特許第6382647号(P6382647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6382647-空気入りタイヤ 図000003
  • 特許6382647-空気入りタイヤ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382647
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20180820BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20180820BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20180820BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B60C11/12 A
   B60C11/12 B
   B60C11/01 B
   B60C11/13 C
   B60C11/03 200Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-176212(P2014-176212)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49879(P2016-49879A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100173657
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬沼 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 信太郎
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−086665(JP,A)
【文献】 特開2009−061985(JP,A)
【文献】 特開2010−162989(JP,A)
【文献】 特開昭62−157807(JP,A)
【文献】 意匠登録第1034831(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/01
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に、トレッド周方向に連続して延びる複数の周方向主溝及びトレッド端により区画された複数の陸部を有し、
タイヤ赤道面上に形成された中央陸部には、トレッド幅方向に延びる中央サイプが所定のピッチ長で形成されて、隣接する中央サイプ間がトレッド周方向に連続しており、
前記中央陸部のトレッド幅方向両側に前記周方向主溝を介して隣接する中間陸部には、トレッド幅方向に延びる中間サイプが所定のピッチ長で形成されて、隣接する中間サイプ間がトレッド周方向に連続しており、
前記中間サイプのピッチ長は、前記中央サイプのピッチ長よりも長く、
前記中央サイプは、両端が前記周方向主溝に開口しており、
前記中央サイプは、トレッド踏面への開口位置に面取部を有しており、
前記中間サイプは、トレッド踏面への開口位置に面取部を有しており、
前記中央陸部における前記中央サイプの面取部の面取量は、該中央陸部に隣接する一方の中間陸部における前記中間サイプの面取部の面取量よりも大きく、他方の中間陸部における前記中間サイプの面取部の面取量よりも小さい
ことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記中間サイプは、両端が周方向主溝に連通している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記一方の中間陸部の前記中間サイプ及び前記他方の中間陸部の前記中間サイプは、前記周方向主溝を介して前記中央サイプに交互に滑らかに連続するように形成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記中央陸部に隣接する少なくとも一方の前記中間陸部には、トレッド周方向に隣接する前記中間サイプの間に、一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記中間陸部内で終端するラグ溝が形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ラグ溝は、前記中間陸部のタイヤ赤道面側に隣接する周方向主溝に開口する第1のラグ溝と、前記中間陸部のトレッド端側に隣接する周方向主溝に開口する第2のラグ溝とを有し、
