(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筐体の前記側面から前記パワーユニットを出すときに、前記電力変換部は、前記穴部または前記凹部が前記突起部に引っ掛かることによって前記フィルタコンデンサ部と一体として移動し、
前記筐体の上面から前記パワーユニットを出すときに、前記電力変換部は、前記穴部または前記凹部が前記突起部から抜けることによって前記フィルタコンデンサ部と別体として移動する、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による電力変換装置1等の構成の一例を示すブロック図である。電力変換装置1は、鉄道等の電気車の車両の電力制御に用いられる装置であり、車両の床下または屋根上に配置される。
【0012】
パンタグラフPGは、電源としての架線2と電気的に接触し、架線からの電力を電力変換装置1へ供給し、あるいは、回生電力を架線2へ供給する。パンタグラフPGからの電力は、変圧器4を介して電力変換装置1へ供給される。電力変換装置1は、変圧器4からの電力を変換してモータ3へ供給する。
【0013】
モータ3は、電気車を走行させるために電気車の車輪を駆動させる。モータ3は、例えば、三相交流モータであり、ネオジム磁石等の強磁性体を用いた永久磁石同期電動機(PMSM)である。
【0014】
電力変換装置1は、コンバータ10と、インバータ20と、コントローラ30と、遮断機40と、電流検出器50と、電圧検出器60と、接触器70とを備えている。
【0015】
コンバータ10は、架線2からの交流電力を直流電力へ変換する。インバータ20は、コンバータ10からの直流電力を交流電力(例えば、三相交流電力)へ変換する。インバータ20において変換された交流電力は、接触器70を介してモータ3へ供給される。コンバータ10およびインバータ20は、複数のゲート(例えば、IGBT、GTO等の半導体素子)を備え、それらのゲートをスイッチング制御することによって、交流電力を直流電力へ変換し、あるいは、直流電力を交流電力へ変換する。インバータ20において変換された交流電力は、電動機へ供給される。
【0016】
コンバータ10およびインバータ20は、それぞれフィルタコンデンサ部120(
図2参照)を含み、フィルタコンデンサ部120によって過渡的な電力の変化を抑制している。
【0017】
接触器70は、モータ3とインバータ20との間を電気的に接続し、あるいは、開放する電磁開閉器である。例えば、接触器70は、モータ開放接触器(MCOK)でよい。
【0018】
コントローラ30は、電流検出器50からのモータ電流値、電圧検出器60からの電圧値、制御信号等を受け取り、それらの値や信号に基づいて、インバータ20のゲート21のスイッチングを制御し、並びに、接触器70の接続/開放を制御する。
【0019】
電流検出器50は、変圧器4とコンバータ10との間に流れる電流を検出する。電圧検出器60は、コンバータ10に入力される電圧を検出する。
【0020】
遮断器40は、主電源スイッチ、重大な故障が生じたときに電力を遮断する高速度遮断器、ノッチをオフ状態にしたときに電力を遮断する遮断器等を含む。
【0021】
なお、上記構成はパンタグラフPGを介して供給される電力が交流である場合を示しているが、供給される電力が直流であっても構わない。この場合、電力変換装置はコンバータが無い構成となる。
【0022】
また、電力変換装置が電力を供給する負荷としてモータを挙げているが、これに限らず、電力変換装置を補助電源装置(インバータ)とし、電力が供給される負荷を車両内に設けられた空調、照明等としても良い。
【0023】
図2(A)は、第1の実施形態による電力変換装置1の構成の一例を示す正面図である。
図2(B)は、第1の実施形態による電力変換装置1の構成の一例を示す側面図である。尚、
図2(A)および
図2(B)では、電力変換装置1内に収容されているパワーユニットPUの構成を示すために、筐体100の側面の壁(側面扉)または正面の壁の図示を省略している。
【0024】
筐体100は、パワーユニットPUを収容し、その上面および側面からパワーユニットPUを出し入れ可能に構成されている。例えば、筐体100は、その上面に設けられた上面扉101と、その側面に設けられた側面扉102とを備えている。電力変換装置1が車両の屋根上に配置されている場合、上面扉101を開放することによって、筐体100の上面側からパワーユニットPUを出し入れすることができる。一方、電力変換装置1が車両の床下上に配置されている場合、側面扉102を開放することによって、筐体100の側面側からパワーユニットPUを出し入れすることができる。
【0025】
パワーユニットPUは、電力変換部110と、フィルタコンデンサ部120と、を備えている。
図2(A)および
図2(B)の破線Lbの上側が電力変換部110を示し、その下側がフィルタコンデンサ部120を示す。
【0026】
電力変換部110は、
