(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、乗員が出入りするための開口や、荷室スペースの開口など様々な車体開口が存在する。このような車体開口を閉塞部材で閉塞する場合、車体開口と閉塞部材との間をシールするウェザストリップが、車体開口の縁端、または閉塞部材に取り付けられている。
【0003】
特に、折り畳むように開閉する開閉式ルーフを有する自動車、所謂オープンカーでは、開口部分の大きさや、開閉機構の複雑さから、安定した止水性の確保が課題となり易い。このため、開閉式ルーフを有する自動車では、オープンカー特有の様々な形状、及び構造のウェザストリップが用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の自動車用ウェザストリップ取付構造には、ウェザストリップに対して取付金具の一端をビスで固定し、取付金具の他端に設けた車体取付ネジをボディーパネル取付孔に螺着することで、ウェザストリップを車体に取付けることができるとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、取付金具やビスなどによって部品点数が増加するため、車体に対するウェザストリップの組付け性が低下するとともに、車両重量が増加するという問題がある。
そこで、車体とウェザストリップとをクリップを用いて取り付ける技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献2に記載の自動車用ウェザストリップでは、内部中空のシール部に開口形成した透孔に対してクリップを装着し、このクリップを車体本体に開口形成した透孔に嵌め込むことで、車体にウェザストリップを取付けることができるとされている。
【0007】
ところで、オープンカーで用いられるウェザストリップには、より確実なシール性を確保するために、車体表面を流れる雨水や高圧の洗浄水を受け止めて、車両下部に排水する機能が要求されることがある。
【0008】
このため、特許文献2のようなウェザストリップにおいて、シール部の内部空間を排水路として用いた場合、あるいは内部中空のシール部に代えて、雨水や高圧の洗浄水を受け止めて排水する排水路を設けた場合、クリップ及び透孔が露出するため、クリップ及び透孔に付着した雨水などが車体内部に侵入して、止水性を確保できないおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、部品点数の増加を抑えて、止水性の向上を図るとともに、
ウインドウ枠材に対する組付け性を向上できる車両のウェザストリップ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、車両の
フロントウインドウガラスを支持するウインドウ枠材、及び
車両の上部を開閉自在に覆う開閉式ルーフの間に介在するウェザストリップと、該ウェザストリップに装着されるとともに、前記
ウインドウ枠材に開口形成した開口孔に対して、押圧によって係合する
ウェザストリップクリップとを備えた車両のウェザストリップ構造であって、
前記ウインドウ枠材を、前記フロントウインドウガラスの上端に沿って車幅方向に延びるヘッダパネルと、該ヘッダパネルにおける車幅方向の両端から車両前方下方に延びる左右一対のフロントピラーとを備えた構成とし、前記ウェザストリップ
が、前記
ヘッダパネルと前記
開閉式ルーフとの間を弾性力によってシールするシール部と、
前記ウェザストリップクリップを介して、前記フロントピラーの上端近傍に設けた前記開口孔に取付けられる取付け部とで一体形成
され、該取付け部
が、前記開口孔と対向する位置に前記
ウェザストリップクリップの装着を許容する
クリップ装着孔を有する取付け基部と、少なくとも前記取付け基部と対面する対向面を有して、前記
ウェザストリップクリップの
頭部を包囲する包囲部と
、前記包囲部の前記対向面における前記
クリップ装着孔と対向する位置に、前記
クリップ装着孔へ向けて突設
された突起部
と、該突起部を挟んで対向形成された側壁部と、前記取付け基部、前記包囲部、及び前記側壁部で形成されるとともに、前記ウェザストリップクリップの前記頭部、及び前記突起部を収容可能な内部空間とを備え、
