特許第6382440号(P6382440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382440一定の電流勾配で直流電流を遮断するための電流零パルス生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382440
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】一定の電流勾配で直流電流を遮断するための電流零パルス生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20180820BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01H33/59 A
   H01H9/54 F
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-504346(P2017-504346)
(86)(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公表番号】特表2017-526121(P2017-526121A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015065714
(87)【国際公開番号】WO2016015975
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】102014214956.8
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ、トーマス
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−222705(JP,A)
【文献】 特許第5265063(JP,B1)
【文献】 特開2000−175451(JP,A)
【文献】 特開平09−050741(JP,A)
【文献】 特開平05−234472(JP,A)
【文献】 特開昭57−176623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
H01H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電流(2)が通流される電気的構成要素(3)において電流零通過を生じさせるための電流零パルス(1)を生成する電流零パルス生成装置であって、
当該零パルス生成装置が、2つの極(12),(13)を備えた電気的なエネルギー蓄積器(4)と、スイッチ(5)とを有し、
前記2つの極(12),(13)を介して前記エネルギー蓄積器(4)が電圧源(10)によって充電可能であり、当該電流零パルス生成装置により、
前記エネルギー蓄積器(4)と前記直流電流が通流される電気的構成要素(3)と前記スイッチ(5)とを介して閉回路が形成可能であり、
それによって、前記エネルギー蓄積器(4)が、前記スイッチ(5)の閉成時に、前記電気的構成要素(3)を介して前記直流電流(2)とは逆に流れる電流零パルス(1)を生成しつつ放電可能である、電流零パルス生成装置において、
前記エネルギー蓄積器(4)が、1つの電流零パルス(1)を共同で生成するための複数のエネルギー蓄積要素を有し、
前記複数のエネルギー蓄積要素が、1つの電流零パルス(1)を共同で生成するべく1つの鎖状回路網を構成しており、前記複数のエネルギー蓄積要素は、それぞれ1つのキャパシタンス(9),(9'),(9”)を有する鎖状要素(6),(6’),(6”)として構成されており、
前記鎖状回路網の複数の鎖状要素(6),(6’),(6”)がインダクタンス(7),(7’),(7”)および抵抗(8),(8’),(8”)を有し、
各鎖状要素(6),(6’),(6”)が、インダクタンス(7),(7’),(7”)と抵抗(8),(8’),(8”)とキャパシタンス(9),(9'),(9”)との直列回路として構成されており、第1の鎖状要素(6)の前記直列回路が、前記エネルギー蓄積器(4)の両極(12),(13)間に構成されており、後続の鎖状要素(6’),(6”)が、それぞれ先行する前記各鎖状要素(6),(6’)のキャパシタンス(9),(9')に並列に接続されている
ことを特徴とする電流零パルス生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記エネルギー蓄積器(4)は、前記閉回路を介して前記スイッチ(5)の閉成時に振動回路を形成可能であり、それによって前記電流零パルス(1)がその流れの方向を交番するように構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、