図1に示すコンバータ10およびインバータ20等を構成する電力変換素子(例えば、IGBT、GTO等の半導体素子)111と、冷却フィンまたは支持基板112と、電力変換素子111を制御する制御基板103と、電力変換素子111または制御基板113と電気的に接続された導体4a、4bとを備えている。
【0027】
電力変換部110は、後述するフィルタコンデンサ部120の保護ケース123上に設けられた突起部127に嵌合する穴部または凹部115(以下、穴部11という)を冷却フィンまたは支持基板112に有し、突起部127が穴部115に嵌まるようにフィルタコンデンサ部120上に配置されている。これにより、電力変換部110は、フィルタコンデンサ部120上に搭載されているときには、フィルタコンデンサ部120の上面に対して平行方向(水平方向)にずれない。
【0028】
フィルタコンデンサ部120は、支持基板121上に設けられたフィルタコンデンサFCと、フィルタコンデンサFCを保護する保護ケース123と、フィルタコンデンサFCと電気的に接続された導体4cとを備えている。
【0029】
保護ケース123には、突起部125が設けられている。突起部125は、電力変換部110に形成された穴部115に向かって(上方に向かって)差し込まれるように設けられており、筐体100の上面から電力変換部110を出し入れするときに該電力変換部110を案内するように構成されている。
【0030】
突起部125が穴部115に嵌合するように電力変換部110がフィルタコンデンサ部120上に搭載されることによって、電力変換部110およびフィルタコンデンサ部120がパワーユニットPUとして一体として構成される。例えば、筐体100の側面扉102からパワーユニットPUを引き出すときに、電力変換部110の穴部115がフィルタコンデンサ部120の突起部125に引っ掛かることによって電力変換部110はフィルタコンデンサ部120と一体として引き出される。このとき、パワーユニットPUは、後述するガイドレールGRに沿って引き出される。一方、電力変換部110はフィルタコンデンサ部120から着脱可能であり、電力変換部110は、フィルタコンデンサ部120から別体として取り出すこともできる。例えば、筐体100の上面扉101から電力変換部110を取り出すときに、電力変換部110の穴部115がフィルタコンデンサ部120の突起部125から抜けることによって電力変換部110はフィルタコンデンサ部120と別体として取り出される。
【0031】
また、筐体100の上面扉101から電力変換部110を入れるときに、電力変換部110の穴部115が、フィルタコンデンサ部120の突起部125に嵌まることによって、フィルタコンデンサ120上における電力変換部115の位置が決まる。即ち、突起部125および穴部115は、フィルタコンデンサ120上における電力変換部115の位置を決める機能も有する。尚、突起部125は穴部115に差し込まれているだけでもよいが、ネジ止めされていてもよい。この場合、電力変換部110をフィルタコンデンサ部120と別体として移動させるときには、ネジを取り外して、穴部115が突起部125から抜け得るようにする。
【0032】
導体4aは、電力変換素子111の端子と電気的に接続されている。導体4bは、制御基板113と電力変換素子111との間に接続されている。導体4cは、フィルタコンデンサFCの端子に電気的に接続されている。導体4a、4cは、接続部130によって結合されている。導体4cは、接続部140よって、筐体100内または筐体100外の他の装置(図示せず)に電気的に接続される。また、導体4bは、接続部150よって、筐体100内または筐体100外の他の装置に電気的に接続される。
【0033】
筐体100の底面には、ガイドレールGRが固定けられている。ガイドレールGRは、
図2(B)に示すように、筐体100の底面上において、筐体100の側面(側面扉102)に対して略垂直方向に延伸するように設けられている。ガイドレールGRは、筐体100の側面(側面扉102)からパワーユニットPUを出し入れするときに該パワーユニットPUを案内する。より詳細には、
図2(B)の矢印As方向にパワーユニットPUを移動させるときに、パワーユニットPUは、ガイドレールGR上を滑って移動する。このときに、パワーユニットPUが移動方向に対して横方向にずれないように、ガイドレールGRは、パワーユニットPUの支持基板121の側面に接触して、パワーユニットPUの横方向のずれを抑制する。
【0034】
また、筐体100の側面扉102からパワーユニットPUを入れるときにも、ガイドレールGRは、パワーユニットPUを案内する。従って、ガイドレールGRは、筐体100内におけるパワーユニットPUの位置を決める機能も有する。
【0035】
