(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに平行な複数の第1の通芯と、互いに平行であって且つ該第1の通芯に直交する複数の第2の通芯との交点に立設される柱と、前記第1の通芯又は前記第2の通芯上であって隣り合う前記柱間に配設される梁と、前記梁に支持される床と、を備えた複数階建て建物における、中間階床の支持構造であって、
1階及び屋上階を除く所定の階において、床が敷設された有床領域と、床が敷設されない矩形状の無床領域とが形成されており、
前記無床領域の四周には、前記無床領域を画成する前記梁が配設されており、
前記無床領域の内部において、平面視で、前記無床領域を画成する前記梁に沿うと共に、前記無床領域を画成する前記梁よりも低く且つ下階の梁よりも高い位置に、中間階床梁フレームが設けられ、当該中間階床梁フレームにて前記中間階床を構成する床材が支持されており、
前記無床領域を画成する各前記梁には、前記中間階床梁フレームを支持する間柱を接合するためのボルト孔が穿設された接合部が設けられており、
前記中間階床梁フレームは、前記第1の通芯に沿う第1中間梁と、前記第2の通芯に沿うと共に、前記第1中間梁に接合される第2中間梁と、前記第1中間梁と前記第2中間梁とが接合されることで形成される隅部と、を有し、
前記間柱は、前記隅部の近傍において、前記無床領域を画成する前記第1の通芯上の前記梁とその直下の下階の梁との間、又は前記無床領域を画成する前記第2の通芯上の前記梁とその直下の下階の梁との間のいずれかに立設され、前記接合部を介して前記無床領域を画成する前記梁に接合されており、
前記第1中間梁及び前記第2中間梁の前記隅部を挟んで両側となる位置には、それぞれボルト締結によって前記間柱に接合するためのボルト孔が穿設された接合部が設けられており、
前記中間階床梁フレームは、前記隅部を挟んで設けられた前記第1中間梁の接合部及び前記第2中間梁の接合部のいずれか一方を介して前記間柱に接合されていることを特徴とする中間階床の支持構造。
平面視で、前記第1の通芯上の梁と前記第1中間梁との離隔寸法が、前記第2の通芯上の梁と前記第2中間梁との離隔寸法に等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の中間階床の支持構造。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る中間階床の支持構造の実施形態を説明する。
図1、及び
図2に示されるように、本実施形態に係る建物1は、鉄骨造の梁勝ち架構を有する2階建て(2層構成)の工業化住宅であり、予め規格化(標準化)された構造部材の組み合わせによって架構が構成される。構造部材としては、躯体を構成する柱や梁等の他、床板や中間梁等も含まれ、各構造部材は、工場にて製造され、建築現場にて組み立て作業がなされる。
【0014】
また、建物1は、305mmの平面モジュール(M)を有し、柱や梁(基礎梁を含む)は、平面モジュール(M)の整数倍の間隔で規定された通芯上に配置される。具体的には、通芯は、例えば、互いに平行な複数の横の通芯(第1の通芯)L1,L2と、互いに平行な複数の縦の通芯(第2の通芯)L3,L4とが互いに直交して格子状をなし、第1の通芯と第2の通芯との交点に柱が立設される。
【0015】
建物1は、1階床F1と2階床F2とを備え、更に、1階床F1と2階床F2との中間の高さに中間階床F3が設けられ、また、1階における中間階床F3の下方の領域に、1階床F1よりも一段下がった1階低床F4が形成されている。また、中間階床F3は、1階床F1から2階床F2までの高さを等分する位置ではなく、2階床F2寄りにずれて設けられている(
図3参照)。また、建物1は、1階と中間階とを連絡する下側階段2と、中間階と2階とを連絡する上側階段3と、を備えている。
[2階及び非階床空間]
【0016】
図2は、建物1の概略を示す平断面図である。
