特許第6382626号(P6382626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382626
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】圧電振動片及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   H03H9/19 F
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-159619(P2014-159619)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-39401(P2016-39401A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】有路 巧
(72)【発明者】
【氏名】落合 智之
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−060484(JP,A)
【文献】 特開2004−214859(JP,A)
【文献】 特開2011−061416(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/023685(WO,A1)
【文献】 米国特許第06087759(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00 − 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の振動数で振動する振動部と、
前記振動部から離間して前記振動部の周囲を囲む枠部と、
前記振動部の両主面に形成された励振電極と、
前記励振電極と接続して前記枠部まで伸びる引出電極と、を備え、
前記枠部の主面に形成される前記引出電極は、前記枠部の内側部分に設けた内側領域と、外側部分に設けた外側領域と、前記内側領域と前記外側領域との間を遮るように形成される腐食防止領域と、を有し、
前記内側領域及び前記外側領域は、クロム(Cr)層と、前記クロム(Cr)層の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)層と、前記ニッケルタングステン(NiW)層の表面に形成される金(Au)層又は銀(Ag)層と、を含んで形成され、前記腐食防止領域はクロム(Cr)層、ニッケル(Ni)層、タングステン(W)層、モリブデン(Mo)層、ニッケルタングステン(NiW)層、チタン(Ti)層、又はクロム(Cr)層とニッケルタングステン(NiW)層との2層により形成される圧電振動片。
【請求項2】
所定の振動数で振動する振動部と、
前記振動部から離間して前記振動部の周囲を囲む枠部と、
前記振動部の両主面に形成された励振電極と、
前記励振電極と接続して前記枠部まで伸びる引出電極と、を備え、
前記枠部の主面に形成される前記引出電極は、前記枠部の外側部分に設けた外側領域と、前記枠部の内側部分に設けた腐食防止領域と、を有し、
前記外側領域はクロム(Cr)層と、前記クロム(Cr)層の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)層と、前記ニッケルタングステン(NiW)層の表面に形成される金(Au)層又は銀(Ag)層と、を含んで形成され、前記腐食防止領域はクロム(Cr)層、ニッケル(Ni)層、タングステン(W)層、モリブデン(Mo)層、ニッケルタングステン(NiW)層、チタン(Ti)層、又はクロム(Cr)層とニッケルタングステン(NiW)層との2層により形成される圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電振動片と、
前記枠部と対向する主面の反対面に形成された実装端子と、側面に形成される切欠き部と、前記切欠き部に形成されて前記実装端子及び前記引出電極に接続する切欠き部電極と、を有し、前記枠部に接合材で接合するベースと、を備える圧電デバイス。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の圧電振動片と、
前記枠部と対向する主面の反対面に形成された実装端子と、側面に形成される切欠き部と、前記切欠き部に形成されて前記実装端子及び前記引出電極の前記外側領域に接続する切欠き部電極と、を有し、前記枠部に接合材で接合するベースと、を備える圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ内への水分の侵入が防がれた圧電振動片及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパーソナルコンピュータなどの様々な電子機器には、主に周波数の選択や制御のために圧電デバイスが広く使われている。圧電デバイスは機能によって圧電振動子、圧電発振器、SAWデバイスや光学デバイス等に分類できる。そして、圧電素子に水晶を用いた水晶振動子や水晶発振器等が広く知られており、一般的に使われている。
【0003】
ここで水晶振動子として、例えば、特許文献1では次のようなものが開示されている。まず、両主面に励振電極が形成された振動部と、振動部と接続して、当該振動部の周囲を囲む枠部がある。枠部には板状のベース及びリッドが接合してキャビティが形成され、振動部がキャビティ内に密封される。ベースの側面には切欠き部が形成され、ベースの裏面(枠部と接合する面の反対面)には実装端子が形成される。ここで、励振電極からは、枠部まで伸びるように引出電極が形成される。引出電極は、ベースの切欠き部に対向する領域まで伸びる。そして、実装端子は、切欠き部の側面に形成された電極を経由して引出電極に導通する。このような引出電極は、例えば、クロム(Cr)、ニッケルタングステン(NiW)、及び金(Au)により形成される。また、枠部に形成される引出電極は、電気抵抗の上昇及びクリスタルインピーダンス(CI)値の上昇を抑えるために、枠部の幅いっぱいに形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−017163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、引出電極の一部が圧電デバイスの外部に露出し、ニッケルタングステン(NiW)と金(Au)とが空気中の湿気等に触れることにより異種金属接触腐食を起こし、この腐食が引出電極を介してキャビティ側に伝わることによりキャビティ内に水分が侵入する場合があった。
【0006】
