特許第6382384号(P6382384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6382384
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20180820BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20180820BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61F13/534 110
   A61F13/536 200
   A61F13/537 220
   A61F13/537 210
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-64173(P2017-64173)
(22)【出願日】2017年3月29日
【審査請求日】2018年4月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】葭葉 恵
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−021203(JP,A)
【文献】 実開昭61−103405(JP,U)
【文献】 特開2014−079323(JP,A)
【文献】 特開2014−079324(JP,A)
【文献】 特開2016−168300(JP,A)
【文献】 特開2014−152472(JP,A)
【文献】 実開昭59−159418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備え、前記上層シートが化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記下層シートが綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなり、かつ前記ポリマーシートに、前記高吸水性ポリマーが配置された画成領域が設けられるとともに、前記画成領域の周囲に、前記上層シート及び下層シートを接合する接合部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間に中間シートが配設されるとともに、少なくとも前記上層シートと中間シートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備え、前記上層シートが化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記中間シート及び下層シートの少なくとも一方が綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなり、かつ前記ポリマーシートに、前記高吸水性ポリマーが配置された画成領域が設けられるとともに、前記画成領域の周囲に、前記上層シート、中間シート及び下層シートを接合する接合部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前記接合部は、ヒートシール又は接着剤からなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記接合部は、前記画成領域の周囲に沿って所定の間隔を空けて間欠的に設けられている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記画成領域は、吸収性物品の平面視で正格子状又は千鳥格子状に配置されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には失禁パッド、生理用ナプキン、おりものシート、医療用パッド、トイレタリー、使い捨ておむつ等に使用される吸収性物品に係り、詳しくは肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、パルプ繊維を含まない、いわゆるパルプレス吸収体のポリマーシートを介在したものが知られている。
【0003】
前記ポリマーシートを用いた吸収性物品は、吸収体が薄型化でき、装着時の違和感が軽減できる利点を有する。
【0004】
ところが、前記ポリマーシートは、(1)一般的にパルプなどの吸水性繊維と比較して高吸水性ポリマーの吸水スピードが遅いため、一気に排出された体液を素早く吸収できない、(2)吸水後に膨潤して高吸水性ポリマー同士の間隔が狭まり通液しにくくゲルブロッキングを生じやすい、(3)一気に大量の体液が排出されると、ポリマーシートで瞬時に吸収しきれず表面への逆戻り量が多くなる、などの欠点を有することが指摘されている。
【0005】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、ポリマーシートの吸収性能を向上させる技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1においては、不織布以外のパルプ繊維を含まない吸収用積層体であって、2枚の不織布が不織布間に設けられたホットメルト接着剤からなる網状体層によって接着されているとともに、このホットメルト接着剤に吸水性樹脂粉末が付着してなる吸収用積層体が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2においては、表面シートと裏面シートとの間に吸水性シートが介在され、前記吸水性シートは、第1シート、第2シート、及びこれら両シート間に接着剤により固着された吸水性樹脂粉末を具備しており、前記第1シート及び第2シートとして親水性不織布又は紙が用いられることが開示されている。
【0007】
