(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382321
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】密閉温度被制御部を備えた炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/04 20060101AFI20180820BHJP
F27B 9/26 20060101ALI20180820BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20180820BHJP
F27B 9/18 20060101ALI20180820BHJP
F27B 9/10 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
F27B9/04
F27B9/26
F27D3/12 C
F27B9/18 Z
F27B9/10
【請求項の数】25
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-544762(P2016-544762)
(86)(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公表番号】特表2016-536558(P2016-536558A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014070582
(87)【国際公開番号】WO2015044322
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年3月31日
(31)【優先権主張番号】1317194.7
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516089902
【氏名又は名称】エーディーピーヴィー シーアイジーエス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エブナー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ バーナード
(72)【発明者】
【氏名】スプリッツェンバーガー アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】ケイム ウーヴェ
【審査官】
市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−036488(JP,A)
【文献】
特開平11−118357(JP,A)
【文献】
特開2003−329372(JP,A)
【文献】
特開平11−281259(JP,A)
【文献】
特開昭61−149781(JP,A)
【文献】
特表2013−501908(JP,A)
【文献】
特開2010−216737(JP,A)
【文献】
特表2016−536557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00−9/40
F27D 3/00−5/00
F27D 7/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基体(102)の温度を制御する炉であって、
取入口(103)と取出口(104)とを備えたハウジング(100)であって、前記取入口(103)と前記取出口(104)との間には温度被制御部(105)が形成されている、ハウジング(100)と、
前記少なくとも1つの基体(102)を担持する担持要素(120)を少なくとも1つ備えた担持要素構造であって、第1端と第2端とを備えた担持要素構造であり、前記第1端が前記取入口(103)内に、前記第2端が前記取出口(104)内にそれぞれ位置しているように、前記ハウジング(100)内に形成されており、かつ配置可能である、担持要素構造と、を備え、
前記第1端が、前記取入口(103)との間にすきまばめを構成し、前記第2端が、前記取出口(104)との間にすきまばめを構成する、炉。
【請求項2】
前記少なくとも1つの担持要素(120)は、第1縁部(121)と、第2縁部(122)と、内部に前記基体(102)が担持可能な凹部(123)とを備えていて、
前記凹部(123)は、搬送方向(101)に沿って前記第1縁部(121)と前記第2縁部(122)との間に形成されており、
前記第1縁部は前記担持要素構造の前記第1端を構成している、請求項1記載の炉。
【請求項3】
前記第2縁部(122)は前記担持要素構造の前記第2端を構成している、請求項2記載の炉。
【請求項4】
前記担持要素構造は、別の基体(102)を少なくとも1つ担持する別の担持要素を備えていて、
前記別の担持要素は、別の第1縁部と、別の第2縁部と、内部に前記別の基体(102)が担持可能な別の凹部とを備えており、
前記別の第2縁部は前記担持要素構造の前記第2端を構成している、請求項1記載の炉。
【請求項5】
前記ハウジング(100)は別の取出口(113)と別の温度被制御部(114)とを備えていて、
前記別の温度被制御部(114)は、前記取出口(104)と前記別の取出口(113)との間に形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の炉。
【請求項6】
別の基体(102)を少なくとも1つ担持する別の担持要素(140)を少なくとも1つ備えた別の担持要素構造をさらに備えていて、
前記別の担持要素構造は別の第1端と別の第2端とを備えており、
前記別の担持要素構造は、前記別の第1端が前記取出口(104)内に、前記別の第2端が前記別の取出口(113)内にそれぞれ位置しているように、前記ハウジング(100)内に形成されており、かつ配置可能である、請求項5記載の炉。
【請求項7】
前記担持要素構造は、前記取入口(103)を通って前記温度被制御部(105)内に入り、前記温度被制御部(105)から前記取出口(104)へと通過する前記搬送方向(101)に沿って可動である、請求項2又は3に記載の炉。
【請求項8】
前記担持要素構造に、前記担持要素構造に駆動力を伝達して、前記担持要素構造を前記搬送方向(101)に沿って駆動するように連結されている、力伝達要素(130)をさらに備えていて、
前記力伝達要素(130)は前記搬送方向(101)に沿って可動である、請求項2又は3に記載の炉。
【請求項9】
前記力伝達要素(130)は、別の基体(102)を少なくとも1つ担持する別の担持要素(140)を少なくとも1つ備えた、別の担持要素構造である、請求項8記載の炉。
【請求項10】
前記力伝達要素(130)は、前記駆動力が前記力伝達要素(130)から前記担持要素構造に伝達可能な押出力であるように、前記担持要素構造に連結されている、請求項8または9に記載の炉。
【請求項11】
前記力伝達要素(130)は、前記駆動力が前記力伝達要素(130)から前記担持要素構造に伝達可能な引張力であるように、前記担持要素構造に連結されている、請求項8から10のいずれか1項に記載の炉。
【請求項12】
前記力伝達要素(130)は、形状はめ接続によって、前記担持要素構造に連結されている、請求項8から11のいずれか1項に記載の炉。