パワーユニットPUは、留具160によって筐体100に固定されている。従って、パワーユニットPU全体を移動させる場合には、留具160を取り外す必要がある。また、パワーユニットPUと筐体100とを接続する部材がある場合には、その部材も取り外す。例えば、接続部140、150が筐体100にネジ留めされている場合、パワーユニットPUを移動させる際に、接続部140、150を筐体100から取り外す必要がある。また、パワーユニットPUのうち電力変換部110のみを移動させる場合には、電力変換部110とフィルタコンデンサ部120との結合部を取り外す必要がある。例えば、穴部115と突起部125とがネジ留めされている場合には、穴部115と突起部125とを結合するネジも取り外す必要がある。また、接続部130がネジ留めされている場合には、接続部130を取り外して導体4aと導体4cとを分離可能にする必要がある。
【0036】
図3は、筐体100の側面扉102からパワーユニットPUを引き出す様子を示す図である。尚、上述のように、筐体100からパワーユニットPUを引き出す際には、パワーユニットPUと筐体100とを接続する部材(接続部14、150、留め具160等)を予め取り外しておく。
【0037】
筐体100の側面扉102からパワーユニットPUを引き出す場合、側面扉102が開放される。そして、パワーユニットPU全体がガイドレールGRに沿って矢印Asoの方向に引き出される。このとき、フィルタコンデンサ部120の突起部125が電力変換部110の穴部115に、Aso方向に対して垂直方向に嵌まっている。これにより、電力変換部110またはフィルタコンデンサ部120のいずれか一方を引き出しても、パワーユニットPU全体が一体としてガイドレールGRに沿って引き出される。
【0038】
逆に、筐体100の側面扉102からパワーユニットPUを入れる場合、側面扉102が開放され、パワーユニットPU全体がガイドレールGRに沿って矢印Asiの方向に挿入される。このとき、フィルタコンデンサ部120の突起部125が電力変換部110の穴部115に、Asi方向に対して垂直方向に嵌まっている。これにより、電力変換部110またはフィルタコンデンサ部120のいずれか一方を押しても、パワーユニットPU全体が一体としてガイドレールGRに沿って挿入される。
【0039】
図4は、筐体100の上面扉101から電力変換部110を取り出す様子を示す図である。尚、上述のように、筐体100から電力変換部110を引き出す際には、電力変換部110と筐体100とを接続する部材、および、電力変換部110とフィルタコンデンサ部120と接続する部材を予め取り外しておく。
【0040】
筐体100の上面扉101から電力変換部110を取り出す場合、上面扉101が開放される。そして、電力変換部110が矢印Auoの方向に持ち上げられる。このとき、フィルタコンデンサ部120の突起部125が電力変換部110の穴部115に、Auo方向に対して平行方向に嵌まっている。従って、電力変換部110を矢印Auoの方向に持ち上げれば、電力変換部110は、フィルタコンデンサ部120から外れ、電力変換部110のみを筐体100から取り出すことができる。勿論、その後、筐体100の上面扉101からフィルタコンデンサ部120を取り出してもよい。
【0041】
逆に、筐体100の上面扉101から電力変換部110を入れる場合、上面扉101が開放され、電力変換部110が矢印Auiの方向に挿入される。そして、電力変換部110は、フィルタコンデンサ部120上に搭載される。このとき、フィルタコンデンサ部120の突起部125は、電力変換部110の穴部115が突起部125に嵌まると、その後、電力変換部110を案内する。これにより、フィルタコンデンサ部120上における電力変換部110の位置が決まる。
【0042】
このように、本実施形態による電力変換装置1は、筐体100の側面扉102を介してパワーユニットPU全体を出し入れすることができ、かつ、筐体100の上面扉102を介して電力変換部110とフィルタコンデンサ部120とを分離させて出し入れすることもできる。これにより、電力変換装置1を車両の床下に設置した場合、オペレータは、筐体100の側面扉102を開放してパワーユニットPUを出し入れすることができる。一方、電力変換装置1を車両の屋根上に設置した場合、オペレータは、筐体100の上面扉101を開放してパワーユニットPUを出し入れすることができる。従って、本実施形態による電力変換装置1は、電気車の車両における配置位置に依らず同一の構成に設計され、かつ、筐体100内部へのアクセスを容易化することができる。
【0043】
一般に、電力変換部110およびフィルタコンデンサ部120は、それぞれ数10kgの重量を有し、パワーユニットPU全体の重量は非常に重いものとなる。従って、パワーユニットPUを筐体100へ挿入し、あるいは、パワーユニットPUを筐体100から取り出す際に、パワーユニットPUをガイドレールGRに沿って滑らせることは人手によって可能であるものの、パワーユニットPU全体を人手で持ち上げることは困難である。例えば、電力変換装置1を車両の床下に配置する場合には、パワーユニットPUは筐体100の側面扉102から引き出せる。しかし、屋根上に配置する場合には、パワーユニットPUを屋根上まで持ち上げなければならず、作業効率が悪くなる。また、フィルタコンデンサ部120と電力変換部110とを別の場所に配置することも考えられる。しかし、この場合、フィルタコンデンサ部120と電力変換部110との間の距離が遠くなり、フィルタコンデンサ部120と電力変換部110との間のインダクタンスが増加する。これは、半導体素子の遮断性能の低下等を引き起こす。
