(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開閉部は、電流遮断過程の前半には前記蓄圧空間を閉塞状態とし、前記アーク放電の熱によって生成される熱排ガスが前記蓄圧空間内へ流入することを制限し、若しくは前記蓄圧空間内の前記昇圧ガスの流出を制限し、
電流遮断過程の後半には前記蓄圧空間を開放状態とし、前記蓄圧空間内の前記昇圧ガスを前記アーク放電に導くように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
前記アーク放電から発生する熱排ガスの圧力が、前記ピストン又は前記シリンダによる前記消弧性ガスの圧縮反力として作用しないように構成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のガス遮断器。
前記アーク放電から発生する熱排ガスは、前記熱排ガスの発生と同時に、遅滞なく前記アーク放電から遠ざかる方向に流れ、前記密閉容器内の空間へと速やかに排出されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のガス遮断器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
(構成)
以下では、
図1〜
図5を参照しつつ、本実施形態のガス遮断器の全体構成を説明する。
図1は、本実施形態のガス遮断器の全体構成を示す断面図であり、(a)は投入時、(b)は遮断過程前半、(c)は遮断過程後半の状態を示している。
【0015】
ガス遮断器は、電路を構成する電極同士を接離し、電流遮断と投入状態とを切り替える。電流遮断過程では、アーク放電により電極間を橋絡させる。また、電流遮断過程では、消弧性ガスのガス流を生成し、そのガス流をアーク放電に案内して吹き付けることで、アーク放電を冷却し、電流零点で消弧させる。
【0016】
ガス遮断器は、接地された金属や碍子等からなる密閉容器(図示せず)を有し、その内部には消弧性ガスが充填されている。消弧性ガスは、消弧性能及び絶縁性能を有するガスである。
【0017】
消弧性ガスとして、本実施形態では、SF
6ガスよりも地球温暖化係数が小さく、かつ、常温(ここでは摂氏20度とする)における比熱比がSF
6ガスの1.1よりも大きいガスを用いる。
【0018】
例えば、
図2に示すように、窒素(N
2)、二酸化炭素(CO
2)、酸素(O
2)、メタン(CH
4)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスの何れか1種の単体のガスを用いることができる。或いは、混合ガスにしても、混合前の単体ガスに比べて地球温暖化係数が大きくなったり、比熱比が小さくなったりすることはないので、上記の単体ガスの少なくとも1種を含む混合ガスも用いることができる。なお、
図2の項目「GWP」の「―」はゼロ或いはほぼゼロであることを示す。
【0019】
ガス遮断器の電極は、大別すると固定電極部Aと可動電極部Bに別れ、密閉容器内に対向して配置される。固定電極部Aと可動電極部Bは、それぞれ、内部中空の円筒又は内部中実の円柱を基本形とする複数の部材で主に構成され、共通の中心軸を有する同心状配置となっており、径を合わせることで関係部材同士が対向して協働的に機能する。
【0020】
固定電極部Aは、固定アーク電極30a、30b及び固定通電電極3を有する。可動電極部Bは、可動通電電極5とトリガー電極31を有する。
【0021】
固定アーク電極30a、30bは、可動通電電極5やトリガー電極31を有する可動部に含まれる部材ではなく、密閉容器(図示せず)の内部に離間して対向し固定配置される部材である。一方、可動電極部Bの可動要素である可動通電電極5やトリガー電極31を有する可動部は、駆動装置(不図示)に直接又は間接的に連結し、駆動装置の操作力に応じて固定電極部Aに対して中心線に沿って接離する。
【0022】
これにより、可動電極部Bが固定電極部Aに対して接離し、電流の投入と遮断、及び電流遮断過程でアーク放電7の発弧及び消弧が実現する。また、密閉容器内の圧力は通常運転時においていずれの部分でも単一の圧力、例えば消弧性ガスの充気圧力となっている。
【0023】
固定電極部A及び可動電極部Bの各部材について、より詳細に説明する。固定通電電極3は、固定アーク電極30aより径が大きく、中心軸を共通にして固定アーク電極30aと同心円状に配置されている。可動通電電極5は、その外径が固定通電電極3の内径と同じの円筒形状を有し、固定通電電極3と中心軸を共通にして、固定通電電極3と接離可能に密閉容器内に配置されている。固定通電電極3と可動通電電極5の接触によってこれらが電路の一部を構成する。
【0024】
一対の固定アーク電極30a、30bは、概略同径の円筒形状を有し、中心軸を共通にして互いの開口を対向離間させて密閉容器内に固定配置されている。固定アーク電極30a、30bの互いに向かい合う開口縁は内部に膨出している。トリガー電極31は、中実のロッド形状を有し、固定アーク電極30a、30bの内部に、固定アーク電極30a、3bを繋ぐように中心軸上に配置されている。トリガー電極31は、例えばその一端が直接又は間接的に駆動装置(不図示)に連結されており、その駆動力によって固定アーク電極30a、30bの内部を中心軸に沿って進退可能に移動する。
