特許第6382387号(P6382387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

特許6382387光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置
<>
  • 特許6382387-光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置 図000007
  • 特許6382387-光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置 図000008
  • 特許6382387-光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置 図000009
  • 特許6382387-光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置 図000010
  • 特許6382387-光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置 図000011
  • 特許6382387-光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置 図000012
  • 特許6382387-光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6382387
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   G02B6/44 391
   G02B6/44 366
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-80438(P2017-80438)
(22)【出願日】2017年4月14日
【審査請求日】2017年9月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真之介
(72)【発明者】
【氏名】富川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05826419(US,A)
【文献】 特開2009−237341(JP,A)
【文献】 特開2013−037327(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/104853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニットを、SZ撚り装置を用いてSZ撚りして光ファイバ束を形成するSZ撚り工程と、
前記光ファイバ束を押出成形装置を用いてシースで被覆する被覆工程と、を有し、
前記被覆工程では、前記SZ撚り装置と前記押出成形装置との間に配置された押圧部によって、前記光ファイバ束を押圧しながら、前記光ファイバ束を前記シースで被覆し、
保持部材を前記SZ撚り装置と前記押圧部との間で前記光ファイバ束に巻き付けない、光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項2】
複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニットを、SZ撚り装置を用いてSZ撚りして光ファイバ束を形成するSZ撚り工程と、
フォーミング装置を用いて、前記光ファイバ束を押さえ巻きで包むラッピング工程と、
前記光ファイバ束を押出成形装置を用いてシースで被覆する被覆工程と、を有し、
前記被覆工程では、前記SZ撚り装置と前記押出成形装置との間に配置された押圧部によって、前記光ファイバ束を押圧しながら、前記光ファイバ束を前記シースで被覆し、
前記押圧部は、前記フォーミング装置と一体に設けられている、光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記押圧部は、前記光ファイバ束を挟むように配置された一対の回転体を有し、
前記一対の回転体同士の間を通過前の前記光ファイバ束の直径をDとし、前記一対の回転体同士の間を通過中の前記光ファイバ束の短径をdとするとき、
7≦100−d/D×100≦71
を満足する、
請求項1または2に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項4】
複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニットをSZ撚りして光ファイバ束を形成するSZ撚り装置と、
前記SZ撚り装置の下流側に配置され、前記光ファイバ束を押圧する押圧部と、
前記押圧部の下流側に配置され、前記光ファイバ束をシースで被覆する押出成形装置と、を備え、
保持部材を前記SZ撚り装置と前記押圧部との間で前記光ファイバ束に巻き付けない、光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項5】
複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニットをSZ撚りして光ファイバ束を形成するSZ撚り装置と、
前記SZ撚り装置の下流側に配置され、前記光ファイバ束を押圧する押圧部と、
前記光ファイバ束を押さえ巻きで包むフォーミング装置と、
前記押圧部の下流側に配置され、前記光ファイバ束をシースで被覆する押出成形装置と、を備え、