図2に示されるように、複数の柱4A,4B,4C,4Dは、第1の通芯L1,L2と第2の通芯L3,L4との計4つの交点にそれぞれ立設されている。より具体的には、柱4Aは、第1の通芯L1と第2の通芯L3との交点に、柱4Bは、第1の通芯L1と第2の通芯L4との交点に、柱4Cは、第1の通芯L2と第2の通芯L4との交点に、柱4Dは、第1の通芯L2と第2の通芯L3との交点に、それぞれ立設されている。隣り合う柱4A〜4D間には、梁5(2階梁)が架設されている。2階床レベルの領域は、床が敷設された有床領域A1と床が敷設されない矩形状の無床領域(2階床レベルにおいて床が存在しない領域という意味)A2とに分かれている。
【0017】
有床領域A1には、平行に架設された梁5間に小梁が適宜に架設されており、梁5上、及び小梁上にALC(軽量気泡コンクリート)パネルからなる床板Bが敷設されることで2階床F2が形成されている。一方で、無床領域A2には、床板Bが敷設されておらず、床開口部Sが形成されている。無床領域A2は、柱4Aと柱4Bの間で第1の通芯L1上に架設された梁5と、柱4Cと4Dとの間で第1の通芯L2上に架設された梁5と、柱4Aと柱4Dとの間で第2の通芯L3上に架設された梁5と、柱4Bと柱4Cとの間で第2の通芯L4上に架設された梁5と、によって画成されている。すなわち、無床領域A2の四周には、無床領域A2を画成する梁5が配設されている。
[中間階]
【0018】
図2、
図3、及び
図4に示されるように、中間階床F3はこの無床領域A2内の一部領域に形成され、中間階床F3の上方が天井高の高い中間階空間S1、中間階床F3の下方が天井高の低い低天井空間S4となっている。床開口部S(無床領域A2)のうち、中間階床F3以外の領域の一部には、下側階段2と上側階段3とからなる階段ユニットが設置されて、階段室S3が形成され、その他の領域は吹き抜け部S2となっている。中間階床F3は、2階床F2と同様、ALCからなる床板(床材)Bで形成されている。床板Bは、無床領域A2内部において、平面視で無床領域A2を画成する梁5に沿うと共に、無床領域A2を画成する梁5よりも低く且つ基礎梁(1階梁)37よりも高い位置に設けられた第1中間梁7、一対の第2中間梁8A,8B、第3中間梁6、そして第1中間梁7と第3中間梁6との間に架設された第4中間梁10にて支持されている。ここで、「梁5に沿って配置された」とは、当該梁5と離れた位置であって当該梁5の延在方向と同じ方向に延びて配置されている場合を含むものとする。
【0019】
第1中間梁7は、平面視上、第1の通芯L1上の梁5に隣接すると共に、第1の通芯L1と平行に設けられている。第2中間梁8Aは、平面視上、第2の通芯L3上の梁5に隣接すると共に、第2の通芯L3と平行に設けられている。第2中間梁8Bは、平面視上、第2の通芯L4上の梁5に隣接すると共に、第2の通芯L4と平行に設けられている。第3中間梁6は、第2中間梁8A,8Bを挟んで第1中間梁7とは反対側の位置に第1中間梁7と平行に配置されている。より具体的には、第3中間梁6は、平面視上、中間階空間S1と吹き抜け部S2及び階段室S3との境界に設けられている。
【0020】
第1中間梁7、第2中間梁8A,8B、及び第3中間梁6は、その端部において互いに接合されて矩形額状の中間階床梁フレーム9が形成される。
【0021】
図7は、第1中間梁7の構成を示す図である。
図7に示されるように、第1中間梁7は、上下一対のフランジ71A,71Bと、一対のフランジ71A,71Bを接合するウェブ72とからなるH形鋼で構成された長尺状の部材であり、その横断面は開断面である。ウェブ72には、4つのボルト挿通孔72aからなり間柱等の他の部材が接合される接合部73が第1中間梁7の全長にわたって、平面モジュール(M)に対応した間隔(両端においては平面モジュール(M)の2分の1(M/2)の間隔、その他中間部は平面モジュール(M)に等しい間隔)で設けられている。
【0022】
本実施の形態では、第1中間梁7の最端の接合部73に、それぞれ第2中間梁8A,8Bがボルト締結され、その隣の接合部73に間柱11A,11Bがボルト締結される。なお、ウェブ72には、接合部73の他に、配線の挿通等に利用される開口72bが適宜に形成されている。第3中間梁6の各部材の構成は、
