特許第6382550号(P6382550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382550
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】プーリユニット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20180820BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20180820BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20180820BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20180820BHJP
   F16C 19/08 20060101ALI20180820BHJP
   F16H 55/36 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   F16J15/3204
   F16C33/78 D
   F16C33/80
   F16J15/447
   F16C19/08
   F16H55/36 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-71520(P2014-71520)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194172(P2015-194172A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
(72)【発明者】
【氏名】中尾 吾朗
(72)【発明者】
【氏名】井筒 智善
(72)【発明者】
【氏名】香田 毅
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−270882(JP,A)
【文献】 特開2014−055651(JP,A)
【文献】 特開2013−044420(JP,A)
【文献】 特開2009−216138(JP,A)
【文献】 特開2009−002468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204−15/3236
F16J 15/447
F16C 33/72 −33/82
F16C 19/08
F16H 55/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト案内輪の内側にボス部が設けられたプーリと、前記ボス部の内側に組み込まれた外輪回転用の軸受とを有し、前記軸受の外輪と内輪間に形成された軸受空間の両端開口のそれぞれをシール部材によりシールしたプーリユニットにおいて、
前記シール部材が、前記内輪の外径面端部に圧入される円筒部の外側端部に外向きフランジが設けられた断面L形のスリンガと、前記外輪の内径面における両端部に形成されたシール取付溝に圧入されて外周部が支持され、内周部に内向き傾斜部が設けられ、芯金によって補強された弾性シール部材とを有し、前記弾性シール部材の前記スリンガと対向する面に複数のリップを設け、これら複数のリップが、前記弾性シール部材の外側面から斜め外方に向けて延びて先端部が前記スリンガの外向きフランジに弾性接触するアキシャルリップと、前記傾斜部の内周に形成されて先端部が前記スリンガの円筒部の外径面に弾性接触又は微小間隙をおいて対向するラジアルリップとからなり、
前記アキシャルリップが、前記軸受の外輪回転時に径方向外方に向けて弾性変形して前記外向きフランジとの間にラビリンス隙間を形成する弾性変形能を有することを特徴とするプーリユニット。
【請求項2】
前記ラジアルリップは、前記スリンガの円筒部の外径面に対して微小間隙をおいて対向している請求項1に記載のプーリユニット。
【請求項3】
前記軸受の外側に、前記軸受の側面および前記ボス部の端部外周を覆う一対のダストカバーを設けた請求項1または2に記載のプーリユニット。
【請求項4】
前記軸受の内輪内径面に、フランジを一端部に有する筒状のプーリ軸を圧入して軸受とプーリ軸とを一体化した請求項1乃至のいずれか1項に記載のプーリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト伝動装置のベルトの移動を案内する自動車エンジン用のプーリユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
オルタネータやコンプレッサ等の自動車補機を駆動するベルト伝動装置においては、アイドラプーリによってベルトの移動を案内し、あるいは、油圧式オートテンショナによりテンションプーリをベルトに押し付けてベルトの張力変動を吸収するようにしている。
【0003】
上記のようなアイドラプーリやテンションプーリは、一般的に、ボス部の内径側に組み込まれてユニット化された転がり軸受により回転自在に支持される。転がり軸受を有するプーリユニットのベルト伝動装置への組み込み状態において、転がり軸受が外部に露出していると、飛来してくる泥水等の異物が軸受内部に入り込み易く、その異物の侵入により転がり軸受を早期に損傷させることになる。
【0004】
