【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、独立請求項において、カテーテル、医用画像化システム、コンピュータプログラム製品及び方法を提供する。実施形態は従属請求項で提供される。本発明のカテーテルには、1以上の容量型微細加工トランスジューサアレイのトランスジューサモジュールが設けられる。本発明によれば、該トランスジューサモジュールは少なくとも部分的に変形可能である。
【0006】
特に経尿道HIFUアブレーションに関しては、容量型微細加工超音波トランスジューサ(CMUTs)は圧電複合材トランスジューサの興味ある代替物を提供する。CMUTは、トランスジューサ直径の大幅な低減を可能にする一方、エレメントの非常に小さな寸法故に二次元フェーズドアレイも更に可能にする。斯かる二次元フェーズドアレイはまた焦点の形成も可能にし、このことは、目標組織の境界を一層注意深く辿ることができるので、一層正確且つ安全なアブレーション処理を可能にする。しかしながら、カテーテルに対して垂直なエレメントの数は少なく、その結果、該方向においては相対的に広い焦点となる。従って、X及びYにおける解像度又はビーム寸法は等しくならないであろう。CMUTは、更に、通常の圧電セラミック又は圧電複合材トランスジューサよりも安価であり、鉛を含まないものとすることができ、これらCMUTを使い捨てとすることを可能にする。このことは、前立腺の経尿道的及び経直腸的の両方のHIFUアブレーションの場合におけるような、腔内トランスジューサを用いるHIFU治療にとり大きな利点である。加えて、シリコン・トランスジューサは可撓性とすることができるが、通常の圧電結晶は可撓性でない。即ち、前記容量型微細加工超音波トランスジューサの少なくとも1つのアレイの少なくとも一部は可撓性である。
【0007】
トランスジューサの設計に大きな自由度があるので、前立腺のHIFUアブレーションは、主に、経直腸超音波プローブを用いて行われている。しかしながら、前立腺全体のアブレーションは困難であり(特に、前壁)、尿道及び直腸等の非目標組織の保護も困難である。
【0008】
ここで使用される「容量型微細加工超音波トランスジューサ(CMUT)」とは、微細加工(マイクロマシニング)技術を用いて製造された容量型超音波トランスジューサを含む。微細加工技術は薄膜製造技術であり、これら技術は典型的には集積回路を製造するために使用されるものと同一又は類似の工程を用いて実行される。
【0009】
近年の開発の結果、医療用超音波トランスジューサは半導体製造工程により製造することができるという展望に到った。これらの製造工程は、CMOS製造工程といった、超音波プローブにより必要とされる回路を作製するために使用されるものと同一であり得る。これらの進展が、微細加工超音波トランスジューサ、即ち、MUTを生み出した。MUTは2つの設計方法で製造されており、1つは圧電特性を持つ半導体層を用いるものであり(PMUTs)、もう1つは容量効果を示す電極板を備えたダイヤフラム及び基板を用いるものである(CMUTs)。CMUTは、入力された超音波信号の音振動を、変調された容量に変換する電極を備えた小さなダイヤフラム状デバイスである。送信のために、上記電極に供給された容量電荷は、当該デバイスのダイヤフラムを振動させるように変調され、これにより音波を送信する。これらのデバイスは半導体製造工程により製造されるので、これらデバイスは一般的に10〜200ミクロン範囲の大きさを有するが、300〜500ミクロンのデバイス径までの範囲もあり得る。多数の斯様な個々のCMUTを一緒に接続して、一体的に単一のトランスジューサエレメントとして動作させることができる。例えば、4〜16個のCMUTを一緒に連結して、一体的に単一のトランスジューサエレメントとして機能させることができる。典型的な二次元トランスジューサアレイは、現在のところ、2000〜3000の圧電トランスジューサエレメントを有することができる。CMUTアレイとして製造された場合、百万を越えるCMUTセルを使用することができる。驚くべきことに、初期の結果は、半導体製造プラントからの、この寸法のCMUTアレイの歩留まりは、数千個のトランスジューサエレメントのジルコン酸チタン酸鉛(PZT)アレイの歩留まりより大幅に改善されることを示した。
【0010】
ここで使用される事前崩壊(pre-collapsed)容量型超音波トランスジューサとは、通常は崩壊状態(collapsed state)にある容量型微細加工超音波トランスジューサを含む。
【0011】
CMUTは、初期には、「非崩壊」モードとして知られているモードで動作するように製造された。典型的な非崩壊型CMUTトランスジューサセルは、シリコンのような基板上に複数の類似した隣接するセルと一緒に製造される。窒化シリコンから形成され得るダイヤフラム又は膜体が、該基板上に、酸化シリコン又は窒化シリコンから形成され得る絶縁支持体により支持される。該膜体と基板との間の空洞は、空気若しくはガスで充填することができるか、又は全体的に若しくは部分的に真空引きすることができる。金のような導電膜又は層が該ダイヤフラム上に電極を形成し、同様の膜又は層が該基板上に電極を形成する。誘電性空洞により分離されたこれら2つの電極は、容量を形成する。音響信号が該膜体を振動させた場合、容量の振動が検出され得、これにより音響波を、対応する電気信号に変換する。逆に、該電極に印加されるAC信号は該容量を変調することができ、該膜体を動かし、これにより音響信号を送出する。
【0012】
典型的なCMUTのミクロンサイズの寸法故に、典型的には、単一のトランスジューサエレメントを形成するために多数のCMUTセルが密接して製造される。個々のセルは、円形、長方形、六角形又は他の周囲形状を有することができる。CMUTセルは、容量型微細加工超音波トランスジューサセル、容量型微細加工超音波トランスジューサ、CMUTエレメント及び容量型微細加工超音波トランスジューサエレメントとも称す。
【0013】
CMUTは本来的に二次的デバイスであるので、音響信号は通常は印加された信号の高調波である。即ち、該音響信号は、印加された電気信号の周波数の2倍であり得る。この二次的動作を回避するために、前記ダイヤフラムが結果としてのクーロン力により前記基板に吸引されるようにするバイアス電圧が前記2つの電極に印加される。DCバイアス電圧VBが端子に供給され、AC信号に対して高インピーダンスZ(誘導性インピーダンス等の)を生じる経路により前記膜体の電極に結合される。AC信号は、信号端子から該膜体電極へ又はから結合される。該膜体上の正の電荷は、基板12上の負の電荷へと吸引されるので、該膜体を膨張させる。CMUTは、このようなバイアスされた状態で継続的に動作された場合、前記二次的動作を弱くしか示さない。
【0014】
CMUTは、当該容量型デバイスの2つの反対に荷電されたプレートが可能な限り近づくように上記膜体が膨張された場合に最も敏感になることが分かった。当該2つのプレートの密な接近は、当該CMUTによる音響及び電気信号エネルギーの間の一層大きな結合を生じさせ得る。このように、前記バイアス電圧VBを、前記膜体と前記基板との間の誘電的間隔が動作信号条件下で維持され得る程度に可能な限り小さくなるまで増加させることが望ましい。構成された実施形態では、この間隔は1ミクロン以下のオーダであった。しかしながら、印加されるバイアス電圧が大き過ぎると、該膜体は基板に接触する可能性があり、当該デバイスの2つのプレートがファンデルワールス力により吸着されるので該デバイスを短絡させることになる。この吸着は、CMUTセルが過度に駆動された場合に発生し得、同一のバイアス電圧VBでも製造誤差のバラツキによりデバイス毎に変化し得る。永久的な吸着は、前記デバイス電極を電気絶縁層(例えば、窒化シリコン)内に埋め込むことにより低減することができるが、崩壊状態と非崩壊状態との間の動作の非線形性が、非崩壊型CMUTを最大感度の範囲内で動作させようと試みる場合の固有の問題点である。