前記第1のラグ溝及び前記第2のラグ溝は、トレッド周方向に離間し、かつ、トレッド幅方向でオーバーラップしないように形成されている、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記周方向主溝と前記トレッド端とにより区画されたトレッド幅方向の最外側陸部には、一端がトレッド端に開口し、他端が前記最外側陸部内で終端するトレッド端側ラグ溝が形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記最外側陸部には、一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記最外側陸部内で終端するタイヤ赤道面側ラグ溝が形成されており、
前記タイヤ赤道面側ラグ溝及び前記トレッド端側ラグ溝は、タイヤ幅方向でオーバーラップしないように形成されている、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
トレッド踏面に、トレッド周方向に連続して延びる複数の周方向主溝及びトレッド端により区画された複数の陸部を有し、
タイヤ赤道面上に形成された中央陸部には、トレッド幅方向に延びる中央サイプが所定のピッチ長で形成されて、隣接する中央サイプ間がトレッド周方向に連続しており、
前記中央陸部のトレッド幅方向両側に前記周方向主溝を介して隣接する中間陸部には、トレッド幅方向に延びる中間サイプが所定のピッチ長で形成されて、隣接する中間サイプ間がトレッド周方向に連続しており、
前記中間サイプのピッチ長は、前記中央サイプのピッチ長よりも長く、
前記中央サイプは、両端が前記周方向主溝に開口しており、
前記中央陸部に隣接する少なくとも一方の前記中間陸部には、トレッド周方向に隣接する前記中間サイプの間に、一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記中間陸部内で終端するラグ溝が形成されている
ことを特徴とする、空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤにおいては、操縦安定性を向上させるために、タイヤ赤道面付近に形成されるいわゆる中央陸部をリブ状とする等の手法が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−193464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空気入りタイヤにおいては、中央陸部の剛性が高くなることにより、接地性が低下して、ハンドルを切った瞬間の応答性である初期操舵応答性が低下してしまう場合がある。また、特許文献1に記載の空気入りタイヤにおいては、中央陸部に形成された溝及びサイプのピッチ長よりも、中央陸部の両側にある中間陸部に形成された溝及びサイプのピッチ長の方が短いため、中間陸部の十分な剛性が得られず、旋回時の操縦安定性が不足する場合がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするものであり、初期操舵応答性及び旋回時操縦安定性を両立させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に、トレッド周方向に連続して延びる複数の周方向主溝及びトレッド端により区画された複数の陸部を有し、タイヤ赤道面上に形成された中央陸部には、トレッド幅方向に延びる中央サイプが所定のピッチ長で形成されて、隣接する中央サイプ間がトレッド周方向に連続しており、前記中央陸部のトレッド幅方向両側に前記周方向主溝を介して隣接する中間陸部には、トレッド幅方向に延びる中間サイプが所定のピッチ長で形成されて、隣接する中間サイプ間がトレッド周方向に連続しており、前記中間サイプのピッチ長は、前記中央サイプのピッチ長よりも長く、前記中央サイプは、両端が前記周方向主溝に開口することを特徴とする、ものである。
本発明の空気入りタイヤによれば、初期操舵応答性及び旋回時操縦安定性を両立させることができる。
【0007】
