(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の結晶質ナノ粒子の導入により、前記基板の少なくとも一部の上に前記複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部の規則配置がもたらされる、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一局面によれば、基板に複数の結晶質ナノ粒子を導入する工程と、上記複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部に非晶質材料の薄膜を堆積させる工程と、上記非晶質材料の薄膜の少なくとも一部の結晶化を誘起する工程とを含む、少なくとも一部が結晶質の薄膜を製造する方法が提供される。
【0004】
一局面では、上記基板が導電性高分子である。
【0005】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記結晶化の誘起により、上記非晶質材料の沿面エピタキシャル成長がもたらされる。上記結晶化の誘起が上記非晶質材料の不均一核生成であってもよい。
【0006】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記複数の結晶質ナノ粒子の1個以上がヤヌス粒子である。
【0007】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記非晶質材料の薄膜が、金属酸化物、金属窒化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ダイアモンドのうちの1種類以上を含む。上記非晶質材料の薄膜が1種類以上の半導電性材料を含んでいてもよい。
【0008】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記堆積工程はプラズマ助長蒸着技術を含む。上記堆積工程が、物理的気相成長技術および/または大気圧プラズマ蒸着技術を含んでいてもよい。
【0009】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記結晶化の誘起が、上記基板の化学的または構造的変化の発生可能な量より少量の熱を加えることを含む。
【0010】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記複数の結晶質ナノ粒子の導入により、上記基板の少なくとも一部の上に上記複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部の規則配置がもたらされる。上記複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部の規則配置により、上記複数の結晶質ナノ粒子と上記基板との界面に接種形状をもたらしてもよい。
【0011】
本開示の別の局面では、多孔質相互浸透性網目構造と、上記多孔質相互浸透性網目構造の少なくとも一部分内に存在し、少なくとも一部が結晶質の無機材料とを備える有機材料が提供される。
【0012】
一局面では、単独または上述の局面との組合せにおいて、上記有機材料が複数の結晶質ナノ粒子をさらに備えており、その場合、上記複数の結晶質ナノ粒子がパターン状に配置されていてもよい。一局面では、単独または上述の局面との組合せにおいて、上記無機材料が、(i)上記複数の結晶質ナノ粒子に加えて上記複数の結晶質ナノ粒子と同種類のある量の結晶質材料または(ii)上記複数の結晶質ナノ粒子と異なる種類のある量の結晶質材料を含む。一局面では、単独または上述の局面との組合せにおいて、上記有機材料がフレキシブル高分子膜である。
【0013】
一局面では、単独または上述の局面との組合せにおいて、上記有機材料が、金属またはインジウムスズ酸化物の導電性膜もしくは透明導電性膜を備えた基板上に堆積されている。上記基板が共役高分子膜であってもよい。
【0014】
一局面では、単独または上述の局面との組合せにおいて、上記複数の結晶質ナノ粒子が半導電性である。
【0015】