【0015】
該膜体が非常に小さなサブミクロンの誘電的間隔を生じさせるようにバイアスされたとしても、当該CMUTの感度は望ましいものよりも小さい可能性がある。これは、当該膜体の中心における電荷は反対の電荷に相対的に近いと共に該反対の電荷に対して大きく動き得るが、該膜体が支持体により支持される該膜体の周部における電荷は非常に僅かしか動き得ず、従って当該デバイスによる信号の変換(transduction)に僅かしか関与しない、という事実によるものである。この不均衡さを除去する1つの方法は、該支持体までは延びていない小さな膜体電極を用いるというものである。この方法は、膜体電極上の電荷を、該電荷が該膜体の動きに、従って当該デバイスによる変換に強く関与し得る該デバイスの中心部に制限する。更に、膜体電極20にバイアス電圧Vを供給し、前記AC信号を電極から及びへ結合するための1以上の導電体が存在しなければならない。これらの導電体は、必然的に非常に薄く、該AC信号に対して不所望に大きなインピーダンスを負わせ、これにより当該デバイスの感度を制限することになる。
【0016】
前立腺HIFUアブレーションに対して経尿道的方法を用いることは、非目標組織を救済することを容易にすると共に、腺全体を焼灼することも容易にする。経尿道HIFUプローブは、超音波アプリケータの寸法に対する制限により更なる困難に直面している。これらの難関にも拘わらず、近年、MR温度測定のガイダンスの下での前立腺の臨床経尿道HIFUアブレーションのために一次元フェーズドアレイが使用されている。従来の平面状又は曲線状経尿道フェーズドアレイトランスジューサは1方向にのみ超音波を放出し、従って腺全体を焼灼するためには機械的回転を必要とする。この機械的回転は、腺全体を処置するためには長い治療時間を必要とし得る。他の困難さは、この治療方法が結果としてMRアーチファクトを生じさせ得るということである。斯かるMRアーチファクトは、一部は回転に直接起因して、また、一部は腺全体を加熱するための回転の必要性により強いられる長い治療時間に起因して発生する。回転の必要性を回避するか又は最小にし、これにより治療時間を大幅に短縮するために、マルチセクタ型(multi-sectored)管状経尿道アプリケータを用いる代替方法が提案されている。しかしながら、これらのトランスジューサは、余り指向的でない音響場により加熱の角度的制御が余り良くなく、このことが、加熱されるべきでない構造を避けることを一層困難にさせる。
【0017】
経尿道HIFUプローブのためのカテーテルCMUTを使用することは有益であり得る。CMUT技術の使用は、HIFUプローブの寸法を減少させることを可能にする一方、二次元フェーズドアレイを可能にし、該アレイは非常に明確な(良好に定まった)ビームプロファイルを得るために使用することができる。これは、神経束等の敏感な構造を加熱することを回避し、これによりインポテンスの危険性を低減するために非常に有効であろう。従来のトランスジューサに使用される圧電複合材と比較してCMUTに使用されるシリコンの一層高い熱伝導度は、アプリケータの少ない加熱で、従って尿道の過度の加熱を生じさせる危険性を余り伴わずに、一層高いパワーが放出されることも可能にする。CMUTの場合、トランスジューサの厚さは自由に選択することができる。即ち、(圧電結晶とは対照的に)厚さが周波数に影響を与えることはない。このことは、CMUTの冷却を一層容易にもさせる。改善された冷却は、失禁の危険性を更に低減させるであろう。外部的に供給されるHIFU(人体外のトランスジューサ)のために十分に低い周波数でCMUTにより超音波を生成することは更に困難であるが、前立腺の経尿道HIFUアブレーションのために必要とされる短い侵入深さに対しては、CMUTは理想的であると思われる。経尿道超音波に典型的に使用される周波数は、5MHz〜8.5MHzの間であり、一層高い周波数が一層浅い目標に対して使用されるが、これは改善されるビーム品質及びこれらの侵入深さにおける効率的なエネルギー吸収によるものである。上記利点を以下に更に詳述する。
【0018】
従来の圧電セラミック又は圧電複合材経尿道トランスジューサにおける限られたエレメント数は、基本的にビーム形成を不可能にさせる。トランスジューサ桿(transducer stick)が曲線状(curvilinear)にされた場合、かなり明瞭な(良好に定まった)音響パターンを音響的に活性な面に対して垂直に得ることができる。しかしながら、CMUTを使用することは、二次元フェーズドアレイを、従って完全なビームステアリング能力を可能にする。このことは、CMOS上のCMUTの完全な集積、マイクロビーム形成器上の集積を必要とし得る。そして、このことは、避けるべき近隣組織の最小限の加熱で所望のボリューム全体を焼灼するために一時的に切り換えることができる、三次元の明確な領域であるような焦点又は複数の焦点の生成を可能にする。しかしながら、当該トランスジューサプローブに対して垂直方向よりも、該プローブに沿う方向のエレメントの数が大幅に多いことにより、斯かる焦点は対称でないかもしれないことに注意されたい。該焦点は、従って、細長いかも知れないが、強度パターンは、代替的に、当該プローブの方向に沿う複数の概ね対称な焦点に分割することができる。電子的ビーム形成法及び/又はビームステアリング法の使用は、神経束等の組織のみならず当該尿道も一層注意深く避けることを可能にする。何故なら、焦点(又は複数の焦点)を尿道から離れた位置で生成させることができ、従って尿道の表面における加熱を低減することができるからである。複数の焦点又は1つの焦点の使用は、前立腺の所望の部分を加熱するために要するエネルギーの総量を低減し、これにより敏感な組織に過度の加熱を生じさせる危険性を更に一層本質的に低減させることもできる。
【0019】
本発明によれば、トランスジューサモジュールは少なくとも部分的に変形可能である。即ち、該トランスジューサモジュールは可撓性とすることができ、及び/又は曲げることができる。例えば、CMUTアレイ(又は複数のアレイ)を、可撓性材料上に、即ち、可撓性基板上に配置することができる。他の例では、2つのCMUTアレイの間に可撓性エレメントを設けることができる。当該トランスジューサモジュールは変形可能であるので、該トランスジューサモジュールが取り付けられる遠端部は、患者の生体構造を経る経路における狭い曲がりに追従するように変形され得る。このように、本発明のカテーテルは、患者の尿道等の狭い通路を経て一層正確にナビゲーションされ得る。
【0020】
本発明の他の態様によれば、トランスジューサモジュールの変形により、該トランスジューサモジュールの超音波焦点が変化する。このように、調整可能な焦点は、少なくとも部分的に機械的に調整される。
【0021】
本発明の他の態様は、CMUTを含むアブレーションカテーテルを、焦点を機械的に生成するために変形可能とすることができるというものである。この態様は、当該CMUTカテーテルがフェーズドアレイであることから除外するものではなく、技術を有利に組み合わせることができる。曲率半径は、治療計画の一部として又は事前計画ステップとして治療の間に調整することができる。このことは、ビームプロファイルを更に改善し、更に一層正確なアブレーション処理に役立つ。
