特許第6382602号(P6382602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382602
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】移動経路特定装置
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20180820BHJP
【FI】
   G07B15/00 K
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-135421(P2014-135421)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-14936(P2016-14936A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 恵一
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−161350(JP,A)
【文献】 特開平10−340359(JP,A)
【文献】 特開2009−205352(JP,A)
【文献】 特開2012−242996(JP,A)
【文献】 特開2000−353257(JP,A)
【文献】 特開2009−003659(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0205279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B15/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮影点のいずれかで撮影された人物の顔の特徴と、当該撮影の時刻と、当該撮影の場所とを示す複数の撮影点通過データを、顔の特徴が同一人物を示すもの毎にグルーピングし、
ユーザが指定した人物の顔画像から顔の特徴を特定し、
特定した特徴の顔の人物に関しグルーピングした撮影点通過データに基づき、前記ユーザが指定した人物の移動経路を特定す
置。
【請求項2】
前記複数の撮影点の各々は入出場口であり、撮影点通過データは入場および出場の別を示し、
同じグループにグルーピングした撮影点通過データの中で、当該撮影点通過データが示す時刻と入場および出場の別に基づき、対となる入場と出場を示す撮影点通過データをペアリング
アリングた撮影点通過データに基づき前記移動経路の特定を行う
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の駅のいずれかの改札で撮影された人物の顔の特徴と、当該撮影の時刻と、当該撮影の場所と、入場および出場の別とを示す複数の撮影点通過データを、顔の特徴が同一人物を示すもの毎にグルーピングし、
グルーピングした撮影点通過データの中で、当該撮影点通過データが示す時刻と場所と入場および出場の別と、駅の間の移動に要する時間とに基づき、対となる入場と出場を示す撮影点通過データをペアリングし、
ペアリングした撮影点通過データに基づき人物の移動経路を特定す
置。
【請求項4】
撮影点通過データは人物が撮影点の通過に用いた券の識別情報を示し
影点通過データをグルーピングする際、当該撮影点通過データのグルーピング先のグループの候補として、当該撮影点通過データが示す券の識別情報と同一の券の識別情報を示す撮影点通過データを含むグループを特定する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
複数の撮影点のいずれかで撮影された人物の顔の特徴と、当該撮影の時刻と、当該撮影の場所とを示す複数の撮影点通過データを、顔の特徴が同一人物を示すもの毎にグルーピングし、
グルーピングした撮影点通過データに基づき人物の移動経路を特定する
装置であって、
前記複数の撮影点通過データの一部は、人物が撮影点の通過に用いた券の識別情報を示し
該撮影点通過データが券の識別情報を示す場合は、撮影点通過データが券の識別情報を示さない場合よりも低い閾値を用いて、当該券の識別情報と同一の券の識別情報を示す撮影点通過データを含むグループの撮影点通過データとの間で顔の特徴の類似度に基づく同一人物の判定を行う
置。
【請求項6】
影点通過データをグルーピングする際、当該撮影点通過データのグルーピング先のグループがない場合、当該撮影点通過データを含む新たなグループを生成する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
成した複数のグループのうち、グループに含まれる撮影点通過データが示す時刻のうち最新の時刻からの経過時間が所定の条件を満たす場合、記憶装置に記憶されていた当該グループのデータを削除させる
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通行人の移動経路を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
改札等の通過に用いられる通行券の不正利用を防止するための仕組みが提案されている。例えば、特許文献1には、ICカードに顔画像を記録し、ICカードが自動改札機等において通行に使用された場合、通行人の顔画像とICカードから読み取った顔画像を照合することで、第三者によるICカードの不正利用を防止する仕組みが提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、通行券の発行時に発行情報を購入者の顔画像データに基づき暗号化したものを通行券に記録し、通行券が自動改札機において使用された場合、通行人の顔画像データに基づき通行券から読み取った発行情報を復号化することで、第三者による通行券の不正利用を防止する仕組みが提案されている。
【0004】
また、特許文献3には、有料施設の利用者が入場に用いる無線カードのIDに対応付けて利用者の顔画像と料金割引の有無を示すフラグをサーバに登録しておき、無線カードが自動改札機において使用された場合、無線カードから受信したIDと通行人の顔画像を自動改札機がサーバに送信し、サーバがIDに対応付けられた顔画像と自動改札機から送信された顔画像の照合結果とフラグを自動改札機に送信することで、第三者による無線カードの不正利用を防止するとともに、無線カードが正当に使用された場合にはフラグに従い料金割引を行う仕組みが提案されている。