【0025】
トリガー電極31の外径は、固定アーク電極30a、30bの互いに向かい合う内側に膨出した開口縁部分の内径と一致している。固定アーク電極30aにトリガー電極31が差し込まれることで、固定アーク電極30aの内面とトリガー電極31の外面とが接触し、電気的に導通できる状態となる。同様に、固定アーク電極30bの内面とトリガー電極31の外面とが接触し、電気的に導通する。トリガー電極31は、固定アーク電極30a,30bを通電させる通電位置と、固定アーク電極30aから離れる遮断位置とを自在に移動することにより、アーク放電7の発弧を引き受ける。
【0026】
トリガー電極31は、通電位置に位置すると、固定アーク電極30a、30bと接触する。つまり、トリガー電極31により固定アーク電極30a、30bは短絡し、通電状態を実現するようになっている。通電位置から遮断位置へ移動するとトリガー電極31は、固定アーク電極30aから離れ、トリガー電極31と固定アーク電極30aの間にアーク放電7が発生する。トリガー電極31が固定アーク電極30aから更に離れ、固定アーク電極30aとトリガー電極31との距離が、固定アーク電極30aと固定アーク電極30bとの距離より広がると、アーク放電7は最終的にはトリガー電極31からアーク電極30bに転移する。このように、トリガー電極31は、通電又は遮断を切り替えるスイッチ手段となる。
【0027】
ロッド状のトリガー電極31の周囲には、絶縁ノズル32が密閉容器内に固定配置されている。絶縁ノズル32は、固定アーク電極30a、30bとの間の空間を囲むように密閉容器内に固定されて設けられる。従って、遮断動作時にトリガー電極31が絶縁ノズル32内部を移動し、アーク放電7が当該絶縁ノズル32内部に発生する。絶縁ノズル32の形状は、一部区間にくびれを有し、その両端の開口が拡径している。そのため、絶縁ノズル32の端部が固定アーク電極30a、30bの互いに対向する開口縁部分を囲むようになっているとともに、絶縁ノズル32の一端部の開口は、後述する可動ピストン33に向けられている。
【0028】
アーク放電7に吹き付けるガス流は、昇圧室35と蓄圧室36により生成される。蓄圧室36及び昇圧室35は可動電極部Bに設けられ、トリガー電極31を囲むようにして設けられる。蓄圧室36は、昇圧室35の昇圧した消弧性ガスを溜めておき、溜めた消弧性ガスをアーク放電7に吹き付けるものである。蓄圧室36は、トリガー電極31と円筒部材40及び固定アーク電極30bとで囲んだ空間として形成される。
【0029】
すなわち、円筒部材40は、トリガー電極31を囲むように、固定アーク電極30bの外径と同径で中心軸を共通にして配置されている。円筒部材40の開口縁は、固定アーク電極30bの内側に膨出する開口端と反対側の開口縁と、筒が続くように連結されている。円筒部材40は、トリガー電極31より大径であるため、トリガー電極31の外周面と円筒部材40の内周面が離間しており、トリガー電極31と円筒部材40及び固定アーク電極30bとで囲んだ空間である蓄圧室36が形成される。
【0030】
蓄圧室36には、蓄圧室36の内部空間を閉塞状態あるいは開放状態とするための開閉自在な開閉部41が設けられている。本実施形態では、開閉部41は、固定アーク電極30bの先端部の中心部側に膨出した部分とトリガー電極31の外周面との接触(摺動)部分によって形成される。すなわち、この接触部分は一定の気密性を有しており、開閉部41は、電流遮断過程の前半には、固定アーク電極30bとトリガー電極31の接触により蓄圧室36を閉塞状態とし、アーク放電7の熱によって生成される熱排ガス20が蓄圧室36内へ流入することを制限し、蓄圧室36内の昇圧ガスが流出することを制限する。一方、電流遮断過程の後半には、トリガー電極31が固定アーク電極30a、30bの双方から離れることで蓄圧室36を開放状態とする。本実施形態では、トリガー電極31が、通電又は遮断のスイッチ手段の以外に、蓄圧室36の閉塞状態と開放状態を切り替える開閉手段ともなる。
【0031】
昇圧室35では、その内部の消弧性ガスが昇圧される。昇圧室35は、蓄圧室36の外周側に設けられ、シリンダ39、円筒部材40及び可動ピストン33に囲まれた空間である。
図1に示すように、シリンダ39は、一端面が有底の円筒形状であり、その開口を固定アーク電極30bの先端側に、その一端面を固定アーク電極30bの後端側にして密閉容器内に固定して配置されている。すなわち、シリンダ39は、一続きの筒となった円筒部材40及び固定アーク電極30bを囲むように設けられている。
【0032】
可動ピストン33は、シリンダ39の開口を塞ぐようにしてシリンダ39内に挿入されている。このため、アーク放電7の発生により生成された固定アーク電極30a、30b間の熱排ガスが昇圧室35内部に流入することはない。