【0022】
当該CMUTカテーテルは、尿道を介しての前立腺への挿入を、活性領域のために圧電複合材を用いるカテーテルによるよりも容易にするために可撓性にする又は部分的に可撓性にする(当該カテーテルの一部のみが可撓性で、残部は剛性である)こともできる。PZTトランスジューサを使用する従来のカテーテルによれば、該PZTトランスジューサの活性部分は可撓性ではないが、シャフトは可撓性とすることができる。CMUTカテーテルの高い可撓性は、可撓体/箔技術(Flex-to-Foil technology)を用いて可能にされ得る。可撓体/箔技術において、CMUTは可撓性基板上に作製される。この可撓性は受動的である必要はなく、当該カテーテルは有利にはステアリング可能とすることができる。この構成は、更に、膀胱からの前立腺の上部への超音波処理を可能にし、これは新たな治療オプションを可能にするであろう。この可能性は、恐らく、前立腺の上部の直ぐ外側の健康な組織のみならず該前立腺内の健康な組織を除外することを補助するために使用することができる。
【0023】
上記可撓体/箔技術は、可撓性回路素子、これら可撓性回路素子の間の接続エレメント、並びに上記可撓性回路素子及び接続エレメントを覆う可撓性コーティングを有する可撓性モノリシック集積回路とすることができ、上記可撓性コーティングはポリマーを含む層材料の少なくとも1つの層を有し、該可撓性コーティングは上記可撓性回路素子及び接続エレメントのための不動態化層、平坦化層及び機械的支持体として作用する。幾つかの実施例において、上記ポリマーは、ポリイミド、ポリカーボネイト、フルオロカーボン、ポリスルホン、エポキシド、フェノール、メラミン、ポリエステル及びこれらのコポリマーの群から選択される。他の実施例では、上記ポリマーはポリイミド樹脂の群から選択される。
【0024】
更に、従来のトランスジューサに使用される圧電材料と比較されるような当該CMUTに使用されるシリコンの優れた熱伝導度は、トランスジューサを従って尿道をも加熱することを余り起こりそうになくさせる。これはCMUTの直接的な特性であるが、それでも、経尿道アプリケータにとり特に有効である。何故なら、このアプリケータの過熱は尿道を火傷させることに直接つながり、これが、失禁を含み得る重度の副作用を生じさせるからである。トランスジューサプローブの温度を更に低下させるために、CMUTの直接強制水冷を使用することもできるであろう。
【0025】
前述したように、圧電セラミック又は圧電複合材経尿道トランスジューサは、前立腺の腺全体を処置するために回転を必要とするか(直線状及び曲線状トランスジューサ)、管状セクタ型トランスジューサが使用される場合は、音響強度分布が、好ましいようには、明瞭にならない。対照的に、平面状又は曲線状二次元フェーズドアレイCMUTのセグメントは当該トランスジューサの全360°を又はその一部のみをカバーするために使用することができる。トランスジューサプローブは、背面が互いに接着された2つの平面的な二次元フェーズドアレイから形成することもできる。これは、可撓体/箔(Flex-to-Foil)技術を用いて実施することができる。これを前述したフィーチャと組み合わせれば、三次元内で良好に定まったビームプロファイルを維持するためにもはや回転を必要とせず又は少なくとも少ない量の回転しか必要としないカテーテルを可能にする。このように、この方法は、繊細な構造が除外されるのを可能にしながら、前立腺全体の非常に迅速な焼灼を可能にする。これは、MR温度マッピングのアーチファクト及び信頼性のない熱画像から生じ得る可能性のある副作用を回避するために重要であり得る。これは、治療時間を減少させ、従って治療の間の患者の不快さを減少させることもできる。治療時間の減少は、治療を行うのに要する磁気共鳴画像化システム時間も減少させる。これは、治療の費用を低減することができ、より多くの患者が磁気共鳴画像化システムを使用することを可能にする。
【0026】
如何なる侵入型超音波装置にも当てはまるように、斯かる装置は衛生的な理由で使い捨て可能であることが好ましい。CMUTは鉛なしで且つ従来の超音波トランスジューサより大幅に安価に製造することができるので、CMUTの経尿道HIFUトランスジューサのための使用は、この観点からも非常に有益である。
【0027】
小さいスペースしか利用可能でないので、経尿道カテーテルに他のセンサを追加することはまた困難である。CMUTカテーテルに温度、圧力及び流量センサを組み込むことは、基本的に同一の信号チェーンが使用され得るので、ずっと容易である。これらの追加のセンサは、トランスジューサ及び尿道の加熱を低減するために、通常、水によるトランスジューサ表面の強制冷却が用いられるので、有益である。トランスジューサカテーテルの組み込まれた強制空冷は、CMUTに対しても可能である。水の流量及び圧力を制御することは、過度の流量及び不十分な流量の両方とも望ましいものではないので、治療の安全性を更に改善するであろう。温度を直接的に監視することは、尿道の可能性のある過度の加熱の場合に対する危険性軽減の更なる手段となる。従って、温度、圧力又は流量センサをCMUTに組み込むことができる。というのも、これらセンサは同一の技術の流れを用い、専用のASIC上に集積することができるからである。
【0028】
更に、送受技術もCMUTアプリケータに組み込むことができ、これにより、超音波画像化及びHIFUアブレーションを可能にする。該カテーテルは前方視若しくは側方視の何れ
か又は両方のものとすることができる。しかしながら、この構成は、電気生理学的介入治療の監視を意図するCMUTアプリケータに関して提案されている。この構成は、ステアリング可能な経尿道CMUTカテーテルにとって一層困難になり得る超音波アプリケータの正確な位置決めの助けとなり得る。この構成は、可撓体/箔技術を用いて達成することができる。
【0029】
可撓体/箔技術は、上述して利点の多くを可能にする際のキーとなり得る。
【0030】
前立腺HIFUアブレーションに対するCMUTの潜在的な有益な使用は以下のように要約することができる。
1.一層効率的且つ安全な治療を可能にする一層良好に定義された加熱プロファイルのための、改善されたビームプロファイル及び/又は電子ビームのステアリング。
2.圧電結晶対CMUTの一般的利点:きり溝(kerf)が存在しない。即ち、2つのトランスジューサの間の距離は基本的にゼロである。この結果、ビーム品質が一層良好になり、サイドローブが少なくなる。
3.ビームプロファイルを更に改善し、非目標組織に侵襲しないようにすることを助けるための変形可能なカテーテル。トランスジューサに近い領域及び前立腺の境界に近い領域の両方のアブレーションに一層適したものとするために、治療の間に焦点距離を調整することができる。例えば可撓体/箔技術を用いて実現することができる。
4.CMUTカテーテルを可撓性又は部分的に可撓性のものとすることができる。このことは、被験体に挿入するのが一層容易な受動的に可撓なカテーテルを作製するために用いることができる。この可撓性は、ステアリング可能なカテーテルが尿道を一層良好に辿ることも可能にし、かくして、当該CMUTカテーテルプローブの前立腺への挿入を一層容易にさせる。例えば、可撓体/箔技術を用いることによるものである。
5.可撓性でステアリング可能なCMUTカテーテルは、膀胱からの前立腺の上部の超音波処理も可能にする。治療に対する該追加の自由度は、潜在的に非常に有益であり得る。例えば、可撓体/箔技術を用いることによるものである。