前記エネルギー蓄積要素が、それらのエネルギー蓄積要素の共同の放電によって生じる電流零パルス(1)が部分的に全体として一定の電流勾配を有するように設計されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1からの1つに記載の装置において、
前記エネルギー蓄積器(4)の2つの極(12),(14)が、充電抵抗(11)を介して前記電圧源(10)に接続可能である
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1からの1つに記載の装置において、
当該電流零パルス生成装置が、前記電気的構成要素(3)に並列に配置されたエネルギー吸収器(14)を有する
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項記載の装置において、
前記エネルギー吸収器(14)が、金属酸化物アレスタとして構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1からの1つに記載の装置を使用する方法であって、
前記電気的構成要素(3)が真空バルブであり、前記直流電流(2)が通流される前記電気的構成要素(3)において前記電流零通過を生じさせるための前記電流零パルス(1)を生成する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電流が通流される電気的構成要素、特に真空バルブにおいて電流零通過を生じさせるための電流零パルスを生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブは、しばしば、交流系統内の電流の負荷開閉器又は電力開閉器として使用される。この真空バルブは、陽極電流もしくは開閉電流を遮断するために、交流電圧の負半波によってもたらされる負電圧を必要とする。直流電流を遮断しようとする際に、電流零通過がない場合には、必要な電流零通過を生じさせるべく、その直流電流に重畳できる電流パルス、即ち電流零パルスが必要である。
【0003】
電流零パルスにより強制的に電流零通過を生じさせる従来の方法においては、一般に、簡単なRLC振動回路(抵抗、インダクタンス、キャパシタンスに基づく振動回路)が使用される。直流電流を遮断しようとする際には、真空バルブが開極され、電流零パルスが印加され、電流が遮断される。RLC振動回路によって生成される電流零パルスは、正弦波状の電流波形を有する。RLC振動回路の周波数の高さは、一般にKHz範囲にあり、従って、明らかに交流系統内で通常発生する周波数を上回る。
【0004】
真空バルブによる電流遮断は、電流零通過時の或る特定の最大電流勾配dI/dt(電流の時間微分)までは比較的安定に行われる。RLC振動回路の電流勾配は余弦関数に相当する。RLC振動回路の設計は、或る特定の予め与え得る電流の大きさに対してしか、最適化できない。従って、様々の開閉電流において同じままの電流通過パルスであると、電流遮断時点で様々な電流勾配が生じ、場合によってはその開閉電流の零通過にとって最適でない電流勾配が生じる。
【0005】
従って、大きな振幅を有する電流零パルスを生じるように設計されたRLC振動回路は、初めのうちは非常に大きいが、時間および振幅が増すにともなって余弦関数にしたがって低下する電流勾配を有する。相殺されるべき直流電流が大きい場合には、電流勾配が余弦関数にしたがって既に低下して、それにより十分に小さくなった時点で、電流零通過が行われる。しかし、相殺されるべき直流電流が小さい場合には、電流零パルスの電流勾配がなおも非常に大きい、場合によって大きすぎる、早い時点で既に電流零通過が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、異なる大きさの開閉電流の遮断を、できるだけ一定の電流勾配dI/dtで可能にする、電流零パルス生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項の特徴事項によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明によれば、直流電流が通流される電気的構成要素、特に真空バルブにおいて、電流零通過を生じさせるための電流零パルスを生成する電流零パルス生成装置が、2つの極を備えた電気的なエネルギー蓄積器と、スイッチとを有し、それらの2つの極を介して、前記エネルギー蓄積器が電圧源によって充電可能である。電流零パルス生成装置によって、前記エネルギー蓄積器と前記直流電流が通流される電気的構成要素と前記スイッチとを介して、閉回路が形成可能であり、それにより、前記エネルギー蓄積器が、前記スイッチの閉成時に、前記電気的構成要素を介して前記直流電流とは逆に流れる電流零パルスを生成しつつ放電可能であり、前記エネルギー蓄積器が、1つの電流零パルスを共同で生成するべく、複数のエネルギー蓄積要素を有する。
