【文献】
Pharmacol. Ther.,2011年 1月,vol.129, no.1,pp.21-28
【文献】
Rev. Diabet. Stud.,2009年,vol.6, no.4,pp.260-270
【文献】
Histochem. Cell Biol.,2009年,vol.132, no.5,pp.533-546
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明は、少なくとも一部は、(i)CD10、CXCR4およびCD31について陽性である非接着性細胞(すなわち、SB−3細胞)が、3つの胚葉(germ layers)へ分化され得る;ならびに(ii)これらの細胞は、CD105、CD44およびネスチンについて陽性である接着性細胞(すなわち、SB−4細胞)になることができる、という予想外の発見に基づく。
【0018】
SB−3細胞およびSB−4細胞
SB−3細胞およびSB−4細胞は、体液試料(例えば、血液、骨髄、臍帯血、月経液および羊水)より単離された細胞集団から調製され得る。体液試料は、ヒトまたは非ヒトから採取され得る。上記の体性幹細胞が採取され得る非ヒトの例としては、限定されるものではないが、霊長類、イヌ、げっ歯類、モルモット、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジおよびブタが挙げられる。実際に、ペット動物、家畜、実験動物と疾患モデル動物が全て意図される。
【0019】
体液は、被験者から引き出され、試料が上層と下層とに分離されるまで、二価のカチオンキレート剤(例えば、EDTA、EGTAおよびクエン酸ナトリウム)またはヘパリンと共に容器中でインキュベートされる。上層から、サイズが0.3〜6.0μmである体性幹細胞の集団が単離され、次に、特定の成長因子(すなわち、R−スポンジン−1、SCF、G−CSF、bFGF、EGFおよびPDGF)を含む培地で1〜30日(例えば、4〜14日)培養される。培地は、1〜100ng/ml(例えば、2〜50ng/ml、および5〜20ng/ml)の濃度でそれぞれを含むことがある。これらの培養条件下では、細胞の直径は6−25μmに増加する。
【0020】
非接着性のままでいる細胞はSB−3細胞であり、接着性になるものはSB−4細胞である。SB細胞集団中の体性幹細胞は、CD9+、SSEA1+、SSEA4+、CD13+またはStrol+であり得る。例えば、いくつかはCD9+CD349+である。
【0021】
SB−3およびSB−4細胞の両方ともに、体性幹細胞である。これらは、様々な変性疾患または組織ダメージを治療するための、分化した機能的細胞を再生するために使用され得る。これらの細胞は容易に維持され、インビトロで拡張(expanded)させられ、定型の技術的アプローチを使用して分化が誘導され得る。加えて、動物被験者(例えば、マウス)へこれらの幹細胞を移植後、悪性増殖の証拠はない。これらの幹細胞は、正常な染色体相補体(chromosomal complement)を含む。それらは、系統誘導剤(lineage−induction agents)、増殖剤および分化阻害剤に応答する。これらの利点により、それらは他の幹細胞の代わりを果たす。
【0022】
本明細書における用語“幹細胞”は、全能性(totipotent)、多能性(pluripotent)、多分化能(multipotent)または単能性(unipotent)である細胞を意味し、すなわち、1つまたはより多くの最終分化細胞型に分化することができる。全能性幹細胞は、典型的には、どのような細胞型にも成長する能力を有する。それらは、起源が胚性および非胚性の両方であり得る。多能性細胞は、典型的には、外胚葉、内胚葉、および中胚葉細胞に分化することができる。多分化能細胞は、いくつかの異なる最終分化細胞型に分化することができる。単能性幹細胞は、ただ1つの細胞型に分化することができる。それらは、非幹細胞からそれらを区別する自己複製の性質を有する。上記幹細胞は、種々の組織または臓器から由来することができ、限定されるもではないが、血液、神経、筋肉、皮膚、腸、骨、腎臓、肝臓、膵臓および胸腺が挙げられる。
【0023】
本明細書に開示された幹細胞は、実質的に不純物がない(pure)である。幹細胞またはそれに由来する細胞(例えば、分化した細胞)について言及される場合、用語“実質的に不純物がない”とは、特定細胞が標本中の多数の細胞(即ち、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上)を構成することを意味する。一般に、実質的に精製された細胞の集団は、少なくとも標本中の細胞の約70%を、通常は標本中の細胞の約80%を、および、特に標本中の細胞の少なくとも約90%(例えば、95%、97%、99%または100%)を構成する。このように、本発明の方法は、実質的に不純物が無い特定の細胞型(例えば、SB−3およびSB−4細胞)の集団が、他の細胞型による汚染なしに得られるという利点を提供する。
【0024】
被験者からの様々な細胞を含む試料は、本発明の体性幹細胞を調製するために使用され得る。本発明の好ましい実施形態では、SB−3およびSB−4細胞は、SB細胞集団から調製される。
【0025】
単離された細胞が実際にSB−3またはSB−4細胞であることを確認するためには、細胞表面マーカーを含む多くの特性を調べることができる。CD10、CXCR4、CD31、CD105、CD44およびネスチンのような細胞表面マーカーに対する抗体が使用され得る。それらは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)または量子ドットのような好適なラベルと結合され得る。
【0026】
これらの体性幹細胞の分化能を確認するために、それらは、当技術分野で公知の方法によって、例えば、神経グリア細胞、骨細胞、および脂肪細胞を形成するように誘導され得る。例えば、これらの細胞は、継代され、コンフルエントまで培養され、骨形成培地または脂肪生成培地に移され、適当な期間(例えば、3週間)の間インキュベートされる。骨形成についての分化能は、フォンコッサ(von Kossa)染色によって可視化され得るカルシウム蓄積の石灰化によって評価される。脂肪生成分化を調べるためには、細胞内の脂肪滴がオイルレッドOで染色され、顕微鏡下で観察され得る。神経分化のためには、これらの細胞は、神経形成培地中で適切な期間(例えば7日間)インキュベートされ、次いで、血清枯渇およびβ−メルカプトエタノールと共にインキュベーションに供され得る。分化後、それらは、ネットワークに配置された広がった神経突起様構造を有する屈折した細胞体の形態を示す。RT−PCRおよび系統特異的マーカーの免疫細胞化学染色は、神経分化を確認するためにさらに行われる。マーカーの例としては、ニューロン特異的クラスIII β−チューブリン(Tuj−1)、ニューロフィラメントおよびGFAPが挙げられる。
【0027】
SB−3、SB−4細胞は、自発的分化、老化、形態学的変化、成長速度の増加、およびニューロンへ分化する能力の変化について兆候なしで、10回以上、20回以上、50回以上、または100回以上の集団倍加のため、非分化培地中でさらに増殖させられ得る。これらの幹細胞は、使用前に標準的な方法によって保存され得る。
【0028】
細胞に関して本明細書において互換的に使用される用語“増殖(proliferation)”及び“拡張(expansion)”は、分裂により同じ型の細胞の数についての増加を指す。用語“分化”は、例えば、最初の細胞型とは異なる1つ以上の形態学的特徴および/または機能を細胞が獲得する、特定の機能に特化された細胞になる成長プロセスを指す。用語“分化”は、分化系列決定(lineage commitment)および最終分化プロセスの両方を含む。分化は、例えば、免疫組織化学または当業者に公知の他の手順を用いて、系統マーカーの存在または非存在をモニターすることにより、評価され得る。前駆細胞に由来する分化した子孫細胞は、必ずとは言えないが、幹細胞の供給源組織と同じ胚葉または組織に関連することもある。例えば、神経前駆細胞および筋肉前駆細胞は、造血細胞系統に分化することができる。
【0029】
本明細書で互換的に使用される用語“分化系列決定”と“特化(specification)”は、分化した細胞型の特に限定された範囲を形成することが決定された前駆細胞を幹細胞が生じる、幹細胞が経るプロセスを指す。決定された前駆細胞は、しばしば、自己複製または細胞分裂が可能である。
【0030】
用語“最終分化(terminal differentiation)”とは、成熟した、完全に分化した細胞への細胞の最後の分化を指す。例えば、神経前駆細胞および筋肉前駆細胞は造血細胞系統に分化することができ、その最終分化は特定の細胞型の成熟した血液細胞に至る。通常、最終分化は、細胞周期からの離脱および増殖の停止と関連している。本明細書で使用される用語“前駆細胞”は、特定の細胞系統に決定され、一連の細胞分裂によりこの系統の細胞を生じさせる細胞を指す。前駆細胞の例は、ただ1つの型のみに分化することができるが、それ自体は完全には成熟または完全には分化していない、筋芽細胞であろう。