ここで、「トレッド踏面」とは、適用リムに組み付けるとともに規定内圧を充填したタイヤを、最大負荷能力に対応する負荷を加えた状態で転動させた際に、路面に接触することになる、タイヤの全周にわたる外周面を意味する。なおここで、「適用リム」とは、タイヤサイズに応じて下記の規格に規定された標準リム(下記TRAのYEAR BOOKでは"Design Rim"。下記ETRTOのSTANDARDS MANUALでは"Measuring Rim"。)をいい、「規定内圧」とは、下記の規格において、最大負荷能力に対応して規定される空気圧をいい、「最大負荷能力」とは、下記の規格でタイヤに負荷されることが許容される最大の質量をいう。そして、その規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格によって決められたものであり、例えば、アメリカ合衆国では、"The Tire and Rim Association, Inc.(TRA)"の"YEAR BOOK"であり、欧州では、"The European Tyre and Rim Technical Organization(ETRTO)"の"STANDARDS MANUAL"であり、日本では、"日本自動車タイヤ協会(JATMA)"の"JATMA YEAR BOOK"である。
【0008】
また、「溝」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際のトレッド踏面に開口する幅が1.5mmより大きいものをいう。一方で、「サイプ」とは、陸部の表面から内部に切り込まれた薄い切込みであって、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際のトレッド踏面に開口する幅(サイプが面取部を有する場合は、面取部に開口する幅)が1.5mm以下、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.7mm以下のものをいう。
「トレッド幅方向に延びる」とは、厳密にトレッド幅方向に延びることを意味するものでなく、タイヤ幅方向の成分を有する方向に延びることを意味する。
【0009】
また、周方向主溝が「トレッド周方向に連続して延びる」とは、トレッド周方向に向かって連続して延びることを指し、トレッド周方向に向かってジグザグ状に連続して延びる場合や、トレッド周方向に向かって湾曲しながら連続して延びる場合も含まれる。
「トレッド端」とは、上記「トレッド踏面」のトレッド幅方向最外位置を指す。
サイプの「ピッチ長」とは、サイプのトレッド踏面への開口位置のうち、トレッド周方向一方側の開口位置同士の長さをいう。
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、前記中間サイプは、両端が周方向主溝に連通している、ことが好ましい。
この構成によれば、乗り心地性を高めることができる。
【0011】
本発明の空気入りタイヤは、前記中央サイプは、トレッド踏面への開口位置に面取部を有する、ことが好ましい。
この構成によれば、排水性を向上させつつ、初期操舵応答性をさらに高めることができる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記中間サイプは、トレッド踏面への開口位置に面取部を有しており、前記中央陸部における前記中央サイプの面取部の面取量は、該中央陸部に隣接する一方の中間陸部における前記中間サイプの面取部の面取量よりも大きく、他方の中間陸部における前記中間サイプの面取部の面取量よりも小さい、ことが好ましい。
この構成によれば、初期操舵応答性を維持しつつ、排水性を向上させることができる。
ここで、面取部の面取り量とは、面取部のタイヤ周方向の寸法をいい、タイヤ周方向の寸法がタイヤ幅方向で変化する場合には、タイヤ周方向の寸法の平均値をいうものとする。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記一方の中間陸部の前記中間サイプ及び前記他方の中間陸部の前記中間サイプは、前記周方向主溝を介して前記中央サイプに交互に滑らかに連続するように形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、旋回時操縦安定性及び排水性をさらに高めることができる。
ここで「滑らかに連続する」とは、サイプ(面取部を含む)及びラグ溝の一方のトレッド幅方向端部付近におけるサイプ幅方向中心線を延長した線が、サイプ(面取部を含む)及びラグ溝の他方のトレッド幅方向端部(周方向主溝への開口部)内に位置することをいう。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記中央陸部に隣接する少なくとも一方の前記中間陸部には、トレッド周方向に隣接する前記中間サイプの間に、一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記中間陸部内で終端するラグ溝が形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、旋回時操縦安定性をさらに高めることができる。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記ラグ溝は、前記中間陸部のタイヤ赤道面側に隣接する周方向主溝に開口する第1のラグ溝と、前記中間陸部のトレッド端側に隣接する周方向主溝に開口する第2のラグ溝とを有し、