【0009】
この種の装置の利点は、電流零パルスの形状、即ち振幅の時間的経過が、複数のエネルギー蓄積要素の放電曲線の重ね合わせによって形成できることにある。このようにして、電気的構成要素における直流電流を遮断するのに必要な、殆ど任意に形成できる電流零パルスを、生成することができる。電気的構成要素という技術用語は、一般に、その電気的構成要素が複雑な(場合によっては集積化された)回路、又は機器、特に通常の交流開閉装置も含んでいると理解すべきである。
【0010】
複数のエネルギー蓄積要素は、それらが異なる放電曲線を有するように異ならせて構成するのが有利である。電流零パルスを共同で形成するための複数のエネルギー蓄積要素の放電は、異なる方法で、例えば並行して、時間的にずらされて、互いに従属的に、又は連鎖的に、行われるとよい。
【0011】
前記エネルギー蓄積器は、前記閉回路を介して前記スイッチの閉成時に振動回路が形成可能であることにより、電流零パルスがその流れを交番するように構成されていると有利である。このような構成は、前記直流電流が通流される導線路に前記エネルギー蓄積器が接続可能である分岐点を、前記直流電流の方向において前記エネルギー蓄積器の前に配置することができるという利点をもたらす。この場合、前記エネルギー蓄積器の放電時に、前記電気的構成要素を通して流れる直流電流が、電流零パルスによって最初のうちは強められる。その後、電流零パルスは、その形成された振動回路のおかげで方向を反転し、その負方向の半波により、前記直流電流を相殺する。
【0012】
共同で1つの電流零パルスを生成するための複数のエネルギー蓄積要素が1つの鎖状回路網を構成しており、これらの複数のエネルギー蓄積要素が、それぞれ1つのキャパシタンスを有する鎖状要素として構成されていると、有利である。
【0013】
前記鎖状回路網とは、電気的回路装置の形で同じように構成された複数の鎖状要素の電気的な結合体であると理解すべきである。
【0014】
同じような鎖状要素の使用は、合理化可能な製造可能性という利点をもたらし、鎖状の構成は、時間的な依存性又は配列を形成できるという利点をもたらす。
【0015】
前記鎖状回路網の複数の鎖状要素が、インダクタンス、抵抗およびのキャパシタンスを有するようにすると有利である。受動的な構成要素による構成は、安価に製造可能であり、特にインダクタンス、抵抗およびキャパシタンスから、簡単な構造を有しさらにはエネルギー蓄積要素としてのキャパシタンスの制御された放電過程を可能にする装置を、構成することができる。
【0016】
各鎖状要素が1つのRLC回路として構成されており、即ち各鎖状要素がインダクタンスと抵抗とキャパシタンスとの直列回路として構成されており、第1の鎖状要素の直列回路が前記エネルギー蓄積器の両極間に構成されており、後続の鎖状要素がそれぞれ先行する鎖状要素のキャパシタンスに並列に接続されていると、有利である。この種の構成は、異なる周波数の複数の振動回路、つまり異なる電流勾配を有する電流零パルス成分を持った複数の振動回路を構成できる可能性を提供する。特に、この構成は、それらの負半波が高振幅において小さい電流勾配を有する複数の電流零パルスを形成することができるという可能性を提供する。例えば、大きな直流電流を遮断するための真空バルブは、高い振幅と小さい電流勾配とを有する電流零パルスを必要とする。相応の必要条件を満たし且つ1つの純粋なRLC振動回路のみで構成されたエネルギー蓄積器に比べて、相応に適切にパラメータ化されて複数のRLC要素から構成された鎖状回路網は、比較的短い電流パルスの放出のもとで少ない蓄積すべきエネルギーと、構造的に小さい寸法とを必要とする。
【0017】
電流零パルス生成装置が次のように設計されている複数のエネルギー蓄積要素、即ち、複数のエネルギー蓄積要素の、共同の放電によって生じる電流零パルスが、部分的に全体としてほぼ一定の電流勾配を有するように設計されている複数のエネルギー蓄積要素を有すると、有利である。例えば、この電流零パルス発生装置は、電流零パルスが部分的に全体としてほぼ一定の電流勾配を有するように選定されたインダクタンス、抵抗およびキャパシタンスを含んだ複数の鎖状要素を備えた1つの鎖状回路網を有するものとして実施することができる。
【0018】