【0033】
可動ピストン33は、摺動内周面33a及び摺動外周面33bを有し、中心線に沿って移動可能に構成されている。
図1に示すように、本実施形態では、可動ピストン33は、中心が開口した円盤を主材とし、その開口縁から円筒が突出した形状を有する。摺動内周面33aは、円筒内周面及び円盤内周面であり、固定アーク電極30b及び円筒部材40と摺動可能である。摺動外周面33bは、円盤外周面であり、シリンダ39の内周面と摺動可能である。
【0034】
摺動内周面33aおよび摺動外周面33bには昇圧室35内を気密にするシール部材47が設けられる。摺動内周面33aは中心線に沿って幅広になっており、円筒部材40と摺動する摺動内周面33aのシール部材47は、円筒部材40の基端部に設けられた連通穴34の幅以上に離して設けられている。可動ピストン33は、駆動装置(不図示)の操作力によりアーク放電7から遠ざかるように移動することで昇圧室35の容積が減少し、昇圧室35内の圧力は上昇する。すなわち、可動ピストン33は昇圧手段となる。
【0035】
可動ピストン33とトリガー電極31は、別々の駆動装置により移動させても良いし、共通の駆動装置により移動させても良い。共通の駆動装置により移動させる場合は、可動ピストン33は、例えば、トリガー電極31とリンク42により結合されたロッド43と接続して駆動させる。軸ずれを防止し、過大な機械力が一か所に集中しないようにするため、ロッド43は、中心線と直交する断面図である
図3に示すように、中心線周りに所定角度ずつ隔てて複数本設けることが望ましい。ロッド43とシリンダ39の摺動部分から昇圧室35内の圧力が漏れ出さないようにするために、同部はシール部材47によりシールされる。
【0036】
シリンダ39の底面には吸気穴17が設けられ、吸気穴17には吸気バルブ19が設けられている。吸気バルブ19は、昇圧室35内の圧力が密閉容器内の充填圧力よりも低くなる際に限り、消弧性ガスを昇圧室35内に吸気補充するように構成されている。
【0037】
(通電状態)
通電状態では、固定通電電極2と可動通電電極5が電気的に接続されており、これらの部材が電路の一つとなる。特に図示しないが、密閉容器には2本の導体がそれぞれスペーサによって固定電極部A側と可動電極部B側とに固定されている。スペーサは密閉容器と導体とを絶縁するとともに、導体を支持するものである。通電状態において電流は、ブッシング(図示しない)を介してガス遮断器に流れ込み、固定電極部A側の導体から上記電路となる部材、及び可動電極部B側の導体とブッシング(図示しない)を介してガス遮断器外部へ流れ出す。
【0038】
(遮断過程の前半)
過大な事故電流、進み小電流、リアクトル遮断等の遅れ負荷電流、又は極めて小さな事故電流の遮断を要する場合、駆動装置の操作力を受けて、トリガー電極31は固定アーク電極30aから開離すると同時に、トリガー電極31と固定アーク電極30a間でアーク放電7が発生する。アーク放電7から発生する熱排ガス20は、絶縁ノズル32によりその発生と同時に遅滞なくアーク放電7から遠ざかる方向に流れる。すなわち、固定アーク電極30aに設けられた排気穴(図示せず)や、可動通電電極5に設けられた排気穴37を抜けて、密閉容器内へと排出される。
【0039】
遮断過程の前半においては、トリガー電極31が固定アーク電極30bと接触状態にあるため、開閉部41が閉じられ、蓄圧室36は閉塞状態にある。つまり、開閉部41が閉じることで、蓄圧室36へ熱排ガス20が侵入することを防いでいる。一方、昇圧室35と蓄圧室36は円筒部材40によって画成されるが、円筒部材40の基端部に設けられた連通穴34によって一体の空間となっている。従って、昇圧室35と蓄圧室36からなる密閉空間内に存在する消弧性ガスは、可動ピストン33の後退に伴い断熱圧縮され、昇圧される。また、開閉部41が閉じられていることにより、蓄圧室36の昇圧ガスの流出が制限される。
【0040】
以上のように、アーク放電7の熱により高温となった熱排ガス20は、ほとんどが密閉容器内に排出され、蓄圧室36が閉じられているため、蓄圧室36側への流入は制限され、あったとしても極少量である。従って、遮断動作中のごく短時間では、消弧性ガスの昇圧は、アーク熱の影響をほとんど受けず、可動ピストン33による断熱圧縮作用によりほぼもたらされる。
【0041】
(遮断過程の後半)
遮断過程の後半においては、昇圧室35の体積は相対的に小さくなり、可動ピストン33により圧縮された消弧性ガスは連通穴34を介して大半が蓄圧室36内に貯留される。それと同時に、可動ピストン33に設けたシール部材47が、連通穴34を塞ぐことにより、昇圧室35と蓄圧室36とは圧力的に切り離される。すなわち、昇圧室35と蓄圧室36は一体の空間でなくなる。さらに、
図4に示すように、その後速やかに放圧機構48により昇圧室35内の圧力は放出圧縮ガス49として密閉容器へと放圧される。放圧機構48は、ロッド43の一部に溝43aを設けることなどが考えられるが、他にも種々の構造が有りうる。
【0042】
