(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)からなる群より選ばれる脂環式ジアミンと炭素数が8以上の脂肪族ジカルボン酸との重縮合体である透明ポリアミド樹脂、及び、トリアリルイソシアヌレートを含有し、
前記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、前記透明ポリアミド樹脂100質量部に対し5質量部以上、25質量部以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂のメルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、45g/10分以上、400g/10分以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂の末端の酸価が、1.0mgKOH/g以上、20.0mgKOH/g以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂の末端のアミン価が、5.0mgKOH/g以下である透明ポリアミド樹脂組成物。
前記脂肪族ジカルボン酸が、直鎖状の脂肪族2価基(直鎖アルキレン基)の両末端にカルボン酸を有し、炭素数が8以上、16以下の脂肪族ジカルボン酸である請求項1に記載の透明ポリアミド樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の樹脂成型体は、その成型工程が非常に複雑であり、また成型できるレンズ構造にも限界がある。又、特許文献3のポリイミド樹脂から得られる成型体の透過率は70%〜80%前後であり、樹脂レンズについて市場が求める85%以上の透過率を満たすものではない。また、成型温度が非常に高いと考えられ、作業者の安全性や樹脂の滞留による分解、ガスの発生、金型の汚損等が懸念され、発生した場合の清掃には多大の時間が必要となる。
【0007】
本発明は、光学レンズ等として使用できる透明樹脂成型体を形成する材料であって、
・射出成型にて複雑形状を大量生産できる熱可塑性樹脂からなり、
・低温での成型が可能で、成型時の着色・金型汚損・添加物揮発の抑制が可能であり、
かつ
・・樹脂レンズについて市場が求める優れた透明性を有しかつその経時安定性に優れ、
・・リフロー時の温度でも高い剛性を有し、
・・リフロー時の加熱による寸法の変化や形状の変化(所謂ソリ等)が軽微である(熱に対する寸法安定性がある)
透明樹脂成型体を形成する材料となる透明樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0008】
本発明は、又、前記の透明樹脂組成物を成型し樹脂を架橋して得られ、樹脂レンズ等の透明な微小電子部品として用いることができる透明樹脂架橋成型体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、
4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)からなる群より選ばれる脂環式ジアミンと炭素数が8以上の脂肪族ジカルボン酸との重縮合体である透明ポリアミド樹脂、及び、トリアリルイソシアヌレートを含有し、
前記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、前記透明ポリアミド樹脂100質量部に対し5質量部以上、25質量部以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂のメルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、
45g/10分以上、400g/10分以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂の末端の酸価が、1.0mgKOH/g以上、20.0mgKOH/g以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂の末端のアミン価が、5.0mgKOH/g以下である
透明ポリアミド樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、
前記第1の態様の透明ポリアミド樹脂組成物を成型し、前記透明ポリアミド樹脂を架橋してなる透明ポリアミド樹脂架橋成型体である。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様の透明ポリアミド樹脂組成物は、射出成型にて複雑形状を大量生産できる熱可塑性樹脂からなる組成物であって、低温での成型が可能で、成型時の着色・金型汚損・添加物揮発の抑制が可能である。そして、この透明ポリアミド樹脂組成物を成型し、樹脂を架橋することにより、光学レンズ等として好適に使用できる透明樹脂成型体であって、樹脂レンズについて市場が求める優れた透明性を有しかつその経時安定性に優れ、リフロー時の温度でも高い剛性を有し、リフロー時の加熱による所謂ソリ等の寸法や形状の変化が軽微である透明樹脂架橋成型体を形成することができる。
【0012】