以上のような事情に鑑みて、本発明はキャビティ内への水分の侵入が防がれた圧電デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電振動片は、所定の振動数で振動する振動部と、振動部から離間して振動部の周囲を囲む枠部と、振動部の両主面に形成された励振電極と、励振電極に接続して枠部まで伸びる引出電極と、を備える。また、枠部の主面に形成される引出電極は、枠部の内側部分に設けた内側領域と、外側部分に設けた外側領域と、内側領域と外側領域との間を遮るように形成される腐食防止領域と、を有し、内側領域及び外側領域が、クロム(Cr)層と、クロム(Cr)層の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)層と、ニッケルタングステン(NiW)層の表面に形成される金(Au)層又は銀(Ag)層と、を含んで形成され、腐食防止領域がクロム(Cr)層、ニッケル(Ni)層、タングステン(W)層、モリブデン(Mo)層、ニッケルタングステン(NiW)層、チタン(Ti)層、又はクロム(Cr)層とニッケルタングステン(NiW)層との2層により形成される。
【0008】
第2観点の圧電振動片は、所定の振動数で振動する振動部と、振動部から離間して振動部の周囲を囲む枠部と、振動部の両主面に形成された励振電極と、励振電極と接続して枠部まで伸びる引出電極と、を備える。また、枠部の主面に形成される引出電極は、枠部の外側部分に設けた外側領域と、枠部の内側部分に設けた腐食防止領域と、を有し、外側領域がクロム(Cr)層と、クロム(Cr)層の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)層と、ニッケルタングステン(NiW)層の表面に形成される金(Au)層又は銀(Ag)層と、を含んで形成され、腐食防止領域がクロム(Cr)層、ニッケル(Ni)層、タングステン(W)層、モリブデン(Mo)層、ニッケルタングステン(NiW)層、チタン(Ti)層、又はクロム(Cr)層とニッケルタングステン(NiW)層との2層により形成される。
【0009】
第3観点の圧電振動片は、所定の振動数で振動する振動部と、振動部から離間して振動部の周囲を囲む枠部と、振動部の両主面に形成された励振電極と、励振電極と接続して枠部まで伸びる引出電極と、を備える。また、枠部の主面に形成される引出電極は、枠部の内側部分に設けた内側領域と、枠部の外側部分に設けた腐食防止領域と、を有し、内側領域がクロム(Cr)層と、クロム(Cr)層の表面に形成されるニッケルタングステン(NiW)層と、ニッケルタングステン(NiW)層の表面に形成される金(Au)層又は銀(Ag)層と、を含んで形成され、腐食防止領域がクロム(Cr)層、ニッケル(Ni)層、タングステン(W)層、モリブデン(Mo)層、ニッケルタングステン(NiW)層、チタン(Ti)層、又はクロム(Cr)層とニッケルタングステン(NiW)層との2層により形成される。
【0010】
第4観点の圧電デバイスは、第1観点から第3観点に記載の圧電振動片と、枠部と対向する主面の反対面に形成された実装端子、側面に形成される切欠き部、及び切欠き部に形成されて実装端子及び引出電極に接続する切欠き部電極を有し、枠部に接合材で接合するベースと、を備える圧電デバイス。
【0011】
第5観点の圧電デバイスは、第1観点又は第2観点に記載の圧電振動片と、枠部と対向する主面の反対面に形成された実装端子、側面に形成される切欠き部、及び切欠き部に形成されて実装端子及び引出電極の外側領域に接続する切欠き部電極、を有し、枠部に接合材で接合するベースと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧電振動片及び圧電デバイスによれば、キャビティ内への水分の侵入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】圧電デバイス100の分解斜視図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】(a)は、圧電振動片120の上面図である。 (b)は、圧電振動片120の下面図である。
図4】ベース140の下面図である。
図5】(a)は、圧電デバイス100の一部を拡大した断面図である。 (b)は、図5(a)の点線181の拡大図である。
図6】圧電デバイス100の製造方法が示されたフローチャートである。
図7】圧電ウエハW120の下面図である。
図8】圧電ウエハW120への電極形成の工程が示されたフローチャートである。
図9】(a)は、クロム(Cr)のブロックが形成された圧電ウエハW120の中の圧電振動片120の部分下面図である。 (b)は、図9(a)のB−B断面図である。 (c)は、金属膜が形成された圧電ウエハW120の中の圧電振動片120の部分下面図である。 (d)は、図9(c)のC−C断面図である。 (e)は、励振電極128及び引出電極130が形成された圧電ウエハW120の中の圧電振動片120の部分下面図である。 (f)は、図9(e)のD−D断面図である。
図10】(a)は、ベースウエハW140の平面図である。 (b)は、リッドウエハW110の平面図である。
図11】(a)は、腐食防止領域230Bが示された枠部の断面図である。 (b)は、圧電デバイス200の一部を拡大した断面図である。
図12】(a)は、腐食防止領域330Bが示された枠部122の断面図である。 (b)は、圧電デバイス300の一部を拡大した断面図である。
図13】(a)は、圧電振動片420の上面図である。 (b)は、圧電振動片520の下面図である。
図14】(a)は、圧電振動片620の下面図である。 (b)は、図14(a)のE−E断面を含む圧電デバイス600の部分断面図である。 (c)は、圧電デバイス600の一部を拡大した断面図である。
図15】(a)は、圧電振動片720の下面図である。 (b)は、圧電デバイス700の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の全体構成>
図1は、圧電デバイス100の分解斜視図である。圧電デバイス100は、図1に示されるように、ベース140と、圧電振動片120と、リッド110と、が積層されることにより形成される。圧電振動片120には、例えばATカットの水晶振動片が用いられる。ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶振動片の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100において、圧電デバイス100の長手方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X軸方向及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0016】