前記ウェザストリップクリップの前記頭部が、前記取付け基部の外方から前記内部空間へ向けて前記クリップ装着孔に装着可能な形状に形成されたことを特徴とする。
【0012】
上記ウェザストリップは、弾性を有する合成ゴムなどであって、開口孔に
ウェザストリップクリップを挿入する方向に沿って取付け部、及びシール部が一体形成されたウェザストリップ、あるいは開口孔に
ウェザストリップクリップを挿入する方向に対して交差する方向に取付け部、及びシール部が並置するように形成されたウェザストリップなどとすることができる。
上記シール部は、閉断面形状のシール部、略平板状のシール部、雨水や高圧の洗浄水の流通を許容する流路を有するシール部などとすることができる
。
【0013】
この発明により、部品点数の増加を抑えて、止水性の向上を図るとともに、
ウインドウ枠材に対する組付け性を向上することができる。
具体的には、取付け基部と包囲部とで取付け部を構成しているため、取付け部は、
ウェザストリップクリップの一端を収容可能な内部空間を形成することができる。このため、車両のウェザストリップ構造は、
ウインドウ枠材にウェザストリップを取付けた状態において、
ウェザストリップクリップの
頭部、及び
クリップ装着孔が包囲部の外部に露出することがない。
【0014】
これにより、例えば、開口孔に
ウェザストリップクリップを挿入する方向に沿って取付け部、及びシール部が一体形成されたウェザストリップにおけるシール部に、雨水などの流下を許容する排水路を設けた場合であっても、車両のウェザストリップ構造は、排水路上に
ウェザストリップクリップの
頭部が露出することがない。このため、車両のウェザストリップ構造は、
ウェザストリップクリップや
クリップ装着孔を介して車体や
開閉式ルーフの内部に雨水などが侵入することを防止できる。
【0015】
そして、包囲部の内面に突起部を設けたことにより、包囲部の肉厚が部分的に厚肉になるため、ウェザストリップは、外方から包囲部が押圧される際、肉厚差によって剛性感を異ならせることができる。このため、車両のウェザストリップ構造は、直接的に視認できない突起部の位置を、剛性感の相違によって容易に把握することができる。
【0016】
これにより、車両のウェザストリップ構造は、取付け基部に装着された
ウェザストリップクリップの
頭部を突起部で確実に押圧することができるため、開口孔に対して
ウェザストリップクリップを確実に係合することができる。
【0017】
加えて、例えば、取付け金具やビスを用いて車体にウェザストリップを取付ける場合に比べて、車両のウェザストリップ構造は、押圧によって係合する
ウェザストリップクリップにより、ビスなどを不要にできるため、部品点数の増加、及び重量の増加を抑制することができる。
従って、車両のウェザストリップ構造は、部品点数の増加を抑えて、止水性の向上を図るとともに、
ウインドウ枠材に対する組付け性の向上を図ることができる。
【0018】
この発明の態様として、前記
ウェザストリップクリップの前記頭部が、
前記開口孔に挿通する方向から見て、略楕円形、または略矩形
に形成されてもよい。
この発明により、車両のウェザストリップ構造は、重量の増加をより抑制するとともに、組付け性の向上を図ることができる。
【0019】
具体的には、例えば、取付け部の内部空間から外方に向けて
ウェザストリップクリップを装着する場合、
ウェザストリップクリップを入れることができる大きさの内部空間を有する取付け部を形成する必要があるため、取付け部の大きさが大きくなり易い。さらに、
クリップ装着孔の位置、及び
ウェザストリップクリップの大きさによっては、ウェザストリップに対する
ウェザストリップクリップの装着が困難になる。
【0020】
これに対して、ウェザストリップクリップは、
クリップ装着孔に対して取付け部の外方から頭部のうち幅の狭い部分から内部空間に挿し込んで装着することができる。すなわち、車両のウェザストリップ構造は、ウェザストリップに対する
ウェザストリップクリップの装着をより容易にすることができる。
【0021】
さらに、軸部がスライドするプッシュリベットの場合に比べて、ウェザストリップクリップは、スライドする軸部などがないため、取付け部における内部空間の大きさを抑制することができる。これにより、車両のウェザストリップ構造は、取付け部の大きさが大型化することを抑制でき、ウェザストリップの重量の増加を抑えることができる。
