特許第6382584号(P6382584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382584原子力プラントおよび原子炉建屋内ガス処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382584
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】原子力プラントおよび原子炉建屋内ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/00 20060101AFI20180820BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20180820BHJP
   G21D 3/04 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G21C9/00 100
   G21C13/00 E
   G21D3/04 Q
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-119267(P2014-119267)
(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2015-232492(P2015-232492A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭司
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−246098(JP,A)
【文献】 特開2002−257970(JP,A)
【文献】 特開2012−127915(JP,A)
【文献】 特開平04−104098(JP,A)
【文献】 特開2005−043131(JP,A)
【文献】 米国特許第5227127(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00−9/06
G21D 3/04−3/08
G21C 13/00
G21F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心と、
前記炉心を収容する原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器を収納する原子炉格納容器と、
前記原子炉格納容器の格納容器ヘッドと、
前記原子炉格納容器の少なくとも一部を囲む原子炉建屋と、
を有する原子力プラントであって、
前記格納容器ヘッドの周囲を取り囲み上方に延びた側壁と、
前記側壁の下端に接続して前記原子炉格納容器に接続する底部と、
前記格納容器ヘッド、前記側壁および前記底部により形成される原子炉ウェルと、
前記原子炉ウェルの上部に設けられた原子炉ウェル上蓋と、
前記側壁の上端に接合し前記側壁の周囲に設けられた運転床と、
前記運転床の周囲および上部を取り囲んで運転床エリアを形成して前記原子炉建屋の一部をなす運転床エリア壁と、
前記原子炉建屋内のガスを吸引する吸気配管と、前記吸気配管から吸引したガスを駆動する排気ファンと、前記吸気配管から吸引したガスを前記排気ファンを介して前記原子炉建屋の外側の環境に放出する非常用ガス処理系排気管と、前記吸気配管と前記非常用ガス処理系排気管との間に配置されて前記吸気配管から吸引したガスを電力で加熱する加熱ヒータと、前記加熱ヒータで加熱されたガスをろ過して前記非常用ガス処理系排気管に送るフィルタと、を備えた非常用ガス処理系と、
前記原子炉ウェル内に開口する第1の端部と前記運転床エリアの外部に開口する第2の端部とを備えた原子炉ウェル排気管を備えて、過酷事故時に、前記原子炉ウェル内のガスを、前記運転床エリア内に放出することなく前記環境に排気するための、原子炉ウェル排気部と、
を有することを特徴とする原子力プラント。
【請求項2】
前記原子炉ウェル排気部は前記原子炉ウェル排気管上に設けられた原子炉ウェル排気管隔離弁をさらに備え
前記原子炉ウェル排気管は前記原子炉ウェル側壁を貫通するものであって、
前記第2の端部は前記環境に開口すること、
を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項3】
前記原子炉ウェル排気部は
前記原子炉ウェル排気管上に設けられた原子炉ウェル排気管隔離弁と、
前記原子炉ウェル排気管上に設けられて、当該原子炉ウェル排気管をその途中で接離可能に接続するフランジと、
さらに備え
前記原子炉ウェル排気管は前記原子炉ウェル上蓋を貫通するものであって、
前記第2の端部は前記環境に開口すること、
を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項4】
前記原子炉ウェル排気部は
前記原子炉ウェル排気管上に設けられた原子炉ウェル排気管隔離弁と、
前記原子炉ウェル排気管上に設けられて、当該原子炉ウェル排気管をその途中で接離可能に接続するフランジと、
さらに備え、
前記原子炉ウェル排気管は前記原子炉ウェル上蓋を貫通するものであって、
前記第2の端部は前記非常用ガス処理系排気管に接続されていること、
を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項5】