【請求項13】
前記ハウジング(100)の外部に配置されている駆動装置(150)をさらに備えていて、
前記力伝達要素(130)は、前記駆動力が前記駆動装置(150)から前記力伝達要素(130)を介して前記担持要素構造に伝達されるように、前記駆動装置(150)に連結されている、請求項8から12のいずれか1項に記載の炉。
【請求項14】
前記ハウジング(100)は、前記担持要素(120)を、前記ハウジング内を通るように案内する案内システムを備えていて、
前記担持要素(120)は、前記担持要素(120)が前記搬送方向(101)に沿って案内可能であるように、前記案内システムに連結されている、請求項2,3,7から13のいずれか1項に記載の炉。
【請求項15】
前記温度被制御部(105)に熱的に結合されていて、前記温度被制御部(105)の温度を制御する温度制御要素(106)をさらに備えており、
前記温度被制御部(105)は、ガス(110)が、前記温度被制御部(105)の温度を制御するために吹き込み可能であるガス注入口(108)を備えている、請求項2,3,7から14のいずれか1項に記載の炉。
【請求項16】
前記温度制御要素(106)は、前記温度被制御部(105)内に、前記温度制御要素(106)の温度を制御して、前記基体(102)に熱を対流で運ぶかまたは前記基体(102)から熱を逃がすために、前記ガス(110)が前記温度制御要素(106)に向かって、または前記温度制御要素(106)内を貫通して流動可能であるように配置されている、請求項15記載の炉。
【請求項17】
前記ガス注入口(108)は、前記ガス(110)が、前記基体(102)が浮揚可能になるように、前記基体(102)に向かって流動可能であるようにして形成されている、請求項15または16に記載の炉。
【請求項18】
前記ガス注入口(108)は、前記ガス(110)が、前記搬送方向(101)に対して並行または垂直な成分を備えた気流方向で、前記基体(102)に向かって吹き込み可能であるようにして、前記温度被制御部(105)内に配置されている、請求項15から17のいずれか1項に記載の炉。
【請求項19】
前記温度被制御部(105)内に配置され、前記温度被制御部(105)の温度を制御する別の温度制御要素(107)をさらに備えており、
前記別の温度制御要素(107)は、前記温度制御要素(106)に対して、前記基体(102)を前記搬送方向(101)に沿って前記取入口(103)と前記取出口(104)との間を移動させている時に、前記基体(102)が前記温度制御要素(106)と前記別の温度制御要素(107)との間にある領域を通過するようにして配置されている、請求項15から18のいずれか1項に記載の炉。
【請求項20】
前記担持要素(120)は、少なくとも1つの基体(102)が配置可能な担持底部(124)を備えていて、
前記担持底部(124)は、中を通る前記ガス(110)が前記少なくとも1つの基体(102)に向かって流動可能な流路を備えている、請求項15から19のいずれか1項に記載の炉。
【請求項21】
前記温度被制御部(105)は、前記温度被制御部(105)から前記ガス(110)を排出するガス排出口(109)を備えている、請求項15から20のいずれか1項に記載の炉。
【請求項22】
前記取入口(103)と前記取出口(104)のうちの少なくとも1つは、バリアガス(118)が、前記温度被制御部(105)の周囲環境から、または前記温度被制御部(105)に隣接する部から前記温度被制御部(105)を遮断するために、ガスによる障壁を生成するように注入可能である、別のガス注入口(111)を備えている、請求項1から19のいずれか1項に記載の炉。
【請求項23】
炉によって少なくとも1つの基体(102)の温度を制御する方法であって、
前記少なくとも1つの基体(102)を担持する担持要素(120)を少なくとも1つ備えた担持要素構造を、前記炉のハウジング(100)内に、前記担持要素構造の第1端が前記ハウジング(100)の取入口(103)内に、前記担持要素構造の第2端が前記ハウジング(100)の取出口(104)内にそれぞれ位置し、かつ前記第1端と前記取入口(103)との間にすきまばめを構成し、前記第2端と前記取出口(104)との間にすきまばめを構成するように配置する、方法。
【請求項24】
前記炉は、連続炉である、請求項1から22のいずれか1項に記載の炉。
【請求項25】
前記形状はめ接続は、蟻継ぎ接続である、請求項12に記載の炉。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、基体を担持する担持要素を備えていて、担持要素は、第1縁部と、第2縁部と、内部に基体が担持可能な凹部を備えている、炉、特に連続炉に関する。さらに、本発明は、基体の温度を炉によって制御する方法に関する。
[発明の背景]
大容量の炉を提供するためには、トンネル炉や連続炉が使用される。連続炉とは連続的に処理を行う炉であり、この炉において、加熱される材料、例えば金属材料は入口で炉内に供給され、炉の加熱部を通過して、最終的に出口を抜けて取り出される。
【0002】
一般的に、連続炉は、加熱される材料の搬送方向に沿って順次配置されている数個の温度被制御部を備えている。例えば、連続炉は、材料の搬送方向に沿って順次配置されている予熱区間、焼成区間、及び冷却区間を備えている。
【0003】
材料を連続炉内を通過させて搬送するためには、材料を、材料が搬送方向に沿って転動する炉のローラ上で支持する。具体的には、材料を炉内において搬送方向に沿って搬送するために、ローラを例えば駆動ベルトによって駆動する。
【0004】
材料を加熱区間内で加熱するには、加熱ガスをそれぞれの加熱区間内に注入する。連続炉の設計、すなわち入口と出口の設計に起因して、加熱ガスを炉の周囲環境から分離することは複雑で手間がかかる。したがって、連続炉の温度制御を正確に行うこと、そして連続炉のエネルギー効率が良いことが求められている。
[発明の目的及び概要]
本発明の目的は、炉と炉の周囲環境との適切な分離を提供することであり得る。
【0005】
この目的は、独立請求項に係る、基体の温度を制御する炉、特に連続炉によって、及び、基体の温度を炉で制御する方法によって、解決可能である。
本発明の第1の態様によれば、基体の温度を制御する炉、特に連続炉が提示されている。炉はハウジングを備えている。ハウジングは取入口と取出口とを備えていて、取入口と取出口との間には温度被制御部が形成されている。炉はさらに、基体を担持する担持要素を少なくとも1つ備えた担持要素構造を備えている。担持要素構造は第1端と第2端とを備えており、ここで担持要素構造は、第1端が取入口内に、第2端が取出口内にそれぞれ位置しているように、ハウジング内に形成されており、かつ配置可能である。
【0006】
本発明のさらなる態様によれば、炉によって基体の温度を制御する方法が提示されている。本方法によれば、基体を担持する担持要素を少なくとも1つ備えた担持要素構造を、炉のハウジング内に、担持要素構造の第1端がハウジングの取入口内に、担持要素構造の第2端がハウジングの取出口内にそれぞれ位置しているように配置する。
【0007】
