタの照射ビームによる走査がケース1やケース2の条件を満たさないように各回転リフレクタを回転駆動する必要がある。すなわち、車両監視装置は、第1の光学ユニットの走査回数をA1(回/s)、第2の光学ユニットの走査回数をA2(回/s)、車載カメラ1050の撮像回数をD(回/s)、m,nを自然数とすると、下記式(ex.1)、(ex.2)
mD<A1<(m+0.5)Dまたは(m+0.5)D<A1<(m+1)D・・・(ex.1)
nD<A2<(n+0.5)Dまたは(n+0.5)D<A2<(n+1)D・・・(ex.2)
を満たすように回転リフレクタを制御する。
【0152】
なお、走査回数A1および走査回数A2が、撮像回数Dの整数倍または[整数+0.5]倍に近すぎると、撮像タイミング毎の照射領域の移動が小さくなる。そのため、配光パターンの全ての領域を、照射された状態で一通り撮像するまでに必要な時間が長くなり、車両監視装置としての応答性や検出精度の更なる向上が求められる場合も考えられる。このような場合、走査回数A1および走査回数A2が、撮像回数Dの整数倍または[整数+0.5]倍からある程度離れた値であることが望ましい。
【0153】
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、車両監視装置は、下記式(ex.3)、(ex.4)を満たすように回転リフレクタを制御することが好ましいことを見いだした。
(m+0.1)D<A1<(m+0.4)Dまたは(m+0.6)D<A1<(m+0.9)D・・・(ex.3)
(n+0.1)D<A2<(n+0.4)Dまたは(n+0.6)D<A2<(n+0.9)D・・・(ex.4)
【0154】
本実施の形態に係る車両監視装置は、上述の式(ex.3)、(ex.4)を満たすように、回転リフレクタ26の回転や撮像タイミングを制御することで応答性や検出精度を向上することができる。
【0155】
なお、本実施の形態に係る車両監視装置の回転リフレクタの駆動は、前述のDCブラシレスモータを用いるとよい。DCブラシレスモータは、回転タイミング情報を出力できる。そのため、例えば、前述の制御ユニット1036は、検出した回転タイミングの情報に基づいて回転速度を算出し、モータ制御部1044の出力信号(出力電圧)を調整することで、モータ1034の回転速度、ひいては回転リフレクタ26の回転速度を制御することができる。
【0156】
したがって、車両監視装置は、このような制御ユニット1036を備えることで、回転リフレクタ26の回転速度を、車載カメラ1050の撮像タイミングを考慮した適切な値に簡便に変化させることができる。
【0157】
(第10の実施の形態)
従来、ミリ波などの非可視光を用いたレーダは、複数の受信アンテナを備え、スイッチやデジタル信号処理により受信アンテナを順次選択することで、得られたそれぞれの受信信号によって障害物の方位や距離を検出する方式が一般的である。しかしながら、このような複数の受信アンテナを備える非可視光レーダは、装置の小型化には限界があるため、設置する場所が限られている。
【0158】
本発明者は、このような問題を認識し鋭意検討した結果、ある障害物検出装置の構成に想到した。この障害物検出装置は、非可視光レーダから発信した非可視光を、回転リフレクタを用いて反射することで周囲を走査し、障害物を検出することができる。この場合、受信アンテナを複数設けていなくても、受信信号の波形とその受信信号を検出したタイミングで走査している領域とがわかれば、障害物の方位や距離等を演算することも可能である。
【0159】
このような非可視光レーダは、種々の波長域の電磁波を用いることができるが、以下では、ミリ波を用いたミリ波レーダを例に説明する。なお、ミリ波の波長は、国や用途によって様々な規格が存在しており、特に限定されるものではない。例えば、47GHz帯(46.7〜46.9GHz)、60GHz帯(59〜66GHzまたは63〜64GHz)、76GHz帯(76〜77GHz)、94GHz帯(94.7〜95.7GHz)、139GHz帯(139〜140GHz)などのミリ波を用いることができる。
【0160】
なお、本実施の形態に係る障害物検出装置は、車両用灯具が備える光学ユニットとしての機能を兼ね備えることも可能である。つまり、上述の各実施の形態の光学ユニットを用いて障害物検出装置を構成することができる。
