特許第6382668号(P6382668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382668
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】育毛化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20180820BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20180820BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61K8/64
   A61K8/9789
   A61Q7/00
   A61K8/67
   A61K8/34
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-200723(P2014-200723)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-69334(P2016-69334A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 理人
(72)【発明者】
【氏名】大隅 和寿
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/074602(WO,A1)
【文献】 特開平8−268905(JP,A)
【文献】 特開平9−87155(JP,A)
【文献】 特開2003−95913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを、前記加水分解シルク液の含有量と前記マンゴスチンエキスの含有量の固形物の重量の和が0.0001〜2重量%の範囲で、前記固形物の重量比が27:73〜97:3の範囲で含有する育毛化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載の育毛化粧料であって、
細胞賦活剤としてのパントテニルエチルエーテルと血流改善剤としてのセンブリエキスとを、前記パントテニルエチルエーテルを0.01〜1.0重量%の範囲で、前記センブリエキスを0.01〜1.0重量%の範囲で含有する育毛化粧料。
【請求項3】
請求項2に記載の育毛化粧料であって、
清涼剤としてのl−メントールを0.01〜1.0重量%の範囲で含有する育毛化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、毛髪の育毛に関する研究が進み、種々の育毛成分を含有した育毛化粧料が提案されている。例えば、毛根や頭皮に活力を付与して育毛を図るべく、細胞賦活剤としてのパントテニルエチルエーテルを含有する手法(特許文献1)の他、頭皮の血流を改善する血流改善剤としてのセンブリエキスを含有する手法(特許文献1、2)が提案されている。ふけや頭皮の雑菌は育毛を阻害し得ることから、ふけ防止剤或いは殺菌剤としてのパントテニルエチルエーテル、ピロクトンオラミンを含有する手法(特許文献1、3)も、提案されている。また、育毛成分含有の育毛化粧料の使用時の清涼感をl−メントールでもたらして、育毛化粧料の使用を促す手法(特許文献4)も提案されている。この他、人体頭部は日常的に太陽光に晒され得るため、紫外線による毛髪自体の損傷が起き得る。毛髪損傷は育毛効果を阻害することから、紫外線による毛髪損傷を抑制する手法(特許文献5)も、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2007/074602号公報
【特許文献2】特開2001−253808号公報
【特許文献3】特公昭60−41046号公報
【特許文献4】特開2006−137670号公報
【特許文献5】特開2001−181147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、育毛を所望する使用者の毛髪は往々にして薄く、頭皮の地肌は毛髪の薄い範囲で露出する。よって、露出した頭皮は、太陽光を浴びることで、紫外線による悪影響、例えば紅斑や水疱を伴ういわゆる日焼け等の各種皮膚炎症を受け得る。紫外線による頭皮の皮膚炎症は、上記した特許文献1〜4で提案された手法ではその抑制効果に改良の余地があり、特許文献5であっても、毛髪自体の損傷抑制は可能であるものの、頭皮についての炎症抑制の効果について改良の余地があった。こうした新たな知見に立ち、本発明は、紫外線からの頭皮の保護を兼ね備えた新たな育毛化粧料を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、かかる事情に鑑み、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスを紫外線防御剤として含有することにより、紫外線による頭皮の炎症抑制効果を兼ね備えた育毛化粧料を提供できることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスを加え、細胞賦活剤としてのパントテニルエチルエーテルと、清涼剤としてのl−メントールと、血流改善剤としてのセンブリエキスとを含有することで紫外線からの頭皮の保護を兼ね備えた新たな育毛化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態としての育毛化粧料MLの流通の一形態を概略的に示す説明図である。