圧電振動片120には、中央に所定の振動数で振動する矩形状の振動部124が設けられる。振動部124の外側には、振動部124と離間して振動部124を囲む枠部122が設けられる。振動部124と枠部122とは、振動部124の−X軸側の辺から−X軸方向に伸びて枠部122に到達する接続部126によって、接続される。
【0017】
振動部124の両主面である+Y’軸側の面及び−Y’軸側の面には、図1に示される通り、互いに対向する励振電極128が形成される。また、各励振電極128からは、接続部126を介して枠部122に引出電極130が引き出されている。枠部122の−Y’軸側の面に形成される引出電極130は、枠部122の内周側の内側領域130Cと、枠部122の外周側の外側領域130Aと、内側領域130Cと外側領域130Aとを遮るように形成される腐食防止領域130Bと、を有している。
【0018】
ベース140は平板状に形成され、枠部122の−Y’軸側の面に接合される。ベース140は振動部124に対向するように配置される。ベース140は、例えば、ガラス又は水晶等を基材として形成される。また、ベース140の−X軸側の+Z’軸側及び+X軸側の−Z’軸側の角には、ベース140の角が切り取られるように形成される切欠き部148が形成されている。ベース140には電極が形成されるが、図1では示されていない。ベース140に形成される電極に関しては、図2図4図5(a)、及び図5(b)で説明される。
【0019】
リッド110は平板状に形成され、枠部122の+Y’軸側の面に接合される。リッド110は振動部124に対向するように配置される。リッド110は、例えば、ガラス又は水晶等で形成される。
【0020】
図2は、図1のA−A断面図である。リッド110と枠部122とは、ポリイミド等の樹脂接着剤又は低融点ガラス等の非導電性の接合材150で接合される。また、ベース140と枠部122とに関しても、ポリイミド等の樹脂接着剤又は低融点ガラス等の非導電性の接合材150で接合される。こうして振動部124は、リッド110、枠部122、及びベース140で囲まれたキャビティ101に密閉封入される。また、振動部124は、圧電デバイス100の周波数を調整するため、及び振動部124がリッド110及びベース140に接触しないように枠部122よりも薄く形成されている。
【0021】
ベース140の−Y’軸側の面には一対の実装端子142が形成される。実装端子142の一方はベース140の+X軸側に形成され、実装端子142の他方はベース140の−X軸側に形成される。それぞれの実装端子142は切欠き部148まで伸びている。また、切欠き部148には切欠き部電極144が形成されており、実装端子142と引出電極130とを電気的に接続している。これにより、実装端子142は励振電極128に電気的に接続される。
【0022】
図3(a)は、圧電振動片120の上面図である。振動部124と枠部122との間には圧電振動片120をY’軸方向に貫通する貫通溝132が形成されている。また、振動部124と枠部122とは接続部126を介して接続されている。振動部124には励振電極128が形成されており、励振電極128からは接続部126を介して枠部122に引出電極130が引き出されている。引出電極130は、貫通溝132の側面134を介して枠部122の−Y’軸側の面に引き出されている。
【0023】
図3(b)は、圧電振動片120の下面図である。−Y’軸側の面に形成された励振電極128からは、引出電極130が引き出されている。引出電極130は、−Y’軸側の面の励振電極128から−X軸方向に伸び、接続部126、枠部122の−X軸側、及び−Z’軸側の部分を通って、枠部122の−Y’軸側の面であって、−Z’軸側かつ+X軸側の角部まで伸びる。また、+Y’軸側の面に形成された励振電極128から引き出される引出電極130は、貫通溝132の側面134を介して枠部122の−Y’軸側の面に引き出されている。−Y’軸側の面に引き出された引出電極130は、枠部122の−Y’軸側の面であって、+Z’軸側かつ−X軸側の角部まで伸びる。これらの引出電極130は、枠部122の幅いっぱいに形成されている。これにより、引出電極130に起因する電気抵抗の上昇が抑えられており、圧電振動片120のクリスタルインピーダンス(CI)値の上昇が抑えられている。
【0024】
枠部122の一部は、ベース140に接続された場合にベース140の切欠き部148に面する(図2参照)。図3(b)では、枠部122における切欠き部148に面する領域である切欠き部対向領域170が点線で囲まれて示されている。枠部122における切欠き部対向領域170には、各引出電極130の外側領域130Aが形成されている。
【0025】
引出電極130では、内側領域130Cが励振電極128に電気的に接合され、外側領域130Aは腐食防止領域130Bを介して内側領域130Cに電気的に接続される。また、外側領域130Aは枠部122の外周側の辺131Aに接して形成されるが枠部122の内周側の辺131Bには接しない。内側領域130Cは枠部122の内周側の辺131Bに接して形成されるが枠部122の外周側の辺131Aには接しない。なお、引出電極130の外側領域130Aは枠部122の外周側の辺131Aに接し、内側領域130Cは枠部122の内周側の辺131Bに接して形成されるが、それぞれ外周側の辺131A及び内周側の辺131Bから若干枠部側に後退して形成されていても良い。
【0026】
図4は、ベース140の下面図である。ベース140は、主面が略長方形に形成されており、−X軸側の+Z’軸側及び+X軸側の−Z’軸側の角には長方形の一部が切欠かれるように切欠き部148が形成されている。ベース140の−Y’軸側の面の+X軸側及び−X軸側にはそれぞれ実装端子142が形成されている。また、切欠き部148の側面には切欠き部電極144が形成される。
【0027】
<圧電デバイス100の電極の構成>
図5(a)は、圧電デバイス100の一部を拡大した断面図である。図5(a)では、図2の点線180で囲まれた領域が示されている。また、図5(a)では、圧電デバイス100が基板160に載置された状態の断面図として示されている。以下に、引出電極130及び切欠き部電極144の電極の構成について説明する。
【0028】