第2の態様により、光学レンズ等の透明な微小電子部品として好適に使用でき、樹脂レンズについて市場が求める優れた透明性を有しかつその経時安定性に優れるとともに、リフロー時の温度でも高い剛性を有し、リフロー時の加熱による所謂ソリ等の寸法や形状の変化が軽微な透明ポリアミド樹脂架橋成型体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態及び実施例を説明するが、本発明の範囲はこの形態や実施例のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、種々の変更を加えることが可能である。
【0014】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のジカルボン酸、特定の脂環式ジアミンを重縮合してなるポリアミド樹脂であって、その流動性が所定の範囲内であり、かつ末端の酸価及びアミン価が所定の範囲内である透明ポリアミド樹脂と、特定の架橋剤を所定範囲の組成で含有する樹脂組成物、及びその樹脂組成物を成型した後樹脂を架橋することにより得られる透明樹脂架橋成型体が、課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0015】
第1の態様は、
4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)からなる群より選ばれる脂環式ジアミンと炭素数が8以上の脂肪族ジカルボン酸との重縮合体である透明ポリアミド樹脂、及び、トリアリルイソシアヌレートを含有し、
前記トリアリルイソシアヌレートの配合量が、前記透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し5質量部以上、25質量部以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂のメルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、
45g/10分以上、400g/10分以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂の末端の酸価が、1.0mgKOH/g以上、20.0mgKOH/g以下であり、
前記透明ポリアミド樹脂の末端のアミン価が、5.0mgKOH/g以下である
透明ポリアミド樹脂組成物である。
【0016】
第1の態様の透明ポリアミド樹脂組成物を形成する透明ポリアミド樹脂は、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)からなる群より選ばれる脂環式ジアミンと炭素数が8以上の脂肪族ジカルボン酸とを縮合重合して得られる。脂環式ジアミンとジカルボン酸として上記のような特定のものを使用することにより、光学レンズ等に求められる優れた透明性、及びその安定性を達成することができる。
【0017】
前記脂環式ジアミンとしては、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)からなる群より選ばれるいずれか1種類を使用してもよいし、2種類を混合して使用してもよい。又、第1の態様の発明の趣旨を損ねない範囲であれば、他のジアミンを少量使用してもよい。
【0018】
前記脂肪族ジカルボン酸とは、カルボン酸基を2個有する脂肪族の2価の基である。脂肪族の2価の基としては、直鎖状の脂肪族の2価の基、分岐している脂肪族の2価の基のいずれも使用できるが、直鎖状の脂肪族の2価の基が好ましい。中でも、直鎖状の脂肪族2価基(直鎖アルキレン基)の両末端にカルボン酸基を有し、炭素数が8以上、16以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0019】
そこで、第1の態様の好ましい態様として、前記脂肪族ジカルボン酸が、直鎖状の脂肪族2価基(直鎖アルキレン基)の両末端にカルボン酸を有し、炭素数が8以上、16以下の脂肪族ジカルボン酸である透明ポリアミド樹脂組成物が提供される。この好ましい態様の脂肪族ジカルボン酸としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、テトラデカンジ酸、ヘキサデカンジ酸等を挙げることができる。これらの中でも、特にドデカンジ酸が好ましい。
【0020】
前記脂肪族ジカルボン酸は、炭素数が8(カルボン酸の炭素を含む)以上で、カルボン酸基を2個有する脂肪族の2価の基から選ばれる1種類を使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。又、第1の態様の発明の趣旨を損ねない範囲であれば、他のジカルボン酸を少量使用してもよい。
【0021】
前記脂環式ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の重縮合は、従来、一般的に行われている方法を用いて行うことができる。例えば、前記脂環式ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを、重合開始剤の存在下で、150〜250℃程度で加熱して3〜10時間程度重縮合させる方法を挙げることができる。また、加熱は減圧下で行ってもよい。