図7に示される第1中間梁7の構成と同一である。本実施の形態では、第3中間梁6は、最端の接合部73が、それぞれ第2中間梁8A,8Bにボルト締結されることで、第2中間梁8A,8Bで支持されている。
【0023】
間柱11A,11Bが接合される接合部73,73で挟まれた部分が一般部74である。間柱11A,11Bが接合される接合部73の領域内で最も断面性能が小さくなる断面位置は、ボルト挿通孔72aの中心を切断する位置(
図7(b)参照)である。一方、一般部74、つまり、間柱11A,11Bが接合される左右の接合部73,73で挟まれる部分のうち、断面性能が最も小さい断面位置は、開口72bの中心を切断する位置(
図7(c)参照)である。したがって、間柱11A,11Bに実際に接合された接合部73は、少なくとも一般部74のなかで断面性能が最も小さい部分以上の断面性能を有する。ここで仮に、開口72bが形成されていない場合には、一般部74のなかで断面性能が最も小さい断面位置は、間柱11A,11Bが接合されない接合部73においてボルト挿通孔72aの中心を切断する位置であり、これは、間柱11A,11Bが接合される接合部73領域内での最小の断面性能と同等である。したがって、間柱11A,11Bに実際に接合された接合部73の強度が、他の一般部74に比べて局所的に低下することは無く、中間梁の強度面での性能が一定以上に確保されている。
【0024】
間柱11A,11B,11C,11Dは、中間梁を支持する支持手段である。
図2に示されるように、一対の間柱11A,11Bは、第1の通芯L1上の基礎梁(1階梁)37の上に立設されるとともに上端が梁(2階梁)5に接合されており、第1中間梁7をその両端寄りの位置で支持している。間柱11Cは、第2の通芯L3上の基礎梁(1階梁)37の上に立設されるとともに上端が梁(2階梁)5に接合されており、第2中間梁8Aをその一端寄りの位置で支持している。同様に、間柱11Dは、第2の通芯L4上の基礎梁(1階梁)37の上に立設されるとともに上端が梁(2階梁)5に接合されており、第2中間梁8Bをその一端寄りの位置で支持している。
【0025】
間柱11A〜11Dの構成について、
図4、及び
図5を用いて、間柱11Aを例に挙げて説明する。
図4は、柱4A、梁5、間柱11A、第1中間梁7、及び第2中間梁8Aの接合を示す斜視図である。
図4、及び
図5に示されるように、間柱11Aは、下端部(後述の梁接合部114の下端部114a)が基礎梁(1階梁)37に接合され、上端部(後述の梁接合部113の上端部113a)が梁(2階梁)5に接合される本体部111と、本体部111の中途部から持ち出されて第1中間梁7Aの側面に接合されるブラケット部115と、を備えている。
【0026】
本体部111は、矩形の鋼管部112と、鋼管部112の上下両端のそれぞれに設けられた梁接合部113,114とを有する。梁接合部113は、その上端部113aにおいて梁5に接合される部材であり、梁接合部114は、その下端部114aにおいて基礎梁37に接合される部材である。梁接合部113は、平面モジュール(M)に対応した間隔で複数のボルト孔が穿設された梁5の下フランジ5Aに当接され、ボルト締結され、梁接合部114は、基礎梁37から突設されたアンカーボルトにて締結される。柱4A〜4Dも矩形鋼管からなる本体部を備えているが、間柱11Aの本体部111は、柱4A〜4Dの本体部に比べて肉厚であり、曲げ剛性が高くなっている。また、間柱11Aの本体部111の横断面の外形は、柱4A〜4Dの本体部の横断面の外形と同一である。
【0027】
ブラケット部115は、断面コ字状で、両端部が鋼管部112に溶接されている。ブラケット部115は、鋼管部112から持ち出された上下の水平面部116A,116Bと、水平面部116A,116Bの先端同士を連結し、第1中間梁7の接合部73(ウェブ72)に面接触してボルト締結される鉛直面部117とを備えている。なお、水平面部116A,116B及び鉛直面部117の内側には、板状の補強材であるリブ118が設けられている。
【0028】