前記押圧部は、前記フォーミング装置と一体に設けられている、光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項6】
前記押圧部は、少なくとも1つの回転体を有する、請求項4または5に記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示されるような光ファイバケーブルの製造方法が知られている。この光ファイバケーブルの製造方法は、複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニットを、SZ撚り装置を用いてSZ撚りして光ファイバ束を形成するSZ撚り工程と、光ファイバ束を押出成形装置を用いてシースで被覆する被覆工程と、を有している。
このように、SZ状に撚り合わされた光ファイバ束をシースで被覆して光ファイバケーブルを製造することで、例えば光ファイバケーブルがドラムに巻き付けられた場合に、光ファイバに作用する張力や側圧を低減し、光ファイバの伝送損失を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−233252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では光ファイバケーブルの多心化が進んでおり、多数の光ファイバをSZ状に撚り合わせた状態でシース内に収容する必要が生じている。このように多数の光ファイバをSZ状に撚り合わせると、光ファイバ自身がその剛性によって直線状に戻ろうとする力も大きくなる。このため、SZ撚りされた光ファイバ束に含まれる光ファイバが、SZ撚りが解消される方向に移動する「撚り戻り」と言われる現象が発生しやすくなる。撚り戻りによって光ファイバ束のSZ撚りが解消されると、光ファイバに作用する張力や側圧を低減する効果が弱まってしまう。
【0005】
そこで、光ファイバ束の撚り戻りが生じたとしても、光ファイバ束のSZ撚りが維持されるように、SZ撚り装置の揺動角度を大きく設定することが考えられる。しかしながら、SZ撚り装置の揺動角度を大きくすると、シース内で光ファイバに作用する撚り戻りの力や、シース内における光ファイバの変位量も大きくなる。光ファイバ束の外周は、シースの内周面に当接するため、シースは、このような大きな撚り戻りの力や光ファイバの変位を受けて変形し、光ファイバケーブルにうねりが生じてしまう場合がある。光ファイバケーブルにうねりが生じると、この光ファイバケーブルをドラムに巻き付ける際の作業性が低下したり、ドラムに巻き付け可能な光ファイバケーブルの長さが短くなったり、この光ファイバケーブルを敷設する際の作業性が低下したりする。
【0006】
一方、シース内における光ファイバの撚り戻りを防止するため、光ファイバ束がSZ状に撚られた状態を保つための保持部材を、光ファイバ束に巻き付けることも考えられる。しかしながら、このような構成では、保持部材を光ファイバ束に巻き付けた状態で、光ファイバ束をシースで被覆する必要が生じる。この場合、製造装置が複雑になり、製造コストの上昇などの原因となってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、SZ撚りされた光ファイバ束の撚り戻りを簡易な構成で抑止可能な光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様に係る光ファイバケーブルの製造方法は、複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニットを、SZ撚り装置を用いてSZ撚りして光ファイバ束を形成するSZ撚り工程と、前記光ファイバ束を押出成形装置を用いてシースで被覆する被覆工程と、を有し、前記被覆工程では、前記SZ撚り装置と前記押出成形装置との間に配置された押圧部によって、前記光ファイバ束を押圧しながら、前記光ファイバ束を前記シースで被覆する。
【0009】
上記態様に係る製造方法では、SZ撚り装置によってSZ状に撚られた光ファイバ束を、押圧部で押圧しながら、この光ファイバ束の外周に押出成形装置によってシースを設ける。このように光ファイバ束を押圧することで、光ファイバ束に含まれる光ファイバ同士が、これら光ファイバ自体の剛性によって、SZ撚りが解消されるように相対移動するのが抑えられる。従って、SZ撚り装置と押出成形装置との間で、光ファイバ束のSZ撚りが解かれてしまうのを抑制し、SZ撚りされた状態を維持したまま、光ファイバ束を押出成形装置内に導入することができる。このため、SZ撚り装置の設定角度を極端に大きくせずとも、光ファイバ束のSZ撚りを維持可能となり、光ファイバケーブルにねじれが生じるのを抑えることができる。
また、上記作用効果は押圧部により得られるため、例えば撚り戻りを防止するための保持部材を光ファイバ束に巻き付ける場合と比較して、製造装置をより簡易な構成とすることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2態様に係る光ファイバケーブルの製造装置は、複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニットをSZ撚りして光ファイバ束を形成するSZ撚り装置と、前記SZ撚り装置の下流側に配置され、前記光ファイバ束を押圧する押圧部と、前記押圧部の下流側に配置され、前記光ファイバ束をシースで被覆する押出成形装置と、を備えている。
【0011】