【0022】
前記脂環式ジアミンと脂肪族ジカルボン酸を重縮合して得られる透明ポリアミド樹脂は、そのメルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、
45g/10分以上、400g/10分以下であることを特徴とする。ここでメルトフローレートは、250℃に加熱、荷重5kgの条件で測定した値であり、単位はg/10分である。メルトフローレート(MFR250℃、5kg)とは、この条件で測定したメルトフローレートであることを示す。
【0023】
透明ポリアミド樹脂の分子量の調整により、メルトフローレートを前記の範囲内とすることができる。透明ポリアミド樹脂の分子量の調整は、前記重縮合の加熱温度及び反応時間を調整することにより行うことができる。具体的には、150〜250℃、3〜10時間の範囲で、反応温度を上げるほど、反応時間を長くするほど、メルトフローレートを小さくすることができるので、反応温度、反応時間の調節により所定の範囲のメルトフローレートを得ることができる。
【0024】
前記透明ポリアミド樹脂は、その末端の酸価が、1.0mgKOH/g以上で20.0mgKOH/g以下であり、アミン価が、5.0mgKOH/g以下であることを特徴とする。酸価が1.0mgKOH/g未満の場合は、透明ポリアミド樹脂とトリアリルイソシアヌレートとの分散性が低下し、架橋成型体の透明性の低下や強度不足等の問題が生じる傾向がある。一方、酸価が20.0mgKOH/gを超える、又はアミン価が5.0mgKOH/gを超える場合は、架橋成型体が長期加熱されたとき着色しやすくなるので好ましくない。
【0025】
末端の酸価/アミン価の調整は、重縮合の温度、反応時間により調整することができる。又、脂肪族ジカルボン酸と脂環式ジアミンの官能基の比を調整して、酸またはアミンの官能基を残す方法や、反応系にモノカルボン酸またはモノアミンを加えて末端封止をする方法等により調整することもできる。脂肪族ジカルボン酸と脂環式ジアミンとを官能基の比が等当量になるように反応させ、モノカルボン酸やモノアミンを使用しない場合、末端の酸価及びアミン価を前記の範囲内に調整するためには、220〜250℃で2〜5時間程度の条件が好ましい。
【0026】
トリアリルイソシアヌレートは、前記透明ポリアミド樹脂の架橋を促進するための架橋助剤として透明ポリアミド樹脂組成物に配合される。前記透明ポリアミド樹脂は、透明ポリアミド樹脂組成物の成型後電子線照射等により架橋され、架橋成型体が形成されるが、トリアリルイソシアヌレートが配合されることにより架橋が促進され、高温での剛性等に優れる架橋成型体が得られ、又、架橋成型体からなる微細部品を電子機器等に搭載する際に行われるリフロー時の変形を防ぐことができる。
【0027】
トリアリルイソシアヌレートの配合量は、前記透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し5質量部以上、25質量部以下である。トリアリルイソシアヌレートの配合量が、透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し5質量部未満の場合は、透明ポリアミド樹脂を十分に架橋できず、架橋成型体の高温での剛性が不十分になり、リフロー時の変形を充分に防ぎにくくなる。一方、トリアリルイソシアヌレートの配合量25質量部より多いと、透明ポリアミド樹脂組成物から得られる架橋成型体の透明性が低下する。
【0028】
第1の態様の透明ポリアミド樹脂組成物は、前記透明ポリアミド樹脂及び前記のトリアリルイソシアヌレートを混合して得られる。発明の趣旨を損ねない範囲で、前記透明ポリアミド樹脂及びトリアリルイソシアヌレート以外の成分を少量加えてもよい。混合方法は、従来公知の方法を採用することができる。例えば、二軸混合機を用いて行うことができる。
【0029】
メルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、
45g/10分以上、400g/10分以下である透明ポリアミド樹脂であって、酸価及びアミン価が前記の範囲内であるものを使用し、トリアリルイソシアヌレートの配合量を、前記透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し5質量部以上、25質量部以下とすることにより、前記透明ポリアミド樹脂とトリアリルイソシアヌレートからなり、メルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、100g/10分以上、1000g/10分以下である透明ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
メルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、100g/10分以上の流動性が高い透明ポリアミド樹脂組成物により、低温・高流動での成型が可能となり、成型体にひずみを残すことなく成型することが可能となる。その結果、リフロー時の熱による歪開放による寸法変化を抑制することができる。流動性が下限以下の透明ポリアミド樹脂組成物、すなわち、メルトフローレート(MFR250℃、5kg)が100g/10分未満の透明ポリアミド樹脂組成物より得られる架橋成型体は、歪を残した成型体となるためリフロー時の熱による寸法変化が大きくなる。