一方、トリガー電極31が固定アーク電極30bを通過して開閉部41が解放されるため、蓄圧室36内の圧縮ガスはトリガー電極31に沿って進行し吹付けガス21としてアーク放電7に強力に吹き付けられる。絶縁ノズル32によって吹付けガス21が効果的にアーク放電7に吹付けられ、また熱排ガス20がスムーズに排出されるよう、ガスの流れを適切に整流する。
【0043】
この段階では、アーク放電7は固定アーク電極30bに転移される。したがって、トリガー電極31にアーク放電7が点弧している期間は、固定アーク電極30bにアーク放電7が転移されるまでの遮断過程前半の限定された期間のみである。
【0044】
(遮断過程の終了後)
昇圧室35には、吸気穴17および吸気バルブ19が設けられている。吸気バルブ19は、昇圧室35内の圧力が密閉容器内の充填圧力よりも低くなる際に限り、消弧性ガスを昇圧室35内に吸気補充するように構成されている。
【0045】
したがって、遮断過程終了後に、再び投入動作をした場合、昇圧室35には吸気穴17を通じて新鮮な消弧性ガスが密閉容器内から供給される。
【0046】
(作用)
(a)吹付けガスの低温化
本実施形態のガス遮断器では、消弧性ガスの昇圧は、可動ピストン33により昇圧部35内部の消弧性ガスを圧縮し昇圧させる機械的昇圧作用を利用し、アーク放電7の熱による消弧性ガスの自力昇圧作用を利用していない。アーク放電7に吹付けられるガス21は、アーク放電7の熱による熱的な昇圧はなされておらず、可動ピストン33による機械的圧縮によって圧力が高められた消弧性ガスである。したがって、アーク放電7へ吹付けられる昇圧ガス21の温度は、自力昇圧作用を利用した従来の吹付けガスの温度に比べて、はるかに低くなる。その結果、昇圧ガス21の吹付けによるアーク放電7の冷却効果を著しく高めることができる。そのため、SF
6ガスよりも消弧性能が劣る代替ガスであっても、従来のSF
6ガス遮断器と同等の消弧性能を有することができる。
【0047】
特に、本実施形態では、消弧性ガスに、SF
6ガスよりも地球温暖化係数が小さく、かつ、20℃における比熱比がSF
6ガスの1.1よりも大きい消弧性ガスを用いたことにより、以下の作用を奏する。
【0048】
まず、地球温暖化係数がSF
6ガスよりも小さいので、ガス遮断器の製造及び使用段階における環境への影響を低減することができる。
【0049】
一方、本実施形態においては、可動ピストン33の移動により断熱圧縮を主体として昇圧するため、SF
6ガスよりも比熱比の大きい代替ガスを用いることで顕著な昇圧作用が得られる。一般に、初期体積V0、初期圧力P0のガスを圧縮後体積V1(<V0)に断熱圧縮した場合、圧縮後の圧力P1は式1のように与えられる。
P1=P0×(V0/V1)
γ ・・・(式1)
ここで、γはガスの比熱比である。
【0050】
すなわち、同じ圧縮比(V0/V1)でガスを断熱圧縮する場合、圧縮後の圧力上昇はガスの比熱比のべき乗で効くことが分かる。本消弧構造におけるアーク吹付け圧力をSF
6ガス(比熱比1.1)と代替ガス(比熱比1.4)とで比較した結果を
図5に示す。
図5に示すように、比熱比が1.1よりも大きい代替ガスを使用した方が、断熱圧縮を主体とした本消弧構造においてはより強力なアーク吹付け圧力が得られる。
【0051】
(b)耐久性の向上とメンテナンスの低減化
本実施形態のガス遮断器では、吹き付ける消弧性ガスは低温である。そのため、アーク放電7周辺の温度が低温化する。それ故に、電流遮断に伴う固定アーク電極30a、30bおよび絶縁ノズル32の劣化を著しく軽減することができ、耐久性が向上する。その結果、固定アーク電極30a、30bおよび絶縁ノズル32のメンテナンス頻度を落とすことが可能となり、メンテナンスの負担を低減化することができる。
【0052】
また、トリガー電極31にアーク放電7が点弧している期間は、固定アーク電極30bにアーク放電7が転移されるまでの遮断過程前半の限定された期間のみである。そのため、トリガー電極31の径はこの期間で耐えうる耐久性が満たされれば必要最小限で良い。すなわち、必要以上にトリガー電極31の径を大きくする必要がないので、可動部の重量を軽減できる。一方で、密閉容器内に固定された固定アーク電極30a、30bは可動部の重量には影響しないので、重量増大を懸念せずに、固定アーク電極30a、30bを太く構成することができる。このため大電流アークに対する固定アーク電極30a、30bの耐久性は著しく向上する。さらに、固定アーク電極30a、30bを太く構成した場合、電極ギャップ間に高電圧が印加されたときの固定アーク電極30a、30b先端における電界集中を大きく緩和することが可能である。
【0053】
したがって、従来のガス遮断器に比べて必要となる電極ギャップ間隔を短くすることかできる。その結果、アーク放電7の長さは短くなり、電流遮断時におけるアーク放電7への電気的入力パワーは小さくなる。
【0054】
(c)電流遮断時間の短縮化を図る
