特許第6382688号(P6382688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382688
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】地図生成装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20180820BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G09B29/00 Z
   G05D1/02 H
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-226471(P2014-226471)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-90864(P2016-90864A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】森實 裕人
(72)【発明者】
【氏名】川股 幸博
【審査官】 奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−118694(JP,A)
【文献】 特開2001−344017(JP,A)
【文献】 特表2013−508586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00−29/14
G05D 1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の走行可能な領域を示す走行可能地図情報を記憶する地図情報記憶部と、
前記作業機械の位置を表す位置情報及び前記作業機械の稼働状態を表す稼働情報を蓄積する作業機械情報蓄積部と、
前記作業機械情報蓄積部に蓄積された前記位置情報及び前記稼働情報に基づいて、前記作業機械の稼働域を演算する稼働域演算部と、
前記地図情報記憶部に記憶された前記走行可能地図情報に対して、前記稼働域演算部によって演算された前記作業機械の稼働域を照合することにより、前記走行可能地図情報における作業場の境界を修正して前記走行可能地図情報を更新する地図情報更新部とを備えたことを特徴とする地図生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図生成装置において、
前記地図情報更新部は、
前記稼働域演算部によって演算された前記作業機械の稼働域の所定の基準点が前記走行可能地図情報における前記作業場の境界の内側に位置するとき、前記作業場の領域が縮小するように前記走行可能地図情報における前記作業場の境界を修正し、前記稼働域演算部によって演算された前記作業機械の稼働域の前記所定の基準点が前記走行可能地図情報における前記作業場の境界上及び境界の外側に位置するとき、前記作業場の領域が拡大するように前記走行可能地図情報における前記作業場の境界を修正する境界修正部を含むことを特徴とする地図生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の地図生成装置において、
前記作業機械は、前記走行可能地図情報を用いて走行し、積荷を運搬する運搬車両と、前記作業場で前記積荷を前記運搬車両に積込む積込機とを含み、
前記稼働域演算部は、前記稼働情報のうち前記積込機の所定の稼働状態、及び前記位置情報のうち前記所定の稼働状態に関連付けられた前記積込機の位置から前記積込機の稼働域を演算することを特徴とする地図生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地図生成装置において、
前記稼働域演算部は、さらに前記位置情報のうち前記所定の稼働状態に関連付けられた前記運搬車両の位置から前記運搬車両の稼働域を演算し、
前記地図情報更新部は、前記地図情報記憶部に記憶された前記走行可能地図情報に対して、前記稼働域演算部によって演算された前記積込機及び前記運搬車両の稼働域を照合することにより、前記走行可能地図情報における前記作業場の境界を修正して前記走行可能地図情報を更新することを特徴とする地図生成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の地図生成装置において、
前記作業機械は、前記走行可能地図情報を用いて走行し、積荷を運搬する運搬車両から構成され、
前記運搬車両による前記積荷の放土作業の種類に応じて、前記地図情報更新部による前記走行可能地図情報の更新を行うかどうかを判定する更新判定部を備えたことを特徴とする地図生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の地図生成装置において、
前記放土作業は、前記運搬車両が放土位置を順次変えながら前記積荷を放土するパドックダンピングであり、
前記更新判定部は、
前記運搬車両が前記作業場の同一地点で前記積荷の放土を所定の回数行った場合に、前記走行可能地図情報の更新を行い、前記運搬車両が前記作業場の同一地点で前記積荷の放土を所定の回数行わなかった場合に、前記走行可能地図情報の更新を行わないことを特徴とする地図生成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の地図生成装置において、