更に、下記特許文献3においては、SAP層の支持体となる支持シートと、前記支持シートの表面に形成された、繊維状材料からなるSAP受容層と、前記SAP受容層の表面に形成された、繊維状材料を含まず、かつ、少なくとも前記SAP粒子を含むSAP粒子組成物からなるSAP層と、前記SAP層の表面を被覆するように載置された、親水性材料からなる被覆シートと、が積層された積層体が構成され、前記被覆シートが、紙によって構成され、湿潤状態における脆弱部(貫通部)が形成されたSAPシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−106554号公報
【特許文献2】特開2009−61230号公報
【特許文献3】特開2013−39804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものでは、2枚の不織布間に介在された網状体層に吸水性樹脂粉末が付着する構造であり、2枚の不織布間に網状体層が介在しているため、必ずしも十分にポリマーシートの薄型化を図ることができなかった。また、吸水性樹脂粉末が吸水して膨潤したときに、2枚の不織布間の接合が解除されるなどの工夫がなく、膨潤した吸水性樹脂粉末同士が結合して体液が流通しにくくなるゲルブロッキングを生じるおそれがあった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載のものにおいて、吸水性樹脂粉末を被覆するシートとして合成繊維からなる不織布を用いた場合には、液拡散しにくくゲルブロッキングが生じやすいとともに、吸収スピードが遅く、逆戻りしやすいという問題があった。
【0011】
更に、上記特許文献3に記載されるSAPシートでは、被覆シートが紙によって構成され、湿潤状態における脆弱部(貫通部)が形成されることによって、吸水し、膨潤したSAP粒子によって脆弱部(貫通部)が押し広げられ、被覆シートが破断されるように成されているため、膨潤したSAP粒子がSAPシートからこぼれ出るおそれがあり、それに伴う体液の漏れが懸念される。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、液拡散性を高めて、ゲルブロッキングを生じにくくするとともに、吸収性能に優れた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備え、前記上層シートが化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記下層シートが綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなり、かつ前記ポリマーシートに、前記高吸水性ポリマーが配置された画成領域が設けられるとともに、前記画成領域の周囲に、前記上層シート及び下層シートを接合する接合部が設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、上層シートと下層シートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーが配置され、前記上層シートが化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記下層シートが綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなるポリマーシートを備えている。かかる吸収性物品における体液の吸収形態は、ポリマーシートに達した体液は、化学繊維を含有することで保水能力が低く抑えられた上層シート及び体液との接触初期の吸水スピードが遅い高吸水性ポリマーの層を通過して、下層シートに到達した後、この下層シートに到達した体液が、綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布に特有の体液の吸収スピードが速く、拡散性に優れるという効果によって、下層シートに素早く吸水され、この下層シートを広い範囲に素早く拡散し、その拡散した領域において隣接して配置された高吸水性ポリマーに徐々に吸水され保持されるというものである。このように、綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなる下層シートにおいて広範囲に拡散させてから高吸水性ポリマーに移行させるという吸収形態を採っているため、高吸水性ポリマーによるゲルブロッキングが生じにくく、ポリマーシート全体として、吸収スピードが速く逆戻りしにくいなどの吸収性能に優れるようになる。
【0015】
また、前記高吸水性ポリマーは、周囲が前記接合部によって画成された画成領域に配置されている。この接合部は、化学繊維を含有する不織布からなる上層シートと綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなる下層シートとを接合したものであるため、後段で詳説するように接合強度が小さく、高吸水性ポリマーが吸水して膨潤したときの圧力によって接合部が剥離しやすくなる。接合部が剥離することにより、高吸水性ポリマーが配置された画成領域が拡大し、拡大した領域にまで膨潤した高吸水性ポリマーが流動できるため、ゲルブロッキングが防止でき、体液の吸収性に優れるようになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間に中間シートが配設されるとともに、少なくとも前記上層シートと中間シートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備え、前記上層シートが化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記中間シート及び下層シートの少なくとも一方が綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなり、かつ前記ポリマーシートに、前記高吸水性ポリマーが配置された画成領域が設けられるとともに、前記画成領域の周囲に、前記上層シート、中間シート及び下層シートを接合する接合部が設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明は、上層シートと下層シートとの間に中間シートが配設されたポリマーシートの第2形態例である。