本実施形態によれば、アーク熱による自力昇圧作用を利用していないので、アーク放電7へと吹付けられる圧縮ガスの圧力や流量は、電流条件によらず常に一定である。また、アーク放電7への吹付け開始タイミングも、トリガー電極31の先端部が固定アーク電極30bを通過して両者が離れるタイミングで決まるので、電流条件によらず常に一定である。したがって、電流遮断の完了時間が長引くことはなく、電流遮断の完了時間の短縮化という要請に応えることができる。
【0055】
(d)駆動操作力の低減化を図る
トリガー電極31等の駆動ストロークが完全遮断位置に近づくにつれて、昇圧室35および蓄圧室36内の圧縮ガスの圧力は高まり、同時に可動ピストン33に作用する圧縮反力は大きくなる。これに打ち勝つためには、それ相応の駆動力を持った駆動装置が必要となる。
【0056】
完全遮断位置においては、可動ピストン33に設けたシール部材47が、連通穴34を塞ぐことにより、昇圧室35と蓄圧室36とは圧力的に切り離される。それと同時に、
図4に示すように、放圧機構48により昇圧室35内の圧力は放圧される。このため、少なくとも完全遮断位置にまで可動部を引っ張ることができる駆動エネルギーさえあれば、その後は可動ピストン33にはストロークを逆行させる力は一切作用されないため、ストロークが逆行する恐れはない。
【0057】
また、トリガー電極31は固定アーク電極30a、30bより径が小さく、従来の可動アーク電極および駆動ロッドと比べて軽量で済む。また、2つの固定アーク電極30a、30bに加えて、絶縁ノズル32も可動部に含まれないので、可動部の重量を大幅に低減することが可能である。このように可動部の軽量化を進めた本実施形態では、電流遮断に必要な可動部の開極速度を得る面で、駆動操作力を大幅に低減することができる。
【0058】
さらに、軽量化とともに、電流を遮断するために必要な吹き付け圧力自体を低減することができれば、圧縮に必要な駆動操作力を低減することができる。本実施形態では、吹付けガス21の温度が従来に比べてはるかに低いため、アーク放電7の冷却効果が著しく高まり、より低い圧力でアーク放電7を遮断することが可能となる。
【0059】
また、アーク放電7から発生する熱排ガス20は、その発生と同時に、遅滞なくアーク放電7から遠ざかる方向に流れ、前記密閉容器内の空間へと速やかに排出される。そのため、アーク放電7への吹付けガス21は、上流側の圧力すなわち蓄圧室36の圧力と、下流側すなわち固定アーク電極30a近傍の圧力との差により流れる。すなわち、下流側の圧力が高いと、いくら蓄圧室36の圧力を高めても、十分な吹き付け力が得られない。
【0060】
本実施形態によれば、アーク放電7の発生と同時に、熱排ガス20の圧力は速やかに密閉容器へと排出されるため、下流側すなわち固定アーク電極30a近傍の圧力は常に密閉容器の充填圧力とほぼ同等の値が維持される。そのため、電流遮断に必要な吹き付け圧力を低減することができ、駆動操作力を低減することができる。
【0061】
また、本実施形態では、固定アーク電極30bの内側から噴出した低温の昇圧ガス35は、固定アーク電極30b近傍に位置するアーク放電7の根元部に集中して、内側から外側に横切るように吹付けられる様相となる。そのため、より低い圧力でアークを遮断することが可能となり、優れた遮断性能を維持しつつ、駆動操作力の低減化を図ることができる。
【0062】
また、アーク放電7から発生する熱排ガス20の圧力は、前述の通り速やかに密閉容器内の空間へと排出されるが、絶縁ノズル32の一端部の開口が、可動ピストン33に向けられているため、
図1に示す可動ピストン33の左側の面には一部作用する可能性がある。しかしながら、熱排ガス20の圧力が作用した場合においても、その圧力は可動ピストン33による圧縮力をサポートする力になりこそすれ、少なくとも可動ピストン33の駆動操作力の反力として作用することは一切ない。この点からも、駆動操作力の低減化を図ることができる。
【0063】
(e)ガス流の安定化を図る
さらに、本実施形態では、蓄圧室36内の圧力を調整する際などにおいて複雑なバルブ制御が不要であり、消弧性ガスの吹付け圧力上昇にアーク熱による自力昇圧作用も利用していない。したがって、遮断電流条件に関係なく、常に同等の吹付けガス圧力およびガス流量を安定して得ることができる。このため、遮断電流の大きさによる性能の不安定性は全く生じることがない。
【0064】
本実施形態では、絶縁ノズル32と固定アーク電極30a、30bが全て密閉容器内で固定されている。そのため、各部材の相対的な位置が変わることがなく、また、アーク熱による自力昇圧作用を一切利用していないので、アーク放電7へと吹付けられる昇圧ガス21の圧力や流量についても、電流条件によらず、常に一定である。したがって、アーク遮断にとって理想的となるように、絶縁ノズル32内の流路を最適に設計することが可能である。
【0065】
(f)高速再閉路動作時の遮断性能の向上
さらには、昇圧室35には、吸気穴17および吸気バルブ19を設け、各室内の圧力が密閉容器内の充填圧力よりも低くなると、消弧性ガスを自動的に吸気補充できる。このため、投入動作時には低温の消弧性ガスが昇圧室35内に速やかに補充される。よって、高速再閉路責務における二回目の遮断過程においても、遮断性能の劣化は全く懸念されない。
