(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記屋根部上における、前記屋根穴部の周囲の少なくとも一部には、前記屋根穴部への水の浸入を防止または低減するための立壁部が設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の配線引き込み構造。
前記立壁部は、前記屋根穴部の下流位置に配置されており、勾配方向において前記屋根穴部に近い側が上流となり、前記屋根穴部から遠い側が下流となるように傾斜した傾斜面を有している、請求項6に記載の配線引き込み構造。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1に係る配線引き込み構造について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態1に係る配線引き込み構造を模式的に示す模式断面図である。
図1を参照して、建物1は、勾配を有する屋根部2を備えている。屋根部2は、たとえば切妻屋根や片流れ屋根が想定される。屋根部2としては、野地板などの屋根下地材と、屋根下地材上に配置される、瓦などの屋根仕上げ材とを含む。
図1には、屋根部2の勾配方向のうち下流方向が、矢印A1として示されている。
【0021】
屋根部2の下方には、屋根裏空間としての小屋裏空間6を挟んで、水平方向に広がる天井部14が配置されている。屋根部2の下流端部側(軒先側)の下方には、樋15が配置されている。
図1に示される空間7は、天井部14、外壁13および床部(図示せず)で囲まれる居室空間である。
【0022】
本実施の形態において、屋根部2上には、太陽光発電装置を構成する太陽光パネル8が設置されている。この場合、太陽光パネル8からの電力線10が、屋根部2に設けられた屋根穴部20に挿通されて、建物1内に引き込まれる。なお、
図1では、電力線10が、屋根部2の下流側から屋根穴部20に引き込まれる例が示されているが、限定的ではない。
【0023】
このような場合、屋根穴部20は、太陽光パネル8によって覆われているが、屋根部2と太陽光パネル8との間の狭い空間内に吹き込んだ雨水が屋根穴部20に達することがある。したがって、一般的には、上述したように、屋根穴部20自体への水の浸入を防止するための各種措置がとられる。
【0024】
これに対し、本実施の形態では、屋根穴部20への水の浸入を想定して、屋根部2の裏面側に、配線収容部材3が配置される。配線収容部材3は、屋根穴部20に挿通された電力線10を収容する。配線収容部材3は、排水案内面32と線引込開口36とを含む。
【0025】
排水案内面32は、屋根穴部20に連なってこの屋根穴部20から屋根部2の上流方向に延在している。これにより、排水案内面32は、屋根穴部20から浸入する水を受けるとともに、この屋根穴部20からの自然排水を案内する。より具体的には、排水案内面32は、屋根穴部20の位置が最下位置となるように、屋根部2の上流方向に延在する。
【0026】
線引込開口36は、排水案内面32の上流端部側の位置に設けられている。これにより、屋根穴部20に挿通された電力線10は、排水案内面32に沿って上流方向に導かれ、線引込開口36から建物内部である小屋裏空間6に引き込まれる。なお、屋根部2の裏面側に直接居室がある場合には、屋根裏空間は、小屋裏空間6ではなく居室空間であってもよい。
【0027】
以下に、本実施の形態における配線収容部材3の構成および配置例について、詳細に説明する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1における配線収容部材3の構成例を示す斜視図である。
図3は、配線収容部材3の一部を拡大して示す断面図である。
図2には、配線収容部材3の取付け状態における屋根部2との位置関係を表わすために、二点鎖線で屋根部2の表面(上面)2aが示され、一点鎖線で屋根部2の裏面(下面)2bが示されている。また、屋根部2の表面2aにおける屋根穴部20の輪郭が、符号20aとして示され、屋根部2の裏面2bおける屋根穴部20の輪郭が、符号20bとして示されている。
【0029】
屋根穴部20は、典型的には、屋根部2の勾配角度に関わらず、屋根部2の表面2a側から裏面2b側へ向かって水平方向よりも若干斜め上方向に屋根部2を貫通するように設けられている。具体的には、屋根穴部20の形状(輪郭)が矩形形状である場合、屋根穴部20を囲む4つの切断面のうち少なくとも下流側の面2cは、屋根部2の表面2a側から裏面2b側へ向かって若干斜め上方向に延在している。