実装端子142は、ベース140の基材上に形成される実装端子142Aと実装端子142Aの表面に形成される実装端子142Bとの2層で形成される。また、切欠き部電極144は切欠き部電極144Aと切欠き部電極144Aの表面に形成される切欠き電極144Bとの2層で構成される。実装端子142Aと切欠き部電極144Aとが一体的に形成され、実装端子142Bと切欠き部電極144Bとが一体的に形成されている。また、切欠き部電極144Aの一部が引出電極130の表面に接触するように形成されることにより、切欠き部電極144と引出電極130とが電気的に接続される。
【0029】
実装端子142A及び切欠き部電極144Aは、例えばスパッタ又は蒸着などで形成される。実装端子142B及び切欠き部電極144Bは、例えば無電解メッキで形成される。また、実装端子142B及び切欠き部電極144Bは、実装端子142A及び切欠き部電極144Aより厚く形成される。これにより、実装端子142及び切欠き部電極144の全体が厚く形成されるため、実装端子142と切欠き部電極144との断線が防止され、導通が確保される。
【0030】
圧電デバイス100は、例えば基板160に実装されることにより用いられる。この場合、圧電デバイス100の実装端子142は、基板160上に形成される基板電極161にハンダ152を介して接合され、基板電極161に電気的に接続される。また、図5(a)に示されるように、ハンダ152はハンダ152の濡れ性によって切欠き部電極144及び引出電極130にも接触する場合がある。
【0031】
図5(b)は、図5(a)の点線181の拡大図である。切欠き部電極144Aは、さらに3層からなる。ベース140の基材に接する層である切欠き部電極144Aの第1層193Aは、例えばクロム(Cr)層として形成される。当該第1層193Aの表面に形成される第2層193Bは、ニッケル(Ni)及びタングステン(W)の合金であるニッケルタングステン(NiW)層として形成される。当該第2層193Bの表面に形成される第3層193Cは、金(Au)層として形成される。電極材料としては金(Au)を用いることが一般的であるが、ベース140の基材となる水晶には金(Au)が付着し難いため、クロム(Cr)層が金(Au)層の下地として形成される。また、クロム(Cr)は金(Au)に拡散し易く、クロム(Cr)層のクロム(Cr)が金(Au)層に拡散した場合には電極の付着強度の低下が起こるため、この様なクロム(Cr)の拡散を防止するためにクロム(Cr)層と金(Au)層との間にニッケルタングステン(NiW)層が形成される。実装端子142Aは切欠き部電極144Aと一体的に形成されるため、実装端子142Aも切欠き部電極144Aと同様に第1層193A、第2層193B、及び第3層193Cにより形成される。
【0032】
また、切欠き部電極144Bは2層からなる。切欠き部電極144Aの表面に接するように形成される層である切欠き部電極144Bの第1層194Aは、例えば、ニッケル(Ni)層として形成される。当該第1層194Aの表面に形成される第2層194Bは金(Au)層として形成される。そして、当該第2層194Bが切欠き部電極144の表面に露出する。実装端子142Bは切欠き部電極144Bと一体的に形成されるため、実装端子142Bも切欠き部電極144Bと同様に第1層194A及び第2層194Bにより形成される。
【0033】
圧電振動片120に関する電極では、腐食防止領域130B以外の引出電極130及び励振電極128が、圧電振動片120の基材の表面に形成される第1層191Aと、第1層191Aの表面に形成される第2層191Bと、第2層191Bの表面に形成される第3層191Cと、により構成される。これらの各層は、切欠き部電極144Aと同様に、第1層191Aがクロム(Cr)層、第2層191Bがニッケルタングステン(NiW)層、第3層191Cが金(Au)層として形成される。一方、腐食防止領域130Bは、例えばクロム(Cr)層のみで形成される。腐食防止領域130Bを構成するクロム(Cr)層は、クロム(Cr)層が厚く形成されたクロム(Cr)のブロック154として形成されている。なお、クロム(Cr)のブロック154の表面にニッケルタングステン(NiW)層が形成されていてもよい。
【0034】
腐食防止領域130Bは、圧電振動片の製造で多用される成膜装置で容易に製造できること、及び材料費も抑えられること等の利点があるため、クロム(Cr)単層又はクロム(Cr)とニッケルタングステン(NiW)との2層構造として形成されることが好ましい。一方、腐食防止領域130Bは、金(Au)を含まず、圧電振動片120の基材となる水晶との付着強度が強く、ハンダ152に浸食され難く、導電性を有する金属により形成されることができる。そのため、浸食防止領域130Bは、例えば、クロム(Cr)の代わりに、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、ニッケルタングステン(NiW)、モリブデン(Mo)、又はチタン(Ti)により形成されても良い。
【0035】
従来の圧電デバイスでは、引出電極に異種金属接触腐食が起こり、キャビティ内に水分が侵入するという問題があった。異種金属接触腐食とは、金(Au)等のイオン化傾向が小さい金属と、ニッケルタングステン(NiW)等のイオン化傾向が大きい金属とが互いに接触し、さらにこの接触した部分に水分が触れることにより起こる激しい腐食をいう。従来の圧電デバイスでは、図2に示される圧電デバイス100と同様に引出電極の一部が圧電デバイス100の外部に剥き出しになって形成され、図3(b)に示されるように、引出電極130が枠部122の外周側の辺131Aの全体の半分近い長さに形成されるため、引出電極が圧電デバイスの外部に接触し外気の水分に晒される面積が広くなり、金(Au)とニッケルタングステン(NiW)との間に異種金属接触腐食が起こりやすい。このような従来の圧電デバイスで引出電極に異種金属接触腐食が起こった場合には、腐食が引出電極を介して圧電デバイスの外部からキャビティ内に伝わり、これによってキャビティ内に水分が侵入し、電気特性が劣化するという問題が起こる。
【0036】
圧電デバイス100では、引出電極130の外側領域130Aが枠部122の内周側の辺131Bに接触していないこと、及び外側領域130Aと内側領域130Cとの間を遮るように金(Au)を含まない腐食防止領域130Bが形成されることにより、外側領域130Aで腐食が発生したとしても腐食防止領域130Bで遮られ、腐食がキャビティ101に到達してキャビティ101内に水分が侵入することが防がれている。
【0037】
<圧電デバイス100の基板160への実装方法>