本形態例に係るポリマーシートでは、少なくとも前記上層シートと中間シートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーが配置されている。そして、前記上層シートが化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記中間シート及び下層シートの少なくとも一方が綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布から構成されている。従って、この場合の体液の吸収形態は、ポリマーシートに達した体液が、化学繊維を含有することで吸水能力が低く抑えられた上層シート及び体液との接触初期の吸水スピードが遅い高吸水性ポリマーの層を通過して、綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布の層(中間シート及び下層シートの少なくとも一方)に到達し、綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布に特有の体液の吸収スピードが速く、拡散性に優れるという効果によって、綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布に素早く吸水され、この不織布層を広い範囲に素早く拡散した後、拡散した領域において隣接して配置された高吸水性ポリマーに徐々に吸水され保持されるというものである。このように、綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなる層において広範囲に拡散させてから高吸水性ポリマーに移行させる吸収形態を採っているため、高吸水性ポリマーによるゲルブロッキングが生じにくく、ポリマーシート全体として、吸収スピードが速く逆戻りしにくいなどの吸収性能に優れるようになる。特に、本形態例では、中間シートと下層シートとの間の所定領域にも高吸水性ポリマーが配置されるとともに、中間シートを綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布で構成することにより、中間シートに浸透して広い範囲に拡散した体液が、中間シートの上層側及び下層側にそれぞれ配置された高吸水性ポリマーに吸水されるため、より確実にゲルブロッキングが生じにくくなるとともに、高吸水性ポリマーへの吸水性に優れるようになる。
【0018】
また、前記高吸水性ポリマーは、周囲が前記接合部によって画成された画成領域に配置されている。この接合部は、化学繊維を含有する不織布からなる上層シートと綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布からなる下層シートとを接合したものであるため、後段で詳説するように接合強度が小さく、高吸水性ポリマーが吸水して膨潤したときの圧力によって接合部が剥離しやすくなる。接合部が剥離することにより、高吸水性ポリマーが配置された画成領域が拡大し、拡大した領域にまで膨潤した高吸水性ポリマーが流動できるため、ゲルブロッキングが防止でき、体液の吸収性に優れるようになる。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記接合部は、ヒートシール又は接着剤からなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明では、前記接合部を、ヒートシール又は接着剤で構成することにより、吸水して膨潤した高吸水性ポリマーの圧力によって、接合部が剥離しやすくなる。具体的には、前記接合部がヒートシールからなる場合、綿繊維は熱溶融しないため、接合強度が弱く、接合部が剥離しやすくなる。また、前記接合部がホットメルト接着剤からなる場合、体液で接着剤が濡れることにより接着剤の接着力が弱められ、接合部が剥離しやすくなる。
【0021】
請求項に係る本発明として、前記接合部は、前記画成領域の周囲に沿って所定の間隔を空けて間欠的に設けられている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項記載の発明では、前記接合部を、画成領域の周囲に沿って所定の間隔を空けて間欠的に設けることにより、吸水して膨潤した高吸水性ポリマーによって、接合部を剥離しやすくしている。
【0023】
請求項に係る本発明として、前記画成領域は、吸収性物品の平面視で正格子状又は千鳥格子状に配置されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項記載の発明では、前記画成領域を、吸収性物品の平面視で正格子状又は千鳥格子状に配置することにより、前記画成領域に配置された高吸水性ポリマーによって、親水性のセルロース系繊維を含有する不織布で拡散した体液が吸水しやすくなる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、液拡散性が高く、ゲルブロッキングが生じにくいとともに、吸収性能に優れた吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】変形例に係る下層シート11の斜視図である。
図4】ポリマーシート4の拡大平面図である。
図5図4のV−V線矢視図である。
図6】体液の吸収状態を示すポリマーシート4の拡大断面図である。
図7】ポリマーシート4の拡大断面図(図4のVII−VII線矢視図)である。
図8】変形例に係るポリマーシート4の拡大断面図(図4のVII−VII線矢視図)である。
図9】第2形態例に係るポリマーシート4Aの拡大断面図である。
図10】中間シート19の拡大平面図である。