上記態様の製造装置によれば、上述した作用効果を奏する製造方法を容易に実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、SZ撚りされた光ファイバ束の撚り戻りを簡易な構成で抑止可能な光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】光ファイバケーブルの構成例を説明する断面図である。
図2】第1実施形態の光ファイバケーブルの製造装置の構成を説明する概略図である。
図3】第2実施形態の光ファイバケーブルの製造装置の構成を説明する概略図である。
図4】第2実施形態のフォーミング装置の平面図である。
図5】第2実施形態のフォーミング装置の側面図である。
図6】押圧部の概略側面図である。
図7】押圧部の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
まず、本実施形態に係る製造装置によって製造される光ファイバケーブルの構成例を説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1に示すように、光ファイバケーブル100は、コア2と、コア2を被覆するシース101と、シース101内に埋設された一対の抗張力体7および線条体8と、を備えている。光ファイバケーブル100は、その内部に例えば100本以上の光ファイバ3を有する高密度のスロットレス型光ファイバケーブルである。
【0016】
コア2は、複数の光ファイバ3をそれぞれ有する複数の光ファイバユニット5と、これらの光ファイバユニット5を包む押さえ巻き6と、を備えている。押さえ巻き6は、例えばPETフィルムや不織布の他に、止水特性を付与する吸水テープなどの吸水性を有する材質により形成されている。
【0017】
光ファイバ3としては、光ファイバ心線や光ファイバ素線などを用いることができる。光ファイバユニット5は、複数の光ファイバ3と、これらの光ファイバ3を束ねる結束材4と、を備えている。光ファイバユニット5は、いわゆる間欠接着型テープ心線であってもよい。光ファイバユニット5が間欠接着型テープ心線である場合、複数の光ファイバ3は、その延在方向に対して直交する方向に引っ張ると、網目状(蜘蛛の巣状)に広がるように互いに接着されている。詳しくは、ある一つの光ファイバ3が、その両隣の光ファイバ3に対して長手方向で異なる位置においてそれぞれ接着されており、かつ、隣接する光ファイバ3同士は、長手方向で一定の間隔をあけて互いに接着されている。
【0018】
なお、コア2に含まれる光ファイバユニット5の態様は間欠接着型テープ心線に限られず、適宜変更してもよい。
また、複数の光ファイバ3が、結束材4によって束ねられておらず、そのまま押さえ巻き6に包まれていてもよい。この場合、コア2は光ファイバユニット5を有さず、複数の光ファイバを有していてもよい。
【0019】
シース101の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレン共重合体(EP)などのポリオレフィン(PO)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)などを用いることができる。シース101の外周面には、光ファイバケーブル100の全長にわたって延びる一対の突起101aが形成されている。
【0020】
線条体8としては、PPやナイロン製の円柱状ロッドなどを用いることができる。また、PPやポリエステルなどの繊維を撚り合わせた糸(ヤーン)により線条体8を形成し、線条体8に吸水性を持たせてもよい。
一対の線条体8は、コア2を径方向で挟んで配設されている。なお、シース101に埋設される線条体8の数は、1または3以上であってもよい。
抗張力体7の材質としては、例えば金属線(鋼線など)、抗張力繊維(アラミド繊維など)、およびFRPなどを用いることができる。
【0021】
次に、上記のような光ファイバケーブル100を製造するための製造装置10Aの構成を、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、製造装置10Aは、結束装置11と、SZ撚り装置12と、フォーミング装置20と、押出成形装置14と、を備えている。また、製造装置10Aは、線条体8および抗張力体7を、コア2に縦添えしてシース101内に埋設するための不図示の繰り出し装置を備えている。これらの繰り出し装置は、フォーミング装置20と押出成形装置14との間に配置される場合がある。この場合、繰り出し装置を配置するスペースを確保するため、フォーミング装置20と押出成形装置14との間、若しくはSZ撚り装置12と押出成形装置14との間の距離は、ある程度大きくする必要がある。
【0022】
結束装置11は、複数の光ファイバ3同士を結束材4で結束し、光ファイバユニット5とする。なお、光ファイバユニット5が間欠接着型テープ心線である場合、結束装置11の上流側に、光ファイバ3同士を間欠的に接着する接着装置が配置されていてもよい。
【0023】
SZ撚り装置12は、結束装置11の下流側に配置されており、複数の光ファイバユニット5同士をSZ状に撚り合わせて、光ファイバ束Bを形成する。
フォーミング装置20は、SZ撚り装置12の下流側に配置されており、SZ状に撚り合わされた光ファイバ束Bの周囲に押さえ巻き6を縦添えして巻き付けることで、コア2を形成する。
押出成形装置14は、フォーミング装置20の下流側に配置されており、コア2の周囲に、シース101を円筒状に押出成形することで、コア2を被覆し、光ファイバケーブル100を形成する。押出成形装置14を通過した後では、シース101の内周面が光ファイバ束Bの外周に接することで、光ファイバ束Bに含まれる光ファイバ3同士の相対移動が規制される。