炉は、取入口と取出口とを備えたハウジングを備えている。取入口と取出口との間には温度被制御部が形成されている。温度被制御部は、温度被制御部内部を所望の温度にすることによって基体の温度を制御するために、温度制御(例えば加熱または冷却)が行われてもよい。ハウジングはトンネル形に形成されていてもよく、加熱及び/または冷却処理中にはこのトンネル内を、基体が搬送される。温度被制御部の容積を、ハウジングを取り囲む環境から分離するために、ハウジングは断熱材料でできていてもよい。
【0008】
ハウジングは1つまたは複数の温度被制御部を備えていてもよい。各温度被制御部は搬送方向に沿って順次配置されていてもよく、この方向で、基体がハウジング内を通過するように搬送される。各温度被制御部は、それぞれの取入口及び取出口を備えていてもよい。さらに、各温度被制御部は所望の温度を有していてもよく、これにより、基体を、各温度被制御部内で所望の温度で温度制御(つまり加熱または冷却)してもよい。例えば、搬送方向に沿って、第1温度被制御部は予熱区間であってもよく、後続の別の温度被制御部は加熱部であってもよく、ここでは例えば基体の最高温度に到達する。そして、後続の温度被制御部は冷却区間であってもよく、ここでは加熱された基体を所望の温度勾配(時間当たりの温度、例えばT/s)で冷却してもよい。
【0009】
加熱される基体は、例えばセラミック部材または金属部材であってもよい。金属部材は特に金属板であってもよい。例えば、金属板は所望の合金材料、例えばアルミニウム、シリコーン、または他の所望の合金材料でプレコートされていてもよい。
【0010】
温度被制御部は、例えば摂氏200°Cから1000°C、特に摂氏2100°Cまでの間で加熱してもよい。
担持要素構造とそれぞれの担持要素は、ハウジングを通過するように可動である。担持要素は、少なくとも1つの基体が載置されている担持部を備えている。担持要素は例えば矩形、円形、及び/または杯状の形状であってもよい。担持要素はセラミック材料等の耐高温材料でできていてもよい。さらに、担持要素は平坦な底部を備えていてもよく、この底部によって担持要素はハウジングの底部上に接触している。例えば、底部は、担持要素が底部に沿って摺動するように担持要素の底部とハウジングの底部との間の摩擦を小さくするために、粗さが小さく形成されている。別の実施形態では、担持要素は、担持要素とハウジングの底部との間の摩擦を小さくするために、自身の底部にローラを備えていてもよい。
【0011】
したがって、本発明が用いる手法により、ハウジング、特に温度被制御部を適切に分離することが可能になる。その理由は、担持要素構造の少なくとも1つの担持要素の凹部が温度被制御部内に位置している場合、担持要素構造の第1端と第2端は対応する取入口と取出口にそれぞれ位置しているからである。第1端が取入口内に、第2端が取出口内にそれぞれ位置している場合、担持要素構造の第1端,第2端とそれぞれに対応する取入口,取出口との間の寸法及び隙間が小さくなるので、そこを通るガスが温度被制御部から周囲環境へと流れ得る流量が低減する。
【0012】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの担持要素は、第1縁部と、第2縁部と、内部に少なくとも1つの基体が担持可能な凹部とを備えている。凹部は、搬送方向に沿って第1縁部と第2縁部との間に形成されており、第1縁部は担持要素構造の第1端を構成している。
【0013】
別の実施形態によれば、第2縁部は担持要素構造の第2端を構成している。よって、担持要素は、第1縁部は取入口内に、第2縁部は取出口内に、そして凹部は温度被制御部内にそれぞれ位置するように、ハウジング内に形成されていてもよく、かつ配置可能であってもよい。
【0014】
担持要素構造の少なくとも1つの担持要素は、内部に基体または複数の基体が担持されている担持要素の凹部が炉の温度被制御部内に位置している場合に、第1縁部、例えば第1端が取入口内に、第2縁部、例えば第2端が取出口内に位置しているようにして、設計・形成されている。第1縁部と第2縁部は、担持要素の幅が凹部よりも大きくてもよい。言い換えれば、第1縁部と第2縁部は、担持要素の凹部(厚み)に対して、担持要素の突出部、つまり、より厚みのある部分であってもよい。しかし、別の実施形態では、第1縁部と第2縁部は、担持要素の幅が凹部に対してほぼ同じでもよい。
【0015】
別の実施形態によれば、担持要素構造は、複数の基体を担持する複数の担持要素を備えており、担持要素は各々、それぞれの第1縁部と、それぞれの第2縁部と、内部に少なくとも1つの基体が担持可能なそれぞれの凹部を備えている。各第2縁部は担持要素構造の第2端を構成している。
【0016】
第1端と第2端は、搬送方向に対して互いに担持要素構造の反対側に形成されている。それぞれの第1端とそれぞれの第2端は、搬送方向に対して、対応する担持要素の互いに反対側に形成されている。
【0017】
これにより、担持要素構造は、ハウジング、特に温度被制御部を適切に分離することが可能になる。その理由は、担持要素構造の少なくとも1つの担持要素の凹部が温度被制御部内に位置している場合、担持要素構造の第1端と第2端は対応する取入口と取出口にそれぞれ位置しているからである。第1端が取入口内に、第2端が取出口内にそれぞれ位置している場合、担持要素構造の第1端,第2端とそれぞれに対応する取入口,取出口との間の寸法及び隙間が小さくなるので、そこを通るガスが温度被制御部から周囲環境へと流れ得る流量が低減する。
【0018】
別の実施形態によれば、第1端は、第1端がハウジングの取入口と
すきまばめを構成できるような寸法に定められているので、第1端と取入口との間には隙間がないか、ほんの少しの隙間しか存在しない。それに伴い、別の実施形態によれば、第2端は、第2端がハウジングの取出口と
すきまばめを構成できるような寸法に定められているので、第2端と取入口との間には隙間がないか、ほんの少しの隙間しか存在しない。
【0019】
別の実施形態によれば、担持要素は、取入口を通って温度被制御部内に入り、そして温度被制御部から取出口へと通過する搬送方向に沿って可動である。
別の実施形態によれば、ハウジングは、別の取出口と別の温度被制御部とを備えており、別の温度被制御部は、取出口と別の取出口との間に搬送方向に沿って形成されている。よって、上述したように、ハウジングは、それぞれの取出口によって隔てられている複数の温度被制御部を備えていてもよい。各温度被制御部は、対応する温度被制御部内にある担持要素構造の、それぞれに配置された縁部によって、互いから分離されていてもよい。
【0020】
別の実施形態によれば、炉は、別の基体を担持する別の担持要素を少なくとも1つ備えた別の担持要素構造を備えていて、別の担持要素構造は別の第1端と別の第2端とを備えている。別の担持要素構造は、別の第1端が取出口内に、別の第2端が別の取出口内にそれぞれ位置しているように、ハウジング内に形成されており、かつ配置可能である。
【0021】
別の担持要素構造は、搬送方向に沿って順次連結されていて、その凹部は別の温度被制御部内に配置されている、別の担持要素を1つまたは複数備えていてもよい。担持要素構造の第2端は、別の担持要素構造の別の第1端に接触していてもよいし、連結していてもよい。