図2】育毛化粧料MLが含有する成分一覧である。
図3】実施例と比較例についてその成分含有量と評価結果とを併記して示す説明図である。
図4】加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを異なる含有量で含む実施例についてその成分含有量と評価結果とを併記して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。図1は本実施形態としての育毛化粧料MLの流通の一形態を概略的に示す説明図である。育毛化粧料MLは、後述する成分を含有する液状の化粧料であり、例えば図示するような蓋付きの容器Yに収容されて、販売され、ユーザーに使用される。ユーザーは、容器Yの蓋を開け、所望する適宜な液量の育毛化粧料MLを頭皮に掛け、頭皮上の育毛化粧料MLを手で、頭皮全体に伸ばす。こうして伸ばされた育毛化粧料MLは、その行き渡った範囲において、頭皮を紫外線から防御する。
【0009】
本発明の一形態によれば、育毛化粧料が提供される。この育毛化粧料は、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有する。この形態の育毛化粧料によれば、その含有する加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとが、それぞれ頭皮に対して紫外線バリヤーとして共同して機能し、これにより、頭皮を紫外線から保護できる。
【0010】
本発明に用いるマンゴスチン(学名:Garcinia mangostana)とは、フクギ科フクギ属の植物であり、本発明で用いる抽出物は果皮から抽出したものである。その抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出したものであっても良い。
【0011】
抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3‐ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコールおよび液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3‐ブチレングリコールおよびプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
【0012】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈および濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等や、定法により成分を単離精製して用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0013】
本発明に用いる加水分解シルクとは、絹繊維を構成するフィブロインを酸、アルカリまたはタンパク分解酵素の存在下で加水分解して得られ、水溶性ペプチドの水またはエタノール溶液を加水分解シルク液とし、グリシン、アラニン、セリンを主成分として含むものである。この加水分解シルク液としては、例えば、トープロール HSS−300(株式会社トープロ製)、Promois SILK−1000(株式会社成和化成製)等を挙げることができる。
【0014】
上記形態の育毛化粧料において、前記加水分解シルク液と前記マンゴスチンエキスとを、前記加水分解シルク液の含有量と前記マンゴスチンエキスの含有量との和で、固形物に換算して0.0001重量%以上、好ましくは0.001〜2重量%の範囲で含有するようにしてもよい。こうした含有量とすれば、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとについて、頭皮に対する紫外線バリヤーとしての共同機能が確保でき、紫外線からの頭皮の保護の実効性が高まる。そして、固形物に換算して0.0001重量%より少ない含有量(両成分の含有量和)としないので、紫外線に対する頭皮保護の実効性が担保でき、2重量%を超える含有量としないので、育毛有効成分の含有量を不用意に低下させないようにできる。
【0015】