【0044】
これに対し、本実施形態では、使用時においては、電力変換部110とフィルタコンデンサ部120とは一体のパワーユニットPUとして使用され、メンテナンス等において、筐体100の上面扉101からパワーユニットPUを出し入れする場合、電力変換部110とフィルタコンデンサ部120とを分離して、それらを個別に取り出すことができる。これにより、筐体100の上面扉101からパワーユニットPUを出し入れすることが比較的容易になる。また、筐体100の側面扉102からパワーユニットPUを出し入れする場合、電力変換部110の穴部115とフィルタコンデンサ部120の突起部125とが嵌合したまま、パワーユニットPUが全体として引き出される。この場合、上述の通り、パワーユニットPUの出し入れは比較的容易である。このように、本実施形態による電力変換装置1は、電気車の車両における配置位置に依らず同一の構成に設計され得る。尚且つ、本実施形態による電力変換装置1は、筐体100の内部へのアクセスを容易化することができ、効率的な作業を可能にする。
【0045】
(変形例)
図5(A)第1の実施形態の変形例による電力変換装置1の構成の一例を示す正面図である。
図5(B)は、第1の実施形態の変形例による電力変換装置1の構成の一例を示す側面図である。本変形例による電力変換装置1は、パワーユニットPUに設けられた第1コネクタ171、181と、筐体100に設けられた第2コネクタ172、182とをさらに備えている。第1コネクタ171は、電力変換部110の導体4bに設けられており、第1コネクタ181は、フィルタコンデンサ部120の導体4cに設けられている。第2コネクタ172、182は、筐体100の側面扉102に対向する対向面に設けられており、筐体100の外部装置に電気的に接続可能に構成されている。
【0046】
第1コネクタ171は第2コネクタ172と結合し、導体4bを第2コネクタ172に電気的に接続する。第1コネクタ181は第2コネクタ182と結合し、導体4cを第2コネクタ182に電気的に接続する。第1コネクタ171と第2コネクタ172との結合、並びに、第1コネクタ181と第2コネクタ182との結合は、任意の結合でよく、例えば、雌雄結合でよい。ただし、第1コネクタ171と第2コネクタ172との結合、並びに、第1コネクタ181と第2コネクタ182との結合は、パワーユニットPUの移動に付随して着脱可能な結合であり、ネジ留め等の工具を必要とする結合でないことが好ましい。
【0047】
第1コネクタ171および第2コネクタ172は、パワーユニットPUがガイドレールGRに沿って挿入されたときに互いに接触し、結合するように、それぞれパワーユニットPUおよび筐体100の対応する位置に設けられている。第1コネクタ181および第2コネクタ182も、パワーユニットPUがガイドレールGRに沿って挿入されたときに互いに接触し、結合するように、それぞれパワーユニットPUおよび筐体100の対応する位置に設けられている。
【0048】
パワーユニットPUが筐体100内に挿入された後、固定部としての留具160は、第1コネクタ171、181と第2コネクタ172、182との接触を維持したままパワーユニットPUを筐体100に取り付けられる。
【0049】
本変形例は、第1コネクタ171、181および第2コネクタ172、182を備えることによって、
図2(A)に示す接続部140、150が不要となる。これにより、パワーユニットPUを筐体100に入れる際に接続部140、150をネジ留めしたり、あるいは、パワーユニットPUを筐体100から出す際に接続部140、150を取り外す必要がなくなる。この場合、筐体100内に工具を入れて作業するスペースを省略することができ、電力変換装置1のサイズを小さくすることができる。
【0050】
本変形例のその他の構成は、第1の実施形態の構成と同様でよい。従って、本変形例は、第1の実施形態の効果も得ることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図6(A)は、第2の実施形態による電力変換装置1の筐体100の構成の一例を示す正面図である。
図6(B)は、第2の実施形態による電力変換装置1の筐体100の構成の一例を示す側方の断面図である。尚、
図6(A)および
図6(B)では、筐体100の側面扉102を示し、上面扉101の図示は省略されている。
【0052】
第2の実施形態による電力変換装置1の筐体100は、その側部105に開口部104を有し、その開口部104を塞ぐように側面扉102を備えている。
【0053】
筐体100は、筐体100の側部105と上部106との間の境界部に設けられた傾斜部107を備えている。傾斜部107は、側部105および上部106に対して傾斜しており、側部105と上部106との間のコーナー部に設けられている。傾斜部107は、側部105に対して角度θ(90°<θ<180°)で傾斜している。
【0054】