前記第1のラグ溝及び前記第2のラグ溝は、トレッド周方向に離間し、かつ、トレッド幅方向でオーバーラップしないように形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、旋回時操縦安定性をより高めることができる。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記周方向主溝と前記トレッド端とにより区画されたトレッド幅方向の最外側陸部には、一端がトレッド端に開口し、他端が前記最外側陸部内で終端するトレッド端側ラグ溝が形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、旋回時操縦安定性を維持しつつ、排水性を高めることができる。
【0017】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記最外側陸部には、一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記最外側陸部内で終端するタイヤ赤道面側ラグ溝が形成されており、前記タイヤ赤道面側ラグ溝及び前記トレッド端側ラグ溝は、タイヤ幅方向でオーバーラップしないように形成されている、であることが好ましい。
この構成によれば、旋回時操縦安定性を維持しつつ、排水性及び初期操舵応答性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、初期操舵応答性及び旋回時操縦安定性を両立させた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
図2図1のII−II線断面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)のトレッドパターンを示す展開図であり、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態のトレッド踏面を展開して示す図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の一実施形態にかかるタイヤは、トレッド踏面1に、トレッド周方向に連続して延びる複数の周方向主溝2が形成されている。図1の例では、4本の周方向主溝21、22、23、24を有している。本実施形態では、4本の周方向主溝は、いずれも同一の形状を有しており、これらの周方向主溝2により、タイヤの排水性を確保することができる。
図1に示す例では、4本の周方向主溝2は、タイヤ赤道面CLを境界とするトレッド幅方向半部に2本ずつ、タイヤ赤道面CLに関して対称に設けられている。
【0023】
また、図1に示すように、これら4本の周方向主溝2及びトレッド端TE1、TE2により複数の陸部3が区画形成されている。具体的には、トレッド幅方向の一方側の最外側周方向主溝21と一方側のトレッド端TE1とにより、トレッド幅方向の一方側の最外側陸部31が区画形成され、最外側周方向主溝21と最外側周方向主溝21のトレッド幅方向他方側に隣接して設けられた周方向主溝22とにより、一方側の中間陸部32が区画形成され、周方向主溝22と周方向主溝22のトレッド幅方向他方側に隣接して設けられた周方向主溝23とにより、図示例でタイヤ赤道面CL上に位置する中央陸部33が区画形成され、周方向主溝23とトレッド幅方向の他方側の最外側周方向主溝24とにより、他方側の中間陸部34が区画形成され、最外側周方向主溝24と他方側のトレッド端TE2とにより、トレッド幅方向の他方側の最外側陸部35が区画形成されている。
図示例では、最外側陸部31及び最外側陸部35は、トレッド幅方向の寸法が等しくなるように形成されている。また、中間陸部32、中央陸部33及び中間陸部34は、トレッド幅方向の寸法が等しくなるように形成されている。
【0024】
本実施形態の最外側陸部31には、一端がトレッド端TE1に開口し、他端が最外側陸部31内で終端するトレッド端側ラグ溝41が形成されている。
【0025】
中間陸部32には、トレッド幅方向に延びる中間サイプ51が、所定のピッチ長で形成されている。本実施形態の中間サイプ51は、トレッド踏面において開口する幅が0.7mmとなるように構成されている。中間陸部32は、隣接する中間サイプ51間では他のサイプ及び溝により分断されずに、トレッド周方向で連続している。
本実施形態の中間陸部32には、一端が最外側周方向主溝21に開口し、他端が中間サイプ51に連通するラグ溝42が形成されている。
