(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電池セルと、隣接する前記電池セルの電極端子にレーザー溶接されて前記電池セルを電気接続してなるバスバーと、隣接する前記電極端子の間に配置してなるプラスチック製の絶縁壁とを備えるバッテリシステムであって、
前記絶縁壁は、ポリブチレンテレフタレートで形成され、かつ、前記絶縁壁の表面色が、少なくとも可視光線の反射率を50%以上とする熱線反射色であることを特徴とするバッテリシステム。
複数の電池セルと、隣接する前記電池セルの電極端子にレーザー溶接されて前記電池セルを電気接続してなるバスバーと、隣接する前記電極端子の間に配置してなるプラスチック製の絶縁壁とを備えるバッテリシステムであって、
前記絶縁壁は、少なくとも可視光線の反射率を50%以上とする熱線反射色のフィラーが添加されたプラスチックで形成され、該フィラーが添加されることで、前記絶縁壁の表面色が、少なくとも可視光線の反射率を50%以上とする熱線反射色となることを特徴とするバッテリシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池セルをバスバーで接続しているバッテリシステムは、隣接するバスバー間に電位差が発生する。バッテリシステムは、電位差のあるバスバー間の絶縁特性を改善するために、隣接するバスバーの間に十分な沿面距離を確保することが大切である。絶縁距離を確保するためには、具体的には、沿面距離や空間距離を考慮する。空間距離とは、絶縁された導体間の直線距離に相当する。沿面距離とは、導体を隔てる絶縁物の表面に沿って計測される距離に相当する。バスバー間の絶縁距離は、バスバーの間に絶縁壁を設けることで確保できる。
【0005】
ところで、バスバーを電極端子にレーザー溶接しているバッテリシステムは、製造工程において、バスバーに照射されるレーザービームがバスバーを溶融して周囲にスパッターを飛散させる。スパッターが周辺に飛散する弊害は、バスバーの間に設けている絶縁壁で防止できる。しかしながら、プラスチック製の絶縁壁は、バスバーにレーザービームを照射する工程で周囲からの熱エネルギーを吸収して加熱され、溶融し、さらに気化されて多量のガスを発生する。この工程で発生するガスは、バスバーの溶着を阻害する。気化されたプラスチックガスがバスバーと電極端子との溶着部分に侵入して確実な溶着を阻止するからである。
【0006】
絶縁壁がガスを発生してレーザー溶接を阻害する弊害は、絶縁壁をセラミックなどの耐熱性に優れた素材として解消できる。しかしながら、セラミック製の絶縁壁は部品コストが高く、また焼成して製造するので高い精度で理想的な形状とすることが難しく、さらに重くて製造コストが高くなる等、種々の欠点がある。
【0007】
本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、安価に多量生産できる絶縁プラスチックの絶縁壁で沿面距離を確保しながら、バスバーを安定して電極端子にレーザー溶接できるバッテリシステムを提供することにある。
【0008】
本発明のバッテリシステムは、複数の電池セル1と、隣接する電池セル1の電極端子2にレーザー溶接されて電池セル1を電気接続してなるバスバー3と、隣接する電極端子2の間に配置してなるプラスチック製の絶縁壁19とを備える。絶縁壁19は、その表面色を、遠赤外線の反射率を50%以上とする熱線反射色としている。
【0009】
以上のバッテリシステムは、安価に多量生産できる絶縁プラスチックの絶縁壁でもって、電位差のある電極端子の間の沿面距離を確保して絶縁特性を確保しながら、バスバーを安定して電極端子にレーザー溶接できる特徴がある。バスバーを電極端子にレーザー溶接する従来のバッテリシステムは、バスバーを電極端子にレーザー溶接する工程で、バスバーにレーザービームを照射して加熱するので、絶縁壁が熱線を吸収して溶融され、さらに表面が気化されて多量のガスを発生する。発生するガスはバスバーと電極端子との溶融部分に侵入してレーザー溶接を阻害する欠点があった。
【0010】
