(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の椅子の一実施形態を、その前後に配設した机とともに示す側面図である。
図1に示すように、講義室等の床面1上に、固定脚2の上端に横長の天板3が設けられた複数の机(天板付き家具)4が、前後方向に間隔を置いて設置され、前後に隣接する机4、4間の床面1上に、複数(その1個のみを図示する)の椅子5が、左右方向に並べて、かつほぼ前後方向に移動可能として設けられている。
【0018】
図1においては、椅子5の座6が前限に位置している状態を実線で、同じく中間位置および後限に位置している状態を2点鎖線で示してある。
図2は、座6が中間位置に位置している状態の椅子の側面図、
図3は、座6が後限に位置している状態の椅子の側面図である。
【0019】
次に、全図を参照して、椅子5の具体的な構造について詳細に説明する。
この椅子5は、床面1に固着した固定板(固定部材)7に対して、可動板(可動部材)8がほぼ前後方向に移動可能としたスライド機構9と、スライド機構9の可動板8上に設けた脚10と、脚10上に支持された上記座6と、座6の後端より起立するように座6と一体的に設けられた背凭れ11とを備えている。
【0020】
スライド機構9は、
図4〜
図9に示すように、固定板7の両側部に立設した左右1対の側板12、12の前後部に、中央部が下方に凹入する側面視円弧状のガイド溝13、14を設け、この前後のガイド溝13、14に、可動板8の両側部より垂下する左右1対の側板15、15の外側面に、左右方向を向く軸16をもって枢着したガイドローラ17、18を嵌合したものよりなっている。なお、ガイドローラ17、18を、単なるガイドピンとしてもよい。
【0021】
両側板12、12に設けられた前後のガイド溝13、14の形状は、
図2に示すように、座6が中間位置に位置し、かつガイドローラ17、18がガイド溝13、14の前後方向の中間位置に位置している状態から、
図1に実線で示すように、座6が前限に向かって移動する際は、前方のガイドローラ17が中間位置のときとほぼ等高かまたは下方に位置し、後方のガイドローラ18が中間位置のときより上方に位置するようにガイド溝13、14によって案内され、座6が中間位置に位置している状態から、
図3に示すように、座6が後限に向かって移動する際は、前方のガイドローラ17が中間位置のときより上方に位置し、後方のガイドローラ18が中間位置のときとほぼ等高かまたは下方に位置するようなものとしてある。
【0022】
また、スライド機構9は、可動板8の前後方向の移動時における瞬間中心が、床面1より下方に位置し、可動板8が側面視において上向き凸型のなだらかな円弧を描いて前後方向に案内されるように、ガイド溝13、14の形状を定めてある。
ガイド溝13、14の形状は、中央部が下方に凹入する側面視円弧状に拘るものではない。例えば、前方のガイド溝13を、中央部から前方が下向き傾斜し、中央部から後方がほぼ水平とした山形または中央部が上方に突出する側面視円弧状とし、かつ後方のガイド溝14を、中央部から前方がほぼ水平、中央部から後方が下向き傾斜する山形または中央部が上方に突出する側面視円弧状とすることもできる。
【0023】
さらに、ガイド溝13、14を、可動板8の側板15、15に設け、ガイドローラ17、18を固定板7の側板12、12に設けることもできる。
【0024】
ガイド溝13、14には、ガイドローラ17、18を円滑に案内するためのガイドブッシュ13a、14aを設けるのが好ましい。この実施形態においては、ガイドブッシュ13a、14aは、固定板7の両側板12、12の内面に添設され、かつ側板12とその内側の可動板8の側板15の外側面とが直接摺動するのを防止するための摺動板12aと一体的に設けてある(
図4、
図8および
図9参照)。
摺動板12aは、上向きまたは下向きの係止爪12bを、各側板12に設けた係合孔22に嵌合係止させることにより、側板12に装着されている。
【0025】
固定板7における左右の側板12、12間の後部に固着したブラケット20には、圧縮ばねとして作用するガススプリング19の後端部が、左右方向を向く軸20aをもって枢着されている。
可動板8における左右の側板15、15間の前部に固着したブラケット21には、上記ガススプリング19の前端部が、左右方向を向く軸21aをもって枢着されている。
このガススプリング19により、可動板8、ひいては座6は、前限に向かって常時付勢され、椅子5の不使用時に、座6を、机4の天板3等に近接した前限まで移動させて、椅子5の後方に人が通行できる空間を形成することができる。
