(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術では、排水性を向上させるために溝内溝の容積を増加させると、トレッドの剛性を維持することが困難となり、ひいては操縦安定性を維持することが困難となることが考えられる。一方、操縦安定性を向上させるためにトレッドの剛性を向上させるには、溝内溝の容積を減少させ、ひいては排水性を低下させる必要がある。従って、上記特許文献1に記載された先行技術では、トレッドの材質の調整等によって、排水性と操縦安定性とを両立させることはできるものの、それは容易ではない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、排水性と操縦安定性とを容易に両立させることができる車両用タイヤを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用タイヤは、トレッドセンター部からトレッドショルダー部に向かってタイヤ周方向に対して斜めに延びる複数本の傾斜溝と、前記傾斜溝の底壁部から立ち上げられて当該傾斜溝の延在方向に沿って形成され、タイヤ幅方向断面視でトレッド踏面部からの表面部の凹み量がタイヤ幅方向最内側で最も小さく設定された溝内陸部と、前記傾斜溝の側壁部と前記溝内陸部との間に形成され、前記底壁部の一部を溝底部とする溝内傾斜溝と、を有
し、前記凹み量は、前記溝内陸部の前記トレッドセンター部側を構成する内側領域と、当該溝内陸部の前記トレッドショルダー部側を構成する外側領域と、当該内側領域よりもタイヤ幅方向外側でかつ当該外側領域よりもタイヤ幅方向内側を構成する中央領域と、のうち当該中央領域において最も大きく設定されている。
【0007】
請求項1に記載の本発明によれば、複数本の傾斜溝がトレッドセンター部からトレッドショルダー部に向かってタイヤ周方向に対して斜めに延びている。このため、車両の走行時において、トレッドと路面との間に入り込んだ水を排出することができる。
【0008】
ところで、車両用タイヤに複数本の傾斜溝を設けると排水性が向上するものの、その反面、トレッドの剛性を維持することが困難となり、ひいては操縦安定性を維持することが困難となることがある。
【0009】
ここで、本発明では、溝内陸部が傾斜溝の底壁部から立ち上げられて形成されており、タイヤ幅方向断面視で溝内陸部における表面部のトレッド踏面部からの凹み量がタイヤ幅方向最内側で最も小さく設定されている。このため、トレッドセンター部の剛性が確保される。
【0010】
また、傾斜溝の側壁部と溝内陸部との間には、傾斜溝の底壁部の一部を溝底部とする溝内傾斜溝が形成されており、当該溝内傾斜溝は、傾斜溝の延在方向に沿って延びている。このため、溝内傾斜溝によってトレッドと路面との間に入り込んだ水が排出され、排水性が確保される。
また、本発明によれば、溝内陸部における表面部のトレッド踏面部からの凹み量が、内側領域と外側領域との間の中央領域で最も大きく設定されているため、内側領域及び外側領域の剛性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明に係る車両用タイヤは、トレッドセンター部からトレッドショルダー部に向かってタイヤ周方向に対して斜めに延びる複数本の傾斜溝と、前記傾斜溝の底壁部から立ち上げられて当該傾斜溝の延在方向に沿って形成され、タイヤ幅方向断面視でトレッド踏面部からの表面部の凹み量がタイヤ幅方向最内側で最も小さく設定された溝内陸部と、前記傾斜溝の側壁部と前記溝内陸部との間に形成され、前記底壁部の一部を溝底部とする溝内傾斜溝と、を有し、前記溝内陸部は、前記傾斜溝のトレッドセンター部側の内側側壁部との間に前記溝内傾斜溝のタイヤ幅方向内側の部分を成す第1溝内傾斜溝を構成する第1溝内陸部と、当該傾斜溝のトレッドショルダー部側の外側側壁部との間に当該溝内傾斜溝のタイヤ幅方向外側の部分を成す第2溝内傾斜溝を構成する第2溝内陸部と、を含んで構成されると共に、前記溝内傾斜溝は、前記第1溝内傾斜溝と前記第2溝内傾斜溝とを連通する連通溝部を含んで構成されている。
請求項2に記載の本発明によれば、溝内陸部を構成する第1溝内陸部と傾斜溝のトレッドセンター部側の内側側壁部との間に溝内傾斜溝のタイヤ幅方向内側の部分を成す第1溝内傾斜溝が構成されている。また、溝内陸部を構成する第2溝内陸部と傾斜溝のトレッドショルダー部側の外側側壁部との間に溝内傾斜溝のタイヤ幅方向外側の部分を成す第2溝内傾斜溝が構成されている。そして、溝内傾斜溝を構成する連通溝部によって、第1溝内傾斜溝と第2溝内傾斜溝とが連通されている。
このため、車両の走行時において、トレッドと路面との間に入り込んだ水は、まずタイヤ幅方向内側の第1溝内傾斜溝を流れていき、連通溝部を経由してタイヤ幅方向外側の第2溝内傾斜溝を流れていく。その結果、傾斜溝において、トレッドと路面との間に入り込んだ水の流路をタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へと変更して排出することができる。
