(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属支持層と、前記金属支持層の厚み方向一方面に配置されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の前記厚み方向一方面に配置され、端子部を有する導体パターンとを備えるサスペンション基板を準備する第1工程と、
圧電素子を前記端子部にはんだにより接合する第2工程であって、はんだを前記圧電素子の分極が消失し始める脱分極温度以上に加熱する第2工程と、
前記端子部に接合された前記圧電素子が再分極するように、前記圧電素子に、前記金属支持層、前記端子部および前記はんだを介して、電圧を印加する第3工程とを含んでいることを特徴とする、回路付サスペンション基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の回路付サスペンション基板の製造方法は、複数のサスペンション基板3を備えるサスペンション基板集合体1を準備する第1工程(
図1参照)と、各サスペンション基板3に圧電素子2を接合する第2工程(
図2および
図3参照)と、複数の圧電素子2に一括して電圧を印加する第3工程(
図3参照)と、サスペンション基板集合体1から各サスペンション基板3を切り出す第4工程(
図4参照)とを含んでいる。
【0020】
このような回路付サスペンション基板の製造方法では、
図1に示すように、まず、第1工程において、集合体の一例としてのサスペンション基板集合体1を準備する。
【0021】
サスペンション基板集合体1は、複数のサスペンション基板3と、枠体4とを備えている。
【0022】
複数のサスペンション基板3のそれぞれは、紙面上下方向に延びる平帯形状に形成されている。そして、複数のサスペンション基板3は、紙面左右方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0023】
なお、以下の説明において、サスペンション基板集合体1およびサスペンション基板3の方向に言及するときには、
図1の紙面上下方向を先後方向とし、
図1の紙面左右方向を幅方向とする。また、
図5の紙面上下方向を厚み方向とする。
図5の紙面上側が厚み方向一方側であり、
図5の紙面下側が厚み方向他方側である。
【0024】
枠体4は、厚み方向から見て、幅方向一方に向かって開放される略U字状に形成されており、複数のサスペンション基板3を囲むように配置されている。そして、枠体4は、各サスペンション基板3の前後両端部のそれぞれが接続されることにより、複数のサスペンション基板3を支持している。
【0025】
このようなサスペンション基板集合体1は、
図5Cに示すように、積層構造を有しており、具体的には、金属支持層の一例としての支持基板5、ベース絶縁層6、導体パターン7、および、カバー絶縁層8が、厚み方向の他方側から一方側に向かって順次積層されて形成されている。なお、
図1〜
図4では、便宜上、カバー絶縁層8を省略している。
【0026】
支持基板5は、
図1に示すように、枠体4に対応する枠部10と、複数のサスペンション基板3のそれぞれに対応する複数の基板部11とを備えている。
【0027】
枠部10は、厚み方向から見て幅方向の一方に向かって開放される略U字状に形成されており、1対の基板支持部分10Aと、架橋部分10Bとを備えている。
【0028】
1対の基板支持部分10Aは、枠部10の先後両端部であって、先後方向に互いに間隔を空けて配置されている。1対の基板支持部分10Aのそれぞれは、厚み方向から見て幅方向に延びる略矩形の板状に形成されている。
【0029】
架橋部分10Bは、1対の基板支持部分10Aの幅方向他端部間に架設されている。架橋部分10Bは、厚み方向から見て先後方向に延びる略矩形の板状に形成されている。
【0030】
複数の基板部11は、1対の基板支持部分10Aの先後方向の間に配置されており、幅方向に互いに間隔を空けて並列配置されている。
【0031】
各基板部11は、
図1および
図4に示すように、基板本体12と、接続部13とを備えている。
【0032】
基板本体12は、
図4に示すように、長手方向に延びる平帯形状に形成されており、ジンバル部15と、補強部16と、配線支持部17とを備えている。
【0033】