【0022】
従って、車両のウェザストリップ構造は、
ウェザストリップクリップの頭部が、開口孔に挿通する方向から見て、略楕円形、または略矩形に形成されたことにより、重量の増加をより抑制するとともに、組付け性の向上を図ることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記ウェザストリップの表面に、前記突起部の位置を示す目印を設けることができる。
上記ウェザストリップの表面とは、開口孔に
ウェザストリップクリップを挿入する方向に沿って取付け部、及びシール部が一体形成されたウェザストリップにおけるシール部の表面、あるいは開口孔に
ウェザストリップクリップを挿入する方向に対して交差する方向に取付け部、及びシール部が並置するように形成されたウェザストリップにおける包囲部の表面などとすることができる。
【0024】
上記目印は、線状、文字、押圧位置を示す図形、あるいは押圧方向を示す矢印などであって、凸状または凹状に形成した目印、塗布によって形成した目印、あるいは貼付によって形成した目印などとすることができる。
【0025】
この発明により、車両のウェザストリップ構造は、開口孔に対する
ウェザストリップクリップの係合をより容易にするとともに、
ウインドウ枠材と、ウェザストリップとのより安定した係合状態を確保することができる。
【0026】
具体的には、ウェザストリップの表面に目印を設けたことにより、車両のウェザストリップ構造は、取付け部の外側から直接的に視認することが困難な突起部の位置を視認可能にすることができる。このため、
ウインドウ枠材にウェザストリップを取り付ける際、車両のウェザストリップ構造は、取付け部の突起部を確実に押圧させることができる。
【0027】
これにより、車両のウェザストリップ構造は、突起部が
ウェザストリップクリップの
頭部を確実に押圧することができ、
ウェザストリップクリップと開口孔とがより確実に係合することができる。さらに、例えば開口孔に係止する係止爪を有する
ウェザストリップクリップを用いた場合、車両のウェザストリップ構造は、係止爪が展開された際の節度感によって、
ウェザストリップクリップと開口孔との係合状態をより把握し易くすることができる。
【0028】
従って、車両のウェザストリップ構造は、突起部の位置を示す目印を設けたことにより、開口孔に対する
ウェザストリップクリップの係合をより容易にするとともに、
ウインドウ枠材と、ウェザストリップとのより安定した係合状態を確保することができる。
【0029】
またこの発明は、車両のフロントウインドウガラスを支持するウインドウ枠材、及び車両の上部を開閉自在に覆う開閉式ルーフの間に介在するウェザストリップと、該ウェザストリップに装着されるとともに、前記ウインドウ枠材に開口形成した開口孔に対して、押圧によって係合するウェザストリップクリップとを備えた車両のウェザストリップ構造であって、前記ウインドウ枠材を、前記フロントウインドウガラスの上端に沿って車幅方向に延びるヘッダパネルと、該ヘッダパネルにおける車幅方向の両端から車両前方下方に延びる左右一対のフロントピラーとを備えた構成とし、前記ウェザストリップが、前記ヘッダパネルと前記開閉式ルーフとの間を弾性力によってシールする中央部分、及び該中央部分の両端を車両前方下方へ向けて湾曲して延設するとともに、前記フロントピラーの上端近傍に装着される湾曲部分で構成されたシール部と、該シール部の前記湾曲部分に形成されるとともに、前記ウェザストリップクリップを介して、前記フロントピラーの上端近傍に設けた前記開口孔に取付けられる取付け部とで一体形成され、該取付け部が、前記開口孔と対向する位置に前記ウェザストリップクリップの装着を許容するクリップ装着孔を有する取付け基部と、少なくとも前記取付け基部と対面する対向面を有して、前記ウェザストリップクリップの一端を包囲する包囲部とで構成され、前記包囲部の前記対向面が、前記クリップ装着孔と対向する位置に、前記クリップ装着孔へ向けて突設された突起部を備え、前記シール部が、前記突起部の位置を示す目印と、前記ヘッダパネルと前記フロントピラーとの境界に対する位置を示す位置決め突起とを、その表面に備えたことを特徴とする。