【0030】
図1および
図2を参照して、配線収容部材3は、屋根部2の勾配方向に沿って長さを有する部材であり、たとえば隣り合う垂木16間に配置される。配線収容部材3は、たとえば鋼製であり、コの字型すなわちU字状断面を有している。つまり、配線収容部材3は、底壁31と、対向する2つの側壁33,34とを含む。
【0031】
底壁31は、屋根部2の裏面側において勾配方向に沿って延在するが、その下流側は、屋根穴部20に向かって折り曲げられている。
図3を参照して、底壁31のうち折り曲げられた部分31aは屋根穴部20に連通されるため、ここではこの部分を「連通部」という。なお、本実施の形態では、底壁31の折り曲げ位置が底壁31の長手方向中央部よりも下流側であることとするが、限定的ではない。
【0032】
配線収容部材3は、底壁31の連通部31aの裏面(下面)が、屋根穴部20の下流側の面(切断面)2cに当接した状態で配置される。連通部31aは、屋根部2の表面2a側にまで延在していることが望ましい。より具体的には、底壁31の連通部31aは、屋根部2の表面2a側に位置する屋根穴部20の下流側端部20c(すなわち、屋根部2の表面2aと屋根穴部20の切断面2cとの境界位置)から上流側へ向けて、斜め上方向に延在することが望ましい。なお、底壁31の連通部31aは、少なくとも水平方向に延在していればよい。この場合、屋根穴部20は、略水平方向に屋根部2を貫通するように設けられる。
【0033】
本実施の形態では、底壁31の上面が、上記排水案内面32として機能している。そのため、排水案内面32は、底壁31の連通部31aの上面により形成される第一の案内面321と、底壁31の残りの部分の上面により形成される第二の案内面322とを含む。すなわち、第一の案内面321は、屋根穴部20の下流側端部20cから水平方向または斜め上方向に延在し、第二の案内面322は、第一の案内面321の上流側端部に連結され、屋根部2の勾配方向に沿って延在する。これにより、屋根穴部20に浸入した水は、配線収容部材3の第一および第二の案内面321,322上を行き来し、重力によりそのまま屋根穴部20から外部(屋根部2上)に排水される。
【0034】
なお、
図3では、第二の案内面322は、屋根部2の裏面2bと平行に配置されているが、屋根部2の勾配角度に近い角度で傾斜していれば、平行でなくてもよい。また、本実施の形態では、第一の案内面321および第二の案内面322の双方とも、屋根部2の勾配方向に沿う断面形状が直線状である例を示しているが、第一の案内面321と第二の案内面322とによって適切に排水が案内できれば、少なくともいずれか一方の断面形状は滑らかな曲線状であってもよい。あるいは、第一の案内面321および第二の案内面322の双方の断面形状が直線状であっても、これらの連結部分が曲線状とされてもよい。
【0035】
図1および
図2に示されるように、配線収容部材3は、上流端部側に、後壁35をさらに含んでいる。後壁35は、底壁31および側壁33,34と接続されている。側壁33,34および後壁35のうち、少なくとも側壁33,34の上端面は、略面一形状であることが望ましい。この場合、配線収容部材3は、これら上端面が屋根部2の裏面2bに当接された状態で、固定される。なお、配線収容部材3は、固定部材(図示せず)によって、屋根部2に直接固定されてもよいし、隣り合う1つまたは2つの垂木16に固定されてもよい。
【0036】
本実施の形態において、線引込開口36は、この後壁35の下端ではない位置、すなわち排水案内面32よりも上方の位置に形成される。そのため、線引込開口36の下方に位置する壁によって、排水案内面32の上流部分が閉塞される。したがって、屋根穴部20からの水の流量が多い場合、屋根裏空間6内の構造躯体の位置などにより配線収容部材3の長さが十分に取れない場合、あるいは、屋根部2の勾配が緩やかな場合であっても、線引込開口36から小屋裏空間6への漏水のリスクを低減することができる。
【0037】
小屋裏空間6への漏水のリスクをさらに低減するために、線引込開口36の隙間に、シーリング材などの止水処理がさらに施されていてもよい。線引込開口36は、屋根部2裏の小屋裏空間6内に位置するため、止水のためにシーリング材を設けても、屋根穴部20自体にシーリング材が設けられる場合と異なり、紫外線や風雨の影響を直接受けることがない。したがって、この場合、シーリング材の劣化が抑えられる。また、線引込開口36においても多少の劣化が起こり得るとしても、小屋裏空間6において、定期的にシーリング材の劣化の有無を確認したり、劣化部分を補修したりすることが可能である。