本開示のさらに別の局面では、基板上に配置された複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部に非晶質材料の薄膜を堆積し、上記非晶質材料の薄膜の少なくとも一部の結晶化を誘起する方法によって製造された有機材料が提供される。
【0016】
一局面では、単独または上述の局面との組合せにおいて、上記基板がフレキシブル高分子膜である。上記基板が導電性共役高分子膜である。
【0017】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記非晶質材料が半導電性金属酸化物である。上記誘起が不均一または均一エピタキシャル成長によるものであってもよい。
【0018】
単独または上述の局面との組合せにおいて、上記複数の結晶質ナノ粒子が半導電性金属酸化物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、薄膜基板上に粒径調整可能に結晶性ドメインを低温で形成する方法を提供する。上記方法は、薄膜トランジスタや、以下に限らないが、発光ダイオード、太陽光発電装置、抵抗膜方式タッチディスプレイまたはセンサなど、その他の電子デバイスの製造に適用可能である。
【0021】
定義
第1、第2などの用語が様々な要素の説明のために本書で使用される場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことは理解されるであろう。これらの用語は、要素同士を区別するために使用されるにすぎない。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、第1の要素を第2の要素と称することができるし、同様に、第2の要素を第1の要素と称することもできるであろう。本書で使用される「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちのいずれかも、それらの項目の1つ以上からなるすべての組合せをも含む。
【0022】
層、領域、基板などの要素が別の要素の「上に堆積」または「上に対して堆積」されると称するとき、上記別の要素の上にまたは上に対して直接堆積される場合もあれば、介在要素が存在する場合もある。一方、要素が別の要素の「上に直接堆積」または「上に対して直接堆積」されると称するときは、介在要素は存在しない。「下方」、「上方」、「上部の」、「下部の」、「水平」、「垂直」、「上部」、「下部」などの相対用語が、図面に示すように1つの要素、層または領域と別の要素、層または領域との関係を説明するために本書で使用される場合がある。これらの用語は図面に示す向きに加えて装置の異なる向きも包含することが意図されていることは理解されるであろう。
【0023】
本書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみであり、本開示の限定を意図するものではない。本書で使用される単数形は、文脈上明白に示す場合を除いて、複数形も含むことが意図されている。本書で使用される場合の「備える」、「備えている」、「含む」および/または「含んでいる」の用語は、記述された特徴、工程、動作、要素および/または部品の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、工程、動作、要素、部品および/またはそれらの組合せの存在または追加を否定するものではないこともさらに理解されるであろう。
【0024】
特に明記する場合を除き、本書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の通常の技術者によって普通に理解される意味と同じ意味を有する。本書で使用される用語が本明細書の文脈および関連分野における意味と一致する意味を有すると解すべきであり、本書で明示的に定める場合を除き、理想的または過度に形式的な意味で解釈されないことも理解されるであろう。
【0025】
特に明示的に述べる場合を除き、「以下」、「以上」などの比較量的用語は、等価の概念を包含することが意図されている。一例として、「以下」は、最も厳密な数学的意味において「より少ない」ことを意味するのみならず、「より少ないかまたは等しい」ことを意味する場合がある。
【0026】