図6に示されるように、水平面部116Bの先端の幅は鉛直面部117の幅に対応しており、根元の幅に比べて途中から拡大している。水平面部116Aについても同様である。また、鉛直面部117の高さ寸法は、第1中間梁7のウェブ72の高さ寸法に比べて小さくなっている。ここで、鉛直面部117の高さ寸法、つまりブラケット部115の高さ寸法とは、鋼管部112から水平方向に持ち出されたブラケット部115の下端(水平面部116Bの下面)から上端(水平面部116Aの上面)までの寸法を意味する。そして、第1中間梁7のウェブ72の高さ寸法、つまり、第1中間梁7の高さ寸法は、下方のフランジ71Bの上面から上方のフランジ71Aの下面までの寸法を意味する。
【0029】
第1中間梁7の左右両方の接合部73,73は、一対の間柱11A,11Bの各ブラケット部115の鉛直面部117にボルト締結されており、その結果として、第1中間梁7の両端部が間柱11A,11Bにそれぞれ支持されている。一方、第3中間梁6は、間柱11A〜11Dでは支持されず、一対の第2中間梁8A,8Bによって支持されている。
【0030】
図8は、第2中間梁8Aの構成を示す図である。
図8に示されるように、第2中間梁8Aは、横断面が開断面の鋼材からなる長尺状の本体部81と、本体部81の両端に設けられ、第1中間梁7及び第3中間梁6に接続される接合部85,85とを備えている。第2中間梁8Bの構成は、第2中間梁8Aと同様であるため、以下、第2中間梁8Aについて説明し、第2中間梁8Bの詳細な説明を省略する。本体部81は、上下一対のフランジ82A,82Bをウェブ83で接合して形成されるH形鋼からなる。本体部81の形状は、断面寸法も含め、基本的に第1中間梁7及び第3中間梁6と同様であるが、4つのボルト挿通孔83aからなる接合部84は、両端部の4つについてはその間隔が平面モジュール(M)の2分の1(M/2)となるように、その他の中間部については平面モジュール(M)に等しくなるように設けられている。また、配線の挿通等に用いられる開口83bが適宜に形成されている。
【0031】
図9に示されるように、本体部81の端部には、ウェブ83の中央部分が上下のフランジ82A,82Bよりも突き出た突出片83cが形成されており、突出片83cには、第1中間梁7(又は第3中間梁6)に接合される接合部85が溶接されている。接合部85は、突出片83cの先端、及び上下を囲むような断面コ字状であり、第1中間梁7のウェブ72(又は第3中間梁6のウェブ)に面接触してボルト締結される当接板部(当接面部)86と、当接板部86の上下端で屈曲して突出片83cの上端及び下端に溶接される結合板部87A,87Bとを備えている。
図10に示されるように、上下一対の結合板部87A,87Bは、くさび状であり、くさびの先にスリット87aが形成されている。接合部85は、このスリット87aに突出片83cが差し込まれるように装着され、且つ溶接される。
【0032】
接合部85の高さ、つまり、結合板部87Bの下端から結合板部87Aの上端までの寸法は、第1中間梁7の上下のフランジ71A,71B間及び第3中間梁6の上下のフランジ間の寸法よりも小さくなっている。その結果、接合部85は、第1中間梁7の上下のフランジ71A,71B間(又は第3中間梁6の上下のフランジ間)に収まり、第1中間梁7のウェブ72(又は第3中間梁6のウェブ)に到達してボルト締結される。
【0033】
図4、及び
図8に示されるように、第2中間梁8A,8Bは、第3中間梁6に接合される側の端に最も近い接合部84が、間柱11C,11D(
図2参照)にそれぞれ接合されて一端が支持されている。また、他端については、第1中間梁7に接合されることで支持されている。第2中間梁8Aと間柱11Cとの接合構成、及び第2中間梁8Bと間柱11Dとの接合構成は、いずれも上述した第1中間梁7と間柱11A,11Bとの接合構成と同様である。第4中間梁10は、第1中間梁7及び第2中間梁8A,8Bと同一の断面寸法を有するH形鋼からなり、両端部には、第2中間梁8A,8Bの接合部84と同一形状の接合部を備えている。そしてこの接合部が第2中間梁8A,8Bの中間位置の接合部84に当接されボルト締結されることで架設されている。
【0034】
