【文献】
山田寛次、石山智、田中敏嗣、徳岡昭夫,鋼繊維で補強されたセメント系複合材料の押出成形,コンクリート工学年次論文集,2003年,Vol.25, No.1,p.233-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本実施形態に係る押出成形用口金1は、入口2と、出口3と、入口2から出口3に亘る流路4とを備える。この流路4は、断面積が入口2から出口3に向かって連続的に小さくなっている絞り部5を含む。絞り部5の入口2側の端部51の断面積S1、絞り部5の出口3側の端部の断面積S2、及び絞り部5の長さLは、下記式(1)で表される関係を満たす。
12≦(S1−S2)/L≦18…(1)
【0013】
本発明の押出成形用口金1を用いると、補強繊維を含有する成形材料10を押出成形して製造される板状体100の曲げ強度に、異方性が生じることを抑制することができる。
【0014】
本実施形態に係る板状体100の製造方法では、窯業系成形材料と補強繊維とを含む成形材料10を、押出成形用口金1で押出成形する。
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、更に詳しく説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係る押出成形用口金1について、説明する。
【0017】
押出成形用口金1は、
図1に示すように、入口2から出口3に亘る流路4と、流路4を覆う外殻8とを備える。
【0018】
外殻8の寸法及び形状は、特に限定されない。外殻8は、例えば、流路4全体を覆う箱型である。
【0019】
流路4は、
図1,2に示すように、入口2から出口3に向かって並ぶ、流入部6、絞り部5、及び流出部7を含む。
【0020】
本実施形態の流入部6は、流路4の入り口2から絞り部5までの部分である(
図1、2参照)。流入部6の寸法及び形状は、成形材料10が流通することができれば、特に限定されない。
【0021】
本実施形態の絞り部5は、流路4の流入部6と流出部7と間の部分である(
図1、2参照)。絞り部5の断面積は、入口2から出口3に向かって連続的に小さくなっている。絞り部5において、入口2側の端部51の断面積S1が最も大きく、出口3側の端部52の断面積S2が最も小さい。このため、端部51の断面積S1は、端部52の断面積S2よりも大きい。
【0022】
本実施形態では、絞り部5の入口2から出口3へ向かう方向(押出方向)と直交する断面はいずれも矩形状である。この断面の短辺は入口2から出口3へ向かって小さくなっている(
図1参照)。この断面の長辺は入口2から出口3へ向かって大きくなっている(
図2参照)。
【0023】
端部51の短辺R1は、50〜100mmの範囲内であることが好ましく、60〜80mmの範囲内であることがより好ましい。端部51の長辺R2は、100〜200mmの範囲内であることが好ましく、140〜160mmの範囲内であることがより好ましい。本実施形態では、端部51の断面積S1は、短辺R1に長辺R2をかけた値のことである。このため、端部51の断面積S1は、5000〜20000mm
2の範囲内であることが好ましく、8400〜12800mm
2の範囲内であることがより好ましい。
【0024】
端部52の短辺R3は、端部51の短辺R1の1/6〜1/3の範囲内である。端部52の短辺R3は10〜20mmの範囲内であることが好ましく、11〜18mmの範囲内であることがより好ましい。端部52の長辺R4は、280〜350mmの範囲内であることが好ましく、300〜330mmの範囲内であることがより好ましい。本実施形態では、端部52の断面積S2は、短辺R3に長辺R4をかけた値のことである。このため、端部52の断面積S2は、2800〜7000mm
2の範囲内であることが好ましく、3080〜6300mm
2の範囲内であることがより好ましい。
【0025】
絞り部5の長さL、すなわち、端部51から端部52までの距離は、350〜450mmの範囲内であることが好ましく、375〜425mmの範囲内であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態の絞り部5は、端部51の断面積S1、端部52の断面積S2、及び絞り部5の長さLが、上記式(1)の関係を満たしている。上記式(1)における(S1−S2)/Lは、絞り部5の長さあたりの絞り率Xを表している。このため、本実施形態の絞り部5の絞り率Xは、12〜18%の範囲内である。