前記非常用ガス処理系排気管の外周を取り囲んで上下方向に延び、上端が開放された主排気筒をさらに有し、
前記原子炉ウェル排気部は
前記原子炉ウェル排気管上に設けられた原子炉ウェル排気管隔離弁と、
前記原子炉ウェル排気管上に設けられて、当該原子炉ウェル排気管をその途中で接離可能に接続するフランジと、
さらに備え
前記第2の端部は前記主排気塔内で前記非常用ガス処理系排気管の外側に開放されていること、
を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項6】
前記側壁の外側に、内部にプール水面が形成されて、そのプール水面より上方で排気口により前記原子炉建屋の外部の環境に開放された静的冷却系プールが形成されており、
前記第2の端部は前記プール水面より上方で開口すること、
を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項7】
前記原子炉ウェル排気管上に設けられた原子炉ウェル排気管隔離弁をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の原子力プラント。
【請求項8】
前記側壁の外側に、内部にプール水面が形成されて、そのプール水面より上方で排気口により前記原子炉建屋の外部の環境に開放された静的冷却系プールが形成されており、
前記第2の端部は前記プール水面より上方で開口し、
前記原子炉ウェル排気部は
前記原子炉ウェル排気管上に設けられた原子炉ウェル排気管隔離弁と、
前記原子炉ウェル排気管上に設けられて、当該原子炉ウェル排気管をその途中で接離可能に接続するフランジと、
を備えること、を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項9】
前記吸気配管は、前記運転床エリアの上部のガスを吸引する運転床エリア上部開口を備えること、を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の原子力プラント。
【請求項10】
前記原子炉格納容器および前記原子炉建屋を貫通する貫通配管と、
前記原子炉格納容器の外側かつ前記原子炉建屋内で前記貫通配管上で、互いに直列に設けられた二つの貫通配管隔離弁と、
前記二つの貫通配管隔離弁の間で前記貫通配管から分岐して前記吸気配管に接続された漏洩抑制配管と、
をさらに備えること、を特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の原子力プラント。
【請求項11】
前記漏洩抑制配管上に設けられて前記貫通配管側から前記吸気配管側へのガスの流れを促進する漏洩抑制ファンをさらに有すること、を特徴とする請求項10に記載の原子力プラント。
【請求項12】
過酷事故時に前記非常用ガス処理系に給電する代替電源、
をさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の原子力プラント。
【請求項13】
原子炉圧力容器を収納する原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器の少なくとも一部を囲む原子炉建屋と、
を有する原子力プラントの原子炉建屋内ガス処理システムであって、
前記原子力プラントは、
前記原子炉格納容器の格納容器ヘッドの周囲を取り囲み上方に延びた側壁と、
前記側壁の下端に接続して前記原子炉格納容器に接続する底部と、
前記格納容器ヘッド、前記側壁および前記底部により形成される原子炉ウェルと、
前記原子炉ウェルの上部に設けられた原子炉ウェル上蓋と、
前記側壁の上端に接合し前記側壁の周囲に設けられた運転床と、
前記運転床の周囲および上部を取り囲んで運転床エリアを形成して前記原子炉建屋の一部をなす運転床エリア壁と、
を有し、
当該原子炉建屋内ガス処理システムは、
前記原子炉建屋内のガスを吸引する吸気配管と、前記吸気配管から吸引したガスを駆動する排気ファンと、前記吸気配管から吸引したガスを前記排気ファンを介して前記原子炉建屋の外側の環境に放出する非常用ガス処理系排気管と、前記吸気配管と前記非常用ガス処理系排気管との間に配置されて前記吸気配管から吸引したガスを電力で加熱する加熱ヒータと、前記加熱ヒータで加熱されたガスをろ過して前記非常用ガス処理系排気管に送るフィルタと、を備えた非常用ガス処理系と、
過酷事故時に前記非常用ガス処理系に給電する代替電源と、
前記原子炉ウェル内に開口する第1の端部と前記運転床エリアの外部に開口する第2の端部とを備えた原子炉ウェル排気管を備えて、過酷事故時に、前記原子炉ウェル内のガスを、前記運転床エリア内に放出することなく前記環境に排気するための、原子炉ウェル排気部と、
を有すること、を特徴とする原子炉建屋内ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子力プラントおよびその原子炉建屋内ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子力発電所の原子炉建屋内ガス処理システムについて、図8図9によりその概要を説明する。
【0003】
図8は、ABWRと呼ばれる従来のプラントの例を示している。図8において、炉心1は、原子炉圧力容器2の内部に収納されている。原子炉圧力容器2はさらに、原子炉格納容器3の内部に収納されている。原子炉格納容器3の内部は、原子炉圧力容器2を収納するドライウェル4と、ウェットウェル5とに区分けされている。ウェットウェル5は内部に圧力抑制プール6を貯えていて、圧力抑制プール6の上部にはウェットウェル気相部7が形成されている。