ジンバル部15は、基板本体12の先端部であって、厚み方向から見て、略矩形の枠形状に形成されている。詳しくは、ジンバル部15は、複数(2つ)のアウトリガー部15Aと、先側連続部15Bと、後側連続部15Cとを備えている。
【0034】
1対のアウトリガー部15Aは、ジンバル部15の左右両端部であって、幅方向に互いに間隔を隔てて配置されている。各アウトリガー部15Aは、厚み方向から見て、先後方向に延びる略矩形状に形成されている。
【0035】
先側連続部15Bは、ジンバル部15の先端部であって、1対のアウトリガー部15Aの先端部間に架設されている。先側連続部15Bは、厚み方向から見て、左右方向に延びる略矩形状に形成されている。
【0036】
後側連続部15Cは、ジンバル部15の後端部であって、1対のアウトリガー部15Aの後端部間に架設されている。後側連続部15Cは、厚み方向から見て、左右方向に延びる略矩形状に形成されている。
【0037】
補強部16は、
図4に示すように、ジンバル部15内において、ジンバル部15と間隔を隔てて配置されている。補強部16は、厚み方向から見て略T字状に形成されており、矩形部16Aと、1対の張出部16Bとを有している。
【0038】
矩形部16Aは、厚み方向から見て、先後方向に延びる略矩形状を有している。
【0039】
1対の張出部16Bは、矩形部16Aの後端部に対して幅方向の両側に配置されており、矩形部16Aの幅方向両端部のそれぞれから幅方向両側に突出している。各張出部16Bは、厚み方向から見て略矩形状に形成されている。
【0040】
配線支持部17は、ジンバル部15の後端部から連続して後方へ延びる略平帯形状に形成されている。
【0041】
接続部13は、
図1に示すように、基板本体12と枠部10とを接続する部分であって、1対の先側接続部13Aと、1対の後側接続部13Bとを備えている。
【0042】
1対の先側接続部13Aは、ジンバル部15の先側連続部15Bと、先側の基板支持部分10Aとの間に架設されている。1対の先側接続部13Aは、幅方向に間隔を隔てて配置されており、先側連続部15Bの幅方向両端部から、先側に向かって延び、先側の基板支持部分10Aの後端縁に接続されている。
【0043】
1対の後側接続部13Bは、配線支持部17と、後側の基板支持部分10Aとの間に架設されている。1対の後側接続部13Bは、幅方向に間隔を隔てて配置されており、配線支持部17の後端部の幅方向両端部から、後側に向かって延び、後側の基板支持部分10Aの先端縁に接続されている。
【0044】
支持基板5は、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅などの金属材料から形成され、好ましくは、ステンレスから形成される。支持基板5の厚みは、例えば、10μm以上、例えば、50μm以下、好ましくは、25μm以下である。
【0045】
ベース絶縁層6は、
図4および
図5Cに示すように、基板本体12の上面(厚み方向一方面)に積層(配置)されている。ベース絶縁層6は、第1端子形成部20と、スライダ搭載部21と、複数(2つ)の配線形成部22と、連結部23とを備えている。
【0046】
第1端子形成部20は、先側連続部15Bの上に配置されている。第1端子形成部20は、
図4に示すように、厚み方向から見て、幅方向に延びる略矩形状に形成されている。第1端子形成部20には、複数(2つ)の貫通穴20Aが形成されている。
【0047】
複数の貫通穴20Aのそれぞれは、第1端子形成部20の幅方向両端部のそれぞれに配置されている。複数の貫通穴20Aのそれぞれは、厚み方向から見て矩形状に形成されており、第1端子形成部20を厚み方向に貫通している(
図5A参照)。
【0048】
スライダ搭載部21は、補強部16の上に配置されている。スライダ搭載部21は、本体部21Aと、1対の第2端子形成部21Bとを備えている。
【0049】
本体部21Aは、補強部16の矩形部16Aの上に配置されている。本体部21Aは、補強部16の矩形部16Aの外形形状とほぼ同じ形状に形成されている。本体部21Aの外周縁は、補強部16の矩形部16Aの外周縁よりもわずかに外側に配置されている。本体部21Aには、開口21Cが形成されている。
【0050】
開口21Cは、本体部21Aの幅方向中央に配置されている。開口21Cは、厚み方向から見て略矩形状に形成されており、本体部21Aを厚み方向に貫通している。