【0005】
また、特許文献4には、駅に配置されている複数の出場用自動改札機の各々が、サーバを介して、改札処理を行った利用者が使用した通行券の識別コードと利用者の画像を共有し、同じ識別コードの通行券が複数回使用された場合、過去に出場した利用者の画像と新たに出場した利用者の画像を照合することにより、通行券の使い回しを防止する仕組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−128527号公報
【特許文献2】特開2012−79234号公報
【特許文献3】特開2010−97272号公報
【特許文献4】特開2009−205352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1乃至4に提案されている仕組みによれば、通行券が自動改札機等において使用されたタイミングで即時に不正利用が検出され、不正利用が検出された場合には不正通行人の通行が許可されない。
【0008】
例えば、ラッシュアワー時の駅の自動改札機は、改札口における渋滞を生じさせないために、可能な限り迅速に改札処理を行うことが求められる。そのため、顔画像の照合に基づき通行人の通行を即時に判定して許可または禁止を行うことは現実的ではない。例えば、顔画像の照合には誤判定が伴うため、誤判定により正当な通行人の通行が妨げられ、当該通行人に対するサービスが低下するとともに、改札口に渋滞が生じてしまい他の通行人に対するサービスも低下してしまうためである。
【0009】
また、近年は磁気券に加え、近距離無線通信を用いたICカードが通行券として用いられている。近距離無線通信を用いたICカードにより通行する通行人は、ICカードから券情報の読み取りが失敗した場合に、そのことに気付かずに自動改札機を通過してしまうことがある。
【0010】
従って、通行券の不正利用を繰り返す通行人がいる場合、そのような不正な通行人を特定し、状況によっては警察等に通報する等の対処が必要となる。その場合、通行人の過去の移動経路が分かれば、警察等が不正通行人を捜索する際の重要な手がかりとなる。
【0011】
上記の例は、不正行為者を捕らえる場合であるが、例えば行方不明者の捜索を行う場合も同様である。
【0012】
上記の事情に鑑み、本発明は、人物の移動経路を特定可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の撮影点のいずれかで撮影された人物の顔の特徴と、当該撮影の時刻と、当該撮影の場所とを示す複数の撮影点通過データを、顔の特徴が同一人物を示すもの毎にグルーピングし、ユーザが指定した人物の顔画像から顔の特徴を特定し、特定した特徴の顔の人物に関しグルーピングした撮影点通過データに基づき、前記ユーザが指定した人物の移動経路を特定する装置を第1の態様として提供する。
【0014】
第1の態様の装置によれば、ユーザが指定した顔画像が示す顔の人物の移動経路を特定することができる。
【0015】
第1の態様の装置において、前記複数の撮影点の各々は入出場口であり、撮影点通過データは入場および出場の別を示し、同じグループにグルーピングした撮影点通過データの中で、当該撮影点通過データが示す時刻と入場および出場の別に基づき、対となる入場と出場を示す撮影点通過データをペアリングアリングた撮影点通過データに基づき前記移動経路の特定を行う、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0016】
第2の態様の装置によれば、撮影点を通過した人物の施設に対する入出場を特定することができる。
【0017】
また、本発明は、複数の駅のいずれかの改札で撮影された人物の顔の特徴と、当該撮影の時刻と、当該撮影の場所と、入場および出場の別とを示す複数の撮影点通過データを、顔の特徴が同一人物を示すもの毎にグルーピングし、グルーピングした撮影点通過データの中で、当該撮影点通過データが示す時刻と場所と入場および出場の別と、駅の間の移動に要する時間とに基づき、対となる入場と出場を示す撮影点通過データをペアリングし、ペアリングした撮影点通過データに基づき人物の移動経路を特定する装第3の態様として提供する
【0018】
第3の態様の装置によれば、人物が入出場を行った施設が交通機関である場合、駅間移動の所要時間の利用によって、移動経路の特定のための処理が軽減される。
【0019】
第1乃至第3のいずれかの装置において、撮影点通過データは人物が撮影点の通過に用いた券の識別情報を示し、撮影点通過データをグルーピングする際、当該撮影点通過データのグルーピング先のグループの候補として、当該撮影点通過データが示す券の識別情報と同一の券の識別情報を示す撮影点通過データを含むグループを特定する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0020】
第4の態様の装置によれば、人物が撮影点の通過において識別情報の記録された券を用いた場合、券の識別情報の利用によって、移動経路の特定のための処理が軽減される。
【0021】
第1乃至第4のいずれかの装置において、複数の撮影点のいずれかで撮影された人物の顔の特徴と、当該撮影の時刻と、当該撮影の場所とを示す複数の撮影点通過データを、顔の特徴が同一人物を示すもの毎にグルーピングし、グルーピングした撮影点通過データに基づき人物の移動経路を特定する装置であって、前記複数の撮影点通過データの一部は、人物が撮影点の通過に用いた券の識別情報を示し、当該撮影点通過データが券の識別情報を示す場合は、撮影点通過データが券の識別情報を示さない場合よりも低い閾値を用いて、当該券の識別情報と同一の券の識別情報を示す撮影点通過データを含むグループの撮影点通過データとの間で顔の特徴の類似度に基づく同一人物の判定を行う、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0022】
第5の態様の装置によれば、同一の券を用いて撮影点を通過した通行人の同定における誤判定が軽減される。
【0023】
第1乃至第5のいずれかの装置において、影点通過データをグルーピングする際、当該撮影点通過データのグルーピング先のグループがない場合、当該撮影点通過データを含む新たなグループを生成する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0024】