【0004】
原子炉格納容器3の雰囲気は、沸騰型軽水炉の場合には、窒素により置換され酸素濃度を低く制限されている。原子炉格納容器3は、材質により、一般に鋼製原子炉格納容器、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)、スチール・コンクリート複合構造(SC造)原子炉格納容器(SCCV)などに類別されている。RCCVの場合には、内面に鋼製ライナーが張られている。図では、ABWRで使用されるRCCVの例を示している。
【0005】
原子炉格納容器3の頂部は、鋼製の格納容器ヘッド8が設けられている。格納容器ヘッド8は、格納容器ヘッドフランジ9で原子炉格納容器3と接合されており、燃料交換時には取り外しができるようになっている。格納容器ヘッド8の外周部は、原子炉ウェル10と呼ばれる空間になっている。原子炉ウェル10は、格納容器ヘッド8の周囲を取り囲み上に延びた原子炉ウェル側壁11と、原子炉ウェル側壁11の下端に接続し原子炉ウェル側壁11を支持する原子炉ウェル底部12と、格納容器ヘッド8と、遮蔽プラグ13とにより形成される空間である。原子炉ウェル底部12は、RCCVの場合は原子炉格納容器3の一部を構成しているが、鋼製原子炉格納容器の場合には鋼製原子炉格納容器の周囲を取り囲む遮蔽コンクリートの一部を構成している。原子炉ウェル10の水平断面は一般に円形であるが、楕円や多角形などであっても良い。
【0006】
原子炉ウェル10の上部には遮蔽プラグ13が設置されている。遮蔽プラグ13は主にコンクリート製で、数個のブロック13aに分かれている。これは、1個のブロック13aの重量を軽減するためである。遮蔽プラグ13の機能は、原子炉が運転中に発生する放射線を遮蔽することである。そのため、ブロック13aとブロック13aの接合部は段状になっていて、放射線がブロック間の隙間13bを通り上部に漏洩しないようになっている。ブロック13aとブロック13aの接合部の隙間13bは、たとえば1cm程度である。そのため、原子炉が運転を開始して原子炉ウェル10内の空気が暖められて膨張すると、隙間13bを通り空気の一部が上部に抜けることができるようになっている。
【0007】
原子炉ウェル側壁11の上端に接合して原子炉ウェル10の外側に運転床14が設けられている。運転床14の上部は、原子炉建屋15の一部をなす運転床エリア壁14cによって覆われ、原子炉建屋15内空間の一部である運転床エリア14aが形成されている。
【0008】
原子炉圧力容器2には主蒸気配管や給水配管などの主要な貫通配管が接続されている。これらの配管は、原子炉格納容器3を貫通し、さらに原子炉建屋15を貫通してタービン建屋内のタービンおよび主復水器に接続されている(図示せず。)。これらの主蒸気配管や給水配管などの主要配管をまとめて貫通配管16として図示する。
【0009】
貫通配管16には、原子炉格納容器3の壁面に近接して第1隔離弁(貫通配管隔離弁)17および第2隔離弁(貫通配管隔離弁)18が設置されている。第1隔離弁17と第2隔離弁18は、それぞれ原子炉格納容器3の壁面の内部と外部に設置されている例を図示しているが、2弁とも原子炉格納容器3の外部に設置される場合もある。
【0010】
冷却材喪失事故等の設計基準事故が発生し放射性物質が原子炉格納容器3の内部に放出された場合には、これらの隔離弁が自動的に閉鎖して、放射性物質が貫通配管16を通って外部に漏洩することを極力なくす設計となっている。しかし、隔離弁には設計で定められた設計漏洩率があり、ごく一部の放射性物質は外部に漏洩する。また、原子炉格納容器3にも設計漏洩率(たとえば、ABWRの例では0.4%/d)が定められており、内部の放射性物質のごく一部は原子炉建屋15内に漏洩する。
【0011】
原子炉建屋15内には非常用ガス処理系(SGTS:Stand-by Gas Treatment System)19が設けられていて、原子炉建屋15内に漏洩した放射性物質を原子炉建屋15内の雰囲気とともに吸引しフィルタで放射性物質を除去した後、主に浄化された空気を環境に高所放出するように設計されている。非常用ガス処理系19は、多数に枝分かれした吸気配管20と、排気ファン21と、フィルタ(フィルタトレイン)22と、非常用ガス処理系排気管23と、加熱ヒータ60とを有している。加熱ヒータ60はフィルタトレイン22の上流側に配置されている。これら以外にも隔離弁を有しているが、図示は省略している。
【0012】
フィルタトレイン22の内部には、活性炭を充てんしたチャコールフィルタが収納されており、このチャコールフィルタでヨウ化セシウム(CsI)等の放射性物質を、たとえば99%以上の効率で除去する性能を有している。しかし、チャコールフィルタは湿分があると性能が劣化してしまう。そのために加熱ヒータ60で雰囲気を事前に加熱して湿分を制限する必要がある。非常用ガス処理系排気管23は主排気筒24の内部に導かれ上端からガスを排気できるようになっている。
【0013】
非常用ガス処理系排気管23は主排気筒24の内部で上方に延び、非常用ガス処理系排気管23と主排気筒24とで二重筒状をなしている。
【0014】
非常用ガス処理系19の排気ファン21、加熱ヒータ60、隔離弁は、作動に電源を必要とし、設計基準事故時には非常用DG25から給電されるようになっている。