本実施形態の中間陸部32にはさらに、一端が周方向主溝22に開口し、他端が中間陸部32内で終端するラグ溝43が形成されている。本実施形態では、隣接する中間サイプ51のトレッド周方向の中心にラグ溝43が形成されている。本実施形態のラグ溝43は、中間サイプ51と実質的に平行に延びるように形成されている。
【0026】
本実施形態の中間サイプ51は、一端が周方向主溝22に開口している。そのため、本実施形態の中間サイプ51は、両端が周方向主溝21及び22にそれぞれ連通している。そのため本実施形態の中間陸部32は、ラグ溝42及び中間サイプ51によりトレッド周方向に分断されて、ブロック状に形成されている。
また、本実施形態の中間サイプ51は、トレッド幅方向に対して傾斜して形成されている。中間サイプ51は例えば、トレッド幅方向に対して10〜50°傾斜して形成することができる。中間サイプ51のトレッド幅方向に対する傾斜角をこのような範囲とすると、トレッド周方向及びトレッド幅方向から大きな力が加わっても、操縦安定性を維持することができるとともに、中間陸部32における水膜を効果的に除去することができる。本実施形態の中間サイプ51は、トレッド幅方向に対して約30°傾斜している。
図2は、図1のII−II線断面である。本実施形態の中間サイプ51は、トレッド踏面1への開口位置に面取部61が形成されている。なお図1においては、面取部61は、ハッチを付して示している。本実施形態の中間サイプ51は、トレッド踏面において面取部61に開口する幅が0.7mmとなるように構成されている。ここで、サイプの幅とは、サイプの延在方向に垂直な方向の寸法をいう。本実施形態では、中間サイプ51のトレッド周方向の一方側のトレッド踏面1への開口位置に面取部61が形成されている。本実施形態の面取部61は、周方向主溝21から周方向主溝22に向かって面取量が大きくなるように構成されている。
【0027】
タイヤ赤道面CL上に形成された中央陸部33には、トレッド幅方向に延びる中央サイプ52が所定のピッチ長で形成されている。本実施形態の中央サイプ52は、トレッド踏面において開口する幅が0.7mmとなるように構成されている。中央陸部33は、隣接する中央サイプ52間では他のサイプ及び溝により分断されずに、トレッド周方向で連続している。中央サイプ52は、中間サイプ51のピッチ長が、中央サイプ52のピッチ長よりも長くなるように形成されている。
【0028】
中央サイプ52は、両端が周方向主溝22及び23にそれぞれ開口して中央陸部33を分断している。そのため中央陸部33は、ブロック状に形成されている。本実施形態の中央サイプ52は、中間サイプ51と同様に、トレッド幅方向に対して約30°傾斜している。
本実施形態の中央サイプ52は、中間サイプ51と同様に、トレッド踏面への開口位置に面取部62が形成されている。なお図1においては、面取部62は、ハッチを付して示している。本実施形態の中間サイプ52は、トレッド踏面において面取部62に開口する幅が0.7mmとなるように構成されている。本実施形態では、中間サイプ51と同様に、中央サイプ52のトレッド周方向の一方側のトレッド踏面1への開口位置に面取部62が形成されている。本実施形態の面取部62は、周方向主溝22から周方向主溝23に向かって面取量が大きくなるように構成されている。また、本実施形態の面取部62は、中間サイプ51の面取部61よりも、面取量が大きくなるように構成されている。
本実施形態では、隣接する中央サイプ52が、周方向主溝22及び23を介して、中間陸部32に形成されたラグ溝43及び中間サイプ51と交互に滑らかに連続するように形成されている。そのため本実施形態では、中間サイプ51のピッチ長は、中央サイプ52のピッチ長の約2倍となっている。
【0029】
中間陸部34には、トレッド幅方向に延びる中間サイプ53が所定のピッチ長で形成されている。本実施形態の中間サイプ53は、トレッド踏面において開口する幅が0.7mmとなるように構成されている。本実施形態の中間サイプ53は、一端が周方向主溝23に開口している。中間陸部34は、隣接する中間サイプ53間では他のサイプ及び溝により分断されずに、トレッド周方向で連続している。中間サイプ53は、中間サイプ53のピッチ長が、中央サイプ52のピッチ長よりも長くなるように形成されている。
本実施形態の中間陸部34には、一端が周方向主溝23に開口し、他端が中間陸部34内で終端するラグ溝44(第1のラグ溝)が形成されている。本実施形態では、隣接する中間サイプ53のトレッド周方向の略中心にラグ溝44が形成されている。本実施形態のラグ溝44は、中間サイプ53と実質的に平行に延びるように形成されている。