本発明のバッテリシステムは、絶縁壁の表面を熱線反射色とするので、レーザービームがバスバーを加熱する工程で、絶縁壁は表面で熱線を効率よく反射する。このため、レーザービームがバスバーを加熱して溶着しながら、プラスチック製の絶縁壁が加熱されてガスが発生するのを防止できる。このため、加熱された絶縁壁が発生するガスに起因するバスバーの溶着不良を防止して、バスバーを確実に安定して電極端子に溶着できる。とくに、以上のバッテリシステムは、絶縁壁の熱吸収を防止してガスの発生を阻止するので、絶縁壁をセラミックなどの耐熱性に優れた材料とする必要がなく、安価で多量生産でき、しかも高い寸法精度で理想的な形状に加工できるプラスチック製の絶縁壁を使用しながら、バスバーを確実に安定して電極端子にレーザー溶接できる特徴を実現する。
【0011】
本発明のバッテリシステムは、絶縁壁19を、熱線反射色の樹脂で形成することができる。
このバッテリシステムは、絶縁壁を熱線反射色の樹脂で形成するので、絶縁壁を成形した後、塗装する等の表面処理を必要とせず、絶縁壁を安価に多量生産できる特徴がある。
【0012】
本発明のバッテリシステムは、絶縁壁19が、熱線反射色のフィラーを含むことができる。
このバッテリシステムは、絶縁壁を成形するプラスチックの材質やボディーカラーに影響を受けることなく、表面を熱線反射色として熱エネルギーの吸収を少なくできる特徴がある。
【0013】
本発明のバッテリシステムは、絶縁壁19が、可視光線または赤外線のうち少なくとも一方を反射する塗料を表面に塗布することができる。
【0014】
本発明のバッテリシステムは、電池セル1を角形電池として、角形電池の間に積層してなるプラスチック製の絶縁セパレータ18と絶縁壁19とを一体構造とすることができる。
このバッテリシステムは、角形電池の間に挟着される絶縁セパレータに絶縁壁を一体構造とするので、絶縁壁を理想的な位置に配置して、隣接するバスバーの沿面距離を確保できる。また、絶縁壁を、定位置に配置するための構造を必要とせず、絶縁壁の取付構造を簡単にできる。
【0015】
本発明のバッテリシステムは、絶縁壁19を、バスバー3を定位置に配置するプラスチック製のバスバーホルダー20と一体構造とすることができる。
このバッテリシステムは、バスバーを定位置に配置するバスバーホルダーに絶縁壁を一体構造とするので、絶縁壁とバスバーとの相対位置を理想的な状態として、隣接するバスバーを絶縁できる。また、絶縁壁を、定位置に配置するための構造を必要とせず、絶縁壁の取付構造を簡単にできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのバッテリシステムを例示するものであって、本発明はバッテリシステムを以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0018】
本発明のバッテリシステムは、ハイブリッドカーや電気自動車などの電動車両に搭載されて走行モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。
【0019】
図1と
図2に示すバッテリシステムは、複数の電池セル1を絶縁セパレータ18を挟んで互いに絶縁して積層状態に固定している。電池セル1は角形電池である。さらに、電池セル1は、リチウムイオン電池からなる角形電池である。ただし、本発明のバッテリシステムは、電池セル1を角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。電池セル1には、充電できる全ての電池、たとえばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池やニッケル水電池セルなども使用できる。
【0020】
角形電池は、
図3と
図4に示すように、絶縁材11を介して封口板12に正負の電極端子2を固定している。なお、
図3及び
図4は、電池セル1とバスバー3の接続状態をわかりやすくするために、複数のバスバー3を定位置に配置するバスバーホルダー20(詳細には後述する)を省略した図を示している。正負の電極端子2は、突出部2Aの周囲に溶接面2Bを設けている。溶接面2Bは、封口板12の表面と平行な平面状で、この溶接面2Bの中央部に突出部2Aを設けている。図の電極端子2は、突出部2Aを円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、図示しないが、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0021】