【0024】
ここで、SZ撚り装置12の下流側では、光ファイバ3自身の剛性によって、SZ撚りを解消する方向に光ファイバ束Bに含まれる光ファイバ3同士が相対移動する「撚り戻り」と呼ばれる現象が発生する。特に、SZ撚り装置12と押出成形装置14との間では、シース101の内周面が光ファイバ束Bの外周に接する前の状態であるため、光ファイバ3同士の相対移動が規制されず、光ファイバ束Bの撚り戻りが生じやすい。
【0025】
そこで本実施形態の製造装置10Aは、SZ撚り装置12とフォーミング装置20との間に配置された、光ファイバ束Bを押圧する押圧部13を備えている。図2の例では、押圧部13として、2つのコロ(回転体)13a、13bが設けられている。これら2つのコロ13a、13bは、光ファイバ束Bを挟んで配置されている。また、これら2つのコロ13a、13bは、光ファイバ束Bが延びる長手方向において、互いに異なった位置に配置されている。
【0026】
これらのコロ13a、13bが、SZ状に撚り合わされた光ファイバ束Bを挟んで押圧することで、この光ファイバ束Bに含まれる光ファイバ3同士の相対移動が規制され、撚り戻りが抑えられる。また、コロ13a、13bは光ファイバ束Bを押圧しつつ回転するので、コロ13a、13bと光ファイバ束Bとの摩擦が小さくなり、光ファイバ3に外傷などが生じるのを抑えることができる。
【0027】
なお、押圧部13は1つまたは3つ以上のコロを有していても良い。押圧部13が有するコロが1つである場合であっても、例えばSZ撚り装置12とフォーミング装置20との間に位置する光ファイバ束B自身の張力によって、光ファイバ束Bがコロに押し付けられることで、この押圧力によって撚り戻りを抑えることができる。
なお、押圧部13として、コロ以外の回転体(ベルトなど)や、回転体ではない構造物(棒状体など)を用いてもよい。
【0028】
製造装置10Aによって光ファイバケーブル100を製造する場合、まず、複数の光ファイバ3を結束装置11で結束し、光ファイバユニット5とする(結束工程)。
次に、複数の光ファイバユニット5を、SZ撚り装置12を用いてSZ撚りして光ファイバ束Bを形成する(SZ撚り工程)。
次に、光ファイバ束Bを押圧部13によって押圧しながら、フォーミング装置20によって押さえ巻き6で光ファイバ束Bを包んでコア2を形成し(ラッピング工程)、押出成形装置14によってコア2をシース101で被覆する(被覆工程)。これにより、光ファイバケーブル100が得られる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態の製造装置10Bでは、図3に示すように、押圧部13とフォーミング装置とが一体となっている点が、第1実施形態と異なる。
【0030】
図4および図5を用いて、本実施形態のフォーミング装置20Aの構成について説明する。ここで、本実施形態ではXYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。X方向は、製造装置10Bの上流側から下流側に向かう方向である。Z方向は上下方向である。Y方向は、X方向およびZ方向の双方向に直交する方向である。
図4では、光ファイバ束Bおよび押さえ巻き6の図示を省略している。
【0031】
図4および図5に示すように、フォーミング装置20Aは、押さえ巻き6を案内するガイド部21と、ガイド部21のY方向における両端部に設けられた一対の側壁22と、光ファイバ束Bを案内するガイド筒23と、を有している。
ガイド筒23の上流側の端部には、光ファイバユニット5の進入口23aが設けられている。ガイド筒23の下流側の端部には、光ファイバユニット5の出口23bが設けられている。ガイド部21の下流側の端部は、ガイド筒23の出口23bを包むように湾曲している。このため、ガイド部21に沿って下流側に移動する押さえ巻き6は、ガイド筒23の出口23bを出た光ファイバ束Bを包むように丸められる。
【0032】
ここで、一対の側壁22にはそれぞれ、コロ13a、13bを回転可能に支持する支持壁部22aが設けられている。支持壁部22aは、ガイド筒23の進入口23aの近傍に設けられている。コロ13、13bはそれぞれ、一対の支持壁部22aによって回転可能に支持されており、ガイド筒23の進入口23aの近傍に配置されている。
【0033】
図6はY方向から見た側面視における押圧部13の説明図であり、図7はX方向から見た正面視における押圧部13の説明図である。図7に示すように、コロ13a、13bはそれぞれ、Y方向に延びる円柱状に形成されるとともに、Y方向における中央部からY方向における両端部に向かうに従って、漸次拡径している。これにより、X方向から見た正面視(図7)において、コロ13aとコロ13bとの間の距離は、各コロ13a、13bのY方向中央部において最も大きく、各コロ13a、13bのY方向両端部に向かうに従って漸次小さくなっている。
【0034】
本実施形態では、正面視において、コロ13a、13b同士の間の距離が最も大きくなる部分における、これらのコロ13a、13b同士の間の距離を、コロ間距離dという。また、押圧部13によって押圧される前の光ファイバ束Bの直径を、束直径Dという。図6に示すように、コロ間距離dは、束直径Dよりも小さくなっている。これにより、図7に示すように、正面視において、光ファイバ束Bはコロ間距離dが短径となる楕円状に変形する。なお、コロ13a、13bは、これらコロ同士の相対的な位置が変化しないように、一対の支持壁部22aによって支持されている。このため、光ファイバ束Bがコロ13a、13b同士の間を圧縮された状態で通過する際には、この光ファイバ束Bの短径は、コロ間距離dと同等になる。