【0027】
本実施形態の流出部7は、流路4の絞り部5から出口3までの部分である(
図1、2参照)。流出部7の押出方向と直交する断面の形状は、端部52から出口3まで同じである。このため、端部52の断面の形状と、出口3の形状とが同じである。流出部7の長さ、すなわち端部52から出口3までの距離は、100〜200mmの範囲内であることが好ましく、140〜160mmの範囲内であることがより好ましい。
【0028】
続いて、本実施形態に係る成形材料10について、説明する。
【0029】
本実施形態の成形材料10は、窯業系成形材料と補強繊維とを含む。
【0030】
窯業系成形材料は、例えば、セメント、軽量化剤、減水材、及び水を含有する。
【0031】
セメントは、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメントからなる群から選択される一種以上の材料である。
【0032】
軽量化材は、例えば、パーライトバルーン、シラスバルーン等の無機軽量骨材、塩化ビニリデン系マイクロバルーン等の熱可塑性樹脂発泡体、及び有機軽量発泡材を挙げることができる。成形材料10全量に対する軽量化材の割合は、質量比で0.1〜0.3%の範囲内であることが好ましい。以下、成形材料10の配合割合は質量比で表す。
【0033】
無機軽量骨材や熱可塑性樹脂発泡体は、有機軽量発泡材と比べて骨材強度が弱い。このため、軽量化材が無機軽量骨材や熱可塑性樹脂発泡体である場合、板状体100の押出成形時に軽量化材が粉砕されてしまい、軽量化効果を効率的に確保することができない。このため、軽量化材が、骨材強度が強い有機軽量発泡材であることが特に好ましい。この場合、板状体100にプレス等行う際に、復元膨張(スプリングバック)によって、建築板の表面に凹凸が生じることを抑制することができると共に、建築板の平滑性を向上させることができる。有機軽量発泡材の粒径は、30〜90μmの範囲内であることが好ましい。
【0034】
減水剤は、成形材料10全量に対して、0.5%の割合で含有することが好ましい。
【0035】
水は、成形材料10全量に対して、30%の割合で含有することが好ましい。
【0036】
本実施形態の成形材料10に含まれる補強繊維は、例えば、パルプ繊維、ビニロン繊維、ポロプロピレン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維からなる群から選択される一種以上の繊維を含む。補強繊維は、ビニロン繊維またはポリプロピレン繊維のどちらか一方、あるいは両方を含むことが好ましい。補強繊維の長さは1〜10mmの範囲内であることが好ましく、4〜8mmの範囲内であることがより好ましい。補強繊維の直径は、1〜100μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内であることがより好ましい。成形材料10全量に対する補強繊維の割合は、0.5〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.0〜2.0%の範囲内であることがより好ましい。
【0037】
成形材料10は、上記の材料に限られず、例えば骨材、着色材等の添加剤を更に含んでもよい。
【0038】
続いて、本実施形態の板状体100が、成形される工程について説明する。
【0039】
本実施形態では、押出成形用口金1が、
図3Aに示すように、押出成形機9の終端に接続されている。
【0040】
まず、押出成形機9の始端に設けられた原料投入口91に、成形材料10を投入する。この成形材料10は、押出成形機9内で混練されながら、押出成形用口金1の入り口2に達する。
【0041】
続いて、入口2から流入部6に成形材料10が流入する。
【0042】
続いて、成形材料10が、端部51から、絞り部5に流入する。
【0043】
続いて、成形材料10が、端部52から、流出部7に流入する。成形材料10が流出部7を流通している間に、成形材料10は板状に成形される。
【0044】
そして、出口3から成形材料10が流出して、成形体(グリーン体)92が形成される。この成形体92を養生硬化することによって、
図3Bに示す板状体100が形成される
本実施形態に係る押出成形用口金1が、上記の構成を備えることにより、以下の効果を奏する。
【0045】