積層される複数の電池セル1は、固定部品13で定位置に固定されて直方体の電池ブロック16としている。固定部品13は、積層している電池セル1の両端面に配置される一対のエンドプレート14と、このエンドプレート14に、端部を連結して積層状態の電池セル1を加圧状態に固定している締結部材15とからなる。
【0022】
電池ブロック16は、電池セル1の電極端子2を設けている面、図にあっては封口板12を同一平面となるように積層している。
図1と
図2のバッテリシステムは、電池ブロック16の上面に正負の電極端子2を配設している。電池ブロック16は、封口板12の両端部にある正負の電極端子2が左右逆となる状態で電池セル1を積層している。電池ブロック16は、
図3と
図4に示すように、電池ブロック16の両側において、隣接する電極端子2を金属板のバスバー3で連結して、電池セル1を直列に接続している。
【0023】
電池ブロック16は、電池セル1の間に絶縁セパレータ18を挟んで、隣の電池セル1を絶縁状態で積層している。さらに、電池ブロック16は、電位差のある隣の電極端子2の間に絶縁壁19を設けて、電位差のある電極端子2間の沿面距離を長くしている。
図2の断面図に示す電池ブロック16は、絶縁壁19をプラスチック製の絶縁セパレータ18に一体的に成形して、絶縁セパレータ18と一体構造としている。この絶縁壁19は、絶縁セパレータ18を電池セル1の間に挟んで、定位置に配置される。
【0024】
絶縁壁19は、
図2の断面図と
図3の斜視図に示すように、電位差のある電極端子2の間にあって、電極端子2よりも高く、好ましくは電極端子2の上端よりも突出する高さとしている。絶縁壁19は高く隣接して配置されて、電位差のある電極端子2の沿面距離を長くできる。このことから、絶縁壁19は、電極端子2の上端面から突出する高さ(h)を、たとえば5mm以上、好ましくは8mm以上として、電位差のある電極端子2の沿面距離を確保する。
【0025】
ただ、絶縁壁は、バスバー3を定位置に配置するプラスチック製のバスバーホルダー20(
図1参照)と一体構造とすることもできる。このバスバーホルダー20は、例えば、複数のバスバー3が配置されるホルダー本体20Aの内側を複数に区画して、各バスバー3を定位置に配置する区画室を形成すると共に、各区画室の境界となる区画壁を絶縁壁とすることができる。この絶縁壁は、互いに隣接するバスバー3の間に配置されて、電位差のある電極端子2間を絶縁する。この構造は、バスバー3を定位置に配置するバスバーホルダー20に絶縁壁を一体構造とするので、絶縁壁とバスバーとの相対位置を理想的な状態にできる。
【0026】
絶縁壁19は、バスバー3をレーザー溶接する電極端子2に接近するので、レーザービームを照射する状態で加熱される。プラスチック製の絶縁壁19は、加熱されると溶融し、さらに表面が気化してガスを発生する。発生するガスは、バスバー3と電極端子2の溶接部に侵入して、溶接の強度を低下させる原因となる。バスバー3を電極端子2にレーザー溶接する工程で、レーザービームでバスバー3と電極端子2は溶融温度まで加熱される。バスバー3と電極端子2の加熱部は、可視光線および赤外線を含む光(電磁波)を放射する。放射される光は、近くに配置している絶縁壁19の表面に照射される。多くの物質が遠赤外線の波長領域の光を吸収する性質を有しているため、遠赤外線を照射することで物体が発熱する。また、物体は可視光線の吸収によっても発熱する。絶縁壁19は、吸収する熱エネルギーを小さくするために、表面を、可視光線および赤外線を含む光の反射率を50%以上とするように構成している。
【0027】
一般的には、赤外線は、波長が0.78〜1000μmの光であり、そのうち、波長が4〜1000μmの光を遠赤外線という。また、可視光線は、波長が380〜780nmの光である。赤外線の波長領域と、可視光線の波長領域は隣接している。可視光線(波長が380〜780nmの範囲の光)の反射率が高い物質は、赤外線の反射率も高い傾向がある。そのため、絶縁壁19は、可視光線の反射率を50%以上とする熱線反射色としている。このような物質としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド/ナイロン(登録商標))などのポリエステル系プラスチック材料を用いて形成することができる。または、それらの樹脂とガラス繊維・ガラスビーズ等の複合材を用いることも可能である。この構成の絶縁壁19は、上述の通り、光の吸収に伴う熱エネルギーの発生を小さくすることができる。なお、赤外線を反射する性質を有する赤外線反射塗料を絶縁壁19に塗布することで、絶縁壁19の光の吸収に起因する発熱をさらに抑制することもできる。