【0051】
1対の第2端子形成部21Bは、補強部16の1対の張出部16Bの上に配置されている。第2端子形成部21Bは、補強部16の張出部16Bの外形形状とほぼ同じ形状に形成されている。厚み方向から見て、第2端子形成部21Bの外周縁は、補強部16の張出部16Bの外周縁よりもわずかに外側に配置されている。
【0052】
複数の配線形成部22のそれぞれは、スライダ搭載部21の幅方向外側にそれぞれ配置されている。複数の配線形成部22のそれぞれは、第1直線部22Aと、膨出部22Bと、第2直線部22Cとを備えている。
【0053】
第1直線部22Aは、配線形成部22の先端部であって、スライダ搭載部21の本体部21Aの幅方向両側に間隔を隔てて配置されている。また、第1直線部22Aは、アウトリガー部15Aの幅方向内側に間隔を隔てて配置されている。第1直線部22Aは、厚み方向から見て、先後方向に延びる略直線形状に形成されている。第1直線部22Aの先端部は、スライダ搭載部21の本体部21Aの先端部に連続している。第1直線部22Aの後端部は、第2端子形成部21Bの先側に配置されている。
【0054】
膨出部22Bは、第2端子形成部21Bの幅方向外方を回り込むように後方へ延びている。詳しくは、膨出部22Bは、第1直線部22Aの後端部から連続して幅方向外方へ延び、後方へ屈曲して、第2端子形成部21Bの幅方向外方を後方へ延びている。膨出部22Bは、第2端子形成部21Bの幅方向外側に間隔を隔てて配置されている。また、膨出部22Bは、アウトリガー部15Aの幅方向内側に間隔を隔てて配置されている。
【0055】
第2直線部22Cは、膨出部22Bの後端部から連続して後方へ延びている。第2直線部22Cは、配線支持部17の上に配置されている。
【0056】
連結部23は、第1端子形成部20の後端部と、スライダ搭載部21および配線形成部22のそれぞれの先端部とを連結している。連結部23は、厚み方向から見て、幅方向に延びる略矩形状を有している。
【0057】
ベース絶縁層6は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテル、ニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂から形成され、好ましくは、熱寸法安定性などの観点から、ポリイミドから形成される。また、ベース絶縁層6の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上、例えば、35μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0058】
導体パターン7は、ベース絶縁層6の上面(厚み方向一方面)に配置されている。導体パターン7は、複数(4つ)の磁気ヘッド接続端子25と、複数(4つ)の第1外部接続端子26と、複数(4つ)の第1配線27と、端子部の一例としての複数(2つ)の第1端子28と、複数(2つ)の第2端子29と、複数(2つ)の第2外部接続端子30と、複数(2つ)の第2配線31とを備えている。
【0059】
複数の磁気ヘッド接続端子25は、スライダ搭載部21の先側部分において、幅方向に互いに間隔を隔てて並列配置されている。複数の磁気ヘッド接続端子25のそれぞれは、厚み方向から見て、先後方向に延びる略矩形状に形成されている。
【0060】
複数の第1外部接続端子26のそれぞれは、外部制御基板(図示せず)などに接続されるものであり、外部制御基板(図示せず)の構成に応じて、その形状や配置、接合方法を任意に選択することができる。具体的には、この実施形態において、複数の第1外部接続端子26は、配線形成部22の後端部において、幅方向に互いに間隔を隔てて並列配置されている。複数の第1外部接続端子26は、厚み方向から見て、先後方向に延びる略矩形状に形成されている。
【0061】
複数の第1配線27のそれぞれは、対応する磁気ヘッド接続端子25の先端部から連続し、スライダ搭載部21の本体部21Aおよび配線形成部22の上を通って第1外部接続端子26に連続するように、互いに間隔を隔てて形成されている。
【0062】
複数の第1端子28のそれぞれは、複数の貫通穴20Aのそれぞれを塞ぐように、第1端子形成部20の幅方向両端部のそれぞれに配置されている(