【実施例】
【0035】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0036】
(144心ケーブル)
まず、下記表1に示す比較例1〜2および実施例1〜3の製造条件によって、144心の光ファイバケーブルを製造した結果について説明する。ここでは、12本の光ファイバを有する12の間欠接着型テープ心線を備えた光ファイバケーブルを製造した。なお、表1に示す設定角度とは、SZ撚り装置12を用いて複数の間欠接着型テープ心線をSZ撚りする際に、このSZ撚り装置12を揺動させる角度の範囲を意味している。例えば設定角度が±350°の場合は、SZ撚り装置12が、CW方向に350°揺動した後、CCW方向に350°揺動する動作を繰り返すことで、間欠接着型テープ心線をSZ撚りする。また、表1に示す導入角度とは、SZ撚りされた間欠接着型テープ心線がシース内に収容された状態において、間欠接着型テープ心線に実際に与えられたSZ撚りの角度を示している。導入角度は、ケーブル化後に、光ファイバケーブルを長手方向に所定の間隔を空けて切断し、特定の光ファイバまたは光ファイバユニットの各切断面における位置を確認することで測定した。設定角度と導入角度との差が大きいほど、間欠接着型テープ心線が大きく撚り戻りしていることを意味する。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示す伝送損失は、各ケーブルをドラムに巻き付けた状態における、波長1.55μmでの伝送損失をOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)によって測定した際の判定結果を示している。具体的には、伝送損失が0.25dB/km以下の場合は判定結果が良好であるとして○を表記し、伝送損失が0.25dB/kmを超えた場合は結果が不充分であるとして×を表記している。
表1に示すうねり角度は、光ファイバケーブルに生じたうねりの大きさを示している。うねり角度は、光ファイバケーブルの突起101aが、光ファイバケーブルの中心軸回りに振れる角度の幅によって測定した。例えばうねり角度が±30°である場合は、突起101aが光ファイバケーブルの中心軸回りに±30°、すなわち60°の幅の範囲内で振れていることを意味する。
【0039】
表1に示すドラム巻長は、光ファイバケーブルをドラムに巻き付ける際の、巻き付け可能な長さを相対比較した結果を示している。具体的には、同一のドラムに対して、比較例1の光ファイバケーブルを巻き付けた際の巻き付け可能な長さに対する、他の条件の光ファイバケーブルを巻き付けた際の巻き付け可能な長さを示している。例えば、ドラム巻長が150%である場合、その光ファイバケーブルは、比較例1の光ファイバケーブルよりも1.5倍の長さをドラムに巻き付け可能であることを示している。
【0040】
表1に示すように、比較例1は、押圧部13としてのコロを設けず、設定角度を±1000°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±30°であった。このように、うねり角度が大きくなったのは、押圧部13としてのコロを有さないことで設定角度と導入角度との差分が非常に大きくなり、シース内で光ファイバ束Bが大きく撚り戻りしたためであると考えられる。また、比較例1の光ファイバケーブルでは、うねり角度が大きいため、このケーブルをドラムに巻き付けると、巻き付けられた状態で隣り合う光ファイバケーブル同士の隙間が大きくなった。これにより、ドラムに巻き付け可能な光ファイバケーブルの長さが、他の製造条件により製造したケーブルに比べて小さくなった。
【0041】
表1に示すように、比較例2は、押圧部13としてのコロを設けず、設定角度を±600°とした。この結果、導入角度は±90°となり、伝送損失の判定結果は不十分であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例1に対して150%となった。このように、伝送損失の判定結果が不充分となったのは、導入角度が±90°であり小さいことによると考えられる。すなわち、シース内における光ファイバ束BのSZ撚りの角度が小さいために、この光ファイバケーブルをドラムに巻き付けた際に光ファイバに生じる張力や側圧を低減する効果が小さくなってしまったためであると考えられる。
【0042】
表1に示すように、実施例1は、押圧部13として1つのコロを設け、設定角度を±500°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±10°であり、ドラム巻長は比較例1に対して130%となった。比較例1と実施例1とを比べると、設定角度が大きく異なっているにも関わらず、導入角度が同等となっている。これは、実施例1を製造する際に押圧部13として設けた1つのコロにより、光ファイバ束Bの撚り戻りが抑えられたことを意味している。一方、比較例2と実施例1とを比べると、実施例1の方が、ドラム巻長が小さくなっている。これは、実施例1のうねり角度が比較例2のうねり角度よりも大きいため、光ファイバケーブルをドラムに巻き付けた状態で、隣り合う光ファイバケーブル同士の隙間が比較的大きくなったことによる。
【0043】