図11】変形例に係るポリマーシート4Aの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
〔第1形態例〕
(生理用ナプキン1の基本構成)
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装され、肌側に配置された上層シート10と非肌側に配置された下層シート11との間の所定領域に高吸水性ポリマー12が配置されたポリマーシート4と、前記ポリマーシート4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記ポリマーシート4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部ではポリマーシート4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。必要に応じて、前記透液性表面シート3とポリマーシート4との間に親水性のセカンドシート(図示せず)を配置してもよい。
【0029】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0030】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0031】
本生理用ナプキン1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ生理用ナプキン1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0032】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0033】
前記サイド不織布7、7は、適宜に折り畳まれて、前記吸収体4の略側縁近傍位置を起立基端として肌側に起立する左右一対の立体ギャザーBSを構成している。
【0034】
(ポリマーシート4)
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在されるポリマーシート4は、肌側(透液性表面シート3側)に配置された上層シート10と、非肌側(不透液性裏面シート2側)に配置された下層シート11との間の所定領域に、高吸水性ポリマー12が配置された構造を成している。前記高吸水性ポリマー12は、上層シート10と下層シート11との間において、パルプなどの繊維状材料に分散された状態で配置されるのではなく、粉粒状の高吸水性ポリマー12の集合体として単独で配置されている。これにより、前記ポリマーシート4の厚みが薄くなり、生理用ナプキン1の薄型化を図ることが可能となる。
【0035】
前記ポリマーシート4の肌側層を構成する前記上層シート10としては、有孔または無孔の不織布が用いられる。不織布の繊維素材としては、化学繊維が含有されている。具体的には、前記透液性表面シート3と同様に、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の熱可塑性の合成繊維の他、これら合成繊維に、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を含めることができる。前記不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。前記上層シート10が化学繊維を含有する不織布からなることにより、上層シート10が液保持しにくく、下層側への通液性が良好になるとともに、上層シート10に体液が保持されて肌側に逆戻りする現象が生じにくくなる。
【0036】
一方、前記下層シート11としては、親水性のセルロース系繊維を含有する不織布で構成されている。前記親水性のセルロース系繊維としては、綿繊維やパルプ繊維などの天然由来のものや、レーヨン繊維、アセテート繊維、リヨセル繊維などの人工セルロース系繊維が挙げられる。前記綿繊維としては、木綿の原綿、精錬・漂白した綿繊維あるいは精錬・漂白後、染色を施した綿繊維、精錬・漂白した脱脂綿繊維、さらには糸もしくは布帛になったものを解繊した反毛等、あらゆる綿繊維を使用できるが、下層シート11における液の吸収スピード及び拡散性を高めるため、特に綿繊維の表面に付着しているコットンワックスの天然油脂を脱脂した脱脂綿を使用するのが好ましい。
【0037】
特に、前記下層シート11として天然由来の繊維を用いる場合、後段で詳述するクレム吸水の試験結果から明らかなように、パルプ繊維などからなる紙よりも、綿繊維100重量%からなる不織布を用いるのが好ましい。後述のクレム吸水試験より、綿繊維100重量%からなる不織布は、紙(クレープ紙)よりも3倍〜4倍程度の拡散性が向上できる。
【0038】
本第1形態例では、前記下層シート11は、綿繊維100重量%からなる不織布を用いるのが好ましい。綿繊維100重量%からなるとは、綿繊維単独で使用され、化学繊維を含まないことである。これにより、下層シート11における液の吸収スピードが速くなるとともに、液拡散性に優れるようになる。
【0039】
前記下層シート11の不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。特に、下層シート11における体液の吸収スピード及び拡散性を高めるため、スパンレース法を用いるのが好ましい。スパンレース不織布は、接着剤を使用しない、柔軟性を有する等の利点を有する。
【0040】
前記下層シート11の目付けは、25〜40g/m2、好ましくは29〜34g/m2、より好ましくは29〜32g/m2とし、厚みは0.25〜0.50mm、好ましくは0.3〜0.4mmとするのが好ましい。前記目付けは5cm×30cm×10枚の重量を電子天秤で計り平米換算して算出する。また、前記厚みはJIS-L1906に準拠して求める。
【0041】