側面扉102は、筐体100の側部105の下部に設けられた係合部108に引っ掛かるフック201と、筐体100の傾斜部107に設けられたクランプ203とを備えている。側面扉102は、筐体100の傾斜部107と対応して傾斜する傾斜部207を有する。傾斜部207は、側面扉102の側部205の上に設けられており、上述の傾斜部107と側部105との成す角度θとほぼ等しい角度で側部205に対して傾斜している。これにより、側面扉102の側部205が筐体100の側部105の開口部104を塞ぎ、かつ、側面扉102の傾斜部207が筐体100の傾斜部107に沿って密着する。
【0055】
フック201は、係合部108に引っ掛かり、係合部108を支点(中心)として側面扉102を矢印A102で示す方向に回転可能なように構成されている。これにより、側面扉102は、筐体100の開口部104を開放し、あるいは、開口部104を閉じることができる。また、フック201を係合部108から外すと、側面扉102自体を筐体100から外すことができる。
【0056】
クランプ203は、傾斜部207に設けられており、筐体100の傾斜部107に係合する爪部204を有する。筐体100の傾斜部107に設けられた穴(図示せず)に爪部204を差し込んでクランプ203を回転させることによって、爪部204が筐体100の傾斜部107に係合するように構成されている。これにより、側面扉102は、筐体100の開口部104を塞ぐことができる。
【0057】
パワーユニットPUは、このような側面扉102を開放することによって、筐体100へ挿入され、あるいは、筐体100から引き出され得る。
【0058】
第2の実施形態によれば、筐体100は、側部105の上端部(開口部104の上方)に傾斜部107を有する。これにより、電力変換装置1の高さを高くすることなく、開口部104の開口幅(間口の大きさ)Hopを大きくすることができる。
【0059】
もし、傾斜部107が、側部105と同様に、上部106に対して垂直方向に延びている場合(即ち、θが180°である場合)、傾斜部107の長さdの分だけ、側部105は、上部106から下方へ向かって延びる。この場合、開口部104の開口幅Wopを大きく維持しようとすると、電力変換部110の高さを高くしなければならない。しかし、車両の高さには制限がある場合が多いため、電力変換装置1の高さはできるだけ低くする必要がある。この場合、開口部104の開口幅Wopを狭くせざるを得ない。
【0060】
一方、第2の実施形態のように傾斜部107が設けられている場合、傾斜部107は、実質的に、d×sin(θ−90°)だけ、上部106から下方へ延びていることになる。従って、第2の実施形態によれば、開口部104の開口幅Hopは、θが180°である場合と比べて、d−d×sin(θ−90°)だけ広がる。このように、開口部104の開口幅Hopを大きくすることによって、パワーユニットPUの出し入れが容易になり、作業効率が向上する。また、傾斜部107の長さdは維持されているので、傾斜部107にクランプ203を問題なく取り付けることができる。
【0061】
尚、第2の実施形態において、傾斜部107は、筐体100の側部105と上部106との間(筐体100の上端部)に設けられている。しかし、傾斜部107は、筐体100の下端部に設けられていてもよい。即ち、傾斜部107は、筐体100の側部105と底部109との間に設けられていてもよい。この場合、側面扉102の傾斜部207は、傾斜部107に対応して、フック201側に設けられる。さらに、傾斜部107は、筐体100の上端部および下端部の両方に設けられていてもよい。このようにしても、第2の実施形態の効果を得ることができる。
【0062】
(変形例1)
図7(A)は、第2の実施形態の変形例1による電力変換装置1の筐体100の構成の一例を示す正面図である。
図7(B)は、第2の実施形態の変形例1による電力変換装置1の筐体100の構成の一例を示す側面図である。本変形例による筐体100は、筐体100の開口部104の周囲を取り囲むように側部105および傾斜部107に設けられたフランジ部190と、フランジ部190に嵌め込まれ開口部104の周囲を取り囲むように設けられた防水パッキン部191とをさらに備えている。
フランジ部190は、側部105および傾斜部107から突出するように設けられている。フランジ部190は、筐体100と同じ材料(例えば、金属)で形成されている。パッキン部191は、
図8に示すようにフランジ部190の上部に嵌め込まれており、フランジ部190の根元までは被覆していない。即ち、パッキン部191は、側部105および傾斜部107には直接接触してはいない。パッキン部191は、例えば、ゴムやシリコーン樹脂等の弾力性および防水性のある材料で形成されている。
【0063】
側面扉102が筐体100の開口部104を塞いでいるときには、パッキン部191は、クランプ203によって側面扉102と筐体100のフランジ部190との間で挟持され圧縮された状態で開口部104を外気から密閉する。
【0064】
