(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タービンロータおよび軸受を保護するための、前記軸受への潤滑油の給油を行うための給油系統に設けられ、第1のメッシュサイズを有して前記給油系統内の異物を捕捉する第1のストレーナ、および、前記給油系統に設けられ、前記第1のメッシュサイズより小さい第2のメッシュサイズを有して前記異物を捕捉する第2のストレーナを制御する方法であって、
前記軸受に形成される潤滑油の油膜の厚さである軸受油膜厚さが第1の厚さである場合に、使用するストレーナを前記第1のストレーナへ切り替え、前記軸受油膜厚さが前記第1の厚さより薄い第2の厚さである場合に、前記使用するストレーナを前記第2のストレーナへ切り替える
タービン用保護装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態における、タービンロータ・軸受保護装置の構成例を示す概念図である。
第1の実施形態では、タービンロータ1がタービン軸によって接続され、タービン軸の一端および他端は軸受2a、2bによって軸支される。そして、タービン軸と各軸受2a、2bとの間には潤滑油が供給される。
【0018】
一般的に、軸受油は、図示しない油タンクから図示しない主油ポンプにより汲み上げられて、潤滑油の給油系統の配管を介して各軸受2a、2bへ供給される。この供給された一部の潤滑油は油膜を形成し、その他の潤滑油は軸受2a、2bから排出されて、潤滑油戻り配管を通り、油タンクに戻される。
【0019】
タービンロータ1の荷重は、油膜が形成されたロータ両端の軸受2a、2bにより支持される。このように潤滑油を用いることで、タービンジャーナルと軸受金属面との直接接触を防いで潤滑させ、タービンロータ1は回転可能に保持される。
【0020】
この潤滑油の給油系統における、軸受2a、2bへの潤滑油供給部位の上流には、目開き大ストレーナ3および目開き小ストレーナ4が並列になるように設けられる。目開き小ストレーナ4の目開きは目開き大ストレーナ3の目開きより小さい。目開き大ストレーナ3と目開き小ストレーナ4との間には均圧弁5が設けられる。
【0021】
また、給油系統における、軸受2a、2bへの潤滑油供給部位の上流には、使用するストレーナを目開き大ストレーナ3および目開き小ストレーナ4の間で切り替えるための切り替え弁6が設けられる。本実施形態では、タービン運転状態に応じて切り替え弁6を操作することで、使用するストレーナを切り替えることができる。
【0022】
図2は、第1の実施形態における、タービン運転状態に応じた油膜の厚さ、捕捉すべき異物サイズ、および使用するストレーナの対応関係を表形式で示す図である。
図2に示すように、通常運転時では、油膜の厚さは低回転運転時の油膜の厚さより厚い。この結果、通常運転時で捕捉すべき異物のサイズ(油膜厚さ以上のサイズの異物のサイズ)は低回転運転時で捕捉すべき異物のサイズより大きい。したがって、通常運転時に使用されるストレーナは目開き大ストレーナ3である。
【0023】
また、低回転運転時では、油膜の厚さは通常運転時の油膜の厚さより薄い。この結果、低回転運転時で捕捉すべき異物のサイズ(油膜厚さ以上のサイズの異物のサイズ)は通常運転時で捕捉すべき異物のサイズより小さい。したがって、低回転運転時に使用されるストレーナは目開き小ストレーナ4である。
【0024】
本実施形態では、タービンロータ1の各運転状態において捕捉すべき異物サイズに応じて、ストレーナを切り替えることができる。
これにより、異物流入による軸受およびタービン損傷のリスクを低減することができる。
【0025】
次に、通常運転中および低回転運転時におけるストレーナ切り替えの具体例について説明する。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態における構成のうち第1の実施形態で説明した部分と同一部分の詳細な説明は省略する。
この第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した低回転運転時におけるストレーナ切り替えの具体例について説明するものである。
図3は、第2の実施形態における、低回転運転時におけるタービンロータ・軸受保護装置の一例を示す概念図である。
ここでは、所定の回転数より低い回転数での運転状態を低回転運転と定める。
タービンロータ1の低回転運転時、特にターニング運転中(一般的に回転数が2〜7rpm)では、タービンロータ1と軸受2a、2bとの間に形成される軸受油膜厚さは、10μm程度であり、通常運転時の軸受油膜厚さより薄い。
【0026】