前記作業機械を稼働させる稼働指令を前記作業機械へ送信し、前記作業機械の稼働状態を管理する管理システムに接続され、
前記管理システムから前記作業機械へ送信される前記稼働指令の内容を前記稼働情報として収集する稼働情報収集部をさらに備え、
前記稼働情報収集部は、収集した前記稼働情報を前記作業機械情報蓄積部に蓄積することを特徴とする地図生成装置。
【請求項8】
請求項2に記載の地図生成装置において、
前記地図情報更新部は、
前記稼働域演算部によって演算された前記作業機械の稼働域の前記所定の基準点が前記走行可能地図情報における前記作業場の境界上及び境界の外側に位置するとき、前記境界修正部によって前記作業場の領域が拡大するように前記走行可能地図情報における前記作業場の境界が修正される前に、前記作業場の境界を確認させる確認指令を前記作業機械へ送信することを特徴とする地図生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の走行に用いられる走行可能地図情報を生成する地図生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山等における採掘作業では、安全性向上と低コスト化を目的に無人の機械が採掘作業を行うための自律走行技術が求められている。採掘現場では油圧ショベル等の作業機械が鉱物や表土層を掘削し、採掘した鉱物や表土層を採掘現場の外へ運搬する作業を行う必要がある。このような運搬作業は、鉱物や表土層を積載することが可能な荷台を有し、荷台の許容積載量が比較的大きいダンプトラック等の作業機械により行われる。
【0003】
この種のダンプトラック等の作業機械を用いた自律走行技術の従来技術の1つとして、例えば、当該作業機械に装着したGPS(Global Positioning System)等の測位装置が算出した自車位置情報に基づいて、オペレータが搭乗することなく、自律的に走行できるように車両の走行制御を行う自律走行システムが提案されている。
【0004】
自律走行システムでは、測位装置が算出した自車位置情報は、無線通信を介して管制センタへ送信される。管制センタは、油圧ショベル等の作業機械が鉱物や表土層を積込む積込場からダンプトラック等の作業機械が鉱物や表土層を放土する放土場までの搬送路、及び積込場や放土場等の作業場における目標軌道を生成し、その目標軌道を示すデータである目標軌道情報をダンプトラック等の作業機械へ送信する。
【0005】
搬送路においては、測位装置によって予め取得されたダンプトラック等の作業機械の軌跡情報から生成された鉱山の地図データに基づいて、作業機械の目標軌道が作成される。また、作業場においても、例えば、積込点の入口から油圧ショベル等の作業機械の近傍に設定された積込点までの目標軌道が生成される。
【0006】
一方、地図データは、測位装置が算出した自車位置情報に含まれるダンプトラック等の作業機械の走行軌跡から抽出して作成され、作業機械の走行可能な領域と走行不能な領域とを区画する境界を示す境界情報を含んでいる。この境界情報は、上述した搬送路及び作業場の目標軌道の作成において、地図データの境界線と目標軌道との干渉を防ぐために用いられる。従って、地図データは、作業の進展に伴って頻繁に更新される必要がある。
【0007】
そこで、地図データを更新する従来技術の1つとして、下記の特許文献1が知られている。この特許文献1には、「走行位置計測手段で計測される無人車両の走行位置と、該無人車両の誘導コースを規定するコースデータとに基づいて、前記無人車両を前記誘導コースに沿って誘導走行させる無人車両の誘導装置であって、コースエリアの境界線のデータを入力する手段と、コースデータを作成する手段と、 前記作成されたコースデータで規定される誘導コースで無人車両を走行させた場合の該無人車両と前記コースエリアの境界線との干渉を推認する手段と、前記干渉が推認された場合に、前記コースデータを変更するコースデータ変更手段と、前記コースエリアの境界線の全区域のうちで境界線の形状が変化した区域を認識する認識手段と、前記コースエリアの境界線の全区域のうちで境界線の形状が変化した区域だけ該コースエリアの境界線のデータを更新するコースエリア境界線更新手段とを備え、前記認識手段は、前記コースエリアを移動する作業機械と、前記作業機械の移動位置を計測する移動位置計測手段と、前記作業機械の移動位置に基づいて前記コースエリアの境界線の全区域のうちで境界線の形状が変化した区域を特定する手段とを備えることを特徴とする無人車両の誘導装置」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−134961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に開示された従来技術の無人車両の誘導装置では、作業機械の位置情報を用いて作業機械の走行可能な領域を示す走行可能地図情報のうちで境界の形状が変化した区域を特定している。しかし、実際の積込場や放土場等の作業場の境界は、作業機械の移動位置だけでなく作業機械の稼働状態に応じて変化するのに対して、従来技術の無人車両の誘導装置では作業機械の移動位置しか考慮されていない。そのため、従来技術の無人車両の誘導装置によって更新された走行可能地図情報は、作業場の境界を適切に反映していない虞がある。