【0031】
一方 透明ポリアミド樹脂組成物の流動性が上限以上の場合、すなわちメルトフローレート(MFR250℃、5kg)が1000g/10分を超える場合は、流動性が高すぎて成型が困難(形状保持困難)になるので好ましくない。そこで、第1の態様の好ましい態様として、メルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、100g/10分以上、1000g/10分以下である透明ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【0032】
以上説明したように、第1の態様では、流動性の高い透明ポリアミド樹脂にトリアリルイソシアヌレートを配合した透明ポリアミド樹脂組成物により、低温で高流動での成型を可能にしている。その結果、成型体に歪を残すことなく成型することを可能とし、リフロー時の熱による歪開放による寸法変化を抑制できる。又、成型時の着色・金型汚損・添加物揮発の抑制も可能となる。
【0033】
一方、流動性の高い透明ポリアミド樹脂は、トリアリルイソシアヌレートと混合しても分散性が低くなり、混合物を成型し樹脂の架橋をしても、架橋しにくくなり、得られる成型体は低強度で脆いものとなる問題がある。又、低分子量のポリアミド樹脂は結晶化しやすく、結晶化により白濁して成型体の透明性を低下させる問題もある。
【0034】
しかし、本発明者は、末端の酸価が1.0mgKOH/g以上、20.0mgKOH/g以下であり、かつアミン価が5.0mgKOH/g以下の透明ポリアミド樹脂を用いることで、透明ポリアミド樹脂とトリアリルイソシアヌレートとの分散性が向上し、十分な透明性と強度・架橋性を維持できる架橋成型体を製造できることを見出したのである。また、高流動性のポリアミド樹脂は結晶化(白濁)しやすいが、酸価、アミン価が前記の範囲内のものを用いると結晶化も阻害されることも見出され、透明ポリアミド樹脂を高流動性とすることによる前記の問題が解決されたのである。
【0035】
以上説明したように、第1の態様の透明ポリアミド樹脂組成物は、射出成型にて複雑形状を大量生産できる熱可塑性樹脂からなる組成物であって、低温での成型が可能で、成型時の着色・金型汚損・添加物揮発の抑制が可能である。そして、この透明ポリアミド樹脂組成物を成型し、樹脂を架橋することにより、光学レンズ等として好適に使用できる透明樹脂成型体であって、優れた透明性を有しかつその経時安定性に優れ、リフロー時の温度でも高い剛性を有し、リフロー時の加熱による所謂ソリ等の寸法や形状の変化が軽微である透明樹脂架橋成型体を形成することができる。
【0036】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様の透明ポリアミド樹脂組成物を成型し、前記透明ポリアミド樹脂を架橋してなる透明ポリアミド樹脂架橋成型体である。
【0037】
第2の態様の透明ポリアミド樹脂架橋成型体は、前記第1の態様の透明ポリアミド樹脂組成物を、成型した後、成型体に電離放射線の照射等を施して樹脂を架橋することにより得られる。成型は、従来の成型方法、成型条件を採用することができ、例えば、射出成型により行うことができる。
【0038】
透明ポリアミド樹脂の架橋は、熱架橋等により行うこともできるが、制御の容易さ等の理由により電離放射線の照射による架橋が好ましく採用される。電離放射線としては、電子線等の粒子線、ガンマ線等の電磁波を挙げることができるが、生産性や装置の価格、制御しやすさ等の観点から電子線が好ましい。
【0039】
以上説明したように、第2の態様の透明ポリアミド樹脂架橋成型体は、樹脂レンズについて市場が求める優れた透明性を有しかつその経時安定性に優れるとともに、リフロー時の温度でも高い剛性を有し、リフロー時の加熱による所謂ソリ等の寸法や形状の変化が軽微なものである。
【0040】
従って、この透明ポリアミド樹脂架橋成型体は、透明な微小電子部品等、特に光学電子機器用の微小な光学レンズとして好適に用いられる。そこで、第2の態様の透明ポリアミド樹脂架橋成型体よりなる光学レンズ成型体が発明の一態様として提供する。
【実施例】
【0041】
先ず、下記の実験例(実施例、比較例)で使用した材料を述べる。
【0042】
[脂肪族ジカルボン酸]
・アジピン酸(HOOC−(CH
2)
4−COOH)(和光純薬社製)
・スベリン酸(HOOC−(CH
2)
6−COOH)(和光純薬社製)
・ドデカンジ酸(HOOC−(CH
2)
10−COOH)(和光純薬社製)
・ヘキサデカンジ酸(HOOC−(CH
2)
14−COOH)(和光純薬社製)
【0043】
[脂環式ジアミン]
・4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(シグマアルドリッチ社製)
・4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(東京化成社製)
・イソホロンジアミン(東京化成社製)