【0030】
またこの発明は、車両のフロントウインドウガラスを支持するウインドウ枠材、及び車両の上部を開閉自在に覆う開閉式ルーフの間に介在するウェザストリップと、該ウェザストリップに装着されるとともに、前記ウインドウ枠材に開口形成した開口孔に対して、押圧によって係合するウェザストリップクリップとを備えた車両のウェザストリップ構造であって、前記ウインドウ枠材を、前記フロントウインドウガラスの上端に沿って車幅方向に延びるヘッダパネルと、該ヘッダパネルにおける車幅方向の両端から車両前方下方に延びる左右一対のフロントピラーとを備えた構成とし、前記ウェザストリップが、前記ヘッダパネルと前記開閉式ルーフとの間を弾性力によってシールする中央部分、及び該中央部分の両端を車両前方下方へ向けて湾曲して延設するとともに、前記フロントピラーの上端近傍に装着される湾曲部分で構成されたシール部と、該シール部の前記湾曲部分に形成されるとともに、前記ウェザストリップクリップを介して、前記フロントピラーの上端近傍に設けた前記開口孔に取付けられる取付け部とで一体形成され、該取付け部が、前記開口孔と対向する位置に前記ウェザストリップクリップの装着を許容するクリップ装着孔を有する取付け基部と、少なくとも前記取付け基部と対面する対向面を有して、前記ウェザストリップクリップの一端を包囲する包囲部とで構成され、前記包囲部の前記対向面が、前記クリップ装着孔と対向する位置に、前記クリップ装着孔へ向けて突設された突起部を備え、前記シール部が、前記突起部が押圧される押圧方向を示す目印を、その表面に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、部品点数の増加を抑えて、止水性の向上を図るとともに、
ウインドウ枠材に対する組付け性を向上できる車両のウェザストリップ構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態における車両1のウェザストリップ構造について、
図1から
図8を用いて詳しく説明する。
なお、
図1は開閉式ルーフ3を閉じた状態における車両1の外観斜視図を示し、
図2は開閉式ルーフ3を開いた状態における車両1の外観斜視図を示し、
図3はフロントウインドウ部分5の外観斜視図を示している。
【0034】
さらに、
図4はヘッダガーニッシュ7、及びピラーガーニッシュ8を取り外した状態におけるフロントウインドウ部分5の外観斜視図を示し、
図5は
図3中のA−A矢視断面図を示し、
図6はウェザストリップ10における湾曲部分10bの外観斜視図を示し、
図7はウェザストリップ10における取付け部110の外観斜視図を示し、
図8は
図7中のB−B矢視断面図を示している。
また、
図2中において図示を簡略化するために座席の図示を省略しするとともに、
図3及び
図4中において、フロントウインドウガラス5aの図示を省略している。
【0035】
また、図中において、矢印Fr及びRrは車両前後方向を示しており、矢印Frは車両前方を示し、矢印Rrは車両後方を示している。さらに、矢印Rh及びLhは車幅方向を示しており、矢印Rhは車両右方向を示し、矢印Lhは車両左方向を示している。加えて、図中の上方を車両上方とし、図中の下方を車両下方とする。
【0036】
まず、本実施形態における車両1は、
図1及び
図2に示すように、乗員が乗り込む車室部2における車両上方を覆うルーフ部分が開閉可能に構成された、所謂オープンカーである。この車両1における開閉式ルーフ3は、幌、及びリンク機構(図示省略)などで構成されるとともに、車両後方へ折り畳むようにして車両後部4の収納部分4aに収納可能に構成されている。
【0037】
このような開閉式ルーフ3を備えた車両1において、本実施形態におけるウェザストリップ10は、車室部2の前部を構成するフロントウインドウ部分5における後端に装着され、フロントウインドウ部分5の後端と開閉式ルーフ3の前端との間をシールする機能を有している。
【0038】
より詳しくは、ウェザストリップ10は、
図3及び
図4に示すように、フロントウインドウガラス5a(
図1参照)の上端及び車幅方向の両端を支持するウインドウ枠材6における上方後端に沿って装着されている。