現在の運転状態が低回転運転である場合、切り替え弁6を操作することで、
図3に示すように、目開き小ストレーナ4(例えば300メッシュ)を使用する系統を構成することができる。
【0027】
このように、低回転運転時は、通常運転時より薄い軸受油膜厚さ以上のサイズの異物を目開き小ストレーナ4により捕捉することができるので、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0028】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、第1の実施形態で説明した通常運転時におけるストレーナ切り替えの具体例について説明するものである。
図4は、第3の実施形態における、通常運転中におけるタービンロータ・軸受保護装置の一例を示す概念図である。
上記の所定の回転数以上の回転数での運転状態を通常運転中と定める。
タービンロータ1の通常運転中では、タービンロータ1と軸受2a、2bとの間に形成される軸受油膜厚さは200μm程度であり、低回転運転時の軸受油膜厚さより厚い。この場合、
図4に示すように、切り替え弁6を操作することで、目開き大ストレーナ3(例えば80メッシュ)を使用する系統を構成することができる。
【0029】
このように、通常運転中に形成される、低回転運転時より厚い軸受油膜厚さ以上のサイズの異物を目開き大ストレーナ3により捕捉しつつ、必要とされる軸受油膜を形成するために十分な油量を軸受に供給することができる。
よって、異物の流入を防ぎ、軸受への断油を発生させないようにすることができるので、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0030】
また、上記の各実施形態では、使用するストレーナを自動で切り替えることができる。
図5は、各実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置に用いられる計算機の機能構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、計算機7は、運転状態判定部7aと系統切替制御部7bとを有する。運転状態判定部7aは、例えばタービンロータ1の回転数に基づいて、タービンロータ1の運転状態が通常運転中か低回転運転中かを判定する。
【0031】
系統切替制御部7bは、運転状態判定部7aによる判定結果にしたがって、切り替え弁6の操作または系統切替機構への制御を行うことで、使用するストレーナを目開き大ストレーナ3と目開き小ストレーナ4との間で切り替える。系統切替機構の詳細については後述する。
【0032】
図6は、各実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置によるストレーナ切替動作の一例を示すフローチャートである。
運転状態判定部7aは、タービンロータ1の現在の運転状態を判定する(S11)。現在の運転状態が通常運転状態であると運転状態判定部7aが判定した場合(S12のYES)、系統切替制御部7bは、系統切替機構への制御を行うことで、使用するストレーナを目開き大ストレーナ3に切り替える(S13)。
【0033】
また、現在の運転状態が低回転運転状態であると運転状態判定部7aが判定した場合(S1のNO)、系統切替制御部7bは、系統切替機構への制御を行うことで、使用するストレーナを目開き小ストレーナ4に切り替える(S14)。
このようにして、運転状態に応じて、使用するストレーナを適切に自動で切り替えることができる。
【0034】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態では、目開き大ストレーナ3および目開き小ストレーナ4が並列になるように設けられる構成において、タービン回転数および軸受給油温度の監視結果に基づいて、使用するストレーナを切り替える。
図7は、第4の実施形態における、タービン回転数と軸受給油温度とを監視パラメータとした場合のタービンロータ・軸受保護装置の一例を示す概念図である。
図7に示すように、第4の実施形態では、タービンロータ1からみた軸受2aの端部の近傍にタービン回転数を検出する回転計9と、軸受給油温度を検出する温度計10とが設置される。
【0035】
図8は、第4の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置に用いられる計算機の機能構成例を示すブロック図である。
第4の実施形態では、計算機7は、回転数入力部7c、温度入力部7d、軸受油膜厚さ計算部7e、警報出力部7fを有する。
【0036】