【0010】
例えば、ダンプトラックは、走行可能地図情報における作業場の境界内で鉱物や表土層を積込みあるいは放土を行うのに対して、積込機は、その作業場の境界を越えたダンプトラックの走行可能な領域以外の場所から鉱物や表土層を採取することが考えられる。従って、従来技術の無人車両の誘導装置のように、GPS等の測位装置から得られる積込機の位置情報の全てを用いて走行可能地図情報の作業場の境界を作成した場合には、ダンプトラックが走行できない領域の位置情報も走行可能な領域として走行可能地図情報に含まれる可能性がある。その結果、走行可能地図情報における作業場の境界の抽出精度が低下することが懸念されている。
【0011】
また、ダンプトラックが走行中にGPS等の測位装置で位置情報を取得しても、ダンプトラックは境界付近を走行していないことが考えられる。従って、ダンプトラックの走行中の位置情報を考慮に入れた場合には、この余分な位置情報が走行可能地図情報の作業場の境界の作成に影響を与える可能性がある。その結果、上述したのと同様に、走行可能地図情報における作業場の境界の抽出精度が低下することが懸念されている。
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、走行可能地図情報における作業場の境界の抽出精度を向上させることができる地図生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の地図生成装置は、作業機械の走行可能な領域を示す走行可能地図情報を記憶する地図情報記憶部と、前記作業機械の位置を表す位置情報及び前記作業機械の稼働状態を表す稼働情報を蓄積する作業機械情報蓄積部と、前記作業機械情報蓄積部に蓄積された前記位置情報及び前記稼働情報に基づいて、前記作業機械の稼働域を演算する稼働域演算部と、前記地図情報記憶部に記憶された前記走行可能地図情報に対して、前記稼働域演算部によって演算された前記作業機械の稼働域を照合することにより、前記走行可能地図情報における作業場の境界を修正して前記走行可能地図情報を更新する地図情報更新部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地図生成装置によれば、走行可能地図情報における作業場の境界の抽出精度を向上させることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る地図生成装置が用いられる鉱山の全体配置について示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る管制センタシステム、油圧ショベル、及びダンプトラックの構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る地図情報記憶部に記憶された地図データの構成の一例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る作業機械情報蓄積部に蓄積された各データの構成の一例を説明する図であり、(a)図は油圧ショベルの位置データを示す図、(b)図は油圧ショベルの稼働データを示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る地図情報作成部による地図データの作成処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態に係る管制センタシステム、油圧ショベル、及びダンプトラックの各動作の流れを示すシーケンス図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る稼働域演算処理部による油圧ショベルの稼働域の演算処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の第1実施形態に係る稼働域演算処理部による油圧ショベルの稼働域の演算過程を説明する図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る地図情報更新部による地図データの更新処理の流れを示すフローチャートである。
図10】本発明の第1実施形態に係る地図情報更新部による更新処理後の地図データを示す図であり、(a)図は地図データにおける積込場の領域が縮小した図、(b)図は地図データにおける積込場の領域が拡大した図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る管制センタシステム、油圧ショベル、及びダンプトラックの各動作の流れを示すシーケンス図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る稼働域演算処理部による油圧ショベル及びダンプトラックの稼働域の演算処理の流れを示すフローチャートである。