本実施形態の中間陸部34にはさらに、一端が中間サイプ53に開口し、他端が最外側周方向主溝24に開口するラグ溝45が形成されている。本実施形態では、ラグ溝44及びラグ溝45がトレッド周方向でオーバーラップしないようにラグ溝45が形成されている。
本実施形態の中間陸部34にはさらに、一端が周方向主溝24に開口し、他端が中間陸部34内で終端するラグ溝46(第2のラグ溝)が形成されている。本実施形態のラグ溝46は、ラグ溝44とトレッド周方向に離間し、かつ、トレッド幅方向でオーバーラップしないようにラグ溝46が形成されている。
【0030】
本実施形態の中間サイプ53は、一端が周方向主溝23に開口し、他端がラグ溝45に開口している。そのため、本実施形態の中間サイプ53は、両端が周方向主溝23及び24にそれぞれ連通している。そのため、本実施形態の中間陸部34は、ラグ溝45及び中間サイプ53によりトレッド周方向に分断されて、ブロック状に形成されている。本実施形態の中間サイプ53は、中間サイプ51及び中央サイプ52と同様に、トレッド幅方向に対して約30°傾斜している。
本実施形態の中間サイプ53は、中間サイプ51及び中央サイプ52と同様に、トレッド踏面への開口位置に面取部63が形成されている。なお図1においては、面取部63は、ハッチを付して示している。本実施形態の中間サイプ53は、トレッド踏面において面取部63に開口する幅が0.7mmとなるように構成されている。本実施形態では、中間サイプ51及び中央サイプ52と同様に、中間サイプ53のトレッド周方向の一方側のトレッド踏面1への開口位置に面取部63が形成されている。本実施形態の面取部63は、周方向主溝23から周方向主溝24に向かって面取量が大きくなるように構成されている。また、本実施形態の面取部63は、中央サイプ52の面取部62よりも、面取量が大きくなるように構成されている。
【0031】
本実施形態の中間サイプ53は、中央陸部33に形成された中央サイプ52のうち、中間陸部32に形成されたラグ溝43と周方向主溝22を介して滑らかに連続するように形成された中央サイプ52と周方向主溝23を介して滑らかに連続するように形成されている。そのため本実施形態では、中間陸部32の中間サイプ51及び中間陸部34の中間サイプ53が、周方向主溝22及び23を介して中央サイプ52に交互に滑らかに連続している。また本実施形態では、中間サイプ53のピッチ長は、中間サイプ51のピッチ長と同様に、中央サイプ52のピッチ長の約2倍となっている。
【0032】
また本実施形態のラグ溝44は、中央陸部33に形成された中央サイプ52のうち、中間陸部32に形成された中間サイプ51と周方向主溝22を介して滑らかに連続するように形成された中央サイプ52と周方向主溝23を介して滑らかに連続するように形成されている。そのため本実施形態では、中間サイプ51(面取部61を含む)、中央サイプ52(面取部62を含む)及びラグ溝44が周方向主溝22及び周方向主溝23を介して滑らかに連続するように形成されている。
【0033】
本実施形態の最外側陸部35には、一端がトレッド端TE2に開口し、他端が最外側陸部内で終端するトレッド端側ラグ溝47が形成されている。本実施形態では、トレッド端側ラグ溝47が延びる方向にラグ溝46が位置するように、トレッド端側ラグ溝47が形成されている。
本実施形態の最外側陸部35にはさらに、一端が最外側周方向主溝24に開口し、他端が最外側陸部35内で終端するタイヤ赤道面側ラグ溝48が形成されている。本実施形態では、トレッド端側ラグ溝47とタイヤ幅方向でオーバーラップしないようにタイヤ赤道面側ラグ溝48が形成されている。また、トレッド端側ラグ溝47とタイヤ赤道面側ラグ溝48とは、トレッド周方向に離隔して形成されている。本実施形態では、タイヤ赤道面側ラグ溝48は、周方向主溝24を介してラグ溝45と滑らかに連続するように形成されている。そのため本実施形態では、ラグ溝43、中央サイプ52(面取部62を含む)、中間サイプ53(面取部63を含む)、ラグ溝45及びタイヤ赤道面側ラグ溝48が周方向主溝22〜24を介して滑らかに連続するように形成されている。
【0034】
このように、本発明の一実施形態のタイヤは、トレッド踏面1に、トレッド周方向に連続して延びる複数の周方向主溝2及びトレッド端TEにより区画された複数の陸部3を有し、タイヤ赤道面CL上に形成された中央陸部33は、トレッド幅方向に延びる中央サイプ52が所定のピッチ長で形成されて、隣接する中央サイプ52間がトレッド周方向に連続しており、中央陸部33のトレッド幅方向両側に周方向主溝22及び23を介して隣接する中間陸部32及び34には、トレッド幅方向に延びる中間サイプ51及び53が所定のピッチ長で形成されて、隣接する中間サイプ51間及び中間サイプ53間がトレッド周方向に連続しており、中間サイプ51及び53のピッチ長は、中央サイプ52のピッチ長よりも長く、中央サイプ52は、両端が周方向主溝22及び23に開口していること、を特徴とするものである。