図9は、第4の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置によるストレーナ切替動作の一例を示すフローチャートである。
まず、回転数入力部7cは、回転計9により検出したタービン回転数を入力する(S21)。温度入力部7dは、温度計10により検出した軸受給油温度を入力する(S22)。
軸受油膜厚さ計算部7eは、入力したタービン回転数および軸受給油温度に基づいて軸受油膜厚さを計算する(S23)。
【0037】
この計算した軸受油膜厚さが所定値未満、つまりタービンロータ停止中およびターニング中の低速回転数での運転状態を示す値である場合は(S24のNO)、警報出力部7fは、目開き小ストレーナ4を設置した系統を使用するように警報機8にてアナウンスさせて、切り替え弁6の操作によるストレーナ切替を促す(S26)。
【0038】
また、計算した軸受油膜厚さが所定値以上、つまり回転上昇が開始されたことを示す値である場合は(S24のYES)、軸受への給油を確実に行うために、警報出力部7fは、目開き大ストレーナ3を設置した系統に切り替えるように警報機8にてアナウンスさせ、切り替え弁6の操作によるストレーナ切替を促す(S25)。
また、通常運転中からターニング運転に入る場合、回転計9により回転数を検知し、警報出力部7fが、目開き小ストレーナ4を設置した系統を使用するように警報機8にて再度アナウンスさせ、使用するストレーナを目開き小ストレーナ4に切り替えることを促してもよい。
【0039】
以上のように、第4の実施形態によれば、軸受油膜形成に関わるタービン回転数と軸受給油温度に基づいて計算された軸受油膜厚さを常に監視することで、使用するストレーナを適切なタイミングで切り替えることができる。これにより、軸受油膜厚さの変化による異物流入を適切に防ぎつつ、安定して給油することができるので、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0040】
また、計算機7に上記の系統切替制御部7bを設け、この系統切替制御部7bが軸受油膜厚さの値により示される運転状態に応じて切り替え弁6や系統切替機構への制御を行うことで、使用するストレーナを目開き小ストレーナ4または目開き大ストレーナ3に切り替えてもよい。
【0041】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図10は、第5の実施形態における、X成分ギャップセンサおよびY成分ギャップセンサを使用してタービンロータの軸芯の浮き上がり量を監視パラメータとした場合のタービンロータ・軸受保護装置の状態の一例を示す概念図である。
図11は、第5の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置に用いられる、X成分ギャップセンサおよびY成分ギャップセンサの設置形態の一例を示す図である。
図10に示すように、第5の実施形態では、タービンロータ1からみた軸受2aの端部の近傍に90degの角度差を持ったX成分ギャップセンサ11およびY成分ギャップセンサ12が取り付けられる。これらのギャップセンサ11、12は、低回転運転状態の軸
芯位置を基準として、タービンロータ1とセンサ11、12のX、Y成分のギャップ量を検出する。このギャップ量は、ロータ軸芯の浮き上がり量の計算に用いられる。
【0042】
タービンロータジャーナルと軸受メタルとの間には、ロータ軸芯の浮き上がり量に相当する油膜が形成されている。そこで、第5の実施形態では、目開き大ストレーナ3および目開き小ストレーナ4が並列になるように設けられる構成において、ロータ軸芯の浮き上がり量をストレーナ切替のための監視パラメータとして採用する。
【0043】
図12は、第5の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置に用いられる計算機の機能構成例を示すブロック図である。
第5の実施形態では、計算機7は、X成分ギャップ入力部7g、Y成分ギャップ入力部7h、軸芯浮き上がり量計算部7i、警報出力部7fを有する。
【0044】
図13は、第5の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置によるストレーナ切替動作の一例を示すフローチャートである。
まず、X成分ギャップ入力部7gは、X成分ギャップセンサ11により検出したX成分のギャップ量、つまりタービンロータ1とX成分ギャップセンサ11とのギャップ量を入力する(S31)。まず、Y成分ギャップ入力部7Hは、Y成分ギャップセンサ12により検出したY成分のギャップ量、つまりタービンロータ1とY成分ギャップセンサ12とのギャップ量を入力する(S32)。