図13】本発明の第2実施形態に係る稼働域演算処理部による油圧ショベル及びダンプトラックの稼働域の演算過程を説明する図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る管制センタシステム、油圧ショベル、及びダンプトラックの構成を示す機能ブロック図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る作業機械情報蓄積部に蓄積されたダンプトラックの稼働データの構成の一例を示す図である。
図16】本発明の第3実施形態に係る管制センタシステム及びダンプトラックの各動作の流れを示すシーケンス図である。
図17】本発明の第3実施形態に係る稼働域演算処理部によるダンプトラックの稼働域の演算処理の流れを示すフローチャートである。
図18】本発明の第3実施形態に係る稼働域演算処理部によるダンプトラックの稼働域の演算過程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る地図生成装置を実施するための形態について説明する。以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は実施の形態に分割して説明する。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。なお、以下の実施の形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0017】
また、以下の実施の形態における各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他ハードウェアとして実現してもよい。また、後述する各構成、機能、処理部、処理手段等は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現してもよい。すなわち、ソフトウェアとして実現してもよい。各構成、機能、処理部、処理手段等を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
【0018】
以下、本発明に係る地図生成装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一又は関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一又は同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る地図生成装置では、作業機械は、例えば、積荷を運搬するダンプトラック等の運搬車両と、この運搬車両に積荷を積込む油圧ショベルやホイールローダ等の積込機とを含んでいる。そして、当該地図生成装置は、運搬車両の走行可能な領域を示す走行可能地図情報を生成するための構成に特徴がある。
【0020】
本発明の第1実施形態に係る地図生成装置100は、例えば、図1に示す鉱山に用いられ、この鉱山は、少なくとも作業場としての積込場1及び放土場2と、駐機場3と、これらを結ぶ搬送路4と、これらの積込場1、放土場2、駐機場3、及び搬送路4から離れた位置に設置された無線基地局5とから構成されている。一つの搬送路4上には、進行方向が逆方向になる二つの走行経路が形成される。
【0021】
積込場1は、積込機6が運搬車両7へ鉱物や表土層を積込位置において積込む作業を行う場所である。積込機6は、例えば、超大型の油圧ショベル(以下、積込機と同一の符号を付す)から構成されている。この油圧ショベル6は、走行体と、この走行体の上方に旋回フレームを介して旋回可能に設けられた旋回体と、この旋回体の前方に配置されたフロント作業機と、旋回体の前部に配置され、オペレータが搭乗する運転室と、この運転室の上部に設置され、無線通信回線8に接続するためのアンテナとを備えている。
【0022】
フロント作業機は、旋回体に対して俯仰動可能に取付けられたブームと、このブームの先端に回動可能に取付けられたアームと、このアームの先端に回動可能に取付けられたバケットとを含み、これらのブーム、アーム及びバケットが運転室内のオペレータの操作によって上下方向へ回動することにより、鉱物や表土層の掘削作業及び運搬車両7への積込作業を行う。なお、積込機は、上述した油圧ショベル6から構成された場合に限らず、ホイールローダ等の作業機械から構成されてもよい。また、本発明の第1実施形態に係る地図生成装置を実現するための油圧ショベル6の機能を示す具体的な構成については後述する。
【0023】
運搬車両7は、例えば、鉱山において油圧ショベル6が積み込んだ鉱物や表土層を搬送路4に沿って搬送し、オペレータが搭乗することなく、自律走行する鉱山用の電気駆動式のダンプトラック(以下、運搬車両と同一の符号を付す)から構成されている。このダンプトラック7は、鉱物や表土層等の積荷を積載する荷台と、車両の本体を形成し、荷台を支持するフレームと、このフレームの前部に回転可能に取付けられた前輪と、フレームの後部に回転可能に取付けられた後輪とを含んでいる。
【0024】