6.当該トランスジューサは従来のトランスジューサと比較して一層効率的に熱を放散することができるので、尿道の加熱が低減される。シリコンダイの厚さは、周波数に影響を与えることなく変更することもでき、このことは、一層効率的に冷却することが可能な一層薄いダイが使用されることを可能にする。更に、プローブの加熱を更に一層低減するために、当該CMUT内のチャンネルの強制冷却も可能である。
7.二次元フェーズドアレイ設計のビームステアリング能力と組み合わされた場合の、トランスジューサの回転を冗長(最小)にさせるための、当該トランスジューサプローブの全360°の若しくは部分角度的な有効範囲(coverage)又は2面的(平面トランスジューサの上面及び底面)有効範囲。例えば、可撓体/箔技術を用いることにより実現することができる。
8.前方視及び/又は側方視CMUTは、前立腺アブレーションのためのトランスジューサの正確な位置決めを補助することができる。
9.CMUTは従来の圧電複合材トランスジューサよりも安価であり無鉛であるので、経尿道、経直腸、経食道、経血管及び心臓内トランスジューサ等の侵入型トランスジューサとして好ましくさせるために使い捨て可能にすることができる。
10.例えばプローブ温度を制御するための、温度、圧力及び/又は流量センサ等の追加のセンサの容易な組み込み。
【0031】
一般的に、容量型微細加工超音波トランスジューサは、以下のように製造される。
− 自由懸垂膜体を作製するための犠牲エッチ方法。
− 典型的には300nmのギャップ(空洞の底部と膜体との間の垂直方向距離)。
− 典型的な膜体直径は50〜300ミクロンであり、典型的な膜厚は1〜2ミクロンである。
− 金属層及び犠牲材料は、典型的には400度の相対的に低い温度で堆積されるアルミニウム及びモリブデンの二重層である。利点:ステップカバレッジにとり良い傾斜した壁。
− Al/Moの典型的な厚さ:200/50nm。
− 誘電体層は低温PECVDによる酸化物/窒化物/酸化物(ONO)である。
− 焼き鈍し:T<400度。
− ONOの典型的な厚さ:50/150/50nm。
− エッチング法:乾式及び湿式エッチングの両方。
− 犠牲エッチの間に、所謂、臨界点乾式法を用いる。しかしながら、他の乾式エッチ法も利用可能である(XeF2を用いる)。
【0032】
CMUTを製造する際の更なる考慮は、以下のことであろう。
− 直径、膜厚及びギャップ距離の特定の組み合わせを選択することにより、CMUTは事前崩壊状態となる。このことは、当該膜体が空洞の底部に永久的に接触することを意味する。事前崩壊型CMUTは従来のCMUTデバイスを越える利点を有している。即ち、ヒステリシスがなく、電子回路が容易で、性能が一層良好である。
− 低温工程及びCMOS製造プラントで通常に見付けられる材料(基本的に、アルミニウム及び窒化物)のみを用いて製造される。このことは、流れがCMOSの最終処理と互換的であり、従ってCMUTは同一のシリコンダイ上の他のセンサと組み合わせることができるか、又はCMUTを専用のASIC上に集積することさえできる。例は、(容量型)圧力センサ、流量若しくは温度センサ又は超音波ミクロビーム形成器である。
− CMUTダイ(ASICを伴う)を例えば50〜100ミクロン又はそれ以下にさえ薄化するための種々のオプションが存在する。このことは、超音波特性(望ましくない表面波の抑圧)に対してのみならず、冷却に対しても有効である。
− CMUTを、(電気的)保護のためにパリレンC等の生体適合性コーティングにより被覆することができる。
【0033】
CMUTはアブレーション過程を監視するために使用することもできる。即ち、RFアブレーション過程の超音波監視は既に実施されている。これは、超音波測定がアブレーションと組み合わされる「送受電子回路」を意味するであろう。
【0034】
CMUT及び概説される方法は、HIFU処置の案内及び温度測定のために磁気共鳴が使用されるか超音波が使用されるかには無関係に使用することができる。本発明は、監視手段が全く使用されなくても適用可能である。
【0035】
本発明の実施形態は、例えば限局性薬剤投与及び遺伝子治療のための拡張温熱治療(extended hyperthermia)等の非アブレーションHIFUにも使用することができる。しかしながら、これらの応用例は前立腺に対するものに関しては未だ(少なくとも広くは)報告されていない。
【0036】
本発明は、前立腺癌に対してのみならず、良性前立腺過形成及び熱的アブレーション、局部薬剤投与、局部遺伝子治療により潜在的に治療され得る全ての他の前立腺関係疾病に対しても使用することができる。
【0037】
本発明は、HIFUアブレーション又は温熱治療に使用される如何なる侵入型(interstitial)超音波アプリケータに対しても有利に使用することができる。例えば、当該CMUTカテーテルは、穿刺孔を介して人体内に(レーザ、マイクロ波及びRFアプリケータが現在挿入されるのと同様の方法で肝臓のアブレーションのために)、又はアブレーション若しくは温熱治療目的で如何なる他の開口内へ(例えば食道からの心臓アブレーション)も挿入することができる。
【0038】
当該CMUTカテーテルは、胆管、胃腸又は血管若しくは肺臓系内の如何なる場所の組織のHIFUアブレーションに使用することもできる。CMUTは、例えば静脈に挿入され、次いで当該可撓性トランスジューサプローブが目標組織に向かって機械的にステアリングされ得ることにより、これらの系内に挿入することができ、ナビゲーションされ得る(血管系及び胆管に対しては、挿入は恐らく経皮的であることを要する)。当該CMUTは、例えば、不整脈の治療のために心臓内又は経食道EPアブレーションに使用することができる。この利点は、当該CMUTカテーテルの小さな寸法により可能になる。これは「ビーコン」等の前記利点と組み合わせることができ、これにより、これら系内でのCMUTプローブの正確な位置特定又はナビゲーションを可能にし、このことは、これら系内の可能性のある目標の正確なアブレーションを可能にする。当該CMUTは、これらの系内の超音波画像化のために、又はアブレーション若しくは他の治療の監視のためにも使用することができる。もっとも、このことは少なくとも部分的に従来技術として既に開示されている。
【0039】
「医用画像データ」とは、ここでは、医用画像化スキャナを用いて取得された二次元又は三次元データと定義される。医用画像化スキャナとは、ここでは、患者の身体的構造に関する情報を取得し、二次元又は三次元医用画像データの集合を構築するように構成された装置と定義される。医用画像データは、医師による診断に有効な視覚化情報を構築するために使用することができる。この視覚化は、コンピュータを用いて実施することができる。
【0040】
磁気共鳴(MR)データとは、ここでは、磁気共鳴画像化スキャンの間の磁気共鳴装置による、原子スピンによって放出された電波周波数信号の記録測定情報であると定義される。磁気共鳴画像化(MRI)画像とは、ここでは、磁気共鳴画像化データ内に含まれる解剖学的データの再現された二次元又は三次元視覚化情報であると定義される。この視覚化は、コンピュータを用いて実行することができる。
【0041】