このウインドウ枠材6は、車幅方向に延びるヘッダパネル20と、ヘッダパネル20における車幅方向の端部から前方下方に延びる左右一対のフロントピラー30とで一体的に構成している。
【0039】
ヘッダパネル20は、
図5に示すように、車両上方側に配置したヘッダアウタ21と、車両下方側に配置したヘッダインナ22とを一体的に接合して、車両前後方向に垂直な断面形状が閉断面形状となるように形成している。
【0040】
ヘッダアウタ21は、車両前後方向に垂直な断面において、上方に凸設した断面ハット状に形成している。さらに、ヘッダアウタ21の後端には、上方へ向けて起立するように延設した起立部21aを備えている。
【0041】
加えて、ヘッダアウタ21には、
図4に示すように、車両1の意匠面を構成するヘッダガーニッシュ7の装着を許容する開口孔21bを、車幅方向に所定間隔を隔てて複数開口形成している。
ヘッダインナ22は、
図5に示すように、車両前後方向に垂直な断面において、下方に凸設した断面ハット状に形成している。
【0042】
左右一対のフロントピラー30は、
図4に示すように、車幅方向の外側に配置されるピラーアウタ31と、車幅方向の内側に配置されるピラーインナ32とを、車幅方向で接合して一体的に構成している。
【0043】
さらに、ピラーアウタ31には、車両の意匠面を構成するピラーガーニッシュ8の装着を許容する開口孔31aを複数形成するとともに、ウェザストリップ10の装着を許容する開口孔31b(
図8参照)を上端近傍に2つ開口形成している。
【0044】
なお、ヘッダガーニッシュ7は、
図5に示すように、合成樹脂製の意匠パネルであって、車両の意匠面となる意匠部分7aと、意匠部分7aの後端を下方に向けて延設した押圧部分7bとで一体形成している。この押圧部分7bは、ヘッダパネル20に取り付けた状態において、後述するウェザストリップ10における延設部106の基部を押圧するように形成している。
【0045】
また、ピラーガーニッシュ8は、合成樹脂製の意匠パネルであって、ウインドウ枠材6に取り付けた状態において、ヘッダガーニッシュ7と連続する断面形状に形成している。
このヘッダガーニッシュ7、及びピラーガーニッシュ8は、予め取り付けた樹脂製クリップ(図示省略)を、ウインドウ枠材6の開口孔21b,31aに対して係合することで、ウインドウ枠材6に装着する。
【0046】
このようなウインドウ枠材6に装着されるウェザストリップ10は、ゴム材料によって成型された弾性を有するシール部材であって、
図4に示すように、車幅方向に沿って延びてヘッダパネル20の後端に装着される中央部分10aと、中央部分10aの両端から車両前方下方に向けて湾曲してフロントピラー30の上端近傍における後端に装着される湾曲部分10bとで一体形成している。
【0047】
詳述すると、ウェザストリップ10は、
図5に示すように、中央部分10aにおける車両前後方向に垂直な垂直断面において、ヘッダパネル20の起立部21aに嵌合する嵌合部101と、嵌合部101の上端に配設した第1シール部102と、嵌合部101に対して車両前方で対向配置した前壁部103と、嵌合部101及び前壁部103を連結する連結底部104と、前壁部103の上端に配設した第2シール部105と、第2シール部105からヘッダアウタ21に沿って車両前方に延設した延設部106とで一体形成している。
【0048】
なお、嵌合部101、第1シール部102、前壁部103、連結底部104、第2シール部105、及び延設部106は、いずれも中央部分10aから湾曲部分10bにかけて一体形成している。
【0049】
嵌合部101は、
図5に示すように、中央部分10aにおける垂直断面形状が、下方が開口した断面門型形状であって、起立部21aと弾設する複数のリップ101aを、車両前方側の内面、及び車両後方側の内面から突出して形成している。この嵌合部101は、中央部分10aにおいてのみ断面門型形状に形成され、湾曲部分10bにおいては断面中実形状に形成されている(
図8参照)。
【0050】
第1シール部102は、
図5、
図6、及び
図8に示すように、中央部分10aから湾曲部分10bにかけて形成されており、中央部分10aにおける垂直断面形状が内部中空の略円筒状であって、湾曲部分10bにおいて第2シール部105と対向する側が開口した形状に形成している。なお、第1シール部102は、開閉式ルーフ3の前端近傍と車両上下方向で当接して、ウインドウ枠材6と開閉式ルーフ3の前端近傍との間をシールする。