軸芯浮き上がり量計算部7iは、入力したX・Y成分のギャップ量に基づいて軸芯浮き上がり量を計算する(S33)。
【0045】
この計算した軸芯浮き上がり量が所定値未満、つまりタービンロータ停止中およびターニング中の低速回転数での運転状態を示す値である場合は(S34のNO)、警報出力部7fは、目開き小ストレーナ4を設置した系統を使用するように警報機8にてアナウンスさせ、切り替え弁6の操作によるストレーナ切替を促す(S36)。
【0046】
また、計算した軸芯浮き上がり量が所定値以上、つまり回転上昇が開始されたことを示す値である場合は(S34のYES)、軸受への給油を確実に行うために、軸受油膜が十分に増加する前に、一般的には低速ヒートソーク(800rpm)において、警報出力部7fは、目開き大ストレーナ3を設置した系統に切り替えるように警報機8にてアナウンスさせ、切り替え弁6の操作によるストレーナ切替を促す(S35)。
【0047】
以上のように、第5の実施形態によれば、ギャップセンサにより計測されたギャップ量に基づいてタービンの浮き上がり量を計算することにより、軸受油膜厚さを監視することで、適切なタイミングでストレーナ切り替えを行うことができる。これにより、軸受油膜厚さの変化による異物流入を防ぎつつ、安定して給油することができるので、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0048】
また、計算機7に上記の系統切替制御部7bを設け、この系統切替制御部7bがギャップ量により示される運転状態に応じて切り替え弁6や系統切替機構への制御を行うことで、使用するストレーナを目開き小ストレーナ4または目開き大ストレーナ3に切り替えてもよい。
【0049】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、目開き大ストレーナ3および目開き小ストレーナ4が並列になるように設けられる構成において、ストレーナの系統の入口部分と出口部分の間の差圧をストレーナ切替のための監視パラメータとして採用する。
【0050】
図14は、第6の実施形態における、ストレーナ装置の差圧を監視し、差圧上昇時には、目開き大の軸受ストレーナへ切り替えるようにした場合のタービンロータ・軸受保護装置の状態の一例を示す概念図である。
図14に示すように、第6の実施形態では、ストレーナの系統の入口部分と出口部分の間の差圧を計測するための差圧計13が設けられる。
図15は、第6の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置に用いられる計算機の機能構成例を示すブロック図である。
第6の実施形態では、計算機7は、差圧入力部7j、警報出力部7fを有する。
【0051】
図16は、第6の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置によるストレーナ切替動作の一例を示すフローチャートである。
まず、計算機7の差圧入力部7jは、差圧計13により計測した差圧の値を入力する(S41)。
この差圧の値が制限値未満である場合は(S42のNO)、警報出力部7fは、目開き小ストレーナ4を設置した系統を使用するように警報機8にてアナウンスさせ、切り替え弁6の操作による、目開き小ストレーナ4へのストレーナ切替を促す(S44)。
【0052】
また、上記のように入力した差圧の値が制限値以上である場合は(S42のYES)、目開き小ストレーナ4を使用していた場合に、この目開き小ストレーナ4のメッシュの目詰まりにより、軸受への給油が十分にできなくなる可能性があるため、軸受への給油を確実に行うために、警報出力部7fは、目開き大ストレーナ3を設置した系統に切り替えるように警報機8にてアナウンスさせ、切り替え弁6の操作による、目開き大ストレーナ3へのストレーナ切替を促す(S43)。
【0053】
以上のように、第6の実施形態によれば、目開き小ストレーナ4の使用時に、万が一、メッシュ目詰まりにより潤滑油の供給を遮断される可能性がある場合、事前に目開き大ストレーナ3に切り替えることにより潤滑油供給を継続して行うことができる。これにより、軸受給油の断油によるタービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0054】
また、計算機7に上記の系統切替制御部7bを設け、この系統切替制御部7bが差圧の値により示される運転状態に応じて切り替え弁6や系統切替機構への制御を行うことで、使用するストレーナを目開き小ストレーナ4または目開き大ストレーナ3に切り替えてもよい。
【0055】
次に、ストレーナの系統切替機構の具体例について説明する。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。