図11に示されるように、第2中間梁8Aの接合部85の当接板部86は、第1中間梁7のウェブ72に面接触されてウェブ72にボルトVで締結固定される。このように第1中間梁7と第2中間梁8Aとが接合されることで、中間階床梁フレーム9の隅部Pが形成されている。本実施形態では、隅部Pは、第1中間梁7のフランジ71A,71Bにおいて柱4Aに最も近い角部に相当する。上述のように第1中間梁7と第2中間梁8Aとが接合されることで、第1中間梁7の接合部73及び第2中間梁8Aの接合部84が、隅部Pを挟んで両側となる位置にそれぞれ設けられる。
【0035】
第1中間梁7は、幅方向の中心位置が第1の通芯L1から平面モジュールの2分の1(M/2)だけ離隔して配置されている。同様に、第2中間梁8Aは、幅方向の中心位置が第2の通芯L3から平面モジュールの2分の1(M/2)だけ離隔して配置されている。図示していないが、第2中間梁8Bについても同様に、幅方向の中心位置が第2の通芯L4から平面モジュールの2分の1(M/2)だけ離隔して配置されている。すなわち、平面視で、第1の通芯L1上の梁5と第1中間梁7との離隔寸法d1は、第2の通芯L3上の梁5と第2中間梁8Aとの離隔寸法d2と等しい。また、平面視上、第1中間梁7の接合部73の中央位置から隅部Pまでの横方向における距離d3は、第2中間梁8Aの接合部84の中央位置から隅部Pまでの縦方向における距離d4と等しい。
【0036】
第1中間梁7及び第2中間梁8Aには、隅部Pを挟んで両側となる位置にそれぞれ接合部73及び接合部84が設けられているので、いずれの接合部(接合部73又は接合部84)に間柱を連結させるかを選択することが可能となっている。本実施形態では、上述の通り、第1中間梁7の接合部73がボルトVによって間柱11Aのブラケット部115に締結固定されているが、第2中間梁8Aの接合部84に対向する位置Cに間柱11Aを設け、当該間柱11Aに接合部84を締結固定することも可能となっている。
【0037】
間柱11Aが第1の通芯L1上の梁5側(
図11における間柱11Aの位置)に設置される場合は、第2の通芯L3から平面モジュール(M)だけ離隔した第1中間梁7の接合部73(端部から2つ目の接合部)に接合される。間柱11Aが第2の通芯L3上の梁5側(
図11における位置C)に設置される場合は、第1の通芯L1から平面モジュール(M)だけ離隔した第2中間梁8Aの接合部84(最端の接合部)に接合される。ただし、間柱11Aの位置、及び間柱11Aが接合される接合部(第1中間梁7の接合部73又は第2中間梁8Aの接合部84)の位置は、上記に限定されない。梁5のフランジ5Aには、平面モジュール(M)の間隔で間柱11Aを接合するための4つのボルト挿通孔からなる複数の接合部(不図示)を形成することができる。従って、構造的な安全性を確認したうえで、フランジ5Aに形成された任意の接合部を用いることで、第1の通芯L1又は第2の通芯L3から平面モジュール(M)の整数倍だけ離隔した位置に間柱11Aを設置することができる。
【0038】
本実施形態では、梁5及び中間梁(第1中間梁7、第2中間梁8A)の幅は、100mmである。また、上述の通り、第2中間梁8Aの長手方向の端部(当接板部86)は、第1中間梁7のウェブ72に面接触する。従って、第1の通芯L1上の梁5の端部(フランジ5Aの第1中間梁7側の端部)と第2中間梁8Aの長手方向の端部との間の空き寸法は、少なくとも102.5mm(152.5(平面モジュール(M)の1/2)−50mm(梁5の幅の1/2))以上である。これにより、仮に第2中間梁8Aを設置した後に第1中間梁7を設置する場合においても、2階梁5と第1中間梁7とが互いに干渉しないので、中間梁の施工が容易となる。具体的には、第1中間梁7を水平状態に吊り上げ、その後第1中間梁7を降下させて第1中間梁7の両端部(接合部73)を第2中間梁8A,8Bの端部(当接板部86)に接合させる際、第1中間梁7が2階梁5に干渉することがない。
【0039】
なお、第1中間梁7と第2中間梁8Bとが接合されることで、柱4B側にも、上述の隅部Pと同様の隅部Qが形成されている(