【0026】
このスライド機構9により、座6および背凭れ11は、不使用時には、机4における天板3の後縁に近接する前限において停止しているが、背凭れ11を後方に引くことにより、前後のガイドローラ17、18が、前後のガイド溝13、14に沿って後方に移動し、瞬間中心が、床面1より下方に位置する状態で、上向き凸型のなだらかな円弧を描いて後方に回動させられる。
ガイドローラ17、18が、ガイド溝13、14の後端に当接した後限において、着座者は、容易に着座したり、立ち上がったりすることができる。
離席後、背凭れ11から手を離すと、座6および背凭れ11は、ガススプリング19の付勢力により、上記と同じ軌跡を逆に辿って、元の前限まで復帰させられる。
このときの座6および背凭れ11の動きは、ロッキングチェアの動きと同様であり、座の前後方向の移動軌跡が、座と脚とが床面と一体の支持体に設けた左右方向を向く枢軸を中心として回動するようにした従来の椅子における座の前後方向の回動軌跡よりもなだらかな円弧を描く。このとき、前後のガイドローラ17、18が、上記の通り、瞬間中心が、着座者の足が置かれた床面1より下方に位置する状態で、上向き凸型のなだらかな円弧を描いて移動する。
したがって、着座者は、着座するときには、わずかな力で背凭れ11と座6とを、天板3から遠ざかる方向に引き出せして着座することができるとともに、着座後も、臀部や踝に力を入れることなく、上半身をわずかに前後動させるだけで、スライド機構9を作動させ、一体化された座6、脚10、および背凭れ11を、前後方向の所望の位置へ移動させることができるので、着座感および座6を前後動させる際の使い勝手をよくすることができる。
【0027】
固定板7における左右の側板12、12より外側の部分は、着脱可能としたカバー(図示略)により覆われているが、これは本発明には直接関係しないため、詳細な説明は省略する。
【0028】
可動板8の後部は、両側板15、15とともに両側方に鳩尾状に拡開し、その後縁中央部には、横長の方形の切込み孔8aが設けられている。
【0029】
可動板8の前後の端部には、後述する脚10のベース31を構成するループ状の杆材33の前後の端部が上方より載置され、溶接により固着されている。
【0030】
図4に示すように、上述した脚10は、ベース31と、その後部の左右方向の中央部より起立する脚柱(脚部材)32とを備えている。ベース31は、金属パイプよりなる1本の杆材33を、平面視ほぼ方形のループ状に折曲することにより形成されている。
【0031】
ループ状に折曲した杆材33は、ベース31の後部の左右方向の中央部において終端し、その終端において、左右の杆材33をさらに上向きに折曲して延長させることにより、左右2本の上向杆材34、34よりなる上記の脚柱32が、ベース31と一体をなすように形成されている。なお、この例では、左右の上向杆材34の対向面同士を互いに当接させているが、若干離間させておいてもよい。
【0032】
脚柱32の上端には、左右の上向杆材34を、その上端において、さらに前方に向かってほぼ水平をなすように折曲して延長させることにより、左右2本の前向杆材35、35よりなる座支持杆36が、ベース31および脚柱32と一体をなすように形成されている。なお、両前向杆材35の前端の開口孔は、キャップ37により閉塞されている。
【0033】
脚10のベース31には、合成樹脂製の物品載置板38が、次のようにして装着されている。
図4、
図5および
図10〜
図14に示すように、物品載置板38は、ベース31と同形の平面視ほぼ方形の板状をなし、ループ状の杆材33に上方より嵌合されて、外周部の下面が、ベース31のループ状の杆材33の上部の内周面により支持されている。物品載置板38の外周部を除いた上面は、後方ほど深くなるように浅皿状に凹ませてある。
【0034】
物品載置板38の前端部の下面には、左右方向を向く前部杆材33aの内周面に嵌合可能な、下部を前方に向かって円弧状に湾曲させた左右1対の嵌合片39、39が、下向きに突設されている。物品載置板38の後縁の左右方向の中央部には、弾性係合片40が下向きに突設され、その下端には、前方を向く左右1対の係止爪40a、40aが突設されている。
図11および
図12に示すように、物品載置板38の左右両側部の下面には、ループ状の杆材33における前後方向の側部杆材33b、33bの対向面に上方から嵌合することにより、物品載置板38を左右方向に位置決めする位置決め片41、41が、下向きに突設されている。