前記下層シート11は、表裏を貫通する開孔、即ち不織布製造時の水流交絡工程において、繊維材料をメッシュ状支持体に担持させることによって形成したものや、製造後の不織布にパンチ(打ち抜き)加工を施したものなど、下層シート11に何らかの開孔処理を施すことにより形成した開孔が設けられないのが好ましい。これにより、下層シート11における吸水能力及び液拡散性が向上できるようになる。
【0042】
前記下層シート11は、図3に示されるように、肌側の面又は非肌側の面に、生理用ナプキン1の長手方向に沿って延びるとともに幅方向に間隔をあけて形成された多数の畝部13、13…と、隣り合う畝部13、13の間に配置された、生理用ナプキン1の長手方向に沿って延びるとともに前記畝部13より非肌側又は肌側に窪んだ多数の溝部14、14…とが形成された畝溝構造を成していてもよい。前記畝部13は、溝部14より、繊維量が多く、かつ高密度に形成するのが好ましい。これによって、繊維の毛細管現象により相対的に高密度の前記畝部13に沿った生理用ナプキン1の長手方向への体液の拡散が生じやすくなる。
【0043】
前記高吸水性ポリマー12としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0044】
図4及び図5に示されるように、前記ポリマーシート4には、高吸水性ポリマー12が配置された画成領域15が設けられるとともに、前記画成領域15の周囲に、上層シート10及び下層シート11を接合する接合部16が設けられている。すなわち、前記上層シート10と下層シート11との間に介在される高吸水性ポリマー12は、上層シート10及び下層シート11を接合する接合部16によって区画された所定の画成領域15のみに配置され、前記接合部16を含むそれ以外の領域には配置されていない。前記高吸水性ポリマー12が配置された画成領域15では、上層シート10と下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が所定の目付以上で介在している。それ以外の領域では、上層シート10と下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が全く存在しないか、前記画成領域15に高吸水性ポリマー12を散布する際にこぼれ落ちるなどして若干量の高吸水性ポリマー12が存在するが、その量が前記画成領域15に配置されたポリマー量と比較して極端に少なくなっている。
【0045】
前記ポリマーシート4の目付としては、10〜300g/m、好ましくは30〜100g/mとするのがよい。
【0046】
以上の構成からなる本生理用ナプキン1の体液の吸収について順を追って説明する。前記透液性表面シート3を透過してポリマーシート4に達した体液は、化学繊維を含有することで保水能力が低く抑えられた上層シート10及び体液との接触初期の吸水スピードが遅い高吸水性ポリマーの層を通過して、下層シート11に到達する。この下層シート11は、上述の通り親水性のセルロース系繊維を含有する不織布で構成されるため、セルロース系繊維の不織布に特有の吸収スピードが速く、液拡散性に優れるという効果によって、下層シート11に素早く吸収されるとともに、この下層シート11を広い範囲に素早く拡散する。下層シート11の広い範囲に拡散した体液は、その拡散した領域において上層側に隣接して配置された高吸水性ポリマー12に徐々に吸水され保持される。このように、親水性のセルロース系繊維を含有する不織布からなる下層シート11において広範囲に拡散させてから高吸水性ポリマー12に移行させる吸水形態を採っているため、高吸水性ポリマー12によるゲルブロッキングが生じにくく、ポリマーシート4全体として、吸収スピードが速く、逆戻りしにくいなどの吸収性能に優れるようになる。
【0047】
また、本生理用ナプキン1では、高吸水性ポリマー12が配置された画成領域15の周囲に設けられる接合部16は、化学繊維を含有する不織布からなる上層シート10とセルロース系繊維を含有する下層シート11とを接合するものであるため、高吸水性ポリマー12が吸水して膨潤したときの圧力によって接合部16が剥離しやすくなっている。具体的には、前記接合部16がヒートシールからなる場合、セルロース系繊維を含有する下層シート11が熱融着せず、化学繊維を含有する上層シート10の溶融した繊維の一部が下層シート11に流れ込んで固化することにより接合状態が保持されているため、化学繊維同士が熱融着されたものと比較して接合強度が弱くなっている。また、前記接合部16が接着剤からなる場合、親水性が高い下層シート11に吸水された体液によって接着剤が濡れることにより、接着剤の接着力が弱められ、接合部16の接合強度が弱くなっている。このように、接合部16が剥離することによって、高吸水性ポリマー12が配置された画成領域15が拡大し、膨潤した高吸水性ポリマー12が流動してゲルブロッキングが防止でき、体液の吸収性に優れるようになる。
【0048】
以下、前記ポリマーシート4について更に詳細に説明すると、前記画成領域15は、ポリマーシート4の平面視で、上層シート10及び下層シート11の外縁まで達しない上層シート10及び下層シート11の中間領域に形成されている。これにより、高吸水性ポリマー12のこぼれが防止できる。
【0049】
前記画成領域15は、上層シート10及び下層シート11に対し前記接合部16によって区画された複数のセル形態で配置してもよいし、上層シート10及び下層シート11の外縁部に沿って設けられた接合部16で囲まれたシートのほぼ全面に亘る一つの領域からなる形態で配置してもよい。高吸水性ポリマー12の偏りを防止し、シート全体に亘ってほぼ均等な吸水能力が得られるようにするため、前記画成領域15は、複数のセル形態で配置するのが好ましい。前記高吸水性ポリマー12は、ホットメルト接着剤などでシートに固定するのが好ましい。
【0050】