【0031】
SB−3またはSB−4細胞の集団の複数を有する細胞バンクまたはライブラリーは、本発明の範囲内である。これらの幹細胞は、ヒト細胞または非ヒト細胞であり得る。バンクは、異なる被験者に由来するSB−3またはSB−4細胞の集団を貯蔵し;少なくとも1つの所定の特性を各々について得るために集団におけるSB−3またはSB−4細胞を特徴付け、および少なくとも1つの所定の特性に応じて各々の集団をカタログ化することで、作られ得る。バンクを作るためには、SB−3またはSB−4細胞の集団を、さらに拡張させることができる。特性の例は、被験者の名前、性別、身体的条件(遺伝的障害およびMHC情報を含む)が挙げられる。
【0032】
上述したSB−3細胞およびSB−4細胞は両方とも、とりわけ、薬剤スクリーニング、変性疾患の治療、および遺伝子治療において使用され得る。
【0033】
スクリーニング方法
上述したSB−3細胞およびSB−4細胞は、細胞型に関連する疾患を治療するために薬物が有用であり得ることを示すように、特定の細胞型に影響を与えることができる薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。例えば、ある病気(例えば、変性疾患)を治療するための医薬候補を同定するための方法において、幹細胞を使用することができる。この方法は、幹細胞と試験化合物を接触させ、病気においてダウンレギュレートされるポリペプチドの発現レベルを測定するステップを含む。試験化合物の存在下での発現レベルが、化合物の非存在下のときよりも高い場合、化合物が病気を治療するための候補であることを示す。病気の例としては、糖尿病、神経変性疾患、関節炎、癌、または自己免疫疾患が挙げられる。発現レベルは、mRNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれかで測定され得る。
【0034】
したがって、本発明の一側面は、試験薬剤と細胞とを接触させることにより、SB−3またはSB−4細胞の機能を変化させる薬剤を同定するための方法に関する。試験薬剤の非存在下でのときと比較した場合に、試験薬剤の存在下で細胞の機能または遺伝子発現が変化することは、試験薬剤が細胞の機能または遺伝子発現を変化させる薬剤であることを示している。用語“試験薬剤”は、細胞内の機能または遺伝子発現を変化させる能力について調べられている任意の分子を指す。方法は、一般に、所望の活性を有するそれまで知られていなかった分子を同定するためのスクリーニングアッセイが使用されるが、本発明のスクリーニング方法はまた、活性を有することが知られている薬剤の特定の活性を確認するために使用され得る。
【0035】
機能は、細胞で典型的に発現される(または発現されない)遺伝子の発現でもよく、薬剤は、発現した遺伝子の発現レベルを増加もしくは減少させることによって、または細胞内で発現していない遺伝子を発現させる(例えば、系統特異的抗原の発現を誘導する)ことによって、機能を変えることができる。
【0036】
一実施形態では、細胞の機能に影響を与える薬剤は、幹細胞の分化を誘導し、それによって分化した細胞を産生するものである。そのような分化した細胞は、多分化能ヒト幹細胞(例えば、造血幹細胞)であってもよく、または最終分化細胞(例えば、筋細胞、肝臓細胞、神経細胞、血液細胞、結合組織、もしくは上皮細胞)であってもよい。このように、本方法は、膵臓ベータ細胞、肝細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、または任意の他の細胞型を含む最終分化細胞へ、SB−3またはSB−4細胞の分化を誘導する薬剤を同定するため、使用され得る。このようにして同定された薬剤または化合物は、変性疾患、癌、または免疫疾患を治療するために使用され得る。
【0037】
発現レベルは、mRNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれかで測定され得る。試料中のmRNAレベルを測定する方法は、当該分野で周知である。mRNAレベルを測定するため、細胞は溶解されることがあり、溶解物中のmRNAのレベルは、精製されたか否かを問わず、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ(検出可能に標識された遺伝子特異的DNAまたはRNAプローブを使用する)、および定量的または半定量的RT−PCR(適切な遺伝子特異的プライマーを使用する)ことによって測定され得る。他にも、定量的または半定量的インサイチュハイブリダイゼーションアッセイが、検出可能に(例えば、蛍光または酵素)標識されたDNAまたはRNAプローブを用いて、組織切片または非溶解の細胞懸濁物に対して実施され得る。追加のmRNA定量化方法は、RNaseプロテクションアッセイ(RPA)法および遺伝子発現の連続分析(serial analysis of gene expression、SAGE)法だけでなく、アレイ−ベースの技術を含む。
【0038】
試料中のタンパク質レベルを測定する方法もまた、当該分野で周知である。それらのいくつかは、標的タンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)を使用する。このようなアッセイでは、抗体そのものまたはそれに結合する二次抗体は、検出可能に標識され得る。他にも、抗体は、ビオチンと結合されることもある。その存在は、検出可能に標識されたアビジン(ビオチンに結合するポリペプチド)によって測定され得る。これらのアプローチの組み合わせ(“多層サンドイッチ”アッセイを含む)は、方法の感度を高めるために使用され得る。適切なラベルは、放射性核種(例えば、
125I、
131I、
35S、
3H、または
32P)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはβ−ガラクトシダーゼ)、蛍光/発光剤(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFP、BFP、およびナノ粒子(例えば、クァンタム ドット コーポレーション(Quantum Dot Corporation),パロアルト,カリフォルニア州,から供給されるQdot(登録商標)))を含む。いくつかのタンパク質測定アッセイ(例えば、ELISAおよびウェスタンブロット)は体液または細胞溶解物に適用されてもよく、ならびに他のもの(例えば、免疫組織学的方法および蛍光フローサイトメトリー)は組織切片または非溶解細胞懸濁液に適用されてもよい。他の適用可能な方法は、定量的免疫沈降および補体結合アッセイを含む。
【0039】
試験化合物または薬剤は、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、ペプチド模倣物、ビニル性ペプトイド(vinylogous peptoids)のようなペプトイド、低有機分子などの、任意の型の分子であってもよく、SB−3またはSB−4細胞の機能を変化させる様々な方法のいずれかで作用し得る。例えば、試験薬剤は、細胞によって発現される細胞表面受容体に結合することによって細胞外で作用することができ、それにより、一般的には受容体に結合して受容体を介して作用するリガンドの結合によって仲介される機能を、変化させる。他にも、試験薬剤は、受動的にまたは能動輸送機構を介して細胞膜を横断し、機能を変化させるために細胞内で作用するものであってもよい。
【0040】
ペプチド試験薬剤は、アミノ酸またはアミノ酸類似体の任意のポリマーであってもよく、約3〜4残基から数百または数千にまで変化しうる。ペプチド試験薬剤は、化学合成によって、もしくは、タンパク質精製、続いてタンパク質分解、および所望であれば、クロマトグラフィーもしくは電気泳動法による更なる精製の方法を用いて調製されてもよく、または、コードするポリヌクレオチドから発現させてもよい。ペプチド試験薬剤は、公知のペプチド、例えば、天然に存在するペプチドに基づくものでもよいが、例えば、1つまたはより多くのアミノ酸類似体を含むことによって、天然に存在する配列と異なっていてもよい。
【0041】
ポリヌクレオチド薬剤は、ホスホジエステル結合によって共に連結された、2つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列であり得る。これは、遺伝子またはその一部、cDNA、RNAi薬剤、合成ポリデオキシ−リボ核酸配列などのRNAまたはDNAであってもよく、および、一本鎖または二本鎖のみならずDNA/RNAハイブリッドであってもよい。これは、細胞から単離されることができる天然に存在する核酸分子だけでなく、例えば、化学合成法やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによる酵素的方法によって調製され得る合成分子であってもよい。様々な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド類似体、またはホスホジエステル結合以外の骨格結合を含み得る。そのようなヌクレオチド類似体は当技術分野で周知であり、市販されており、そのようなヌクレオチド類似体を含むポリヌクレオチド(パグラティス(Pagratis)ら,Nature Biotechnol. 15:68−73,1997)としてでもある。