【0044】
[架橋剤]
・トリアリルイソシアヌレート:日本化成社製、屈折率1.51(表中では、TAICと示す)
・トリメチロールプロパントリアクリレート:新中村化学社製、屈折率1.48(表中では、A−TMPTと示す)
【0045】
次に、下記の実験例(実施例、比較例)で行った実験、評価方法やそれらの条件について述べる。
【0046】
(ポリアミド樹脂の作製)
表1〜4に示すジカルボン酸と脂環式ジアミンを一括仕込して混合し、窒素気流下、250℃で0.5時間の加熱後、1.3kPaの真空下、
250℃で1時間以上加熱してジカルボン酸と脂環式ジアミンを重縮合して、ポリアミド樹脂を作製した。得られたポリアミド樹脂について、以下に示す方法で、メルトフローレート(MFR)、末端の酸価及びアミン価を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
【0047】
<測定方法>
[メルトフローレート(MFR)]
東洋精機社製のメルトインデクサーを用いて、250℃に加熱、荷重5kgの条件で測定した結果である。単位:g/10分。
【0048】
[酸価]及び[アミン価]
JIS K0070の中和滴定法に準拠して測定した。
【0049】
(透明ポリアミド樹脂組成物の作製)
上記で作製したポリアミド樹脂と、表1〜4に示す架橋助剤を、表1〜4に示す組成により、二軸混合機を用い、混合温度を250℃以上の高流動条件で、混合時のスクリュートルクを限界値の30%以下に抑えて混合して透明ポリアミド樹脂組成物を作製した。この透明ポリアミド樹脂組成物を混合直後、上記の方法で、メルトフローレート(MFR)を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
【0050】
(射出成型)
作製された透明ポリアミド樹脂組成物のストランドをペレタイズカットし、水分率を2000ppm以下に管理した。その透明ポリアミド樹脂組成物の水分率が低い場合はそのまま、必要に応じて100℃・24h以内の乾燥を実施した後、射出成型機(SE−185、住友重機社製)により、シリンダー温度設定220−250℃、金型温度30℃、射出速度50mm/s、保圧500kgf/cm
2の条件で射出成型し、
(1)サイズ:縦横50mm角、厚さ1mmの正方形プレートの評価サンプル(50mm角成型体)及び
(2)サイズ:30mm×10mm×0.5mmの評価サンプル(長方形成型体)
を作製した。
【0051】
(照射、評価)
上記で得られた評価サンプル、(1)50mm角成型体及び(2)長方形成型体に電子線を300kGyの照射量で照射して架橋樹脂成型体を得た。
【0052】
上記で得られた50mm角成型体について、下記に示す方法にて、波長850nmの光線の透過率、波長1310nmの光線の透過率、270℃での貯蔵弾性率を測定した。又、前記成型体を120℃で3000時間保管した後、波長850nmの光線の透過率、波長1310nmの光線の透過率を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。波長850nm、1310nmのいずれについても光線の透過率85%以上を合格とした。又、120℃で3000時間保管した後の波長850nm、1310nmのいずれについても光線の透過率85%以上を合格とした。
【0053】
<測定方法>
[波長850nm、1310nmの光線の透過率]
島津製作所社製UV3600により、850nm及び1310nmにおける光線透過率を測定した。
【0054】
[270℃での貯蔵弾性率]
IT計測制御社製DVA−200を用い、10℃/分の昇温速度にて測定し、270℃での貯蔵弾性率(DMS貯蔵弾性率@270℃)を確認した。270℃での貯蔵弾性率13MPa以上を合格とする。
【0055】
(4分リフロー処理)
上記で得られた長方形成型体について、下記に示す方法にて、270℃・4分後の溶融確認を行い、ソリ量(寸法変化)を求めた。それらの結果を表1〜4に示す。
【0056】
[270℃・4分後の溶融確認、ソリ量(寸法変化)]
長方形成型体のサンプルを180 ℃ に設定の槽に投入後90秒間維持、槽の設定温度を180℃ から270 ℃ に30秒間で昇温した後270 ℃ で30秒間維持、及び270℃ から180 ℃ まで90 秒間で降温するとの操作をこの順序で行った後サンプルを回収する。このサンプルに溶融があるか否かを目視で確認し、溶融が観測されないときを「A」(合格)、溶融が観測されたときを「B」として表1〜4中に表した。又、サンプルの一方の端を保持して、前記の操作を行った後のサンプルの他の端の浮距離を寸法変化(ソリ量)とする。なお、寸法変化(ソリ量)については20μm以下を合格とした。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表1〜4に示す結果より、脂環式ジアミンとして4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)又は4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)を用い、脂肪族ジカルボン酸として、スベリン酸、ドデカンジ酸若しくはヘキサデカンジ酸又はスベリン酸とヘキサデカンジ酸の混合物(実験例10)を用い、トリアリルイソシアヌレートの配合量が、前記透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し5質量部以上、25質量部以下であり、透明ポリアミド樹脂のメルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、