【0051】
第2シール部105は、
図5、
図6、及び
図8に示すように、中央部分10aから湾曲部分10bにかけて形成されており、中央部分10aにおける垂直断面形状が内部中空の略筒状であって、湾曲部分10bにおいて車両下方が開口した形状に形成している。なお、第2シール部105は、開閉式ルーフ3の前端と車両上下方向で当接して、ウインドウ枠材6と開閉式ルーフ3の前端との間をシールする。
【0052】
この中央部分10aから湾曲部分10bにかけて形成された嵌合部101、第1シール部102、前壁部103、連結底部104、及び第2シール部105によって、ウェザストリップ10は、開閉式ルーフ3の表面を流れる雨水などを受け止めるとともに、フロントピラー30の後端に装着した別のウェザストリップ(図示省略)を介して、雨水などを車両下部へ排水する排水路(図示省略)を構成している。
【0053】
延設部106は、
図5及び
図6に示すように、中央部分10aにおける垂直断面において、第2シール部105から車両前方に延設した略平板状断面の延設本体部分(図示省略)と、延設本体部分の車両前端からヘッダパネル20へ向けて突出したフランジ部分(図示省略)とで形成している。
【0054】
この延設部106は、中央部分10aから湾曲部分10bにかけてヘッダパネル20、及びフロントピラー30の上面に重合するように形成されている。なお、延設部106における第2シール部105からの延設長さは、中央部分10aよりも湾曲部分10bの方が長くなるように形成している。
【0055】
さらに、ウェザストリップ10の湾曲部分10bには、
図7及び
図8に示すように、フロントピラー30の開口孔31bに係合するウェザストリップクリップ11を取り付ける取付け部110を、延設部106の車両下方側に形成している。
【0056】
なお、ウェザストリップクリップ11は、樹脂製のクリップであって、略矩形の頭部11a、頭部11aとで取付け部110を挟持するフランジ11b、及び開口孔31bに係止する係止爪部11cをこの順番で一体形成している。
【0057】
より詳しくは、取付け部110は、
図7及び
図8に示すように、前壁部103と、延設部106の基部と、前壁部103に対して車両前方側で所定間隔を隔てて対向配置した取付け基部111とで構成している。
取付け基部111は、前壁部103に対して車両前方側で所定間隔を隔てて、第2シール部105の基部105aから車両下方に向けて延設して形成するとともに、車幅方向における端部が前壁部103と連結するように形成している。
【0058】
この取付け基部111には、ピラーアウタ31の開口孔31bと対向する位置に、車両前方側から前壁部103に向けてウェザストリップクリップ11の挿入を許容するクリップ装着孔111aを2つ開口形成している。
【0059】
さらに、前壁部103における取付け基部111と対向する対向面103aには、クリップ装着孔111aと対向する位置に、クリップ装着孔111aに向けて突出した突起部112を形成している。
この突起部112は、取付け基部111にウェザストリップクリップ11を装着した状態において、ウェザストリップクリップ11の頭部11aと当接しない長さに形成している。
【0060】
加えて、延設部106の上面には、突起部112の上方にあたる位置に、突設した目印突部113を形成している。この目印突部113は、例えば、線状に突出した形状であって、突起部112の位置を示す目印として形成している。
なお、目印
突部113よりも車幅方向内側における延設部106の上面には、位置決め突起115を形成している。この位置決め突起115は、ヘッダアウタ21及びピラーアウタ31に対して、ウェザストリップ10を位置決めする際に用いる目印である。
【0061】
このように取付け部110は、前壁部103、及び第2シール部105の基部105aによって、ウェザストリップクリップ11の頭部11aを包囲する包囲部114を形成するとともに、取付け基部111、及び包囲部114で、ウェザストリップクリップ11の頭部11aを収容可能な内部空間を形成している。なお、包囲部114の車両下方側の開口は、ウインドウ枠材6に装着した状態において、フロントピラー30のピラーアウタ31によって閉塞される。