【0042】
ポリヌクレオチド試験薬剤は、本明細書に開示されまたは当該技術分野において公知の方法を用いてSB−3またはSB−4細胞と接触させられ、またはSB−3またはSB−4細胞へ導入され得る。一般に、必ずではないが、ポリヌクレオチドは細胞に導入され、直接的にその機能に対して、またはこれに続く転写もしくは翻訳もしくは両方に対して影響を与える。例えば、ポリヌクレオチドはペプチド試験薬剤をコードしてもよく、細胞中で発現させられて細胞の機能を変化させる。ポリヌクレオチド試験薬剤はまた、1つもしくはより多くの特定の標的核酸分子を標的とするように設計され得るアンチセンス分子、リボザイムまたは三重らせん化剤(triplexing agent)であり、またはこれらをコードし得る。
【0043】
スクリーニングされるべき候補薬剤または化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、ペプトイド、抗体、低分子、または他の薬)は、当該分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれかを用いて入手され得る。
このようなライブラリーとしては、ペプチドライブラリー、ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能性を有するが、酵素分解に抵抗性がある新規な非ペプチド骨格を有する、分子のライブラリー);空間的に指定可能(spatially addressable)な並列固相または液相ライブラリー;デコンボリューションまたはアフィニティークロマトグラフィー選別によって得られる合成ライブラリー;および、“1ビーズ1化合物”ライブラリー、が挙げられる。例えば、ラム(Lam),1997,Anticancer Drug Des. 12:145、を参照されたい。分子ライブラリーの合成方法の例としては、例えば、Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 33:2061;および、ギャロップら,1994 J.Med.Chem. 37:1233、において見出され得る。化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、ホーテン(Houghten),1992,Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ上(ラム(Lam),1991,Nature 354:82−84)、チップ上(フォーダー(Fodor),1993,Nature 364:555−556)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、胞子上(米国特許第5,223,409号)、プラスミド上(カル(Cull)ら,1992,PNAS USA 89:1865−1869)、もしくはファージ上(フェリーチ(Felici) 1991,J.Mol.Biol. 222:301−310;および米国特許第5,223,409号)に存在しても良い。
【0044】
治療方法
ヒト胚操作の倫理的な考慮事項を回避しつつ、変性性または遺伝性疾患を治療するために本明細書に開示されたSB−3またはSB−4細胞を使用することができる。
【0045】
そのようにするために、例えば、組織または臓器の適切な成長に不可欠な機能遺伝子を欠く患者のような、患者からのSB細胞集団を単離することができる。SB細胞集団はその後、SB−3細胞またはSB−4細胞が得られるような条件に供される。次いで、遺伝子の機能的なバージョンをコードする発現核酸ベクターを、これらの幹細胞への導入することができる。ベクターは、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、またはウイルス媒介技術を含む、様々な技術を介して幹細胞に導入され得る。細胞の多能性に影響を与えない方法が好ましい。そのような技術の説明は、例えば、米国特許第7,422,736および5,591,625のような出版物に見出され得る。幹細胞へ機能的な遺伝子を輸送した後、当該技術分野で公知の方法を用いて患者にそれらを移植して戻すことができる。幹細胞は患者から製造されるので、治療は免疫拒絶反応を引き起こさない。
【0046】
他にも、健康な被験者から調製されたSB−3またはSB−4細胞から万能(universal)ドナー細胞を作製することができる。万能ドナー細胞を作製する方法は、当技術分野で知られている。SB−3またはSB−4細胞から万能多能性幹細胞を作製するための例示的な技術が、以下に説明される。
【0047】
適当な条件下において、移植された幹細胞は機能的な組織または臓器に成長することができる。この成長を促すために、患者は、細胞の成長を誘導する因子が投与されてもよい。このような因子は、低分子化合物、ペプチド、および核酸でありえる。例としては、制限されるものではないが、トランスフォーミング成長因子β、骨形成タンパク質、および神経成長因子が挙げられる。
【0048】
万能多能性幹細胞はまた、成長または系統発生の分化メカニズムおよび分化を研究するために有用である。そのような細胞をモデル系として用い、全能性多能性幹細胞の発生を特定の組織または臓器に誘導する条件を、同定することができる。さらに、当技術分野で公知のディファレンシャルcDNAスクリーニングを用いて、成長の間に役割を果たしている遺伝子を単離することができる。例えば、上記の神経グリア細胞系列のような或る系統に成長するように誘導された細胞から、cDNAライブラリーを調製することができる。ライブラリーは、次いで、差次的に発現される遺伝子を単離および研究するために使用され得る。これらの単離された遺伝子はさらに、各プロセスにおけるそれらの役割を明らかにするために研究され得る。関連技術は、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第7,422,736号、を参照されたい。多能性幹細胞はまた、当技術分野で公知の方法を用いて動物の臓器またはクローンへと成長させるために使用され得る。従って、これらの細胞は、ペットおよび家畜産業にとって有益であり、絶滅危惧動物を保持するために使用され得る。
【0049】
1つの側面において、本発明は、被験者における変性疾患を治療する方法を特徴とする。この方法は、上記のSB−3またはSB−4細胞の有効量を、それを必要とする被験者に投与することを含む。一実施形態では、これらの細胞の少なくとも1つは、組換え核酸を含む。組換え核酸は、ポリペプチドをコードすることができ、幹細胞は、ポリペプチドをコードするmRNAを含むことができる。変性疾患の例としては、筋肉変性疾患、肝臓変性疾患、糖尿病、神経変性疾患、および関節炎が挙げられる。神経変性疾患の例は、パーキンソン病である。
【0050】
別の側面において、本発明は、被験者における自己免疫疾患を治療する方法を特徴とする。この方法は、上記のSB−3またはSB−4細胞の有効量を、それを必要とする被験者に投与することを含む。
【0051】
変性疾患は、遺伝的欠陥、損傷、適切な細胞分化の欠如(例えば、細胞増殖性疾患におけるもの)、正常な身体の摩耗、またはライフスタイルの選択により、影響を受けた組織または臓器の機能または構造が、時間をかけて徐々に悪化する障害を指す。変性疾患の例としては、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症および筋萎縮性側索硬化症(ALS));他の神経系障害(例えば、横断性脊髄炎、脳または脊髄への外傷後に生じる脱髄、急性脳損傷、頭部外傷、脊髄損傷、末梢神経損傷、虚血性脳損傷、CNSの遺伝性ミエリン障害、てんかん、周生期仮死、仮死、酸素欠乏症、てんかん重積状態、シャイ−ドレーガー症候群、自閉症、および脳卒中);癌(例えば、肝臓癌)もしくは抗癌治療(例えば、化学療法)から生じる症状;代謝障害(例えば、糖尿病(diabetes)/糖尿病(diabetes mellitus)およびニーマンピック病);自己免疫または炎症関連障害(例えば、エリテマトーデス、炎症性腸疾患(IBD)、前立腺炎、変形性関節症、骨粗鬆症、関節リウマチ、狼瘡、糖尿病、および喘息);眼障害(例えば、緑内障、網膜色素変性症、ノリエ病、および黄斑変性症);心臓および循環器障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、心不全、心筋梗塞、および心血管疾患);血液障害(例えば、ウィスコット−アルドリッチ症候群);筋ジストロフィー;消化器疾患;腎臓疾患;肝臓疾患;肺疾患、副腎疾患(例えば、アジソン病);傷害から生じる症状(例えば、熱傷、脳卒中、軽傷を含むダメージを受けた組織、加齢ダメージを受けた細胞、および加齢ダメージを受けた組織);老化に関連する症状(例えば、男性型脱毛および円形脱毛症を含む脱毛);ウイルス症状(例えば、C型肝炎感染および後天的免疫不全症);ならびに、障害に関連する徴候および/または症状を回復させ、再生させ、そうでなかったら改善するために臓器移植または幹細胞が使用され得る任意の他の障害、を含む。本発明の方法は、勃起不全の治療、および形成外科手術または女性のための乳房移植に用いられ得る。
