(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382674
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】内接歯車ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20180820BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
F04C2/10 321A
F04C2/10 321B
F04C15/00 J
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-206065(P2014-206065)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-75216(P2016-75216A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】豊興工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宣尚
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−100762(JP,A)
【文献】
特開2013−227871(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/108553(WO,A1)
【文献】
特開昭61−201892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯を有するリング状の内歯歯車と、内歯歯車の内歯と内接噛み合いする外歯を有する外歯歯車を内歯歯車の内部に偏心して収容し、外歯よりも内歯の歯数が1枚多い内接歯車ポンプにおいて、外歯と内歯のいずれか一方は、歯先部と噛合部とを一つの連続した曲率の曲線で形成し、この曲線は、歯先の頂点を最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくする式(1)から(5)で形成されることを特徴とする内接歯車ポンプ。
r=ro−dr・cosθ 式(1)
Px=(ro−dr)+1/4dr{1−cos(2θ)} 式(2)
Py=1/4dr{−2θ+sin(2θ)} 式(3)
Qx=Px−r・cosθ 式(4)
Qy=Py+r・sinθ 式(5)
但し、
rは曲線の半径、
roは基準径、
drは変分量で、dr<0、
θは媒介変数、
Pxは軌道中心のX座標、
Pyは軌道中心のY座標、
Qxは軌道中心(Px,Py)により生成される曲線上の点のX座標、
Qyは軌道中心(Px,Py)により生成される曲線上の点のY座標、
である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯歯車の内歯と外歯歯車の外歯とを内接噛み合いするよう内歯歯車の内部に外歯歯車を偏心して収容し、内歯の歯数が外歯の歯数より1個多い内接歯車ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内接歯車ポンプは、ポンプハウジングの収容孔に、内歯を有するリング状の内歯歯車を回転自在に収容し、この内歯歯車の内歯と内接噛み合いする外歯を有する外歯歯車を内歯歯車の内部に偏心して収容し、外歯歯車の回転駆動により内歯が外歯と噛み合う内歯歯車が回転され、液体を吸入ポートから吸入し、外歯と内歯とで区画形成される最大容積空間を経て吐出ポートから吐出する。そして、外歯歯車の外歯は、基礎円とその基礎円上を滑らず転がる転円を用い、転円の中心から、外歯歯車の中心と内歯歯車の中心の偏心量離れた半径上の一点の軌跡でトロコイド曲線を描き、このトロコイド曲線上を中心とする一定半径の描画円の包絡線で創成されている。そして、外歯と内歯とが全周の全ての歯で略同一の隙間としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−201892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の内接歯車ポンプでは、外歯はトロコイド曲線を用いて形成している。このため、ポンプの小型化を図る目的で、内歯歯車の外径を小径にして同一の吐出量を得られるよう、外歯歯車の中心と内歯歯車の中心との偏心量を大きくして歯丈を高くしようとすると、歯幅が狭くなりすぎて、要求に応えることが難しかった。
【0005】
本発明の課題は、外歯と内歯とが全周の全ての歯で略同一の隙間とすることを損なうことなく、歯丈を高くすることが可能で、内歯歯車の外径を小径にし、小型化を図り得る内接歯車ポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
内歯を有するリング状の内歯歯車と、内歯歯車の内歯と内接噛み合いする外歯を有する外歯歯車を内歯歯車の内部に偏心して収容し、外歯よりも内歯の歯数が1枚多い内接歯車ポンプにおいて、外歯と内歯のいずれか一方は、歯先部と噛合部とを一つの連続した曲率の曲線で形成し、この曲線は、歯先の頂点を最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくする式(1)から(5)で形成されることを特徴とする内接歯車ポンプ。
r=ro−dr・cosθ 式(1)
Px=(ro−dr)+1/4dr{1−cos(2θ)} 式(2)
Py=1/4dr{−2θ+sin(2θ)} 式(3)
Qx=Px−r・cosθ 式(4)
Qy=Py+r・sinθ 式(5)
但し、
rは曲線の半径、
roは基準径、
drは変分量で、dr<0、
θは媒介変数、
Pxは軌道中心のX座標、
Pyは軌道中心のY座標、
Qxは軌道中心(Px,Py)により生成される曲線上の点のX座標、
Qyは軌道中心(Px,Py)により生成される曲線上の点のY座標、
である。
【発明の効果】