図41は、第10の実施の形態に係る障害物検出装置を模式的に示した上面図である。本実施の形態に係る障害物検出装置2100は、ミリ波レーダ2102と、ミリ波レーダ2102から発信したミリ波を反射しながら回転軸Rを中心に一方向に回転する回転リフレクタ26と、回転リフレクタ26で反射されたミリ波を集束して周囲へ投影する投影レンズ130と、を備える。回転リフレクタ26は、回転しながら反射したミリ波によって周囲を走査するよう反射面が設けられている。
【0161】
ミリ波レーダ2102は、ミリ波レーダ用のモノシリックミリ波集積回路(MMIC:以下「ミリ波集積回路」という)2104と、ミリ波集積回路2104に接続されている導波管2106とを有する。ミリ波集積回路2104は、波長1〜10ミリメートル、周波数30〜300GHzの範囲にある所定のミリ波を発信する。導波管2106は、光源であるLED28a,28bを搭載したヒートシンク2108の中央部を貫通するように設けられている。つまり、本実施の形態においては、ミリ波レーダ2102と光源とがユニット化されている。また、導波管2106は、発信部と受信部を兼ねている。
【0162】
発信されたミリ波は、導波管2106を介して回転リフレクタ26に向かい、ブレード26aで反射される。ブレード26aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸と反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。そのため、ブレード26aで反射されるミリ波は、回転リフレクタ26の回転により投影レンズ130に向かう方向が変化する。投影レンズ130に入射したミリ波は屈折され集束されることで指向性が高まる。集束されたミリ波は、投影レンズ130の前方を照射ビームの状態で走査する。
【0163】
したがって、本実施の形態に係る障害物検出装置2100は、回転リフレクタ26の働きによりミリ波によって周囲を走査できるため、ミリ波レーダ2102の構成を簡易にすることができる。また、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、投影レンズ130の直径とほぼ同じ直径であり、ブレード26aの面積もそれに応じて大きくすることが可能であるため、指向性が弱く広がりのあるミリ波を効率よく反射させることができる。
【0164】
また、従来の車載ミリ波レーダは、その性能を十分に発揮するために車両前部のフロントグリル近傍に配置することが多かった。しかしながら、本実施の形態に係る障害物検出装置2100においては、ミリ波レーダ2102から発信したミリ波を回転リフレクタ26で反射し、反射されたミリ波によって投影レンズ130を介して周囲を走査する。この場合、見かけ上、投影レンズ130はレーダのアンテナとして機能する。そのため、ミリ波レーダ2102を装置の最外部に配置する必要がなく、ミリ波レーダ2102のミリ波の出射方向も直接走査範囲に向ける必要もない。そのため、ミリ波レーダ2102を配置する場所の自由度が増し、ひいては障害物検出装置を適した場所に配置することが可能となる。ここで、周囲とは、障害物検出装置2100が設置される場所の周囲である。本実施の形態のように、障害物検出装置2100を車両に設置する場合、車両の前方や後方、側方などが周囲に含まれる。
【0165】
本実施の形態に係る障害物検出装置2100は、半導体発光素子であるLED28a,28bを更に備えている。前述の実施の形態で説明したように、回転リフレクタ26は、LED28,28bから出射した光を回転しながら反射して所望の配光パターンを車両前方に形成するよう反射面が形成されている。また、投影レンズ130は、回転リフレクタ26で反射された光を光照射方向に投影する。これにより、ミリ波による走査と配光パターンの形成を回転リフレクタ26の働きで実現することができる。つまり、障害物検出装置2100と車両用前照灯10とが一体化される。
【0166】
次に、
図42(a)は、投影レンズがポリカーボネートで形成されている場合のミリ波の焦点距離および可視光の焦点距離を模式的に示した図、
図42(b)は、投影レンズがアクリルで形成されている場合のミリ波の焦点距離および可視光の焦点距離を模式的に示した図である。
【0167】
図42(a)、