用語「オルガノゲル」は、構造を有する分子または高分子からなる自己組織化単分子層または多分子層を含む三次元網目構造を備える有機相を有する固体または半固体の、部分的または実質的に結晶質の材料、および/または非晶質材料を含む。オルガノゲルの三次元網目構造は架橋されてもよい。架橋は物理的であっても化学的であってもよい。
【0027】
本書で使用される「接種形状因子」という語句は、結晶化の種として作用することが可能な適切な三次元形状をもつナノ粒子を含む。形状因子には、以下に限らないが、球状物、棒状物、楕円体、立方体、板状物などがある。接種形状因子の一例は結晶質球状ZnOナノ粒子である。
【0028】
用語「ナノ粒子」は、本書では、0.1ナノメータ(nm)から100nmまでの平均寸法(直径または最長軸)をもつ粒子に関して使用される。本書で使用される用語「非晶質」は、材料の単位体積の総結晶化度10%以下を含み、従来の方法によって判定可能なものとして本質的に全く検出不可能な結晶化度を含む。
【0029】
本書で使用される用語「実質的」とは、最高で100%までの、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の量を含む。例えば、実質的に結晶質とは、80%から100%までの結晶化度の量を含む。本書で使用される用語「約」とは、特に示す場合を除き、記述された値の、±それぞれ10%を含める。
【0030】
本方法によれば、薄膜内または薄膜上に1つ以上の結晶性ドメインが形成される。一実施形態では、本方法は、以下の工程、すなわち、(1)任意によるナノ粒子の合成および核生成工程、(2)溶液処理および規則化工程、(3)堆積工程、および(4)任意による堆積時または堆積後の軽度の熱処理工程を含む。一局面では、溶液相は、ナノ粒子前駆体からのコロイド反応、核生成および成長を経て形成された結晶質ナノ粒子懸濁液からなる。
【0031】
前駆体濃度および成長条件を制御することにより、粒界、粒子形状および粒径が調整可能な多数の材料組成物が得られる。ヤヌス粒子などの単成分または多成分粒子を本書に開示された方法に従って合成および核生成により生成することができる。ナノ粒子は、1つまたは多数の化学基で堆積前の溶液中において官能性を付与されてもよい。合成後、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、蒸着、スクリーン印刷、ブレード印刷、または基板を液体材料で被覆するのに適した他の方法などの溶液処理方法を用いてバルク流体を処理してナノ粒子溶液が作られる。
【0032】
表面パターン形成のために、以下に限らないが、動電学的堆積、電磁気的堆積、磁気的堆積または蒸着介在による堆積などの技術を用いて、ナノ粒子、例えば、官能基を有するナノ粒子を配置することを含む任意の工程が採用されてもよい。表面パターン形成は、高規則性またはより規則性の低いナノ粒子配列を備える。他の自己組織化技術を使用してナノ粒子をパターン状の配列に組織化してもよい。自己組織化技術は、単一の単分子層よりも低いかそれと等しい充填密度をもつ基板上において導電性、光学的特性および構造的特性を保持する、分散配置または均等配置の結晶質ナノ粒子を提供する数あるプロセスパラメータ、中でも特に(1)ナノ粒子の単一化学物質または多種化学物質による合成または官能性付与、(2)粒子荷電の供給、(3)表面電位の供給、(4)ゼータ電位の供給、(5)極性付与、(6)溶液pHおよび/またはイオン状態の制御、(7)粒径の制御、(8)粒子形状(すなわち、楕円体、球状、円柱状)の制御を介して行われてもよい。これら結晶質ナノ粒子は、その後堆積される非晶質無機半導体材料からの結晶質膜の沿面エピタキシャル過成長のための種結晶層として作用することができる。
【0033】
したがって、一実施形態では、本方法は、結晶質ナノ粒子の材料と同じかまたは異なる非晶質材料を堆積させることを含む。これにより、例えば、表面に付与され、かつ任意で表面上にパターン形成された金属酸化物のナノ粒子を、その後、堆積技術によって堆積された金属酸化物によって被覆することができる(例えば、結晶質ZnO上の非晶質ZnOや結晶質ZnO上の非晶質TiO
2)。一局面では、堆積により、結晶質ナノ粒子の周囲の基板上に相似形の非晶質金属酸化物相被膜が生成される。一局面では、プラズマの高い運動エネルギーを軽度の熱処理によるエネルギーと併せることで、結晶形成用のエネルギー障壁を乗り越え、接種結晶質ナノ粒子から沿面エピタキシャル過成長を生じさせる。