【0066】
(効果)
(1)本実施形態のガス遮断器は、消弧性ガスが充填された密閉容器と、密閉容器内に対向配置され、電気的に通電可能で、電流遮断時には互いの間にアーク放電7が発生しうるように構成された一対の固定アーク電極30a、30bと、アーク放電7に対し消弧性ガスを吹き付けるために、消弧性ガスを昇圧させて昇圧ガスを生成する昇圧室35と、昇圧ガスを溜めておく蓄圧室36と、蓄圧室36からアーク放電7に向けて昇圧ガスを導く絶縁ノズル32とが設けられたガス遮断器において、蓄圧室36を閉塞状態あるいは開放状態とするための開閉自在な開閉部41を設けるようにした。また、昇圧室35は、シリンダ39と可動ピストン33を有し、可動ピストン33が可動することでシリンダ39内部の消弧性ガスを断熱圧縮し、昇圧ガスを生成するように構成するようにした。消弧性ガスを、地球温暖化係数がSF
6ガスよりも小さく、かつ、20℃における比熱比が1.1よりも大きい消弧性ガスとした。
【0067】
これにより、可動ピストン33の移動により断熱圧縮を主体として昇圧するとともに、断熱圧縮が比熱比のべき乗で効くため、顕著な昇圧作用を得ることができる。さらに、断熱圧縮であるため、アーク放電7により発生した熱が昇圧部35に流入することもなく、アーク放電7による熱が流入する従来のガス遮断器と比べて、消弧性ガスの温度を低温にすることができるとともに、開閉部41によりアーク放電7への吹き付け直前まで蓄圧室36で昇圧ガスを溜めることができるので、十分な吹き付け圧力を確保することができる。よって、駆動装置の駆動エネルギーや機器サイズを大きくする必要がない。
【0068】
本実施形態によれば、環境への影響が少なく、かつ、消弧性ガスの冷却効果と昇圧効果が得られるとともに、機器サイズや駆動装置の大型化を回避することができ、コンパクトで信頼性の高いガス遮断器を得ることができる。
【0069】
(2)開閉部41は、電流遮断過程の前半には蓄圧室36を閉塞状態とし、アーク放電7の熱によって生成される熱排ガス20が蓄圧室36内へ流入することを制限し、若しくは蓄圧室36内の昇圧ガスの流出を制限し、電流遮断過程の後半には蓄圧室36を開放状態とし、蓄圧室36内の昇圧ガスをアーク放電7に導くように構成した。これにより、昇圧ガスの冷却効果を高め、若しくは十分な吹き付け圧力を確保した状態でアーク放電7に昇圧ガスを吹き付けることができるので、機器サイズや駆動装置の大型化を回避することができ、コンパクトで信頼性の高いガス遮断器を得ることができる。
【0070】
(3)電流遮断過程の後半には、昇圧室35の内部空間と蓄圧室36の内部空間とが、圧力的に切り離されるように構成され、かつ、昇圧室35の内部空間の圧力が放圧するよう昇圧室35を構成した。これにより、昇圧室35の影響を受けずに蓄圧室36からアーク放電7に昇圧ガスを吹き付けることが可能であるとともに、当該吹き付けと独立して昇圧室35の内部空間の圧力を放圧するので、圧縮反力による可動ピストン33のストロークの逆行を抑制でき、過大な駆動エネルギーが不要になるため、機器サイズや駆動装置の大型化を回避することができる。
【0071】
(4)消弧性ガスを、窒素(N
2)、二酸化炭素(CO
2)、酸素(O
2)、メタン(CH
4)、希ガスの何れか1種の単体のガス、又は、少なくとも1種を含む混合ガスとした。これにより、SF
6ガスを用いる従来技術よりも地球温暖化の影響を小さくすることができる。
【0072】
(5)アーク放電7から発生する熱排ガス20の圧力が、可動ピストン33による消弧性ガスの圧縮反力として作用しないように構成した。アーク放電7に吹き付ける消弧性ガスの温度が自力昇圧作用を利用する従来技術に比べて、はるかに低くすることができるので、アーク放電7の冷却効果を著しく向上させることができるとともに、可動ピストン33の駆動エネルギーを小さくすることができるので、結果的に機器サイズや駆動装置の大型化を回避することができる。
【0073】
(6)一対の固定アーク電極30a、30bは密閉容器内に固定されており、一対の固定アーク電極30a、30bの内側には固定アーク電極30a、30bより径の小さなトリガー電極31が固定アーク電極30a、30b間を移動自在に配置され、トリガー電極31は、一対の固定アーク電極30a、30bと接触して両固定アーク電極30a、30bを短絡することで通電状態を実現し、電流遮断時には当該トリガー電極31と一方の固定アーク電極30aの間にアーク放電7が発生し、アーク放電7が最終的にはトリガー電極31から他方の固定アーク電極30bに転移するように構成した。
【0074】
一般にアーク電極にはアーク放電7に対する耐久性が求められるが、従来の円筒形状の可動アーク電極に中実円柱形状の固定アーク電極を差し引きする構造のガス遮断器では、より耐久性を得ようとすれば、固定アーク電極を太くする必要があり、結果として可動アーク電極の径も大きくなり、可動部の重量の増大に繋がっていた。一方、本実施形態では、トリガー電極31にアーク放電7が点弧している期間は固定アーク電極30bにアーク放電7が転移されるまでの限定された期間のみであるため、必要最小限の径で済み、可動部の重量を軽減できる。また、固定アーク電極30a、30bは密閉容器内に固定されるので、可動部の重量増大を懸念せずに、固定アーク電極30a、30bを太くし耐久性を向上させることができる。このように、耐久性の向上と可動部の重量軽減を両立することができる。