表1に示すように、実施例2は、押圧部13として2つのコロを設け、設定角度を±350°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例1に対して150%となった。実施例1と実施例2とを比べると、同等の導入角度を実現するために必要な設定角度が、実施例2の方が小さいことが判る。これは、押圧部13としてのコロを増やしたことで、光ファイバ束Bの撚り戻りを抑える効果がより大きくなったことを意味している。また、実施例2では、実施例1と比べて設定角度と導入角度との差が小さくなっているため、うねり角度も小さく抑えられている。この結果、光ファイバケーブルをドラムに巻き付けた状態における、隣り合う光ファイバケーブル同士の隙間が、実施例2の方が実施例1よりも小さくなり、光ファイバケーブルをより高密度にドラムに巻き付けることが可能となった。従って、実施例2のドラム巻長は、実施例1のドラム巻長よりも大きくなっている。
【0044】
表1に示すように、実施例3は、押圧部13として3つのコロを設け、設定角度を±300°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例1に対して150%となった。実施例2と実施例3とを比べると、実施例3のほうが設定角度と導入角度との差が小さくなっている。これは、実施例2の構成に対して、押圧部13としてのコロの数をさらに増やしたことで、光ファイバ束Bの撚り戻りを抑止する効果がさらに高まったことを意味している。
【0045】
なお、実施例1〜3を比較すると、コロを1つから2つに増やすことで撚り戻りを抑止する効果が大きく向上し、コロを2つから3つに増やすことで撚り戻りを抑止する効果がさらに向上することが判る。ただし、コロの数を増やすと、このように撚り戻りを防止する効果の向上が期待できるが、その分だけ押圧部13の専有体積も大きくなる。従って、光ファイバケーブルに要求される性能に応じて、配置するコロの数を増減させるとよい。
【0046】
(432心ケーブル)
次に、下記表2に示す比較例3〜4および実施例4〜6の製造条件によって、432心の光ファイバケーブルを製造した結果について説明する。ここでは、12本の光ファイバを有する6の間欠接着型テープ心線を結束材で結束させたものを1つのユニットとし、このユニットを6つ備えた光ファイバケーブルを製造した。他の条件は、表1に関する説明において記載したものと同様である。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、比較例3は、押圧部13としてのコロを設けず、設定角度を±1100°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±33°となった。比較例3と、表1の比較例1とを比べると、導入角度は同等であるが、設定角度は比較例3の方が大きい。これは、比較例3の方が比較例1よりも光ファイバの本数が多いため、光ファイバ束Bの剛性も大きくなり、撚り戻りしやすくなったためであると考えられる。さらに、比較例3の方が、比較例1よりも、設定角度と導入角度との差が大きくなっている。これにより、シース101内に収容された後で光ファイバが撚り戻りしようとする力が大きくなり、この力を受けたシース101がより大きく変形した結果、比較例3の方が比較例1よりもうねり角度が大きくなっている。
【0049】
表2に示すように、比較例4は、押圧部13としてのコロを設けず、設定角度を±600°とした。この結果、導入角度は±70°となり、伝送損失の判定結果は不充分であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例3に対して160%となった。比較例4の導入角度が、比較例2の導入角度よりも小さいのは、比較例4の方が比較例2よりも光ファイバ束Bが有する光ファイバの本数が多いため、光ファイバ束Bが撚り戻りしやすいこためである。
【0050】
また、実施例4は、押圧部13として1つのコロを設け、設定角度を±500°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±12°であり、ドラム巻長は比較例3に対して125%となった。
また、実施例5は、押圧部13として2つのコロを設け、設定角度を±350°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例3に対して160%となった。
また、実施例6は、押圧部13として3つのコロを設け、設定角度を±300°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例3に対して160%となった。
このように、実施例4〜6の光ファイバケーブルでは、実施例1〜3よりも心数の多い光ファイバケーブルであるにも関わらず、実施例1〜3の光ファイバケーブルと同等の性能を得ることができた。これは、押圧部13としてのコロが、光ファイバ束Bの撚り戻りを抑えたためであると考えられる。
【0051】
(1728心ケーブル)
次に、下記表3に示す比較例5〜6および実施例7〜9の製造条件によって、1728心の光ファイバケーブルを製造した結果について説明する。ここでは、12本の光ファイバを有する12の間欠接着型テープ心線を結束材で結束させたものを1つのユニットとし、このユニットを12個備えた光ファイバケーブルを製造した。その他の条件は、表1に関する説明において記載したものと同様である。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、比較例5は、押圧部13としてのコロを設けず、設定角度を±1300°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±45°となった。