図42(b)に示すように、同じ投影レンズであっても、ミリ波と可視光では波長が異なるため、焦点距離が異なる。そこで、LED28,28bは、回転リフレクタ26により形成されるLEDの虚像位置(2次光源位置)が、投影レンズ130の可視光焦点近傍となるように設けられている。また、ミリ波レーダ2102は、回転リフレクタ26により形成されるLEDの虚像位置(2次光源位置)が、可視光焦点とは異なる投影レンズ130のミリ波焦点近傍に設けられている。これにより、ミリ波レーダ2102とLED28,28bが干渉せずに、それぞれに適した焦点位置に配置することできる。
【0168】
また、一般的な樹脂材料の場合、可視光焦点よりミリ波焦点の方が短くなる傾向がある。そこで、
図41に示す本実施の形態に係る障害物検出装置2100において、導波管2106の先端部は、LED28,28bよりも投影レンズ130に近い位置になるように設けられている。換言すれば、導波管2106は、その先端部の回転リフレクタ26により形成される虚像位置(2次光源位置)が、可視光焦点よりも投影レンズに近い位置になるように設けられている。これにより、例えば、ミリ波レーダ2102のミリ波集積回路2104をLED28,28bよりも投影レンズ130から離して配置することができる。その結果、LED28,28bから投影レンズ130へ向かう光をミリ波集積回路2104が遮光することが防止される。
【0169】
本実施の形態に係る投影レンズ130は、樹脂材料で構成されている。投影レンズを樹脂材料で形成することで障害物検出装置の軽量化が図られる。特に、光源にLEDなどの半導体発光素子を用いる場合、発熱量が従来の白熱灯や放電灯タイプの光源と比べて少ないため、耐熱性の低い樹脂材料を用いることも可能となり、コストの低減も図られる。なお、ミリ波および可視光を効率よく透過させる材料であれば、投影レンズの材質は特に限定されない。
【0170】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0171】
例えば、上述の実施の形態に係る車両用前照灯10において、回転リフレクタ26の3枚のブレードを赤、緑、青で着色し、混色により白色照射光を形成してもよい。この場合、LED28の光が表面の色が異なる各ブレードで反射される時間の比率を制御することで、照射光の色を変えることができる。なお、ブレード表面の着色は、例えば、蒸着によりトップコート層を形成することで実現される。
【0172】
また、車両用前照灯10は、回転リフレクタ26を回転させずに任意の角度で停止させることで、最大光度が非常に高いスポット光を所望の位置に形成することができる。これにより、特定の障害物(人を含む)を明るいスポット光で照射することで注意喚起を促すことが可能となる。
【0173】
また、
図41に示したミリ波レーダ2102では、導波管2106は、発信部と受信部とを兼ねている。
図43は、変形例に係るミリ波レーダの模式図である。
図43に示すように、変形例に係るミリ波レーダ2202は、発信用の導波管2106aと、受信用の導波管2106bが別々に設けられている。
【0174】
また、
図1に示したランプユニット20では、回転リフレクタ26は、LED28の光を回転部26bよりも凸レンズ30に近い側のブレードで反射するように配置されている。
図29は、変形例に係る回転リフレクタの配置を示す図である。
図29に示すように、変形例に係る回転リフレクタ26は、LED28の光を回転部26bよりも凸レンズ30から遠い側のブレードで反射するように配置されている。したがって、
図19に示すように、回転リフレクタ26を凸レンズ30により近付けて配置することが可能となり、ランプユニットの奥行き(車両前後方向)をコンパクトにできる。
【0175】
なお、上述の実施の形態で用いられる非球面レンズは、必ずしも歪んだ像を補正するものである必要はなく、歪んだ像を補正しないものであってもよい。
【0176】
上述の各実施の形態では、光学ユニットを車両用灯具に適用した場合について説明したが、必ずしもこの分野への適用に限らない。例えば、種々の配光パターンを切り替えて照明を行う舞台や娯楽施設における照明器具に適用してもよい。従来、このような分野の照明器具は、照明方向を変えるための大掛かりな駆動機構が必要あったが、本実施の形態に係る光学ユニットであれば、回転リフレクタの回転と光源の点消灯で様々な配光パターンを形成できるため、大掛かりな駆動機構が不要であり、小型化が可能である。
【0177】
また、上述の第6の実施の形態に係る光学ユニットでは、複数の光源を光軸の前後方向に配置しているが、複数の光源を光軸の上下方向に配置してもよい。これにより、光源の光による上下方向への走査も可能となる。