【0075】
(7)アーク放電7から発生する熱排ガス20が、熱排ガス20の発生と同時に、遅滞なくアーク放電7から遠ざかる方向に流れ、密閉容器内の空間へと速やかに排出されるように構成した。これにより、固定アーク電極30a、30b間の圧力を常に密閉容器の充填圧力とほぼ同等の値が維持されるので、電流遮断に必要な吹き付け圧力が低減でき、駆動操作力を低減することができる。結果として機器サイズや駆動装置の大型化を回避することができる。
【0076】
(8)整流手段として、密閉容器内に固定された絶縁ノズル32を設けた。これにより、従来の絶縁ノズルが消弧性ガスの圧縮とともに移動するガス遮断器と異なり、絶縁ノズル32が可動部の重量に影響しないので、駆動エネルギーを小さくでき、結果として機器サイズや駆動装置の大型化を回避することができる。
【0077】
[第2の実施形態]
(構成)
第2の実施形態について、
図6及び
図7を用いて説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と基本構造は同一であるが、
図1〜
図5には図示されていない、可動部を駆動する駆動装置に特徴がある。
【0078】
図6および
図7に、圧縮反力(ア)、すなわち可動ピストン33が昇圧室35の圧力から受ける力を実線で、駆動装置の駆動力(イ)を点線で、可動部を加速させる力(実効加速力,(イ−ア))を一点鎖線で示す。横軸は駆動ストロークであり、完全投入位置が0pu、完全開極位置が1.0puである。ここで摩擦等の影響は無視するとした場合、実効加速力は「駆動力(イ)−圧縮反力(ア)」で描かれる。実効加速力は正の値が加速力、負の値が減速力を意味する。
【0079】
本実施形態のガス遮断器は、吹付けガスの圧力上昇を可動ピストン33による断熱圧縮を主体として行うため、圧縮反力((ア),実線)のカーブは断熱圧縮特性として知られる
図6および
図7に示すような単調増加特性となる。また、吹付けガスの圧力上昇にアーク放電7からの熱エネルギーを活用しないため、圧縮反力(実線)のカーブは遮断電流の大小や交流電流の位相などによらず、常に一定のカーブとなる。
【0080】
図6は、駆動装置の駆動力((イ),点線)がストロークに対してフラットな特性の場合を示している。一方,
図7は、駆動装置の駆動力((イ),点線)がストロークに対して減衰していく特性の場合を示している。
図6では最も極端な例として、駆動力は全ストローク位置にわたり0.5puで一定としている。一方、
図7では、駆動力が一例として0.8puから0.2puまで直線的に減衰するケースを取り上げている。
【0081】
また、駆動装置が遮断動作のために蓄勢している駆動エネルギーは、駆動力((イ),点線)をストロークで積分した面積として与えられる。すなわち、
図6の駆動力特性の場合、駆動エネルギーは、
0.5pu×全ストローク1pu=0.5 ・・・(式2)
のエネルギー量となる。
【0082】
一方、
図7の駆動力特性の場合、駆動エネルギーは、縦軸0puのラインと駆動力(イ)の点線とで囲まれた台形の面積となり、
(0.8pu+0.2pu)÷2×全ストローク1pu=0.5 ・・・(式3)
のエネルギー量となる。
【0083】
つまり、
図6と
図7は駆動力のストローク特性は異なるものの、駆動エネルギーとしては同一である。第2の実施形態では、駆動装置に
図7に示すような出力減衰型の特性を有するものを採用することを特徴とする。すなわち、駆動装置としては、その駆動力が遮断過程で減少するように構成されたものを用いる。
【0084】
(作用)
一般的に駆動装置の大きさやコストは、駆動エネルギーに対して概ね単調増加の傾向を持つ。すなわち、
図6と
図7の駆動装置は駆動力の特性は異なるものの、駆動エネルギーとしては同一であるため、どちらも駆動装置の大きさやコストはさほど大きな差はないといえる。
【0085】
一方、駆動エネルギーは同じでも、ストロークの前半で大きな駆動力を出し、後半に向かって減衰してゆく
図7の特性の駆動装置の方が、実効加速力(イ−ア)が
図6より大きな値となっていることが分かる。圧縮反力の特性(ア)は
図6と
図7で同一で、かつ、駆動エネルギーも同一であるので、完全開極位置(ストローク1pu)での速度は同一となるが、ストローク途中の速度は両者で異なり、開極前半における加速力が大きい
図7の方が可動部のトップスピードは速くなる。
【0086】
これは、操作駆動エネルギーが同じ場合、
図7に示すような出力減衰型の駆動特性をもった駆動装置の方が、