絞り部5の断面積は、入口2から出口3に向かって連続的に小さくなると共に、端部51の断面積S1,端部52の断面積52、及び絞り部5の長さLが、上記式(1)の関係を満たす、つまり、絞り部5の絞り率Xが12〜18%の範囲内であることにより、板状体100の曲げ強度に異方性が生じることを抑制することができる。これは、成形材料10が絞り部5を流通することによって、板状体100に含まれる補強繊維が成形材料10の押出方向に配向することが抑制され、補強繊維が板状体100の様々な方向に配置されるためであると思われる。絞り率Xが、12%より小さい、或いは18%より大きい場合、板状体100の曲げ強度に異方性が生じてしまう。つまり、板状体100の特定の方向の曲げ強度が低くなってしまう。
【0046】
端部52の短辺R3が、端部51の短辺R1の1/6〜1/3の範囲内であることにより、成形材料10を出口3から押し出しやすい。
【0047】
成形材料10に含まれる軽量化材が有機軽量発泡材であることにより、板状体100を効率よく軽量化することができる。特に、成形材料10全量に対する有機軽量発泡材の割合が0.1〜0.3%の範囲内であることにより、成形材料10の成形で得られる板状体100のスプリングバックによって、建築板の表面に凹凸が生じることを抑制することができるため、板状体100の表面平滑性を向上させることができる。
【0048】
成形材料10に含まれる補強繊維が、ビニロン繊維及びポリプロピレン繊維のどちらか一方、あるいは両方であることにより、板状体100に含まれる補強繊維が、成形材料10の押出方向に配向することをより抑制することができる。これにより、板状体100の曲げ強度に異方性が生じることをより抑制することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
<板状体の曲げ強度について>
絞り部5の絞り率Xが異なる押出成形用口金1を用いて、成形材料10の押出成形を行い、板状体100を製造した実施例及び比較例について、説明する。
【0050】
尚、絞り部5の絞り率Xは、端部51の断面積をS1、端部52の断面積をS2、絞り部5の長さをLとした場合の、(S1−S2)/Lの値である。
【0051】
(板状体の作製)
・実施例1
セメント97.2%、ビニロン繊維1.0%、ポリプロピレン繊維1.0%、有機軽量発泡材0.3%、減水剤0.5%、及び水30%を含む成形材料10を用意した。
【0052】
そして、端部51の短辺R1が70mm、長辺R2が150mmであり、端部52の短辺R3が11.0mm、長辺R4が315mmである押出成形用口金1を使用して、成形材料10を板状に成形し、これを硬化させて板状体100を作製した。この押出成形用口金1の絞り率Xは18%である。
【0053】
・実施例2
端部52の短辺R3が13mmであって、絞り率Xが16%である押出成形用口金1を使用したこと以外は、実施例1と同様に板状体100を作製した。
【0054】
・実施例3
端部52の短辺R3が15mmであって、絞り率Xが14%である押出成形用口金1を使用したこと以外は、実施例1と同様に板状体100を作製した。
【0055】
・実施例4
端部52の短辺R3が17mmであって、絞り率Xが13%である押出成形用口金1を使用したこと以外は、実施例1と同様に板状体100を作製した。
【0056】
・比較例1
端部52の短辺R3が8mmであって、絞り率Xが20%である押出成形用口金1を使用したこと以外は、実施例1と同様に板状体100を作製した。
【0057】
・比較例2
端部52の短辺R3が20mmであって。絞り率Xが11%である押出成形用口金1を使用したこと以外は、実施例1と同様に板状体100を作製した。
【0058】
(板状体の曲げ強度の測定及び評価)
実施例1〜4、及び比較例1、2の板状体100について、曲げ強度を測定した。
【0059】
具体的には、
図4Aに示すように、黒矢印で示す成形材料10の押出方向に対して平行な軸に沿う、板状体100の裏面に配置した二つの点(小さい白抜き矢印が配置された点)を支点とすると共に、板状体100の表面に配置した一つの点(大きい白抜き矢印が配置された点)を力点として、三点曲げ試験を行い、曲げ強度を測定した。
【0060】
また、
図4Bに示すように、黒矢印で示す成形材料10の押出方向に対して垂直な軸に沿う、板状体100の裏面に配置した二つの点(小さい白抜き矢印が配置された点)を支点とすると共に、板状体100の表面に配置した一つの点(大きい白抜き矢印が配置された点)を力点として、三点曲げ試験を行い、曲げ強度を測定した。