【0028】
上述の通り、レーザー溶接の際に、光(電磁波)が放射されるが、レーザー溶接の際に用いられるレーザーは、ファイバーレーザー(波長:1060〜1070nm等)、ディスクレーザー(波長:1030nm等)、半導体レーザー(波長:808、825、880、975nm等)、YAGレーザー(波長:1064nm等)などが知られている。これらのレーザーを用いてレーザー溶接を行う場合、主に、可視光線および赤外線が放射されるため、絶縁壁19は、可視光線および赤外線の反射率を高めることで、光の吸収に伴う絶縁壁19の発熱を抑制することが期待できる。特に、放射される光のうち、遠赤外線は、物体に熱を与える効果が著しく高く、絶縁壁19の遠赤外線の反射率を50%以上とすることが好ましい。この絶縁壁19は、照射される遠赤外線の半分以上を反射して熱線の吸収量を小さくできる。また、絶縁壁19は、好ましくは表面色を、可視光線や赤外線の反射率を60%以上とし、さらに好ましくは70%以上として、さらに熱線の吸収量を減少して、ガスの発生を効果的に阻止できる。
【0029】
絶縁壁19は、ボディーカラーを熱線反射色とするプラスチックを成形して、表面を熱線反射色にできる。また、絶縁壁19は、プラスチックに粉末状のフィラーを充填してボディーカラーを熱線反射色とすることができる。この絶縁壁19は、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等、ボディーカラーを白色とする無機粉末をフィラーとしてプラスチックに添加し、混合して、ボディーカラーを熱線反射色として成形することができる。ボディーカラーを熱線反射色とするプラスチックを成形して製作される絶縁壁19は、安価に多量生産できる。ただ、絶縁壁19は、絶縁性のプラスチックで成形した後、熱線反射色の塗料を塗布して表面を熱線反射色とすることもできる。
【0030】
バスバー3は、その両端部を正負の電極端子2に溶接して、電池セル1を直列に接続している。バッテリシステムは、電池セル1を直列に接続して出力電圧を高くしている。バスバー3は、電池セル1を直列と並列に接続することもできる。このバッテリシステムは、出力電圧と出力電流を大きくできる。
【0031】
バスバー3は、電極端子2の突出部2Aを案内する切欠部30を設けている。
図3と
図4のバスバー3は、両端部に切欠部30を設けて、各々の切欠部30に、隣接して配設している電池セル1の電極端子2の突出部2Aを案内している。
図3と
図4のバスバー3は、切欠部30を貫通孔として内側に突出部2Aを挿入している。切欠部30は、電極端子2の突出部2Aを案内できる内形としている。さらに切欠部30は、突出部2Aを案内する状態で、内側縁と突出部2Aとの間に露出隙間4を設けている。切欠部30に突出部2Aを案内する状態で、電極端子2の溶接面2Bを露出するためである。
【0032】
露出隙間4のある切欠部30は、内側に突出部2Aが密着せず、切欠部30の内側縁にレーザービームを照射して内側縁を溶融して電極端子2の溶接面2Bに確実に溶接できる。このため、切欠部30の内側縁を隅肉溶接部31として確実に溶接面2Bに溶接できる。また、バスバー3を電極端子2にレーザー溶接する工程において、露出隙間4にレーザー光線や位置検出センサを挿入して溶接面2Bの位置を検出できる。溶接面2Bの位置が検出できると、バスバー3の表面の位置をレーザー光線や位置検出センサで検出して、バスバー3が溶接面2Bに密着しているかどうかを判定できる。バスバー3を電極端子2にレーザー溶接する工程で、バスバー3と溶接面2Bとの間に隙間があると確実なレーザー溶接は保障されない。溶接面2Bの位置を検出し、さらにバスバー3の位置を検出して、バスバー3と溶接面2Bとの間隔を検出できる。レーザー溶接工程において、バスバー3が溶接面2Bに密着することを検出してレーザー溶接することで、バスバー3は確実に溶接面2Bにレーザー溶接できる。バスバー3と溶接面2Bとの間に隙間があるときは、レーザー溶接を中止して、バスバー3を溶接面2Bに押し付けて密着し、あるいはバスバー3を交換して溶接面2Bに密着してレーザー溶接してバスバー3は確実に電極端子2に溶接される。