第6の態様の装置によれば、通行人の顔の特徴の事前登録を要さない。
【0025】
第1乃至第6のいずれかの装置において、成した複数のグループのうち、グループに含まれる撮影点通過データが示す時刻のうち最新の時刻からの経過時間が所定の条件を満たす場合、記憶装置に記憶されていた当該グループのデータを削除させる、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0026】
第7の態様の装置によれば、顔の特徴に基づく同定が不可能な程度に時間の経過した人物の情報が削除されることにより、記憶装置に求められる記憶容量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態にかかる移動経路特定システムの全体構成を示した図。
図2】一実施形態にかかる移動経路特定システムを構成する各装置の機能構成を示した図。
図3】一実施形態にかかる所要時間DBのデータ構成を例示した図。
図4】一実施形態にかかるログDBのデータ構成を例示した図。
図5】一実施形態にかかる人物DBのデータ構成を例示した図。
図6】一実施形態にかかる通過履歴DBのデータ構成を例示した図。
図7】一実施形態にかかる不整合ログDBのデータ構成を例示した図。
図8】一実施形態にかかる移動経路特定装置のグルーピング部が行う処理のフロー図(券IDが利用不可で入場の通過である場合)。
図9】一実施形態にかかる移動経路特定装置のグルーピング部が行う処理のフロー図(券IDが利用不可で出場の通過である場合)。
図10】一実施形態にかかる移動経路特定装置のグルーピング部が行う処理のフロー図(券IDが利用可能で入場の通過である場合)。
図11】一実施形態にかかる移動経路特定装置のグルーピング部が行う処理のフロー図(券IDが利用可能で出場の通過である場合)。
図12】一実施形態にかかる端末装置に表示される画面を例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態にかかる移動経路特定システム1を説明する。図1は、移動経路特定システム1の全体構成を示した図である。移動経路特定システム1は、駅の入場口または出場口に配置された複数の自動改札機11(1)〜11(i)(ただし、iは自動改札機の総数を示す自然数)と、自動改札機11(1)〜11(i)の各々に対応して設けられ、対応する自動改札機(撮影点の一例)を通過する通行人の顔を撮影する撮像機12(1)〜12(i)と、撮像機12(1)〜12(i)の各々により撮影された通行人の顔画像を示す顔画像データに基づき、通行人の移動経路を特定する移動経路特定装置13と、移動経路特定装置13が用いる各種データを記憶する記憶装置14と、移動経路特定装置13に対し特定人物の移動経路の照会を行う利用者が操作する端末装置15を備える。
【0029】
以下、自動改札機11(1)〜(i)を自動改札機11と総称し、撮像機12(1)〜12(i)を撮像機12と総称する。なお、図1に示される端末装置15の数は1つであるが、人物の移動経路の照会を行う利用者の数に応じて端末装置15の数は任意に変化する。また、図1において、移動経路特定装置13は1つの装置として示されるが、移動経路特定装置13が互いに連係動作する複数の装置群によって構成されてもよい。また、図1は、記憶装置14は移動経路特定装置13に直接接続されている構成を示しているが、記憶装置14がネットワークを介して移動経路特定装置13との間でデータの受け渡しを行う構成が採用されてもよい。
【0030】
自動改札機11と撮像機12は、互いに対応する装置同士で有線または無線によりデータ通信可能に接続されている。また、自動改札機11の各々と移動経路特定装置13は、ネットワーク9を介して互いにデータ通信可能である。また、端末装置15と移動経路特定装置13はネットワーク9を介して互いにデータ通信可能である。
【0031】
自動改札機11は、対応する撮像機12との間でデータ通信を行う通信ユニットを備える点を除き、通常の自動改札機と同様の構成を備える。
【0032】
撮像機12は、対応する自動改札機11との間でデータ通信を行う通信ユニットを備える点を除き、通常の撮像機と同様の構成を備える。
【0033】
移動経路特定装置13は、汎用のサーバ用のコンピュータが本実施形態にかかる移動経路特定装置13用のプログラムに従った処理を実行することにより実現される。すなわち、移動経路特定装置13の実現に用いられるコンピュータは、メモリ、プロセッサ、および通信インタフェースを備え、プロセッサがメモリから読み出したプログラムに従う処理を実行することにより、後述の機能構成を備える移動経路特定装置13として機能する。ただし、移動経路特定装置13は汎用のコンピュータにより実現される構成に限られず、例えばASIC等の論理集積回路等を用いた専用装置として構成されてもよい。
【0034】
記憶装置14は、例えばHDD、SDD等の不揮発性メモリを集積した大容量の記憶装置である。
【0035】
端末装置15は、汎用の端末装置用のコンピュータが本実施形態にかかる端末装置15用のプログラムに従った処理を実行することにより実現される。すなわち、端末装置15の実現に用いられるコンピュータは、メモリ、プロセッサ、通信インタフェース、キーボード等の操作装置、液晶ディスプレイ等の表示装置を備え、プロセッサがメモリから読み出したプログラムに従う処理を実行することにより、後述の機能構成を備える端末装置15として機能する。ただし、端末装置15は汎用のコンピュータにより実現される構成に限られず、例えばASIC等の論理集積回路等を用いた専用装置として構成されてもよい。
【0036】
図2は、移動経路特定システム1を構成する各装置の機能構成を示した図である。自動改札機11は、通行人の通過を検出する通過センサ111と、通過センサ111の検出結果に従い撮像機12に対する撮影指示を示す撮影指示データを撮像機12に送信する送信部112と、撮影指示データの送信に対する応答として撮像機12から送信されてくる通行人の顔画像を示す顔画像データを受信する受信部113と、基準時刻からの経過時間を継続的に計時して現在時刻を示す現在時刻データを生成する計時部114と、受信部113による顔画像データの受信をトリガに撮影点通過データ(後述)を生成する生成部115と、生成部115により生成された撮影点通過データを移動経路特定装置13に送信する送信部116と、通行人が自動改札機11の通行時に用いる券から情報を読み取る読取部117を備える。