【0061】
更に、
図4Bの曲げ試験で求めた曲げ強度に対する、
図4Aの曲げ試験で求めた曲げ強度の、曲げ強度比を算出した。
【0062】
実施例1〜4、及び比較例1、2について、曲げ試験の結果と曲げ強度比とを、絞り部5の寸法、及び絞り率Xと共に、表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、絞り率Xが12〜18%の範囲内である押出成形用口金1を使用している、実施例1〜4の板状体100では、二種類の曲げ試験で求めた曲げ強度の値が近く、曲げ強度比の値が1.0に近い。つまり、板状体100の曲げ強度に、異方性が生じていない。
【0065】
一方、絞り率Xが18%より大きい押出成形用口金1を使用している比較例1の板状体100では、
図4Aの曲げ試験で求めた曲げ強度の値が低くなっている。また、絞り率Xが12%より小さい押出成形用口金1を使用している比較例2の板状体100では、
図4Bの曲げ試験で求めた曲げ強度の値が低くなっている。このため、比較例1、2の板状体100では、2つの曲げ試験で求めた曲げ強度の値の間に大きな差があるため、曲げ強度比の値が1.0から大きく離れている。つまり、板状体100の曲げ強度に異方性が生じてしまっている。
【0066】
従って、絞り部5の絞り率Xが12〜18%の範囲内である押出成形用口金1で成形材料10を成形すると、板状体100の曲げ強度に異方性が生じることを抑制することができる。
【0067】
また、絞り部5の絞り率Xが12〜18%の範囲内にない押出成形用口金1で成形材料10を成形すると、板状体100の曲げ強度に異方性が生じてしまい、板状体100の特定の方向の曲げ強度が低くなってしまう。
【0068】
<好ましい成形材料について>
成形材料10の好ましい配合例を調べた結果について、説明する。
【0069】
(成形材料の調整)
まず、セメント、ポリプロピレン繊維、粒径の異なる有機軽量発泡材、減水剤(ポリカルボン酸系減水剤)、及び水を表2に示す割合で配合し、これらを混練することにより、配合例1〜6の成形材料10を作製した。
【0070】
【表2】
【0071】
(試験体の作製)
配合例1〜6の成形材料10を、内寸50mm、高さ30mmの塩化ビニル製容器に充填して、試験体を成形した。
【0072】
この試験体を容器から取り出してアルミ板の上に乗せ、オートグラフ試験機(島津製作所製)に設置した一対の圧縮用面板の間に、このアルミ板と試験体を配置して、試験体のプレスを行った。
【0073】
具体的には、上方の圧縮用面板とアルミ板との間隔が35mmである状態をゼロ点とし、上方の圧縮用面板を25mm下げた所で停止して、試験体の厚みを10mmに圧縮した。この際、プレスの下降速度を100mm/分とし、プレス保持時間を10秒とした。
【0074】
(試験体の評価)
プレスされた各試験体について、ノギスで4点測定を行い、厚みを計測した。この厚みから10mmを除いた値をスプリングバック量、10mmに対するスプリングバック量の割合をスプリングバック率とした。
【0075】
更に、配合例1〜6の成形材料の、フラット柄プレス品(サイズ:300×300mm)を用い、0.1mm毎に表面凹凸差を計測すると共に、試験体の表面平滑性を観察した。尚、表面平滑性が特に良いものを「◎」、表面平滑性が良いものを「○」、表面平滑性が悪いものを「×」と評価した。
【0076】
上記のスプリングバック量、スプリングバック率、表面凹凸差、及び表面平滑性を測定した結果を、表2に示した。
【0077】
表2より、有機軽量発泡材を0.1〜0.3%の範囲内で含有している配合例1〜5では、試験体のスプリングバック率が低く、表面平滑性が優れている。
【0078】
一方、有機軽量発泡材を0.6%含有している配合例6では、試験体のスプリングハック率が高く、表面平滑性が悪い。
【0079】
従って、成形材料10に含まれる有機軽量発泡材の割合が0.1〜0.3%の範囲内であると、成形材料10を成形して得られる板状体100のスプリングバックを抑制することができ、板状体100の表面平滑性を向上させることができる。
【0080】
また、成形材料10に含まれる有機軽量発泡材の割合が0.1〜0.3%の範囲内でない場合、成形材料10を成形して得られる板状体10に、スプリングバックが生じてしまい、板状体100の表面平滑性が悪くなってしまう。