【0015】
しかし、福島第一発電所の事故の際には地震および津波により外部電源が喪失するとともに非常用DG(ディーゼルエンジン発電機)25もすべて故障して交流電源の供給を全く受けることができなかった(このような状態をステーション・ブラックアウト(SBO)という。)。このため非常用ガス処理系19は作動することができなかった。また、炉心1の冷却が十分に行われず炉心溶融事故が発生した。溶融した炉心燃料の被覆管が高温の水と反応して金属水反応により大量の水素が発生し原子炉格納容器3の内部を過圧した。
【0016】
このような過酷事故が発生すると、原子炉格納容器3の冷却も不十分となり、原子炉格納容器3内の雰囲気が高温となり、格納容器ヘッドフランジ9が損傷したものと考えられている。これにより、水素が格納容器ヘッドフランジ9から原子炉ウェル10に漏洩し、さらに、遮蔽プラグ13の隙間13bをとおり運転床エリア14a内に漏洩したものと考えられている。
【0017】
この他にも、貫通配管16の貫通部やハッチ(図示せず。)部が高温により劣化して水素が原子炉建屋15の内部に漏洩し、その後、この水素が浮力で上昇して、運転床エリア14a内に蓄積したものと考えられている。運転床14の一部には階段等の開口部があり(図示せず。)、水素は、そこを通り運転床エリア14aに移行することが可能である。その後、運転床エリア14a内の水素が爆轟し原子炉建屋15が損壊した。
【0018】
このようなことを防止するため、原子炉ウェル10に外部から注水を行うための外部注水配管26を設け、消防自動車27等から過酷事故時に注水を行い、格納容器ヘッドフランジ9を冷却することができるように、新たな対策が取られている。また、運転床エリア14aに蓄積した水素を外部の環境に放出できるように、原子炉建屋15の天井部に新たに水素ベント設備28を設ける対策が取られている。
【0019】
以上の説明ではABWRの原子炉格納容器3と原子炉建屋15に基づいて説明したが、これらの基本的特徴はABWR以前の従来のBWR/2、BWR/3、BWR/4、BWR/5にも共通している。
【0020】
次に、図9により、静的安全系を使用する従来の静的安全BWRの例について説明する。従来の静的安全BWRでは、原子炉格納容器3の上部に冷却水を蓄えた静的冷却系プール30a、30bが設けられている。静的冷却系プール30a、30bは、連通配管(図示せず。)により互いに連結され、冷却水が互いに連通していることが多い。静的冷却系プール30a、30bの内部には、静的格納容器冷却系熱交換器(PCCSHx)31aおよび原子炉隔離時冷却系熱交換器(ICHx)31bが設けられている。PCCSHx31aは、事故時に原子炉格納容器3内に放出された蒸気を冷却し、凝縮水を原子炉格納容器3内に再び還流する。ICHx31bは、原子炉隔離時および事故時に原子炉圧力容器2内の蒸気を冷却し、凝縮水を原子炉圧力容器2内に再び還流する。
【0021】
これらのPCCSHx31aおよびICHx31bが蒸気を冷却する際に発生する熱は、静的冷却系プール30a、30b内の冷却水に伝達され、一定時間が経過すると、冷却水が高温化して沸騰を開始する。冷却水が沸騰して発生する蒸気は、静的冷却系プール30a、30bの上部に設けられた排気口32a、32bから外部の環境中に放出される。排気口32a、32bの先端には、外部からの虫等の侵入を防止するため虫よけの網(図示せず。)が設けられることが多い。
【0022】
静的冷却系プール30a、30bの上部は運転床14により覆われている。原子炉ウェル10の内部には、通常運転中に常に遮蔽水33が蓄えられている。遮蔽水33は遮蔽プラグ13と同等の放射線の遮蔽効果があるため、遮蔽プラグ13(図8参照)は設置されていない。運転床14の上部は運転床エリア14aとなっており、運転床エリア14aの上部を覆う原子炉建屋15の部分(運転床エリア壁)は図示のようにドーム状になっている場合もある。この場合は運転床エリア壁14cを運転床ドーム14bと呼ぶ。原子炉建屋15は、運転床ドーム14bおよび原子炉格納容器3の外部に原子炉格納容器3の側壁部を取り囲むように設置されることが多い。この場合は、図示のように運転床エリア14aは、原子炉格納容器3の側壁部を取り囲む原子炉建屋15の部分から独立した空間を構成している。
【0023】
非常用ガス処理系19の吸気配管20は多数に分岐していて、運転床ドーム14b内側の運転床エリア14aからも、その他の原子炉建屋15内からも雰囲気を吸引できる。
【0024】
静的安全BWRの他の例としては、原子炉格納容器3と静的冷却系プール30a、30bと運転床エリア14aをABWRの原子炉建屋15(図8参照)と同じ構造の原子炉建屋に収納するタイプのものもある(図示せず)。その場合でも静的冷却系プールの排気口32a、32bの出口は原子炉建屋15の外部の環境に導かれる。なお、ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor)のように、安全系が静的安全系のみで構成される静的安全BWRの場合には、非常用ガス処理系そのものを備えていない場合もある。
【0025】