【0035】
物品載置板38をベース31に装着するには、
図13に示すように、まず物品載置板38を前下がり状に手で保持した状態で、その前端部を前部杆材33aの上面に当接させつつ、左右の嵌合片39を、前部杆材33aの内周面に上方より嵌合させる。
【0036】
ついで、
図14に示すように、物品載置板38を平らにしながら、その後端部を後部杆材33cの上面に当接させるとともに、左右の位置決め片41、41を側部杆材33b、33bの対向面に摺接させながら、弾性係合片40を、後部杆材33cの内面に沿って押し下げ、弾性係合片40を可動板8の後端に設けた切込み孔8aを貫通させて、左右の係止爪40aを可動板8の後縁部の下面に弾性係合させる。
これにより、物品載置板38は、ベース31の上部に、前後左右方向に位置ずれするのが防止されて、かつ上方へ外れ止めされて装着される。ベース31は、1本の杆材33を平面視ほぼ方形のループ状に折曲して形成されているので、物品載置板38を、上述した要領により簡単に装着することができ、かつ上面を凹ませた形状として、小物の物品の落下を防止することができる。
【0037】
このように、脚柱32を、ベース31の後部の左右方向の中央部より起立させて、ベース31の上部に物品載置板38を装着したことにより、座6の下方に、前方および左右両方向が完全に開放され、かつ後方は、左右方向の中央部のみが脚柱32により閉塞され、その両側方が開放された広い物品収容空間Sが確保される。その結果、物品載置板38に、上下寸法の大きな物品でも、脚柱32に妨げられることなく、斜め後方を含む多方向から容易に出し入れすることができるので、物品載置板38の使い勝手が向上する。
【0038】
また、物品載置板38全体が、脚10のベース31により支持されているので、質量の大きな物品でも、これを安定よく載置しうるとともに、物品載置板38が変形するのも防止される。
さらに、ベース31の大きさに対応して、載置面積の大きな物品載置板38を装着することができるので、物品載置板38の使い勝手がより向上する。
【0039】
ベース31、脚柱32および座支持杆36は、金属パイプよりなる1本の杆材33を折曲することにより一体的に形成されているので、それらを別部材により個々に製作して互いに結合する必要はなく、部品点数および組立工数が削減されてコスト低減が図れる。
【0040】
次に、上記座6の構造およびその表面(上面)の表装部材の取付構造を、
図15〜
図20を参照して詳細に説明する。なお、
図15の上方が座の前、下方が座の後である。
荷重受部材である座6は、底面視ほぼ後向きコ字形をなす金属パイプ状の座フレーム50と、座フレーム50における左右方向を向く前部フレーム50aと左右の側部フレーム50b、50bにより、前部と両側部の下面が支持された、平面視ほぼ方形をなす硬質合成樹脂製の基板51と、基板51の上面に載置されるウレタン等のクッション材52と、基板51の上面に、クッション材52を覆うようにして取付けられた、エラストマー等よりなる弾性を有する表装部材53とを備えている。
【0041】
左右の側部フレーム50bの前端部同士と後端部同士は、それらの下面に、左右方向を向く連結板54、54の両端部を、溶接により固着することにより、互いに連結されている。この連結板54により、座フレーム50のねじり剛性が高められている(
図6参照)。
【0042】
前後の連結板54の下面には、座6を座支持杆36に取付けるための座取付部材55、55の左右両端部が、それらの下方より挿入したボルト56、56を、連結板54の上面の溶接ナット57、57に螺合させて締め付けることにより固着されている(
図17参照)。
【0043】
座取付部材55、55における左右両端部を除いた部分には、下向きに膨出するエンボス加工部58が、また、このエンボス加工部58の左右方向の中央部下面には、上向凹部59がそれぞれ形成されている。前後の座取付部材55の上向凹部59に、上述した脚10の座支持杆36の上半部を嵌合し、溶接して固着することにより、基板51を含む座6全体の左右方向の中央部が、座支持杆36により支持されている(
図6参照)。また、座6は、実質的に脚柱32により片持ち支持されている。
【0044】
図16および