【0062】
次に、上述したウェザストリップ10を、ウインドウ枠材6に取り付ける工程について説明する。
まず、ウェザストリップ10における取付け部110のクリップ装着孔111aに対して、包囲部114の外側から内部空間へ向けて頭部11aを挿入してウェザストリップクリップ11を装着する。
【0063】
ウェザストリップクリップ11を装着したウェザストリップ10を、ウインドウ枠材6に装着する。この際、まず、ウェザストリップ10の位置決め突起115を、ヘッダアウタ21とピラーアウタ31との境界に合わせる。これにより、ウェザストリップ10と車体側(この場合、ヘッダアウタ21とピラーアウタ31)との位置決めが容易に行える。
【0064】
さらに、この状態において、ピラーアウタ31の開口孔31bと、ウェザストリップ10の突起部112との位置が位置合わせされた状態となる。すなわち、ピラーアウタ31の開口孔31bと、ウェザストリップクリップ11との位置が位置合わせされていることになる。
【0065】
次に、ウェザストリップ10の嵌合部101を、ヘッダパネル20の起立部21aに嵌合するとともに、ウェザストリップクリップ11をフロントピラー30の開口孔31bと対向させる。
【0066】
その後、延設部106に形成した目印突部113を目安に、ウェザストリップ10の車両後方側を車両前方へ押圧すると、突起部112がウェザストリップクリップ11の頭部11aと当接して押圧する。これにより、ウェザストリップクリップ11が開口孔31bに押し込まれて、ウェザストリップクリップ11と開口孔31bとが係合して、ウインドウ枠材6に対してウェザストリップ10を装着する。
【0067】
以上のようにしてウインドウ枠材6に装着することを実現する車両1のウェザストリップ構造は、部品点数の増加を抑えて、止水性の向上を図るとともに、ウインドウ枠材6の後端に対する組付け性を向上することができる。
【0068】
具体的には、取付け基部111と包囲部114とで取付け部110を構成しているため、取付け部110は、ウェザストリップクリップ11の頭部11aを収容可能な内部空間を形成することができる。
【0069】
このため、車両1のウェザストリップ構造は、ウインドウ枠材6の後端にウェザストリップ10を取付けた状態において、ウェザストリップクリップ11の頭部11a、及びクリップ装着孔111aが包囲部114の外部に露出することがない。
【0070】
これにより、車両1のウェザストリップ構造は、ウェザストリップ10の排水路上にウェザストリップクリップ11の頭部11aが露出することがなく、ウェザストリップクリップ11やクリップ装着孔111aを介してウインドウ枠材6の内部に雨水などが侵入することを防止できる。
【0071】
そして、包囲部114の内面に突起部112を設けたことにより、包囲部114の肉厚が部分的に厚肉になるため、ウェザストリップ10は、外方から包囲部114が押圧される際、肉厚差によって剛性感を異ならせることができる。このため、車両1のウェザストリップ構造は、直接的に視認できない突起部112の位置を、剛性感の相違によって容易に把握することができる。
【0072】
これにより、車両1のウェザストリップ構造は、取付け基部111に装着されたウェザストリップクリップ11の頭部11aを突起部112で確実に押圧することができるため、開口孔31bに対してウェザストリップクリップ11を確実に係合することができる。
【0073】
加えて、例えば、取付け金具やビスを用いてウインドウ枠材6にウェザストリップ10を取付ける場合に比べて、車両1のウェザストリップ構造は、押圧によって係合するウェザストリップクリップ11により、部品点数の増加、及び重量の増加を抑制することができる。
従って、車両1のウェザストリップ構造は、部品点数の増加を抑えて、止水性の向上を図るとともに、ウインドウ枠材6の後端に対する組付け性の向上を図ることができる。
【0074】
また、ウェザストリップクリップ11を用いて、ウェザストリップ10をウインドウ枠材6に取り付けることにより、車両1のウェザストリップ構造は、重量の増加をより抑制するとともに、組付け性の向上を図ることができる。
【0075】