図17は、第7の実施形態における、空気作動弁にて系統を切り替えることにより切り替え制御を自動化した場合のタービンロータ・軸受保護装置の状態の一例を示す概念図である。
第7の実施形態では、タービンロータ1からみた目開き大ストレーナ3の入口部に空気作動弁15a(第1の空気作動弁)が設けられ、タービンロータ1からみた目開き小ストレーナ4の入口部に空気作動弁15b(第2の空気作動弁)が設けられる。また、目開き大ストレーナ3の出口部には逆止弁16aが設けられ、目開き小ストレーナ4の出口部には逆止弁16bが設けられる。逆止弁16a、16bの開閉を制御することにより、未使用側ストレーナに関して、ストレーナ2次側(出口側)からの潤滑油の逆流と、空気作動弁出口側への逆圧による開動作不良が発生しないようにする。
【0056】
第7の実施形態では、監視するパラメータ、例えばタービン回転数、軸受給油温度、ギャップ量のいずれかを計算機7に常時取り込んで、軸受油膜状況を監視して、この監視結果に対応する運転状態に応じて空気作動弁15a、15bの開閉動作を制御することで、使用するストレーナを切り替えることができる。空気供給源からこれらの空気作動弁15a、15bへの空気(制御空気)は、空気作動弁15a、15bの上流に設けられる三方切替電磁弁14の切り替え動作により供給または遮断される。三方切替電磁弁14は、空気作動弁15a、15bのいずれか一方を開動作させて他方を閉動作させる。
【0057】
図18は、第7の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置によるストレーナ切替動作の一例を示すフローチャートである。
運転状態に応じて目開き小ストレーナ4を使用する場合には(S51のYES)、計算機7が三方切替電磁弁14の開閉状態を切り替えて励磁状態とすると(S52)、空気供給源から三方切替電磁弁14を介した目開き小ストレーナ4側の第2空気作動弁15bへの空気が遮断される(S53)。このように第2空気作動弁15bへの空気が遮断された場合には、この第2空気作動弁15bが開動作する(S54)。この開動作により、使用するストレーナが目開き小ストレーナ4に切り替えられる。この状態では、第1空気作動弁15aへは空気が供給され、この第1空気作動弁15aは閉動作する。
【0058】
一方、運転状態に応じて目開き大ストレーナ3を使用する場合には(S51のNO)、計算機7が三方切替電磁弁14の開閉状態を切り替えて無励磁状態とすると(S55)、空気供給源から三方切替電磁弁14を介した目開き大ストレーナ3側の第1空気作動弁15aへの空気が遮断される(S56)。このように第1空気作動弁15aへの空気が遮断された場合には、この第1空気作動弁15aが開動作する(S57)。この開動作により、使用するストレーナが目開き大ストレーナ3に切り替えられる。この状態では、第2空気作動弁15bへは空気が供給され、この第2空気作動弁15bは閉動作する。
【0059】
以上のように、第7の実施形態によれば、運転状態に応じて三方切替電磁弁14の開閉状態の切り替えにより空気作動弁15a、15bに対する空気供給・遮断を切り替えることで、これら空気作動弁15a、15bの開閉を操作することができる。
【0060】
これにより、異なるメッシュサイズのストレーナ系統の切り替え動作を自動化し、かつ計算機7から遠隔で操作可能とし、適切なタイミングでストレーナ切り替えを行うことができる。これにより、油膜厚さの変化に対する異物流入を適切に防ぎつつ、安定して給油することができるので、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
このように空気作動弁15a、15bの開閉によりストレーナを切り替える構成は、上記の第1乃至第6の実施形態に適用できる。
【0061】
さらに、第7の実施形態では、三方切替電磁弁14が無励磁状態の場合には目開き大ストレーナ3側の空気が遮断される構成なので、万が一電源が喪失した場合にも、三方切替電磁弁14が無励磁状態となることで目開き大ストレーナ3側に系統を切り替えることができる。これにより断油を防ぐことができる。
また、第7の実施形態では、空気供給源から三方切替電磁弁14への空気が遮断された場合に第1空気作動弁15aが開動作する構成なので、目開き大ストレーナ3側に系統を切り替えることができるので、空気供給源から三方切替電磁弁14への空気が遮断されても断油を防ぐことができる。
【0062】