ここで使用される「コンピュータ読取可能な記憶媒体」とは、コンピュータ装置のプロセッサにより実行可能な命令を記憶することができる如何なる有形記憶媒体をも含む。該コンピュータ読取可能な記憶媒体は、コンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体と称することができる。上記コンピュータ読取可能な記憶媒体は、有形コンピュータ読取可能な媒体と称することもできる。幾つかの実施形態において、コンピュータ読取可能な記憶媒体は、コンピュータ装置のプロセッサによりアクセスすることができるデータを記憶することもできる。コンピュータ読取可能な記憶媒体の例は、これらに限定されるものではないが、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、固体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBメモリ(USB thumb drive)、ランダムアクセスメモリ(RAM)メモリ、リードオンリメモリ(ROM)メモリ、光ディスク、光磁気ディスク及びプロセッサのレジスタファイルを含む。光ディスクの例は、コンパクトディスク(CD)及びデジタル汎用ディスク(DVD)、例えばCD−ROM、CD−RW、CD−R、DVD−ROM、DVD−RW又はDVD−Rディスクを含む。コンピュータ読取可能な記憶媒体なる用語は、ネットワーク又は通信リンクを介して当該コンピュータ装置によりアクセスすることが可能な種々のタイプの記録媒体も指す。例えば、データはモデムを介して、インターネット上で又はローカルエリアネットワークを介して取り出すことができる。
【0042】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ読取可能な記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセス可能な如何なるメモリでもある。コンピュータメモリの例は、これらに限定されるものではないが、RAMメモリ、レジスタ及びレジスタファイルを含む。
【0043】
「コンピュータストレージ」又は「ストレージ」は、コンピュータ読取可能な記憶媒体の一例である。コンピュータ記憶装置は、如何なる不揮発性コンピュータ読取可能な記憶媒体でもある。コンピュータストレージの例は、これらに限定されるものではないが、ハードディスクドライブ、USBメモリ、フロッピー(登録商標)ドライブ、スマートカード、DVD、CD−ROM及び固体ハードディスクを含む。幾つかの実施形態において、コンピュータストレージはコンピュータメモリとすることもでき、その逆も同様である。
【0044】
ここで使用される「コンピュータ装置」とは、プロセッサを有する如何なる装置をも含む。プロセッサは、プログラム又はマシン実行可能な命令を実行することができる電子部品である。「プロセッサ」を有するコンピュータ装置を参照する場合、2以上のプロセッサを可能性として含むと解釈されるべきである。コンピュータ装置なる用語は、各々がプロセッサを有するコンピュータ装置の集合又はネットワークを可能性として指すとも解釈されるべきである。多くのプログラムは、同一のコンピュータ装置内にあり得る、又は複数のコンピュータ装置にわたって分散され得る複数のプロセッサにより実行される命令を有する。
【0045】
ここで使用される「ユーザインターフェース」とは、ユーザ又は操作者がコンピュータ又はコンピュータシステムと対話するのを可能にするインターフェースである。ユーザインターフェースは、情報若しくはデータを操作者に供給し、及び/又は操作者から情報若しくはデータを受信することができる。ディスプレイ又はグラフィックユーザインターフェース上でのデータ又は情報の表示は、操作者への情報の供給の一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウエブカム、ヘッドセット、ギアスティック、ステアリングホイール、ペダル、ワイヤグローブ、ダンスパッド、リモコン及び加速度計を介してのデータの受信は、全て操作者からの情報又はデータの受信の例である。
【0046】
一態様において、本発明は遠端部及び基端部(近端部)を備えたシャフトを有するカテーテルを提供する。該遠端部は、目標区域を制御可能に加熱するための可調整焦点を備えた容量型微細加工超音波トランスジューサの少なくとも1つのアレイを備える。該カテーテルは、更に、該容量型微細加工超音波トランスジューサの少なくとも1つのアレイに該可調整焦点を制御するための電力を供給するためのコネクタを該基端部に備えている。容量型微細加工超音波トランスジューサの使用は、斯様なカテーテルにとって有利である。これは、容量型微細加工超音波トランスジューサは、従来の圧電トランスジューサよりも小さな寸法又は規模で構築することができるからである。このことは、このようなカテーテルのために、多数の容量型微細加工超音波トランスジューサを単一のカテーテル内に組み合わせることができることを意味する。このような多数のトランスジューサにより、この構成は、超音波が目標区域に向けられるような焦点合わせ又は制御を可能にする。このことは、幾つかの異なる方法で達成することができる。該容量型微細加工超音波トランスジューサは、超音波が目標区域に収束し、該目標区域を加熱するようにアライメントが変更されるように、物理的に焦点合わせをすることができる。
【0047】
他の実施形態において、前記可調整焦点は少なくとも部分的に機械的に調整される。幾つかの実施形態においては、複数のアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサが存在し、該可調整焦点は、斯かる容量型微細加工超音波トランスジューサの複数のアレイの間の相対位置を機械的に調整することにより少なくとも部分的に調整される。幾つかの実施形態において、該可調整焦点は、該少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを撓ませる又は曲げることにより少なくとも部分的に制御される。
【0048】
当該容量型微細加工超音波トランスジューサの他の実施形態においては、これらトランスジューサに供給される電力の位相及び/又は振幅が制御される。この構成は、前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサの電子的制御を可能にする。幾つかの実施形態においては、超音波の機械的及び電子的の両方の焦点合わせが存在する。
【0049】
他の実施形態において、前記可調整焦点は、前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサの電子的制御により少なくとも部分的に調整される。ここで使用される場合、電子的制御なる用語は、容量型微細加工超音波トランスジューサに供給される交流電力の位相及び/又は振幅の制御を含む。これは、特定のアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサに対する振幅及び/又は位相の制御を含むことができる。これは、容量型微細加工超音波トランスジューサの1つのアレイを形成する個々の容量型微細加工超音波トランスジューサに対する位相及び/又は振幅の制御を含むことができる。十分に多数の容量型微細加工超音波トランスジューサが使用される場合、前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサの焦点を移動(シフト)させることができる。このことは、トランスジューサに供給される交流電力の位相及び/又は振幅を制御することにより達成することができる。
【0050】
他の実施形態において、前記遠端部は前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを給電するための少なくとも1つの集積回路を有する。幾つかの実施形態においては、1つのアレイ又は複数のアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを給電するために2以上の集積回路を使用することができる。