本変形例の他の構成は、第2の実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、本変形例は、第2の実施形態の効果を得ることができる。さらに、本変形例は、以下のような効果を有する。
【0065】
図8は、筐体100のフランジ部190に雨水が溜まった様子を示す図である。本変形例では、筐体100の上端部に傾斜部107が設けられており、傾斜部107にも、フランジ部190およびパッキン部191が設けられている。また、パッキン部191は、フランジ部190の上部に嵌め込まれており、フランジ部190の根元までは被覆していない。これにより、電力変換装置1の上から雨等の水が流れてきたとしても、水は、パッキン部191に一時的に接触するが、滞留する水がパッキン部191に常時接触するようなことはない。即ち、水はフランジ部190の根元に滞留するが、その滞留する水はパッキン部191には接触しない。
【0066】
もし、傾斜部107が筐体100の上端部になく、上部106の面に対して略垂直方向に延びている場合(即ち、
図6(B)の角度θが180°である場合)、パッキン部191には、水が常時接触するおそれがある。
【0067】
これに対し、本変形例では、傾斜部107が設けられており、かつ、パッキン部191はフランジ部190の根元までは被覆していない。これにより、フランジ部190の根元に溜まった水は、パッキン部191に接触せず、その結果、電力変換装置1の防水機能を高めることができる。
【0068】
(変形例2)
図9は、第2の実施形態の変形例2による電力変換装置1の筐体100の構成の一例を示す正面図である。変形例2による筐体100では、傾斜部107(筐体100の上部)にあるフランジ部190およびパッキン部191は、筐体100(開口部104)の中心から両端部へ向かって下降するように傾斜している。これにより、電力変換装置1の上から雨等の水が流れてきたとしても、水はフランジ部190の根元にも滞留し難くなり、筐体100(開口部104)の端部へ流れ落ち易くなる。その結果、電力変換装置1の防水機能をさらに高めることができる。
【0069】
尚、フランジ部190およびパッキン部191は、それらの上部において、開口部104の中心部を頂点として、その頂点から両端部へ向かって下降するように山型に形成されている。しかし、フランジ部190およびパッキン部191は、一方向に傾斜させてもよい。即ち、フランジ部190およびパッキン部191は、筐体100(開口部104)の一端を頂点として、その頂点から他端へ向かって下降するように形成されてもよい。
【0070】
(第3の実施形態)
図10(A)および
図10(B)は、第3の実施形態による電力変換装置1の構成の一例を示す図である。
図1に示す電力変換装置1内のコントローラ30は、メンテナンス時にオペレータが参照するモニタ31やオペレータが操作する操作部(図示せず)等を備えている。また、コントローラ30は、筐体100内部のパワーユニットPUとは別の位置に設けられており、筐体100内においてパワーユニットPUと接続されている。
【0071】
一方、電力変換装置1が車両の屋根上および床下のいずれに配置された場合であっても、オペレータは、コントローラ30のモニタ31を参照し、かつ、コントローラ30を操作可能とする必要がある。従って、電力変換装置1の筐体100のうちコントローラ30を収容する部分についても、第1および第2の実施形態において説明した上面扉101および側面扉102を備えている。さらに、オペレータがモニタ31を上面扉101および側面扉102の両方から参照できるようにしなければならない。
【0072】
そこで、第3の実施形態による電力変換装置1は、コントローラ30と筐体100との間に設けられたヒンジ300をさらに備えている。ヒンジ300の一端は、筐体100の側面扉102と対向する対向面に固定されている。ヒンジ300の他端は、コントローラ300のモニタ31が設けられた正面とは逆側の裏面に固定されている。これにより、コントローラ30は、ヒンジ300の軸を中心に回転することができ、モニタ31のある正面を側方から上方へ向けることができる。尚、コントローラ30のモニタ31は、通常、側面扉102の方向を向いているものとする。
【0073】
図10(A)に示すようにオペレータが筐体100の側方からコントローラ30のモニタ31を参照する場合、オペレータは、側面扉102を開放し、コントローラ30を移動させることなく、モニタ31を参照することができる。上述の通り、コントローラ30のモニタ31は、側面扉102の方向を向いているからである。
【0074】
図10(B)に示すようにオペレータが筐体100の上方からコントローラ30のモニタ31を参照する場合、オペレータは、上面扉101を開放し、コントローラ30を持ち上げる。このとき、コントローラ30は、ヒンジ30の軸を中心として回転し、モニタ31を斜め上方向へ向ける。これにより、オペレータは、モニタ31を容易に参照することができる。
【0075】