【0034】
あるいは、マグネトロンスパッタリングなど、低温物理的気相成長技術を用いることにより、相似形の酸化物材料を堆積させることができる。この場合、軽度の熱処理(例えば、大部分の高分子では250℃以下である、基板の分解点または熱転移点未満)などの後結晶化技術を用いて、プラズマ蒸着を用いて生成された薄膜の結晶化をさらに制御することによって、膜の最終品質、結晶性ドメインのサイズ、結果得られる構造的特性を潜在的に向上させてもよい。この熱処理は、プラズマ蒸着時またはプラズマ蒸着後の基板に施すことができる。ある局面では、1種類以上の軽度の熱処理、例えば、高分子基板の分解点または熱転移点未満の温度による熱処理を用いて、非常に高いエネルギー障壁をもつ一部の金属酸化物の結晶化、および/または最終的な膜形態の調整が行われる。
【0035】
ナノ粒子溶液
種結晶(または接種結晶化)に有用なナノ粒子は、例えば、任意の数の溶液分散、エッチングおよび/または抽出/分離技術を用いて、表面に分注可能なナノ粒子源を提供することによって得ることができる。ナノ粒子は、該金属ナノ粒子を基板に導入するための適切な溶剤中に分散させる前に、任意の種類数の表面活性剤および/または表面改質剤で化学的に修飾および/または処理したり、および/またはそれらと化合させたりしてもよい。あるいは、溶剤が表面改質剤および/または湿潤剤を含んでおり、ナノ粒子がその溶剤中に直接分注される。
【0036】
本開示の別の実施形態では、ナノ粒子は、溶剤中への分散前に、任意の回数化学的に処理および/または精製および/または洗浄されてもよい。金属ナノ粒子が配合されると、以下に限らないが、シリコン、金属、水晶、ガラス、高分子基板材料、またはそれらの組合せなどの基板材料を含む適切な基板構造の上に堆積させることができる。この配合ナノ粒子溶液は、適切な堆積技術または、以下に限らないが、インクジェット印刷、スライド・バー・コーティング、スクリーン印刷、スピンコーティング、押出しコーティング、メニスカスコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティングなどのコーティング技術を用いて堆積される。堆積された配合ナノ粒子溶液層はパターン形成されていてもされていなくてもよい。
【0037】
有機材料および高分子基板
膜形成に適したいかなる高分子基板が使用されてもよい。他の実施形態では、高分子などのフレキシブル基板が材料または層を受ける基板として使用される。ある局面では、導電層を備えたフレキシブル基板が基板を構成する。これにより、一局面では、オルガノゲルなどの付加層が堆積された導電層を備えるフレキシブル基板が使用される。オルガノゲルには、溶液によるコーティング方法を用いた堆積後に、制御された自己組織化によって形成された、以下に限らないが、共役分子、高分子、小分子染料などがある。本方法は、オルガノゲルで被覆された導電層を備えるフレキシブル基板に対して一般的に適用可能である。本方法に従ってその後の処理により作成されたそのような構造によれば、バンドギャップと光学吸収スペクトルが調整可能な基板が得られる。一局面では、共役高分子がオルガノゲルとして採用される。有機材料、高分子またはオルガノゲルは、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティングなど、様々な方法を用いて基板上に堆積させることができる。
【0038】
共役高分子の例には、以下のような化学式で示されるP3HT、P3OT、P3DDT、PFOなどがある。
【化1】
【0039】
P3HTはポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、P3OTはポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−ジイル)、P3DDTはポリ(3−ドデシルチオフェン−2,5−ジイル)、PFOはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)である。本開示の精神および範囲内で他の共役高分子が使用されてもよい。その他の材料としては、系の最高被占分子軌道および最低空分子軌道レベルを特に有機/無機界面で調整可能な受容体および/または供与体などがある。