また、ダンプトラック7は、フレームのうち後輪の近傍に設けられたヒンジピンと、このヒンジピンを介して荷台を上下方向へ回動させるホイストシリンダと、車両の上面前方に設置され、無線通信回線8に接続するためのアンテナとを含んでいる。なお、本発明の第1実施形態に係る地図生成装置を実現するためのダンプトラック7の機能を示す具体的な構成については後述する。
【0025】
放土場2は、ダンプトラック7が搬送した鉱物や表土層を積下ろす場所である。駐機場3は、オペレータの交代やダンプトラック7の駐車を行う場所である。駐機場3内には、オペレータが待機する管制センタ9が設けられる。この管制センタ9には、オペレータが操作し、ダンプトラック7が自律走行するための制御を行う管制センタシステム10(図2参照)が設置されている。この管制センタシステム10は、例えば、油圧ショベル6及びダンプトラック7を稼働させる稼働指令を、後述のデータ収集部20(図2参照)を経由して油圧ショベル6及びダンプトラック7へそれぞれ送信し、油圧ショベル6の稼働状態を管理する管理システム101を有している。
【0026】
このような鉱山の積込場1、放土場2、及び駐機場3は、ダンプトラック7の走行可能な領域と走行不能な領域とを区画する境界1A,2A,3Aをそれぞれ有している。そして、油圧ショベル6は積込場1の境界1A付近で掘削作業及び積込作業を行い、ダンプトラック7は積込場1、放土場2、及び駐機場3の境界1A,2A,3A内及び搬送路4を走行し、放土場2の境界2A内で放土作業を行う。
【0027】
この放土作業の種類には、ダンプトラック7が境界2Aの外側へ向かって鉱物や表土層を放土する作業、ダンプトラック7が境界2Aの内側の所定の位置に鉱物や表土層を放土する作業、及びダンプトラック7が境界2Aの内側で放土位置を順次変えながら鉱物や表土層を放土する、いわゆるパドックダンピングと呼称される作業が含まれる。
【0028】
無線基地局5は、油圧ショベル6、及びダンプトラック7、及び管制センタシステム10を、無線通信回線8を介して互いに通信接続するための基地局であり、油圧ショベル6、ダンプトラック7、及び管制センタシステム10から送信された無線通信の電波が無線基地局5を経由することにより、油圧ショベル6、ダンプトラック7、及び管制センタシステム10間で各種の情報の送受信を行う。
【0029】
また、鉱山には、油圧ショベル6及びダンプトラック7の他、積込場1及び放土場2において作業が安全に行われているかどうかの監視や放土された鉱物及び表土層の除去等の作業を行う作業車両11、及びダンプトラック7が自律走行するための走行可能地図情報(以下、便宜的に地図データと称する)の元となる軌跡情報を取得して収集する航測車両12が稼働している。
【0030】
この航測車両12は、図示されないが、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation System)の航法衛星から測位電波を受信して自車両の位置(例えば、座標値)を取得する。GNSSとして、例えば、GPS、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEOを用いてもよい。
【0031】
航測車両12は、例えば、車両の所定の位置に取付けられたGPS受信機(図示せず)を備えており、取得時刻、及びGPS受信機が取得した自車両の位置から成る軌跡情報をレコード情報として保存する。そして、航測車両12は、保存した軌跡情報を、無線通信回線8を介して所定の時間間隔毎に管制センタシステム10へ送信する。
【0032】
次に、本発明の第1実施形態に係る地図生成装置を実現するための管制センタシステム10、油圧ショベル6、及びダンプトラック7の機能を示す各構成について、図2を参照しながら順に説明する。
【0033】
図2に示すように、管制センタシステム10は、管制制御部16、地図情報作成部17、地図情報記憶部18、作業機械情報蓄積部19、データ収集部20、稼働域演算処理部21、地図情報更新部22、及び通信部23を備えており、これらの各部16〜23が相互に連関することにより地図生成装置100としての機能を有している。
【0034】
管制制御部16は、管制センタシステム10の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算・制御装置の他、管制センタシステム10で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、また、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含むハードウェアを用いて構成されている。
【0035】
そして、管制制御部16は、ダンプトラック7の配車管理及び自律走行を制御するための地図データに基づいて、油圧ショベル6及びダンプトラック7の後述の各制御部28,38に対して必要な情報を送受信することにより、油圧ショベル6及びダンプトラック7の動作を制御する。
【0036】
地図情報作成部17は、航測車両12又はダンプトラック7によって収集された軌跡情報に基づいて、地図データ18Aを作成する。地図情報記憶部18は、情報を固定的に記憶するHDD等の装置から構成され、主に地図情報作成部17によって作成された地図データ18Aを記憶する。なお、地図情報作成部17による地図データ18Aの作成処理の詳細については後述する。