図2参照)。第1中間梁7と第2中間梁8Bとが連結されることで、第1中間梁7の接合部73及び第2中間梁8Bの接合部84が、隅部Qを挟んで両側となる位置にそれぞれ設けられる。すなわち、隅部Qの両側の接合部73及び接合部84のうちいずれの接合部(接合部73又は接合部84)に間柱11Bを連結させるかを選択することが可能となっている。
【0040】
図2及び
図12に示されるように、第1中間梁7、第2中間梁8A,8B、第3中間梁6、及び第4中間梁10の上に床板Bが敷設されて中間階床F3が形成されている。第2中間梁8Aの上フランジ82Aの床板載置されない側の上面には、断面L字状の長尺部材であるモルタル受け22が第2中間梁8Aの長手方向に沿って固定されており、床板Bの端縁とモルタル受け22との間にはモルタル23が充填されている。床板B上には、遮音マット24、石膏ボード25、バーチクルボード26、及び寄木合板27がこの順に設置されて床仕上層28が形成されている。第2中間梁8Aの下側のフランジ82Bの下面には、ブラケット29を介して野縁30が固定されており、野縁30の下面には、石膏ボード等の天井材31が貼置されて天井32が形成されている。
【0041】
図2における梁5は、建物の外周部に配置されたものあり、外周壁38に接している。外周壁38は、梁5の建物外部側に沿って、1階から2階にかけて連続的に立設された外壁材36と、石膏ボート等からなり表面にビニールクロス等で仕上げが施された内装壁材34A(中間階空間S1の内装壁材),34B(低天井空間S4の内装壁材)を有している。外壁材36と内装壁材34A,34Bとの間には、壁体内空間S6が確保されている。板状の発泡樹脂からなる断熱材35が、この壁体内空間S6を利用して、外壁材36の内面に沿って連続的に配設されている。断熱材35が配設された状態であっても、壁体内空間S6は中間階床F3位置で分断されることなく上下方向に連通している。内装壁材34Aの下端は、床仕上層28と接しており、内装壁材34Bの上端は、天井32と連続している。また、中間階床F3を構成する床板Bは、外壁材36とは離隔している。天井32と中間階床F3との間の天井懐空間S5は、第2中間梁8Aの開口83b及び第2中間梁8Aの下フランジ82Bと天井32との間の隙間を介して壁体内空間S6と連通している。この連通した壁体内空間S6、天井懐空間S5を利用して、中間階床F3方向に配線や配管を容易に挿通することができる。
【0042】
次に、建物1における中間階床F3の形成方法を含む躯体の構築方法について説明する。中間階床F3を形成する際には、(1)第1の通芯L1,L2と第2の通芯L3,L4を含む通芯に沿って、基礎梁37を含む基礎を構築する。(2)基礎梁37の交点、すなわち第1の通芯L1,L2と第2の通芯L3,L4との交点を含む所定の通り芯の交点に柱4A〜4Dを含む柱を立設する。(3)無床領域A2の周囲であり、第1の通芯L1上で、且つ柱4A,4Bとは異なる位置に二本の間柱11A,11Bを立設する。間柱11A,11Bの立設位置は、架設予定の第1中間梁7の接合部73に対応する位置である。具体的には、第1の通芯L1上に立設される間柱11A,11Bの立設位置は、第1中間梁7における両端部に対応する位置である。(4)無床領域A2の周囲であり、一対の第2の通芯L3,L4上で、且つ柱4A〜4Dとは異なる位置に各一本の間柱11C,11Dを立設する。具体的には、第2の通芯L3,L4上に立設される間柱11C,11Dの立設位置は、第2中間梁8A,8Bにおける、吹き抜け部S2及び階段室S3側の端部に対応する位置である。
【0043】
(5)隣り合う柱4A〜4D間で梁5を架設し、併せて、間柱11A〜11Dの上端部をボルトによって梁5に締結固定する。(6)第1の通芯L1上の間柱11A,11Bに、第1中間梁7を設置する。具体的には、第1中間梁7を持ち上げ、間柱11A,11Bに設けられたブラケット部115に接合部73を突き当て、ボルトによって締結固定する。
【0044】