【0040】
多孔質p型薄膜コーティング
一局面では、基板は、相互浸透線維網目構造を含む、多孔質薄膜構造が得られるように生成された1種類以上の共役高分子である。一実施例では、共役有機高分子は、溶媒に溶解され、急速冷却され、ゲル化される。一局面では、溶媒に溶解され、急速冷却された共役有機高分子がオルガノゲルとなる。一局面では、オルガノゲルは、共役高分子線維の相互浸透網目構造を備える。共役高分子線維の相互浸透網目構造は、画成された線維構造(有機相有機ドメイン)をもたらすことができる。一局面では、線維構造は「π−π」スタッキング線維構造である。共役高分子線維の相互浸透網目構造は、共有結合線維または非共有結合線維からなっていてもよい。共有結合線維または非共有結合線維は、分岐状でも、線状でも、それらの組合せでも、共有結合架橋またはイオン架橋されていても、実質的に架橋されていなくてもよい。
【0041】
非晶質および/または結晶質無機材料
ナノ粒子種結晶または非晶質コーティング材料として使用可能な無機材料の例としては、無機酸化物、無機炭化物、無機窒化物などがあり、例えば、ホウ素、チタン、亜鉛、鉄、タングステン、バナジウム、アルミニウム、ニオビウムの酸化物、窒化物、炭化物や、銀酸化物、銅酸化物、スズ酸化物、それらの混合物および/またはそれらの多形などがある。ある局面では、無機材料は半導体である。上に列挙した酸化物には、亜酸化物、化学量論的酸化物、超酸化物などがあり、以下に限らないが、TiO
2、ZnO、Fe
2O
3、WO
3、SnO
2、Al
2O
3、V
2O
3、MoO
3、NiO、SrTiO
3の1種類以上のみならず、炭酸セシウム(Cs(CO
3))、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)も含まれる。上記無機酸化物、無機炭化物、無機硫化物または無機窒化物の1種類以上が堆積に適した形で使用されてもよい。上記無機酸化物、無機炭化物または無機窒化物の1種類以上が、粉末、ミクロン粒子、サブミクロン粒子、ナノ粒子、それらの物理的混合物、それらの分散物など、基板上への堆積に適したサイズや形状を有していてもよい。有機金属前駆体化合物を単独でまたは他の反応物や前駆体と併せて使用して、無機材料をインサイツ導入および/または形成してもよい。有機金属前駆体の例としては、以下に限らないが、金属アルカリ、金属水素化物、金属カルボン酸塩、金属シクロペンタジエニル、金属カルボニル、それらの組合せなどがある。
【0042】
ナノ粒子堆積およびパターン形成
一実施形態では、電気泳動析出(EPD)によってナノ粒子が堆積される。EPDは低コストであり、使用する材料が容易に入手可能であり、再現性が高い。典型的なEPD用装置は作用電極と対電極を備えている。EPDは、溶媒と懸濁ナノ粒子とからなるコロイド溶液を使用してもよい。EPDの機序は、駆動電圧、作業温度、および堆積時間によって影響されることがある。EPDにより、連続薄膜状に堆積可能なナノ粒子が得られる。EPDは、本書に開示するように、フレキシブル基板などの基板を製造するための適切なプロセスである。EPDプロセスは、通常、低い作業温度で実行され、制御可能な堆積領域をもたらす。EPDを用いて様々なナノ構造を生成することができる。
【0043】
一局面では、ナノ粒子の配置はナノ粒子の配列またはパターンからなる。配置されたナノ粒子は、適用可能な場合には、パターン状に配置された実質的に有向のナノ粒子の集合であってもよいし、パターン状に配置された実質的に無向のナノ粒子の集合であってもよい。有向のナノ粒子には、以下に限らないが、ナノロッド、ナノチューブ、その他の幾何学的形状物がある。一局面では、ナノ粒子種結晶材料を製造するために、水相系の手段が使用される。別の局面では、ナノ粒子を表面に不規則またはパターン状に付与するために、多段階種結晶成長方法が使用され、その場合、ナノ粒子は、無向または有向のナノワイヤ、ナノチューブ、ナノニードルであってもよいし、積層膜、カラム、多層ヘテロ構造として提供されてもよい。例えば、水相合成の場合、不均一核生成とその後の成長、溶液中での均質沈殿、前駆体の過飽和レベルの制御、および基板と形成されるナノ粒子との間の界面エネルギーの制御により、水媒体中で、薄膜フレキシブル基板上に有向ナノ結晶膜を堆積させることができる。