【0038】
なお、線引込開口36は、後壁35に形成されることとしたが、限定的ではない。たとえば、配線収容部材3は、後壁35の代わりに、排水案内面32の上流部分を閉塞する部分(閉塞部)を有しているだけでもよい。この場合、たとえば、排水案内面32の上流部分に、側壁33,34よりも低い後壁または凸部を設け、当該後壁または凸部と屋根部2の裏面2bとの間(隙間)を線引込開口36としてもよい。または、配線収容部材3の長さを十分に取れる場合には、閉塞部を含まなくてもよい。つまり、側壁33,34の上流側端部と、屋根部2の裏面2bとで囲まれる開口部が、線引込開口とされてもよい。
【0039】
あるいは、線引込開口は、排水案内面32の上流端部側の位置にさえ設けられていれば、底壁31および側壁33,34のうちのいずれか1つに設けられた貫通孔であってもよい。なお、排水案内面32の「上流端部側の位置」とは、上流端部の位置に限定されず、少なくとも屋根穴部20よりも上流側の位置であれば、排水案内面32の中央部付近の位置であってもよい。
【0040】
上述のように、本実施の形態では、屋根穴部20に雨水が浸入することを前提として、雨水の排水経路を形成する配線収容部材3が設けられる。したがって、屋根穴部20をシーリング材等により止水したり、カバー材や水切りにより防水したりしていなくても、小屋裏空間6(配線収容部材3の外部)への雨水の浸入を効率的に防止または低減することができる。
【0041】
また、配線収容部材3は、箱型(断面U字形状)の簡易な構造であるため、防水性の高いカバー材や水切りを用いるよりも、コストダウンを図ることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態の配線収容部材3は、その内部への雨水の浸入を前提とした構成であるものの、屋根部2の下流側から屋根穴部20への雨水の吹き込みを防止または低減するために、屋根部2上に立壁部5が設けられていてもよい。立壁部5については、
図4をさらに参照して説明する。
図4には、立壁部5が屋根部2上に設置された状態を、上から見た図が示されている。
【0043】
立壁部5は、屋根部2上における屋根穴部20の下流位置に設けられている。立壁部5は、
図1に示されるように、屋根部2と太陽光パネル8との高さ範囲内において、屋根部2の表面2aから上方に立ち上がっている。立壁部5は、たとえばその下端部が折り曲げられており、この折り曲げ部53が屋根部2に固定される。立壁部5の固定には、接着剤など、公知の固定手段が用いられてよい。
【0044】
取付け状態における立壁部5の幅方向(勾配方向に直交する方向)の寸法L2は、屋根穴部20の幅寸法L1よりも大きい。なお、屋根穴部20の輪郭が円形の場合には、屋根穴部20の幅寸法L1はその径に等しいものとする。
【0045】
立壁部5は、たとえば、平面視において略L字形状を有しており、第1壁51と第2壁52とによって形成されている。立壁部5は、第1壁51と第2壁52との接続部が屋根穴部20に最も近接するように配置される。すなわち、第1壁51および第2壁52は、ともに、勾配方向において屋根穴部20に近い側が上流となり、屋根穴部20から遠い側が下流となるように傾斜した傾斜面50を有している。傾斜面50は、屋根穴部20側を向いて上下方向(より限定的には、屋根部2の表面2aに直交する方向)に延在している。これにより、屋根穴部20から排出された水は傾斜面50に沿って流下されるため、屋根穴部20からの排水が立壁部5によって遮られることがない。
【0046】
なお、立壁部5は、屋根穴部20側に傾斜面50を有しさえすれば、
図4に示した形状に限定されず、たとえば第1壁51および第2壁52の一方だけを有していてもよい。
図5には、立壁部5が、第1壁51のみによって形成された例が示されている。
【0047】
また、立壁部5は、屋根部2の下流側から屋根穴部20への雨水の吹き込みを防止または低減するために、屋根穴部20の下流位置に設けられることとしたが、屋根穴部20への水の浸入を防止または低減できれば、屋根穴部20の周囲の他の位置に設けられてもよい。立壁部5を屋根穴部20の周囲の少なくとも一部に配置することによって、屋根穴部20へ向かう水の流路を屋根穴部20から遠ざける方向に変更することができる。なお、屋根穴部20の上流位置に配置する場合には、屋根穴部20の幅寸法L1よりも大きい幅寸法の立壁部5が、勾配方向において屋根穴部20に近い側が下流となり、屋根穴部20から遠い側が上流となるように傾斜した傾斜面を有していればよい。