以下、本実施形態のタイヤについて、他方側の中間陸部34が車両装着時外側となるようにタイヤを車両に装着した際の作用効果について説明する。
【0035】
旋回時の操縦安定性を向上させるためには、旋回時の横力に対する剛性が陸部に必要なため、陸部をリブ状とすることが有効であるものの、初期操舵応答性に大きな影響を与える接地長が最も長いタイヤ赤道面CL付近の陸部を完全なリブ状とすると、接地性が得られず、初期操舵応答性が十分に得られない場合がある。
【0036】
これに対し、本発明の一実施形態のタイヤによれば、タイヤ赤道面CL上に形成された中央陸部33に、トレッド幅方向に延びる中央サイプ52が所定のピッチ長で形成されて、中央サイプ52の両端が周方向主溝22及び23に開口しているので、中央陸部33の接地性を高めて接地面積を確保して、初期操舵応答性を向上させている。また、中間サイプ51及び53のピッチ長を、中央サイプ52のピッチ長よりも長くしているので、旋回時の横力に対して必要となる中間陸部の剛性を確保して、旋回時の操縦安定性を向上させている。
そのため、本実施形態の空気入りタイヤでは、初期操舵応答性及び旋回時操縦安定性を両立させることができる。
【0037】
ここで、本発明にあっては、中間サイプ51及び53は、両端が周方向主溝2に連通していることが好ましい。このような構成とすると、中間陸部32及び34の剛性の低下により、中央陸部33との剛性差を低減して、乗り心地性を高めることが可能となる。
【0038】
また、中央サイプ52は、トレッド踏面への開口位置に面取部62を有していることが好ましい。このような構成とすると、排水性の向上とともに、接地性が高まるので、初期操舵応答性を向上させることができる。
【0039】
さらに、中間サイプ51及び53は、トレッド踏面への開口位置に面取部61及び63を有していてもよい。この場合には、中央陸部33における中央サイプ52の面取部62の面取り量は、該中央陸部33に隣接する一方の中間陸部32における中間サイプ51の面取部61の面取量よりも大きく、他方の中間陸部34における中間サイプ53の面取部63の面取量よりも小さいことが好ましい。このような構成とすると、車両装着時外側となる他方側の面取量が大きくなるので、旋回時の排水性を向上させることができる。また、車両装着時内側となる一方側の面取量が小さいため、通常走行時の接地面積が確保されて、良好な初期操舵応答性を確保することができる。
【0040】
また、一方の中間陸部32の中間サイプ51及び他方の中間陸部34の中間サイプ53は、周方向主溝22及び23を介して中央サイプ52に交互に滑らかに連続するように形成されていることが好ましい。このような構成とすると、中間サイプ51と中間サイプ53とがトレッド周方向にオフセットされた位置に形成されうるので、トレッド全体の剛性を均一化して、旋回時操縦安定性をさらに高めることができる。また中央サイプ52と滑らかに連続しているので、排水性を向上させることができる。
【0041】
中央陸部33に隣接する少なくとも一方の中間陸部34には、トレッド周方向に隣接する中間サイプ53の間に、一端が周方向主溝23及び24に開口し、他端が他方の中間陸部34内で終端するラグ溝44及び46が形成されていることが好ましい。このような構成とすると、中間陸部34の剛性を低下させて接地性を向上させることにより、旋回時の操縦安定性を向上させることができる。なお、このようなラグ溝は、一方の中間陸部32にも形成されていてもよい。
【0042】
ラグ溝44及び46は、タイヤ赤道面側に隣接する周方向主溝23に開口する第1のラグ溝44と、トレッド端側に隣接する周方向主溝24に開口する第2のラグ溝46とを有し、第1のラグ溝44及び第2のラグ溝46は、トレッド周方向に離間し、かつ、トレッド幅方向でオーバーラップしないように形成されていることが好ましい。このような構成とすると、中間陸部34の剛性が極端に低下することを抑制して、旋回時操縦安定性をより高めることができる。
【0043】
周方向主溝2とトレッド端TE1、TE2とにより区画されたトレッド幅方向の最外側陸部31及び35には、一端がトレッド端TE1、TE2に開口し、他端が最外側陸部31及び35内で終端するトレッド端側ラグ溝41及び47が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、ラグ溝を形成しながらも、最外側陸部31及び35の剛性が低下しすぎることがないので、旋回時操縦安定性を維持しつつ、排水性を高めることができる。