圧電デバイス100は、図5(a)に示されるように、基板160に実装されることにより用いられる。このような実装は次のようにして行われる。まず、基板電極161が形成された基板160を用意する。次に、基板電極161の表面にハンダ152のペーストを塗布する。次に、ハンダ152のペースト上に実装端子142が接触するように基板160に圧電デバイス100を載置する。次に、ハンダ152のペーストを加熱して溶融させることにより、圧電デバイス100が基板160に接合される。ハンダ152のペーストが加熱された際、ハンダ152は、図5(a)に示される通り、切欠き部電極144の表面を這い上がり、引出電極130の枠部122の切欠き部対向領域170における外側面に到達する。
【0038】
ここで、ハンダは鉛(Pb)及びスズ(Sn)を主成分とした合金であり、ハンダの主成分であるスズ(Sn)は、金(Au)と合金を形成しやすい性質があることが知られている。そのため、スズ(Sn)と金(Au)とが接触した状態で加熱されると、スズ(Sn)は金(Au)を浸食していく。図5(b)に示されるように、ハンダ152と外側領域130Aの第3層191Cとが接触する場合には、ハンダ152が第3層191Cを構成する金(Au)を浸食して励振電極128の方向に進む。従来の圧電デバイスでは、このようにハンダのスズ(Sn)が引出電極に含まれる金(Au)を介して圧電振動片の励振電極に到達し、励振電極をも浸食することで圧電振動片の周波数をずらし、又は圧電振動片の発振を妨げる場合があった。
【0039】
圧電デバイス100では、引出電極130に腐食防止領域130Bが形成されることにより、ハンダ152が外側領域130Aを浸食していっても、クロム(Cr)からなる腐食防止領域130Bに到達すると、腐食防止領域130Bで浸食が実質的に止まる。これにより、ハンダ152が励振電極128にまで到達することが防がれている。
【0040】
<圧電デバイス100の製造方法>
図6は、圧電デバイス100の製造方法が示されたフローチャートである。以下に、図6のフローチャートを参照して圧電デバイス100の製造方法を説明する。
【0041】
ステップS101では、圧電ウエハW120が用意される。ステップS101で用意される圧電ウエハW120には、複数の圧電振動片120が形成されている。
【0042】
図7は、圧電ウエハW120の下面図である。圧電ウエハW120には、複数の圧電振動片120が形成されており、互いに隣接した圧電振動片120の境界にはスクライブライン171が示されている。各圧電振動片120には貫通溝132が形成され、励振電極128及び引出電極130が形成されている。
【0043】
ステップS101では、まず圧電材料により形成されたベアウエハが用意される。圧電デバイス100では圧電材料として水晶が用いられるため、用意されるベアウエハは水晶のベアウエハである。次に、ベアウエハをエッチングして貫通溝132を形成することにより、各圧電振動片130が形成される領域に振動部124及び接続部126の外形を形成する。この際、振動部124を所定の厚さにして、圧電デバイス100の周波数が所定の値になるように調整する。この後、圧電ウエハW120に励振電極128及び引出電極130を形成する。
【0044】
図8は、圧電ウエハW120への電極形成の工程が示されたフローチャートである。図8のフローチャートで示される電極形成の工程はステップS101の一部として行われる。
【0045】
図8のステップS211では、クロム(Cr)のブロック154が形成される。クロム(Cr)のブロック154は腐食防止領域130Bを構成する。
【0046】
図9(a)は、クロム(Cr)のブロックが形成された圧電ウエハW120の中の圧電振動片120の部分下面図である。クロム(Cr)のブロック154は、図9(a)に示されるように、引出電極130の腐食防止領域130Bとなる領域に形成される。このようなクロム(Cr)のブロック154は、圧電ウエハW120の−Y’軸側の表面の全面にクロム(Cr)膜をスパッタ等により形成し、クロム(Cr)膜の表面にレジストを塗布し、さらにレジスト膜の露光、現像、及びクロム(Cr)膜のエッチングを行うことにより形成される。圧電振動片120では−Y’軸側の面のみに腐食防止領域130Bが形成されるため、これらの工程は圧電ウエハW120の−Y’軸側の面のみに行われるが、後述される圧電振動片220(図13(a)参照)では+Y’軸側の面にも腐食防止領域が形成されるため、この場合には+Y’軸側及び−Y’軸側の両面同時にこれらの工程が行われる。
【0047】
図9(b)は、図9(a)のB−B断面図である。クロム(Cr)のブロック154の幅L1は、少なくとも10μm程度あれば腐食防止領域130Bとしての機能を果たすことができる。そのため、幅L1は10μm以上に形成されることが望ましい。また、ブロック154の高さH1は、外側領域130Aと内側領域130Cとの間の電気抵抗を大きく上昇させない高さに形成される。また、クロム(Cr)のブロック154は枠部122の幅方向の中央付近に形成されることにより、多少マスクがずれてもブロック154が形成されない箇所が生じることがないようにされている。
【0048】
図8のステップS212では、電極を構成する金属膜が形成される。ステップS212では、圧電ウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の面の全面に、第1層191A、第2層191B、及び第3層191Cを構成する金属膜をスパッタ等により形成する。
【0049】
図9(c)は、金属膜が形成された圧電ウエハW120の中の圧電振動片120の部分下面図である。ステップS212では、圧電ウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の全面にクロム(Cr)のスパッタ等で第1層191Aを形成し、ニッケルタングステン(NiW)のスパッタ等で第2層191Bを形成し、金(Au)のスパッタ等で第3層191Cを形成する。これらの層は、貫通溝132の側面にも形成される。
【0050】
図9(d)は、図9(c)のC−C断面図である。図9(d)に示されるように、第1層191A、第2層191B、及び第3層191Cは、クロム(Cr)のブロック154上にも形成される。
【0051】
図8のステップS213では、励振電極及び引出電極が形成される。ステップS213では、ステップS212で形成された金属膜をエッチングにより除去することにより、励振電極128及び引出電極130を形成する。
【0052】
図9(e)は、励振電極128及び引出電極130が形成された圧電ウエハW120の中の圧電振動片120の部分下面図である。ステップS213では、第3層191Cの表面にレジストを塗布し、さらにレジスト膜の露光及び現像を行い、引出電極130及び励振電極128を残すように金属膜をエッチングにより除去する。これにより、図9(e)に示されるような引出電極130及び励振電極128が形成される。