このプロセスには、直接堆積、有機自己組織化単分子層(SAMs)を用いた化学修飾界面上への堆積などがある。そのようなプロセスを用いることにより、薄膜フレキシブル基板上にナノ粒子(例えば、ナノロッドやナノチューブ形状ナノ粒子)の連続膜構造または配列を付与することができる。基板上へのナノ粒子の配置および/または堆積を促進および/または制御するために、例えば、有機成長修飾剤、表面活性剤、リン脂質、リポゾームおよび/またはミセルなどの追加成分が使用および/または添加されてもよい。他の実施形態では、堆積技術を用いてナノ粒子種結晶材料が得られる。
【0044】
堆積技術
ナノ粒子接種を実現する堆積技術に加えて、本開示の方法の様々な局面では、1種類以上の堆積プロセスを用いて、ナノ粒子を備えた基板上または基板周辺に非晶質無機相が堆積されてもよい。一局面では、基板、例えば、フレキシブル高分子基板や他の熱に敏感な基板に対して望ましくない熱的効果を抑制するように堆積プロセスが選択される。本書に開示された実施形態の様々な局面では、堆積技術を利用して共役高分子上に無機材料を堆積させる。
【0045】
本書に開示の方法を実施する際に利用可能な無機材料堆積プロセスの典型的な例としては、低温化学気相成長(CVD)、原子層成長(ALD)、コロナ放電、誘電体バリア放電、大気圧プラズマジェット、プラズマ助長化学蒸着、大気圧プラズマグロー放電、大気圧プラズマ液相成長、マグネトロンスパッタリングなどがある。一局面では、蒸着、プラズマ蒸着、プラズマ助長蒸着、化学気相成長(CVD)、金属有機化学気相成長(MOCVD)、スパッタリング成長(例えば、マグネトロン)の1種類以上を利用して、有機材料の多孔質領域に対して、例えばその表面または内部への堆積もしくはその表面または内部への直接の堆積によって、相似形の無機材料が導入される。
【0046】
一局面では、高分子、導電性高分子、共役高分子および/またはドープ高分子などの網目構造化有機相が基板として使用される。この網目構造化有機相は、適切なサイズの多孔質ドメインを備え、多孔質ドメインは、溶液または溶媒による方法と多孔質ドメイン内にナノ粒子種結晶を導入する上述の1種類以上のナノ粒子種結晶堆積方法との組合せによって製造される。続いて、非晶質無機材料の堆積により、ナノ粒子種結晶と組み合わせて、孔を充填する無機相が形成される。無機相は、有機相内部の少なくとも一部に位置させてもよい。本書に開示の方法を用いて、ナノ粒子と組み合わせて非晶質無機相の結晶化を誘起することにより、電子部品や他の環境発電デバイスでの応用に適した薄膜基板および/またはフレキシブル薄膜基板を提供することができる。
【0047】
結晶化の誘起
一実施形態では、ナノ粒子種結晶は、所望の材料とともに基板に導入される。ナノ粒子種結晶は、ナノ粒子のサイズ、個体密度、空間分布(パターン)を制御するように水溶液および/またはSAM技術を用いることにより、上述したように基板上に成長させることができる。この実施形態では、基板表面に付与されるナノ粒子は実質的または完全に結晶質である。ZnO、TiO
2、CdSなどの複数の材料および上記列挙された材料のみならず、他の無機材料および/または半導体材料が使用されてもよい。そのようなナノ粒子は、市販されているか、または文献に報告されている技術を用いて容易に生成することができる。一局面では、ナノ粒子種結晶は、ディップコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、ゾル−ゲルコーティングおよび/または電気泳動析出技術を用いて基板上に堆積される。本方法の他の局面では、ナノ粒子は、別のプロセスで製造された後、基板上に物理的に堆積される。本方法のさらに別の局面では、非晶質無機材料のコーティングの前に、原子層成長、高周波(RF)マグネトロンスパッタリング、溶液塗布、大気圧プラズマ蒸着および/または電気化学的成長を用いてナノ粒子種結晶層を製造してもよい。ナノ粒子種結晶層が基板に付与され、その上に非晶質無機材料が堆積されると、次の工程において、例えば、一局面では先行のナノ粒子接種および/または軽度の加熱、冷却などによって誘起可能な沿面(ホモまたはヘテロ)エピタキシャル結晶化によって、結晶成長が誘起される。本方法の様々な局面を促進させるために、以下に限らないが、不均一核生成のための基板表面生成、基板に関する分解温度または他の熱転移点未満の温度による加熱、極低温暴露などの追加の(前、同時または後)プロセスが使用されてもよい。本方法は、1種類以上の金属や金属酸化物からなる混合材料系や、導電性−非導電性材料組合せの生成に対して一般的に適用可能である。本書に開示の方法は、以下に限らないが、太陽光発電装置、レーザ、LEDs、固体エミッタ、その他環境発電デバイスなどの電子光子輸送用途での使用に適した高品質結晶質、高表面積対体積率の薄膜を提供することができる。