【0052】
さらに別の側面において、脳もしくはCNS組織ダメージを治療し、または被験者における疾患の症状を緩和する方法が本明細書に記載される。この方法は、脳組織ダメージを罹患しているまたは発症するリスクがある被験者を同定することを含む。脳組織ダメージの例としては、脳虚血(例えば、慢性脳卒中)または神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄小脳疾患、およびハンチントン病)によって引き起こされるものが挙げられる。治療方法は、上述した幹細胞または活性薬剤/化合物の有効量を、それを必要とする被験者に投与することを伴う。
【0053】
幹細胞の治療効果は、標準的な方法に従って評価され得る。例えば、脳血管新生を促進する有効性を確認するためには、コンピュータ断層撮影(CT)、ドップラー超音波イメージング(DUI)、磁気共鳴イメージング(MRI)、およびプロトン磁気共鳴分光法
1H−MRS)のような、標準的な脳画像化技術により、治療前後の被験者を検査することができる。例えば、
1H−MRSは、脳の代謝活性に相関する生化学的情報を得るための、非侵襲的手段を表す(ルー(Lu)ら,1997,Magn.Reson.Med. 37,18−23)。この技術は、幹細胞移植の有無による脳虚血に関与する代謝変化を評価するために、適用され得る。例えば、それは、ニューロンの完全性のマーカーであるN−アセチルアスパラギン酸(NAA)の脳内濃度を調べるために、使用され得る。神経破片(neuronal debris)におけるNAAの再分配および捕捉は、定量神経マーカーとしてのその使用を制限するが、脳虚血における脳NAA濃度の減少は神経損失(neuronal loss)または機能不全の指標と考えられ得る(ドゥムジョ(Demougeot)ら,2004,J.Neurochem. 90,776−83)。したがって、
1H−MRSにより測定されるNAAレベルは、脳虚血後の幹細胞移植の効果を追跡するために有用な指標である。
【0054】
上述の疾患の1つについて治療される被験者は、その特定の疾患ための標準的な診断技術によって同定され得る。“治療すること(treating)”は、その疾患を罹患しているか発症するリスクがある被験者へ、疾患、疾患の症状、疾患に続発する病状、またはダメージ/疾患の素因を治癒させ、和らげ、緩和させ、治療し、発症を遅らせ、予防し、または改善する目的での、組成物(例えば、細胞組成物)の投与を指す。治療される被験者は、関心のある症状または疾患を診断するための標準的な技術によって同定され得る。“有効量”とは、治療される被験者において医学的に望ましい結果を生じさせることができる、組成物の量を指す。治療方法は、単独で、または他の薬もしくは療法と組み合わせて行われ得る。被験者は、ヒト、または例えばネコ、イヌもしくはウマなどの非ヒト哺乳動物であり得る。
【0055】
肝臓細胞の作製および使用
また、SB−4細胞由来の肝臓細胞を製造しおよび使用する方法も、本発明の範囲内である。SB−4細胞は、アクチビンを含む培地中で5日間、次いでbFGFおよびBMP2を含む培地で10〜15日間、最後にHGF、DEX、およびOSMを含む培地中で10〜15日間培養されると、内胚葉細胞を形成するように分化を経る。これらの内胚葉細胞は、すべて肝臓特異的タンパク質である、アルブミン、トランスフェリン、およびHNF3Bを発現する。換言すれば、SB−4細胞は、アルブミンの製造に使用するため、またはバイオ人工肝臓デバイスで使用するために、肝臓細胞に分化することができる。本明細書では、用語“肝臓細胞(liver cell)”は、単語“肝細胞(hepatocyte)”と置き換え可能である。
【0056】
本発明の一実施形態は、SB−4細胞由来の肝臓細胞を使用した、体外バイオ人工肝臓デバイスである。このようなデバイスは、病気または外傷のいずれかに起因して、肝臓に関連する症状または損傷がある肝機能を有し、または有することが疑われる被験者を治療するために使用される。
【0057】
体外バイオ人工肝臓デバイスは、1つまたはより多くのカートリッジを含む。
図2を参照されたい。各カートリッジは、透過性または半透過性の膜で各々形成された中空繊維の配列を含む。
図3aおよび3bを参照されたい。各カートリッジは、一方の末端に第一開口部を、および他方の末端に第二開口部を備えた円筒形状を有することができ;第一開口部は第一経路に固定され、第二開口部は第二経路に固定され、2つの経路はカートリッジから遠ざかって伸びる。
図3aを参照されたい。一の経路が被験者の動脈に、他方がこの被験者の静脈に固定される。
【0058】
各中空線維を形成する膜は、中空繊維の内側で培養された肝細胞へ血液から有毒溶質のクロスオーバーを可能にすることにより(例えば、膜を通って拡散し、吸収されて代謝されるビリルビン)、さらにまた、デバイス内で培養された細胞からの必須の代謝物質の被験者へ戻る血液への拡散を可能にすることにより、血液の洗浄を可能にする。膜の選択的透過性または半透過性の特徴はまた、被験者の血液中の免疫系の構成要素に対する機械的バリアを提供する。典型的には、膜は、約20,000ダルトンから約80,000ダルトンまで、一般的には約30,000ダルトンから約50,000ダルトンまでの分子量カットオフを特徴とする。好ましい実施形態では、膜は、直径0.1μm〜0.3μm、典型的には約0.2μmの孔を有している。この範囲の孔直径であれば、細胞要素(cellular element)を排除しながら、タンパク質(例えば、アルブミン)およびタンパク質複合体が通過することを可能にし、従って、肝不全を罹患している被験者の血清タンパク質欠乏を改善する。
【0059】
本明細書で使用される用語“浄化(cleanse)”または“洗浄(clean)”は、被験者の血液からの、不要なまたは望ましくない分子の除去を意味する。また、用語用語“浄化(cleasnse)”または“洗浄(clean)”はさらに、SB−4由来の肝臓細胞からの所望の分子(すなわち、アルブミン)を、被験者へ戻す前の血液中へ放出することを含む。
【0060】
類似のデバイス、それらの使用、および作用メカニズムは、当該技術分野の当業者に知られている。例えば、バイオ人工肝臓デバイスは、ビレス(Viles)ら,米国特許第4,675,002号および第4,853,324号;ジャウレギン(Jauregin),英国第2,221,857A号;ウルフ(Wolf)ら,1979,International J.of Artificial Organs 2:97−103;ウルフ(Wolf)ら,1978,International J.of Artificial Organs 1:45−51;およびエールリッヒ(Ehrlich)ら,1978,In Vitro 14:443−450に記述されている。このようなデバイスはまた、SB−4細胞由来の肝臓細胞と共に使用されることが意図される。
【0061】
中空繊維カートリッジは二室ユニットを有し、すなわち、一の部屋が各中空繊維の内側に位置し、他方が中空繊維の外側に位置し、正常臓器の三次元特性を再現する。ナゼック(Knazek),R.H,1974,Feder.Proc. 33:1978−1981;および、クー(Ku),K.ら,1983,Biotechnol.Bioeng. 23:79−95を参照されたい。
【0062】
培養または増殖培地は、カートリッジ内の各中空繊維の内側の毛細管空間を通って循環され、播種後にカートリッジ内の中空繊維間の毛細管外空間で増殖させられた細胞は、新鮮な培地を一定の流入で供給される。サラカン(Tharakan),J.P.ら,1986,Biotechnol.Bioeng. 28:1605−1611を参照されたい。特徴的には、1400cm
2カートリッジは、SB−4細胞由来肝細胞の有効数(例えば、約1×10
9細胞)が接種され、14〜約21日の間コンフルエンスまで増殖させられる。このような中空繊維培養系は、よく知られており(例えば、ハイフェッツ(Heifetz)ら,1989,BioTechniques 7:192−199;および、ドノフリオ(Donofrio),D.,Amer.Biotech.Lab.Sept. 1989,出版#940)、市販されている(例えば、Anchornetシリーズ)。
【0063】
中空繊維ベースの系は、バイオ人工肝臓装置に用いられると、いくつかの利点を提供する。カートリッジは、非常に高密度な培養の増殖を支持する。毛管外体積に基づいて、15〜20gの細胞が1400cm