【0033】
露出隙間4は、好ましくは1mmよりも大きく、さらに好ましくは2mm以上とする。この間隔の露出隙間4は、溶接面2Bにレーザー光線を照射し、あるいは位置検出センサを挿入して溶接面2Bの位置を確実に検出できる。また、切欠部30の内側縁にレーザービームを照射して、隅肉溶接部31を確実に溶接面2Bにレーザー溶接できる。
【0034】
図3と
図4のバスバー3は、切欠部30を貫通孔としている。さらに貫通孔を円形として、内形を突出部2Aの外形よりも大きくして、突出部2Aとの間に露出隙間4を設けている。円形貫通孔の切欠部30に、円柱状の突出部2Aを挿入して、貫通孔の内側縁を隅肉溶接部31で溶接面2Bに溶接する連結構造は、
図5に示すように、集束されたレーザービームを、円形軌跡に照射してバスバー3を隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで溶接面2Bに確実に溶接できる。
【0035】
バスバー3は、
図5に示すように、切欠部30の内側縁を溶接面2Bに溶接している隅肉溶接部31と、電極端子2の溶接面2Bとの境界を溶接している貫通溶接部32とで溶接面2Bに溶接され、隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで所定の溶接幅(H)で溶接面2Bに溶接される。バスバー3を充分な強度で電極端子2に溶接するために、溶接幅(H)は、例えば0.8mm以上、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上とする。溶接幅(H)は、広くして溶接強度を強くできるが、溶接に時間がかかるのでk例えば5mm以下、好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下とする。
【0036】
バスバー3は、所定の半径に集束したレーザービームを所定のピッチ(t)で複数列に照射して、隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで電極端子2の溶接面2Bに所定の溶接幅(H)で溶接される。複数列に照射されるレーザービームは、切欠部30の内側縁に沿って照射されてバスバー3を隅肉溶接部31で溶接面2Bに溶接し、その後、レーザービームの照射位置を所定のピッチ(t)でずらせて複数列に照射して、貫通溶接部32で溶接面2Bに溶接する。複数列に照射して、隅肉溶接部31と貫通溶接部32でバスバー3を溶接面2Bに溶接するレーザービームは、狭い面積に集束されてバスバー3に照射される。集束されたレーザービームは、複数列に照射されるピッチ(t)にほぼ等しい面積に集束して照射され、あるいは複数列に照射されるピッチ(t)よりも大きな面積に集束して照射される。照射されるピッチ(t)よりも大きな面積に集束して照射されるレーザービームは、複数列に照射されて、所定の溶接幅(H)で均一にバスバー3を溶接面2Bに溶接できる。
【0037】
所定のピッチ(t)で複数列に照射されるレーザービームは、たとえば、3列以上、好ましくは5列以上、さらに好ましくは10列以上に照射されて、隅肉溶接部31と貫通溶接部32とでバスバー3を溶接面2Bに確実に溶接できる。レーザービームを所定のピッチ(t)で複数列に照射して、バスバー3を隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで溶接する溶接構造は、バスバー3を確実に溶接面2Bに溶接できる。ただ、レーザービームの収束する面積を大きくして、バスバー3を隅肉溶接部31と貫通溶接部32の両方で溶接面2Bに溶接することもできる。このレーザービームは、隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで確実にバスバー3を溶接面2Bに溶接できるエネルギーに調整される。
【0038】