図5A参照)。複数の第1端子28のそれぞれは、厚み方向から見て略矩形状に形成されている。
【0063】
複数の第1端子28のそれぞれは、
図5Aに示すように、複数の貫通穴20Aのそれぞれを介して、ジンバル部15の先側連続部15Bに接触している。これにより、複数の第1端子28のそれぞれは、ジンバル部15の先側連続部15Bに電気的に接続(接地)されている。つまり、複数のサスペンション基板3のそれぞれの第1端子28は、支持基板5を介して、互いに電気的に接続されている。
【0064】
複数の第2端子29のそれぞれは、対応する第2端子形成部21Bの上に配置されている。複数の第2端子29のそれぞれは、
図4に示すように、厚み方向から見て略矩形状に形成されている。
【0065】
複数の第2外部接続端子30のそれぞれは、外部制御基板(図示せず)などに接続されるものであり、外部制御基板(図示せず)の構成に応じて、その形状や配置、接合方法を任意に選択することができる。具体的には、この実施形態において、複数の第2外部接続端子30は、配線形成部22の後端部において、すべての第1外部接続端子26よりも幅方向内方に配置されている。複数の第2外部接続端子30のそれぞれは、厚み方向から見て略矩形状に形成されている。
【0066】
複数の第2配線31のそれぞれは、対応する第2端子29の幅方向内方端部から連続し、スライダ搭載部21の本体部21Aの上を先側に向かい、後側へ向かって折り返した後、配線形成部22の上を後側へ向かうように通って第2外部接続端子30に連続するように形成されている。
【0067】
導体パターン7は、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料から形成され、好ましくは、銅から形成されている。また、導体パターン7の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、30μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0068】
カバー絶縁層8は、磁気ヘッド接続端子25、第1外部接続端子26、第1端子28の中央部、第2端子29の中央部および第2外部接続端子30を露出し、第1端子28の周縁部、第2端子29の周縁部、第1配線27および第2配線31を被覆するように、ベース絶縁層6の上面(厚み方向一方面)に形成されている。
【0069】
カバー絶縁層8は、ベース絶縁層6と同様の合成樹脂から形成され、好ましくは、ポリイミドから形成される。カバー絶縁層8の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、4μm以上、また、例えば、20μm以下、好ましくは、15μm以下である。
【0070】
次いで、各サスペンション基板3に圧電素子2を接合する(第2工程)。
【0071】
各サスペンション基板3に圧電素子2を接合するには、まず、
図1および
図2に示すように、第1端子28および第2端子29の上面(厚み方向一方面)に、はんだ40を配置する。
【0072】
はんだ40を形成する合金としては、例えば、錫(Sn)−鉛(Pb)、錫(Sn)−ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)−アルミニウム(Al)、錫(Sn)−銅(Cu)、錫(Sn)−アンチモン(Sb)、錫(Sn)−銀(Ag)、錫(Sn)−亜鉛(Zn)、錫(Sn)−銀(Ag)−鉛(Pb)、錫(Sn)−鉛(Pb)−ビスマス(Bi)、錫(Sn)−アンチモン(Sb)−鉛(Pb)、錫(Sn)−ビスマス(Bi)−銅(Cu)、錫(Sn)−ビスマス(Bi)−インジウム(In)、錫(Sn)−ビスマス(Bi)−銀(Ag)、錫(Sn)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)、錫(Sn)−亜鉛(Zn)−ビスマス(Bi)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)、錫(Sn)−銀(Ag)−アルミニウム(Al)、錫(Sn)−銀(Ag)−アンチモン(Sb)−鉛(Pb)、錫(Sn)−亜鉛(Zn)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)、錫(Sn)−銅(Cu)−ビスマス(Bi)−ニッケル(Ni)