2ユニットで、100gの細胞が7000cm
2で増殖させられる。細胞塊のこの量は、肝不全を患っている被験者に肝臓サポートを提供することが可能である。また、カートリッジ増殖した細胞は、分極され、その増殖は正常な肝臓構造に近づく。細胞は毛細管空間から栄養を受け、毛細管外空間へ老廃物を分泌する。毛細管外空間は、毒性産物の蓄積を防止するために灌流される。培地の継続的な流れおよびインライン酸素供給器は、酸素とエネルギーのさらなる安定供給を提供する。
【0064】
ほとんどの部分について、SB−4由来の肝臓細胞と共に使用されることを意図したバイオ人工肝臓デバイスは、被験者の体外に取り付けることにより、主として血液を処理する(例えば、典型的には、通常は動脈と静脈との間である、被験者の血液供給へ、デバイスから液体を交流させる)。このような配置は、重度の肝臓障害に罹患している被験者のための一時的な肝臓サポートを提供するために特に有用である。
【0065】
代わりに、SB−4由来の肝臓細胞は、バイオ人工肝臓として、またはバイオ人工肝臓サポートとして体内で使用される。このようにして使用される場合、SB−4由来の肝臓細胞は、体内使用のために、中空線維毛細管膜内でカプセル化され、または増殖させられる。特徴的には、細胞は成長時にサポートに付着する。結合材料は、しかしながら、サポートに細胞を付着させるために提供されてもよい(例えば、ジャウレギン(Jauregin),英国第2,221,857A号を参照されたい)。SB−4由来の肝臓細胞は、カイ(Cai)ら,Artificial Organs,12:388−393;サン(Sun)ら,1986,Trans.Am.Soc.Artif.Intern.Organs,XXXII巻:39−41;オシェイ(O’Shea)ら,1984,Biochimica Biophysica Acta,804:133−136;サン(Sun)ら,1985,J.Controlled Release 2:137−141;およびリム(Lim),米国特許第4,391,909号によって教示されるような、アルギン酸−ポリリジン膜のような生体材料内にカプセル化される。カプセル化された細胞およびビヒクルカプセルは、その後、被験者に腹腔内注射される。
【0066】
さらに、SB−4由来の肝臓細胞は、線維芽細胞およびSB−4由来の肝臓細胞を含む合成肝臓様組織において使用され得る。典型的には、線維芽細胞と肝細胞の共培養は、肝臓で典型的にみられる配置を、自動的には採用しない。さらに、2つの細胞型の情報交換が不十分であるため、肝細胞は、しばしば機能的に非効率的である。この問題を解決するためには、細胞接着を促進するコラーゲンのパターン化されたフィルムとともに、マイクロ電子テクノロジーの標準的なフォトリソグラフィ技術を用いて基材(例えば、ホウケイ酸ウェハ)を削り込むことができる。トナー(Toner)ら,1997,材料研究協会秋季大会(Fall Meeting of the Materials Research Association),1−5;トナー(Toner)ら,1988,Nature,39:128、を参照されたい。SB−4由来の肝臓細胞は、次いで、そのような表面上で培養され、コラーゲンでコーティングされた領域のみに付着し得る。線維芽細胞は、その後、剥き出しの表面領域に導入され、周期的なパターンで2つの細胞型の密な混合物を作り出す。この技術は、基材上の細胞型の任意の割合を可能にし、したがって、どのような生理学的な値に調整することをも可能にする。さらに、任意のパターンサイズ、形状、および数密度が、推定され、設計され得る。
【0067】
遺伝子治療
本明細書に記載の幹細胞は、外因性の組換えポリペプチドを発現するために使用され得る。従って、組換え核酸を含むそのような幹細胞は、本発明の範囲内である。組換え核酸はポリペプチドをコードすることができ、幹細胞は、ポリペプチドをコードするmRNAを含むことができる。
【0068】
ベータ2−ミクログロブリン遺伝子を発現しない、または細胞に対してTリンパ球媒介性反応を誘発するクラスI主要組織適合遺伝子複合体(MHC)遺伝子によってコードされる1つまたはより多くのタンパク質を発現しないように、これらの幹細胞は遺伝的に操作され得る。これらの細胞は移植片の宿主拒絶に至らないので、万能ドナー細胞として使用され得る。
【0069】
したがって、本発明は、被験者にヘテロ核酸を導入するための方法を特徴とする。この方法は、上述した幹細胞を得る工程であって、少なくとも1つの幹細胞がヘテロ核酸を含み、およびそれを必要とする被験者に細胞を投与する工程を含む。ヘテロ核酸は、ポリペプチドをコードすることができる。
【0070】
用語“ヘテロ(heterologous)”は相対的な用語であり、核酸の部分に関して使用される場合は、天然で互いに同じ関係(realtionship)で見出されない、2つまたはより多くの部分配列を含む核酸を指す。例として、組換え的に作製される核酸は、典型的には、新たな機能的核酸を作るように合成的に配置された、無関係の遺伝子由来の2つ以上の配列を有し、例えば、1つの供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域である。2つの核酸は、それゆえ、この文脈において互いにヘテロである。細胞に添加されると、組換え核酸はまた、細胞の内在性遺伝子に対してヘテロであろう。従って、染色体において、ヘテロ核酸は、染色体に組み込まれた非天然(非自然的に発生する(non−naturally occurring))核酸、または非天然(非自然的に発生する)染色体外核酸を含むであろう。一方、自然に転座した染色体の一部は、変異細胞にとって天然な内因性の核酸配列を含むため、本特許出願の文脈においてヘテロとはみなされない。同様に、ヘテロタンパク質は、天然で互いに同じ関係で見出されない、2つまたはより多くの部分配列を含むタンパク質(例えば、2つの部分配列が単一の核酸配列によってコードされる“融合タンパク質”)を示す。このようなタンパク質は、組換え技術によって生成され得る。
【0071】
用語“組換え(recombinant)”は、例えば、細胞、核酸、タンパク質またはベクターに関して用いられる場合は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、ヘテロ核酸もしくはタンパク質の導入や、天然の核酸もしくはタンパク質の変化によって改変されていること、または、細胞が、そのように改変された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、天然の(自然に発生する)形態の細胞の中には見出されない遺伝子を発現し、または、発現されたもしくは全く発現されない下で、そうでなかったら正常に発現されもしくは異常に発現する、天然の遺伝子の二次複製物(second copy)を発現する。
【0072】
上記の幹細胞および方法は、当技術分野で公知の種々の遺伝子治療において使用され得る。遺伝子治療は、エキソビボ(ex vivo)およびインビボの両方の技術を含む。具体的には、上述した幹細胞は、オリゴヌクレオチドモジュレータまたはモジュレータをコードする核酸分子によってエキソビボで遺伝的に操作され、次いで、操作された細胞は治療されるべき患者に提供されている。細胞培養物は、例えば、細胞を解離し(例えば、機械的解離による)、薬学的に許容される担体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)と細胞を密接に混合することにより、患者への投与のために製剤化されてもよい。または、細胞は、適当な生体適合性サポート上で培養され、患者に移植されてもよい。操作された細胞は、異種またはアロタイプ拒絶反応を回避するよう、特徴的には自己由来である。そのようなエキソビボ法は、当該分野で周知である。
【0073】
細胞は、当技術分野で公知の技術を用いてオリゴヌクレオチドまたは核酸分子が投与されることにより、操作され得る。例えば、オリゴヌクレオチドおよび他の核酸分子は、“裸の(naked)”核酸分子(米国特許第5,679,647号)、もしくはサポニン(例えば、米国特許第5,739,118号を参照)もしくはカチオン性ポリアミン(例えば、米国特許第5,837,533号参照を参照)のような細胞による核酸の取り込みを促進する1つもしくはより多くの他の薬剤との組成物中に製剤化された核酸分子の直接注射により;微粒子衝撃(microparticle bombardment)により(例えば、“遺伝子銃”の使用を介して;バイオリスティック(Biolistic),デュポン);脂質、細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤によって核酸分子をコーティングすることにより;リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセル中に核酸分子をカプセル化することにより;核に移行することが知られたペプチドに連結された核酸分子の投与により;または、受容体を特異的に発現する細胞型を標的化するために使用され得る、受容体媒介エンドサイトーシスを受けるリガンドに連結された核酸分子の投与により、投与されることができる。