上記のいずれかの形態の育毛化粧料において、前記加水分解シルク液と前記マンゴスチンエキスとを、固形物の重量比で27:73〜97:3に含有するようにしてもよい。こうした固形物の重量比での含有とすれば、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスのいずれかが他方に対して少なすぎるという状況を作らない。よって、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとが共同で果たす頭皮に対する紫外線バリヤー機能がより確実に確保できるので、紫外線からの頭皮の保護の実効性が高まる。
【0016】
上記形態の育毛化粧料において、育毛有効成分としての細胞賦活剤と血流改善剤とを含有するようにしてもよい。こうすれば、紫外線からの頭皮保護を図りつつ、育毛をもたらすことができる。
【0017】
上記形態の育毛化粧料において、前記細胞賦活剤としてパントテニルエチルエーテルを含有し、前記血流改善剤としてセンブリエキスを含有するようにしてもよい。こうすれば、パントテニルエチルエーテルとセンブリエキスとによる育毛を、紫外線からの頭皮保護を図りつつ達成できる。
【0018】
上記形態の育毛化粧料において、更に、l−メントールを含有するようにしてもよい。こうすれば、l−メントールがもたらす清涼感により良好な使用感を呈することができる。
【0019】
次に、育毛化粧料MLの処方について説明する。図2は育毛化粧料MLが含有する成分一覧である。図示するように、本実施形態の育毛化粧料MLは、細胞賦活剤としてのパントテニルエチルエーテルと、清涼剤としてのl−メントールと、血流改善剤としてのセンブリエキスと、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有する。この他、育毛化粧料MLは、溶液形態をなすためのエタノールに加え、一般的な毛髪化粧料において含有することが有益と想定される各種助剤を、図示するように含有する。なお、パントテニルエチルエーテルを始めとする各成分の含有量については、後述する。
【0020】
パントテニルエチルエーテルは、パントテン酸の誘導体であり、既存の手法で精製されたものであり、細胞賦活剤として入手可能である。センブリエキスは、リンドウ科に属する植物のセンブリ(千振)から既存の手法で精製抽出されたエキスであり、血流改善剤として入手可能である。l−メントールは、C1020Oの化学式で表されハッカ臭を有する薬剤であり、清涼剤として入手可能である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
<製造例1 マンゴスチンの熱水抽出物>
マンゴスチンの果皮の乾燥物10gに精製水200mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してマンゴスチンの熱水抽出物を1.6g得た。
【0023】
<製造例2 マンゴスチンの50%エタノール抽出物>
マンゴスチンの果皮の乾燥物10gに50%エタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、マンゴスチンの50%エタノール抽出物を2.3g得た。
【0024】
<製造例3 マンゴスチンのエタノール抽出物>
マンゴスチンの果皮の乾燥物10gにエタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、マンゴスチンのエタノール抽出物を3.0g得た。
【0025】
製造例1〜3の抽出物いずれかを溶解性、使用性の観点から精製水にて2%水溶液に調製し、本実施例のマンゴスチンエキスとした。
【0026】
また、本実施例の加水分解シルク液は、溶解性、使用性の観点から6.5%水溶液のPromois SILK−1000(株式会社成和化成製)を使用した。
【0027】
図2に示す各成分は、適宜選択して採択できるが、本実施形態の育毛化粧料MLでは、図示した助剤や湿潤剤の総てを後述する含有量で含有するようにした。
【0028】
図2に示す各成分を含有する育毛化粧料MLは、既存の手法で調合精製される。例えば、溶液成分たるエタノールと精製水との攪拌混合溶液に各成分を秤量配合して攪拌することで得られる。また、育毛化粧料MLは、溶液形態の他、ローション形態、ジェル形態、クリーム形態等の各種形態を採るようにできる。本実施形態では、既述したようにエタノールを用いた溶液形態の育毛化粧料MLとし、このエタノールは、清涼感と頭皮への刺激をもたらすと共に、不快臭を低減する観点から用いた。その含有量は後述する。
【0029】
次に、本実施形態の育毛化粧料MLに含まれる実施例と比較例について説明する。図3は実施例と比較例についてその成分含有量と評価結果とを併記して示す説明図である。なお、図3図4の実施例および比較例の成分含有量並びに固形分換算値を示す値は特に記載のない限り、重量%を示す。