また、比較例6は、押圧部13としてのコロを設けず、設定角度を±600°とした。この結果、導入角度は±30°となり、伝送損失の判定結果は不充分であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例5に対して180%となった。
このように、比較例5〜6では1728本の光ファイバを有する高密度の光ファイバケーブルを、押圧部13を有さない製造装置によって製造しており、光ファイバ束Bが大きく撚り戻りすることによって、光ファイバケーブルにうねりが生じたり、所望の導入角度が得られなかったりしている。
【0054】
これに対し、実施例7は、押圧部13として1つのコロを設け、設定角度を±500°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±15°であり、ドラム巻長は比較例5に対して120%となった。
また、実施例8は、押圧部13として2つのコロを設け、設定角度を±350°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例に対して180%となった。
また、実施例9は、押圧部13として3つのコロを設け、設定角度を±300°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例5に対して180%となった。
以上のように、1728心の高密度型光ファイバケーブルについても、押圧部13を備えた製造装置によって製造することで、光ファイバ束Bの撚り戻りを抑え、所望の性能を与えることができた。
【0055】
次に、上記した1728心の光ファイバケーブルを、図3に示す製造装置10Bで製造した結果について、下記表4を用いて説明する。
【0056】
【表4】
【0057】
表4に示す比較例7〜8は、表3に示す比較例5〜6と同様の条件および結果であるため、説明を省略する。
表4に示すように、実施例10は、押圧部13として、フォーミング装置20と一体の1つのコロを設け、設定角度を±400°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±5°であり、ドラム巻長は比較例7(比較例5)に対して150%となった。
また、実施例11は、押圧部13として、フォーミング装置20と一体の2つのコロを設け、設定角度を±300°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例7に対して180%となった。
また、実施例12は、押圧部13として、フォーミング装置20と一体の3つのコロを設け、設定角度を±200°とした。この結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の判定結果は良好であり、うねり角度は±1°であり、ドラム巻長は比較例7に対して180%となった。
【0058】
このように、実施例10〜12では、実施例7〜9と比較して、設定角度と導入角度との差がさらに小さく、うねり角度が抑えられている。この理由について、以下に考察する。
押圧部13では、光ファイバ束Bを押圧することで、SZ状に撚られた光ファイバ同士の相対移動が規制されるが、この規制力は光ファイバ束Bが押圧部13から離れるほど弱まる。従って、押圧部13から離れた位置では、光ファイバ束Bの撚り戻りが生じやすい。一方、押出成形装置14では、光ファイバ束Bの外周にシース101を被覆することで、シース101内における光ファイバ同士の相対移動を、より強く規制することができる。これらのことから、押圧部13と押出成形装置14との間の距離を小さくすることで、押圧部13と押出成形装置14との間で光ファイバ束Bが撚り戻りしてしまうのを、効果的に防止することができると考えられる。そして、実施例10〜12では、フォーミング装置20と押圧部13とが一体に設けられているため、これらが一体に設けられていない場合(実施例7〜9)と比較して、押圧部13と押出成形装置14との間の距離が小さくなっている。
【0059】
以上のことから、実施例10〜12について、実施例7〜9と比較して良好な結果が得られたのは、押圧部13としてのコロをフォーミング装置20と一体に設けたことで、押圧部13と押出成形装置14との間の距離が小さくなり、この間で生じる光ファイバの撚り戻りが小さく抑えられたことに起因すると考えられる。
なお、先述した抗張力体7若しくは線条体8の繰り出し装置を、フォーミング装置20と押出成形装置14との間に設ける場合には、フォーミング装置20と押出成形装置14との間の距離をある程度確保する必要がある。このため、押圧部13をフォーミング装置20と一体に設けることで、押圧部13と押出成形装置14との間の距離をなるべく小さくする構成が望ましい。
【0060】
(押え込み率)
次に、先述したコロ間距離dおよび束直径Dの好ましい条件について説明する。ここでは、432心の光ファイバケーブルを、下記表5に示すように、コロ間距離dおよび束直径Dの関係を変えた条件1〜6によって製造した。これら432心の光ファイバケーブルは、12本の光ファイバを有する6の間欠接着型テープ心線を結束材で結束させたものを1つのユニットとし、このユニットを6つ備えている。
なお、表5に示す押え込み率Rは、以下の数式(1)によって算出される。