(7)第1中間梁7と一対の第2の通芯L3,L4上の間柱11C,11Dとの間に、一対の第2中間梁8A,8Bを架設する。具体的には、まず、第2中間梁8Aを持ち上げ、間柱11Cのブラケット部115に接合部84を突き当ててボルトにより締結固定するとともに、第1中間梁7の一方側の端部に第2中間梁8Aの接合部85を突き当てボルト締結することにより、第2中間梁8Aを架設する。同様に、第2中間梁8Bを持ち上げ、間柱11Dのブラケット部115に接合部84を突き当ててボルトにより締結固定するとともに、第1中間梁7の他方側の端部に第2中間梁8Bの接合部85を突き当てボルト締結することにより、第2中間梁8Bを架設する。
【0045】
(8)対向する一対の第2中間梁8A,8Bの端部(吹き抜け部S2及び階段室S3側の端部)間に第3中間梁6を架設する。具体的には、第3中間梁6を持ち上げ、第3中間梁6の両端部に第2中間梁8A,8Bの接合部85を突き当ててボルト締結することにより、第3中間梁6を架設する。第3中間梁6を架設すると、略矩形の中間階床梁フレーム9が形成される。
【0046】
中間階床梁フレーム9には、適宜に床板Bを敷設して中間階床F3を形成する。更に、中間階床F3の上には床仕上層28を施し、中間階床F3の下方に天井32を施して中間階床F3を形成する。
【0047】
例えば、第2中間梁8Aの接合部84側の梁5(柱4Aと柱4Dとの間の梁5)と上下方向において重なる空間に大開口や制振装置等を設けたい場合を考える。以上述べた中間階床の支持構造では、このような場合において、第2中間梁8Aの接合部84側(位置C)ではなく第1中間梁7の接合部73側に間柱11Aを設け、当該接合部73を間柱11Aに接合することができる。
【0048】
一方、例えば、建物1の施工後等、既に第1中間梁7の接合部73側に間柱11Aを設けている場合において、当該間柱11Aがリフォーム等において邪魔となる場合には、間柱11Aの付け替えを容易に行うことができる。すなわち、間柱11Aを第2中間梁8Aの接合部84に対向する位置Cに配置変更した後に、当該接合部84を当該間柱(配置変更によって位置Cに設けられた間柱11A)に接合することができる。
【0049】
このように、中間階床の支持構造によれば、中間階を設けるための間柱の配置を柔軟に設計できるため、中間階を設ける場合において、設計、及び取り付け作業の自由度を向上させることができる。また、平面視で、第1の通芯L1上の梁5と第1中間梁7との離隔寸法が、第2の通芯L3上の梁5と第2中間梁8Aとの離隔寸法に等しいので、第1中間梁7の接合部73に間柱を接合する場合と第2中間梁8Aの接合部84に間柱を接合する場合とで、間柱を共通化することができる。
【0050】
また、第2中間梁8Aの当接板部86を介して第1中間梁7のウェブ72と第2中間梁8Aのウェブ83とが強固に固定されるので、第1中間梁7と第2中間梁8Aとの間で荷重の伝達をスムーズに行うことができる。その結果として、第1中間梁7の接合部73に間柱を連結する場合と第2中間梁8Aの接合部84に間柱を連結する場合とで、中間階床F3の支持強度に差が生じることをより効果的に抑制できる。
【0051】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、中間梁の支持手段として、下端部及び上端部の両方において梁(梁5、基礎梁37)に固定される間柱11A〜11Dについて説明したが、支持手段としては、上下階の梁のうち一方に固定される柱部材等であってもよい。また、間柱の設置位置や本数についても、本実施形態の態様に限定されず、中間階床梁フレーム9を構造上より安全に支持することができるように3本の間柱で中間梁を支持するようにしてもよい。
【0052】
また、無床領域A2や中間階床F3の大きさや縦横の比率なども本実施形態で示したものに限らず、例えば、無床領域A2すべてに中間階床F3が形成されてもよい。また、第4中間梁10の数や架設方向も本実施形態の態様に限定されない。例えば、第1中間梁7、第2中間梁8A,8B、及び第3中間梁6の長さ、使用する床板Bの寸法、構造安全性等に応じて、第4中間梁を複数設けてもよいし、第4中間梁を全く設けないようにしてもよい。また、第4中間梁を第1中間梁7A及び第3中間梁6で支持するように架設してもよい。