【0030】
図3に示す実施例と比較例とについては、以下の観点で成分含有量を調整した。まず、成分No.1〜3のパントテニルエチルエーテルとl−メントールとセンブリエキスとについては、細胞賦活機能、清涼感、血流改善機能を各実施例および各比較例で同一とすべく、各実施例および各比較例ともその含有量を同一とした。また、成分No.6のエタノールについては、溶液形態を採ることやエタノールに起因した清涼感や頭皮への刺激付与および不快臭低減を各実施例および各比較例で同一とすべく、各実施例および各比較例ともその含有量を同一とした。成分No.7〜19の各助剤についても各助剤がもたらす機能を各実施例および各比較例で同一とすべく、各実施例および各比較例ともその含有量を同一とした。その上で、実施例1〜6では、紫外線防御剤としての加水分解シルク液(成分No.4)とマンゴスチンエキス(成分No.5)とを同量の含有量とし、実施例1〜6では、両成分の固形物の合計含有量の和を0.0001〜0.1重量%とした。そして、両成分の固形物の合計含有量の和が実施例1〜6で異なる分だけ、各実施例における精製水量を調整した。その一方、比較例1〜4では、紫外線防御剤としての加水分解シルク液(成分No.4)とマンゴスチンエキス(成分No.5)のいずれかしか含有せず、実施例1〜6と比較した。なお、比較についても、加水分解シルク液或いはマンゴスチンエキスの含有量が異なる分だけ、精製水量を調整した。
【0031】
図3に示す成分含有量で精製した各実施例および各比較例について、紫外線による頭皮の炎症抑制効果と肌荒れ程度、べたつき感を評価項目として、次のように評価した。まず、実施例1〜6と比較例1〜4のそれぞれに10名のパネラーを割り当て、各パネラーから、紫外線による頭皮の炎症抑制効果と肌荒れ、べたつきについての官能評価を5段階評価から収集した。
【0032】
紫外線による頭皮の炎症抑制効果(以下、単に炎症抑制効果と称する)は、実施例1〜6ごとの10名のパネラーと比較例1〜4ごとの10名のパネラーに、割り当てられた実施例或いは比較例の育毛化粧料MLを、1週間、毎日、所定の時間に頭部に使用して貰い、その使用の都度の育毛化粧料MLの塗布直後、および1週間後の炎症抑制効果を5段階で官能評価した。パネラー10人の官能評価値から評価平均値を算出し、この評価平均値で炎症抑制効果を評価した。評価値1(平均点が1.5点未満)は、炎症抑制効果が不良であり、評価値2(平均点が1.5点以上で2.5点未満)は、炎症抑制効果がやや不良であり、評価値3(平均点が2.5点以上で3.5点未満)は、炎症抑制効果が実感される、評価値4(平均点が3.5点以上で4.5点未満)は、炎症抑制効果が良好に実感される、評価値5(平均点が4.5点以上)は、炎症抑制効果が顕著に実感されることを意味する。
【0033】
肌荒れは、実施例1〜6ごとの10名のパネラーと比較例1〜4ごとの10名のパネラーに、割り当てられた実施例或いは比較例の育毛化粧料MLを、1週間、毎日、所定の時間に頭部に使用して貰い、1週間後の肌荒れ状況を5段階で官能評価した。パネラー10人の官能評価値から評価平均値を算出し、この評価平均値で肌荒れを評価した。評価値1(平均点が1.5点未満)は、肌荒れ抑制効果が不良であり、評価値2(平均点が1.5点以上で2.5点未満)は、肌荒れ抑制効果がやや不良であり、評価値3(平均点が2.5点以上で3.5点未満)は、肌荒れ抑制効果が実感される、評価値4(平均点が3.5点以上で4.5点未満)は、肌荒れ抑制効果が良好に実感される、評価値5(平均点が4.5点以上)は、肌荒れ抑制効果が顕著に実感されることを意味する。
【0034】
べたつきは、実施例1〜6ごとの10名のパネラーと比較例1〜4ごとの10名のパネラーに、割り当てられた実施例或いは比較例の育毛化粧料MLを頭部に使用して貰い、その塗布直後と3時間後とにおいて、べたつき状況を5段階で官能評価した。パネラー10人の官能評価値から評価平均値を算出し、この評価平均値でべたつき感を評価した。評価値1(平均点が1.5点未満)は、べたつきが顕著であってべたつき感が不良であり、評価値2(平均点が1.5点以上で2.5点未満)は、べたつきがあってべたつき感がやや不良であり、評価値3(平均点が2.5点以上で3.5点未満)は、べたつきがさほど見られずべたつき感が普通であり、評価値4(平均点が3.5点以上で4.5点未満)は、べたつきが殆どなくべたつき感が良好であり、評価値5(平均点が4.5点以上)は、べたつきが全くなくべたつき感が非常に良好であることを意味する。
【0035】