【0011】
請求項
3に記載の発明に係る車両用タイヤは、請求項1
又は請求項2に記載の発明において、前記表面部は、タイヤ幅方向断面視でタイヤ径方向内側に凹むように湾曲している。
【0012】
請求項
3に記載の本発明によれば、溝内陸部の表面部がタイヤ幅方向断面視でタイヤ径方向内側に凹むように湾曲しており、傾斜溝に溝内陸部を設けることによる傾斜溝の容積の減少を抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る車両用タイヤは、
請求項1又は請求項1を引用する請求項3に記載の発明において、前記凹み量は、前記内側領域よりも前記外側領域の方が大きく設定され、当該外側領域よりも前記中央領域の方が大きく設定されている。
【0016】
請求項4に記載の本発明によれば、内側領域よりも外側領域の方が凹み量が大きく設定されると共に、外側領域よりも中央領域の方が凹み量が大きく設定されている。すなわち、中央領域及び外側領域よりも内側領域の方が、溝内陸部における表面部のトレッド踏面部からの凹み量が小さく設定されている。このため、内側領域の剛性が確保されると共に、直進時において当該内側領域が主に接地されるようになる。その結果、直進状態からレーンチェンジ等の微小な操舵を行うときの初期応答性を確保することができる。
【0017】
また、外側領域よりも中央領域の方が凹み量が大きく設定されている。すなわち、中央領域よりも外側領域の方が、溝内陸部における表面部のトレッド踏面部からの凹み量が小さく設定されている。このため、中央領域と比し、外側領域の剛性が確保されると共に、コーナリング時において当該外側領域が主に接地されるようになる。その結果、コーナリング時において外側領域に大きな荷重がかかっても車両を安定して走行させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る車両用タイヤでは、排水性と操縦安定性とを容易に両立させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図4を用いて、本発明に係る車両用タイヤの第1実施形態について説明する。
図4に示されるように、本実施形態に係る車両用タイヤ(以下、単に「タイヤ」と称する。)10のトレッド12の接地部分には、タイヤ赤道面CL上にセンター周方向溝14が形成されている。また、このセンター周方向溝14を挟んでV字状となるように傾斜溝16、18がタイヤ周方向に沿って複数本形成されている。
【0024】
そして、傾斜溝16は、その一端部16Aがタイヤ10の一方の側面部10Aに開口されると共に、その他端部16Bがセンター周方向溝14近辺で終端している。一方、傾斜溝18は、その一端部18Aがタイヤ10の他方の側面部10Bに開口されると共に、その他端部18Bがセンター周方向溝14近辺で終端している。
【0025】
一方、
図1にはトレッド12の展開図が示されている。なお、
図1中の矢印Sはタイヤ周方向を示しており、同図の下側がタイヤ正転時における踏み込み側であり、同図の上側がタイヤ正転時における蹴り出し側である。一方、矢印Xはタイヤ幅方向を示すと共に符号CLはタイヤ赤道面を示しており、本実施形態では、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。また、
図1中の符号SEは、トレッド12のトレッド端、すなわちトレッド12のトレッド幅TWの端部(タイヤ幅方向の端部)を示している。
【0026】
なお、ここでいう「トレッド端」とは、タイヤ10をJATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格、2014年度版)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときの接地面のタイヤ幅方向外側端を指している。また、タイヤ10の使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
【0027】
さらに、本実施形態では、一例として、タイヤ赤道面CLを中心にタイヤ幅方向両側にTWの40%〜60%の範囲をトレッドセンター部12Aと称すると共に、トレッドセンター部12Aのタイヤ幅方向両側部分をトレッドショルダー部12Bと称している。
【0028】