具体的には、例えば、取付け部110の内部空間から外方に向けてプッシュリベットを装着する場合、プッシュリベットを入れることができる大きさの内部空間を有する取付け部110を形成する必要があるため、取付け部110の大きさが大きくなり易い。さらに、クリップ装着孔111aの位置、及びプッシュリベットの大きさによっては、ウェザストリップ10に対するプッシュリベットの装着が困難になる。
【0076】
これに対して、ウェザストリップクリップ11は、クリップ装着孔111aに対して取付け部110の外方から頭部11aを内部空間に挿し込んで装着することができる。すなわち、車両1のウェザストリップ構造は、ウェザストリップ10に対するウェザストリップクリップ11の装着をより容易にすることができる。
【0077】
さらに、軸部がスライドするプッシュリベットの場合に比べて、ウェザストリップクリップ11は、スライドする軸部などがないため、取付け部110における内部空間の大きさを抑制することができる。
【0078】
これにより、車両1のウェザストリップ構造は、取付け部110の大きさが大型化することを抑制でき、ウェザストリップ10の重量の増加を抑えることができる。
従って、車両1のウェザストリップ構造は、ウェザストリップクリップ11により、重量の増加をより抑制するとともに、組付け性の向上を図ることができる。
【0079】
また、突起部112の位置を示す目印突部113を形成したことにより、車両1のウェザストリップ構造は、開口孔31bに対するウェザストリップクリップ11の係合をより容易にするとともに、ウインドウ枠材6の後端と、ウェザストリップ10とのより安定した係合状態を確保することができる。
【0080】
具体的には、目印突部113を設けたことにより、車両1のウェザストリップ構造は、取付け部110の外側から直接的に視認することが困難な突起部112の位置を視認可能にすることができる。このため、ウインドウ枠材6の後端にウェザストリップ10を取り付ける際、車両1のウェザストリップ構造は、取付け部110の突起部112を確実に押圧させることができる。
【0081】
これにより、車両1のウェザストリップ構造は、突起部112がウェザストリップクリップ11の頭部11aを確実に押圧することができ、ウェザストリップクリップ11と開口孔31bとがより確実に係合することができる。
さらに、車両1のウェザストリップ構造は、係止爪部11cが展開された際の節度感によって、ウェザストリップクリップ11と開口孔31bとの係合状態をより把握し易くすることができる。
【0082】
従って、車両1のウェザストリップ構造は、突起部112の位置を示す目印突部113を設けたことにより、開口孔31bに対するウェザストリップクリップ11の係合をより容易にするとともに、ウインドウ枠材6の後端と、ウェザストリップ10とのより安定した係合状態を確保することができる。
【0083】
なお、上述の実施形態において、ウェザストリップクリップ11を用いて、ウェザストリップ10をウインドウ枠材6に装着したが、これに限定せず、プッシュリベット、あるいは金属製のメタルクリップなどとしてもよい。
また、ウェザストリップ10の湾曲部分10bに取付け部110を形成したが、これに限定せず、適宜の位置に取付け部110を形成してもよい。
【0084】
また、ウインドウ枠材6に装着するウェザストリップ10としたが、これに限定せず、例えば、車室部2における側部開口の縁端に装着するウェザストリップであってもよい。あるいは、車体開口を閉塞する閉塞部材、例えば、開閉式ルーフ3、ドア、ボンネットなどに装着するウェザストリップであってもよい。
【0085】
突起部112の位置を示す目印として目印突部113の一例として線状の突起としたが、これに限定せず、文字、押圧位置を示す図形、あるいは押圧方向を示す矢印などであって、凸状または凹状に形成したものであってもよい。あるいは、塗布や貼付によって形成した目印などであってもよい。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の
シール部は、実施形態の
第1シール部102、第2シール部105、前壁部103、嵌合部101、及び連結底部104に対応し、
以下同様に
、
目印は、目印突部113に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。