そのため、上記プーリユニットにおいては、転がり軸受として、シール付き転がり軸受が一般的に採用される。しかし、軸受シールは、一般に、その内周部に設けられたリップを内輪外径面に弾性接触させる接触形であって、その締め代により外部からの水の浸入を防止する構成であり、上記締め代を大きくすると回転トルクが増加するため、締め代を大きくすることができず、水の浸入を完全に防止することはできない。
【0005】
ここで、特許文献1に記載されたプーリ用軸受装置のように、プーリ本体を回転自在に支持する軸受の両側にスリンガを設けることにより、耐水性の向上を図ることができるが、上記スリンガの外周部が軸受の外輪と接触していると、プーリ本体と共に回転する外輪の回転抵抗となるため、スリンガの外周部は外輪の側面に対して間隔を設けて非接触とする必要がある。
【0006】
このため、エンジンルームが高圧洗浄水によって洗浄される際、高圧洗浄水がスリンガと外輪の対向面間に形成された隙間から、そのスリンガと軸受シールの対向部間に浸入する可能性がある。このとき、内輪にリップを接触させる接触形軸受シールでは、上記のように、リップの締め代が小さいため、軸受内部への水の浸入を完全に防止することはできない。
【0007】
そこで、特許文献2に記載されているように、内輪にスリンガを圧入し、外輪に外周部が支持された摺動シール部の上記スリンガと対向するアキシャル基面に副シールリップを設け、その副シールリップの先端部をスリンガに弾性接触させることにより、摺動シール部の損傷防止と、高圧洗浄水の浸入防止に大きな効果を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−337383号公報
【特許文献2】特開2009−216138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献2に記載されたスリンガ付きの軸受用密封装置においては、副シールリップのみでは耐水性が充分ではないため、摺動シール部の内周縁部に主シールリップを設け、その主シールリップを内輪の端部に形成された段差部のアキシャル方向端部に弾性接触させて上記副シールリップとで2重のシール構造として耐水性の向上を図るようにしている。このとき、内輪には段差部を形成する必要があり、しかも、その段差部の主シールリップが弾性接触するアキシャル方向端面を高精度に加工する必要が生じ、内輪の加工に手間がかかるという不都合がある。
【0010】
この発明の課題は、弾性シール部材が異物の接触によって損傷するのを防止することができると共に、軸受内輪に精度の高い加工を施すことなく軸受内部への高圧洗浄水の浸入防止を図ることができるようにしたプーリユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明においては、ベルト案内輪の内側にボス部が設けられたプーリと、前記ボス部の内側に組み込まれた外輪回転用の軸受とを有し、前記軸受の外輪と内輪間に形成された軸受空間の両端開口のそれぞれをシール部材によりシールしたプーリユニットにおいて、前記シール部材が、前記内輪の外径面端部に圧入される円筒部の外側端部に外向きフランジが設けられた断面L形のスリンガと、前記外輪の内径面における両端部に外周部が支持され、内周部に内向き傾斜部が設けられ、芯金によって補強された弾性シール部材とを有し、前記弾性シール部材の前記スリンガと対向する面に複数のリップを設け、その複数のリップのそれぞれを前記スリンガに弾性接触させた構成を採用したのである。
【0012】
上記のように、外輪の内径面によって外周部が支持される弾性シール部材に複数のリップを設け、そのリップのそれぞれを内輪の外径面端部に圧入したスリンガに弾性接触させることにより、上記スリンガによって弾性シール部材を保護することができ、飛来してくる異物の衝突によって弾性シール部材が損傷するのを防止することができる。
【0013】
また、複数のリップによって高圧洗浄水の軸受内部への浸入を防止することができ、しかも、リップのそれぞれはスリンガに対する接触によって水密性を確保するため、内輪に精度の高い加工を施すことなく高圧洗浄水の浸入防止とすることができる。
【0014】
ここで、複数のリップは、弾性シール部材の外側面から斜め外方に向けて延びて先端部がスリンガの外向きフランジに弾性接触するアキシャルリップと、傾斜部の内周に形成されて先端部がスリンガの円筒部外径面に弾性接触するラジアルリップの組み合わせからなるものであってもよく、あるいは、一対のアキシャルリップからなるものであってもよい。
【0015】
上記アキシャルリップに対し、軸受外輪の高速回転時に径方向外方に向けて弾性変形して外向きフランジとの間にラビリンス隙間を形成する弾性変形能を付与しておくことにより、外輪の高速回転時の回転抵抗の低減化を図ることができる。
【0016】
弾性シール部材は、リップがスリンガと接触回転するため、柔軟性および耐摩耗性に優れたゴムで形成するのが好ましい。そのようなゴムとして、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムを挙げることができる。これらのゴムは、加硫接着によって芯金に一体化するのが好ましい。
【0017】
この発明に係るプーリユニットにおいて、プーリを軸受の外輪外径面上において成形された樹脂成形品とすることにより、プーリの成形と同時に軸受を一体化することができるため、プーリユニットの組立て作業を不要とし、取扱いの容易なプーリユニットを得ることができる。