【0048】
(変形例)
図6は、本実施の形態の変形例に係る配線収容部材3Aの構成を部分的に示す模式断面図である。
図1〜
図3に示した配線収容部材3においては、底壁31が折り曲げられることによって連通部31が形成されたが、本変形例の配線収容部材3Aにおいては、底壁31上に、連通部として機能する板状部材37が連結させている。この場合、底壁31は、屋根穴部20の下方においても屋根部2の勾配方向に沿って延びていてもよい。
【0049】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2に係る配線引き込み構造について説明する。
【0050】
上記実施の形態1では、U字状断面を有する箱型の配線収容部材が用いられたのに対し、本実施の形態では、筒形状の配線収容部材が用いられる。以下に、
図7および
図8を参照して、実施の形態1と異なる部分のみ詳細に説明する。
【0051】
図7および
図8は、それぞれ、本発明の実施の形態2において、取付け状態における配線収容部材4の構成例を示す断面図および斜視図である。
図7および
図8を参照して、配線収容部材4は、たとえば円筒形状であり、固定部材9によってたとえば垂木16に固定されている。この場合、屋根部2の屋根穴部20の輪郭は、円形または楕円形である。
【0052】
本実施の形態では、配線収容部材4自体が途中位置において折り曲げられている。具体的には、配線収容部材4の長手方向中央部よりも下流側の位置において、鈍角曲げされている。ここでは、配線収容部材4のうち、折り曲げ位置よりも下流側の部分を第1筒状部41といい、折り曲げ位置よりも上流側の部分を第2筒状部42という。
【0053】
配線収容部材4の第1筒状部41は、屋根穴部20に挿通されて、屋根部2の表面2a側にまで延在していることが望ましい。第1筒状部41は、下流側(表面2a側)から上流側(裏面2b側)へ向けて、水平方向または斜め上方向に延在している。第2筒状部42は、第1筒状部41の上流側端部に連結され、屋根部2の勾配方向に沿って配置される。
【0054】
本実施の形態では、配線収容部材4の内面の一部(下方に位置する円弧面)が、排水案内面43として機能している。そのため、排水案内面43には、第1筒状部41の内周面の一部により形成される第一の案内面431と、第2筒状部42の内周面の一部により形成される第二の案内面432とが含まれる。したがって、本実施の形態においても、第一の案内面431は、屋根穴部20の下流側端部20cから水平方向または斜め上方向に延在し、第二の案内面432は、第一の案内面431の上流側端部に連結され、屋根部2の勾配方向に沿って延在する。
【0055】
屋根部2上に配された電力線10は、屋根部2上に露出された第1筒状部41の開口部(下流側開口部)から配線収容部材4内に挿通されて、第2筒状部42の開口部(上流側開口部)から小屋裏空間6に引き出される。本実施の形態では、配線収容部材4の第2筒状部42の開口部が、線引込開口44とされる。なお、線引込開口44としての配線収容部材4の上流側開口部においても、電力線10の周囲にシーリング材45が配置されてもよい。
【0056】
(変形例)
図9は、本実施の形態の変形例における配線収容部材4Aの構成を示す模式断面図である。本変形例においても、配線収容部材4Aは筒形状である。
【0057】
図9に示されるように、配線収容部材4Aは、上流端部側の位置において折り曲げられている。したがって、配線収容部材4Aの大部分が、屋根穴部20に連通される第1筒状部41によって構成される。この場合、配線収容部材4は、第1筒状部41が、屋根部2の上流側へ向けて斜め上方向に傾斜する状態となるよう取付けられる。
図9では、水平方向が想像線にて示されている。第2筒状部42は、たとえば上下方向(略垂直方向)に延在している。
【0058】
この場合、第1筒状部41の内面の一部のみによって、排水案内面43が構成される。つまり、排水案内面43は、2つの案内面を有することなく一続きの案内面によって形成されてもよい。また、第2筒状部42が上下方向に延在しているため、第2筒状部42自体の壁面によって排水案内面43の上流部分が閉塞される。
【0059】