【0037】
撮像機12は、自動改札機11から送信されてくる撮影指示データを受信する受信部121と、受信部121により受信された撮影指示データに従い通行人の顔を撮影し顔画像データを生成する撮像部122と、撮像部122により生成された顔画像データを自動改札機11に送信する送信部123を備える。
【0038】
記憶装置14は、移動経路特定装置13により用いられる各種データを、所要時間DB(Database)、ログDB、人物DB、通過履歴DB、不整合ログDB、の5つのデータベースに格納している。
【0039】
所要時間DBは、いずれかの自動改札機11が配置されている複数の駅のうち任意の2つの駅の間を交通機関により移動する場合の標準的な所要時間を示す所要時間データを格納するデータベースである。
【0040】
図3は所要時間DBのデータ構成を例示した図である。所要時間DBは2つの駅の組み合わせ毎のレコードの集まりであり、各レコードはフィールド[出発駅]、[目的駅]、「所要時間]を有する。フィールド[出発駅]には、出発駅の識別情報(例えば駅名)が格納される。フィールド[目的駅]には、目的駅の識別情報(例えば駅名)が格納される。フィールド[所要時間]には出発駅から目的駅への移動の所要時間を示す所要時間データが格納される。
【0041】
ログDBは、いずれかの自動改札機11をいずれかの通行人が通過した際に当該通過に関する情報を蓄積するデータベースである。
【0042】
図4はログDBのデータ構成を例示した図である。ログDBは、通過の各々に関するレコードの集まりであり、各レコードはフィールド[通過ID]、[通過時刻]、[通過場所]、[入出場]、[顔特徴]、[券ID]、[券種別]を有する。フィールド[通過ID]には、各通過を識別する通過IDが格納される。フィールド[通過時刻]には、通過が行われた時点における現在時刻を示す時刻データが格納される。
【0043】
フィールド[通過場所]には、自動改札機11(すなわち撮像機12)の配置されている場所を識別する場所データが格納される。場所データは、例えば「○○駅××改札口△△番改札機」といったデータである。フィールド[入出場]には、自動改札機11が入場用であるか出場用であるかを示すデータが格納される。フィールド[入出場]に格納されるデータは、例えば「入場」、「出場」といったデータである。
【0044】
フィールド[券ID]には、通行人が自動改札機11の通行に用いた券を識別する券IDが格納される。フィールド[券種別]には、通行人が自動改札機11の通行に用いた券の種別を示すデータが格納される。券の種別とは、例えば、「磁気券」、「ICカード(使用者限定)」、「ICカード(使用者非限定)」等のデータである。
【0045】
人物DBは、過去にいずれかの自動改札機11を通過した人物に関する情報を人物毎に蓄積するデータベースである。
【0046】
図5は人物DBのデータ構成を例示した図である。人物DBは人物毎のレコードの集まりであり、各レコードはフィールド[人物ID]、[顔特徴]、[更新時刻]、[券ID]、[券種別]を有する。フィールド[人物ID]には、顔特徴により同定された人物の各々を識別する人物IDが格納される。フィールド[顔特徴]には、撮像機12により生成された顔画像データが示す顔の特徴量を示す顔特徴データが格納される。フィールド[更新時刻]には、顔特徴データが最後に更新された時刻を示す時刻データが格納される。
【0047】
フィールド[券ID]には、人物が過去に使用したICカード等の反復利用可能な種別の券の券IDが格納される。同じ人物が複数の券を用いる場合があるため、フィールド[券ID]には複数の券IDが格納される場合がある。フィールド[券種別]には、券IDの各々に応じた券種別を示すデータが格納される。従って、フィールド[券ID]に格納される券IDの数が複数であれば、フィールド[券種別]にも券IDの数と同数の複数のデータが格納される。
【0048】
通過履歴DBは人物毎に当該人物が過去に行った通過の履歴を時系列順に蓄積するデータベースである。
【0049】
図6は通過履歴DBのデータ構成を例示した図である。通過履歴DBは、人物IDにより識別される人物毎のテーブルの集まりであり、各テーブルは通過IDにより識別される通過毎のレコードの集まりである。各レコードは、フィールド[通過ID]、[通過時刻]、[通過場所]、[入出場]、[券ID]、[券種別]、[ペアID]を有する。通過履歴DBのテーブルが有するフィールド[通過ID]、[通過時刻]、[通過場所]、[入出場]、[券ID]、[券種別]の各々には、ログDB(図4)が有する同名のフィールドに格納されるデータと同様のデータが格納される。
【0050】
フィールド[ペアID]には、入出場のペアとなる相手の通過を識別する通過IDが格納される。例えば、対象の人物が出発駅であるX駅の自動改札機11(k)を通過して駅構内に入場し、交通機関を利用して移動した後、目的駅であるY駅の自動改札機11(l)を通過して駅構内から出場した場合、X駅の入場に関するレコードのフィールド[ペアID]には、Y駅の出場の通過IDが格納され、Y駅の出場に関するレコードのフィールド[ペアID]には、X駅の入場の通過IDが格納される。
【0051】
不整合ログDBは、人物毎に当該人物が過去に行った通過のうち、入出場のペアの相手が特定できなかった通過に関するデータを蓄積するデータベースである。
【0052】
図7は不整合ログDBのデータ構成を例示した図である。不整合ログDBが格納するデータは、通過履歴DB(図6)に格納されるレコードのうち、フィールド[ペアID]が空データであるレコードのデータである。従って、不整合ログDBのレコードが有するフィールドは、通過履歴DBのレコードが有するフィールドのうちフィールド[ペアID]を除く全てである。
【0053】
図2に戻り、移動経路特定システム1を構成する各装置の機能構成の説明を続ける。移動経路特定装置13は、自動改札機11から送信されてくる撮影点通過データと端末装置15から送信されてくる要求データ(後述)を受信する受信部131と、受信部131により受信された撮影点通過データに含まれる顔画像データが示す顔の特徴量を特定し特定した特徴量を示す顔特徴データを生成する顔特徴特定部132と、顔特徴特定部132により特定された顔特徴データに基づき人物の同定を行い、通過を行った人物毎に撮影点通過データをグループ化するグルーピング部133と、グルーピング部133によりグループ化された撮影点通過データの中において、入場と出場の関係にある通過を示す撮影点通過データをペアリングするペアリング部134を備える。