【0018】
この場合、外輪の外径面にローレット加工を施し、あるいは、外輪外径面に周溝や凹部を設けて軸受と樹脂の成形品からなるプーリの結合力を高めるのが好ましい。
【0019】
また、軸受の外側に、その軸受の側面およびボス部の端部外周を覆う一対のダストカバーを設けると、そのダストカバーとスリンガのそれぞれで弾性シール部材を覆うことができるため、弾性シール部材が異物との接触により損傷するのをより効果的に防止することができると共に、高圧洗浄水の浸入をより効果的に防止することができる。
【0020】
さらに、軸受の内輪内径面に、フランジを一端部に有する筒状のプーリ軸を圧入して軸受とプーリ軸とを一体化すると、プーリ軸内に挿入するボルトをプーリ取付け対象にねじ込むことによってプーリユニットの組み付けとすることができるため、組み付けの容易なプーリユニットを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明においては、上記のように、外輪の内径面によって外周部が支持された弾性シール部材に複数のリップを設け、そのリップのそれぞれを内輪の外径面端部に圧入したスリンガに弾性接触させるようにしたので、スリンガによって飛来してくる異物が弾性シール部材に直接衝突するのを避けることができ、弾性シール部材の損傷防止を図ることができる。
【0022】
また、スリンガに弾性接触させた複数のリップによって高圧洗浄水が内部に浸入するのを防止することができるため、内輪に精度の高い加工を施すことなく高圧洗浄水の浸入防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明に係るプーリユニットの実施の形態を示す縦断面図
図2図1のシール部材の取り付け部を拡大して示す断面図
図3】シール部材の他の例を示す断面図
図4】(a)乃至(c)はプーリと軸受の結合力を高める手段の各例を示断面図
図5】この発明に係るプーリユニットの他の実施の形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、プーリユニットは、プーリ10と、そのプーリ10を回転自在に支持する軸受20と、その軸受20を支持するプーリ軸40を有している。
【0025】
プーリ10は、外径部にベルト案内輪11を有し、そのベルト案内輪11の内径面に環状フランジ12が形成され、その環状フランジ12の内径部にボス部13が設けられた樹脂の成形品からなり、上記ボス部13の一方の端部には内向きフランジ14が設けられている。
【0026】
ベルト案内輪11として、ここでは、外径面が円筒面15からなる平ベルト案内用のものを示したが、外径面に複数のV溝が形成されたVベルト案内用のものであってもよい。
【0027】
軸受20は、外輪21、内輪22、その両輪21、22間に組み込まれた複列の転動体としてのボール23を有する玉軸受からなり、各列のボール23の外側にシール部材30が組み込まれ、そのシール部材30によって外輪21と内輪22の対向面間に形成された軸受空間24の両端開口がシールされている。
【0028】
なお、玉軸受として複列玉軸受の場合を示したが、支障のない範囲で、単列の玉軸受や、単列の玉軸受を複数個、例えば、2列で使用する形態としてもよい。
【0029】
図2に示すように、シール部材30は、内輪22の外径面端部に装着されたスリンガ31と、そのスリンガ31の内側に設けられた弾性シール部材34とからなる。
【0030】
スリンガ31は、円筒部32の一方の端部に外向きフランジ33を設けた鋼板のプレス成形品からなり、上記円筒部32が内輪22の外径面端部に圧入する取り付けとされている。このとき、円筒部32は、外向きフランジ33を後側として内輪22の端部に圧入される。
【0031】
弾性シール部材34は、環状をなし、芯金35によって補強されている。弾性シール部材34の外周部には芯金35の外周に形成された円筒部35aを覆うようにして嵌合部34aが設けられ、その嵌合部34aが外輪21の内径面端部に形成されたシール取付溝25に圧入されて外周部が外輪21で支持されている。
【0032】
また、弾性シール部材34の内周部には内向き傾斜部34bが設けられている。弾性シール部材34の外側面には、斜め外側方に向く傾斜状のアキシャルリップ36が設けられ、そのアキシャルリップ36の先端部がスリンガ31の外向きフランジ33の内側面に弾性接触して、弾性シール部材34と外向きフランジ33の対向部間をシールしている。
【0033】
一方、弾性シール部材34の傾斜部34bの内周には一対のラジアルリップ37a、37bが設けられている。一対のラジアルリップ37a、37bのそれぞれは、外側方に向けて内向き傾斜し、その先端部がスリンガ31における円筒部32の外径面に弾性接触して、円筒部32と傾斜部34b間をシールしている。
【0034】
弾性シール部材34は外輪21と一体に回転する。その回転時、アキシャルリップ36およびラジアルリップ37a、37bの先端部は外向きフランジ33の内側面および円筒部32の外径面を摺動し、その摺動面の面粗さが粗いと、早期に接触摩耗する可能性がある。
【0035】
そのような不都合の発生を防止するため、スリンガ31における円筒部32の外径面および外向きフランジ33の軸受空間24と対向する内側面の面粗さは他の残りの面粗さより細かくされて平滑面とされている。
【0036】