【0051】
他の実施形態において、前記遠端部は、前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを給電すると共に前記可調整焦点の電子的制御を行うための少なくとも1つの集積回路を有する。当該カテーテルは、更に、上記少なくとも1つの集積回路と前記コネクタとの間にデータバスを有する。この実施形態は特に有利である。何故なら、もし数百の異なる容量型微細加工超音波トランスジューサが存在する場合、各トランスジューサに対して前記コネクタにつながるリード線を有することは現実的でないからである。このような構成は、該カテーテルを極端に大きくさせる。個々の容量型微細加工超音波トランスジューサを駆動することができる集積回路を使用することができるか、又は容量型微細加工超音波トランスジューサの複数の群又は複数のアレイを駆動するために集積回路を使用することができる。該集積回路には前記基端部におけるコネクタを介して外部から電力を供給することができ、該基端部には該集積回路に対して命令を送信又は受信するために使用されるデータラインも存在し得る。例えば、該カテーテルを用いて超音波処理を実行するための符号化された命令を該集積回路に送信することができる。幾つかの実施形態においては、電力ケーブル及びデータバスが一緒に組み込まれる。例えば、幾つかの実施形態ではDC電力を前記データバスに沿って供給することができる。より高い周波数のデータは、同一の配線に沿って送信することができる。
【0052】
他の実施形態において、前記少なくとも1つの集積回路は、目標区域を加熱しながら、該少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを用いて超音波画像化を実行するための回路を備える。超音波画像化は、幾つかの実施形態では、該超音波画像化は、該集積回路においてオンボードで実行することができる。他の実施形態では、容量型微細加工超音波トランスジューサから取得されたデータを前記データバスにより送出することができる。幾つかの実施形態では、超音波画像化を行う該回路は、単にデータ収集を行うためのものであり得る。超音波画像化を行う間に該カテーテルから取得されたデータの再構築又は解釈は、プロセッサ又はコンピュータシステムにより外部的に行なうことができる。幾つかの実施形態において、該超音波処理及び超音波画像化は同時に生じる。幾つかの容量型微細加工超音波トランスジューサは上記超音波処理を実行するために第1周波数で駆動することができる一方、他の超音波トランスジューサは画像化を実行するために第2周波数で駆動することができる。このようにして、目標区域の画像化及び加熱又は超音波処理を同時に実行することができる。他の実施形態において、目標区域の画像化及び加熱は、これら2つを交互に行うことにより実行される。この実施形態は特に有利である。何故なら、超音波画像化を、目標区域の加熱の有効性を測定するために使用することができると共に、当カテーテルが何処を加熱するかを制御するためのアルゴリズムに対する入力として使用することもできるからである。
【0053】
他の実施形態において、前記遠端部は長さ方向に延びる部分(length extension)を有する。該遠端部は長さ方向に延びる部分(長さ部分)及び先端を有する。該先端は当該カテーテルの終端であり、前記シャフトに沿う軸は該先端の一部を通過する。該長さ部分は、該遠端部における該シャフトに沿う軸を囲む表面を形成する領域である。該長さ部分は、代わりに、当該遠端部の側面部又は側面領域として説明することもできる。容量型微細加工超音波トランスジューサの少なくとも1つのアレイの少なくとも一部は、目標区域が上記長さ部分に隣接して配置されるように向けられる。言い換えると、少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサは、該カテーテルの側部の領域が加熱されるように向けられる。
【0054】
他の実施形態では、前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサの少なくとも幾つかが前記シャフトの周りに環状部(リング)を形成する。言い換えると、容量型微細加工超音波トランスジューサの少なくとも幾つかは前記長さ部分を囲む経路又は回路を形成する。この構成は、カテーテルが、該カテーテルを囲む目標区域又は環状部を加熱することを可能にする。この構成は、当該カテーテルの周囲の360度の環状部内で同時に加熱するために使用することができると共に、該カテーテルが被験体内に挿入され、次いで何の方向に加熱するかを選択的に決定することも可能にする。例えば、該容量型微細加工超音波トランスジューサの一部のみに、電力を供給することができる。この構成は、該被験体の何の領域が加熱されるかを制御するために使用することができる。例えば、該カテーテルが被験体に挿入され、次いで該カテーテルが加熱する方向が電子的に制御されるようにすることができる。この構成は、特定の領域を加熱するために該カテーテルを機械的に回転させる必要性をなくす。該超音波放射の横方向送出の能力は、該カテーテルの遠端部の周りの広い角度範囲を、該カテーテルの移動又は回転の必要性無しで照射することができるようにさせる。該横方向送出のフィーチャは、該容量型微細加工超音波トランスジューサのアレイの可撓性とは独立に機能する。
【0055】
他の実施形態において、前記容量型微細加工超音波トランスジューサの少なくとも1つのアレイの少なくとも一部は可撓性である。この特定の実施形態において、該容量型微細加工超音波トランスジューサのアレイは可撓性材料上に形成される。この構成は、該カテーテルを被験体内に一層容易に挿入することができるので、極めて有利である。この構成は、発生された超音波エネルギーを目標区域に位置する焦点に機械的に焦点合わせするために、機械系により当該カテーテルを曲げ又は撓ませることも可能にする。
【0056】
他の実施形態において、該カテーテルは、少なくとも2つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを備える。該カテーテルは、更に、前記少なくとも2つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサの間に可撓性エレメントを有する。この実施形態は、該カテーテルを可撓性にさせるので有利である。カテーテルは可撓性であるので、多数の容量型微細加工超音波トランスジューサを該カテーテルに組み込むことができる。カテーテルが過度に剛性である場合、幾つかの状況では該カテーテルを被験体に挿入することができないであろう。更なる利点は、前記可撓性エレメントを含めることが、前記少なくとも2つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサが超音波を異なる方向に向けることを可能にするということである。この構成は、該少なくとも2つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを相対的に駆動するための機械式システムの使用を可能にする。この構成は、目標区域の加熱を制御するための可調整焦点を、機械的に手段を介して可能にし得る。
【0057】