【0054】
移動経路特定装置13は、さらに、端末装置15から送信されてくる要求データを受信部131が受信した場合、要求データに応じて指定された人物の移動経路を特定し、特定した移動経路を示す移動経路データを生成する移動経路特定部135と、移動経路特定部135により生成された移動経路データを要求元の端末装置15に送信する送信部136を備える。
【0055】
端末装置15は、ユーザの操作を受け付ける操作部151と、操作部151に対しユーザにより行われた操作に応じて移動経路データを要求する要求データを移動経路特定装置13に送信する送信部152と、送信部152から送信された要求データに対する応答として移動経路特定装置13から送信されてくる移動経路データを受信する受信部153と、受信部153により受信された移動経路データが示す移動経路をユーザに対し表示する表示部154を備える。
【0056】
以下に移動経路特定システム1の動作を説明する。まず、自動改札機11の各々は、通行人が通過する毎に、通過センサ111により当該通過を検出すると、送信部112により撮影指示データを撮像機12に送信する。撮像機12は自動改札機11から送信されてくる撮影指示データを受信部121により受信すると、撮像部122により通行人の顔を撮影し、生成した顔画像データを送信部123により自動改札機11に送信する。
【0057】
自動改札機11は、撮像機12から送信されてくる顔画像データを受信部113により受信すると、生成部115により顔画像データを含む撮影点通過データを生成する。撮影点通過データのデータ構成は、ログDB(図4)のレコードのデータ構成と比較し、フィールド[通過ID]を有しない点と、フィールド[顔特徴]に代えて、顔画像データを格納するフィールド[顔画像]を有する点を除き同じである。すなわち、撮影点通過データは、フィールド[通過時刻]、[通過場所]、[入出場]、[顔画像]、[券ID]、[券種別]を有する。
【0058】
撮影点通過データのフィールド[通過時刻]には、生成部115により撮影点通過データが生成される時点において計時部114により生成された現在時刻データが格納される。フィールド[通過場所]、[入出場]には、自動改札機11に予め記憶されているデータが格納される。フィールド[顔画像]には、既述のように、撮像機12から受信された顔画像データが格納される。フィールド[券ID]、[券種別]には、自動改札機11が通行人の所持する券から読み取ったデータが格納される。
【0059】
自動改札機11は、生成部115により生成した撮影点通過データを送信部116により移動経路特定装置13に対し送信する。移動経路特定装置13は、自動改札機11から送信されてくる撮影点通過データを受信部131により受信すると、受信された撮影点通過データに含まれる顔画像データが示す顔の特徴量を顔特徴特定部132により特定し、特定した特徴量を示す顔特徴データを生成する。顔特徴特定部132は、ログDB(図4)に新規レコードを追加し、所定の規則に従いユニークな通過IDを生成して新規レコードのフィールド[通過ID]に格納するとともに、自動改札機11から受信された撮影点通過データのフィールド[顔画像]以外のフィールドのデータを新規レコードの同名のフィールドに格納する。また、顔特徴特定部132は、生成した顔特徴データを新規レコードのフィールド[顔特徴]に格納する。
【0060】
なお、撮像機12により撮影された顔画像が人物の特定ができない程度に低質であることがある。例えば、通行人の顔が帽子や手などで遮られた状態で撮影が行われたような場合、顔画像から顔の特徴量の特定ができない。その場合、ログDBの新規レコードのフィールド[顔特徴]は空データとなる。
【0061】
グルーピング部133は、ログDBに新規レコードが追加されると、新規に追加されたレコードが示す通過を、当該通過を行った人物毎にグルーピングする処理を行う。以下にグルーピング部133が行うグルーピング処理の概要を、フロー図を用いて説明する。
【0062】
グルーピング部133は、ログDBに新規に追加されたレコードのフィールド[顔特徴]が空データでない場合、フィールド[入出場]、[券ID]に格納されているデータに基づき、このレコードが示す通過が(1)券IDが利用不可で入場の通過である場合、(2)券IDが利用不可で出場の通過である場合、(3)券IDが利用可能で入場の通過である場合、(4)券IDが利用可能で出場の通過である場合、の4つのいずれであるかを判定し、これらの各々に応じたフローに従い処理を行う。
【0063】
なお、券IDが利用不可である場合とは、例えば通行人が近距離無線通信により券情報の読み取りを行わせるICカードを自動改札機11にかざした際、自動改札機11の読取部117が券情報の読み取りに失敗したが、通行人がそのまま通過してしまった場合や、券IDを持たない磁気券により通行人が自動改札機11を通過した場合である。これらの場合、ログDBのレコードのフィールド[券ID]は空データとなる。
【0064】
(1)券IDが利用不可で入場の通過である場合、グルーピング部133は図8に示すフローに従い処理を行う。まず、グルーピング部133は、ログDB(図4)に新規に追加されたレコードのフィールド[顔特徴]に格納されている顔特徴データと、人物DB(図5)の全レコードの各々のフィールド[顔特徴」に格納されている顔特徴データを照合し、これらの顔特徴データが示す顔の特徴の類似度を算出する(S101)。グルーピング部133は算出した類似度のうち最も高い類似度が所定の閾値T1より高い値であるか否かを判定することにより、これらの顔特徴データが示す顔特徴の人物が同一人物であるか否かを判定する(S102)。
【0065】
以下、2つの顔特徴データが示す顔特徴の人物が同一人物であるか否かを判定することを便宜的に「顔特徴データの照合」といい、それらの人物が同一人物であると判定された場合、「顔特徴データの照合が成功した」という。すなわち、顔特徴データの照合とは、顔特徴データそのものが同一であるか否かの照合ではなく、顔特徴データが示す顔特徴を持つ人物の同定を意味する。
【0066】