【0007】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、外歯と内歯のいずれか一方は、歯先部と噛合部とを一つの連続した曲率の曲線で形成し、この曲線は、歯先の頂点を最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくする。このため、曲線の軌道中心を移動しつつ曲率を大きくすることにより、外歯と内歯とが全周の全ての歯で略同一の隙間とすることを損なわず、歯丈を高くすることが可能で、内歯歯車の外径を小径にでき、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示した内接歯車ポンプの断面図である。
【
図5】一実施形態の歯先部と噛合部を形成する曲線Lにより創生される包絡曲線L1の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1はリング状の内歯歯車で、12枚の内歯1Aを有し、回転中心Hを中心としてハウジング2へ回転自在に収容している。3は外歯歯車で、内歯1Aと内接噛み合いする11枚の外歯3Aを有し、内歯歯車1の内部に回転中心Hと偏心した回転中心H1を中心として回転自在に収容している。そして、内歯歯車1と外歯歯車3との偏心量E1は、内歯歯車1の回転中心Hと外歯歯車3の回転中心H1との間の寸法としている。4は外歯歯車3を回転駆動する駆動軸で、外歯歯車3に係合する。5は油を吸入する吸入ポートで、両歯車1、3の回転により容積が増加する吸入域空間Sに連通している。6A、6Bは油を吐出する二つの吐出ポートで、両歯車1、3の回転により容積が減少する吐出域空間Pに連通している。そして、両吐出ポート6A、6Bは両歯車1、3の回転方向Aに離間している。
【0010】
図2に、内歯歯車1の内歯1Aと外歯歯車3の外歯3Aの歯形形状の詳細を示す。
内歯1Aは、歯先から歯底に向けて歯先部7Aと噛合部7Bと接続部7Cと歯底部7Dとで、歯先の頂点aから右半分を構成している。なお、歯先の頂点aから左半分は、内歯歯車1の中心Hと頂点aとを通る直線を対称とし、右半分と対称形状に形成している。歯先部7Aと噛合部7Bは、頂点aを最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくする曲線Lで形成して点ab間を結び、以下の式(1)〜(5)で求める。
【0011】
r=ro−dr・cosθ 式(1)
Px=(ro−dr)+1/4dr{1−cos(2θ)} 式(2)
Py=1/4dr{−2θ+sin(2θ)} 式(3)
Qx=Px−r・cosθ 式(4)
Qy=Py+r・sinθ 式(5)
但し、
rは曲線の半径、
roは基準径、
drは変分量で、dr<0、
θは媒介変数、
Pxは軌道中心のX座標、
Pyは軌道中心のY座標、
Qxは軌道中心(Px,Py)により生成される曲線上の点のX座標、
Qyは軌道中心(Px,Py)により生成される曲線上の点のY座標、
である。
【0012】
図3に、式1による歯形の模式図を示す。
図3は、縦軸に曲線Lの半径rをとり、横軸に媒介変数θをとり、θが0からπ/2に推移するのに伴いrがro+|dr|からroに推移することを図化している。
【0013】
図4に、式2から5による歯形の模式図を示す。
図4は、曲線Lを形成する半径rの軌道中心PのX,Y座標と、軌道中心Pにより生成される曲線L上の点QのX,Y座標を、媒介変数θに応じて推移することを図化している。
【0014】
図2に示す如く、歯底部7Dは、中心7Eを有する半径R1の円弧で形成して点cd間を結ぶ。半径R1の円弧は、後述詳記する外歯歯車3Aの歯先部8Aにより創成される包絡曲線より若干大きい円弧で形成される。中心7Eは内歯歯車1の回転中心Hと、歯底部7Dの周方向中心とを通る線上に位置する。接続部7Cは中心7Fを有する半径R3の円弧で形成し、点bd間を結ぶ。
【0015】
外歯3Aは、歯先部8Aと噛合部8Bと歯底部8
Cとで構成している。歯先部8Aと噛合部8Bと歯底部8Cは、内歯1Aの歯先部7Aと噛合部7Bを形成する曲線Lにより創成される包絡曲線L1で形成する。そして、包絡曲線L1は歯先部8Aの点Aと歯底部8Cの点B間を結ぶ。
【0016】
図5に、内歯1Aの歯先部7Aと噛合部7Bを形成する曲線Lにより創生される包絡曲線L1の模式図を示す。包絡曲線L1は、歯先部8Aと噛合部8Bと歯底部8Cを形成している。
【0017】
次に、かかる構成の作動を説明する。
駆動軸4により外歯歯車3を回転方向Aに回転駆動すると、外歯歯車3と内接噛み合いする内歯歯車1が回転駆動され、吸入ポート5より吸入された油が吐出ポート6A、6Bより吐出される。そして、外歯3Aと内歯1Aとが全周の全ての歯で略同一の隙間としているから、外歯3Aと内歯1Aとによるシール性を維持でき、吐出ポート6Aから吐出ポート6Bへの漏れ量、もしくは吐出ポート6Bから吐出ポート6Aへの漏れ量を増加することなくできる。
【0018】
かかる作動で、内歯1Aは、歯先部7Aと噛合部7Bとを一つの連続した曲率の曲線Lで形成し、曲線Lは、歯先の頂点aを最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくした。このため、内歯1Aの歯先部7Aと噛合部7Bとを形成する曲線Lで創生され、外歯3Aの歯先部8Aと噛合部8Bと歯底部8Cとを形成する包絡曲線L1は、歯先部8Aと噛合部8Bとの間で交差する曲線とならないから、外歯3Aと内歯1Aとが全周の全ての歯で略同一の隙間とすることができる。そして、歯先部7Aと噛合部7Bとを一つの連続した曲率で、歯先の頂点aを最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくする曲線Lで形成するから、歯丈を高くすることが可能で、内歯歯車1の外径を小径にでき、小型化を図ることができる。
【0019】
なお、一実施形態では、内歯1Aは歯先部7Aと噛合部7Bとを歯先の頂点aを最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくする曲線Lで形成し、外歯3Aの歯先部8Aと噛合部8Bと歯底部8Cとを、曲線Lで創成される包絡曲線L1で形成したが、これとは逆に、外歯3Aの歯先部と噛合部とを歯先の頂点を最小曲率とし、歯底に向けて漸次曲率を大きくする曲線で形成し、内歯1Aの歯先部と噛合部と歯底部とをそれぞれ外歯3Aの歯先部と噛合部とを形成する曲線で創成される包絡曲線で形成しても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0020】
1:内歯歯車
1A:内歯
3:外歯歯車
3A:外歯
7A、8A:歯先部
7B、8
B:噛合部
L:曲線