なお、原子炉事故時の原子炉建屋内ガス処理システムの例として、たとえば特許文献1に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2005−43131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従来のBWRでは、過酷事故時に格納容器ヘッドフランジ9、貫通配管16に設けられた第1隔離弁17および第2隔離弁18などから水素が漏えいして運転床エリア14aに充満する恐れがあった。過酷事故時に水素の爆轟を防止する目的で原子炉建屋15の天井部に設けられた水素ベント設備28を開にすると、水素とともに原子炉格納容器3から漏洩した放射性物質も環境に放出されてしまう。したがって、被ばく低減の観点からは、できるだけ水素ベント設備28を開にしないことが望ましい。また、貫通配管16を通り隔離弁17、18から漏洩した放射性物質が原子炉建屋15の外部に直接漏洩する可能性があった。
【0028】
過酷事故時にも非常用ガス処理系19が運転できれば、ヨウ化セシウム(CsI)等の放射性物質をフィルタ(フィルタトレイン)22により99%以上の効率で除去し、残る放射性希ガス等の放射性物質と水素を主排気筒24から高所放出することができる。このように過酷事故時に運転床エリア14aに漏洩してきた水素は非常用ガス処理系19により放射性物質を除去しつつ放出することが望ましい。
【0029】
また、貫通配管16の隔離弁17、18を通り原子炉建屋15の外部に漏洩する放射性物質も非常用ガス処理系19により放射性物質を除去することが望ましい。そのためには過酷事故時にも非常用ガス処理系19が運転可能なように代替電源から電源供給を行う必要がある。
【0030】
しかし、一方で、消防自動車27等から原子炉ウェル10に外部注水をして格納容器ヘッドフランジ9を冷却すると、注入した水が格納容器ヘッド8からの熱で沸騰して、水蒸気が遮蔽プラグ13の隙間13bから漏洩して運転床エリア14a内に充満する。この水蒸気を非常用ガス処理系19が吸気配管20から吸引すると、加熱ヒータ60の処理容量を超えるため、蒸気がフィルタトレイン22に移行して、フィルタトレイン22の放射性物質を除去する機能が喪失してしまう。
【0031】
また、従来の静的安全BWRの場合には、過酷事故時に、遮蔽水33が格納容器ヘッド8からの熱で沸騰すると、蒸気が運転床エリア14a内に充満してしまい、同じように非常用ガス処理系19が放射性物質の除去機能を喪失してしまう。
【0032】
そこで本発明の実施形態においては、過酷事故時に、原子炉ウェル内の水が沸騰して発生する蒸気が運転床エリアに充満することなく、非常用ガス処理系を運転可能とし、原子炉建屋内の放射性物質を処理しつつ原子炉建屋内のガスを環境に放出するとともに、貫通配管を通り原子炉建屋の外部に漏洩する放射性物質を非常用ガス処理系で処理可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記の課題を解決するため、本発明の実施形態に係る原子力プラントは、炉心と、前記炉心を収容する原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器を収納する原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器の格納容器ヘッドと、前記原子炉格納容器の少なくとも一部を囲む原子炉建屋と、を有する原子力プラントであって、前記格納容器ヘッドの周囲を取り囲み上方に延びた側壁と、前記側壁の下端に接続して前記原子炉格納容器に接続する底部と、前記格納容器ヘッド、前記側壁および前記底部により形成される原子炉ウェルと、前記原子炉ウェルの上部に設けられた原子炉ウェル上蓋と、前記側壁の上端に接合し前記側壁の周囲に設けられた運転床と、前記運転床の周囲および上部を取り囲んで運転床エリアを形成して前記原子炉建屋の一部をなす運転床エリア壁と、前記原子炉建屋内のガスを吸引する吸気配管と、前記吸気配管から吸引したガスを駆動する排気ファンと、前記吸気配管から吸引したガスを前記排気ファンを介して前記原子炉建屋の外側の環境に放出する非常用ガス処理系排気管と、前記吸気配管と前記非常用ガス処理系排気管との間に配置されて前記吸気配管から吸引したガスを電力で加熱する加熱ヒータと、前記加熱ヒータで加熱されたガスをろ過して前記非常用ガス処理系排気管に送るフィルタと、を備えた非常用ガス処理系と、前記原子炉ウェル内に開口する第1の端部と前記運転床エリアの外部に開口する第2の端部とを備えた原子炉ウェル排気管を備えて、過酷事故時に、前記原子炉ウェル内のガスを、前記運転床エリア内に放出することなく前記環境に排気するための、原子炉ウェル排気部と、を有することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の実施形態に係る原子炉建屋内ガス処理システムは、原子炉圧力容器を収納する原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器の少なくとも一部を囲む原子炉建屋と、を有する原子力プラントの原子炉建屋内ガス処理システムであって、前記原子力プラントは、前記原子炉格納容器の格納容器ヘッドの周囲を取り囲み上方に延びた側壁と、前記側壁の下端に接続して前記原子炉格納容器に接続する底部と、前記格納容器ヘッド、前記側壁および前記底部により形成される原子炉ウェルと、前記原子炉ウェルの上部に設けられた原子炉ウェル上蓋と、前記側壁の上端に接合し前記側壁の周囲に設けられた運転床と、前記運転床の周囲および上部を取り囲んで運転床エリアを形成して前