この種の電流零パルス生成装置は、この装置を、例えば或る特定のほぼ一定の電流勾配の実現を目指すものとして構成することができ、しかもその電流勾配が、相殺されるべき直流電流の電流零通過時点での大きさに関係なく、電流零パルスの側で、その形成された電流勾配を有するという利点を有する。従って、この種の電流零パルス発生装置は、適切なパラメータ設定であれば、例えば、開閉時点で真空バルブに流れる或る一定の直流電流を、その大きさに関係なく、予め設定可能な電流勾配のもとで相殺するのに適している。換言するならば、この電流零パルス発生装置によって、このような構成のもとで、さまざまの大きさを有する直流電流に対して最適な電流勾配で以て、電流零通過を生じさせることができる。
【0019】
前記エネルギー蓄積器が次のように設計されている複数の、特に3つのエネルギー蓄積要素を有すると有利である。即ち、複数のエネルギー蓄積要素は、これらのエネルギー蓄積要素の共同の放電によって生じる電流零パルスが全体としてほぼ三角形状又は傾斜状の電流経過を有するように設計されている。格別に好ましくは、前記エネルギー蓄積器が3つの鎖状要素を含む1つの鎖状回路網を有し、それらの鎖状要素のインダクタンス、抵抗およびキャパシタンスが、次のように設計されている、即ち、電流零パルスが全体としてほぼ三角形状又は傾斜状の電流経過を有するように設計されている。電流零パルスのこのような時間的経過は、受動的な構成要素で簡単に実現でき、部分的に、一定の電流勾配を有する電流零パルスをもたらす。
【0020】
さらに、電流零パルス生成装置は、前記エネルギー蓄積器の両極が充電抵抗を介して電圧源に接続できるように構成されていると有利である。さらに、電流零パルス生成装置は、この電圧源が、相殺されるべき直流電流のための電気エネルギーを供給するのと同じ電圧源であるように構成されていると有利である。この種の構成は、第2の電圧源を省略することを可能にする。前記充電抵抗は、次のように配置されていると有利である。即ち、この充電抵抗が、前記電圧源と前記電気的構成要素と前記スイッチと共に、第2の閉回路を構成しており、前記スイッチと前記電気構成要素と前記エネルギー蓄積器とから成る前述の閉回路内に含まれておらず、かつ相殺されるべき直流電流の電流経路内に配置されていない。
【0021】
さらに、電流零パルス生成装置は、この装置が電気的構成要素に並列に配置されたエネルギー吸収器を有するように構成されていると有利である。このエネルギー吸収器によって、前記電気的構成要素を通して流れる直流電流の遮断時に、その遮断に起因して放出されるエネルギーを吸収することができる。前記エネルギー吸収器は、金属酸化物アレスタとして、例えば金属酸化物抵抗又は金属酸化物バリスタとして構成されていると有利である。金属酸化物アレスタは、主として経年変化に対して安定に実現することができ、サージ吸収中に生じるエネルギーを吸収するのに適している。
【0022】
直流電流が通流される電気的構成要素において電流零パルスを生成するために電流零パルス生成装置が使用され、その電気的構成要素が真空バルブであると有利である。この種の使用法の場合、この電流零パルス生成装置によって、直流遮断器を構成することができる。
【0023】
以下において、添付図面を参照しつつ、本発明を好ましい実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】3つの鎖状要素からなる鎖状回路網を有する本発明実施例を示す。
図2】直流遮断器を構成するために本発明の使用法を用いた実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施例を示す。この図1には、直流電流2が通流される電気的構成要素3において電流零通過を生じさせるための電流零パルス1を生成する電流零パルス生成装置が示されている。電気的構成要素3は、真空バルブとして実施されている。
【0026】
電流零パルス生成装置は、2つの極12,13を備えた電気的エネルギー蓄積器4を有し、そのエネルギー蓄積器4は、図2に示す電圧源10によって充電可能である。さらに、電流零パルス生成装置は、エネルギー蓄積器4と、直流電流が通流される電気的構成要素3と、スイッチ5とを介して、1つの閉回路を成しており、それにより、エネルギー蓄積器4は、スイッチ5の閉成時に、電気的構成要素3を介して、直流電流2を最初のうちは強める電流零パルス1を生成しつつ、放電することができる。
【0027】