S101において顔特徴データの照合に失敗した場合(S102;「No」)、グルーピング部133はログDBに新規登録されたレコードの顔特徴データが示す顔特徴の人物は人物DBに登録されていない新たな人物であると判断し、この人物に関するレコードを人物DBに新規登録するとともに、通過履歴DB(図6)に新規登録した人物の人物IDに応じた新たなテーブルを追加する(S103)。すなわち、グルーピング部133は、人物DBに新規レコードを追加して、所定の規則により決定されるユニークな人物IDを追加した新規レコードのフィールド[人物ID]に格納し、ログDBの対象のレコードのフィールド[顔特徴]および[通過時刻]のデータを、人物DBの新規レコードのフィールド[顔特徴]および[更新時刻]に格納する。そして、人物DBの新規レコードの人物IDに対応するテーブルを通過履歴DBに追加する。このS103の処理は、新しい人物に関するグループを生成する処理である。
【0067】
S101において顔特徴データの照合に成功した場合(S102;「Yes」)、グルーピング部133はログDBに新規登録されたレコードの顔特徴データが示す顔特徴の人物は、照合に成功した人物DBのレコードに応じた人物であると判断し、この人物に関する人物DBのレコードを更新する(S104)。すなわち、グルーピング部133は、照合に成功した人物DBのレコードのフィールド[顔特徴]および[更新時刻]のデータを、ログDBの対象のレコードのフィールド[顔特徴]および[通過時刻]で上書き更新する。
【0068】
グルーピング部133は、S103またはS104の処理の後、通過履歴DB(図6)の更新を行う(S105)。すなわち、グルーピング部133は、S103において人物DBに新規追加したレコードの人物ID、またはS104において更新したレコードの人物IDに応じた通過履歴DBのテーブルのフィールドの各々に、ログDBの新規レコードの同名のフィールドのデータを格納する。このS105の処理は、人物毎のグループに対し、当該人物に関する新たな撮影点通過データをグルーピングする処理である。
【0069】
(2)券IDが利用不可で出場の通過である場合、グルーピング部133は図9に示すフローに従い処理を行う。まず、グルーピング部133は、所要時間DB(図3)に格納されている所要時間データを用いて、ログDBに新規登録されたレコードに応じた人物と同一である人物の候補(以下、「同一人物候補」という)を抽出する(S202)。具体的には、グルーピング部133は、以下の条件を満たすテーブルを通過履歴DB(図6)から抽出し、抽出したテーブルの人物IDを同一人物候補の人物IDとして特定する。
【0070】
通過履歴DBのテーブルの最後のレコードのフィールド[入出場]が「入場」である。
通過履歴DBのテーブルの最後のレコードのフィールド[通過場所]が示す駅を出発駅とし、ログDBの新規レコードのフィールド[通過場所]が示す駅を目的駅とする所要時間DBのレコードのフィールド[所要時間]が示す時間と、通過履歴DBのテーブルの最後のレコードのフィールド[通過時刻]が示す時刻からログDBの新規レコードのフィールド[通過時刻]が示す時刻までの時間との差が所定時間以内である。
【0071】
続いて、グルーピング部133は同一人物候補の特定に成功したか否かを判定する(S202)。S201において、いずれの人物IDも同一人物候補の人物IDとして特定されなかった場合(S202;「No」)、グルーピング部133は処理をS101(図8)へ移す。
【0072】
一方、S201において、いずれかの人物IDが同一人物候補の人物IDとして特定された場合(S202;「Yes」)、グルーピング部133は特定された同一人物候補のレコードの各々の顔特徴データと、ログDBの新規レコードの顔特徴データの照合を行う(S203)。具体的には、グルーピング部133は、2つの顔特徴データが示す顔の特徴の類似度を算出し、算出した類似度のうち最も高い類似度が所定の閾値T1より高い値であるか否かを判定することにより、それらの2つの顔特徴データが示す特徴を持つ人物が同一人物であるか否かを判定する。S203において用いられる閾値T1は、S101において用いられる閾値T1と同一の閾値である。
【0073】
グルーピング部133はS203の照合に成功したか否かを判定する(S204)。S203において顔特徴データの照合に成功した場合(S204;「Yes」)、グルーピング部133は処理をS104(図8)へ移す。一方、S203において顔特徴データの照合に失敗した場合(S204;「No」)、グルーピング部133は処理をS101(図8)へ移す。
【0074】
(3)券IDが利用可能で入場の通過である場合、グルーピング部133は図10に示すフローに従い処理を行う。まず、グルーピング部133は、人物DB(図5)に格納されている券IDを用いて、同一人物候補を抽出する(S301)。具体的には、グルーピング部133は、人物DBからフィールド[券ID]がログDBの新規レコードのフィールド[券ID]と一致するレコードを抽出し、抽出したレコードの人物IDを同一人物候補の人物IDとして特定する。
【0075】
続いて、グルーピング部133は同一人物候補の特定に成功したか否かを判定する(S302)。S301において、いずれの人物IDも同一人物候補の人物IDとして特定されなかった場合(S302;「No」)、グルーピング部133は処理をS101(図8)へ移す。
【0076】
一方、S301において、いずれかの人物IDが同一人物候補の人物IDとして特定された場合(S302;「Yes」)、グルーピング部133は特定された同一人物候補のレコードの各々の顔特徴データと、ログDBの新規レコードの顔特徴データの照合を行う(S303)。具体的には、グルーピング部133は、2つの顔特徴データが示す顔の特徴の類似度を算出し、算出した類似度のうち最も高い類似度が所定の閾値T2より高い値であるか否かを判定することにより、それらの2つの顔特徴データが示す特徴を持つ人物が同一人物であるか否かを判定する。
【0077】
S303において用いられる閾値T2は、S101およびS203において用いられる閾値T1よりも低い閾値である。S303において低い閾値が用いられる理由は、S303における顔特徴データの照合は同じ券を使用した人物間の同定であるため、それらの人物が同一人物である可能性が高く、同定のための閾値を多少低くしても誤判定のリスクが少なく、むしろ髪型や髭の有無等による同一人物の顔特徴の変化による誤判定(同一人物を別人物と判定する誤判定)のリスクを低減するために、同定の基準を低くした方が望ましいためである。ただし、前者のリスクと後者のリスクを考慮して、S101およびS203において用いられる閾値T1がS303において用いられてもよい。