図3から明らかなように、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを同量の含有量で含む実施例1〜6は、いずれも良好な炎症抑制効果を得られた。これに対し、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスのいずれかしか含有しない比較例1〜4では、いずれも炎症抑制効果を得られなかった。こうしたことから、実施例の育毛化粧料MLによれば、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有するが故に、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとがそれぞれ頭皮に対して紫外線バリヤーとして共同して機能することで、頭皮を紫外線から保護できるといえる。
【0036】
実施例の育毛化粧料MLは、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを、同量で、しかも両成分の固形物の合計含有量が0.0001〜0.1重量%の範囲となるように含有し、この範囲の両成分の固形物の合計含有量において、それぞれ良好な炎症抑制効果を得られた。この点から、両成分の固形物の合計含有量が0.0001〜0.1重量%の範囲となるように紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有することで、頭皮に対する紫外線バリヤーとしての共同機能が確実に確保でき、紫外線からの頭皮保護の実効性を高めることができる。なお、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスの両成分の固形物の合計含有量を0.0001重量%より少なくしないので、紫外線防御剤成分が少な過ぎるようにしないようにできることから、紫外線に対する頭皮保護の実効性が担保できる。また、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスの両成分の固形物の合計含有量が0.1重量%を超えるようにしないので、細胞賦活剤としてのパントテニルエチルエーテルや、清涼剤としてのl−メントール、血流改善剤としてのセンブリエキスの含有量を不用意に低下させないことから、育毛化粧料としての有益性を確保できる。
【0037】
上記したように紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有するに当たり、両成分の固形物の合計含有量を0.0001〜0.1重量%の範囲とすることが好ましく、両成分の固形物の合計含有量を0.001〜0.06重量%の範囲とすることがより好ましい。こうすれば、頭皮に対する紫外線バリヤーとしての共同機能がより確実に確保できると共に、紫外線からの頭皮保護の実効性をより高めることができる。
【0038】
実施例の育毛化粧料MLは、細胞賦活剤としてのパントテニルエチルエーテルと、血流改善剤としてのセンブリエキスと、清涼剤としてのl−メントールとを含有する。この点は、比較例にあっても同様であり、実施例および比較例において、それぞれ、パントテニルエチルエーテルとセンブリエキスとによる育毛効果と、l−メントールがもたらす清涼感とを得ることができた。それでいながら、比較例にあっては、頭皮に対する炎症抑制効果を得られなかった。このことから、実施例の育毛化粧料MLによれば、パントテニルエチルエーテルとセンブリエキスとによる育毛を紫外線からの頭皮保護を図りつつ達成できると共に、l−メントールがもたらす清涼感により良好な使用感をもたらすことができるといえる。
【0039】
実施例の育毛化粧料MLは、パントテニルエチルエーテルを細胞賦活剤として含有するので、細胞賦活機能の発揮の上から、パントテニルエチルエーテルを0.01〜1.0重量%の範囲で含有することが好ましい。さらに好ましくは、パントテニルエチルエーテルを0.05〜0.8重量%の範囲で含有することであり、0.1〜0.6重量%の範囲で含有すれば特に好ましい。つまり、こうした含有量であれば、パントテニルエチルエーテルにより確実に細胞賦活機能を発揮できる。そして、パントテニルエチルエーテルの含有量が0.01重量%を下回らないようにするので、細胞賦活機能を発揮でき、パントテニルエチルエーテルの含有量を1.0重量%を超える過剰含有量としないので、不用意にべたつき感を生じさせないようにできる。
【0040】
実施例の育毛化粧料MLは、l−メントールを清涼剤として含有するので、清涼感発揮の上から、l−メントールを0.01〜1.0重量%の範囲で含有することが好ましい。さらに好ましくは、l−メントールを0.05〜0.8重量%の範囲で含有することであり、0.1〜0.6重量%の範囲で含有すれば特に好ましい。つまり、こうした含有量であれば、l−メントールにより確実に清涼感を発揮できる。そして、l−メントールの含有量が0.01重量%を下回らないようにするので、清涼感を発揮でき、l−メントールの含有量を1.0重量%を超える過剰含有量としないので、清涼感よりも刺激が勝るような自体が起きることを抑制できる。
【0041】