記原子炉建屋の一部をなす運転床エリア壁と、を有し、当該原子炉建屋内ガス処理システムは、前記原子炉建屋内のガスを吸引する吸気配管と、前記吸気配管から吸引したガスを駆動する排気ファンと、前記吸気配管から吸引したガスを前記排気ファンを介して前記原子炉建屋の外側の環境に放出する非常用ガス処理系排気管と、前記吸気配管と前記非常用ガス処理系排気管との間に配置されて前記吸気配管から吸引したガスを電力で加熱する加熱ヒータと、前記加熱ヒータで加熱されたガスをろ過して前記非常用ガス処理系排気管に送るフィルタと、を備えた非常用ガス処理系と、過酷事故時に前記非常用ガス処理系に給電する代替電源と、前記原子炉ウェル内に開口する第1の端部と前記運転床エリアの外部に開口する第2の端部とを備えた原子炉ウェル排気管を備えて、過酷事故時に、前記原子炉ウェル内のガスを、前記運転床エリア内に放出することなく前記環境に排気するための、原子炉ウェル排気部と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の実施形態によれば、過酷事故が発生した場合であっても、非常用ガス処理系を運転し、原子炉格納容器から漏洩する放射性物質を処理しつつ原子炉建屋内の水素を安全に環境に放出することが可能になる。また、原子炉格納容器の貫通配管から放射性物質が隔離弁を漏洩して原子炉建屋の外部に漏洩することを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第1の実施形態を示す立面図。
図2】本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第2の実施形態を示す立面図。
図3】本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第3の実施形態を示す立面図。
図4】本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第4の実施形態を示す立面図。
図5】本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第5の実施形態を示す立面図。
図6】本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第6の実施形態を示す立面図。
図7】本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第7の実施形態を示す立面図。
図8】従来の原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの例を示す立面図。
図9】従来の原子炉建屋内ガス処理システムを備えた静的安全原子力プラントの例を示す立面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態を図1図7に基づいて説明する。なお、図1から図7においては、図8および図9と同一または類似の部分には同一符号を付して、重複する部分の説明は省略し要部のみを説明する。
【0039】
[第1の実施形態]
図1により、本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第1の実施形態を説明する。
【0040】
本発明の第1の実施形態ではABWRの原子炉格納容器と原子炉建屋を使用しているが、原子炉格納容器および原子炉建屋の型式はこれらに限定されない。ABWRの原子炉格納容器および原子炉建屋と共通の特性を有するBWR/2、BWR/3、BWR/4、BWR/5の原子炉格納容器および原子炉建屋に普遍的に適用される。
【0041】
第1の実施形態においては、遮蔽プラグ13の上部に原子炉ウェル上蓋40が設置される。原子炉ウェル上蓋40の材質は、蒸気を遮断する密閉性を有し、蒸気の高温に耐えうる素材を使用する。たとえば、鉄、アルミニウム、耐熱ゴム、耐熱樹脂などが使用できる。
【0042】
原子炉ウェル10と原子炉建屋15の外側とを連絡する原子炉ウェル排気部が形成されている。原子炉ウェル排気部は、原子炉ウェル排気管41と原子炉ウェル排気管隔離弁42とを含む。原子炉ウェル排気管41は、一端(第1の端部)411が原子炉ウェル10の内部に開口し、原子炉ウェル側壁11を貫通し、他端(第2の端部)412が原子炉建屋15の外部に延びている。原子炉ウェル排気管41の途中に原子炉ウェル排気管隔離弁42が設けられている。原子炉ウェル排気管隔離弁42は開閉可能な全ての弁が使用できるが、図1では、現場で手動操作も可能なハンドルの付いた遠隔作動電動弁を使用している。
【0043】
原子炉ウェル排気管隔離弁42に給電する代替電源43が設けられる。代替電源43は、空冷ディーゼル発電機(DG)あるいはガスタービン発電機(GTG)などが用いられる。代替電源43は、図1では原子炉建屋15の上に設置されているが、この設置場所に限定されない。たとえば、高台に設置、あるいは、津波および地震等の自然災害に対して防護された建屋の内部に設置してもよい。また、恒設の設備である必要はなく、可搬式設備として高台等に設けた倉庫内に保管しておいてもよい。この場合は、事故時に搬送してプラグを接続して給電を行う。代替電源43から非常用ガス処理系19にも給電を行う。
【0044】
貫通配管16の第2隔離弁18の外側に第3隔離弁(貫通配管隔離弁)44を設ける。第3隔離弁44は電動弁を用いる。第3隔離弁44の電源は代替電源43から給電する。あるいは、別途、直流電源を設ける。