【0053】
図9(f)は、図9(e)のD−D断面図である。腐食防止領域130Bの形成は、クロム(Cr)のブロック154上の第1層191Aから第3層191Cをエッチングすることにより行うことができる。図9(f)では、クロム(Cr)のブロック154上の第1層191Aから第3層191Cがエッチングにより除去されているが、第3層191Cのみ、又は第2層191Bと第3層191Cとをエッチングして第1層191Aを残しても良い。引出電極130の腐食は第2層191Bと第3層191Cとが接触することにより引き起こされるため、少なくとも金(Au)で構成される第3層191Cが腐食防止領域130Bに形成されないようにすることにより引出電極130の腐食がキャビティ101に伝わることを防ぐことができる。
【0054】
ステップS213では、レジストを塗布からエッチングまでの工程を、腐食防止領域130Bと励振電極128及び引出電極130を構成しない領域とについて同時に行っても良いし、別々に行っても良い。別々に行う場合には、腐食防止領域130Bと励振電極128及び引出電極130を構成しない領域とのエッチング条件を変えることができ、クロム(Cr)のブロック154がエッチングされすぎることを防ぐように調整し、又は第2層130B及び第3層130Cをエッチングせずに残すこと等が可能である。また、腐食防止領域130Bと励振電極128及び引出電極130が形成されない領域とを同時にエッチングする場合には、製造工程を少なくすることができるため好ましい。
【0055】
図6に戻って、ステップS102では、ベースウエハW140が用意される。ベースウエハW140には、複数のベース140が形成される。ステップS102は、ベースウエハW140を用意する工程である。
【0056】
図10(a)は、ベースウエハW140の平面図である。ベースウエハW140には、複数のベース140が形成されており、互いに隣接したベース140の境界にはスクライブライン171が示されている。ベースウエハW140は、例えば、水晶等の圧電材料又はガラス等により形成される。ステップS102では、まず圧電材料等により形成されたベアウエハが用意される。このベアウエハをエッチングすることにより、切欠き部148となる領域が貫通されて、切欠き部148が形成される。
【0057】
ステップS103では、リッドウエハW110が用意される。リッドウエハW110には、複数のリッド110が形成される。ステップS103は、リッドウエハW110を用意する工程である。
【0058】
図10(b)は、リッドウエハW110の平面図である。リッドウエハW110には、複数のリッド110が形成されており、互いに隣接したリッド110の境界にはスクライブライン171が示されている。リッドウエハW110は、例えば、水晶等の圧電材料又はガラス等により形成される。ステップS103では、平板状の圧電材料又はガラス等により形成されたベアウエハが用意される。
【0059】
ステップS104では、接合材150により圧電ウエハW120とベースウエハW140とが接合される。ステップS104は、圧電ウエハとベースウエハとの接合工程である。ステップS104では、圧電ウエハW120の−Y’軸側の面とベースウエハW140の+Y’軸側の面とが、圧電ウエハW120の各圧電振動片120とベースウエハW140の各ベース140とが対向するように接合材150を介して互いに接合される。
【0060】
ステップS105では、接合材150により圧電ウエハW120とリッドウエハW110とが接合される。ステップS105は、圧電ウエハとリッドウエハとの接合工程である。ステップS105では、圧電ウエハW120の+Y’軸側の面とリッドウエハW110の−Y’軸側の面とが、圧電ウエハW120の各圧電振動片120とリッドウエハW110の各リッド110とが対向するように接合材150を介して互いに接合される。これによって、積層されたウエハが形成される。
【0061】
ステップS106では、実装端子142及び切欠き部電極144が形成される。ステップS106は、実装端子及び切欠き部電極形成工程である。当該積層されたウエハの−Y’軸側の面であるベースウエハW140側の面からスパッタ又は蒸着などによって、クロム(Cr)の層、ニッケルタングステン(NiW)の層、及び金(Au)の層が順次形成されて、図5(a)に示される実装端子142A及び切欠き部電極144Aが形成される。次に無電解メッキによって、実装端子142A及び切欠き部電極144Aの表面に、ニッケル(Ni)の層及び金(Au)の層が順次形成され、実装端子142B及び切欠き部電極144Bが形成される。
【0062】
ステップS107では、積層されたウエハがダイシングにより切断される。ステップS107は、切断工程である。当該積層されたウエハは、スクライブライン171に沿ってダイシングされることにより、個片になった圧電デバイス100が形成される。
【0063】
(第2実施形態)
腐食防止領域は、様々な方法により様々な形状に形成することができる。以下に腐食防止領域の変形例について説明する。また、以下の実施形態において第1実施形態と同じ部分に関しては第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0064】
<腐食防止領域230Bの構成>
図11(a)は、腐食防止領域230Bが示された枠部の断面図である。図11(a)は、図9(f)に示される圧電振動片120の断面図に相当する部分の断面図である。腐食防止領域230Bは、クロム(Cr)により形成される第1層191Aのみにより形成されている。
【0065】
腐食防止領域230Bは、図8において、ステップS211を行わずにステップS212及びステップS213を行うことにより形成することができる。ステップS212では枠部122に第1層191Aから第3層191Cまでを形成し、ステップS213で腐食防止領域230Bに相当する領域の第3層191C及び第2層191Bをエッチングにより除去する。
【0066】
図11(b)は、圧電デバイス200の一部を拡大した断面図である。圧電デバイス200は、圧電デバイス100とは腐食防止領域の形状のみが異なっており、その他の形状、構成は圧電デバイス100と同じである。図11(b)は、図5(b)の圧電デバイス100の部分断面図に相当する圧電デバイス200の部分断面図である。
【0067】