【0022】
別の実施形態によれば、炉はさらに、駆動力を担持要素構造に伝達することによって担持要素構造を搬送方向に沿って駆動するように、担持要素構造に連結されている、力伝達要素を備えている。力伝達要素は、搬送方向に沿って(直進するように)可動である。
【0023】
力伝達要素は、例えば、担持要素を搬送方向に沿って引く、あるいは押す、押し棒または引き棒であってもよい。力伝達要素は、実施形態では、摩擦接触または形状はめ接触によって担持要素に連結されている、別の担持要素、担持要素構造、または別の担持要素構造であってもよい。別の実施形態において、別の担持要素を複数個、搬送方向に沿って順次、力を伝達するようにして配置してもよい。したがって、複数の担持要素は、例えば連鎖を構成していてもよい。連鎖のうちの最初または最後にある担持要素は、連鎖の他の担持要素に駆動力を伝達する駆動装置に連結されていてもよい。別の実施形態では、連鎖の複数の担持要素が、交換可能かつ脱着可能であるようにして互いに連結されており、これにより、搬送方向に対して最後の位置にある担持要素を連鎖から取り外して、連鎖のうちの最初の位置にある担持要素に取り付けることができる。
【0024】
力伝達要素は、実施形態ではハウジングの外部、例えばハウジングの周囲環境内、よって、温度被制御部の外部かつ例えばハウジングの外部に位置する駆動装置に連結されていてもよい。力伝達要素は特に、それぞれの温度被制御部の外部に位置している、各自の担持要素構造の各部に接続されている。力伝達要素は、例えば引き棒または押し棒を備えている。あるいは、力伝達要素は、実施形態では、周囲環境から、ハウジングのうちの取入口を通って、温度被制御部内部へと延びていてもよい。あるいは、例えば力伝達要素が引き棒である場合は、力伝達要素は、温度被制御部の内部から、取出口を通り、ハウジングの外部へと延びている。
【0025】
駆動装置は、力伝達要素が担持要素に伝達する駆動力を生成する、例えば電動モータまたは油圧モータである。駆動装置は、担持要素をハウジング内で搬送方向に沿って継続的に駆動するような一定の駆動力を生成してもよい。あるいは、駆動装置は、担持要素を搬送方向に沿って逐次的に移動させるような逐次的な駆動力を生成してもよい。これにより、担持要素は、所定の時間、所望の位置で静止し、次のステップでハウジング内の別の所望の位置に移動する。具体的には、駆動装置は、直進方向に沿った、つまり搬送方向に沿った成分を有する駆動力を生成する。
【0026】
上述したように、実施形態によれば、力伝達要素は、別の基体を担持する別の担持要素構造を備えた別の担持要素構造である。
上述したように、実施形態によれば、力伝達要素は、駆動力が力伝達要素から担持要素構造に伝達可能な(直進)押出力であるように、担持要素構造に連結されている。
【0027】
上述したように、実施形態によれば、力伝達要素は、駆動力が力伝達要素から担持要素構造に伝達可能な(直進)引張力であるように、担持要素構造に連結されている。
別の実施形態によれば、複数の力伝達要素を使用してもよい。例えば、それぞれの担持要素構造に引張力を伝達する力伝達要素もあれば、それぞれの担持要素構造に押出力を伝達する別の力伝達要素もある。
【0028】
別の実施形態によれば、力伝達要素は、形状はめ接続、特に蟻継ぎ接続によって、担持要素構造に連結されている。さらに、力伝達要素は接触面を備えていて、担持要素構造の1つの担持要素は別の接触面を備えており、これにより両接触面によって摩擦接触をもたらすことができる。ここで、駆動力を、力伝達要素と担持要素構造との間にあるそれぞれの接触面の法線方向に沿って伝達してもよい。
【0029】
上述したように、別の実施形態によれば、ハウジングの外部に配置されている駆動装置が設けられている。力伝達要素は、駆動装置に、駆動装置から力伝達要素を介して担持要素構造へと駆動力を伝達するように連結されている。
【0030】
別の実施形態によれば、ハウジングは、担持要素を、ハウジング内を通るように案内する案内システムを備えていて、担持要素は、担持要素が搬送方向に沿って案内可能であるように、案内システムに連結されている。
【0031】
案内システムは、例えば少なくとも1つの案内レールを備えており、それぞれの担持要素は案内レールに連結されていてもよい。担持要素は、案内レールに沿って摺動するために形成されていてもよい。さらに、案内レールまたはそれぞれの担持要素はローラを備えていてもよく、これにより、担持要素は案内レールに沿って転動してもよい。
【0032】
あるいは、案内システムは、ハウジングの底部に沿って配置されている複数の支持薄板を備えていてもよい。支持薄板は、担持要素と各支持薄板との間の摩擦を小さくするために、平滑で同一高さの表面を備えていてもよい。担持要素と支持薄板との間の摩擦が小さいので、担持要素は各支持薄板に沿って摺動してもよい。
【0033】
したがって、担持要素は、担持要素が底部上を搬送方向に沿って摺動可能なように、底部上に配置されている。よって、従動ローラまたは他の駆動手段は、ハウジング内への配置は、今や使われない手法かもしれない。具体的には、力伝達要素が押し棒または引き棒である場合、駆動力が、直進方向に沿ってハウジングの外部からハウジングの内部へと作用し、担持要素を搬送方向に沿ってそれぞれ引く、あるいは押す。
【0034】
ハウジングの底部、及び/またはそれぞれの担持要素の底部は、平滑に形成されていてもよく、互いの間で適切な摺接が得られるように、粗さが小さくなっていてもよい。上述したように、底部表面に支持薄板を配置してもよい。
【0035】
別の実施形態によれば、炉はさらに、温度被制御部に熱的に結合されていて、温度被制御部の温度を制御する、温度制御要素を備えている。温度被制御部は、ガスが、温度被制御部の温度を制御するために吹き込み可能である、ガス注入口を備えている。
【0036】
温度制御要素は、例えば、広い熱放射面及び/または熱吸収面を備えた板状部材であってもよい。温度制御要素の材料は、50W/(m*K)より高い、特に90W/(m*K)より高い伝熱係数を有していてもよい。温度制御要素は、適切な伝熱特性が得られるように、例えば金属材料でできていてもよい。
【0037】
温度被制御部に対して正確で効率的な温度制御を実現するためには、放射加熱と対流加熱の両方を施す。放射加熱は、温度被制御部に熱的に結合している温度制御要素によって施される。熱的結合(つまり、温度制御要素と温度被制御部の容積との間における熱相互作用及び熱エネルギー交換)は、例えば、温度制御要素を温度被制御部内に配置することによって実現してもよい。さらに、温度制御要素は、外部の加熱装置によって加熱される、ハウジング自体と一体化している部分であっても、一つの部であってもよい。例えば、ハウジングのある部が、加熱器や冷却器が位置するハウジングの外部から加熱される温度制御要素を構成していてもよい。
【0038】
対流加熱は、ハウジング内に形成されているガス注入口によって施され、この注入口を通って、ガスが温度被制御部の温度を制御するために流動可能である。