上層シート10及び下層シート11の外縁部では、前記接合部16の外側に前記接合部16より接合強度が高い周方向に連続する外縁接合部(図示せず)を設けるか、前記画成領域15を区画する前記接合部16のうち最も外縁部に近い部分の接合強度を高めることによって、高吸水性ポリマー12が吸水して膨潤し接合部16の接合が剥離したときに、外縁部から高吸水性ポリマー12がこぼれるのを防止するのが好ましい。前記接合部16より接合強度を高めるには、接合部の幅を大きくしたり、接着強度の強い接着剤を使用したりすることにより行うことができる。
【0051】
前記画成領域15は、図4に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って格子状に設けるのが好ましい。すなわち、前記画成領域15は、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って整列した正格子状に配置するか、長手方向又は幅方向に沿って1列おきに半ピッチずつずらした千鳥格子状に配置するのが好ましい。
【0052】
前記画成領域15は、周囲を区画する前記接合部16の配置により、種々の平面パターンで形成することができる。
【0053】
具体的には、前記ポリマーシート4は、図4に示されるように、平面視で、少なくとも上下左右位置が上層シート10及び下層シート11を接合する接合部16によって囲まれるとともに、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列され、内部に高吸水性ポリマー12が配置された複数の画成領域15、15…に区画された構造とするのが好ましい。
【0054】
前記画成領域15の配置パターンは、図示例のように、平面形状が生理用ナプキン1の長手方向に長い略楕円形状を成し、この画成領域15、15…を正格子状に配置することにより、隣接する4つの画成領域15、15…の中央に、内部に高吸水性ポリマー12が配置されない略菱形の画成領域17が区画されるようにするのが好ましい。
【0055】
より具体的に説明すると、前記ポリマーシート4は、図4に示されるように、上層シート10と下層シート11とが、千鳥格子状配置で設けられた第1接合部16aによって接合されるとともに、上下左右位置に存在する4つの各第1接合部16a、16a…同士を結ぶ斜め中間位置に設けられた第2接合部16bによって接合されている。前記千鳥格子状配置とは、ピッチが同じ隣り合う行又は列を、1行おき又は1列おきに半ピッチずらして配置したものであり、1行おき又は1列おきに上下方向及び左右方向に整列するように配置したものである。また、本書において、上下位置とは、生理用ナプキン1の長手方向(前後方向)に一致する方向の位置であり、左右位置とは、生理用ナプキン1の幅方向に一致する方向の位置である。
【0056】
また、前記ポリマーシート4は、前記第1接合部16aと第2接合部16bとによって囲まれるとともに、ナプキン長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列された、内部に高吸水性ポリマー12が封入された複数の第1画成領域15と、隣接する(上下方向及び左右方向に近接する)4つの第1画成領域15、15…の中央に位置するとともに、斜め4方向が前記第2接合部16bによって囲まれた、内部に高吸水性ポリマー12が配置されない第2画成領域17とに区画されている。
【0057】
すなわち、前記第1画成領域15は、上下左右位置にそれぞれ配置された第1接合部16a、16a…と、上下左右位置の中間であって斜め4方向位置にそれぞれ配置された第2接合部16b、16b…とによって囲まれている。また、前記第2画成領域17は、正格子状に配列された前記第1画成領域15、15…が上下方向及び左右方向に近接する4つの第1画成領域15、15…で囲まれた中央に位置し、斜め4方向がそれぞれ前記第2接合部16bによって囲まれている。
【0058】
ある1つの第1画成領域15を基準としてみたとき、その周囲には、ナプキン長手方向にそれぞれ第1画成領域15が隣接するとともに、ナプキン幅方向にそれぞれ第1画成領域15が隣接し、かつこれら周囲に配置された第1画成領域15、15…の中間であって、基準となる中央の第1画成領域15の斜め4方向にそれぞれ第2画成領域17が隣接している。
【0059】
前記第1画成領域15では、図4及び図5に示されるように、前記第1接合部16a及び第2接合部16bで囲まれた領域内の上層シート10が、概ね中央部を頂点としてドーム状に肌側に膨出することにより、上層シート10と下層シート11との間に空間部が形成されるようになっている。また、第2画成領域17では、図4及び図7に示されるように、前記第2接合部16bによって斜め4方向が囲まれた領域内の上層シート10が、概ね中央部を頂点として略四角錐状に肌側に膨出することにより、上層シート10と下層シート11との間に空間部が形成されるようにしてもよいし、図8に示されるように、上層シート10が下層シート11の上面に空間部が形成されることなく隣接して積層されることにより、上層シート10と下層シート11との間に空間部が形成されないようにしてもよい。
【0060】
前記第1画成領域15は、内部に前記高吸水性ポリマー12が配置されたポリマー配置領域とされている。前記第2画成領域17は、内部に高吸水性ポリマー12が配置されないポリマー無配置領域とされているが、内部に高吸水性ポリマー12が配置されたポリマー配置領域としてもよい。
【0061】
前記第2接合部16bの接合強度は、前記第1接合部16aの接合強度より小さく設定されており、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したときの圧力により、第1接合部16aより第2接合部16bの接合が優先的に剥離するように成されているのが好ましい。すなわち、第1接合部16aの接合強度>第2接合部16bの接合強度、の関係を有するのが好ましい。前記第2接合部16bの接合強度を第1接合部16aの接合強度より小さくすることによって、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したとき、比較的弱い力で第2接合部16bの接合が剥離するようになる。また、更に高吸水性ポリマー12の膨潤が進み、より大きな力を生じたときには、前記第1接合部16aの接合も剥離するようになる。前記第2接合部16bの接合強度を前記第1接合部16aの接合強度より小さくするには、第2接合部16bの面積を第1接合部16aの面積より小さくすることにより成すことができる。