よって、電源喪失時や空気供給源からの空気の遮断時にも潤滑油を安全に継続して供給することができるので、軸受給油の断油によるタービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0063】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。
図19は、第8の実施形態における、各ストレーナにストレーナ洗浄装置を設置した場合のタービンロータ・軸受保護装置の状態の一例を示す概念図である。
図19に示すように、第8の実施形態では、第7の実施形態で説明した構成に対して、目開き大ストレーナ3にストレーナ洗浄装置17aが設けられ、目開き小ストレーナ4にストレーナ洗浄装置17bが設けられる。これにより、未使用時のストレーナ内周部の異物を除去して洗浄できるようにしてストレーナの目詰まりを未然に防止することができる。また、ストレーナ洗浄装置17aの目開き大ストレーナ3上部側には空気抜き弁18aが設けられ、目開き大ストレーナ3下部側にはドレン弁19aが設けられる。ストレーナ洗浄装置17bの目開き小ストレーナ4上部側には空気抜き弁18bが設けられ、目開き小ストレーナ4下部側にはドレン弁19bが設けられる。
【0064】
図20および
図21は、第8の実施形態における、タービンロータ・軸受保護装置に用いられるストレーナ洗浄装置の一例を示す概念図である。ここではストレーナ洗浄装置17aを例にして説明するが、ストレーナ洗浄装置17bも同様である。
【0065】
図20、
図21に示すように、ストレーナ洗浄装置17aは、目開き大ストレーナ3の内周部のメッシュの全周に対し、このメッシュで捕捉された異物21aを除去するためにメッシュの周方向に沿って回転操作可能なストレーナ洗浄装置ハンドル20、およびこの異物21aを目開き大ストレーナ3のメッシュから掃き取るためのゴム製スクレーパ21を有する。ゴム製スクレーパ21の先端は、目開き大ストレーナ3のメッシュの近傍に位置し、ストレーナ洗浄装置ハンドル20の操作に伴って、ゴム製スクレーパ21により異物21aを目開き大ストレーナ3のメッシュから掃き取ることができる。
【0066】
例えば、
図19に示すように目開き大ストレーナ3の系統を使用していない場合、この目開き大ストレーナ3に設置されるストレーナ洗浄装置17aのストレーナ洗浄装置ハンドル20を操作して、ストレーナ洗浄装置17aを回転させることにより、ストレーナ内周部の異物を掃き取ることができる。
【0067】
ストレーナ洗浄装置17a内部には除去された異物を回収するためのドレン口21bが設けられ、このドレン口21bは目開き大ストレーナ3の下部に設置されるドレン弁19aに接続される。
【0068】
この除去された異物は、ドレン弁19aの開操作によりドレン口21bを介して目開き大ストレーナ3の外部に排出される。この排出された異物や油はドレン弁19aを介して油洗浄機へ回収される。目開き小ストレーナ4を洗浄する場合も同様である。
【0069】
以上のように、第8の実施形態によれば、未使用時のストレーナを洗浄することでストレーナの点検交換の頻度を少なくすることができ、かつメッシュの目詰まりによる断油を防ぎ、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0070】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。
図22は、第9の実施形態における、ストレーナの設置の構成を直列にした場合のタービンロータ・軸受保護装置の状態の一例を示す概念図である。
上記の第1乃至第8の実施形態では、異なるメッシュサイズのストレーナの系統を並列に配置して、タービン回転数、軸受給油温度、ギャップ量、差圧などの監視パラメータの値に基づいて、使用するストレーナの系統を切り替える構成としていた。これに対し、第9の実施形態では、
図22に示したように目開き大ストレーナ3と目開き小ストレーナ4を直列に配置して、上記の監視パラメータの値に基づいて、使用するストレーナの系統を切り替える。
【0071】
図22に示した構成は、第8の実施形態で説明した構成に対して、ロータ1からみた上流側から下流側に向かって目開き大ストレーナ3の系統と目開き小ストレーナ4の系統が直列に接続されるように変更した構成である。詳しくは、目開き小ストレーナ4の入口部に空気作動弁15aが設けられ、目開き大ストレーナ3、空気作動弁15a、目開き小ストレーナ4、逆止弁16aを経て軸受2a、2bに至る系統である。また、目開き大ストレーナ3が目詰まりとなった場合の差圧上昇時にも給油を継続できるようにするための自圧式差圧弁22が、目開き大ストレーナ3の入口部と出口部の間に対するバイパスラインに設置される。
【0072】
