(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382574
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】サスペンドメタルマスクおよびサスペンドメタルマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20180820BHJP
B41C 1/14 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B41N1/24
B41C1/14
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-104531(P2014-104531)
(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-217641(P2015-217641A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014365
【氏名又は名称】株式会社ソノコム
(74)【代理人】
【識別番号】100092107
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 達也
(72)【発明者】
【氏名】岨野 公一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 哲也
【審査官】
亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−080756(JP,A)
【文献】
特開2005−125547(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0283904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/24
B41C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、少なくとも前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている前記パターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていない前記パターン開口部分及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とでは前記電解めっきの析出量が異なることを特徴とするサスペンドメタルマスク。
【請求項2】
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、少なくとも前記電解めっきが、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていない前記パターン開口部分及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側よりも、前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている前記パターン部分に、より多く析出していることを特徴とする請求項1に記載のサスペンドメタルマスク。
【請求項3】
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、少なくとも前記電解めっきが、前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている前記パターン部分において、厚み方向にはほとんど析出せずに面方向に析出していることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のサスペンドメタルマスク。
【請求項4】
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、前記電解めっきが、前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている前記パターン部分において、厚み方向にはほとんど析出せずに、面方向になだらかに析出していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のサスペンドメタルマスク。
【請求項5】
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクの製造方法において、前記電解めっきを行う際に、前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて前記電解めっきを行うことを特徴とするサスペンドメタルマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンドメタルマスク、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サスペンドメタルマスクとは、SUSやタングステンといった金属製のスクリーンメッシュと、パターン形成されたニッケルやニッケル合金製のメタルマスクとを密着させ、さらにその状態からニッケルめっきやニッケル合金めっきの貼り付けめっきを行うことによって、スクリーンメッシュとメタルマスクを貼り合わせたメッシュ一体型メタルマスクであり、その構造上、スクリーンメッシュに感光性樹脂でパターン形成した従来のスクリーン印刷版と比べると印刷時の耐久性が高く、印刷時の経時変化による寸法伸びが抑制されて寸法安定性に優れているといった特徴がある。サスペンドメタルマスクの製造方法としては、電鋳母型の表面にパターンレジスト膜を形成する工程と、電鋳母型のパターンレジスト膜で覆われていない表面に、マスク基板に相当する電着層を電着形成する工程と、電着層およびパターンレジスト膜の表面上に導電性を有するメッシュを密着重合する工程と、メッシュ方向からめっきをかけてメッシュと電着層を一体接合する工程(貼り付けめっき工程)と、電鋳母型から電着層をメッシュごと剥離する工程とからなるメッシュ一体型メタルマスクの製造方法(例えば特許文献1参照)が存在している。また、サスペンドメタルマスク及びその製造方法としては、四角形枠体にメッシュスクリーンを固定し、前記メッシュスクリーンよりも伸縮性の小さい金属性メッシュスクリーンを前記メッシュスクリーンの略中央部に配し、前記金属製メッシュスクリーンの外周部を前記メッシュスクリーンに固定し、固定しておらず且つ前記金属製メッシュスクリーンと重なっている前記メッシュスクリーン部のみを切除した後、前記金属製メッシュスクリーンとメタルマスクを電気めっき法にて固着(貼り付けめっき)して作製するコンビネーションサスペンドメタルマスク版において、少なくとも前記金属製メッシュスクリーンと前記メタルマスクを固着させる部分のニッケルめっき厚は適宜の厚みで成長させ、それ以外の部分には極薄くしかニッケルめっきを成長させないことで高オープニング率が得られる高オープニング率を有するコンビネーションサスペンドメタルマスク版(例えば、引用文献2参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−183151号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び