【0044】
最外側陸部35には、一端が周方向主溝24に開口し、他端が最外側陸部35内で終端するタイヤ赤道面側ラグ溝48が形成されており、タイヤ赤道面側ラグ溝48及びトレッド端側ラグ溝47は、タイヤ幅方向でオーバーラップしないように形成されていることが好ましい。このような構成とすると、旋回時操縦安定性を維持しつつ、排水性及び初期操舵応答性をさらに高めることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、トレッド踏面に、3本又は5本以上の周方向主溝が形成されていてもよい。他にも種々の変形、変更が可能である。
【実施例】
【0046】
本発明の効果を確かめるため、発明例1〜10にかかるタイヤと、比較例1にかかるタイヤとを試作し、タイヤの性能を評価する試験を行った。各タイヤの諸元は、以下の表1に示している。試験は、タイヤサイズ225/45R17の上記各タイヤを適用リムに組み付け、内圧を230kPaとして、中間陸部34が車両装着時外側となるように車両に装着して行った。
【0047】
<旋回時操縦安定性>
上記各タイヤについて、ドライ路面上を走行した際の走行性能をドライバーによる官能により評価した。比較例1にかかるタイヤの評価結果を100とした場合の相対値で評価し、数値が大きい方が旋回時操縦安定性に優れていることを示す。
<初期操舵応答性>
ドライバーによる官能評価を行った。評価は、比較例1にかかるタイヤの評価結果を100としたときの相対値で指数評価し、数値が大きい方が初期操舵応答性が良好であることを示す。
<排水性>
上記各タイヤについて、テストコースにて水深6mmのウェット路面上を走行し、時速80km/hからブレーキをかけ静止するまでの制動距離を測定した。比較例1にかかるタイヤの評価結果を100とした場合の制動距離の比率の逆数で評価し、数値が大きい方が排水性に優れていることを示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、発明例1〜10にかかるタイヤは、いずれも比較例1にかかるタイヤと比べて、初期操舵応答性及び旋回時操縦安定性を両立できていることがわかる。
比較例1では、中央陸部33がリブ状であるため、ラグ溝42が形成されていないため、発明例1〜8と比較して、初期操舵応答性及び旋回時操縦安定性を両立できていないことがわかる。
発明例1と発明例2とを比較すると、タイヤ赤道面側ラグ溝48を形成した発明例1の方が、操縦安定性を維持しつつ、排水性及び初期操舵応答性が高いことがわかる。
発明例2と発明例3とを比較すると、トレッド端側ラグ溝41及び47が形成されている発明例2の方が、排水性が高いことがわかる。
発明例3と発明例4とを比較すると、ラグ溝44または45が形成されている発明例3の方が、操縦安定性が高いことがわかる。
発明例4と発明例5とを比較すると、陸部34にラグ溝が形成されている発明例4の方が、操縦安定性が高いことがわかる。
発明例5と発明例6とを比較すると、中間サイプ51及び中間サイプ53が、中央サイプ52に滑らかに連続している発明例5の方が、操縦安定性・排水性が高いことがわかる。
発明例6と発明例7とを比較すると、中間サイプ51及び53に、面取部61及び63が形成されている発明例6の方が、操排水性・初期操舵応答性が高いことがわかる。
発明例7と発明例8とを比較すると、中央サイプ52に面取部62が形成されている発明例7の方が、排水性・初期操舵応答性が高いことがわかる。
発明例8と発明例9とを比較すると、中間サイプ51及び53が周方向主溝に連通している発明例8の方が、操縦安定性が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、初期操舵応答性及び旋回時操縦安定性を両立できる空気入りタイヤを提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:トレッド踏面、 2:周方向主溝、 21:最外側周方向主溝、 22、23:周方向主溝、 24:最外側周方向主溝、 3:陸部、 31:最外側陸部、 32:中間陸部、 33:中央陸部、 34:中間陸部、 35:最外側陸部、 41:トレッド端側ラグ溝、 42、43:ラグ溝、 44:ラグ溝(第1のラグ溝)、 45:ラグ溝、 46:ラグ溝(第2のラグ溝)、 47:トレッド端側ラグ溝、 48:タイヤ赤道面側ラグ溝、 51:中間サイプ52:中央サイプ、 53:中間サイプ、 61、62、63:面取部、 CL:タイヤ赤道面、 TE1、TE2:トレッド端
図1
図2