【0062】
前記上層シート10及び下層シート11を接合する接合部16は、公知の方法を制限なく採用することができるが、特に、前記上層シート10の外面側からの圧搾と同時に加熱融着するヒートシール又はホットメルトなどの接着剤を用いるのが好ましい。前記ヒートシールでは、下層シート11を構成する綿繊維は溶融しないが、上層シート10に含有される化学繊維が熱可塑性を有しているため、溶融した化学繊維の一部が下層シート11の繊維間に溶け込んで、硬化することにより上層シート10と下層シート11とを接合することができる。
【0063】
前記接合部16は、画成領域15の周囲に沿って間欠的に複数配置するのが望ましい。画成領域15の周囲を取り囲むように連続的に配置した場合には、高吸水性ポリマー12が吸水して膨潤したときに接合部16が剥離しにくく、膨潤した高吸水性ポリマー12が流動できずに、ゲルブロッキングを生じやすくなる。隣り合う接合部16、16の離隔距離は任意であるが、内部に配置された高吸水性ポリマー12の移動が防止できる程度の長さとするのが好ましい。
【0064】
(クレム吸水試験)
綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布とクレープ紙との拡散性を比較するため、JIS P8141に基づく吸水度試験(クレム法)を行った。その結果を表1に示す。表1は、各時間経過時の上昇した水の高さ(距離)を測定したものである。
【0065】
【表1】
【0066】
〔第2形態例〕
次いで、第2形態例に係る生理用ナプキン1Aに用いられるポリマーシート4Aについて、図9に基づいて説明する。なお、説明の簡略化のため、上記第1形態例と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0067】
第2形態例に係る生理用ナプキン1Aでは、肌側に配置された上層シート10と非肌側に配置された下層シート11との間に中間シート19が配設されるとともに、少なくとも前記上層シート10と中間シート19との間の所定領域に高吸水性ポリマー12が配置されたポリマーシート4Aを備え、前記上層シート10が化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記中間シート19及び下層シート11の少なくとも一方が親水性のセルロース系繊維を含有する不織布からなり、かつ前記ポリマーシート4Aに、高吸水性ポリマー12が配置された画成領域15が設けられるとともに、前記画成領域15の周囲に、高吸水性ポリマー12が配置されない前記上層シート10、中間シート19及び下層シート11を接合する接合部16が設けられている。
【0068】
図9に示される形態例では、前記高吸水性ポリマー12は、上層シート10と中間シート19との間のみに配置され、中間シート19と下層シート11との間には配置されていない。
【0069】
前記中間シート19は、前記上層シート10と下層シート11との間に配設され、前記上層シート10及び下層シート11とほぼ同形状に形成されている。前記中間シート19としては、下層シート11の繊維素材に応じて、適宜選択することができる。すなわち、下層シート11が親水性のセルロース系繊維を含有する不織布からなる場合、中間シート19としては、透液性を有する素材であれば足り、例えば、前記上層シート10と同様に有孔または無孔の不織布や、前記下層シート11と同様に親水性のセルロース系繊維を含有する不織布を用いることができる。また、下層シート11が親水性のセルロース系繊維を含有する不織布でない場合、中間シート19としては、親水性のセルロース系繊維を含有する不織布が用いられる。
【0070】
前記中間シート19が親水性のセルロース系繊維を含有する不織布からなる場合、前記中間シート19は、図10に示されるように、透液性を高めるため、表裏を貫通する多数の開孔20、20…が設けられるようにするのが望ましい。
【0071】
前記開孔20は、スパンレース製造時の水流交絡工程において、繊維材料をメッシュ状支持体に担持させることで形成することができる。この場合、使用するメッシュの条件を変更することで、個々の開孔サイズ、開孔率を調整することが可能である。もちろん、製造後の不織布にパンチ(打ち抜き)加工を施して開孔20を形成しても良い。前記開孔20は、中間シート19の全体に設けても良いが、少なくとも体液排出部位Hを含む領域に形成する。好ましくは、体液排出部位Hを含み、製品長さ方向に吸収体長さの15%以上、製品幅方向に吸収体幅の50%以上、さらに好ましくは、体液排出部位Hを含み、製品長さ方向に吸収体長さの50%以上、製品幅方向に吸収体幅の70%以上の領域に設けるようにする。開孔の形成領域が、製品長さ方向に吸収体長さの15%未満でかつ製品幅方向に吸収体幅の50%未満である場合には、体液排出範囲をカバーすることができない事態が発生し、高吸水性ポリマー12によるゲルブロッキングが生じやすくなる。
【0072】
前記中間シート19の体液排出部位Hを含む領域に、表裏を貫通する多数の開孔20を設けているため、この開孔20を通じて中間シート19を速やかに体液が透過するようになり、中間シート19に体液が溜まってこの中間シート19に隣接する高吸水性ポリマー12がゲルブロッキングを生じるのが防止できるようになる。
【0073】