また、空気作動弁15aと、目開き小ストレーナ4と、逆止弁16aとでなる直列の系統の入口部から出口部にかけて、空気作動弁15bと逆止弁16bとでなる系統が、目開き小ストレーナ4の系統に対するバイパスラインとして設けられる。
【0073】
図23は、第9の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置に用いられる計算機の系統切替制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図23に示すように、第9の実施形態では、計算機7の系統切替制御部7bは、三方切替電磁弁制御部7b1を有する。三方切替電磁弁制御部7b1は、三方切替電磁弁14を励磁または無励磁に制御する。三方切替電磁弁14は、空気作動弁15a、15bのいずれか一方を開動作させて他方を閉動作させる。
【0074】
図24は、第9の実施形態におけるタービンロータ・軸受保護装置によるストレーナ切替動作の一例を示すフローチャートである。
運転状態に応じて、目開き大ストレーナ3とあわせて目開き小ストレーナ4を使用する場合(S91のYES)、計算機7の系統切替制御部7bの三方切替電磁弁制御部7b1が三方切替電磁弁14を励磁させ、この励磁により空気供給源から第1空気作動弁15aへの空気を遮断させることにより(S93)、第1空気作動弁15aを開動作させることで(S94)、使用する系統を目開き小ストレーナ4を通る系統に切り替える。この状態では、目開き小ストレーナ4に対するバイパスライン側の第2空気作動弁15bへは空気が供給され、この第2空気作動弁15bは閉動作する。
【0075】
ここで、この目開き小ストレーナ4の目詰まりにより、差圧計13で計測した差圧が上昇した場合は(S95のYES)、三方切替電磁弁制御部7b1が三方切替電磁弁14を無励磁とし(S96)、この無励磁により空気供給源から第2空気作動弁15bへの空気を遮断させることにより(S97)、目開き小ストレーナ4に対するバイパスライン側の第2空気作動弁15bが開動作するよう制御することで(S98)、断油を防ぐことができる。この状態では、開動作していた第1空気作動弁15aへは空気が供給され、この第1空気作動弁15aは閉動作し、目開き小ストレーナ4は使用されなくなる。
【0076】
一方、運転状態に応じて目開き大ストレーナ3を使用する一方で、目開き小ストレーナ4を使用しない場合は(S91のNO)、三方切替電磁弁制御部7b1が三方切替電磁弁14を無励磁とし(S99)、この無励磁により空気供給源から第2空気作動弁15bへの空気を遮断させることにより(S100)、目開き小ストレーナ4に対するバイパスライン側の第2空気作動弁15bを開動作するように制御することで(S101)、使用する系統を目開き大ストレーナ3のみを使用した系統へ切り替える。この状態では、開動作していた第1空気作動弁15aへは空気が供給され、この第1空気作動弁15aは閉動作し、目開き小ストレーナ4は使用されなくなる。
【0077】
また、この目開き大ストレーナ3の目詰まりにより差圧計13で計測した差圧が上昇した場合は(S102のYES)、自圧式差圧弁22が開動作する(S103)。これにより断油を防ぐことができる。
【0078】
以上のように、第9の実施形態では、三方切替電磁弁14の励磁または無励磁の制御を行なうことで、第1空気作動弁15aまたは第2空気作動弁15bを開動作させてストレーナ切り替え操作を自動化し、かつ遠隔で操作可能とし、適切なタイミングでストレーナ切り替えを行うことができる。これにより、油膜厚さの変化に応じた異物流入を適切に防ぎつつ、安定して給油することができるので、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0079】
また、第9の実施形態では、三方切替電磁弁14が無励磁の場合、または空気供給源から第2空気作動弁15bへの空気が遮断された場合には、目開き小ストレーナ4に対するバイパスライン側の第2空気作動弁15bが開動作する構成としている。
【0080】
このような構成とすることにより、電源喪失時および制御空気喪失時において、目開き大ストレーナ3の下流で使用する系統が目開き小ストレーナ4側の系統から、目開き小ストレーナ4に対するバイパスライン側の系統に切り替わるので、上記の電源喪失時および制御空気喪失時において、潤滑油を安全に継続して供給することができ、軸受給油の断油によるタービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0081】
また、万が一、目開き大ストレーナ3が目詰まりにより断油の可能性が発生したとしても、自圧式差圧弁22を用いたバイパス機能を有しているため、軸受への潤滑油の断油を防ぐことができる。