温度制御要素は、例えば、ハウジングの底部、頂壁、または側壁に配置されていてもよい。さらに、温度制御要素は、温度制御要素が電気加熱の一部を構成するように、電源に連結されていてもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、温度制御要素は、加熱ガスや加熱液等の加熱流体が流れることができる複数の放熱管を備えていてもよい。あるいは、基体を冷却するために温度被制御部を配置している場合、放熱管内を流れるのは冷却液や冷却ガス等の冷却流体であってもよい。温度制御要素はハウジングの底部に配置されていてもよく、基体を担持する担持要素を、温度制御要素上を搬送方向に沿って摺動あるいは案内してもよい。したがって、担持要素は、温度制御要素からの放射熱によって熱せられる。よって、担持要素は、自身は温度制御要素として機能し、放熱によって基体を加熱する。
【0039】
ガス注入口は、ハウジング内部、特にハウジングの底部、頂壁、または側壁内に、ガスが温度被制御部内へと注入可能なように形成されていてもよい。ガス(つまり処理ガス)は、例えば、周囲環境から得られた加熱または冷却された空気であってもよい。また、ガスは、例えば窒素等の不活性ガスであってもよい。例えば、送風機、具体的にはラジアル送風機等の圧縮器によって、ガスが温度被制御部内のガス注入口を介して注入可能になるように、ガスに所望の圧力を加えてもよい。
【0040】
別の実施形態によれば、温度制御要素は、ガスが、温度制御要素の温度を制御するために温度制御要素に向かって、または温度制御要素内を通って流動可能であるように、温度被制御部内に配置されている。温度制御要素は板状の形状であってもよく、この形状により気流偏向板として機能してもよい。ガスを温度制御要素に向かって、または温度制御要素内を通って流れるように案内する場合、温度制御要素は温度が上昇するかまたは下降して、温度制御要素による焼き戻しによって、温度被制御部の温度を、特に放熱によって、所望の温度になるように制御する。したがって、温度制御要素によってガスが所定の方向に沿って導かれるために、温度被制御部の雰囲気中での気流の乱れを小さくすることができる。
【0041】
別の実施形態によれば、ガス注入口は、ガスが、基体が特に担持要素から浮揚可能になるように、基体に向かって流動可能であるようにして形成されている。具体的には、ハウジングは、ガス注入口を備えた底部を備えていて、ここでガスは、基体が底部から浮揚可能になるように、底部から基体に向かって流動可能である。
【0042】
具体的には、ガス注入口を、ハウジング内部、特に底部に、注入したガスによって生じた揚力が基体において基体の重力に逆らって作用するようにして配置することによって、基体が持ち上げられて浮揚する。よって、基体は、ハウジングと部分的にも全く接触していない状態が可能になる。したがって、ハウジングの壁面や後述の担持要素等の基体の保持構造にぶつかったために生じた基体の機械的欠陥を低減することができる。
【0043】
注入した焼き戻しガスによって発生した揚力は、ガスの質量流量を制御することによって制御してもよい。ガスの質量流量は、圧縮器と、ハウジングのガス注入口の開口特性とによって制御される。例えば、基体の揚力を適切な大きさで発生させるために、ガス注入口はノズルまたはノズルパターンを構成していてもよい。
【0044】
また、温度被制御部内における基体の位置を、位置検出器、例えばカメラによって特定してもよい。さらに、質量流量の揚力を、温度被制御部内にある圧力検出器によって制御してもよい。制御部は、それぞれの検出器と圧縮器が連結されていて、基体の持ち上げ位置と浮遊位置とを制御してもよい。
【0045】
別の実施形態によれば、ガス注入口は、ガスが、搬送方向に対して並行または垂直な成分を備えた気流方向で、基体に向かって吹き込み可能であるようにして、温度被制御部内に配置されている。よって、ガス注入口は、ガス注入口が重力方向に対して並行ではない気流方向を備えているように、ハウジングの側壁と温度被制御部にそれぞれ配置されていてもよい。したがって、ガスは基体の表面に沿って流れる。あるいは、ガス注入口はハウジングの底部に配置されていてもよく、温度制御要素はガスを、所望の方向の気流になるように偏向させる。
【0046】
別の実施形態によれば、温度被制御部は、温度被制御部からガスを排出するガス排出口を備えている。
別の実施形態によれば、取入口と取出口のうちの少なくとも1つは、バリアガスが、温度被制御部の周囲環境から、及び特に温度被制御部の上流側または下流側に配置された隣接する温度被制御部から、温度被制御部を分離するために、ガスによる障壁を生成するように注入可能である別のガス注入口を備えている。
【0047】
バリアガスは例えば空気または窒素等の不活性ガスであってもよい。バリアガスは、それぞれの取入口または取出口内を、ガスによる障壁を生成するように流れる。これにより、温度被制御部からのガスが、ガス障壁を越えることを防ぎ、よって温度被制御部の外へ流れ出ることも防ぎ得る。したがって、ハウジング内において開口、つまり取入口や取出口が設けられているにもかかわらず、ガスが温度被制御部の外に流れ出ることが防止されている。
【0048】
別の実施形態によれば、炉はさらに、温度被制御部内に配置されていて、温度被制御部の温度を制御する、別の温度制御要素を備えている。別の温度制御要素は温度制御要素に対して、基体を搬送方向に沿って取入口と取出口との間を移動させている時に、基体が温度制御要素(例えば上側の加熱または冷却要素)と別の温度制御要素(例えば下側の加熱または冷却要素)との間にある領域を通過するようにして配置されている。
【0049】
別の温度制御要素は、上述の温度制御要素と同様の手法で形成・設計されていてもよい。別の温度制御要素は、温度被制御部内に、基体が両者の間、つまり温度制御要素と別の温度制御要素との間に配置されるようにして配置されている。よって、基体に一様な焼き戻しを行うことができる。
【0050】
別の実施形態によれば、担持要素は、基体が配置可能な担持底部を備えており、担持底部は、中を通るガスが基体に向かって流動可能な流路を備えている。
担持要素の底部は、例えば穴からなるパターンや例えば網目や格子等の流路を、ガスが担持要素の底部を貫通して流れることによって、基体を対流によって加熱できるように備えていてもよい。さらに、ガスは、基体が担持要素の底部の上方に浮遊できるように、担持要素の底部を貫通して流れる。
【0051】
本発明の各実施形態は、様々な発明対象に関して説明されてきたことに注目しなければならない。特に、装置方式の請求項に関して説明してきた実施形態もあれば、方法方式の請求項に関して説明してきた実施形態もある。しかし、当業者であれば、上述の説明、及び以下に続く説明から、特に断りのない限り、ある種の発明対象に属する特徴のいかなる組み合わせに加えて、異なる発明対象に関する特徴同士のいかなる組み合わせ、特に装置方式の請求項の特徴と方法方式の請求項の特徴とのいかなる組み合わせも、本出願によって開示されているとみなされることを推測するであろう。
【0052】