図6のバスバー3は、切欠部30の貫通孔を星形として、その内側縁を隅肉溶接部31で溶接面2Bに溶接して、その外側を貫通溶接部32として溶接面2Bに溶接している。この溶接構造は、バスバー3を強固に溶接面2Bに固定できる。さらに、
図7のバスバー3は、切欠部30を凹部として、凹部の内側縁を隅肉溶接部31で溶接面2Bに溶接して、その隅肉溶接部31の外側を貫通溶接部32として溶接面2Bに溶接している。
【0039】
バスバー3は、
図1に示すバスバーホルダー20で定位置に配置されて、電極端子2の突出部2Aを切欠部30に案内する。バスバーホルダー20は、プラスチック等の絶縁材で成形されて、バスバー3を嵌合構造で定位置に配置する。バスバーホルダー20は、電池ブロック16に連結されて、バスバー3を定位置に配置する。バスバーホルダー20は、角形電池の間に積層している絶縁セパレータ18に連結されて定位置に配置され、あるいは角形電池に連結されて、電池ブロック16の定位置に連結される。
図1に示すバスバーホルダー20は、複数のバスバー3を定位置に配置する枠形状のホルダー本体20Aとホルダー本体20Aの上方開口部を閉塞するカバープレート20Bとを備えている。ホルダー本体20Aは、複数のバスバー3が定位置に配置された状態で電池ブロック16の上面に配置されて、各バスバー3の切欠部30が電極端子2の突出部2Aに配置される。さらに、この状態で、ホルダー本体20Aの上方開口部からレーザービームが照射されて、バスバー3が電極端子2に溶着される。全てのバスバー3が電極端子2に溶着された後、ホルダー本体20Aの上方開口部をカバープレート20Bで閉塞する。
【0040】
図3と
図4のバスバー3は、電極端子2に溶接して連結される一対の溶接プレート部33と、一対の溶接プレート部33を連結している連結部34とを有し、連結部34を溶接プレート部33よりも厚くしている。
図5のバスバー3は、切欠部30の近傍であって、隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで溶接面2Bにレーザー溶接される部分に溶接プレート部33を設けている。
図4のバスバー3は、切欠部30を円形の貫通孔とするので、貫通孔の周囲に円形の溶接プレート部33を設けている。溶接プレート部33は、溶接面2Bにレーザー溶接されるので、隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで溶接面2Bに溶接される溶接幅(H)よりも広くしている。
【0041】
溶接プレート部33は、電極端子2の溶接面2Bに確実にレーザー溶接できる厚さとしている。溶接プレート部33の厚さは、
図5の断面図に示すように、溶接プレート部33の表面に照射されるレーザービームで、隅肉溶接部31と貫通溶接部32の両方を溶接面2Bに確実に溶接できる寸法に設定される。溶接プレート部33の厚さは、例えば0.3mm以上、好ましくは0.4mm以上とする。厚すぎると、貫通溶接部32を溶接面2Bにレーザー溶接するエネルギーを大きくする必要があるので、溶接プレート部33の厚さは例えば2mm以下、好ましくは1.6mm以下とする。
【0042】
図3と
図4のバスバー3の連結部34は、両端部に設けている第1の接続部35及び第2の接続部36と、第1の接続部35と第2の接続部36に折曲部を介して連結している第1の立ち上がり部37及び第2の立ち上がり部38と、第1の立ち上がり部37及び第2の立ち上がり部38に折曲部を介して連結している中間連結部39を有する。第1の接続部35と第2の接続部36は、内側に溶接プレート部33を設けている。第1の立ち上がり部37と第2の立ち上がり部38は、所定の曲率半径で直角に折曲している折曲部を介して第1の接続部35と第2の接続部36に連結されて垂直姿勢に配置される。中間連結部39は、所定の曲率半径で直角に折曲している折曲部を介して第1の立ち上がり部37と第2の立ち上がり部38とに連結されて水平姿勢に配置される。中間連結部39は、中間部にU曲部40を設けている。中間連結部39は、U曲部40の幅を第1の接続部35と第2の接続部36よりも狭くして変形しやすくしている。