圧電デバイス200では、腐食防止領域230Bに金(Au)層が形成されていないことにより、引出電極130の外側領域130Aが水分等により腐食しても、この腐食が腐食防止領域230Bで止められるため内側領域130Cに伝わらない。また、腐食防止領域230Bに金(Au)層が形成されていないため、図11(b)に示されるようにハンダ152が外側領域130Aの金(Au)より成る第3層191Cに接触して外側領域130Aの第3層191Cを浸食したとしても、この侵食は腐食防止領域230Bで止められるため、内側領域130Cが浸食されることがない。図11(b)では、腐食防止領域230Bで第3層191C及び第2層191Bがエッチングにより除去されているが、第3層191Cのみが除去されていても良い。圧電デバイス200では、ステップS211が省略されるため工程が簡略化され、製造が容易になるため好ましい。
【0068】
<腐食防止領域330Bの構成>
図12(a)は、腐食防止領域330Bが示された枠部122の断面図である。図12(a)は、図9(f)に示される圧電振動片120の断面図に相当する部分の断面図である。腐食防止領域330Bは、クロム(Cr)のブロック155により形成されている。
【0069】
腐食防止領域330Bの形成は、図8において、ステップS211を行わずにステップS212及びステップS213を行い、その後、腐食防止領域330Bにクロム(Cr)のブロック155をスパッタ又は蒸着などで形成する。
【0070】
図12(b)は、圧電デバイス300の一部を拡大した断面図である。圧電デバイス300は、圧電デバイス100と腐食防止領域のみが異なっており、その他の形状、構成は圧電デバイス100と同じである。図12(b)は、圧電デバイス300の図5(b)に相当する部分の断面図である。
【0071】
圧電デバイス300では、腐食防止領域330Bに金(Au)層が形成されていないことにより、引出電極130の外側領域130Aが水分等により腐食しても、この腐食が腐食防止領域330Bで止められるため内側領域130Cに伝わらない。また、腐食防止領域330Bに金(Au)層が形成されていないため、図12(b)に示されるようにハンダ152が外側領域130Aの金(Au)より成る第3層191Cに接触して外側領域130Aの第3層191Cを浸食したとしても、この侵食は腐食防止領域330Bで止められるため、内側領域130Cが浸食されることがない。図12(b)では、腐食防止領域330Bで第1層191Aから第3層191Cがエッチングにより除去されているが、第3層191Cのみ又は第2層191B及び第3層191Cが除去されていても良い。圧電デバイス300では、腐食防止領域330Bの導通をより確実に確保することができるため好ましい。
【0072】
(第3実施形態)
腐食防止領域は、引出電極の様々な位置に形成されることができる。以下に腐食防止領域が様々な位置に形成された腐食防止領域の変形例について説明する。また、以下の実施形態において第1実施形態と同じ部分は第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0073】
<圧電振動片420の構成>
図13(a)は、圧電振動片420の上面図である。圧電振動片420では、圧電振動片130において、引出電極130の代わりに引出電極430が形成されている。その他の構成は圧電振動片130と同じである。引出電極430は、枠部122の+Y’軸側の面に形成される引出電極430が枠部122の幅全体に亘って形成されている。引出電極430の−Y’軸側の構成は、圧電振動片130と同じである。
【0074】
圧電振動片120では+Y’軸側の面に形成される引出電極130が枠部122の外周側の辺131Aに接するように形成されないため引出電極130が圧電デバイス100の外部に接せず、枠部122の+Y’軸側の面の引出電極130は腐食されない(図3(a)参照)。しかし、枠部122の+Y’軸側の引出電極が枠部122の外周側の辺131Aに接する場合には、引出電極が圧電デバイスの外部の湿気等の水分に接触する可能性があるため、引出電極が腐食する場合がある。
【0075】
圧電振動片420は、枠部122の+Y’軸側の面に形成される引出電極430が、枠部122の外周側の辺131Aに接する外側領域430A、枠部122の内周側の辺131Bに接する内側領域430C、及び外側領域430Aと内側領域430Cとの間を遮るように形成される腐食防止領域430Bの3つの領域に分けられて形成されている。外側領域430A及び内側領域430Cは、圧電振動片130の外側領域130A及び内側領域130Cと同じ膜構成により形成される(図9(f)参照)。また、腐食防止領域430Bは、腐食防止領域130B(図9(f))、腐食防止領域230B(図11(a))、又は腐食防止領域330B(図12(a))と同じ構成により形成される。これにより、外側領域430Aに形成される引出電極430が腐食してもその腐食は腐食防止領域430Bで遮られ、内側領域430Cに伝わることが防がれる。
【0076】
<圧電振動片520の構成>
図13(b)は、圧電振動片520の下面図である。圧電振動片520では、圧電振動片130において、引出電極130の代わりに引出電極530が形成されている。その他の構成は圧電振動片130と同じである。引出電極530は、枠部122の−Y’軸側の面に形成される引出電極が、枠部122の外周側の辺131Aに接する外側領域530A及び枠部122の内周側の辺131Bに接する腐食防止領域530Bにより形成されている。外側領域530Aは枠部122の内周側の辺131Bに接せず、圧電振動片130の外側領域130Aと同じ膜構成により形成される(図9(f)参照)。また、腐食防止領域530Bは、腐食防止領域130B(図9(f))、腐食防止領域230B(図11(a))、又は腐食防止領域330B(図12(a))と同じ構成により形成される。
【0077】
圧電振動片520は、外側領域530Aに腐食が発生しても腐食防止領域530Bが形成されていることにより貫通溝132側にまで腐食が伝わらず、キャビティ101内に腐食が伝わらないため、キャビティ101内に水分が侵入することを防ぐことができる。また、腐食防止領域530Bが枠部122の−Y’軸側の面に形成される引出電極530の最内側に形成されるので、腐食防止領域530Bを圧電デバイス内に納めることができる。
【0078】
<圧電振動片620の構成>
図14(a)は、圧電振動片620の下面図である。圧電振動片620では、圧電振動片130において、引出電極130の代わりに引出電極630が形成されている。その他の構成は圧電振動片130と同じである。引出電極630は、枠部122の−Y’軸側の面に形成される引出電極が、枠部122の外周側の辺131Aに接する腐食防止領域630B及び枠部122の内周側の辺131Bに接する内側領域630Cにより形成されている。内側領域630Cは枠部122の外周側の辺131Aに接せず、圧電振動片130の内側領域130Cと同じ膜構成により形成される(図9(f)参照)。また、腐食防止領域630Bは、腐食防止領域130B(図9(f))、腐食防止領域230B(図11(a))、又は腐食防止領域330B(図12(a))と同じ構成により形成される。