R[%]=100−d/D×100 …(1)
【0061】
また、表5に示すテープ分離とは、上記間欠接着型テープ心線に設けられている接着部の剥離の度合いを示している。具体的には、5mの間欠接着型テープ心線の中で、接着部の剥離が生じている箇所の数を確認し、剥離箇所が1以下であればテープ分離が少なく結果が良好であるとして○を表示し、剥離箇所が2以上であればテープ分離が多く結果が不充分であるとして×を表示している。
【0062】
【表5】
【0063】
表5に示すように、条件1〜6では、束直径Dを8.4mmで固定し、コロ間距離dを1.5mm〜8.4mmの範囲で変化させた。これにより、押え込み率Rを0%〜82%の範囲で変化させた。なお、押え込み率Rが0%の場合とは、押圧部13としてのコロ13a、13bが光ファイバ束Bを押圧していない状態を示している。
条件1では、コロ間距離dを8.4mm、押え込み率Rを0%とした結果、導入角度は±50°となり、伝送損失の評価結果は不充分であり、テープ分離の評価結果は良好であった。このように伝送損失の結果が不充分となったのは、導入角度が小さいためであると考えられる。
【0064】
条件2〜5では、コロ間距離dを2.4〜7.8mm、押え込み率Rを7%〜71%の範囲で変化させた結果、導入角度はいずれも±150°となり、伝送損失およびテープ分離の評価結果はいずれも良好であった。
条件6では、コロ間距離dを1.5mmとし、押え込み率Rを82%とした結果、導入角度は±150°となり、伝送損失の評価結果は良好であり、テープ分離の評価結果は不充分となった。このようにテープ分離の評価結果が不充分となったのは、束直径Dに対してコロ間距離dを小さくし過ぎた結果、光ファイバ束Bが過剰に圧縮され、間欠接着型テープ心線の接着部に大きな力が作用してこの接着部が剥離してしまったためであると考えられる。以上のことから、押え込み率Rは7%〜71%の範囲内とすることが望ましい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバケーブルの製造方法によれば、SZ撚り装置12によってSZ状に撚られた光ファイバ束Bを、押圧部13で押圧しながら、この光ファイバ束Bの外周に押出成形装置14によってシース101を設ける。このように光ファイバ束Bを押圧することで、光ファイバ束Bに含まれる光ファイバ3同士が、これら光ファイバ3自体の剛性によって、SZ撚りが解消されるように相対移動するのが抑えられる。従って、SZ撚り装置12と押出成形装置14との間で、光ファイバ束BのSZ撚りが解かれてしまうのを抑制し、SZ撚りされた状態を維持したまま、光ファイバ束Bを押出成形装置14内に導入することができる。このため、例えばSZ撚り装置12の設定角度を大きくすることにより光ファイバケーブル100にねじれが生じるのが抑えられる。
【0066】
また、押圧部13をフォーミング装置20と一体に設けることにより、押圧部13と押出成形装置14との間の距離を小さくして、この区間で生じる光ファイバ束Bの撚り戻りをより確実に抑制することができる。
【0067】
また、押え込み率Rを7%〜71%の範囲内とすることで、押圧部13による撚り戻りの抑止効果を発揮させつつ、光ファイバユニット5として間欠接着型テープ心線を用いた場合に、この間欠接着型テープ心線が押圧部13によって過剰に圧縮されて、接着部が剥離してしまうのを抑えることができる。
【0068】
また、押圧部13としてコロ13a、13bを用いた場合には、光ファイバ束Bが押圧部13により押圧された状態で下流側に向けて流れたとしても、押圧部13から受ける摩擦を押さえ、光ファイバ3に外傷などが生じるのを防止することができる。
【0069】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0070】
例えば、前記実施形態では、SZ撚り装置12が複数の光ファイバユニット5同士をSZ状に撚り合わせているが、本発明はこれに限られず、SZ撚り装置12が、複数の光ファイバ3同士をSZ状に撚り合わせても良い。すなわち、光ファイバユニット5が構成されず、複数の光ファイバ3が直接SZ撚りされる構成である。この場合であっても、SZ状に撚り合わされた光ファイバ束Bに撚り戻りが生じるのを、押圧部13によって抑制することができる。
【0071】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
3…光ファイバ 5…光ファイバユニット 6…押さえ巻き 10A、10B…光ファイバの製造装置 12…SZ撚り装置 13…押圧部 13a、13b…回転体(コロ) 14…押出成形装置 20、20A…フォーミング装置 100…光ファイバケーブル 101…シース B…光ファイバ束
【要約】      (修正有)
【課題】SZ撚りされた光ファイバ束の撚り戻りを簡易な構成で抑止可能とする光ファイバケーブルの製造方法および光ファイバケーブルの製造装置を提供する。
【解決手段】複数の光ファイバ若しくは複数の光ファイバユニット5を、SZ撚り装置12を用いてSZ撚りして光ファイバ束Bを形成するSZ撚り工程と、光ファイバ束を押出成形装置14を用いてシースで被覆する被覆工程と、を有し、被覆工程では、SZ撚り装置と押出成形装置との間に配置された押圧部13によって、光ファイバ束を押圧しながら、光ファイバ束をシースで被覆する、光ファイバケーブル100の製造方法。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7