【0048】
ここで、本開示の一実施形態を示す添付の図面に基づいて、本開示の典型的ないくつかの実施形態について説明するが、これら実施形態は、多数の異なる形で具現化されるものであって、本書に記載の実施形態に限定されるものではないことを理解されるべきである。むしろ、本実施形態は、本開示が綿密で完全になり、当業者に対して特許請求の範囲を完全に伝えることができるようにするべく提供される。以下、同じ要素には同じ符号を付す。
【0049】
図1に示すように、分注手段18を用いて、基板10の表面11にナノ粒子22を含む溶液20を導入する。例示の一実施形態では、矢印で示すように、工程100において、ナノ粒子溶液の溶媒が蒸発し、表面13にナノ粒子22を残す。表面13は、拡大
図3に示すように、表面13上で物理的に離れているように示すナノ粒子22の配置でパターン形成されてもよい。ナノ粒子の配置は、物理的または化学的マスキング技術またはコンピュータ制御の分注方法を用いてパターン形成することができる。ナノ粒子22の平均直径は約5nmないし約100nmである。工程200は、例えば、大気圧プラズマ蒸着装置30を用いた堆積プロセスを示しており、大気圧プラズマ蒸着装置30は、表面13に導入されて基板14の新しい表面15を形成する無機材料含有プラズマ32を供給する。拡大
図5に示すように、ナノ粒子22は、少なくとも部分的に非晶質無機材料34aによって被覆される。工程300は、非晶質無機材料34aの少なくとも一部の低温結晶化を実現し、拡大
図7に示すように、基板16の表面17にある量の結晶質無機材料34bがもたらされる。一局面では、上記結晶質無機材料34bには、ナノ粒子22による核が生成される。非晶質材料34aの結晶化度を、例えばその後に堆積されたナノ粒子22からの沿面エピタキシャル結晶化から、判定および観察するためにX線回折データが使用されてもよい。
【0050】
本書に開示の実施形態の様々な局面では、本方法は、非晶質無機材料を共役高分子上に堆積させて薄膜基板を得る溶液−堆積組合せ技術を提供する。そのような薄膜基板は、有機−無機(ハイブリッド)環境発電デバイスの製造に有用である。本書に開示の方法を実施する際に利用可能な非晶質無機材料を提供する堆積プロセスの典型的な例としては、低温化学気相成長(CVD)、原子層成長(ALD)、コロナ放電、誘電体バリア放電、大気圧プラズマジェット、プラズマ助長化学蒸着、大気圧プラズマグロー放電、大気圧プラズマ液相成長、マグネトロンスパッタリングなどがある。一局面では、蒸着、プラズマ蒸着、プラズマ助長蒸着、化学気相成長(CVD)、金属有機化学気相成長(MOCVD)、スパッタリング成長(例えば、マグネトロン)の1種類以上を利用して、有機材料の多孔質領域に対して、例えばその表面または内部への堆積もしくはその表面または内部への直接の堆積によって、相似形の無機材料が導入される。
【0051】
バッチ/半バッチ/連続プロセス
上記プロセスは、バッチプロセスの形でもたらされるように構成および設計されてもよく、例えば、ナノ粒子溶液およびその基板表面への堆積が自動化および/またはコンピュータ制御されてもよい。ナノ粒子溶液を調製、合成または市販のもので入手した後に、高分子膜、共役高分子膜、導電性基板、それらの組合せなどの適切な基板上に堆積させてもよい。堆積されたナノ粒子は、堆積技術、特に大気圧プラズマ蒸着プロセスに合わせることが可能な別個のプロセスまたは連続プロセスで上述したようにパターン形成および/または配向されてもよい。あるいは、上記のプロセスは、上述の工程の1つ以上を含む連続プロセスまたは半連続プロセスであってもよい。
【0052】