このように、第3の実施形態によれば、コントローラ30と筐体100との間にヒンジ300を設けることによって、オペレータは、筐体100の側方および上方の両方からコントローラ30の正面にあるモニタ31に容易にアクセスすることができる。その結果、第3の実施形態による電力変換装置1は、電気車の車両における配置位置に依らず同一の構成に設計され、かつ、内部へのアクセスを容易化することができる。
【0076】
(変形例1)
図11(A)および
図11(B)は、第3の実施形態の変形例1による電力変換装置1の構成の一例を示す図である。本変形例による電力変換装置1は、コントローラ30と筐体100との間に設けられたステー部310をさらに備えている。本変形例のその他の構成は、第3の実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0077】
ステー部310の一端は、筐体100の底面に固定されている。ステー部310の他端は、コントローラ300の側面に固定されている。ステー部310は、オペレータがコントローラ30を持ち上げるときにオペレータをアシストし、かつ、コントローラ30を持ち上げた状態で保持(固定)する。コントローラ30を持ち上げた状態で保持するために、ステー部310は、所定の長さまで伸びたときにロックされるようにロック機構を有する。
【0078】
これにより、コントローラ30は、ヒンジ300の軸を中心に回転可能であるとともに、ステー部310によって容易に持ち上げられ、かつ、持ち上げられた状態を容易に保持することができる。
【0079】
図11(A)に示すようにオペレータが筐体100の側方からコントローラ30のモニタ31を参照する場合、オペレータは、側面扉102を開放し、コントローラ30を移動させることなく、モニタ31を参照することができる。
【0080】
図11(B)に示すようにオペレータが筐体100の上方からコントローラ30のモニタ31を参照する場合、オペレータは、上面扉101を開放し、コントローラ30を持ち上げる。このとき、コントローラ30は、ヒンジ30の軸を中心として回転し、モニタ31を斜め上方向へ向ける。さらに、ステー部310がオペレータをアシストし、かつ、コントローラ30を持ち上げた状態で保持する。これにより、オペレータは、モニタ31を容易に参照することができる。
【0081】
このように、ステー部310を設けることによって、オペレータは、筐体100の側方および上方の両方からモニタ31にさらに容易にアクセスすることができる。
【0082】
(変形例2)
さらに、
図11(A)および
図11(B)を参照して、第3の実施形態の変形例2による電力変換装置1を説明する。変形例2による電力変換装置1は、ヒンジ300に設けられたバネ機構320をさらに備えている。バネ機構320は、ヒンジ300の軸に設けられており、コントローラ30を持ち上げる方向に力を印加するように蓄勢されている。本変形例のその他の構成は、第3の実施形態の変形例1の対応する構成と同様でよい。
【0083】
バネ機構320は、コントローラ30を持ち上げる方向に力を印加しているので、オペレータがコントローラ30を持ち上げるときにオペレータをアシストすることができる。また、オペレータがコントローラ30を戻すときに、バネ機構320は、コントローラ30が急落することを抑制することができる。これにより、コントローラ30に対する衝撃を緩和することができ、コントローラ30安全に元の位置に戻すことができる。
【0084】
(第4の実施形態)
図12(A)は、第4の実施形態による電力変換装置1の構成の一例を示す正面図である。
図12(B)は、第4の実施形態による電力変換装置1の構成の一例を示す側面図である。
【0085】
図1に示す電力変換装置1内の遮断機40等の回路機器は、例えば、四角形のパネルフレーム430に実装されている。第4の実施形態による電力変換装置1の筐体100は、単数または複数のパネルフレーム430を収容して固定するために、フレーム440、450、460およびネジ470を備えている。フレーム440、450、460は、それぞれ単数または複数のパネルフレーム430の端部を受容する複数の溝TRを有している。パネルフレーム430の4辺のうち3辺がフレーム440、450、460の各溝に嵌め込まれる。
図12(A)および
図12(B)に示すように、フレーム440および460は、各パネルフレーム430の互いに平行に延伸する両辺をそれぞれ受容する。フレーム450は、フレーム440および460に嵌め込まれた2辺に対して略垂直方向に延伸する残りの2辺のうち1辺を受容する。従って、フレーム440と460とは互いに対向しており、フレーム450は、フレーム440および460の一端側に配置され、フレーム440および460に対して略垂直方向に延伸するように設けられている。フレーム440、450は、筐体100の内壁に固定されており、フレーム460は、フレーム450または筐体100から取り外せるように構成されている。
【0086】
フレーム440、450、460の溝TRにパネルフレーム430を差し込んだ後、ネジ470は、互いに対向するフレーム440、460がパネルフレーム430を挟持して固定するように、フレーム440と460との間を締め付ける。ネジ470は、フレーム440、460の四隅に設けられている。これにより、パネルフレーム430は、フレーム440、450、460の溝TRに嵌まった状態で固定される。