【0037】
図3に示すように、地図データ18Aは、積込場1、放土場2、及び駐機場3の各境界1A〜3Aに対応する地図上の境界18a〜18cと、搬送路4に対応する地図上の搬送路18dとから構成されている。この地図データ18Aの搬送路18dは、搬送路4上の走行経路を定義する各ノード18d1の位置情報(座標値)と、隣接するノード18d1を連結するリンク18d2とを含んでいる。なお、地図データ18Aは、鉱山の地形情報や各ノード18d1の絶対座標(測位電波を基に算出される3次元実座標)を含んでもよい。なお、各ノード18d1及びリンク18d2には、そのノード18d1及びリンク18d2を固有に識別する識別情報が付与される。
【0038】
図2において、作業機械情報蓄積部19は、情報を固定的に記憶するHDD等の装置から構成され、データ収集部20によって収集された油圧ショベル6の位置を表す位置情報(以下、便宜的に位置データと称する)6A、油圧ショベル6の稼働状態を表す稼働情報(以下、便宜的に稼働データと称する)6B、及びダンプトラック7の位置を表す位置情報(以下、便宜的に位置データと称する)7Aを蓄積する。
【0039】
油圧ショベル6の位置データ6Aは、例えば、図4(a)に示すように、取得時刻6A1と、鉱山内の油圧ショベル6毎に予め指定され、油圧ショベル6を識別するための作業機械ID6A2と、取得時刻6A1における油圧ショベル6の位置を緯度X、経度Y、高度Zの座標により表す位置座標6A3とから構成されている。なお、ダンプトラック7の位置データ7Aの構成は、上述した油圧ショベル6の位置データ6Aの構成と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0040】
油圧ショベル6の稼働データ6Bは、例えば、図4(b)に示すように、取得時刻6B1と、鉱山内の油圧ショベル6毎に予め指定され、油圧ショベル6を識別するための作業機械ID6B2と、取得時刻6B1において油圧ショベル6が行っている作業の状態を記録したカラムである稼働状態6B3とから構成されている。このように、油圧ショベル6の位置データ6A及び稼働データ6Bは、取得時刻6A1,6B1によって互いに関連付けられている。
【0041】
データ収集部20は、管制制御部16が通信部23を介して受信した情報の中から油圧ショベル6の位置データ6A、稼働データ6B、及びダンプトラック7の位置データ7Aを収集する。稼働域演算処理部21は、作業機械情報蓄積部19に蓄積されたデータ6A,6B,7Aのうち油圧ショベル6の位置データ6A及び稼働データ6Bに基づいて、油圧ショベル6の稼働域を演算する稼働域演算部として機能し、地図情報更新部22が地図データ18Aの更新処理を開始するまでの所定の処理を行う。
【0042】
地図情報更新部22は、地図情報記憶部18に記憶された地図データ18Aに対して、稼働域演算処理部21によって演算された油圧ショベル6の稼働域を照合することにより、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aを修正して地図データ18Aを更新する。
【0043】
具体的には、地図情報更新部22は、稼働域演算処理部21によって演算された油圧ショベル6の稼働域が地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置するとき、積込場1の領域が縮小するように地図データ18Aにおける積込場1の境界18aを修正し、稼働域演算処理部21によって演算された油圧ショベル6の稼働域が地図データ18Aにおける積込場1の境界18a上及び境界18aの外側に位置するとき、積込場1の領域が拡大するように地図データ18Aにおける積込場1の境界18aを修正する境界修正部22Aを含んでいる。
【0044】
通信部23は、外部のダンプトラック7及び管制センタシステム10との間で無線通信回線8を介して互いに通信接続を行うものである。
【0045】
油圧ショベル6は、通信部25、測位部26、センサ部27、制御部28、データ収集部29、及び作業機械情報蓄積部30を備えている。なお、通信部25は、前述した管制センタシステム10の通信部23の構成と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0046】
測位部26は、図示されないが、GNSSの航法衛星から測位電波を受信して自己の位置を取得する。本発明の第1実施形態では、測位部26は、油圧ショベル6の位置として、例えば、バケットの位置を取得する。
【0047】
具体的には、測位部26は、図示されないが、車体の所定の位置に取付けられたGPS受信機と、フロント作業機の姿勢を検出する姿勢検出部とを含み、GPS受信機が取得した位置、姿勢検出部によって検出された姿勢、及びフロント作業機の寸法情報に基づいて、バケットの位置を演算する。なお、姿勢検出部は、例えば、ブーム、アーム、及びバケットの角度をそれぞれ検出する角度センサから構成されている。また、測位部26によるバケットの位置の演算は、上述した場合に限らず、例えば、GPS受信機をバケットに直接取付けることにより実行してもよい。