図1に示されるように、本実施形態では一例として、傾斜溝16、18は、タイヤ周方向に所定のピッチPで、トレッドセンター部12Aからトレッドショルダー部12Bに向かってタイヤ周方向に対して斜めに延びている。より具体的には、傾斜溝16、18は、トレッドセンター部12Aにおけるセンター周方向溝14から所定の間隔Tをあけた位置から、タイヤ幅方向外側でかつ蹴り出し側に延びている。また、傾斜溝16におけるトレッドセンター部12Aとトレッドショルダー部12Bとの境界部よりもタイヤ幅方向内側の部分(以下、「先端溝部16C」と称す)は、踏み込み側にいくにつれて溝幅が徐々に狭くなる先細り形状とされている。一方、傾斜溝18の先端溝部18Cも傾斜溝16の先端溝部16Cと同様の構成とされている。なお、傾斜溝16と傾斜溝18とは、ピッチPの半分(P/2)だけ位相がずれた状態で形成されている。
【0029】
ここで、本実施形態では、傾斜溝16に第1溝内陸部22と第2溝内陸部24とを含んで溝内陸部20が形成されており、一方、傾斜溝18に第1溝内陸部28と第2溝内陸部30とを含んで溝内陸部26が形成されている点に第1の特徴がある。
【0030】
また、傾斜溝16に溝内傾斜溝32が構成されており、一方、傾斜溝18に溝内傾斜溝38が構成されている点に第2の特徴がある。なお、溝内傾斜溝32は、第1溝内傾斜溝34、第2溝内傾斜溝36及び連通溝部37を含んで構成されており、一方、溝内傾斜溝38は、第1溝内傾斜溝40、第2溝内傾斜溝42及び連通溝部43を含んで構成されている。
【0031】
以下、本発明の要部である溝内陸部20、26及び溝内傾斜溝32、38の一例について詳細に説明する。なお、傾斜溝16と傾斜溝18とは、タイヤ赤道面CLに対して互いに対称な構成とされているため、溝内陸部20及び溝内傾斜溝32の構成を例にとって本実施形態に係る溝内陸部及び溝内傾斜溝について説明することとする。
【0032】
図1及び
図2に示されるように、第1溝内陸部22は、傾斜溝16の底壁部16Fから立ち上げられて形成されると共に、傾斜溝16のトレッドセンター部12A側の内側側壁部16Dに沿って延びている。別の見方をすれば、第1溝内陸部22は、内側側壁部16Dに沿って隆起した隆起部となっている。そして、第1溝内陸部22と内側側壁部16Dとの間には、溝内傾斜溝32のタイヤ幅方向内側の部分を成す第1溝内傾斜溝34が構成されており、当該第1溝内傾斜溝34の溝底部34Aは、傾斜溝16における底壁部16Fの一部によって構成されている。
【0033】
より詳しくは、第1溝内陸部22は、傾斜溝16における踏み込み側、具体的には、傾斜溝16において上記の如く先細り形状とされた先端溝部16C側に配置されている。また、第1溝内陸部22の形状は、平面視で踏み込み側が先細り形状である三角形状とされおり、当該第1溝内陸部22の踏み込み側の端部22Aの位置は、傾斜溝16の踏み込み側の他端部16Bから蹴り出し側に所定の間隔をあけた位置に設定されている。なお、第1溝内陸部22は、傾斜溝16のトレッドショルダー部12B側の外側側壁部16Eとの間に第1細溝44を構成している。
【0034】
一方、第2溝内陸部24は、傾斜溝16の底壁部16Fから立ち上げられて形成されると共に、傾斜溝16のトレッドショルダー部12B側の外側側壁部16Eに沿って延びている。別の見方をすれば、第2溝内陸部24は、外側側壁部16Eに沿って隆起した隆起部となっている。そして、第2溝内陸部24と外側側壁部16Eとの間には、溝内傾斜溝32のタイヤ幅方向外側の部分を成す第2溝内傾斜溝36が構成されており、当該第2溝内傾斜溝36の溝底部36Aは、傾斜溝16における底壁部16Fの一部によって構成されている。
【0035】
より詳しくは、第2溝内陸部24は、平面視で平行四辺形状に形成されると共に、傾斜溝16の先端溝部16Cの蹴り出し側に配置されている。なお、第2溝内陸部24は、傾斜溝16のトレッドセンター部12A側の内側側壁部16Dとの間に第2細溝46を構成している。
【0036】
そして、第1溝内傾斜溝34の蹴り出し側の端部34Bと第2溝内傾斜溝36の踏み込み側の端部36Bとが、当該端部34Bからタイヤ幅方向外側でかつ蹴り出し側に延びる連通溝部37によって連通されている。これは、溝内陸部20が連通溝部37によって第1溝内陸部22と第2溝内陸部24とに分割されていると捉えることもできる。なお、上記構成の第1溝内傾斜溝34、第2溝内傾斜溝36及び連通溝部37を含んで構成された溝内傾斜溝32を全体としてみると、当該溝内傾斜溝32は傾斜溝16の延在方向に沿って形成されている。
【0037】