以下において、実施形態の各実施例を参照して、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は各実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る温度制御要素を備えた炉の概略図を示している。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る担持要素と力伝達要素とを備えた炉の概略図を示している。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る2つの担持要素と1つの遮断部とを備えた炉の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0054】
[実施例の説明]
各図の実例は概略的に示されている。互いに異なる各図において、同様あるいは同一の要素には同じ参照符号が与えられている。
【0055】
図1は、少なくとも1つの基体102の温度を制御する炉、特に連続炉を示している。ハウジング100は取入口103と取出口104を備えており、取入口103と取出口104との間には温度被制御部105が形成されている。担持要素構造は、基体102を担持する少なくとも1つの担持要素120を備えており、担持要素構造は第1端と第2端とを備えている。担持要素構造は、第1端が取入口103内に、第2端が取出口104内にそれぞれ位置するように、ハウジング100内に形成されており、かつ配置可能である。
【0056】
担持要素構造の担持要素120は、第1縁部121と、第2縁部122と、内部に少なくとも1つの基体102が担持可能な凹部123とを備えており、凹部123は、第1縁部121と第2縁部122との間において搬送方向101に沿って形成されている。担持要素120は、第1縁部121は取入口103内に、第2縁部122は取出口104内に、そして凹部123は温度被制御部105内にそれぞれ位置するように、ハウジング100内に形成されており、かつ配置可能である。
【0057】
基体102は、取入口103を通って温度被制御部105内に入り、そして温度被制御部105から取出口104へと通過する搬送方向101に沿って、担持要素構造の担持要素120に合わせて可動である。温度制御要素106は、温度被制御部105内に配置されていて、温度被制御部105の温度を制御する。温度被制御部105は、ガス110が、温度被制御部105の温度を制御するために吹き込み可能であるガス注入口108を備えている。
【0058】
温度被制御部105内を所望の温度にすることによって基体102の温度を所望の温度で制御するために、温度被制御部105に対して温度制御(例えば加熱または冷却)が行われてもよい。ハウジング100はトンネル形に形成されており、焼き戻し処理中には基体102はこのトンネル内を搬送される。温度被制御部105は、例えば摂氏200°Cから2000°Cの間で焼き戻しを行ってもよい。
【0059】
温度制御要素106は、例えば、広い熱放射面を備えた板状の要素であってもよい。温度制御要素106は、ハウジング100の底部112または側壁に配置されている。さらに、温度制御要素106は、温度制御要素106が電気加熱の一部を構成するように、電源に連結されていてもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、温度制御要素106は、加熱ガスや加熱液等の加熱流体が流れることができる複数の放熱管を備えていてもよい。あるいは、基体102を冷却するために温度被制御部105を配置している場合、放熱管内を流れるのは冷却液や冷却ガス等の冷却流体であってもよい。温度制御要素106はハウジング100の底部112に配置されていてもよく、後述する基体102を担持する担持要素120を、温度制御要素106上を搬送方向101に沿って摺動あるいは案内してもよい。したがって、担持要素120は、温度制御要素106からの放射熱によって熱せられる。よって、担持要素120は、自身は温度制御要素として機能し、放熱によって基体102を加熱する。
【0060】
さらに、温度制御要素106は、各基体102を冷却するために熱エネルギーを吸収する吸収要素として機能してもよい。
ガス注入口108は底部112内に形成されている。ガス110は、例えば、所定の温度を有する、周囲環境からの空気である。また、ガス110は、例えば所定の温度を有する不活性ガス、例えば窒素であってもよい。例えば、送風機等の圧縮器によって、ガス110が温度被制御部105内のガス注入口108を介して注入可能になるように、ガス110に所望の圧力を加えてもよい。
【0061】
温度制御要素106は、ガス110が、温度制御要素106の温度を制御するために温度制御要素106に向かって流動可能であるように、温度被制御部105内に配置されている。温度制御要素106は板状の形状であってもよく、この形状により気流偏向板として機能してもよい。ガス110を温度制御要素106に向かって流れるように案内する場合、温度制御要素106は温度が上昇するかまたは下降して、温度制御要素106が温度被制御部105の温度を、所望の温度で制御する。
【0062】
また、ガス110は、担持要素120の温度を制御するために、担持要素120に向かって流れるように流動可能である。
さらに、
図1に示されているように、ガス110は、基体102が底部112から浮揚可能になるように、底部112から基体102に向かって流動可能である。具体的には、ガス注入口108をハウジング100内部、特に底部112に、注入したガス110によって生じた揚力が基体102において基体102の重力に逆らって作用するようにして配置することによって、基体102が持ち上げられて浮揚する。よって、基体102は、ハウジング100と部分的にも全く接触していない状態が可能になる。したがって、ハウジング100の壁面や後述の担持要素120等の基体102の保持構造にぶつかったために生じた、基体102の機械的欠陥(及び例えば不均一な加熱/冷却)を低減することができる。
【0063】
注入したガス110によって発生した揚力は、ガス110の質量流量を制御することによって制御してもよい。ガス110の質量流量は、圧縮器と、ハウジング100のガス注入口108の開口特性とによって制御される。例えば、基体102の揚力を適切な大きさで発生させるために、ガス注入口108はノズルまたはノズルパターンを構成していてもよい。
【0064】
また、温度被制御部105内における基体102の位置を、位置検出器、例えばカメラによって特定してもよい。さらに、質量流量の揚力を、温度被制御部105内にある圧力検出器によって制御してもよい。制御部は、それぞれの検出器と圧縮器が連結されていて、基体102の持ち上げ位置と浮遊位置とを制御してもよい。
【0065】
さらに、例えば偏向器として機能する温度制御要素106により、ガス110を基体102の表面に沿うように導いてもよい。
温度被制御部105は、温度被制御部105からガス110を排出するガス排出口109を備えている。
【0066】
また、取入口103および取出口104は、それぞれ別のガス注入口111を備えており、この注入口111を介してバリアガス118が、温度被制御部105の周囲環境から温度被制御部105を遮断するために、ガスによる障壁を生成するように注入可能である。
【0067】