本変形例によれば、第2筒状部42の開口部を塞がなくても、小屋裏空間6への浸水を防止することができる。したがって、より簡単に配線収容部材4を構成することができる。なお、第2筒状部42の延在方向は、少なくとも、水平方向に対し、屋根部2の勾配角度以上であればよい。
【0060】
本実施の形態およびその変形例においては、排水案内面43によって屋根穴部20からの自然排水が適切に案内できれば、筒状の配線収容部材4,4Aは、少なくとも一部に可撓部分を有し、小屋裏空間6内の構造躯体を迂回するように配置されてもよい。
【0061】
以上のように、各実施の形態に示した配線引き込み構造によれば、屋根穴部20から配線収容部材(3,3A,4,4A)内に浸入した水が、線引込開口(36,44)まで到達しないようにすることができる。また、配線収容部材内に浸入した水をそのまま屋根穴部20から自然排水することができる。したがって、簡易な構成で、長期間にわたり建物内部への漏水を防止することができる。
【0062】
なお、各実施の形態および変形例では、配線収容部材の下流側に位置する連通部の下流側端部は、屋根穴部20に完全に挿通され、その端縁が屋根部2の表面2aに露出される構成とした。しかしながら、連通部の下流側端部は、排水案内面が屋根穴部20に連なるように配置されればよく、屋根穴部20に挿通されなくてもよい。たとえば、屋根部2の切断面2cと排水案内面とが段差なく繋がっていてもよい。
【0063】
あるいは、配線収容部材の連通部の端縁は、屋根部2の表面2a上における屋根穴部20の下流位置にまで延びていてもよい。この場合の配線引き込み構造の一例について、
図10を参照して説明する。
図10に示される配線収容部材3Bの基本構成は、実施の形態1に示した箱型の配線収容部材3と同様であるが、配線収容部材3Bの底壁31の下流側端部は、屋根部2の表面2a上に配置される延出部38と、一体的かつ滑らかに連結されている。延出部38は、屋根穴部20を取り囲んだ状態で屋根部2の表面2a上に配置される、板状の被覆部30の一部分として形成されていてもよい。
【0064】
配線収容部材3Bのような構成の場合、
図10に示されるように、屋根穴部20の貫通方向が屋根部2に対して直行する方向であるとしても、底壁31の下流側端縁と屋根部2の表面2aとの隙間からの、小屋裏空間6への漏水を防止することができる。このように、底壁31の連通部31aの裏面は、屋根穴部20の下流側の切断面2cに当接していなくてもよい。
【0065】
また、屋根部2の表面2a上に被覆部30が配置される場合、
図11に示されるように、被覆部30の下流側端部を上方に折り曲げることによって、上述の立壁部5が形成されてもよい。なお、被覆部30が存在しない場合であっても、延出部38の下流側端部と立壁部5の折り曲げ部53(
図5)とを一体的に連結しておいてもよい。
【0066】
また、建物1の屋根仕上げ材が陶器瓦であるような場合、屋根穴部20は、屋根下地材にのみ設けられていてもよい。つまり、屋根部2は、屋根仕上げ材を含まず屋根下地材のみを含んでいてもよい。この場合、たとえば、太陽光パネル8からの電力線10は、瓦同士の隙間から、屋根下地材上に配されてもよい。なお、屋根下地材は、表面側に配置されたアスファルトルーフィングなどの防水シートを含んでいる。そのため、屋根下地材にのみ屋根穴部20が設けられる場合、屋根穴部20からの排水経路は、防水面上に形成される。
【0067】
また、上記各実施の形態では、屋根部2に設置された設備機器として、太陽光発電装置を構成する太陽光パネル8を例に示したが、これに限定されない。また、屋根部2上の設備機器と建物1内等に設置された機器とを接続する接続線は、電力線10に限定されない。たとえば、接続線は、アンテナと通信機器とを接続する通信ケーブルなどであってもよいし、太陽熱温水装置と給湯器とを接続する給湯管のような管状部材であってもよい。
【0068】
なお、上記各実施の形態に示したように、雨水の自然排水は、接続線が挿通される屋根穴部20から行われることが望ましいが、場合によっては、接続線が挿通される屋根穴部20とは別の屋根穴部(図示せず)から雨水の自然排水が行われてもよい。この場合、排水用の屋根穴部は、屋根穴部20よりも下流位置に設けられ、この屋根穴部に配線収容部材の連通部が接続されればよい。なお、この排水用の屋根穴部にも、他の接続線が挿通されていてもよい。
【0069】
また、各実施の形態および変形例を、適宜組み合わせてもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。