また、第1溝内陸部22と第2溝内陸部24とを含んで構成される溝内陸部20における表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量は、タイヤ幅方向断面視において、タイヤ幅方向最内側(タイヤ赤道面CL側)で最も小さく設定されている。なお、以下では、表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量を、単に「凹み量」ともいう。ここでいう「凹み量」とは、トレッド踏面部12Cから表面部20Aまでのタイヤ径方向の距離を意味している。また、本実施形態では、一例として、溝内陸部20のタイヤ幅方向最内側は、溝内陸部20の始端部、すなわち第1溝内陸部22の踏み込み側の端部22Aとされている。さらに、溝内陸部20のトレッドセンター部12A側を構成する内側領域50よりも溝内陸部20のトレッドショルダー部12B側を構成する外側領域54の方が凹み量が大きく設定されている。加えて、外側領域54よりも溝内陸部20のタイヤ幅方向中央部を構成する中央領域52の方が凹み量が大きく設定されている。つまり、溝内陸部20において中央領域52の凹み量が最も大きく設定されている。
【0038】
別の見方をすれば、外側領域54における表面部20Aの底壁部16Fからの高さが、中央領域52における表面部20Aの底壁部16Fからの高さよりも高く設定されている。また、内側領域50における表面部20Aの底壁部16Fからの高さが、外側領域54における表面部20Aの底壁部16Fからの高さよりも高く設定されている。より具体的には、タイヤ幅方向断面視で、内側領域50のタイヤ径方向最外側の頂点と、外側領域54のタイヤ径方向最外側の頂点と、中央領域52のタイヤ径方向最外側の頂点とが、タイヤ径方向外側からこの順に配置されている。
【0039】
さらに、表面部20Aは、タイヤ径方向内側に凸となる曲率半径Rの曲面Kに沿って形成されている。すなわち、表面部20Aは、タイヤ径方向内側に曲面Kに沿って凹むように湾曲している。このため、
図1において、溝内陸部20を第1溝内陸部22の端部22Aから第2溝内陸部24の蹴り出し側の端部24Aまで、そのタイヤ幅方向に沿って切断した断面を見ていくと、表面部20Aの凹み量及び傾きが変化していくようになっている。なお、曲面Kの曲率中心αは、タイヤ幅方向断面視で、タイヤ赤道面CLよりもタイヤ幅方向外側でかつトレッド端SEよりもタイヤ幅方向内側に配置されると共に、トレッド踏面部12Cよりもタイヤ径方向外側に配置されている。また、曲率中心αと図示しないタイヤ中心とを結ぶ直線は、タイヤ赤道面CLに対して傾斜している。
【0040】
以下、
図1及び
図3を用いて、表面部20Aの高さ及び傾きの変化について詳しく説明する。表面部20Aは、
図1における溝内陸部20のタイヤ幅方向内側の部分、より具体的には、第1溝内陸部22の中央部において、
図3(A)に示されるように、タイヤ幅方向内側の凹み量がタイヤ幅方向外側の凹み量よりも小さく設定されている。また、表面部20Aは、溝内陸部20のタイヤ幅方向内側の部分において、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かって凹み量が増加するように傾斜している。これは、表面部20Aが、溝内陸部20のタイヤ幅方向内側の部分において、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かって湾曲していると捉えることもできる。
【0041】
また、表面部20Aは、
図1における溝内陸部20のタイヤ幅方向外側の部分、より具体的には、第2溝内陸部24のトレッド端SE側の部分において、
図3(B)に示されるように、タイヤ幅方向外側の凹み量がタイヤ幅方向内側の凹み量よりも小さく設定されている。そして、表面部20Aは、溝内陸部20のタイヤ幅方向外側の部分において、タイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かって凹み量が増加するように傾斜している。これは、表面部20Aが、溝内陸部20のタイヤ幅方向外側の部分において、タイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かって湾曲していると捉えることもできる。なお、
図1における傾斜溝16の連通溝部37が形成されている部分には、
図3(C)に示されるように、溝内陸部20が形成されておらず、傾斜溝16において、連通溝部37が形成されている部分が最も断面積が大きい部分となっている。
【0042】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態では、複数本の傾斜溝16、18がトレッドセンター部12Aからトレッドショルダー部12Bに向かってタイヤ周方向に対して斜めに延びている。このため、車両の走行時において、トレッド12と路面との間に入り込んだ水を排出することができる。
【0043】
ところで、タイヤ10に複数本の傾斜溝16、18を設けると排水性が向上するものの、その反面、トレッド12のを維持することが困難となり、ひいては操縦安定性を維持することが困難となることがある。
【0044】
ここで、本実施形態では、溝内陸部20が傾斜溝16の底壁部16Fから立ち上げられて形成されており、タイヤ幅方向断面視で溝内陸部20における表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量がタイヤ幅方向最内側で最も小さく設定されている。このため、トレッドセンター部12Aの剛性が確保される。