【0074】
核酸−リガンド複合体は、核酸がリソソーム分解を回避できるように、エンドソームを破壊する融合性ウイルスペプチドをリガンドが含む;または、特異的な受容体を標的化することによって、インビボでの細胞特異的な取り込みおよび発現のために核酸分子が標的化されるように形成され得る。また、細胞核中へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入、発現および蓄積のための効率的な方法は米国特許第6,265,167号に記載されており、これにより核内のセンスmRNAにアンチセンスオリゴヌクレオチドがハイブリダイズすることを可能にし、それにより、アンチセンスオリゴヌクレオチドが切断されたり細胞質に輸送されたりすることを防止する。本発明はまた、核酸分子の細胞内導入、続けて、当技術分野で公知の相同組換えによる発現のための宿主細胞DNA内への取り込みを意図する。
【0075】
ポリヌクレオチドはまた、適切な発現ベクターに組み込まれ得る。遺伝子治療用途に適した多数のベクターが、当該技術分野で知られている(例えば、ウイルスベクター(Viral Vectors):基礎科学および遺伝子治療(Basic Science and Gene Therapy),イートンパブリッシング社(Eaton Publishing Co.)(2000)を参照)。
【0076】
発現ベクターは、プラスミドベクターであってもよい。プラスミドDNAの生成および精製方法は、迅速かつ簡単である。さらに、プラスミドDNAは、典型的には、宿主細胞のゲノムに組み込まれないが、染色体組込みが起こすことがある遺伝毒性の問題を排除する、別個の存在として、エピソームの位置に維持される。種々のプラスミドは、現在容易に商業的に入手可能であり、特に哺乳動物システムで使用するように設計されている多くと共に、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)由来のものを含む。本発明において使用され得るプラスミドの例としては、限定されるものではないが、真核生物発現ベクターpRc/CMV(インビトロジェン(Invitrogen))、pCR2.1(インビトロジェン)、pAd/CMVおよびpAd/TR5/GFPq(マッシー(Massie)ら,(1998) Cytotechnology 28:53−64)が挙げられる。例示的な実施形態では、プラスミドは、pRc/CMV、pRc/CMV2(インビトロジェン)、pAdCMV5(IRB−NRC)、pcDNA3(インビトロジェン)、pAdMLP5(IRB−NRC)、またはpVAX(インビトロジェン)である。
【0077】
発現ベクターは、ウイルスベースのベクターであり得る。ウイルスベースのベクターの例としては、制限されるものではないが、複製欠損レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスに由来するものが挙げられる。レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターは現在、インビボで、特にヒトに対する、外来オリゴヌクレオチドまたは遺伝子の移送のための選択肢である、組換え遺伝子輸送システムである。これらのベクターは、細胞への遺伝子の効率的な輸送を提供し、輸送された核酸は、宿主の染色体DNAに安定に組み込まれる。レトロウイルスの使用のための主要な必要条件は、それらの使用の安全性を確保することであり、特に、細胞集団中の野生型ウイルスの伝播の可能性に関するものである。レトロウイルスベクターが由来し得るレトロウイルスとしては、限定されるものではないが、モロニーマウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳癌ウイルスが挙げられる。特定のレトロウイルスは、当業者に周知であるpLJ、pZIP、pWEおよびpEMを含む。
【0078】
細胞バンク
本発明は、種々の幹細胞株への便利な体系的アクセスのための、幹細胞バンクまたはラリを特徴とする。バンクやライブラリー内のSB−3またはSB−4細胞は、健常な被験者、または既知の病状、もしくは例えば、研究者のようなユーザーにとって貴重である病状を有する被験者に由来する。また、上述した幹細胞から分化した細胞を備える細胞バンクまたはライブラリーも、本発明の範囲内である。幹細胞から分化した細胞の例は、脳細胞、ニューロン、アストロサイト、グリア細胞、T細胞、B細胞、軟骨細胞、骨細胞、膵島細胞、脂肪細胞、心臓細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、肺細胞、筋細胞、および眼細胞が挙げられる。被験者は、ヒトまたは非ヒト脊椎動物である。幹細胞は、ヒト、マウス、ウサギ、ウシ、ブタなどのような任意の哺乳類生物に由来し得る。
【0079】
バンクやライブラリー中の細胞は、表現型情報、形態学的特徴、分化プロファイル、血液型、主要組織適合遺伝子複合体、ドナーの病状、または遺伝子型情報(例えば、遺伝子に関連する特定の核酸配列の単一ヌクレオチド多型(SNP)、またはゲノムもしくはミトコンドリアDNA)を含む、所定の特徴に従ってカタログ化される。幹細胞が生存し、機能し続けるために、細胞は、適切な条件下で(典型的には凍結により)貯蔵される。カタログ化では、限定されるものではないが、まとめられた記録文書、または情報が入力されたコンピュータデータベースのような、各細胞集団について得られた特徴の集約された記録を作成し続けてもよい。本質的には、この実施形態では、幹細胞バンクの作製に関する。幹細胞バンクは、試料の複数から、ユーザーのニーズに適した特定の幹細胞試料の選択を容易にする。従って、本発明の別の実施形態は、別々の供給源から得られる幹細胞試料の複数を含み、少なくとも1つの所定の特性に従って特徴付けられ、およびカタログ化された幹細胞バンクに関する。さらなる実施形態は、複数の供給源から幹細胞試料を集めること;少なくとも1つの所定の特徴に従って試料をカタログ化すること、および細胞を生存させる条件下で細胞を保存することを含む、幹細胞バンクを確立する方法に関する。
【0080】
幹細胞集団を生存させていられる条件下で、個々の容器内に配置された幹細胞集団の複数と;少なくとも1つのプロセスモジュール、ディスプレイ、および各々の幹細胞集団についての少なくとも1つの特徴の情報を含む記憶媒体を含むデータベースコンピュータ;ならびに、ユーザーによる指令に応じて前記ディスプレイ上に情報が閲覧可能にさせるための、少なくとも1つのプログラムコードモジュールを含む、幹細胞バンクシステムは、本発明の範囲内である。具体的な実施形態において、本発明は、病状を有する被験者から得られた幹細胞を幹細胞集団が有する、幹細胞バンクシステムを特徴とする。病状は、上述の変性疾患を含んでもよい。様々な疾患を有する異なる被験者に由来するSB−3またはSB−4細胞、ならびに幹細胞は、特徴付けされる。特徴(複数可)は、データベースコンピュータに入力される。さらに、または代わりに、細胞は、病状に必ずしも関連付けられていない特定の表現型に基づいて、特徴付けされる。例えば、肝臓細胞は、カフェイン、アルコール、医薬などの或る化合物を代謝する能力に基づいて、そのような異なる代謝能力の遺伝的基盤またはそれに関連する基礎となる生理機能を研究するため、特徴付けられてもよい。他の型の細胞は、機能および/または形態学的表現型に基づいて、特徴付けされてもよい。
【0081】
ある実施形態では、SB−3またはSB−4細胞から分化した細胞は、操作されたベクター、または他の遺伝物質の導入によって、分化または脱分化に影響を与えるための条件に供されてもよい。脱分化は、あまり分化していない細胞の特性を呈するような細胞の操作を含む。
【0082】
本発明の幹細胞ライブラリーは、上記のような手段で、変性疾患、癌または免疫障害を治療するために使用され得る薬剤または化合物をスクリーニングするために使用され得る。ライブラリーは、ハイスループットスクリーニングに適しており、特定の被験者のために特に有効な薬剤を同定するために有用である。ハイスループットスクリーニングのためには、幹細胞は、マルチウェルプレートまたはガラススライドもしくはマイクロチップのウェル内に導入されることができ、試験薬剤と接触させられ得る。一般に、細胞は、整列して、特に指定可能に整列して組織化されて、細胞および溶液を操作するために、ならびに、特に検査されている機能に関して細胞をモニターするためにロボットが都合良く使用される。ハイスループット形式を使用する利点は、多数の試験薬剤が並列に検査されることができ、および、希望するのであれば、試験条件と同一の条件下で対照反応も実行され得ることである。このようにして、本発明のスクリーニング方法は、例えば細胞を所望の細胞型に分化させるように誘導する薬剤のような、幹細胞の機能を変化させることができる薬剤、または、例えば調節分子の発現のレベルを高く維持することによって自然分化を防止する薬剤を同定するための、1つの、いくつかのまたは多数の試験薬剤をスクリーニングする手段を提供する。