【0079】
図14(b)は、図14(a)のE−E断面を含む圧電デバイス600の部分断面図である。圧電デバイス600は、圧電デバイス100において圧電振動片120を圧電振動片620に代えた以外は圧電デバイス100と同じ構成である。図14(b)では、枠部122とベース140との接合部分の部分断面図が示されている。圧電デバイス600では、圧電デバイス600の外側に腐食防止領域630Bが形成されている。図14(b)に示される腐食防止領域630Bは、第1層191A及び第2層191Bのみの構成に形成される場合が示されているが、他の構成に形成されていてもよい。図14(b)に示されるように、圧電デバイス600では、枠部122とベース140との接合部分の圧電デバイス600の外側の外気に接する部分が、クロム(Cr)により形成される第1層191A、ニッケルタングステン(NiW)により形成される第2層191B、及び接合材150により形成されており、金(Au)層を含んでいない。すなわち、圧電デバイス600では引出電極630の金(Au)層が外気に接していないため、引出電極630が腐食することが防がれている。
【0080】
図14(c)は、圧電デバイス600の一部を拡大した断面図である。図14(c)は、圧電デバイス600の図5(b)に相当する部分の断面図である。図14(c)に示されるように、ベース140に形成される切欠き部電極144は腐食防止領域630Bの第2層191Bの表面に形成される。これにより、引出電極630の第3層191Cはハンダ152に接触しないため、第3層191Cがハンダ152に浸食されることが防がれている。
【0081】
<圧電振動片720の構成>
図15(a)は、圧電振動片720の下面図である。圧電振動片720では、圧電振動片130において、引出電極130の代わりに引出電極730が形成されている。その他の構成は圧電振動片130と同じである。引出電極730は、枠部122の−Y’軸側の面に形成される部分が、枠部122の外周側の辺131Aに接して形成される外側領域730Aと、枠部122の内周側の辺131Bに接して形成される内側領域130Cと、外側領域730A及び内側領域130Cの間を遮るように形成される腐食防止領域730Bと、により形成されている。外側領域730Aは、さらに切欠き部電極144に接続される領域735aと切欠き部電極144に接続されない領域735bとに分けることができる。腐食防止領域730Bは、外側領域730A及び内側領域130Cの間を遮ると共に、領域735aと領域735bとの間を分けるように形成されている。これにより領域735aの金(Au)を含む第3層191Cにハンダ152が浸食したとしても内側領域130C及び切欠き部電極144に接続されない領域735bにハンダ152が浸食することが防がれており、ハンダ152が浸食する領域の拡大が防がれている。
【0082】
図15(b)は、圧電デバイス700の一部を拡大した断面図である。圧電デバイス700は、圧電デバイス100において圧電振動片120を圧電振動片720に代えた以外は圧電デバイス100と同じである。図15(b)に示されるように、腐食防止領域730Bは切欠き部電極144に接続される領域735aのすぐ外側に形成される。そのため、腐食が切欠き部電極144に接続される領域735a以外の領域に拡大することが防がれる。
【0083】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。また、各実施形態の特徴を様々に組み合わせて実施することができる。
【0084】
上記の実施形態では、引出電極及び励振電極の表面の層である第3層191Cが金(Au)により形成されるが、第3層191Cには、金(Au)の代わりに銀(Ag)が用いられても良い。銀(Ag)が用いられた場合でも金(Au)と同様にハンダ152の浸食が進みやすいが、当該浸食は引出電極及び接続電極の浸食防止領域で止められる。しかし、金(Au)は圧電振動片の製造時に使用される薬品耐性に優れること、製品後の耐候性にも優れること等の利点があり、これらのことを考慮した場合には銀(Ag)よりも金(Au)を用いた方が好ましい。
【0085】
また、上記の実施形態では、振動部が矩形であったが、音叉型、楕円形、円形など他の形状であってもよい。また、圧電振動片はATカットの水晶であったが、Zカット又はBTカットなどの水晶を用いてもよい。また、圧電デバイスは水晶振動子であったが、発振回路を備えたICを搭載した圧電発振器であってもよい。さらに、圧電振動片は水晶で形成されたが、水晶以外の圧電材料、例えばタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム又は圧電セラミックを用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
100、200、300、600、700 … 圧電デバイス
101 … キャビティ
110 … リッド
120、420、520、620、720 … 圧電振動片
122 … 枠部
124 … 振動部
126 … 接続部
128 … 励振電極
130、430、530、730 … 引出電極
130A、430A、530A、730A … 外側領域
130B、230B、330B、430B、530B、630B、730B … 腐食防止領域
130C、430C、630C … 内側領域
131A … 枠部の外周側の辺
131B … 枠部の内周側の辺
132 … 貫通溝
134 … 引出電極が引き出される貫通溝の側面
140 … ベース
142、142A、142B … 実装端子
144、144A、144B … 切欠き部電極
148 … 切欠き部
150 … 接合材
152 … ハンダ
154、155 … クロム(Cr)のブロック
160 … 基板
161 … 基板電極
170 … 切欠き部対向領域
171 … スクライブライン
191A、193A、194A … 第1層
191B、193B、194B … 第2層
191C、193C … 第3層
735a … 切欠き部電極144に接続される領域
735b … 切欠き部電極144に接続されない領域
W110 … リッドウエハ
W120 … 圧電ウエハ
W140 … ベースウエハ
図1
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