【0045】
また、溝内陸部20と内側側壁部16Dとの間の第1溝内傾斜溝34と、溝内陸部20と外側側壁部16Eとの間の第2溝内傾斜溝36と、を含んで、傾斜溝16の延在方向に沿って延びる溝内傾斜溝32が構成されている。そして、第1溝内傾斜溝34の溝底部34A及び第2溝内傾斜溝36の溝底部36Aが、傾斜溝16の底壁部16Fの一部によって構成されている。このため、溝内傾斜溝32によってトレッド12と路面との間に入り込んだ水が排出され、排水性が確保される。
【0046】
また、本実施形態では、溝内陸部20の表面部20Aがタイヤ幅方向断面視でタイヤ径方向内側に凹むように湾曲しており、傾斜溝16に溝内陸部20を設けることによる傾斜溝16の容積の減少を抑制することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、溝内陸部20における表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量が、内側領域50と外側領域54との間の中央領域52で最も大きく設定されている。このため、内側領域50及び外側領域54の剛性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
【0048】
さらにまた、本実施形態では、中央領域52及び外側領域54よりも内側領域50の方が、溝内陸部20における表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量が小さく設定されている。このため、中央領域52の剛性が確保されると共に、直進時において当該内側領域50が主に接地されるようになる。その結果、直進状態からレーンチェンジ等の微小な操舵を行うときの初期応答性を確保することができる。
【0049】
また、中央領域52よりも外側領域54の方が、溝内陸部20における表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量が小さく設定されている。このため、中央領域52と比し、外側領域54の剛性が確保されると共に、コーナリング時において外側領域54が主に接地されるようになる。その結果、コーナリング時において外側領域54に大きな荷重がかかっても車両を安定して走行させることができる。
【0050】
加えて、本実施形態では、溝内陸部20を構成する第1溝内陸部22と傾斜溝16のトレッドセンター部12A側の内側側壁部16Dとの間に溝内傾斜溝32のタイヤ幅方向内側の部分を成す第1溝内傾斜溝34が構成されている。また、溝内陸部20を構成する第2溝内陸部24と傾斜溝16のトレッドショルダー部12B側の外側側壁部16Eとの間に溝内傾斜溝32のタイヤ幅方向外側の部分を成す第2溝内傾斜溝36が構成されている。そして、溝内傾斜溝32を構成する連通溝部37によって、溝内陸部20が第1溝内陸部22と第2溝内陸部24とに分割されると共に第1溝内傾斜溝34と第2溝内傾斜溝36とが連通されている。
【0051】
このため、車両の走行時において、トレッド12と路面との間に入り込んだ水は、まずタイヤ幅方向内側の第1溝内傾斜溝34を流れていき、連通溝部37を経由してタイヤ幅方向外側の第2溝内傾斜溝36を流れていく。その結果、傾斜溝16において、トレッド12と路面との間に入り込んだ水の流路をタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へと変更して排出することができる。
【0052】
また、第1溝内傾斜溝34から流れてきた水には、連通溝部37を流れるときにタイヤ幅方向の運動量が付与されるため、第2溝内傾斜溝36を流れていく水は、螺旋流となって当該第2溝内傾斜溝36を流れていく。このため、溝内傾斜溝32の断面積を小さく設定しても、当該溝内傾斜溝32の排水性を確保することができる。
【0053】
さらに、第1溝内陸部22と内側側壁部16Dとは、第1溝内傾斜溝34によって隔てられているため、第1溝内陸部22のタイヤ幅方向内側の縁部と内側側壁部16Dの周縁部とは、路面からの荷重に対して、互いに影響を受けることなく弾性変形する。従って、路面からの荷重を、第1溝内陸部22のタイヤ幅方向内側の縁部と内側側壁部16Dの周縁部とに分散させて支持することができる。さらにまた、第2溝内陸部24と外側側壁部16Eとは、第2溝内傾斜溝36によって隔てられているため、第2溝内陸部24のタイヤ幅方向外側の縁部と外側側壁部16Eの周縁部とは、路面からの荷重に対して、互いに影響を受けることなく弾性変形する。従って、路面からの荷重を、第2溝内陸部24のタイヤ幅方向外側の縁部と外側側壁部16Eの周縁部とに分散させて支持することができる。