【0078】
グルーピング部133はS303の照合に成功したか否かを判定する(S304)。S303において顔特徴データの照合に成功した場合(S304;「Yes」)、グルーピング部133は処理をS104(図8)へ移す。なお、この場合、グルーピング部133は人物DBの更新において、フィールド[券ID]、[券種別]に既にデータが格納されている場合、これらのデータを上書き更新ではなく、追加更新する。
【0079】
一方、S303において顔特徴データの照合に失敗した場合(S304;「No」)、グルーピング部133は処理をS101(図8)へ移す。
【0080】
(4)券IDが利用可能で出場の通過である場合、グルーピング部133は図11に示すフローに従い処理を行う。図11に示すS301〜S304の処理は、図10に示したS301〜S304の処理と同一である。ただし、券IDが利用可能で出場の通過である場合、S302における判定において、S301における券IDを用いた同一人物候補の抽出に失敗したと判定された場合(S302;「No」)、グルーピング部133は処理をS101ではなくS201(図9)に移す。また、券IDが利用可能で出場の通過である場合、S304における判定において、S302における顔特徴データの照合に失敗したと判定された場合(S304;「No」)、グルーピング部133は処理をS101ではなくS201(図9)に移す。
【0081】
上記が、ログDBに新規レコードが追加された場合にグルーピング部133により実行される処理である。
【0082】
ペアリング部134は、所定の規則に従い決定されるタイミング(例えば所定時間の経過毎)に、通過履歴DB(図6)に格納されているレコード(撮影点通過データ)を1対の入出場を示す2つのレコード毎にペアリングする処理を行う。
【0083】
具体的には、ペアリング部134は、通過履歴DBの各テーブルにおいて、フィールド[ペアID]が空データであるレコードの各々に関し、前後のレコード(フィールド[ペアID]が空データであるもの)との間で、以下の条件を満たす2つのレコードの組み合わせがあれば、それらをペアのレコードとして特定する。
【0084】
フィールド[入出場]が「入場」であるレコードのフィールド[通過場所]が示す駅を出発駅とし、フィールド[入出場]が「出場」であるレコードのフィールド[通過場所]が示す駅を目的駅とする所要時間DB(図3)のレコードのフィールド[所要時間]が示す時間と、フィールド[入出場]が「入場」であるレコードのフィールド[通過時刻]が示す時刻からフィールド[入出場]が「出場」であるレコードのフィールド[通過時刻]が示す時刻までの時間との差が所定時間以内である。
【0085】
ペアリング部134は上記のペアリングに成功した場合、通過履歴DBの該当する2つのレコードのフィールド[ペアID]に、各々のペアの相手の通過IDを格納する。
【0086】
また、ペアリング部134は、上記のペアリング処理において通過履歴DBを更新するとともに、不整合ログDB(図7)の更新も行う。具体的には、ペアリング部134は、更新後の通過履歴DBに格納される各テーブルのレコードのうち、[ペアID]が空データのレコードを抽出し、抽出したレコードで不整合ログDBを上書き更新する。
【0087】
上記のグルーピング部133およびペアリング部134が行う処理により、自動改札機11から送信されてくる撮影点通過データに基づき、ログDB(図4)、人物DB(図5)、通過履歴DB(図6)、不整合ログDB(図7)が継続的に更新される。
【0088】
端末装置15は、任意のタイミングで、移動経路特定装置13に対し特定の人物の移動経路を照会することができる。図12は、端末装置15のユーザの操作に応じて表示部154に表示される画面を例示した図である。端末装置15のユーザは、端末装置15の操作部151を操作して、図12(a)に示す顔画像指定画面を表示部154に表示させる。
【0089】
顔画像指定画面において、ユーザが「開く」ボタンに対しクリック操作等を行った後、移動経路を照会したい人物の顔画像を示す顔画像データを選択する操作を行い、「照会」ボタンに対しクリック操作等を行うと、端末装置15はユーザにより指定された顔画像データを含み、移動経路を示す移動経路データの送信を要求する要求データを生成し、生成した要求データを送信部152により移動経路特定装置13に対し送信する。
【0090】
移動経路特定装置13は受信部131により要求データを受信すると、顔特徴特定部132および移動経路特定部135により要求データに含まれる顔画像データが示す顔画像の人物の移動経路を示す移動経路データを生成する。具体的には、まず、顔特徴特定部132が端末装置15から受信した顔画像データが示す顔の特徴量を特定し、特定した特徴量を示す顔特徴データを生成する。続いて、移動経路特定部135が、顔特徴特定部132により生成された顔特徴データと、人物DB(図5)のレコードの各々のフィールド[顔特徴]に格納されている顔特徴データの照合を行う。顔特徴特定部132は、顔特徴データの照合に成功した場合、同一人物と特定された人物の人物IDに応じたテーブルを通過履歴DB(図6)から読み出し、読み出したテーブルのフィールド[通過場所]、[通過時刻]に格納されているデータをレコード毎に対応付け、フィールド[通過時刻]に格納されているデータが示す時刻でソートして得られるデータを、移動経路データとして生成する。
【0091】
移動経路特定装置13は、上記のように生成した移動経路データを、送信部136により要求元の端末装置15に送信する。なお、移動経路特定部135による顔特徴データの照合が失敗した場合、移動経路特定装置13は要求元の端末装置15に対し、移動経路データに代えて、「該当者なし」を示す応答データを送信する。
【0092】
端末装置15は移動経路特定装置13から送信されてくる移動経路データまたは応答データを受信部153により受信すると、受信したデータに従い表示部154に照会結果を示す画面を表示する。図12(b)は、端末装置15が移動経路特定装置13から移動経路データを受信した場合に表示部154に表示される移動経路表示画面を例示した図である。移動経路表示画面には、ユーザが指定した顔画像の人物の過去の移動経路がリストと地図へのプロットにより表示される。図12に例示の移動経路表示画面の地図においては、入出場がペアリングされた通過時刻が隣り合った2つの撮影点の間の移動は実線の矢印により示され、ペアリングされていない通過時刻が隣り合った2つの撮影点の間の移動は破線の矢印により示されている。なお、移動経路の表示態様は図12に例示のものに限られない。