、錫(Sn)−銅(Cu)−ビスマス(Bi)−インジウム(In)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−アンチモン(Sb)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)、錫(Sn)−銀(Ag)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)、錫(Sn)−銀(Ag)−ビスマス(Bi)−銅(Cu)、錫(Sn)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)、錫(Sn)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)−ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−インジウム(In)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)−ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)−インジウム(In)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−ビスマス(Bi)−インジウム(In)、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−ビスマス(Bi)−ニッケル(Ni)、錫(Sn)−銅(Cu)−ニッケル(Ni)−ゲルマニウム(Ge)−コバルト(Co)などが挙げられる。
【0073】
このようなはんだ40を形成する合金のなかでは、好ましくは、Sn−Ag−Cuが挙げられる。
【0074】
はんだ40の融点は、例えば、70℃以上、好ましくは、180℃以上、例えば、350℃以下、好ましくは、250℃以下である。
【0075】
このようなはんだ40を、第1端子28および第2端子29の上面に配置する方法としては、例えば、公知の印刷機による印刷、または、ディスペンサーで塗布などが挙げられる。
【0076】
はんだ40のうち、第1端子28の上面に配置されるはんだ40(以下、第1はんだ40Aとします。)の厚み方向の寸法は、
図5Bに示すように、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。また、第1はんだ40Aの厚み方向一端部は、好ましくは、カバー絶縁層8の厚み方向一方面よりも突出している。
【0077】
はんだ40のうち、第2端子29の上面に配置されるはんだ40(以下、第2はんだ40Bとします。)の厚み方向の寸法は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。また、第2はんだ40Bの厚み方向一端部は、好ましくは、カバー絶縁層8の厚み方向一方面よりも突出している。
【0078】
続いて、複数のサスペンション基板3に対応する複数の圧電素子2を準備する。
【0079】
圧電素子2は、先後方向に伸縮可能なアクチュエータであって、電気が供給され、その電圧が制御されることによって伸縮する。
【0080】
圧電素子2は、
図5Bに示すように、素子本体2Aと、第1素子端子2Bと、第2素子端子2Cとを備えている。
【0081】
素子本体2Aは、
図4に示すように、厚み方向から見て先後方向に延びる矩形状に形成されている。素子本体2Aは、例えば、公知の圧電材料、より具体的には、圧電セラミックスなどから形成されている。
【0082】
圧電セラミックスとしては、例えば、BaTiO
3(チタン酸バリウム、キュリー点:約135℃)、PbTiO
3(チタン酸鉛、キュリー点:約490℃)、Pb(Zr,Ti)O
3(ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、キュリー点:約350℃)、SiO
2(水晶、キュリー点:約573℃)、LiNbO
3(ニオブ酸リチウム、キュリー点:約1210℃)、PbNb
2O
6(メタニオブ酸鉛、キュリー点:約570℃)などが挙げられ、好ましくは、PZTが挙げられる。
【0083】