実施例の育毛化粧料MLは、センブリエキスを血流改善剤として含有するので、血流改善機能の発揮の上から、センブリエキスを0.01〜1.0重量%の範囲で含有することが好ましい。さらに好ましくは、センブリエキスを0.05〜0.8重量%の範囲で含有することであり、0.1〜0.6重量%の範囲で含有すれば特に好ましい。つまり、こうした含有量であれば、センブリエキスにより確実に血流改善機能を発揮できる。そして、センブリエキスの含有量が0.01重量%を下回らないようにするので、血流改善機能を発揮でき、センブリエキスの含有量を1.0重量%を超える過剰含有量としないので、べたつき感が生じることを抑制できる。
【0042】
実施例の育毛化粧料MLは、エタノールを既述したように清涼感、頭皮への刺激、および不快臭を低減する観点から配合した。よって、エタノール含有に当たっては、エタノールを5.0〜55.0重量%の範囲で含有することが、上記の観点から好ましい。より好ましくは、エタノールを8.0〜50.0重量%の範囲で含有することである。上記の範囲であれば、清涼感や頭皮への刺激を確実に付与できると共に、不快臭を低減できる。そして、エタノール含有量が5.0重量%を下回らないようにするので、清涼感の付与が足りなくなることを抑制できる。また、エタノール含有量を55.0重量%を超える過剰含有量としないので、頭皮への刺激感を必要以上に高めないようにできると共に、不快臭の低減も図ることができる。
【0043】
次に、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを異なる含有量で含む実施例について説明する。図4は加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを異なる含有量で含む実施例についてその成分含有量と評価結果とを併記して示す説明図である。
【0044】
図4に示す実施例7〜10にあっても、成分No.1〜3のパントテニルエチルエーテルとl−メントールとセンブリエキスとについては、細胞賦活機能、清涼感、血流改善機能を各実施例および各比較例で同一とすべく、各実施例および各比較例ともその含有量を同一とした。また、成分No.6のエタノールを始め、成分No.7〜19の各助剤についても、各実施例ともその含有量を同一とした。その上で、実施例7〜10では、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを異なる含有量とし、両成分の固形物の合計含有量が0.02〜0.06重量%とした。そして、実施例7〜10についても、図3の場合と同様にして炎症抑制効果と肌荒れ、べたつきを評価項目として調べた。
【0045】
この図4から明らかなように、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを異なる含有量で含む実施例7〜10にあっても、いずれも良好な炎症抑制効果を得られた。よって、実施例の育毛化粧料MLによれば、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有するが故に、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとがそれぞれ頭皮に対して紫外線バリヤーとして共同して機能することで、頭皮を紫外線から保護できるといえる。そして、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有した上で、加水分解シルク液の含有量が多くなれば、より確実に頭皮を紫外線から保護できる。
【0046】
実施例7〜10の育毛化粧料MLは、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを、異なる含有量でありながら、両成分の固形物の合計含有量が0.02〜0.06重量%で含有して炎症抑制効果を奏する。よって、この点からも、両成分の固形物の合計含有量を既述した範囲(0.0001〜0.1重量%)であれば、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを含有することで、頭皮に対する紫外線バリヤーとしての共同機能が確実に確保でき、紫外線からの頭皮保護の実効性を高めることができると言える。
【0047】