【0045】
漏洩抑制配管45は、一端(第1の端部)451が、貫通配管16の第2隔離弁18と第3隔離弁44との間の部分である隔離弁間配管部44aから分岐し、他端(第2の端部)452が、非常用ガス処理系19の吸気配管20に接続される。図では、漏洩抑制配管45は原子炉格納容器3を横断するように描かれているが、円筒状の原子炉格納容器3の外周部の原子炉建屋15の内部に設けられている。漏洩抑制配管45の途中に漏洩抑制ファン46を設ける。漏洩抑制ファン46は吸気性を向上する目的で設置するが、非常用ガス処理系19の排気ファン21が大容量であるため必要としない場合もある。
【0046】
このように構成される第1の実施形態においては、地震や津波によって長期SBOが発生して炉心溶融事故に至った場合でも、原子炉ウェル排気管隔離弁42を代替電源43からの電源により開とすることができる。これにより、原子炉ウェル10内に注入された水が格納容器ヘッド8からの熱で加熱されて発生する蒸気は、原子炉ウェル排気管41を通して原子炉建屋15の外部に排出することができる。また、原子炉ウェル上蓋40により、原子炉ウェル10内の蒸気が遮蔽プラグ13の隙間13bを通り運転床エリア14aに流入することを防止できる。
【0047】
そのため、非常用ガス処理系19を代替電源43からの電源により作動させた場合でも、過大な量の蒸気がフィルタ(フィルタトレイン)22に吸入されることが防止でき、非常用ガス処理系19は安全に運転を継続できる。これにより、原子炉格納容器3から設計漏洩率程度の割合で放射性物質と水素が原子炉建屋15内に漏洩した場合でも、非常用ガス処理系19によりCsI等の放射性物質を処理した後に水素と放射性希ガス等を主排気筒24から高所放出することができ、原子炉建屋15内での水素の爆轟が防止でき、かつ、周辺への放射性物質の放出を十分に低減することが可能となる。
【0048】
また、貫通配管16の第1隔離弁17と第2隔離弁18を漏洩して通過して原子炉建屋15の外部に直接放出される放射性物質を、第3隔離弁44を閉鎖して隔離弁間配管部44aに蓄え、漏洩抑制配管45と漏洩抑制ファン46により、非常用ガス処理系19の吸気配管20に導き、放射性物質を処理することが可能となる。
【0049】
以上説明したことからわかるように、この実施形態によれば、たとえば福島第一原子力発電所を襲ったような巨大地震や大津波によって原子力プラントが長期の全交流電源喪失に陥り炉心溶融事故が発生した場合であっても、非常用ガス処理系を運転し原子炉格納容器から漏洩する放射性物質を処理しつつ原子炉建屋内の水素を安全に環境に放出することが可能になる。また、原子炉格納容器の貫通配管から放射性物質が隔離弁を漏洩して原子炉建屋の外部に漏洩することを抑制することが可能になる。
【0050】
これにより、炉心溶融事故が発生した場合でも、原子炉格納容器から漏洩するCsI等の放射性物質と水素を安全に処理することが可能となる効果が得られる。CsI等による周辺地域の放射能汚染が制限されるため、仮に一時避難が必要になった場合であっても、周辺住民は事故終息とともにただちに帰還することが可能になる効果が得られる。
【0051】
[第2の実施形態]
図2により、本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第2の実施形態を説明する。
【0052】
本実施形態においては、原子炉ウェル排気管41は、原子炉ウェル上蓋40を貫通して原子炉建屋15の外部に導かれる。燃料交換時には原子炉ウェル上蓋40をはずす必要があるので、原子炉ウェル排気管41の途中に、互いに対向して接合される2枚のフランジ47を設けて、原子炉ウェル排気管41を途中からとりはずせる構造とする。本実施形態では、原子炉ウェル側壁11を貫通して原子炉ウェル排気管41を設置できない場合でも、原子炉ウェル排気管41を設置可能となる。
【0053】
[第3の実施形態]
図3により、本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第3の実施形態を説明する。
【0054】
本実施形態は第2の実施形態の変形であって、原子炉ウェル排気管41の一端(第1の端部)411が原子炉ウェル10の内部に開口し、他端(第2の端部)412は非常用ガス処理系19の非常用ガス処理系排気管23に接合される。その他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0055】
この第3の実施形態では、排気を主排気筒24から行うことが可能となり排気中に格納容器ヘッド8から漏洩した放射性希ガス等が含まれる場合に高所放出して大気拡散により放射能濃度を希釈することが可能になる効果が得られる。
【0056】
[第4の実施形態]
図4により、本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第4の実施形態を説明する。
【0057】
この実施形態は第3の実施形態の変形であって、原子炉ウェル排気管41の第2の端部412は非常用ガス処理系排気管23に接続せずに、主排気筒24内に直接開口させている。その他の構成は第3の実施形態と同様である。
【0058】
この第4の実施形態でも、第3の実施形態と同様に、排気を主排気筒24から実施することができ、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