他の実施形態において、該カテーテルは、前記遠端部を曲げることにより前記可調整焦点を少なくとも部分的に調整するための機械式アクチュエータを備える。この実施形態は、該カテーテルが可撓性エレメントを間に備えた少なくとも2つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを備えた実施形態に、及び該容量型微細加工超音波トランスジューサのアレイが可撓性である実施形態に適用することができる。この実施形態は、可撓性エレメントが存在する場合、及び容量型微細加工超音波トランスジューサのアレイが可撓性である場合にも当てはまる。この実施形態は、前記機械式アクチュエータの使用が前記可調整焦点の調整を可能にする故に、特に有利である。
【0058】
他の実施形態において、前記コネクタは前記基端部に流体冷却用注入口(fluid cooling inlet)を備える。前記カテーテルは、該流体冷却用注入口から前記遠端部に冷却流体を供給するように構成される。幾つかの実施形態において、該冷却流体は該カテーテルから流出する。他の実施形態では、加熱された冷却流体を該コネクタに戻すためにチューブが使用される。この実施形態は、該冷却流体を前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサが被験体内に組織損傷を生じさせ得るような点まで加熱することを防止するために使用することができるので、特に有利である。例えば、前立腺を超音波処理する場合、尿道を過度に加熱することは結果として失禁を生じさせ得る。冷却流体の使用は、これを防止することができる。冷却流体を使用することは、容量型微細加工超音波トランスジューサが一層高い電力レートで使用されることも可能にする。
【0059】
他の実施形態において、該カテーテルは、前記遠端部における冷却流体圧を測定するための圧力センサを更に有する。この実施形態は、該圧力センサを上記遠端部における冷却流体の流量を測定するために使用することができると共に、該冷却流体が過度に高い圧力を生じさせないことを保証するために使用することもできる故に、有利であり得る。例えば、上記冷却流体が当該カテーテルの先端から流出する場合、該冷却流体により被験体内に過度に高い圧力が発生されないことを保証することが有利であろう。
【0060】
他の実施形態において、該カテーテルは冷却流体の流量を測定するための流量センサを更に備える。この実施形態は、正に前記先端における冷却流体の流量を測定することができると共に、冷却が適切に機能していることを保証するために使用することができる故に有利である。
【0061】
他の実施形態において、該カテーテルは、圧力センサ及び流量センサの両方を更に備える。流量センサが該カテーテルに組み込まれる場合、該センサは前記先端に又は前記シャフト内に組み込むことができる。
【0062】
他の実施形態において、該カテーテルは温度センサを更に備える。該カテーテルには、1以上の温度センサを組み込むことができる。冷却流体が使用される場合、該冷却流体のための注入口及び流出口における温度センサを、該カテーテルにおいて放散された熱を測定するために使用することができる。この熱放散の測定値は、測定し、制御することができる。制御は、外部のコンピュータ若しくは制御システムにより、又は当該カテーテルに組み込まれた集積回路若しくはコントローラにより行うことができる。
【0063】
他の実施形態において、該カテーテルは前記遠端部の温度を監視するための温度センサを更に有する。この実施形態は、前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサの近傍における温度を直接測定することができる故に、特に有利である。この構成は、被験体が当該超音波トランスジューサによりもたらされる過度に高い温度により損傷され又は傷付けられないことを保証するために使用することができる。該温度センサは該遠端部に組み込まれる別個のセンサとすることができる。他の実施形態では、該温度センサは、当該容量型微細加工超音波トランスジューサが作り込まれるのと同一の基板内に直接組み込むことができる。例えば、サーミスタを、当該容量型微細加工超音波トランスジューサの製造の間に使用された製造工程に直接組み込むことができる。このような実施形態は、複数の温度センサを該超音波トランスジューサが配置される領域に直接組み込むことができる故に、有利である。この構成は、更に、該超音波トランスジューサの一つの領域でさえ過熱状態にならないことを保証する。
【0064】
上述したセンサの何れの場合でも、該センサは幾つかの実施形態では集積回路に接続することができる。この場合、該集積回路と前記コネクタとの間にある如何なるデータバスも、センサから取得されたデータを中継するために使用することができる。
【0065】
他の実施形態において、前記シャフトは前記遠端部をステアリングするための機械式ステアリング装置を有する。この実施形態は、該カテーテルに該機械式ステアリング装置を介して位置が調整されるのを可能にする機械式システムを組み込むことができる故に、有利である。該機械式ステアリング装置は、例えば、該遠端部の当該位置を捻るための及び/又は特定の方向への曲げ又は撓みのためのエレメントを含むことができる。これは、当該カテーテルが旋回軸を含むことができ、該カテーテルの剛性エレメント又は半剛性エレメントを連結する1以上の可撓性エレメントが存在するからである。この場合、該機械式ステアリング装置を用いて該遠端部を操作すると共に該遠端部をステアリングするためにケーブル又は細いワイヤの系を使用することができる。
【0066】
他の実施形態において、前記容量型微細加工超音波トランスジューサは事前崩壊型容量型微細加工超音波トランスジューサである。
【0067】
他の態様において、本発明は画像化区域から医用画像データを取得するための医用画像化システムを提供する。該医用画像化システムは、本発明の一実施形態によるカテーテルの前記コネクタに接続するためのカテーテルインターフェースを備える。この医用画像化システムは、更に、該医用画像化システムを制御すると共に該カテーテルの可調整焦点を制御するためのプロセッサを備える。該医用画像化システムは、更に、該プロセッサにより実行するためのマシン実行可能な命令を含むメモリを備える。該命令の実行は、該プロセッサに、該医用画像化システムを制御することにより医用画像データを取得させる。該命令の実行は、更に、該プロセッサに、該カテーテルの遠端部の位置を該医用画像データに登録(register)させる。該命令の実行は、更に、該プロセッサに、該遠端部における登録された位置に従って焦点制御信号を発生させる。該命令の実行は、更に、該プロセッサに、焦点を該カテーテルインターフェースを用いて該焦点制御信号に従い制御させる。
【0068】
前記医用画像化システムは、種々の異なるタイプのシステムの1つとすることがきる。例えば、該医用画像化システムは、磁気共鳴画像化システムとすることができる。該医用画像化システムは、コンピュータ断層撮影又はCTシステムでもありえる。該医用画像化システムは、診断用超音波システムとすることもできる。位置登録の形態は、特定の医用画像化システムから取得された医用画像データのタイプに依存し得る。幾つかの実施形態において、医用画像データに当該カテーテルの遠端部の位置を登録するステップは、該医用画像データから医用画像を再構築し、次いで該医用画像に当該位置を登録するステップを有し得る。この場合、該医用画像データに該カテーテルの遠端部の位置を登録するために、標準の画像認識又は表示技術を用いることができる。この実施形態は、該医用画像データを該カテーテルによる目標区域の加熱をガイドするために使用することができる故に、特に有利である。前記カテーテルインターフェースは、該カテーテルが機能するよう電力を供給することができる。更に、前記プロセッサは、前記可調整焦点が該プロセッサにより制御されるように、制御信号を送出し又は前記カテーテルインターフェースを制御することができるものとすることができる。