図17に示すように、基板51は、中央部が下方に向かってなだらかに凹入するように湾曲する円弧状断面とされ、左右両側部を下向きコ字状断面をなすように折曲することにより、左右両側部には、前後方向を向くとともに、下方に開口する上向きの凹溝60、60が形成されている。この左右の凹溝60を、座フレーム50の左右の側部フレーム50b上に上方から嵌合することにより、基板51の両側部下面が、左右の側部フレーム50bにより左右方向に位置決めされて支持されている。基板51の前端部は、やや前下がり状に湾曲され、その部分よりやや後方の下面が、座フレーム50の前部フレーム50aにより支持されている。
【0045】
図17に示すように、座フレーム50により支持された基板51は、前後の連結板54の上面に、複数のボルト61により固定されている。なお、座フレーム50における側部フレーム50b、50bの後端には、上向きの背凭れ支持杆50c、50cが連設され、この左右の背凭れ支持杆50cに、背凭れ11の左右両側部を上方より嵌合して固定することにより、背凭れ11は、座フレーム50により支持されている(
図2参照)。
【0046】
基板51の外周端よりも内方の部分には、表面側(上方)に開口する凹形断面の差込溝62が、周方向に平面視ほぼ方形をなして連続するように形成されている。この差込溝62における左右両側のものは、左右の側部フレーム50bと凹溝60よりも内方に、前側のものは、前部フレーム50aよりもやや前方に位置するようにしてある。なお、上述したクッション材52は、差込溝62により囲まれた内方に載置される大きさとされている。
【0047】
表装部材53は、基板51の大きさよりも若干小さな平面視ほぼ方形をなし、
図16〜
図18及び
図20の底面図に示すように、その外周部の裏面には、上記差込溝62に上方より嵌合可能な基板51方向を向く差込片63が、周方向に連続するようにして突設されている。表装部材53の裏面からの差込片63の突出寸法は、差込溝62の深さよりも大とされ、後述するように、差込溝62に差込片63を嵌合した際、その上部が差込溝62の上方に突出するようになっている。なお、クッション材52は、差込片63により囲まれた内方に収容されるようになっている。
【0048】
表装部材53における差込片63よりも外側の外周端には、基板51の表面に向かって屈曲する、閉塞部としての閉塞片64が連設されている。この閉塞片64の先端(下端)は、表装部材53を後述する要領で基板51に取付けたとき、基板51の外周部の表面に当接または近接するようになっている。
【0049】
図16、
図18〜
図20に示すように、表装部材53の前後左右の差込片63には、上下寸法が差込片63のそれよりも短寸の4個からなる硬質合成樹脂製の補強片65が、次のようにして取付けられている。
前後左右の差込片63には、取付孔66が、周方向に複数穿設されており、それらの取付孔66に、各補強片65の外面に突設した複数の突部67を、内方より圧嵌することにより、各補強片65は、前後左右の差込片63の内面に、その下部と重合するようにして取付けられている。なお、上記とは反対に、補強片65に設けた取付孔に、差込片63に突設した突部を圧嵌して、差込片63に補強片65を取付けるようにしてもよい。
【0050】
各補強片65の下縁には、内向きの係合突部68aを有する複数(3個)の弾性係合片68が、下向きに突設されている。各弾性係合片68の断面形状は、先細り状とされている。
各弾性係合片68と対向する基板51の差込溝62の底壁には、差込片63と対向する部分を除いて、下方と内側方に開口する弾性係合片68が嵌合される開口部69が形成され、この開口部69の内方の開口下端、すなわち、差込溝62の内方の内面と連続する基板51の外周部の下端は、係合突部68aの上端が係合可能な係止段部70となっている。
【0051】
基板51の表面に表装部材53を取付けるには、表装部材53における差込片63により囲まれた内方に、クッション材52を収容してこれを保持したのち、
図18に示すように、基板51の差込溝62に、差込片63とそれに取付けた補強片65とを上方より嵌合し、補強片65の下縁の各弾性係合片68を、差込溝62の下部の開口部69に嵌合して貫通させるとともに、係合突部68aを係止段部70に弾性係合させる。この際、差込片63の突出寸法を、差込溝62の深さよりも大としてあるので、差込片63のほぼ上半部が差込溝62の上方に突出した状態となる。
【0052】
これにより、基板51と表装部材53との対向面間にクッション材52が収容された状態で、基板51の表面に表装部材53が止着されるとともに、表装部材53の外周部の閉塞片64の先端が、基板51の外周部の表面に当接または近接するので、差込溝62や差込片63が露呈しなくなる。なお、差込片63を差込溝62に嵌合して、弾性係合片68を係止段部70に係合させたとき、閉塞片64が上向きに弾性変形するようにしてもよい。このようにするためには、差込溝62の深さを深くするか、または閉塞片63の下方への突出寸法を大とすればよい。