図4のバスバー3は、第1の立ち上がり部37と中間連結部39とを連結している折曲部の近傍に切り欠き凹部41を設けて、U曲部40の幅を狭くしている。このバスバー3は、電気抵抗が異なる2種の金属を連結して、電気抵抗が小さい金属の折曲部に切り欠き凹部41を設けて、切り欠き凹部41による電気抵抗の増加を防止する。たとえば、第1の接続部35と第1の立ち上がり部37と中間連結部39の一端を銅板として、第2の接続部36と第2の立ち上がり部38と中間連結部39の他端をアルミニウム板とするバスバー3は、銅板である折曲部の近傍に切り欠き凹部を設けて、バスバー3の電気抵抗の増加を少なくしながら、U曲部40の幅を狭くして変形しやすくできる。なお、上述のバスバーは、アルミニウム板と銅板とで構成されているが、アルミニウム板のみ、あるいは、銅板のみで形成することもできる。
【0043】
以上のバッテリシステムは、以下の工程で電極端子2をバスバー3に接続する。
(1)複数のバスバー3が定位置に配置されたバスバーホルダー20を電池ブロック16の定位置に配置して、バスバー3の切欠部30に、電極端子2の突出部2Aを案内する。(2)露出隙間4から溶接面2Bにレーザー光線を照射して溶接面2Bの位置を検出し、さらにバスバー3の表面にレーザー光線を照射してバスバー3の位置を検出し、バスバー3が溶接面2Bに接触するかどうかを確認する。バスバー3が溶接面2Bに接触していることを確認して次の工程に進む。
バスバー3が溶接面2Bから設定値よりも離れていると、エラーメッセージを表示する。エラーメッセージが表面されると、バスバー3を交換し、あるいはバスバー3の位置を調整して、バスバー3を溶接面2Bに接触される。
(3)バスバー3を溶接面2Bに接触させる状態で、バスバー3の切欠部30の内側縁の位置をパターン認識して、切欠部30の内側縁に沿ってレーザービームを照射して、切欠部30の内側縁を隅肉溶接部31としてレーザー溶接し、隅肉溶接部31に沿って、隅肉溶接部31から所定のピッチ離れた位置に複数列にレーザービームを照射し、所定の幅でバスバー3を溶接面2Bに溶接して、貫通溶接部32として溶接する。
図4に示すように、切欠部30を円形の貫通孔とするバスバー3は、
図5に示すように、貫通孔の内径に沿ってレーザービームを照射して、貫通孔の内側縁を隅肉溶接部31として溶接面2Bに溶接し、その後、所定のピッチでレーザービームを照射する半径を大きくしながら、複数列にレーザービームを照射して貫通溶接部32として溶接面2Bに溶接する。隅肉溶接部31と貫通溶接部32は互いに溶接部を連続する状態として、隅肉溶接部31と貫通溶接部32とで所定の幅でバスバー3の溶接プレート部33を溶接面2Bに溶接する。
【0044】
レーザービームは、バスバー3と溶接面2Bとを加熱、溶融する。この状態で、レーザービームの照射領域は、金属製のバスバー3と溶接面2Bが溶融する温度まで高温に加熱される。高温に加熱された照射領域は、周囲に遠赤外線を放射する。放射される遠赤外線は、絶縁壁19を照射して加熱する。絶縁壁19は、遠赤外線の反射率を50%以上として、照射される遠赤外線の半分以上を反射する。表面で遠赤外線を反射する絶縁壁19は、照射される遠赤外線を吸収して加熱される温度が低く、表面が照射される遠赤外線の熱エネルギーで気化されることがない。
【0045】
表面の遠赤外線の反射率を10%とする絶縁壁は、バスバーをレーザー溶接する工程で、プラスチック製の絶縁壁が加熱され、気化されて、溶接部分を確認できないほど多量のガスが発生し、バスバーと電極端子との溶接部にガスが混入して溶着強度が低下する。これに対して、プラスチックに白色の無機粉末を混合して、表面色を、遠赤外線の反射率を70%とする熱線反射色とする絶縁壁19は、バスバー3の溶接工程で加熱によるガスの発生がなく、溶接部にガスが混入して溶着強度が低下することはない。また、表面を可視光線および赤外線を含む光の反射率を50%とする乳白色の赤外線反射塗料でコーティングする絶縁壁19も、バスバー3の溶接工程で加熱によるガスの発生が極めて少なく、溶接部にガスが混入して溶着強度が低下することはない。
【0046】
図4のバスバー3は、切欠部30を円形の貫通孔とするので、隅肉溶接部31と貫通溶接部32の両方をリング状とするが、
図7に示すように、切欠部30を半円形とするバスバー3は、隅肉溶接部31と貫通溶接部32を半円形として、所定の幅でバスバー3の溶接プレート部33を溶接面2Bに溶接する。