また、アキシャルリップ36およびラジアルリップ37a、37bのそれぞれは、スリンガ31の外向きフランジ33の内側面および円筒部32の外径面に弾性接触して対向部間をシールするため、柔軟性および耐摩耗性に優れたゴムで形成するのが好ましい。そのようなゴムとして、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムを挙げることができる。
【0037】
図1に示すように、軸受20はプーリ10におけるボス部13の内径面に圧入され、そのボス部13の一端部に設けられた上述の内向きフランジ14によって軸方向に位置決めされる。
【0038】
プーリ軸40は、筒状をなし、その一方の端部にはフランジ41が設けられている。プーリ軸40は軸受20における内輪22の内径面に圧入されて軸受20と一体化され、その内側に挿通されてエンジンブロック等のプーリ取付け対象Aにねじ込まれるボルト42の締め付けにより固定される。
【0039】
図1および図2に示すように、外輪21の内径面によって外周部が支持される弾性シール部材34にアキシャルリップ36および一対のラジアルリップ37a、37bを設け、そのリップ36、37a、37bのそれぞれを内輪22の外径面端部に圧入されたスリンガ31の外向きフランジ33および円筒部32の外径面に弾性接触させることにより、弾性シール部材34はスリンガ31によって保護される。
【0040】
このため、飛来してくる異物が弾性シール部材34に直接衝突するということはなく、異物の衝突によって弾性シール部材34が損傷することはない。
【0041】
また、高圧洗浄水によってエンジンルームが洗浄される際、複数のリップ36、37a、37bのそれぞれに高圧洗浄水が直接に吹き付けられるようなことがないため、スリンガ31に対するリップ36、37a、37bのそれぞれの弾性接触によって高圧洗浄水が軸受内部に浸入するのを確実に防止することができる。
【0042】
このとき、内輪22にリップを接触させてシール性を確保する場合、内輪22のリップ接触面を高精度に仕上げる必要があるが、リップ36、37a、37bのそれぞれはスリンガ31に弾性接触してスリンガ31との対向部間をシールするため、内輪22にシール性を保持するための精度の高い加工を必要とせず、内輪22の加工の容易化を図ることができる。
【0043】
ここで、軸受外輪21の高速回転時、アキシャルリップ36が径方向外方に向けて弾性変形して外向きフランジ33との間にラビリンス隙間を形成する弾性変形能をアキシャルリップ36に付与しておくと、外輪21の高速回転時の回転抵抗を低減することができる。
【0044】
図1では、プーリ10のボス部13内に軸受20を圧入したが、軸受20における外輪21の外径面上にプーリ10を樹脂成形してもよい。このとき、プーリ10と軸受20は一体化されるため、プーリユニットの組立て作業を不要とすることができ、取扱いの容易なプーリユニットを得ることができる。
【0045】
この場合、軸受20と樹脂の成形品からなるプーリ10の結合力を高めるため、図4(a)においては、外輪21の外径面にローレット加工を施してローレット目43を設けている。また、図4(b)においては、外輪21の外径面に周溝44を設け、さらに、図4(c)においては、外輪21の外径面に盲孔からなる凹部45を設けている。
【0046】
図2では、弾性シール部材34にアキシャルリップ36と一対のラジアルリップ37a、37bを設けるようにしたが、図3に示すように、一対のアキシャルリップ36を内外に設け、それぞれのアキシャルリップ36の先端部をスリンガ31の外向きフランジ33に弾性接触させ、弾性シール部材34における内向き傾斜部34bの内径面を円筒部32の外径面に対して微小間隙38をおいて対向させて水の浸入を防止し、かつ、潤滑用グリースの外部漏洩を防止するようにしてもよい。
【0047】
図5は、この発明に係るプーリユニットの他の実施の形態を示す。この例においては、プーリ軸40のフランジ41と軸受20の内輪22とで環状のダストカバー50aの内周部を両側から挟持して、そのダストカバー50aで軸受20の一側面およびボス部13の一端部外周を覆うようにしている。また、ボルト42に設けられた座42aとプーリ軸40の端部とで環状のダストカバー50bの内周部を両側から挟持して、そのダストカバー50bで軸受20の一側面およびボス部13の一端部外周を覆うようにしている。
【0048】
ここで、ダストカバー50a、50bのそれぞれは、外周部にテーパ状周壁51を有し、内周部に上記周壁51と同方向に膨出する膨出部52が設けられている。
【0049】
上記のように、一対のダストカバー50a、50bで軸受20の両側面およびボス部13の両端部の外周部を覆うことにより、弾性シール部材34が損傷するのをより効果的に防止することができると共に、高圧洗浄水の浸入をより効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 プーリ
11 ベルト案内輪
13 ボス部
20 軸受
21 外輪
22 内輪
24 軸受空間
30 シール部材
31 スリンガ
32 円筒部
33 外向きフランジ
34 弾性シール部材
34b 傾斜部
35 芯金
36 アキシャルリップ
37a ラジアルリップ
37b ラジアルリップ
40 プーリ軸
41 フランジ
42 ボルト
43 ローレット目
44 周溝
45 凹部
50a ダストカバー
50b ダストカバー
図1
図2
図3
図4
図5