上記の説明から、当業者には、次項に規定する本発明の範囲内で組成物および方法の様々な変更および変形が想起されるであろう。
【0053】
項1−基板に複数の結晶質ナノ粒子を導入する工程と、上記複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部に非晶質材料の薄膜を堆積させる工程と、上記非晶質材料の薄膜の少なくとも一部の結晶化を誘起する工程とを含む、少なくとも一部が結晶質の薄膜を製造する方法。
【0054】
項2−上記基板が導電性高分子である、項1に記載の方法。
【0055】
項3−上記結晶化の誘起により、上記非晶質材料の沿面エピタキシャル成長がもたらされる、項1に記載の方法。
【0056】
項4−上記結晶化の誘起が上記非晶質材料の不均一核生成である、項1に記載の方法。
【0057】
項5−上記複数の結晶質ナノ粒子の1個以上がヤヌス粒子である、項1に記載の方法。
【0058】
項6−上記非晶質材料の薄膜が、金属酸化物、金属窒化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ダイアモンドのうちの1種類以上を含む、項1に記載の方法。
【0059】
項7−上記非晶質材料の薄膜が1種類以上の半導電性材料を含む、項1に記載の方法。
【0060】
項8−上記堆積工程がプラズマ助長蒸着技術を含む、項1に記載の方法。
【0061】
項9−上記堆積工程が物理的気相成長技術を含む、項1に記載の方法。
【0062】
項10−上記堆積工程が大気圧プラズマ蒸着技術を含む、項1に記載の方法。
【0063】
項11−上記結晶化の誘起が、上記基板の化学的変化、溶融による変化または構造的変化の発生可能な量より少量の熱を加えることを含む、項1に記載の方法。
【0064】
項12−上記複数の結晶質ナノ粒子の導入により、上記基板の少なくとも一部の上に上記複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部の規則配置がもたらされる、項1に記載の方法。
【0065】
項13−上記複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部の規則配置により、上記複数の結晶質ナノ粒子と上記基板との界面に接種形状がもたらされる、項1に記載の方法。
【0066】
項14−項1ないし項13のいずれかに記載の方法に従って製造された少なくとも一部が結晶質の薄膜。
【0067】
項15−多孔質相互浸透性網目構造と、上記多孔質相互浸透性網目構造の少なくとも一部分内に存在し、少なくとも一部が結晶質の無機材料とを備える有機材料。
【0068】
項16−複数の結晶質ナノ粒子をさらに備える、項15に記載の有機材料。
【0069】
項17−上記複数の結晶質ナノ粒子がパターン状に配置されている、項16に記載の有機材料。
【0070】
項18−上記無機材料が、(i)上記複数の結晶質ナノ粒子に加えて上記複数の結晶質ナノ粒子と同種類のある量の結晶質材料または(ii)上記複数の結晶質ナノ粒子と異なる種類のある量の結晶質材料を含む、項16に記載の有機材料。
【0071】
項19−上記有機材料がフレキシブル高分子膜である、項15または16に記載の薄膜。
【0072】
項20−上記有機材料が、金属またはインジウムスズ酸化物の導電性膜もしくは透明導電性膜を備えた基板上に堆積されている、項15に記載の有機材料。
【0073】
項21−上記基板が共役高分子膜である、項20に記載の有機材料。
【0074】
項22−上記複数の結晶質ナノ粒子が半導電性である、項16に記載の有機材料。
【0075】
項23−基板上に配置された複数の結晶質ナノ粒子の少なくとも一部に非晶質材料の薄膜を堆積し、上記非晶質材料の薄膜の少なくとも一部の結晶化を誘起する方法によって製造された有機材料。
【0076】
項24−上記基板がフレキシブル高分子膜である、項23に記載の有機材料。
【0077】
項25−上記基板が導電性共役高分子膜である、項23に記載の有機材料。
【0078】
項26−上記非晶質材料が半導電性金属酸化物である、項23に記載の有機材料。
【0079】
項27−上記誘起が不均一または均一エピタキシャル成長によるものである、項23に記載の有機材料。
【0080】
項28−上記複数の結晶質ナノ粒子が半導電性金属酸化物を含む、項23に記載の有機材料。