バリアガス118は例えば空気または窒素等の不活性ガスであってもよい。バリアガス118は、それぞれの取入口103または取出口104内を、ガスによる障壁を生成するように流れる。これにより、温度被制御部105からのガス110が、ガス障壁を越えることを防ぎ、よって温度被制御部105の外へ流れ出ることも防ぎ得る。したがって、ハウジング100には開口、つまり取入口103や取出口104が設けられているにもかかわらず、ガス110が温度被制御部105の外に流れ出ることが防止されている。
【0068】
また、
図1に示されているように、炉はさらに、温度被制御部105内に配置されていて、温度被制御部105の温度を制御する、別の温度制御要素107を備えている。別の温度制御要素107は温度制御要素106に対して、基体102を搬送方向101に沿って取入口103と取出口104との間を移動させている時に、基体102が温度制御要素106と別の温度制御要素107との間にある領域を通過するようにして配置されている。
【0069】
別の温度制御要素107は、上述の温度制御要素106と同様の手法で形成・設計されていてもよい。別の温度制御要素107は、温度被制御部105内に、基体102が両者の間、つまり温度制御要素106と別の温度制御要素107との間に配置されるようにして配置されている。よって、基体102に一様な焼き戻しを行うことができる。
【0070】
図1に図示されているように、基体102は、基体102を担持する担持要素120によって支持されており、ここで担持要素120は、取入口103を通って温度被制御部105内に入り、そして温度被制御部105から取出口104へと通過する搬送方向101に沿って可動である。
【0071】
担持要素120はハウジング100を通過するように可動である。担持要素120は、基体102が載置されている担持部を備えている。担持要素120は例えば矩形、円形、及び/または杯状の形状であってもよい。担持要素120は、セラミック材料等の耐高温材料でできていてもよい。さらに、担持要素120は平坦な底部112を備えていてもよく、この底部によって担持要素120はハウジング100の底部112上に直立している。例えば、底部112は、担持要素120の底部112とハウジング100の底部112との間の摩擦を小さくするために、粗さが小さく形成されている。別の実施形態において、担持要素120は、担持要素120とハウジング100の底部112との間の摩擦を小さくするために、担持底部124にローラを備えていてもよい。
【0072】
また、担持要素120は、基体102が配置可能な担持底部124を備えており、担持底部124は、中を通るガス110が基体102に向かって流動可能な流路を備えている。
【0073】
担持要素120の底部124は、例えば穴からなるパターンや例えば網目や格子等の流路を、ガス110が担持要素120の底部124を貫通して流れることによって、基体102を対流によって加熱できるように備えていてもよい。さらに、ガス110は、基体102が担持底部124の上方に浮遊できるように、担持要素120の底部124を貫通して流れる。
【0074】
担持要素構造の担持要素120は、内部に基体102が担持されている担持要素120の凹部123が炉の温度被制御部105内に位置している場合に、第1縁部121、例えば端部が取入口103内に、第2縁部122、例えば別の端部が取出口104内に位置しているようにして、設計・形成されている。第1縁部と第2縁部は、担持要素120の幅が凹部123よりも大きくてもよい。言い換えれば、第1縁部と第2縁部は、担持要素120の凹部123に対して、担持要素120の突出部であってもよい。しかし、別の実施形態では、第1縁部と第2縁部は、担持要素120の幅が凹部123に対してほぼ同じでもよい。
【0075】
第1縁部と第2縁部は、搬送方向101に対して互いに担持要素120の反対側に形成されている。
これにより、担持要素120は、ハウジング100、特に温度被制御部105を適切に分離することが可能になる。その理由は、担持要素120の凹部123が温度被制御部105内に位置している場合、第1縁部121と第2縁部122は対応する取入口103と取出口104にそれぞれ位置しているからである。第1縁部121が取入口103内に、第2縁部122が取出口104内にそれぞれ位置している場合、第1縁部121,第2縁部122とそれぞれに対応する取入口103,取出口104との間の寸法及び隙間が小さくなるので、ガス110が温度被制御部105から周囲環境へと流れ得る流量が低減する。
【0076】
担持要素120は、取入口103を通って温度被制御部105内に入り、そして温度被制御部105から取出口104へと通過する搬送方向101に沿って可動である。
図2は、複数の温度被制御部105,114を有するハウジング100を示したものである。各温度被制御部105,114は搬送方向101に沿って順次配置されていてもよく、この方向で、基体102がハウジング100内を通過するように搬送可能である。各温度被制御部105,114は、それぞれの取入口103及び取出口104,113を備えている。さらに、各温度被制御部105,114は所望の温度を有していてもよく、これにより、基体102または複数の追加基体102を、各温度被制御部105,114内で所望の温度で加熱または冷却してもよい。例えば、搬送方向101に沿って、第1温度被制御部105は予熱区間であってもよく、後続の別の温度被制御部114は加熱部であってもよく、この場合例えば基体102の最高温度に到達する。そして、後続の温度被制御部(
図2には図示せず)は冷却区間であってもよく、この場合加熱された基体102を所望の温度勾配(時間当たりの温度、例えばT/s)で冷却してもよい。
【0077】
焼戻し部105内には担持要素構造が配置されており、別の焼戻し部114内には別の担持要素構造が配置されていてもよい。担持要素構造は少なくとも1つの担持要素120を備えており、別の担持要素構造は少なくとも1つの別の担持要素140を備えている。担持要素構造は各々、第1端と第2端とを備えている。
【0078】
担持要素構造は、第1端が取入口103内に、第2端が取出口104内にそれぞれ位置するように、ハウジング100内に形成・配置されている。
ハウジング100は別の取出口113と別の温度被制御部114を備えており、別の温度被制御部114は取出口104と別の取出口113との間に形成されている。別の担持要素構造は、別の担持要素構造の別の第1端が取出口104内に、別の担持要素構造の別の第2端が別の取出口113内にそれぞれ位置するように、ハウジング100内に形成されており、かつ配置可能である。
【0079】
担持要素構造の少なくとも1つの担持要素120は、第1縁部121と、第2縁部122と、基体102が担持可能な凹部123とを備えており、ここで凹部123は、第1縁部121と第2縁部122との間において搬送方向101に沿って形成されている。第1縁部121は担持要素構造の第1端を構成している。
【0080】
図2に示された実施形態において、担持要素120の第2縁部122は担持要素構造の第2端を構成している。あるいは、担持要素構造は、共通の温度被制御部105内に位置している複数の担持要素120を備えていてもよく、ここで、担持要素構造の搬送方向101に対して下流端に位置している、担持要素120の第2縁部122は、担持要素構造の第2端を構成している。
【0081】