【0053】
このように、閉塞片64が上向きに弾性変形するようにすると、着座時に表装部材53が下方に撓んでも、閉塞片64の先端が基板51の表面から離間することがなく、常に基板51の表面に当接するようになるので、基板51との当接面に隙間が形成されることがなくなる。
また、差込片63および弾性係合片68に上向きの反力が作用するので、係合突部68aが係止段部70より外れにくくなる。
【0054】
座6の基板51における前部と左右両側部は、それらの下面を支持する底面視後向きコ字状をなす座フレーム50により、また、中央部においては、その下面を支持するようにして、左右の側部フレーム50b、50bに両端部が結合された前後の連結板54、54により、それぞれ補強され、さらに、基板51の左右方向の中央部下面が、実質的に座支持杆55により支持されているので、着座した際の荷重により、基板51を含む座6全体が下方に過度に撓むのが防止される。従って、座6の下方の物品収容空間Sが狭められることはなく、ベース31に装着した物品載置板57の使い勝手が妨げられることはない。
【0055】
上記実施形態の表装部材53の取付構造によると、基板51の外周部に形成された差込溝62およびそれに嵌合された差込片63は、表装部材53における差込片63よりも外方の外周部に設けた閉塞片64により覆われ、外部に露呈しないので、いたずら等により、差込溝62から差込片63が引き抜かれるおそれがない。しかも、差込片63に取付けた補強片65における弾性係合片68の係合突部68aが、基板51における開口部69の下端の係止段部70に係合しているので、別途抜け止め部材を設けなくとも、差込片63が妄りに差込溝62より離脱するおそれがない。
【0056】
また、差込片63の上半部が差込溝62の上方に突出するようにしているので、着座時に差込片63の突出部も内方に弾性変形し易くなる。その結果、表装部材53の外周部の柔軟性が阻害されることがなくなり、表装部材53全体が弾性変形するので、柔軟な着座感が得られる。
【0057】
さらに、差込片63に補強片65を取付けて二重構造とし、それらの重合部を差込溝62に嵌合しているので、差込溝62に対しての差込片63の嵌合強度が大となり、差込片63を差込溝62内に安定よく保持しうるとともに、差込片63が内方に大きく弾性変形したとしても、それが差込溝62より離脱するおそれはない。
【0058】
以上説明したように、上記実施形態においては、前方に配設した机4の天板3の後縁に対して、少なくとも座6が前後方向に移動可能として床面1上に装着した椅子において、座6の下方に、少なくとも左右方向から物品の出し入れを可能とした物品収容空間Sを設けてあるので、着座者は、携帯した手荷物等を、座6の下方に設けた物品収容空間Sに、座6の側方から容易に出し入れすることができるとともに、物品収容空間Sに収容した荷物によって、座6の移動や着座者の足の移動が妨げられることがない。
【0059】
また、床面1に対してほぼ前後方向に移動可能としたベース31の後部に脚柱32を立設し、この脚柱32の上端に座6を支持させることにより、ベース31と座6との間に、前方と左右両側方とが開口する物品収容空間Sを形成してあるので、椅子5の構造を簡素化することができ、安価に製造することができる。
【0060】
さらに、脚柱32の上端に座6の後部を固着することにより、座6を片持ち支持するようにしてあるので、物品収容空間Sをより大とし、ここに大きな荷物をも収容することができるようになる。
【0061】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、例えば、次のような変形した態様での実施が可能である。
(1)座6とベース31との間において、棚板(図示略)を脚柱32に設ける。
(2)スライド機構9を、他の構造のものとする。
(3)脚柱32を、ベース31の後部における左右方向の中央に設ける代わりに、または、ベース31の前部における左右方向の中央に設ける。
(4)脚柱32を、ベース31の後部における左右方向の中央と、ベース31の前部における左右方向の中央との両方に設ける。
(5)上記(1)の場合において、スライド機構9を脚柱32の上端部に設けることによって、座6を脚柱32に対して前後方向に摺動するようにする。このとき、棚板(図示略)は、脚柱32と座6のどちらに設けられていても構わない。