【0083】
万能ドナー細胞
上記の幹細胞は、移植のための組織適合ドナー細胞または組織を生成するために遺伝的に操作され得る。移植および細胞療法の目標は、障害のある組織または臓器を、機能的なドナー組織または臓器とうまく置き換えることである。しかし、移植が成功するためには、2つの大きな障壁:適切なドナー組織または臓器の入手と、免疫拒絶とを克服する必要がある。障害のある組織または臓器の交換や拒絶反応の治療は、許容されるドナーの限られた数、および長期の免疫抑制プロトコルと共に有毒な免疫抑制薬の同時投与の必要性によって制限される。従来および実験的な移植プロトコルは、主に兄弟姉妹(sibling)ドナー、同種ドナーの他の小さなプール、および異種ドナーに依存している。上述の遺伝的に操作された幹細胞は、これらの制限を克服するために使用され得る。
【0084】
より具体的には、本明細書に記載の幹細胞は、MHCクラスII分子をその表面上に発現しないように遺伝的に操作され得る。より好ましくは、細胞は、実質的に全ての細胞表面クラスIおよびクラスII MHC分子を発現しないように、操作される。本明細書で使用される用語“発現しない”とは、応答を誘発するには不十分な量が細胞の表面に発現されること、または発現されるタンパク質が欠損しているため応答を誘発しないことのいずれかを、意味する。
【0085】
MHC分子は、HLA分子を、具体的にはクラスHLA A、BおよびC、ならびにクラスII HLA DP、DQおよびDR、ならびにそのサブクラスを意味する。この用語は一般に、ヒトMHCに特異的なものとして解釈されるが、本明細書では、ドナー細胞種からの同等のMHC遺伝子を含むことが意図され、例えば、細胞がブタ由来のものである場合、用語HLAは、MHC IまたはIIの同等のブタMHC分子を指すであろう。クラスII MHC分子が除去されると、CD4+ T細胞は、遺伝的に操作された内皮細胞を認識せず;クラスIおよびクラスII MHC分子の両方が除去されると、CD4+やCD8+細胞はいずれも改変された細胞を認識しない。
【0086】
幹細胞に施される好ましい遺伝子改変は、1)クラスII MHC分子の組立および細胞表面への輸送、ならびに抗原ペプチドの装填に機能する内因性の不変鎖遺伝子を破壊すること、および2)すべてのクラスI MHC分子の細胞表面発現に必要なタンパク質をコードする内因性β
2−ミクログロブリン遺伝子(β
2Μ遺伝子)を破壊することを含む。代替的には、単に不変鎖遺伝子が破壊されている。不変鎖は、抗原性ペプチド断片のMHCクラスII分子への挿入のために必要であると考えられている。併せて、抗原ペプチドとMHCは、T細胞によって認識される。抗原性ペプチドの非存在下では、T細胞認識は通常得られず、また、MHCクラスII分子は適切に折り畳まれない。したがって、不変鎖を欠く細胞においては、ペプチドの提示が廃止され、細胞表面MHCの微小量が得られたとしても、それらはペプチドを欠き、それゆえ非免疫原性であり得る。
【0087】
これらの遺伝子の破壊は、相同組換え遺伝子標的化技術の手段を用いて達成され得る。これらの技術は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第6916654号および6986887号を参照されたい。
【0088】
組成物
本発明は、SB−3もしくはSB−4細胞または活性薬剤/化合物を含む、医薬組成物を提供する。医薬組成物は、細胞または活性薬剤/化合物、および任意に他の活性物質、の治療上の有効量を、医薬的に許容される担体と混合することによって調製され得る。担体は、投与経路に応じて、様々な形態を採り得る。他の活性物質の例としては、既知のまたは上述のスクリーニング方法により同定された活性化合物が挙げられる。
【0089】
上記の医薬組成物は、従来の薬学的賦形剤および調製方法を用いて調製され得る。全ての賦形剤は、崩壊剤、溶媒、造粒剤、保湿剤、および結合剤と混合されてもよい。本明細書で使用されるとき、用語“有効量(effective amount)”または“治療上の有効量(therapeutically effective amount)”は、特定の疾患の少なくとも1つの症状またはパラメータの測定可能な改善をもたらす量を指す。上述した幹細胞の治療上の有効量は、当技術分野で公知の方法によって決定され得る。疾患を治療するための有効量は、当業者に公知の経験的方法によって容易に決定され得る。患者に投与される正確な量は、疾患の状態および重症度、ならびに患者の体調に応じて異なる。任意の症状またはパラメータの測定可能な改善は、当業者によって決定され、または患者によって医師に報告され得る。なお、上記の疾患の任意の症状またはパラメータの任意の臨床的または統計的に有意な減衰または改善は、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。臨床的に有意な減衰または改善は、患者および/または医師に知覚されることを意味する。
【0090】
“薬学的に許容される”という語句は、ヒトに投与された場合、生理学的に許容され、および典型的には望ましくない反応を生じないような、分子実体(molecular entities)と他の成分との組成物を指す。好ましくは、用語“薬学的に許容される”は、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認され、または米国薬局方もしくは哺乳類、特にヒトで使用するための他の一般に認められた薬局方に列挙されていることを意味する。薬学的に許容される塩、エステル、アミドおよびプロドラッグは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに患者の組織との接触に使用されることに適しており、妥当な利益/リスク比に相応し、およびその意図される使用に有効であるような塩(例えば、カルボキシレート塩、アミノ酸付加塩)、エステル、アミドおよびプロドラッグを指す。
【0091】
上記の医薬組成物に適用される担体は、化合物と共に投与される希釈剤、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、水および油などの殺菌された液体であり得る。水または水溶液、食塩水、ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、特に注射用溶液のための担体として好ましく使用される。適切な医薬担体は、“レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)” E.W.マーティン(Martin),第18版に記載されている。
【0092】
上記の幹細胞は、点滴もしくは注射(例えば、静脈内、髄腔内、筋肉内、腔内、気管内、腹腔内もしくは皮下)、経口的、経皮的または当技術分野で公知の他の方法を介して、個体に投与され得る。投与は、2週間に1回、週に1回、またはより頻繁であり得るが、頻度は、病気または疾患の維持段階において減少させてもよい。
【0093】
ヘテロおよび自己(autologous)細胞の両方が使用され得る。前者の場合、HLAマッチングは、宿主反応を回避または最小化するために行われるべきである。後者の場合、自己細胞は被験者から濃縮され、および精製され、ならびに、後の使用のために保存される。細胞は、エキソビボで宿主または移植(graft)T細胞の存在下で培養され、および宿主に再導入されてもよい。これは、宿主が細胞を自分自身として認識し、およびT細胞活性の低下を良好に提供するという利点を有することもある。
【0094】
用量および投与頻度は、当業者に知られている急性期の臨床徴候のうち少なくとも1つ以上についての、好ましくは1つを超えるものについての減少または非存在下で、寛解期の維持を確認する臨床徴候に依存する。より一般的には、用量および頻度は、上記組成物を用いた治療が意図された病状または疾患の病理学的徴候、ならびに臨床的および亜臨床症状の後退に部分的に依存する。投薬量および投与レジメン(regimen)は、治療を受ける患者または哺乳動物被験者における年齢、性別、および体調だけでなく複合体の利益および副作用、ならびに、当業者によって評価されるような医師の判断に応じて、調節され得る。上記方法の全てにおいて、幹細胞は、1×10
4〜1×10
10/回で被験者に投与され得る。
【実施例】
【0095】
以下の具体例は、単なる例示であり、どのような手段での開示の残り部分がどのようなものであれ、限定するものではないと解釈されるべきである。さらに詳述されることなしに、当業者は、本明細書の記載に基づいて、最大限に本発明を利用できると考えられる。
本明細書で引用された全ての刊行物は、その全体が参照されて本明細書中に援用される。
さらに、以下に提案されるいずれのメカニズムも、請求される発明の範囲を決して限定するものではない。