図1〜
図6を参照)
【特許文献2】特開2005−125547号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び
図5〜
図8を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サスペンドメタルマスクにおいて、スクリーンメッシュとメタルマスクの密着性は耐久性等に直接かかわってくるため非常に重要である。この密着性はスクリーンメッシュとメタルマスクの接触部分、つまり、スクリーンメッシュの交点部分とメタルマスクとの接触箇所を増やすことによって向上させることができる。
サスペンドメタルマスクは、その特徴でもある高い耐久性と寸法安定性を活かし、例えばコンデンサやインダクタといったチップ型積層セラミック電子部品の内部回路要素膜形成工程や、結晶系シリコン太陽電池の集電電極形成工程等に好適に用いられている。
近年、積層セラミックコンデンサ、積層インダクタ、積層圧電部品等のチップ型積層セラミック電子部品は、ますます軽薄短小化の方向へ推移している。積層セラミック電子部品を製造する場合、複数のセラミックグリーンシートが用意され、これらセラミックグリーンシートが積み重ねられる。特定のセラミックグリーンシート上には、得ようとする積層セラミック電子部品の機能に応じて、コンデンサ、抵抗、インダクタ、バリスタ、フィルタ等を構成するための抵抗膜や、内部電極といった導電膜のような内部回路要素膜がスクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷法で形成されている。前述したように、チップ型積層セラミック電子部品は軽薄短小化が進み、より小型化するとともに、高性能化を実現するためにセラミックグリーンシートの薄層化および多層化が進められている。例えば、積層セラミックコンデンサであれば、セラミックグリーンシートの薄層化および多層化によって、小型化かつ大容量化を図ることができる。しかしながら、セラミックグリーンシートの薄層化および多層化が進めば進むほど、内部回路要素膜の厚みがより大きく影響するようになる。すなわち、セラミックグリーンシート上に内部回路要素膜を形成し、これらセラミックグリーンシートを積み重ねると、内部回路要素膜が形成されている部分と、形成されていない部分とで内部回路要素膜の厚みによる段差が累積するため、セラミックグリーンシートの積み重ねによって得られた積層体をプレスする工程において、圧力がセラミックグリーンシートの主面方向に関して均一に及ぼされず、積層体のデラミネーション(層間剥離)等を引き起こす原因となることがある。また、積層体の表面が部分的に膨らんで平面とはならず、以後の焼成段階において、この膨らみ部分に亀裂が生じることもある。
このような問題を解決するため、セラミックグリーンシート上の内部回路要素膜が形成されていない領域に、セラミックペーストをスクリーン印刷することによって、セラミックグリーンシート上の段差をなくすことが提案されている。内部回路要素膜が形成されていない領域にスクリーン印刷法でセラミックペーストを印刷する際の印刷パターンは、内部回路要素膜を印刷するときに使用するパターンとは全く逆のパターンとなる。つまり、内部回路要素膜部分をマスクするようなパターンのスクリーン印刷版を作製する必要がある。
前述したようにチップ型積層セラミック電子部品は軽薄短小化が進み、内部電極といった内部回路要素膜は非常に小さく細く形成しなければならないため、内部回路要素膜形成用パターンのスクリーン印刷版はそれに倣って非常に小さく細い開口部を複数形成しなければならない。一方、その逆パターンである内部回路要素膜が形成されていない領域にセラミックペーストをスクリーン印刷する場合のパターンは、内部回路要素膜部分をマスクしなければならないため、マスク部分が非常に小さく細い形状となる。よって、セラミックペーストを印刷するためのスクリーン印刷版をサスペンドメタルマスクで作製する場合、メタルマスクとなる部分は非常に小さく細いパターンが島状に複数形成された形状となる。サスペンドメタルマスクはその構造上、スクリーンメッシュの交点部分とメタルマスクとを密着させた状態でめっきを行うことによって、スクリーンメッシュとメタルマスクを貼り付けているので、前述のようにメタルマスクのパターンが非常に小さく細いパターンが島状に複数形成されている場合、スクリーンメッシュとメタルマスクの密着する部分が非常に少なくなるので、印刷を繰り返すことでメタルマスクがスクリーンメッシュから剥がれてしまい、サスペンドメタルマスクの特徴の一つでもある印刷耐久性が十分に得られない場合があった。
そこで本発明は、メタルマスクとスクリーンメッシュの密着性がよい、高い耐久性をもつサスペンドメタルマスクを提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成することができる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りのサスペンドメタルマスクであり、次のようなものである。
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに
前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、少なくとも前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている
前記パターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていない
前記パターン開口部分及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とでは前記電解めっきの析出量が異なる構成である。
【0006】
上記の目的を達成することができる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りのサスペンドメタルマスクであり、次のようなものである。
請求項1に記載の発明に加えて、メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに
前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、少なくとも前記電解めっきが、前記スクリーンメッシ
ュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていない
前記パターン開口部分及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側よりも、前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている
前記パターン部分に、より多く析出している構成である。
【0007】
上記の目的を達成することができる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りのサスペンドメタルマスクであり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに
前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、少なくとも前記電解めっきが、前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている
前記パターン部分において、厚み方向にはほとんど析出せずに面方向に析出している構成である。
【0008】
上記の目的を達成することができる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通りのサスペンドメタルマスクであり、次のようなものである。
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明に加えて、メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに
前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、前記電解めっきが、前記メタルマスクと前
記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている
前記パターン部分において、厚み方向にはほとんど析出せずに、面方向になだらかに析出している構成である。
【0009】
上記の目的を達成することができる本発明の第5発明は、請求項5に記載された通りのサスペンドメタルマスクの製造方法であり、次のようなものである。
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクの製造方法において、前記電解めっきを行う際に、
前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されているパターン部分と、前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いて形成されていないパターン開口部分、及び前記メタルマスクの前記スクリーンメッシュに接していない側とに、電解めっき液の流れの差を作って前記電解めっき液を対流させて前記電解めっきを行う構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るサスペンドメタルマスク及びサスペンドメタルマスクの製造方法は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)サスペンドメタルマスクのスクリーンメッシュとメタルマスク部分の貼り付いている部分が多くなるので、スクリーンメッシュからメタルマスク部分が剥がれにくくなる。
(2)サスペンドメタルマスクのスクリーンメッシュとメタルマスク部分の貼り付いている領域に、優先的にめっきを析出させることができるので、パターン開口部のスクリーンメッシュの開口率を高く保った状態のまま、サスペンドメタルマスクのメタルマスク部分を剥がれにくくすることができる。
(3)スクリーンメッシュとメタルマスク部分の貼り付け部分では、厚み方向にはほとんど電解めっきが析出せず、メタルマスクの面方向に電解めっきが析出するので、なだらかな曲線を描くようにめっきが成長する。よって、印刷時のスキージング時にかかる抵抗を抑えることができる。
(4)スクリーンメッシュとメタルマスク部分の貼り付け部分では、厚み方向にはほとんど電解めっきが析出せず、メタルマスクの面方向に電解めっきが析出するので、なだらかな曲線を描くようにめっきが析出する。よって、印刷時のペーストの目詰まりを抑制することができる。
(5)従来のサスペンドメタルの製作工程に新たに電解めっき工程を加えるだけなので、製造コストを極力抑えることができる。
(6)スクリーンメッシュとメタルマスク部分が剥がれにくくなるので、洗浄時にウェスなどで引っ掻いて微細パターン部分のメタルマスク部分が剥がれるのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
メタルマスクとスクリーンメッシュとを貼り付けめっきで貼り付けて得られたサスペンドメタルマスクに、さらに電解めっきを行って得られるサスペンドメタルマスクにおいて、少なくとも前記メタルマスクと前記スクリーンメッシュが貼り付いて形成されている領域と前記スクリーンメッシュに前記メタルマスクが貼り付いていない領域とでは前記電解めっきの析出量が異なるサスペンドメタルマスクである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のサスペンドメタルマスクの一実施例を示すもので、(a)は従来技術で作製したものを示す要部概略断面図、(b)は本発明のサスペンドメタルマスクを示すもので、(a)のサスペンドメタルマスクにさらに電解めっきを析出させたものを示す要部概略断面図である。
【