45g/10分以上、400g/10分以下であり、透明ポリアミド樹脂の末端の酸価が、1.0mgKOH/g以上、20.0mgKOH/g以下であり、透明ポリアミド樹脂の末端のアミン価が、5.0mgKOH/g以下である実験例1〜10では、初期(加熱前)の850nm及び1310nmにおける光線透過率、120℃で3000時間保管した後の波長850nm及び1310nmにおける光線透過率のいずれについても85%以上であり、合格の基準を充たしている。さらに、270℃での貯蔵弾性率も13MPa以上であり、又、4分リフロー処理においても、溶融は観測されず、寸法変化(ソリ量)も20μm以下であって、いずれも合格の基準を充たしていることが示されている。
【0062】
一方、脂肪族ジカルボン酸として、炭素数が6の直鎖脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸を用いた実験例11では、270℃での貯蔵弾性率は8MPaで基準に合格しておらず、4分リフロー処理においても溶融は観測され、リフローに耐えないものであることが示されている。
【0063】
又、脂環式ジアミンとして、イソホロンジアミンを用いた実験例12でも、270℃での貯蔵弾性率は2MPaで基準に合格しておらず、4分リフロー処理においても溶融し、リフローに耐えないものであることが示されている。さらに、透明性も低く、合格の基準に達していない。以上の結果より、脂環式ジアミン、脂肪族ジカルボン酸としては、第1の態様で特定されている所定のものを用いる必要があることが示されている。
【0064】
実験例13は、トリアリルイソシアヌレートの配合量が、透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し5質量部未満の3質量部の場合である。この場合は、270℃での貯蔵弾性率は7MPaで基準に合格しておらず、4分リフロー処理においても溶融し、リフローに耐えないものであることが示されている。又実験例14は、トリアリルイソシアヌレートの配合量が、透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し25質量部を超える28質量部の場合である。この場合は、透明性が低く、初期(加熱前)の850nm及び1310nmにおける光線透過率、120℃で3000時間保管した後の波長850nm及び1310nmにおける光線透過率のいずれについても合格の基準に達していない。この結果より、トリアリルイソシアヌレートの配合量は、透明ポリアミド樹脂の100質量部に対し5質量部以上、25質量部以下とする必要があることが示されている。
【0065】
実験例15は、透明ポリアミド樹脂の末端の酸価が、20.0mgKOH/gを超える23mgKOH/gの場合であり、実験例16は、透明ポリアミド樹脂の末端の酸価が、1.0mgKOH/g未満の0.5mgKOH/gの場合であり、実験例17は、透明ポリアミド樹脂の末端のアミン価が、5.0mgKOH/gを超える7mgKOH/gの場合である。これらの場合は、いずれも透明性が低く、初期(加熱前)の850nm及び1310nmにおける光線透過率、120℃で3000時間保管した後の波長850nm及び1310nmにおける光線透過率のいずれについても合格の基準に達していない。この結果より、透明ポリアミド樹脂の末端の酸価は、1.0mgKOH/g以上、20.0mgKOH/g以下、アミン価は、5.0mgKOH/g以下とする必要があることが示されている。
【0066】
実験例18は、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートの代わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた場合であるが、透明性が低く、初期(加熱前)の850nm及び1310nmにおける光線透過率のいずれについても合格の基準に達していない。この結果より、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを使用する必要があることが示されている。
【0067】
実験例19は、透明ポリアミド樹脂のメルトフローレート(MFR250℃、5kg)が、
45g/10分未満の10g/10分の場合である。この場合は、透明ポリアミド樹脂組成物のメルトフローレート(MFR250℃、5kg)は、90g/10分と、100g/10分以下となり、低粘度での成型が達成されず成型体に歪が残るので、4分リフロー処理において、寸法変化(ソリ量)が20μmを超え、合格の基準に達していない。この結果より、透明ポリアミド樹脂のメルトフローレート(MFR250℃、5kg)は、
45g/10分以上とする必要があることが示されている。