[第5の実施形態]
図5により、本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第5の実施形態を説明する。
【0060】
本実施形態においては、原子炉ウェル排気管41a、41bは原子炉ウェル側壁11を貫通して静的冷却系プール30a、30bの気相部に開口するように設けられる。すなわち、原子炉ウェル排気管41aの一端(第1の端部)411aは原子炉ウェル10の内部に開口し、他端(第2の端部)412aは静的冷却系プール30aの気相部に開口している。同様に、原子炉ウェル排気管41bの一端(第1の端部)411bは原子炉ウェル10の内部に開口し、他端(第2の端部)412bは静的冷却系プール30bの気相部に開口している。
【0061】
また、非常用ガス処理系19の吸気配管20は、運転床エリア上部開口201および運転床エリア下部開口202を有している。運転床エリア上部開口201は、運転床ドーム14bの天頂部近くにある。また、運転床エリア下部開口202は、運転床14の近くにある。
【0062】
本実施形態によれば、原子炉ウェル排気管41a、41bを長く延ばす必要がなく、原子炉ウェル10内の蒸気は、原子炉ウェル排気管41a、41bにより静的冷却系プール30a、30bに一旦導かれて、排気口32a、32bから外気中に排気することが可能となる。また、運転床ドーム14bは天井がドーム状で水素が天頂部に蓄積しやすいが天頂部に設けられた吸気配管20により効率よく非常用ガス処理系19に吸引し主排気筒24から安全に外界に放出することが可能となる。
【0063】
[第6の実施形態]
図6により、本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第6の実施形態を説明する。
【0064】
この実施形態は第5の実施形態の変形であって、原子炉ウェル排気管41a、41bに原子炉ウェル排気管隔離弁48a、48bを設ける。原子炉ウェル排気管隔離弁48a、48bはたとえば電動弁として、電源は代替電源43を使用する。他の構成は第5の実施形態と同様である。
【0065】
原子炉ウェル排気管隔離弁48a、48bを閉鎖することにより、燃料交換時に原子炉ウェル10内の水位を運転床14の高さ近くまで上昇させることができる。
【0066】
なお、電動弁の電源として、上記代替電源43とは別に他の直流電源(図示せず)を設けてもよい。
【0067】
[第7の実施形態]
図7により、本発明に係る原子炉建屋内ガス処理システムを備えた原子力プラントの第7の実施形態を説明する。
【0068】
この実施形態は第6の実施形態の変形であって、原子炉ウェル排気管41a、41bは、原子炉ウェル上蓋40を貫通しさらに運転床14を貫通して静的冷却系プール30a、30bの気相部に導かれる。燃料交換時に原子炉ウェル上蓋40をとりはずすために、原子炉ウェル排気管41a、41bの途中にフランジ49a、49bおよび50a、50bを設けて、原子炉ウェル排気管41a、41bを取り外し可能とする。他の構成は第6の実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態によれば原子炉ウェル側壁11を貫通して原子炉ウェル排気管41a、41bを設置することができない場合に運転床の上部を通して設置することが可能となる。
【0070】
[他の実施形態]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
1…炉心、2…原子炉圧力容器、3…原子炉格納容器、4…ドライウェル、5…ウェットウェル、6…圧力抑制プール、7…ウェットウェル気相部、8…格納容器ヘッド、9…格納容器ヘッドフランジ、10…原子炉ウェル、11…原子炉ウェル側壁(側壁)、12…原子炉ウェル底部(底部)、13…遮蔽プラグ、13a…ブロック、13b…隙間、14…運転床、14a…運転床エリア、14b…運転床ドーム、14c…運転床エリア壁、15…原子炉建屋、16…貫通配管、17…第1隔離弁(貫通配管隔離弁)、18…第2隔離弁(貫通配管隔離弁)、19…非常用ガス処理系、20…吸気配管、21…排気ファン、22…フィルタ(フィルタトレイン)、23…非常用ガス処理系排気管、24…主排気筒、25…非常用ディーゼル発電機(非常用DG)、26…外部注水配管、27…消防自動車、28…水素ベント設備、30a、30b…静的冷却系プール、31a…静的格納容器冷却系熱交換器(PCCSHx)、31b…原子炉隔離時冷却系熱交換器(ICHx)、32a、32b…排気口、33…遮蔽水、40…原子炉ウェル上蓋、41、41a、41b…原子炉ウェル排気管(原子炉ウェル排気部)、42…原子炉ウェル排気管隔離弁(原子炉ウェル排気部)、43…代替電源、44…第3隔離弁(貫通配管隔離弁)、44a…隔離弁間配管部、45…漏洩抑制配管、46…漏洩抑制ファン、47…フランジ、48a、48b…原子炉ウェル排気管隔離弁、49a、49b…フランジ、50a、50b…フランジ、60…加熱ヒータ、201…運転床エリア上部開口、202…運転床エリア下部開口、411、411a、411b…第1の端部、412、412a、412b…第2の端部、451…第1の端部、452…第2の端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9