前記開孔20は、図10に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向に長い縦長の形状で形成するのが好ましい。このため、円形の開孔よりも液体が透過しやすくなるので、この開孔20を通じて体液が中間シート19を通過しやすくなり、中間シート19への保水が低減する。また、体液が開孔20を通過する際、液体が縦長に変形しながら通り抜けるため、体液の拡散方向がナプキン長手方向に制御でき、横方向への拡散が抑えられ、横漏れしづらくなる。なお、スパンレースの場合は、開孔形状が一様にはなりずらいが、前記開孔20の形状は、概ね矩形状〜角の取れた長孔形状若しくは楕円形状のような形状となる。
【0074】
前記開孔20の寸法としては、生理用ナプキン1の長手方向の長さL1が、1.0〜4.0mm、好ましくは1.5〜3.0mmとするのがよく、生理用ナプキン1の幅方向の長さL2が、0.5〜1.5mm、好ましくは0.5〜1.0mmとするのがよい。開孔20の寸法が0.5mm未満では体液が通過しにくいとともに、繊維の毛羽立ちにより明確な開孔が形成されにくく、開孔20の最大寸法が4.0mmを超えると開孔20からの液の逆戻り、高吸水性ポリマー12の抜け落ちなどの要因となる。また、前記L1とL2との比(L1/L2)は、1.2〜5.0、好ましくは2.0〜3.0とするのがよい。前記開孔20の面積Aは、0.9〜3.0mm、好ましくは0.9〜2.5mmとするのがよい。更に、開孔率は15〜45%、好ましくは17〜30%、より好ましくは18〜25%とするのがよい。前記開孔20の寸法は、全体に亘って一様である必要はなく、上記の範囲内であれば任意の大きさで形成することができる。
【0075】
前記中間シート19は、図10に示されるように、前記綿繊維によって、生理用ナプキン1の長手方向に沿って延びるとともに幅方向に間隔をあけて形成された多数の縦筋21、21…と、生理用ナプキン1の幅方向に沿って延びるとともに長手方向に間隔をあけて形成された隣接する前記縦筋21、21間を繋ぐ多数の横筋22、22…とが形成されるとともに、前記縦筋21と横筋22とで囲まれた部分に前記開孔20が形成された構造を成している。
【0076】
前記縦筋21の幅W1は、0.5〜2.5mm、好ましくは0.8〜1.3mmとするのがよく、前記横筋22の幅W2は、0.2〜1.6mm、好ましくは0.3〜0.7mmとするのがよい。また、前記幅W1とW2との比(W1/W2)は、1.2〜2.0、好ましくは1.5〜2.0とするのがよい。前記縦筋21の幅W1を横筋22の幅W2より大きくすることによって、縦筋21に沿った生理用ナプキン1の長手方向への液拡散が生じやすくなる。
【0077】
前記縦筋21は、横筋22より、繊維量が多く、かつ高密度に形成されている。これによって、体液が中間シート19を通過する際、繊維の毛細管現象により相対的に高密度の前記縦筋21に沿った生理用ナプキン1の長手方向への拡散が生じやすくなる。また、前記開孔20を通過する体液と中間シート19を浸透する尿の拡散方向が生理用ナプキン1の長手方向で一致するため、前記開孔20を通過する体液に引き込まれるようにして中間シート19の縦筋21を浸透するので、中間シート19の液残りが極力抑制されるようになる。
【0078】
前記繊維量の測定は、JIS P8207の「紙製用パルプのふるい分け試験方法」に従い行うことができる。また、前記密度の測定は、JIS P8118「厚さ及び密度の試験方法」に従い行うことができる。
【0079】
本第2形態例に係る生理用ナプキン1Aでは、上記第1形態例に係る生理用ナプキン1による効果に加えて、特に、前記中間シート19を親水性のセルロース系繊維を含有する不織布で構成することにより、中間シート19に吸水して広い範囲に拡散した体液が、中間シート19の少なくとも上層側に配置された高吸水性ポリマー12に吸水されるため、より確実にゲルブロッキングが生じにくくなるとともに、高吸水性ポリマー12への吸水性に優れるようになる。
【0080】
第2形態例に係る生理用ナプキン1Aの変形例として、図11に示されるように、上層シート10と中間シート19との間及び中間シート19と下層シート11との間のそれぞれの所定領域に高吸水性ポリマー12が配置されたものを挙げることができる。すなわち、中間シート19の上層側及び下層側の両方に高吸水性ポリマー12が配置されている。
【0081】
この場合には、前記中間シート19として、親水性のセルロース系繊維を含有する不織布を用いるのが望ましい。これにより、中間シート19に吸水して広い範囲に拡散した体液が、中間シート19の上層側及び下層側にそれぞれ配置された高吸水性ポリマー12に吸水されるため、より確実にゲルブロッキングが生じにくくなるとともに、高吸水性ポリマー12への吸水性に優れるようになる。
【0082】
また、前記中間シート19に前記開孔20が設けられるのが好ましい。これにより、中間シート19と下層シート11との間に配置された高吸水性ポリマー12の層への通液性が良好になるとともに、前記接合部16においてこの開孔20を通じて上層シート10と下層シート11とが直接接合できるため、接合部16の接合強度をある程度高めることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…ポリマーシート、7…サイド不織布、10…上層シート、11…下層シート、12…高吸水性ポリマー、15…画成領域、16…接合部、19…中間シート
【要約】
【課題】液拡散性を高めて、ゲルブロッキングを生じにくくするとともに、吸収性能に優れるようにする。
【解決手段】肌側に配置された上層シート10と非肌側に配置された下層シート11との間の所定領域に高吸水性ポリマー12が配置されたポリマーシート4を備え、前記上層シート10が化学繊維を含有する不織布からなるとともに、前記下層シート11が親水性のセルロース系繊維を含有する不織布からなり、かつ前記ポリマーシート4に、前記高吸水性ポリマー12が配置された画成領域15が設けられるとともに、前記画成領域15の周囲に、前記上層シート10及び下層シート11を接合する接合部が設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11