【0087】
筐体100は、第1の実施形態のそれと同様に、上面扉101および側面扉102を有し、その上面および側面から内部へアクセス可能に構成されている。筐体100の側面扉102から
図12(B)に示す矢印Asの方向へパネルフレーム430を挿入し、あるいは、パネルフレーム430を引き出す場合、オペレータは、筐体100の側面扉102を開放し、筐体100の側面側からネジ470にアクセスしてネジ470を緩める。そして、オペレータは、パネルフレーム430を矢印Asの方向へ挿入し、あるいは、パネルフレーム430を矢印Asの方向へ引き出せばよい。
【0088】
一方、筐体100の上面扉101から
図12(B)に示す矢印Auの方向へパネルフレーム430を挿入し、あるいは、パネルフレーム430を引き出す場合、オペレータは、筐体100の上面扉101を開放し、筐体100の上面側からネジ470にアクセスしてネジ470を取り外す。さらに、オペレータは、フレーム460を取り外す。そして、オペレータは、パネルフレーム430を矢印Auの方向へ挿入し、あるいは、パネルフレーム430を矢印Auの方向へ引き出せばよい。このとき、フレーム440、450の溝TRがパネルフレーム430の2つの辺を受容しているため、パネルフレーム430は倒れない。
【0089】
このように、第4の実施形態によれば、フレーム440、450、460およびネジ470によって単数または複数のパネルフレーム430を固定する。これにより、オペレータは、筐体100の側方および上方の両方から単数または複数のパネルフレーム430に容易にアクセスし、パネルフレーム430を出し入れすることができる。その結果、第3の実施形態による電力変換装置1は、電気車の車両における配置位置に依らず同一の構成に設計され、かつ、内部へのアクセスを容易化することができる。
【0090】
さらに、第4の実施形態では、複数のパネルフレーム430をそれぞれ筐体100の内部でネジ留めする必要がなく、フレーム440、450、460およびネジ470によってまとめて固定する。従って、ネジ等の留め具の点数を少なくすることができ、信頼性および取扱い効率を向上させることができる。また、第4の実施形態では、筐体100内にネジ470を取り扱う工具スペースがあれば足り、他のネジを取り扱う工具スペースは省略され得る。これにより、電力変換装置1のサイズを小さくすることができる。
【0091】
(変形例)
図13(A)は、第4の実施形態の変形例による電力変換装置1の構成の一例を示す正面図である。
図13(B)は、第4の実施形態の変形例による電力変換装置1の構成の一例を示す側面図である。
【0092】
本変形例による電力変換装置1は、フレーム450とフレーム460との間に設けられたヒンジ480をさらに備えている、本変形例の他の構成は、第4の実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0093】
ヒンジ480の一端は、筐体100の側面扉102と対向する対向面に配置されたフレーム450に固定されている。ヒンジ300の他端は、筐体100の上面扉101の側に設けられたフレーム460に固定されている。フレーム460は、筐体100の上面扉101からパネルフレーム430にアクセスする際に取り外される必要があるが、本変形例では、フレーム460は、ヒンジ480によってフレーム450に物理的に接続され、ヒンジ480の軸を中心に回転することができる。従って、本変形例では、ネジ470は、側面扉102の近傍に2つ設ければ足り、筐体100の側面扉102と対向する対向面側(筐体100の奥)に設ける必要が無い。即ち、本変形例では、ネジ470の点数を4個から2個へさらに減らすことができる。
【0094】
このように、本変形例では、フレーム460は、ヒンジ480によってフレーム450に物理的に接続され、ネジ470の個数をさらに減らすことができる。これにより、電力変換装置1の信頼性および取扱い効率を向上させることができる。また、筐体100の工具スペースがさらに省略され得る。これにより、電力変換装置1のサイズをさらに小さくすることができる。
【0095】
また、本変形では、パネルフレーム430が溝TRに嵌まっていない場合、フレーム460の一端がヒンジ480によって固定されているため、フレーム460が傾斜する。このため、パネルフレーム430の取付不備を容易に発見することができる。
【0096】
上記実施形態および変形例のいずれか2つ以上を組み合わせてもよい。例えば、第1〜第4の実施形態を全て組み合わせることによって、
図1に示す電力変換装置1の全体を1つの筐体100に収容することができる。この場合、電力変換装置1の全ての構成は、電気車の車両における配置位置に依らず同一の構成に設計され得る。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。