【0082】
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態について説明する。
図25は、第10の実施形態における、タービンロータ・軸受保護装置の構成例を示す概念図である。
この実施形態は、上記の各実施形態の特徴をあわせて説明するものである。
図25に示すように、異なるメッシュサイズのストレーナが並列に設置され、第1乃至第6の実施形態で説明した切り替え弁6を操作することで、使用するストレーナの系統を切り替えることを可能とした構成である。また、タービンの運転状態を監視するために、第1乃至第6の実施形態で説明したように、回転計9、温度計10、X成分ギャップセンサ11、Y成分ギャップセンサ12のいずれかを用いることができる。Y成分は、X成分の方向に直交する方向である。また、第6の実施形態で説明したように、並列に設置された各ストレーナの入口部と出口部との間の差圧を計測するための差圧計13が設けられる。
【0083】
これら監視計器より、タービン回転数、軸受給油温度、ギャップ量、軸受ストレーナの差圧のいずれかをタービン運転状態の監視パラメータとし、このパラメータの値に基づいて、目開き大ストレーナ3または目開き小ストレーナ4に切り替えるようにアナウンスし、均圧弁5によりストレーナ間を均圧した後に、切り替え弁6を操作することにより使用するストレーナを切り替えることができる。
【0084】
また、並列に設置された各ストレーナに対しては第9の実施形態で説明した自圧式差圧弁22の系統が並列に設置される。これにより、万が一、いずれかのストレーナの目詰まりが発生しても、各ストレーナの入口部と出口部との間の差圧の発生により、自圧式差圧弁22が開動作することで軸受に確実に給油できるようにする。
【0085】
図26は、第10の実施形態における、タービンロータ・軸受保護装置の構成の変形例を示す概念図である。
図26に示した構成は、
図25に示した構成の均圧弁5、切り替え弁6を設ける代わりに、第7および第8の実施形態で説明した三方切替電磁弁14、空気作動弁15a、15b、逆止弁16a、16b、第8の実施形態で説明したストレーナ洗浄装置17a、17b、空気抜き弁18a、18b、ドレン弁19a、19bを備えた構成である。
【0086】
このようにして、使用するストレーナを自動的かつ遠隔の制御により切り替えることができる。また、並列に設置された各ストレーナの入口部と出口部との間の差圧を監視し、ストレーナの目詰まりによる差圧発生時に自圧式差圧弁22を開動作させることもできる。
【0087】
その他にも、第9の実施形態で説明したように、目開き大ストレーナ3の系統と目開き小ストレーナ4の系統とを直列にすることもできる。また、
図25、
図26に示した構成ついて各々のストレーナ3、4をダブルストレーナ構造とすることもできる。
【0088】
本実施形態によれば、計算機7に取り込まれた監視パラメータによるメッシュストレーナの切り替え動作を行える構造としており、運転状態に応じて変化する、補足すべき異物サイズに応じて使用するストレーナを切り替えることができるので、異物流入による軸受およびタービン損傷のリスクを低減することができる。
【0089】
図26においては、計算機7によって制御された三方切替電磁弁14の励磁または無励磁の制御を行なうことで、ストレーナ切り替え操作を自動化しかつ遠隔で操作可能としており、適切なタイミングでストレーナ切り替えを行うことができる。これにより、油膜厚さの変化に対する異物流入を適切に防ぎつつ、安定して給油することができるので、タービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。また、電源喪失時および制御空気喪失時に第1空気作動弁15aを開動作させることで、使用するストレーナを目開き大ストレーナ3側に自動的に切り替えることができるので、潤滑油を安全に継続して供給することができる。これにより軸受給油の断油によるタービンと軸受の損傷リスクを低減することができる。
【0090】
また、ストレーナ洗浄装置17a、17bのいずれかを用いて未使用側のストレーナの洗浄を行うことができる。これにより、ストレーナの点検交換の頻度を少なくすることができ、かつメッシュの目詰まりによる断油を防ぐことができる。
【0091】
さらに、万が一、目開き大ストレーナ3または目開き小ストレーナ4の目詰まりにより断油の可能性が発生したとしても、自圧式差圧弁22を開動作させることによるバイパスを行うことができるので、軸受への潤滑油の断油を防ぐことができる。
【0092】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。