【0096】
実施例1
血液試料または骨髄試料がヒトから採取され、抗凝固EDTAチューブまたはヘパリンチューブに入れられた。チューブを4℃で72時間静置させた後、試料は2つの層に分離した。赤くなった下層は、ほぼ完全に赤血球(RBC)および白血球から構成されていた。上層は、6μm未満の直径を有する、SB細胞という名前の細胞を含んでいた。SB細胞は、米国2012/0034194号にさらに詳細に記載されている。
【0097】
SB細胞はその後、5ng/ml R−スポンジン−1、5n/ml SCF、5ng/ml G−CSF、20ng/ml bFGF、20ng/ml EGF、および5ng/mL PDGFを含むStemPro−34培地(インビトロジェン)で4〜14日間培養された。上記培養条件下で、細胞の直径は6〜25μmに増加した。非接着性を維持した細胞はSB−3細胞と命名され、接着性になったものはSB−4細胞と命名された。SB−4細胞は円形または楕円形であり、SB−3細胞よりもサイズが大きい、すなわち、7〜30μmであった。
【0098】
CD349抗体は、SB混合物からCD349+細胞を単離するために使用された。また、米国2012/0034194号を参照されたい。これらのCD349+細胞はSB細胞と同じように培養され、また、SB−3細胞に成長し、SB−4細胞として壁に付着する。
【0099】
試験は、SB−3細胞が拡張する能力を有することを示した。SB−4細胞は、求められる成長因子が添加される限り、増殖および分化を経ることができた。SB−4細胞は、正常な核型および正常なテロメラーゼ活性を備えたまま、少なくとも40世代を経ることができた。培養されたSB−4細胞は、約24時間の倍加時間(doubling time)を持っていた。
【0100】
RT−PCR分析は、SB−3細胞がCD10、CXCR4およびCD31を発現したが、CD9、CD349、CD271、CD133、CD66e、CD45、CD20またはCD4を発現しなかったことを示す。SB−4細胞は、CD105、CD44およびネスチンを発現したが、CD34、CD90、CD41、CD117、α−フェトプロテイン、POU5F1、Nanog、Sox2、HNF4a、CD36、HNF3B、Pax6またはPax7を発現しなかった。RT−PCRのためのプライマーが、以下の表1に示される:
【0101】
【表1A】
【0102】
【表1B】
【0103】
実施例2
SB−3が異なる細胞系統に分化することができる幹細胞であることを実証するために、アッセイが行われた。
【0104】
簡潔には、SB−3細胞は上記のようにして被検者から得られた。SB−3細胞はその後、分化培地で培養された。リアルタイムRT−PCRでの分化マーカーを検出するために使用される全てのプライマーは、以下の表2に記載されている:
【0105】
【表2A】
【0106】
【表2B】
【0107】
SB−3細胞は、ニューロン(外胚葉)および膵島細胞(内胚葉)の形成についての初期マーカーであるネスチンを発現するように誘導された。簡潔にいうと、SB−3細胞は、10nMグルココルチコイドおよび10%FBSを含む誘導培地中で培養された。1ヶ月の処理後、RNAが抽出され、リアルタイムPCRによって遺伝子発現が測定された。ネスチンの発現が検出された。
【0108】
内胚葉細胞は、その多角の形状によって特徴付けられる。2つの肝細胞マーカー(アルブミンおよびトランスフェリン)、および3つの膵島細胞マーカー(インスリン、α−フェトプロテインおよびHNF4アルファ)の発現が検出された。加えて、ウェスタンブロットおよびELISAの両方がまた、分化した細胞中のアルブミンの発現を検出した。これらの結果は、SB−3細胞が肝細胞に分化し、その一部は膵島細胞に分化したことを示している。
【0109】
外胚葉細胞は、そのフィラメント状の特徴によって特徴付けられる。神経細胞へのSB−3細胞の分化は、リアルタイムRT−PCRによって確認され、CD133、ネスチン、微小管関連タンパク質II、GABA受容体、NR4A2、N−cam、チロシンヒドロキシラーゼ、ニューロフィラメント、およびタウを含む多くの神経細胞マーカーの発現を検出した。
【0110】
さらに、SB−3細胞は、脂肪細胞や骨形成細胞、すなわち、中胚葉細胞に分化するように誘導された。SB−3細胞は、培地A、B、C、DおよびE中で順次培養された。次いで、培地が、8週間、脂肪細胞分化培地(インビトロジェン)に置換された。脂肪細胞は、オイルレッドOを用いて染色され、OD490 ELISA分光光度計で検出された。あるいは、培地は骨形成培地(インビトロジェン)に置換された。骨形成細胞は、培地交換後2〜4週間で観察された。骨形成細胞はアリザリンレッド(Alizarin Red)で染色され、そして分光光度計でOD405nmで測定されるアリザリンレッドを細胞をから抽出することにより検出された。結果は、SB−3細胞が、脂肪細胞または骨形成細胞に分化され得ることを示している。
【0111】
他の中胚葉細胞への誘導のために、SB−3細胞は、10nMグルココルチコイドおよび10%FBSを含む培地で培養された。1ヶ月の処理後、RNAが細胞から抽出され、いくつかの遺伝子の発現が、リアルタイムPCRによって測定された。ミオシン重鎖および骨格ミオシン軽鎖の検出可能な発現は、SB−3細胞が心筋細胞および骨格筋細胞に分化させられたことを示す。
【0112】
上記の結果は、シグナルを受けると、SB−3細胞が活性化され、ダメージを受けた組織を修復するために適切な組織に分化させられることを示唆している。従って、これらの細胞は、成体多能性幹細胞を含み、ならびに遺伝子治療、遺伝子バンク、薬物スクリーニングおよび万能ドナー細胞を作成するために使用され得る。また、これらの細胞は、変性疾患、自己免疫疾患、または癌を治療するために使用され得る。
【0113】
実施例3
SB−4細胞は、4つの異なる種類の培地中で培養され、分化が成功することを確認するために分析された。中胚葉分化を試験するために、細胞は、脂肪生成および骨形成培地中で培養された。それらの陰性対照とそれぞれ比較した場合、オイルレッドOおよびアリザリンレッド染色は、脂肪細胞および骨細胞の有意な増加を示した。
【0114】
外胚葉分化能を調べるために、SB−4細胞は、ニューロン分化培地で培養された。ICCニューロフィラメント染色およびリアルタイム−PCRからの結果は、SB−4がニューロン分化能を有することを確認した。
【0115】
SB−4細胞はまた、以下のような3つの異なる培地で連続して培養することにより、肝細胞に分化するよう誘導された。
【0116】
まず、SB−4細胞は、3%ウマ血清、1×抗真菌薬、1×L−グルタミン、および5ng/mLのアクチビンを含むDMEM/高グルコース培地中で5日間培養された。次に、細胞は、20ng/mL bFGFおよび5ng/mL BMP2とアクチビンが交換された以外は同じ培地中で、15日間さらに培養された。最後に、細胞は、1%ウマ血清、10ng/mL HGF、10nMグルココルチコイドDEXおよび10ng/ml OSMを含むHepato ZYME−SFM培地で15日間、または肝細胞様細胞が出現するまで培養された。培養培地は、少なくとも週2回、日常的にリフレッシュされた。肝細胞様細胞は、顕微鏡で観察された。さらに、それらは、下記のプライマーを用いたリアルタイムRT−PCRにより、肝細胞マーカーの発現について試験された。
【0117】
【表3】
【0118】
結果は、肝細胞様細胞が、実際に3つの肝細胞マーカー、すなわち、アルブミン、トランスフェリンおよびFTNF−3ベータを発現したことを示している。
【0119】
我々は、これらの肝細胞様細胞が、アンモニアなどの毒素を代謝して正常に除去し、および解毒のための尿素を合成する能力を持つと考える。したがって、肝細胞様細胞は、ヒト肝機能を再現し、急性肝不全の患者を支援することができる人工肝臓システムとして使用され得る。加えて、我々の肝細胞様細胞は、小さい丸剤/医薬のための担体として使用され得ることから、マーケティング上重要な製品であるアルブミンを生成することができる。
【0120】
従って、これらの肝細胞様細胞は、人工肝臓システムを作製し、ドラッグデリバリーを容易にするために使用され得る。これらの細胞はまた、肝臓変性疾患および肝臓癌を治療するために有用であろう。
【0121】
他の実施形態
本明細書に開示された全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。本明細書で開示した各特徴は、同一、同等、または類似の目的を果たす代替的特徴によって置き換えられてもよい。したがって、別段の記載がないかぎり、開示された各特徴は、同等または類似の特徴の包括的なシリーズの一例に過ぎない。
【0122】
本発明の多数の実施形態が記載されている。それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。したがって、他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。