別の担持要素構造の別の担持要素140はそれぞれ、別の第1縁部121’と、別の第2縁部122と、内部に追加基体102が担持可能である別の凹部123とを備えている。別の凹部123は、別の第1縁部121’と別の第2縁部122の間において搬送方向101に沿って形成されており、ここで別の担持要素140は、別の第1縁部121’が取出口104内に、別の第2縁部122が別の取出口113内に、そして別の凹部123が別の温度被制御部114内にそれぞれ位置するように、ハウジング100内に形成されており、かつ配置可能である。
【0082】
炉はさらに力伝達要素130を備えている。力伝達要素130は、駆動力を担持要素構造と担持要素120,140とにそれぞれ伝達することによって、担持要素120,140を搬送方向101に沿って駆動するように、担持要素構造に連結されている。力伝達要素130は、温度被制御部105内の搬送方向101に沿って可動である。
【0083】
力伝達要素130は、例えば、担持要素構造を搬送方向101に沿って引く、あるいは押す、押し棒または引き棒であってもよい。力伝達要素130は、摩擦接触または形状はめ接触によって担持要素構造の担持要素120に連結されている、別の担持要素構造の別の担持要素140であってもよい。別の担持要素構造を複数個、搬送方向101に沿って順次、力を伝達するように配置してもよい。したがって、担持要素構造の複数の担持要素120,140は、例えば連鎖を構成していてもよい。連鎖のうちの最初または最後にある担持要素120,140は、連鎖の他の担持要素120,140に駆動力を伝達する駆動装置150に連結されていてもよい。別の実施形態では、連鎖のそれぞれの担持要素構造の複数の担持要素120,140が、交換可能かつ脱着可能であるようにして互いに連結されており、これにより、搬送方向101に対して最後の位置にある担持要素120,140を、連鎖から取り外して、連鎖のうちの搬送方向101に対して最初の位置にある担持要素120,140に取り付けることができる。
【0084】
力伝達要素130は、ハウジング100の外部、例えばハウジング100の周囲環境内に位置する駆動装置150に連結されていてもよい。よって、力伝達要素130は、周囲環境、例えばハウジング100の外部にある供給部115から、ハウジング100の取入口103を通って、温度被制御部105内部へと延びている。あるいは、例えば力伝達要素130が引き棒である場合は、力伝達要素130は、温度被制御部105の内部から、取出口104を通り、ハウジング100の外部へと延びている。
【0085】
駆動装置150は、力伝達要素130が担持要素120,140に伝達する駆動力を生成する、例えば電動モータまたは油圧モータである。駆動装置150は、担持要素120,140をハウジング100内で搬送方向101に沿って継続的に駆動するような一定の駆動力を生成してもよい。あるいは、駆動装置150は、担持要素120,140を搬送方向101に沿って逐次的に移動させるような逐次的な駆動力を生成してもよい。これにより、担持要素120,140は、所定の時間、所望の位置で静止し、次のステップでハウジング100内の別の所望の位置に移動する。具体的には、駆動装置150は、直進方向に沿った、つまり搬送方向101に沿った成分を有する駆動力を生成する。
【0086】
力伝達要素130は、形状はめ接続、特に蟻継ぎ接続によって、それぞれの担持要素構造の担持要素120,140に連結されていてもよい。さらに、力伝達要素130は接触面を備えていて、担持要素120は別の接触面を備えており、これにより両接触面によって摩擦接触をもたらすことができる。ここで、駆動力を、力伝達要素130と担持要素120,140との間にあるそれぞれの接触面の法線方向に沿って伝達してもよい。
【0087】
駆動装置150は、ハウジング100の外部に配置されている。力伝達要素130は、駆動装置150に、駆動装置150から力伝達要素130を介して担持要素120へと駆動力を伝達するように連結されている。
【0088】
ハウジング100は底部112を備えており、担持要素120,140は、担持要素120,140が底部112上を搬送方向101に沿って摺動可能なように、底部112上に配置されている。よって、従動ローラまたは他の駆動手段は、ハウジング100内への配置は、今や使われない手法かもしれない。具体的には、力伝達要素130が押し棒または引き棒である場合、駆動力が、直進方向に沿ってハウジング100の外部からハウジング100の内部へと作用し、担持要素120,140を搬送方向101に沿ってそれぞれ引く、あるいは押す。
【0089】
ハウジング100の底部112、及び/またはそれぞれの担持要素120,140の底部124は、平滑に形成されていてもよく、互いの間で適切な摺接が得られるように、粗さが小さくてもよい。
【0090】
さらに、ハウジング100は、別の取出口113と別の温度被制御部114とを備えており、別の温度被制御部114は取出口104と別の取出口113との間に形成されている。よって、上述したように、ハウジング100は、それぞれの取出口104,113によって隔てられている複数の温度被制御部105,114を備えていてもよい。各温度被制御部105,114は、担持要素構造において各々配置された縁部、つまり、担持要素構造のうちのそれぞれの温度被制御部105,114内にある担持要素120,140の縁部121,122によって、互いから分離されていてもよい。
【0091】
図3は2つの担持要素構造をより詳細に示したものであり、ここで、一方の担持要素構造は担持要素120を、他方の担持要素構造は担持要素140をそれぞれ備えている。さらに、ハウジング100の遮断部116(ゲート部117)が示されている。
【0092】
ハウジング100は、隣接する2つの温度被制御部105,114の間にあるゲート部117を備えている。ゲート部117の領域に、ハウジング100は遮断部116を備えている。遮断部116は、例えば、ハウジング100の1つの部であり、それぞれの担持要素構造の担持要素120,140を隣接する温度被制御部105,114の間へと案内することができる通路(取入口103または取出口104,113)を狭くする突出部を有している。遮断部116は断熱材料でできていてもよい。
【0093】
「備えている(comprising)」という語は他の要素やステップを排除するものではなく、また「1つの(冠詞「a」または「an」)」という語は複数個存在することを排除するものではないことに注目すべきである。また、別々の実施形態に関連して説明された各要素を組み合わせてもよい。請求項中の参照符号を請求項の範囲を限定するものとして解釈すべきではないことにも注目すべきである。
【0094】
[符号の説明]
100 ハウジング、101 搬送方向、102 基体、103 取入口、104 取出口、105 温度被制御部、106 温度制御要素、107 別の温度制御要素、108 ガス注入口、109 ガス排出口、110 ガス、111 別のガス注入口、112 底部、113 別の取出口、114 別の温度被制御部、115 供給部、116 遮断部、117 ゲート部、118 バリアガス、120 担持要素、121 第1縁部、122 第2縁部、123 凹部、124 担持底部、130 力伝達要素、140 別の担持要素、150 駆動装置