【0054】
さらに加えて、本実施形態では、溝内陸部20の表面部20Aが、タイヤ径方向内側に凸となる曲率半径Rの曲面Kに沿って形成されると共にタイヤ径方向内側に凹むように湾曲している。このため、表面部20Aに沿って流れていく水が螺旋流となって傾斜溝16内を流れていく。その結果、傾斜溝16の本数を増やしたり、当該傾斜溝16の断面積を大きくすることなく排水性を確保することができる。
【0055】
このように、本実施形態に係る車両用タイヤ10では、排水性と操縦安定性とを容易に両立させることができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、
図5を用いて、本発明に係る車両用タイヤの第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一の番号を付してその説明を省略する。第1実施形態において、溝内陸部20の表面部20Aは、曲面Kに沿って形成される構成とされていたが、本実施形態に係る溝内陸部100では、表面部100Aが2つの傾斜面部100A1、100A2によって構成されている点に特徴がある。
【0057】
具体的には、傾斜面部100A1は、表面部100Aにおけるタイヤ幅方向内側の部分を構成すると共に、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かって凹み量が増加するように傾斜している。一方、傾斜面部100A2は、表面部100Aにおけるタイヤ幅方向外側の部分を構成すると共に、タイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かって凹み量が増加するように傾斜している。なお、ここでいう「傾斜」には、連続的に凹み量が変化するもののみでなく、段階的に凹み量が変化するものも含まれる。そして、傾斜面部100A1、100A2から成る表面部100Aは、タイヤ径方向内側に凹むように傾斜している。換言すれば、表面部100Aは、タイヤ径方向に対して傾斜している。また、本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量が中央領域52において最も大きく設定されている。
【0058】
このような構成によっても、溝内陸部20の表面部20Aが曲面で構成されたことによる作用効果を除き、上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。また、溝内陸部100の表面部100Aは、2つの傾斜面部100A1、100A2によって構成されている。このため、上述した第1実施形態の溝内陸部20と比し、溝内陸部100全体での凹み量を小さく設定することができる。その結果、溝内陸部20と比し、溝内陸部100の剛性を向上させることができる。なお、溝内陸部100をタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かって凹み量が増加するように傾斜する一つの傾斜面部で構成してもトレッドセンター部12Aの剛性を確保することができる。
【0059】
また、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、第1細溝44及び第2細溝46を設ける構成としたが、第1細溝44及び第2細溝46を設けない構成としてもよい。
【0060】
さらに、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、溝内陸部20、100を連通溝部37によって分割する構成としたが、溝内陸部20、100を分割する構成としなくてもよい。例えば、一体に設けられた溝内陸部20、100と傾斜溝16の内側側壁部16Dとの間に当該内側側壁部16Dに沿って延びる一本の溝内傾斜溝32が構成されるようにしてもよい。また、一体に設けられた溝内陸部20、100と傾斜溝16の外側側壁部16Eとの間に当該外側側壁部16Eに沿って延びる一本の溝内傾斜溝32が構成されるようにしてもよい。上記のような構成によっても、タイヤ幅方向断面視で、溝内陸部20における表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量をタイヤ幅方向最内側で最も小さく設定することで、トレッドセンター部12Aの剛性を確保することができる。また、溝内陸部20における表面部20Aのトレッド踏面部12Cからの凹み量を、内側領域50と外側領域54との間の中央領域52で最も大きく設定することで、内側領域50及び外側領域54の剛性を確保しつつ排水性を向上させることもできる。つまり、第1溝内傾斜溝34、第2溝内傾斜溝36及び連通溝部37による作用効果を除き、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。