【0093】
上述した移動経路特定システム1によれば、捜索対象の人物の移動経路が人物の捜索者に対し速やかに提供されるため、人物の捜索が容易となる。
【0094】
ログDB、人物DB、通過履歴DB、不整合ログDBは、継続的に更新され、新規レコードが追加されていくため、それらのデータを記憶する記憶装置14の記憶容量が不足しないように、グルーピング部133は所定の規則に従い定まるタイミング(例えば所定時間の経過毎)に、これらのデータベースに格納されているレコードのうち所定の条件を満たすレコードの削除を記憶装置14に指示する。
【0095】
例えば、グルーピング部133は、人物DBのレコードのうち、フィールド[更新時刻]が現在時刻より所定時間を超えて経過しているレコードと、当該レコードの人物IDに対応する通過履歴DBおよび不整合ログDBのテーブルを記憶装置14に削除させる。この場合、所定時間としては、例えば、人物が歳を重ねて顔の特徴が変化する結果、古い顔特徴データを用いて人物の同定が不可能となる程度の時間(例えば、10年間)が採用されることが望ましい。
【0096】
また、グルーピング部133は、例えばログDBのレコードのうち、通過履歴DBに格納した撮影点通過データに関するレコードを速やかに記憶装置14に削除させる。これらのレコードは同じ情報が通過履歴DBに格納されているため、削除されても不都合を生じないためである。
【0097】
また、グルーピング部133は、例えば通過履歴DBおよび不整合ログDBのレコードのうち、フィールド[通過時刻]が現在時刻より所定時間を超えて経過しているレコードを記憶装置14に削除させる。この場合、所定時間としては、例えば、人物の移動経路のパターンが変化する結果、古い移動経路データが人物の捜索に役立たなくなる程度の時間(例えば、1年間)が採用されることが望ましい。
【0098】
なお、上記のグルーピング部133によるデータの削除指示の規則は一例であって、他の規則に従いデータの削除指示が行われてもよい。
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態および以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0099】
[第1変形例]
上述した実施形態の説明において、移動経路特定装置13により管理されるログDB、人物DB、通過履歴DB、不整合ログDBに格納されるデータは人物の捜索に利用されるものとしたが、これらのデータの利用目的は人物の捜索に限られない。例えば、不整合ログDBに格納されるデータは、券を不正利用している人物の特定や、不正利用を許容してしまう改札システムの問題点の特定等に利用されてもよい。
【0100】
また、人物DBに格納される複数のレコードのフィールド[券ID]に同じ券IDが格納されており、それらの券IDに対応するフィールド[券種別]のデータが、例えば「磁気券」や「ICカード(使用者限定)」であるような場合、これらのレコードの人物IDにより識別される複数の人物が、同じICカードを不正利用している可能性がある。従って、人物DBに格納されるこれらのデータも、券の不正利用をしている人物の特定等に利用され得る。
【0101】
[第2変形例]
上述した実施形態においては、顔画像データから顔特徴データを生成する処理は、移動経路特定装置13の顔特徴特定部132により行われる。顔画像データから顔特徴データを生成する処理が行われる場所は移動経路特定装置13に限られず、例えば顔画像データを生成する撮像機12において行われてもよいし、撮像機12から顔画像データを受信する自動改札機11において行われてもよい。
【0102】
[第3変形例]
上述した実施形態においては、撮影点通過データに含まれる通過時刻を示す時刻データは、自動改札機11の計時部114により生成される時刻データである。これに代えて、例えば移動経路特定装置13が計時部を備え、移動経路特定装置13が自動改札機11から撮影点通過データを受信した時点の現在時刻を示す時刻データを、当該撮影点通過データが示す通過の通過時刻として用いる構成が採用されてもよい。
【0103】
[第4変形例]
上述した実施形態においては、撮像機12は自動改札機11を通過する通行人の顔を撮影する位置に配置される。撮像機12が配置される位置(撮影点)は自動改札機11の配置位置に限られない。例えば、駅以外の施設の入場口または出場口に配置されたゲート装置を通過する通行人の顔を撮影する位置が撮影点として選択されてもよい。
【0104】
また、撮影点はゲート装置の配置位置に限られず、例えば公園や街角などが撮影点として選択されてもよい。公園や街角などのゲート装置が配置されていない撮影点に撮像機12が配置される場合、撮影点には通行人の通過を検出する通過検出センサを配置し、通過検出センサによる通行人の通過の検出をトリガに、撮像機12が通行人の顔を撮影するように構成される。なお、この変形例においては、通行人は券を用いた通行を行わないため、グルーピング部133による処理のうち、(1)券IDが利用不可で入場の通過である場合(図8、S101〜S105)と類似の処理のみが行われる。また、ペアリング部134による処理は行われない。
【0105】
以上の実施形態および変形例で説明されたデータ構成、処理の順序、数量等については本発明が理解・実施できる程度に概略的に例示したものにすぎない。従って本発明は、 説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…移動経路特定システム、9…ネットワーク、11…自動改札機、12…撮像機、13…移動経路特定装置、14…記憶装置、15…端末装置、111…通過センサ、112…送信部、113…受信部、114…計時部、115…生成部、116…送信部、117…読取部、121…受信部、122…撮像部、123…送信部、131…受信部、132…顔特徴特定部、133…グルーピング部、134…ペアリング部、135…移動経路特定部、136…送信部、151…操作部、152…送信部、153…受信部、154…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12