このような圧電セラミックスのキュリー点(温度)は、例えば、100℃以上、好ましくは、130℃以上、例えば、400℃以下、好ましくは、370℃以下である。なお、キュリー点(温度)とは、圧電材料の分極が完全に消失する臨界温度である。
【0084】
第1素子端子2Bは、
図5Bに示すように、素子本体2Aの下面(厚み方向他方面)の先端部に配置されており、素子本体2Aと電気的に接続されている。
【0085】
第2素子端子2Cは、素子本体2Aの下面の後端部に配置されており、第1素子端子2Bに対して、後方に間隔を空けて配置されている。第2素子端子2Cは、素子本体2Aと電気的に接続されている。
【0086】
このような圧電素子2は、
図3に示すように、複数のサスペンション基板3のそれぞれに対して、2つずつ配置される。
【0087】
各サスペンション基板3に対応する2つの圧電素子2は、
図4に示すように、幅方向に互いに間隔を隔てて配置される。各圧電素子2は、
図5Bに示すように、第1素子端子2Bが対応する第1はんだ40Aと接触し、かつ、第2素子端子2Cが第2はんだ40Bと接触するように、カバー絶縁層8に対して上方(厚み方向の一方)に配置される。
【0088】
また、本実施形態では、圧電素子2が配置されるとともに、スライダ50がベース絶縁層6のスライダ搭載部21の上面(厚み方向一方面)に配置される。
【0089】
スライダ50は、厚み方向から見て矩形状に形成され、その先端部において、図示ない磁気ヘッドを有している。図示ない磁気ヘッドは、複数の磁気ヘッド接続端子25に対応して複数設けられている。
【0090】
詳しくは、スライダ50は、スライダ搭載部21の開口21C(
図1参照)から露出される補強部16に接着剤を介して貼付される。なお、図示しない磁気ヘッドは、対応する磁気ヘッド接続端子25の後側に僅かな間隔を隔てて配置されている。
【0091】
その後、図示しない磁気ヘッドと、対応する磁気ヘッド接続端子25との間に、図示しないはんだボールを配置する。
【0092】
続いて、複数の圧電素子2およびスライダ50が配置されたサスペンション基板集合体1をリフローする。
【0093】
サスペンション基板集合体1をリフローするには、サスペンション基板集合体1をリフロー炉内において、圧電素子2の素子本体2Aの脱分極開始温度以上に加熱する。
【0094】
脱分極開始温度とは、圧電素子2の素子本体2Aの分極が消失し始める温度、厳密には、素子本体2Aの分極が1%消失する温度である。脱分極開始温度は、一般に圧電材料のキュリー温度の1/2以上、例えば、圧電材料のキュリー温度の2/3程度である。
【0095】
加熱温度は、脱分極開始温度以上、かつ、はんだ40の融点以上であって、例えば、180℃以上、好ましくは、200℃以上、さらに好ましくは、220℃以上、例えば、300℃以下、好ましくは、250℃以下である。加熱時間は、例えば、10秒以上、好ましくは、15秒以上、例えば、180秒以下、好ましくは、60秒以下である。
【0096】
これによって、第1はんだ40Aは、
図5Cに示すように、第1端子28の上面(厚み方向一方面)全体に広がるように溶融されて、第1素子端子2Bと第1端子28とを接合し、第2はんだ40Bは、第2端子29の上面全体に広がるように溶融されて、第2素子端子2Cと第2端子29とを接合する。
【0097】
つまり、複数の圧電素子2のそれぞれが、はんだ40により、複数のサスペンション基板3のそれぞれの第1端子28および第2端子29に接合される。
【0098】
また、図示しないはんだボールが溶融されて、図示しない磁気ヘッドと、対応する磁気ヘッド接続端子25とが接合される。
【0099】
これによって、圧電素子2およびスライダ50が、複数のサスペンション基板3のそれぞれに実装されて、第2工程が完了する。
【0100】
しかるに、第2工程では、複数の圧電素子2が配置されたサスペンション基板集合体1が、素子本体2Aの脱分極開始温度以上に加熱されているため、圧電素子2の素子本体2Aの分極が、一部または全部消失しており、圧電素子2の伸縮性能が低下している。
【0101】
次いで、
図3に示すように、圧電素子2が再分極するように、複数の圧電素子2に一括して電圧を印加する(第3工程)。
【0102】
複数の圧電素子2に一括して電圧を印加するには、まず、支持基板5の枠部10に、公知の電圧印加装置51を電気的に接続する。
【0103】
そして、電圧印加装置51から枠部10に電圧を印加する。
【0104】