図2】本発明のサスペンドメタルの一実施例を示すもので、(a)は従来技術のサスペンドメタルマスクを示す概略拡大正面図、(b)は本発明のサスペンドメタルマスクを示すもので、(a)のサスペンドメタルマスクにさらに電解めっきを析出させたものを示す概略拡大正面図である。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明のサスペンドメタルマスクの一実施例を図面に基づいて説明する。
本発明のサスペンドメタルマスクは、スクリーンメッシュにメタルマスクを貼り付けめっき8で一体化するという公知の方法で作製されたサスペンドメタルマスクに再度電解めっきを析出させることにより、前記サスペンドメタルマスクの開口パターン部分4のスクリーンメッシュの開口率をほとんど変えないまま、スクリーンメッシュ部分2とメタルマスク部分3とをより剥がれにくくしたことを特徴としている。
例えば公知の方法で図示しない四角形枠体に張架して作製されたサスペンドメタルマスク(
図1(a)参照)を、メタルマスク部分3が貼り付いていない側、つまりスクリーンメッシュ側2を電解めっき浴の陽極側に向けて電解めっき浴の中に浸漬させる。
次いで、前記サスペンドメタルマスク1を陰極として、適宜の電流密度で電解めっきを前記サスペンドメタルマスク1に析出させる。この時に電解めっき浴中のめっき液が対流するような処理を行いつつ、電解めっきを析出させる(
図1(b)参照)。
めっき液を対流させるにはどのような方法を用いても構わない。例えば、遮蔽板のような治具を用いる方法、電解めっき浴内で部分的にめっき液の撹拌を行う方法、電解めっき浴内に積極的にめっき液の流れを作る方法などを挙げることができる。
【0014】
図1の(a)(b)を比較すれば理解できるように、本発明ではサスペンドメタルマスクのスクリーンメッシュ2にメタルマスク3が貼り付いていない領域、すなわち印刷時に印刷物が透過するパターン開口部分4のめっき液の流れを、スクリーンメッシュ2とメタルマスク3が貼り付いている部分、すなわち印刷時に印刷物が透過しないパターン部分のめっき液の流れよりも良くすることによって、パターン開口部分4とパターン部分とにめっき液の流れの差を作ることで、電解めっきの析出量を異ならせることができる。
つまり、めっき液を対流させることで、スクリーンメッシュ2のみの部分よりもスクリーンメッシュ2とメタルマスク3が貼り付いている部分に優先的に電解めっきを析出させることができる(電解めっきが厚く析出する領域5)。一方、スクリーンメッシュ2のみの部分であるパターン開口部分4はめっき液が流れ易くなるので、ほとんど電解めっきが析出しない(電解めっきが薄く析出する領域6)。
なお、スクリーンメッシュ2とメタルマスク部分3が貼り付いている領域における、スクリーンメッシュ2とメタルマスク部分3が接していない側のスクリーンメッシュ2の表面もめっき液が流れやすくなるので、電解めっきはほとんど析出しない(電解めっきが薄く析出する領域6)。
また、メタルマスク部分3のスクリーンメッシュ2に面していない側も同様にめっき液が流れ易くなるので、電解めっきはほとんど析出しない(電解めっきが薄く析出する領域6)。
つまり、めっき液を対流させることによって、パターン開口部4のスクリーンメッシュ2には電解めっきがほとんど析出せず、パターン部であるスクリーンメッシュ2とメタルマスク3が貼り付いてなる領域においては、厚み方向にはほとんど電解めっきが析出せず、メタルマスクの面方向に電解めっきを析出する。
よって、パターン部であるスクリーンメッシュ2とメタルマスク3が貼り付いてなる領域においては、スクリーンメッシュ部分2からメタルマスク部分3に向かってなだらかな曲線を描くように面方向が析出する。
【0015】
以上のように、本発明ではサスペンドメタルマスクのパターン開口部4のスクリーンメッシュの開口率、およびサスペンドメタルマスクの総厚をほとんど変えない状態で、従来のサスペンドメタルマスクよりもスクリーンメッシュ2とメタルマスク部分3とが剥がれにくいサスペンドメタルマスク1´を得ることができる。
例えば、通常のサスペンドメタルマスク1が形成するパターン開口部4のスクリーンメッシュ2の線径が36μm、スクリーンメッシュ2とメタルマスク部分3が貼り付いているスクリーンメッシュ2の線径が37μmだとすると、本発明のサスペンドメタルマスクに、さらにめっきを析出させたサスペンドメタルマスク1´(以下、パワーサスペンドメタルという)が形成するパターン開口部4のスクリーンメッシュ2の線径は39μm、スクリーンメッシュ2とメタルマスク部分3が貼り付いているパターン部分のスクリーンメッシュ2の線径が59μmというようになる(
図2参照)。
このようにスクリーンメッシュ部2とメタルマスク部分3が貼り付いている領域に、電解めっきを優先的に析出させることができるので、パターン開口部4のスクリーンメッシュ2の開口率を確保したまま、サスペンドメタルマスク1のスクリーンメッシュ2とメタルマスク部分3を剥がれにくくすることができる。
また、パワーサスペンドメタルマスク1´のスクリーンメッシュ2とメタルマスク部分3が貼り付いている領域は、厚み方向にはほとんど電解めっきが析出せず、メタルマスク3の面方向に電解めっきが析出するので、サスペンドメタルマスク1の総厚をほとんど変えずになだらかな曲線を描くようにめっきが析出する。よって、スクリーン印刷時のペーストの目詰まりを抑制できる。
【0016】
なお、本発明に使用するめっき浴に関しては、電解めっき浴ならば、特に制限はない。
また、本発明に使用するスクリーンメッシュやメタルマスクに関しても、導電性を有していればどのような加工や形状を施されていてもよい。また本発明は、コンビネーション化されたサスペンドメタルマスクや、枠体に張架されていないサスペンドメタルマスクにおいても使用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の特徴である二度のめっき浴によるめっき析出は、サスペンドメタルマスクだけではなく、スクリーンメッシュを使用したさまざまなスクリーン印刷版に利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1・・・・サスペンドメタルマスク
1´・・・・サスペンドメタルマスク1にさらに電解めっきを施したサスペンドメタルマスク
2・・・・スクリーンメッシュ部
3・・・・メタルマスク部
4・・・・パターン開口部(スクリーンメッシュにメタルマスクが貼り付いて形成されていない領域)
5・・・・電解めっきが厚く析出する領域
6・・・・電解めっきが薄く析出する領域
7・・・・メタルマスクとスクリーンメッシュが貼り付いて形成されている領域
8・・・・貼り付けめっき