実施例8〜9の育毛化粧料MLは、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを固形物の重量配合比で58:42〜88:12含有し、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスのいずれかが他方に対して少なすぎるという状況を作らない。よって、加水分解シルクとマンゴスチンエキスとが共同で果たす頭皮に対する紫外線バリヤー機能がより確実に確保できるので、紫外線からの頭皮の保護の実効性が高まる。しかも、上記の配合比で加水分解シルク液とマンゴスチンエキスを含有する実施例8〜9の育毛化粧料MLは、肌荒れ抑制効果も高くべたつき感も非常に好ましい。よって、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを固形物の重量配合比で58:42〜88:12の質量配合比で含有すれば、紫外線からの頭皮保護の実効性の向上のみならず、肌荒れ抑制効果も高くべたつき感も非常に優れた育毛化粧料MLを提供できる。
【0048】
実施例7および実施例10の育毛化粧料MLは、紫外線防御剤としての加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを固形分の重量配合比で27:73〜97:3の重量配合比で含有するが、実用上満足し得る炎症抑制効果(評価値4)とべたつき感(評価値4)を得ることができる。よって、加水分解シルク液とマンゴスチンエキスとを固形物の重量配合比で27:73〜97:3で含有すれば、実用上満足し得る炎症抑制効果(評価値4)とべたつき感(評価値4)に加え、良好な肌荒れ防止が可能な育毛化粧料MLを提供できる。
【0049】
実施例7〜10の育毛化粧料MLにあっても、細胞賦活剤としてパントテニルエチルエーテルを、血流改善剤としてセンブリエキスを、清涼剤としてl−メントールを含有する。よって、実施例7〜10の育毛化粧料MLによっても、パントテニルエチルエーテルとセンブリエキスとによる育毛を紫外線からの頭皮保護を図りつつ達成できると共に、l−メントールがもたらす清涼感により良好な使用感をもたらすことができる。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0051】
本発明の育毛剤化粧料の形態としては、ローション形態、ジェル形態、クリーム形態に限定されず、エアゾール等の剤型で製剤化することが可能である。
【0052】
上記した実施形態の各実施例では、パントテニルエチルエーテルを育毛有効成分としての細胞賦活剤として含有したが次のようにしてもよい。このパントテニルエチルエーテルと同様に細胞賦活機能を発揮する他の成分、例えば、パントテニルエチルエーテルとは異なるパントテン酸誘導体や、以下に記す各種の細胞賦活剤成分の1種または2種以上を、パントテニルエチルエーテルに代えて、或いはパントテニルエチルエーテルと共に含有するようにしてもよい。
【0053】
採択可能な細胞賦活剤成分:プラセンタエキス、感光素、ビオチン、ペンタデカン酸グリセリド、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、アデノシン
【0054】
上記した実施形態の各実施例では、センブリエキスを血流改善剤として含有したが次のようにしてもよい。このセンブリエキスと同様に血流改善機能を発揮する他の薬草や植物から抽出した抽出エキス、例えば、ニンジンエキスや、以下に記す各種の血流改善剤成分の1種または2種以上を、センブリエキスに代えて、或いはセンブリエキスと共に含有するようにしてもよい。
【0055】
採択可能な血流改善剤成分:塩化カルプロニウム、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、トウガラシチンキ
【0056】
上記した実施形態の各実施例では、l−メントールを清涼剤として含有したが次のようにしてもよい。このl−メントールと同様に清涼感付与機能を発揮する他の成分、例えば、グリセルモノ(l−メントール)エーテルや、ハッカ油、カンファーの1種または2種以上を、l−メントールに代えて、或いはl−メントールと共に含有するようにしてもよい。
【0057】
この他、以下に記す抗炎症剤やふけ抑制剤、或いはエキス系添加剤の1種または2種以上を、本実施形態の育毛化粧料MLに配合しても良い。
【0058】
採択可能な抗炎症剤成分:アズレン、塩酸ジフェンヒドラミン、酢酸ヒドロコルチゾン、甘草エキス、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸
【0059】
採択可能なふけ抑制剤成分:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸、ヒノキチオール、ピロクトンオラミン
【0060】
採択可能なエキス系添加剤成分:オウゴン、ウコン、イチョウ、アロエベラ、海藻エキス、クララ、ゴボウ、ゲンチアナエキス、桔梗、クマザサ、クチナシ、キキョウ、コメヌカ、ショウキョウ、センキュウ、セージ葉、サンショウ、ソウハク、シャクヤク、ドクダミ、ニンジン、ビワ葉、ボタン、ボダイジュ、モモ葉、ユズ、ユキノシタ、ユリ、ローヤルゼリー、ローズマリー、リンゴ、ワレモコのそれぞれのエキス成分
【符号の説明】
【0061】
Y…容器
ML…育毛化粧料
図1
図2
図3
図4