図6の駆動特性の駆動装置と比べ、可動部の駆動速度を速くすることができることを示している。これはガス遮断器にとっては、より速く電極間のギャップが開くことを意味しており、電極間の速やかな電気絶縁性の回復の面で大きなメリットとなる。また、可動部の駆動速度が速くなれば、アーク放電7がトリガー電極31から固定アーク電極30bに転移し、蓄圧室36から低温の圧縮ガスが強力にアーク放電7へ吹付けられるまでの時間が短くなり、遮断完了までに要する時間の短縮、さらには耐久性の向上につながる。
【0087】
以上述べた作用効果が得られるのは、ガス遮断器が吹付けガスの圧力上昇を可動ピストン33による断熱圧縮を主体として行っており、そのため圧縮反力が初期は非常に小さく、後半に向かって急激に増加する特性であることに由来する。また、圧縮反力の特性が遮断電流の大小や交流電流位相などによらず、常に一定のカーブとなることも、当該作用効果を得るための必須条件である。いずれも、従来の自力昇圧作用を利用するガス遮断器の構造では達成できない特徴である。従来の遮断器では、固定ピストンに印加される圧縮反力はアーク発生熱の影響を大きく受けるため、単調増加のカーブにはならず、また遮断電流の条件により様相は大きく異なるからである。
【0088】
駆動エネルギーが同一の条件で、駆動出力を
図6のようなフラットな特性から、
図7のような減衰型の特性とする具体的方策について説明する。これは、駆動エネルギー源として蓄勢したバネを採用すれば容易に実現できる。バネ機構の出力特性は、原理的には以下の式のように与えられ、
図7に示したような単調減少直線となる。
F=k・(L+1−x) ・・・(式4)
ここで、F:駆動出力、k:バネ定数、x:ストローク(pu)、L:完全開極位置(ストロークx=1pu)でのバネの圧縮長(pu)である。
【0089】
特に、完全開極位置でバネが自由長に近くなるように構成すれば(L≒0pu)、同じ駆動エネルギーを得るためのバネ定数kの値は大きくなり、バネの放勢に伴い駆動力がストロークに対して大きく減衰する特性となる。
【0090】
あるいはまた、油圧操作機構のようにストロークに対して比較的フラットな出力特性を持つ駆動装置を用いる場合は、適正なリンク構造を連結することで、操作駆動エネルギーを変えずに、出力特性を減衰型に変更することも可能である。
【0091】
出力特性を減衰型にする方策は上記以外にも種々考えうるが、重要なことは、第1の実施形態で示した構造においては、駆動力がストロークに対して減衰型にある駆動装置と組み合わせることで、同一の操作駆動エネルギーであっても、電極の解離速度を効果的に上げることができ、遮断器の速やかな絶縁回復、遮断完了までに要する時間の短縮、耐久性の向上などの、特有のメリットが得られるということである。
【0092】
さらに、第1の実施形態で述べた昇圧室35の高いガス圧力を可動ピストン33から切り離し、かつ昇圧室35の圧力を放圧機構48により放圧することで、たとえ駆動力が開極後半に大きく低下しても、可動部が逆行するなどの不具合は生じない。
【0093】
なお、出力低下型の駆動力特性の一つの目安として、投入位置(ストローク0pu)での駆動力に対して、完全遮断位置(ストローク1pu)での駆動力が例えば概ね80%以下とすることを提案する。完全開極位置における出力低下率を80%以下となるように設定すれば、上記の作用が実質的に得ることができる。
【0094】
(効果)
以上のように、本実施形態では、昇圧部35の消弧性ガスを機械的に圧縮するための駆動装置が設けられ、駆動装置は、その駆動力が駆動ストロークとともに減少するように構成した。これにより、開極前半における加速力が大きくなるため、電極間の速やかな電気絶縁性の回復という効果を奏する。また、可動部の駆動速度が速くなれば、アーク放電7がトリガー電極31から固定アーク電極30bに転移し、蓄圧室36から低温の圧縮ガスが強力にアーク放電7へ吹付けられるまでの時間が短くなり、遮断完了までに要する時間の短縮及び耐久性の向上という効果を得ることができる。
【0095】
[その他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0096】
例えば、第1及び第2の実施形態では、可動ピストン33を駆動装置によって中心線方向に移動可能とし昇圧手段としていたが、これに限られない。例えば、
図8のように、ピストンを固定し、この固定ピストン33’に対して駆動装置に直接又は間接に接続した可動シリンダ39’を移動させるようにしても良い。このように可動シリンダ39’を昇圧手段としても、昇圧部35の容積が可変であるため、昇圧部35内部の消弧性ガスを圧縮、昇圧することができる。
【0097】
なお、可動シリンダ39’は、可動ピストン33と同様に固定アーク電極30b、円筒部材40と摺動可能な摺動面を有し、可動シリンダ39’の移動によって連通穴34を塞ぐことが可能なように構成する。
【0098】
第1及び第2の実施形態では、固定電極部Aを密閉容器内で固定して、可動電極部Bのみを軸方向に移動させるよう構成したが、固定電極部Aに対して可動電極部Bが相対的に移動するように、固定電極部Aも軸方向に移動させ、相対的開極速度を向上させようとするいわゆるデュアルモーション機構にしても良い。