印加電圧としては、例えば、1V以上、好ましくは、30V以上、例えば、1000V以下、好ましくは、200V以下である。
【0105】
電圧の印加時間としては、例えば、1秒以上、好ましくは、5秒以上、例えば、60秒以下、好ましくは、30秒以下である。
【0106】
これによって、電圧印加装置51からの電圧が、
図3および
図5Cに示すように、枠部10、1対の先側接続部13Aおよび先側連続部15Bに順次伝達され、第1端子28および第1はんだ40Aを介して、圧電素子2の第1素子端子2Bに印加される。
【0107】
つまり、電圧印加装置51からの電圧が、支持基板5(枠部10、1対の先側接続部13Aおよび先側連続部15B)に伝達され、各サスペンション基板3の第1端子28を介して、複数の圧電素子2に一括して印加される。すると、圧電素子2の素子本体2Aは、第2工程において少なくとも一部が消失した分極が復元し(再分極)、伸縮性能が回復する。
【0108】
次いで、サスペンション基板集合体1から各サスペンション基板3を切り出す(第4工程)。
【0109】
サスペンション基板集合体1から各サスペンション基板3を切り出すには、
図3および
図4に示すように、各サスペンション基板3の接続部13(先側接続部13Aおよび後側接続部13Bのそれぞれ)を、その先後方向の途中で切断する。
【0110】
以上によって、
図4に示すように、圧電素子2が実装されるサスペンション基板3(回路付サスペンション基板の一例)が、サスペンション基板集合体1から切り出される。
【0111】
このような回路付サスペンション基板の製造方法では、第2工程において、はんだ40が、
図5Cに示すように、脱分極温度以上に加熱されることにより溶融されて、圧電素子2と第1端子28とが、はんだ40により接合される。
【0112】
そのため、第2工程では、圧電素子2の素子本体2Aの温度が脱分極温度以上に上昇し、素子本体2Aの分極が消失する場合がある。この点、
図3に示すように、第3工程において、圧電素子2に、素子本体2Aが再分極されるように電圧が印加されるので、素子本体2Aの分極が復元し、伸縮性能が回復する。
【0113】
また、第2工程において、はんだ40が、圧電素子2の素子本体2Aのキュリー温度の1/2以上に加熱されるので、はんだ40を確実に溶融させることができ、第1素子端子2Bと第1端子28との接続信頼性の向上を図ることができる。
【0114】
また、第3工程において、サスペンション基板集合体1の枠部10に電圧を印加することにより、複数の圧電素子2に一括して電圧が印加される。そのため、第2工程において、複数の圧電素子2の素子本体2Aの分極の少なくとも一部が消失していても、第3工程において、複数の圧電素子2の素子本体2Aの分極は一括して復元する。
【0115】
その結果、複数の圧電素子2のそれぞれに別々に電圧を印加する場合と比較して、製造工程の低減を図ることができ、ひいては、圧電素子2を実装するサスペンション基板3の生産性の向上を図ることができる。
【0116】
また、上記の実施形態では、第1工程において、サスペンション基板3を複数備えるサスペンション基板集合体1を準備するが、これに限定されず、サスペンション基板3を1つずつ準備してもよい。この場合、第2工程において、個々のサスペンション基板3に圧電素子2を実装し、第3工程において、圧電素子2が実装される個々のサスペンション基板3に電圧を印加する。
【0117】
また、上記の実施形態では、スライダ50は、第2工程において、圧電素子2とともに、サスペンション基板3に実装したが、スライダ50をサスペンション基板3に実装するタイミングは、第1工程の後であれば特に制限されない。例えば、スライダ50は、第3工程の後、サスペンション基板3に実装してもよく、第4工程の後、サスペンション基板集合体1から切り出されたサスペンション基板3に実装してもよい。
【0118】
しかし、上記の実施形態のように、圧電素子2とスライダ50とをともに、第2工程において、サスペンション基板3に実装することが、リフロー工程の低減の観点から好ましい。
【0119】
これら変形例によっても、上記した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0120】
なお、上記の実施形態および変形例のそれぞれは、適宜組み合わせることができる。