エネルギー蓄積器4は、1つの電流零パルス1を共同で生成するべく、複数のエネルギー蓄積要素を1つの鎖状回路網の鎖状要素6,6’,6”の形で有する。その鎖状回路網の鎖状要素6,6’,6”は、インダクタンス7,7’,7” と、抵抗8,8’,8” と、キャパシタンス9,9’,9”とを有する。各鎖状要素6,6’,6”は、1つのインダクタンス7,7’,7” と、1つの抵抗8,8’,8” と、1つのキャパシタンス9,9’,9”との直列回路から構成されている。エネルギー蓄積器4の両極12,13間には、第1の鎖状要素6の直列回路が形成されている。後続の鎖状要素6’,6”の直列回路は、それぞれに先行する鎖状要素6,6’のキャパシタンス9,9’に並列に接続されている。
【0028】
この種の実施形態では、前記鎖状回路網によって1つの振動回路が構成され、その振動回路の振動は、電気的構成要素3が通電状態を有する場合に、スイッチ5の閉成によって始動可能である。
【0029】
スイッチ5の閉成時には、キャパシタンス9,9’,9”が、1つの電流零パルス1の正半波を形成しつつ放電する。電流零パルス1の正半波は、直流電流2と同じ方向を有するので、電気的構成要素3において、初めのうちは両電流が加算される。
【0030】
キャパシタンス9,9’,9”の放電後、キャパシタンス9,9’,9”において電圧Uの極性反転が起こるまで、インダクタンス7,7’,7”が電流零パルス1を維持する。電圧が大きくなるにともなって、電流零パルス1の振幅はそれの零通過点まで低下してゆく。
【0031】
キャパシタンス9,9’,9”における電圧Uの極性反転に基づいて、電流零パルス1のその正半波の後に1つの負半波が続く。電流零パルス1のこの負半波が直流電流2とは反対方向であるので、それ相応の設計をするならば、直流電流2は電流零パルス1の負半波によって相殺可能であり、両電流が加算されることから電気的構成要素3において電流零通過を達成することができる。
【0032】
鎖状要素6,6’,6”のインダクタンス7,7’,7” 、抵抗8,8’,8” およびキャパシタンス9,9’,9”は、電流零パルス1が部分的に全体としてほぼ一定の電流勾配を有するように設計されている。
【0033】
図2は、直流遮断器17を構成するための本発明の使用法の実施例を示す。エネルギー蓄積器4の構成、ならびに、エネルギー蓄積器4と電気的構成要素3およびスイッチ5との協働は、図1の実施例と同一である。図1に示した装置だけではなく、図1に示したエネルギー蓄積器4、即ちここではインダクタンス7,7’,7”と抵抗8,8’,8” とキャパシタンス9,9’,9”とを有する鎖状回路網によって描かれたエネルギー蓄積器4が、充電抵抗11を介して電圧源10に接続されていることが、図2に明示されている。
【0034】
さらに、その同じ電圧源10によって、相殺されるべき直流電流2のための電気エネルギーが供給される。充電抵抗11は、この充電抵抗が電圧源10と電気的構成要素3とスイッチ5と共に第2の閉回路を形成するように配置されており、スイッチ5と電気的構成要素3とエネルギー蓄積器4とからなる前述の閉回路には含まれておらず、かつ相殺されるべき直流電流2の電流路内に配置されていない。さらに、スイッチ5が開路されている場合には、電圧源10とエネルギー蓄積器4と充電抵抗11とから成る、別の閉回路、即ち第3の閉回路が、電圧源10の電圧UDCへのキャパシタンス9,9’,9”の充電を可能にする。
【0035】
スイッチ5が閉成されると、エネルギー蓄積器4のキャパシタンス9,9’,9”が、電気的構成要素3およびスイッチ5を介して、電流零パルス1の形で放電を行う。真空バルブの形で実施されている電気的構成要素3は、スイッチ5に連結されていて、スイッチ5の閉成時には開極されるので、電流零パルス1の負半波によって引き起こされる電流零通過の到達によって、直流電流2が遮断可能である。
【0036】
電圧UDCを有する電圧源10には、直流遮断器17を介して、誘導成分15および抵抗成分16を有する開閉負荷が接続されており、その開閉負荷によって、直流電流2が決定される。さらに、図2に明示されているように、電流零パルス生成装置は電気的構成要素3に並列に配置されたエネルギー吸収器14を有する。
【0037】
電気的構成要素3を通る直流電流2の遮断時には、開閉負荷の誘導成分に起因して電気的構成要素3に過電圧が生じるが、この過電圧は、金属酸化物アレスタとして実施されたエネルギー吸収器14によって吸収されるようにすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 電流零パルス
2 直流電流
3 電気的構成要素
4 エネルギー蓄積器
5 スイッチ
6 鎖状要素
7 インダクタンス
8 抵抗
9 キャパシタンス
10 電圧源
11 充電抵抗
12 エネルギー蓄積器の極
13 エネルギー蓄積器の極
14 エネルギー吸収器
15 開閉負荷、誘導成分
16 開閉負荷、抵抗成分
17 直流遮断器
図1
図2