【0069】
一例として、少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサがシャフトの周りにリングを形成するようなカテーテルが、被験体に挿入され得る。医用画像データは、特定の治療を実行すべく該容量型微細加工超音波トランスジューサのうちの何れが駆動されるかを決定するために、用いられ得る。
【0070】
他の実施形態において、前記医用画像化システムは磁気共鳴画像化システムである。
【0071】
他の実施形態において、前記医用画像化システムはコンピュータ断層撮影システムである。
【0072】
他の実施形態において、前記医用画像化システムは診断用超音波システムである。
【0073】
他の実施形態において、前記命令は、更に、前記プロセッサに前記医用画像データに従って被験体の目標区域を登録(register)させる。該目標区域を登録させるステップは、該医用画像データから1以上の医用画像を再構築するステップを含むことができる。該目標区域は、既知の画像表示技術を用いて登録することができる。例えば、特定の解剖学的目印を該医療データ若しくは医用画像データで見付けることができるか、又は変形可能な形状のモデル等のモデルを上記医用画像データ若しくは医用画像に適合させることができる。該命令は、更に、該プロセッサに、前記焦点を該目標区域が前記少なくとも1つのアレイの容量型微細加工超音波トランスジューサを用いて加熱されるように制御するための焦点制御信号を発生させる。この実施形態は、該医用画像化システムにより特定の目標区域が選択され狙われるので、有利である。幾つかの実施形態においては、事前に目標区域を指定するために治療計画又は他の計画データを用いることができる。
【0074】
他の実施形態において、前記命令の実行は、更に、前記プロセッサに、前記医用画像化システムを用いて熱画像データを収集させる。ここで用いられる熱画像データとは、被験体の異なる解剖学的部位の温度を測定又は推定するために使用することができる医用画像データを含むものである。該熱画像データは、該医用画像データと同一であるか又は異なることができる。幾つかの医用画像化方式の場合、該熱画像データと該医用画像データとは同一であり得る。他のものでは、該医用画像データは解剖学的データを含むことができる一方、該熱画像データは温度マップを構築するために有用なデータを主に含み得る。該命令の実行は、更に、該プロセッサに該熱画像データを用いて温度マップを再生させる。ここで用いられる温度マップとは、位置固有の温度又は温度の記述を含むものである。例えば、温度マップは異なる解剖学的部位の温度を示すために他の医用画像上に重畳させることができる。前記焦点制御信号は、該温度マップに従って発生される。即ち、該焦点制御信号は該熱画像データ及び/又は医用画像データを用いて発生することができる。従って、該焦点制御信号は、被験体の内部の生体構造及び/又は異なる解剖学的部位の温度を考慮に入れるために使用することができる。この構成は、例えば、特定の解剖学的部位が特定の閾温度より高く加熱され、所定の時間にわたり其処に保持されることを保証するために使用することができる。この構成は、細胞の壊死を引き起こすために有効であり得ると共に、感熱性の薬剤又は造影剤を活性化するためにも有効であり得る。
【0075】
被験体の温度は、磁気共鳴温度測定法を用いて測定することができる。磁気共鳴温度測定法においては、磁気共鳴温度測定データが収集される。幾つかの実施形態では、磁気共鳴温度測定データは熱画像データである。磁気共鳴温度測定データとは、ここでは、磁気共鳴画像化スキャンの間における磁気共鳴装置のアンテナによる原子スピンにより放出される電波周波数信号の、磁気共鳴温度測定法に使用することができる情報を含む記録測定値であると定義される。磁気共鳴温度測定法は、温度感知性パラメータの変化を測定することにより機能する。磁気共鳴温度測定の間に測定することができるパラメータの例は、陽子共鳴周波数シフト、拡散係数、又はT1及び/又はT2緩和時間の変化であり、これらは磁気共鳴を用いて温度を測定するために使用することができる。陽子共鳴周波数シフトは温度依存性のものである。何故なら、個々の陽子、水素原子が受ける磁場は、周囲の分子構造に依存するからである。温度の上昇は、温度が水素結合に影響を与えることにより分子スクリーニングを減少させる。この結果、陽子共鳴周波数の温度依存性が生じる。
【0076】
コンピュータ断層撮影法も、被験体の温度を決定するために使用することができ、従って熱画像データを取得するために使用することができる。コンピュータ断層撮影法は、例えば、或る領域のハウンズフィールド単位の変化を検出するために使用することができる。これは、温度に相関させることができる。例えば、加熱された領域は、当該画像における低密度区域として識別することができる。キャビテーションにより発生される泡も、コンピュータ断層撮影法を用いて検出することができる。
【0077】
超音波も、温度を決定すると共に熱画像データを取得するために有効であり得る。これは、幾つかの方法で実現することができる。例えば、超音波は、組織の温度膨張及び音速の変化によるエコーのシフト、減衰係数の変化、及び/又は組織の不均質部からの後方散乱エネルギーの変化を測定することにより温度を決定するために使用することができる。
【0078】
他の態様において、本発明は、画像化区域から医用画像データを取得するために医用画像化システムのプロセッサにより実行されるマシン実行可能な命令を有するコンピュータプログラム製品も提供する。該医用画像化システムは、本発明の実施形態によるカテーテルの前記コネクタに接続するためのカテーテルインターフェースを有する。前記命令の実行は、前記プロセッサに、該医用画像化システムにおいて医用画像データを取得させる。該命令の実行は、更に、該プロセッサに、該カテーテルの遠端部の位置を上記医用画像データに記録させる。該命令の実行は、更に、該プロセッサに、該遠端部の記録された位置に従って焦点制御信号を発生させる。該命令の実行は、更に、該プロセッサに、該カテーテルインターフェースを用いて上記焦点制御信号に従って焦点を制御させる。
【0079】
コンピュータプログラム製品は、コンピュータ読取可能な記憶媒体も提供する。該コンピュータプログラム製品又はマシン実行可能な命令は、コンピュータ読取可能な媒体上に記憶することができる。
【0080】
他の態様において、本発明は、画像化区域から医用画像データを取得する医用画像化システムを動作させる方法を提供する。該医用画像化システムは、本発明の実施形態によるカテーテルのコネクタに接続するためのカテーテルインターフェースを有する。該方法は、該医用画像化システムを用いて医用画像データを取得するステップを有する。該方法は、該カテーテルの遠端部の位置を該医用画像データに記録(register)させるステップも有する。該方法は、更に、該遠端部の記録された位置に従って焦点制御信号を発生させるステップを有する。該方法は、更に、該カテーテルインターフェースを用いて該焦点制御信号に従って焦点を制御するステップを有する。
【0081】
同様にして、該方法は、コンピュータシステム又はプロセッサにより実施することができる。従って、本発明はコンピュータにより実施される方法も提供する。