【0048】
センサ部27は、例えば、車体の周囲の障害物を検出するためのミリ波レーダやカメラ等のセンサから構成され、このセンサの検出結果は運転室内のモニタ(図示せず)に表示される。これにより、運転室内のオペレータは、モニタの表示を確認することにより、車体の周囲の障害物を容易に把握することができる。
【0049】
制御部28は、油圧ショベル6の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU等の演算・制御装置の他、油圧ショベル6で実行されるプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、また、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAMを含むハードウェアを用いて構成されている。
【0050】
データ収集部29は、例えば、測位部26によって取得されたバケットの位置を所定の時間間隔毎に位置データ6Aとして収集すると共に、油圧ショベル6の稼働データ6Bを収集する。この稼働データ6Bの収集の具体例として、データ収集部29は、油圧ショベル6に対するオペレータの指示情報を記録することにより、油圧ショベル6の積込位置の設定を行う状態(図4(b)参照)、及び油圧ショベル6の積込作業が終了した状態(図4(b)参照)等の情報を収集する。
【0051】
また、データ収集部29は、油圧ショベル6の稼働状況をモニタする測位部26の姿勢検出部の検出結果を記録することにより、旋回体が旋回している状態(図4(b)参照)、及びバケットを上方へ回動させている状態(図4(b)参照)等の情報を収集する。なお、データ収集部29による稼働データ6Bの収集は、上述した場合に限らず、オペレータの操作情報を記録することにより行ってもよい。
【0052】
作業機械情報蓄積部30は、情報を固定的に記憶するHDD等の装置から構成され、データ収集部29によって収集された位置データ6A及び稼働データ6Bを蓄積する。また、作業機械情報蓄積部30に蓄積された位置データ6Aは、所定の時間間隔毎に通信部25を介して管制センタシステム10へ送信される。
【0053】
ダンプトラック7は、通信部35、測位部36、センサ部37、制御部38、データ収集部39、地図情報記憶部40、及び作業機械情報蓄積部41を備えている。なお、通信部25は、前述した管制センタシステム10の通信部23の構成と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0054】
測位部36は、図示されないが、GNSSの航法衛星から測位電波を受信して自己の位置を取得する。本発明の第1実施形態では、測位部36は、例えば、車両の所定の位置に取付けられたGPS受信機から構成され、このGPS受信機によってダンプトラック7の位置を取得する。
【0055】
センサ部37は、例えば、車両の走行方向(進行方向)前方の障害物を検出するためのミリ波レーダやカメラ等のセンサと、路肩検出を行うためのライダ等のセンサとを含んでいる。これらのセンサの検出結果は制御部38に出力され、通常時は走行経路から離脱しないように走行位置の監視や加減速に用いられ、緊急時には緊急回避行動に必要な制動動作に用いられる。
【0056】
制御部38は、ダンプトラック7の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU等の演算・制御装置の他、ダンプトラック7で実行されるプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、また、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAMを含むハードウェアを用いて構成されている。
【0057】
データ収集部39は、例えば、測位部36が取得したダンプトラック7の位置を所定の時間間隔毎に位置データ7Aとして収集する。地図情報記憶部40は、情報を固定的に記憶するHDD等の装置から構成され、管制センタシステム10から受信した地図データ18Aを記憶する。
【0058】
作業機械情報蓄積部41は、情報を固定的に記憶するHDD等の装置から構成され、データ収集部39によって収集された位置データ7Aを蓄積する。また、作業機械情報蓄積部41に蓄積された位置データ7Aは、所定の時間間隔毎に通信部35を介して管制センタシステム10へ送信され、地図データ18Aの元となる軌跡情報として、地図情報作成部17による地図データ18Aの作成に利用される。
【0059】
次に、管制センタシステム10の地図情報作成部17による地図データ18Aの作成処理について、図5を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
図5に示すように、まず、地図情報作成部17は、通信部23を介して航測車両12又はダンプトラック7から受信した軌跡情報を読込む((ステップ(以下、Sと記す)501)。次に、地図情報作成部17は、航測車両12又はダンプトラック7の走行軌跡から積込場1、放土場2、及び駐機場3の各境界18a〜18cを抽出することにより、境界情報を生成する(S502)。
【0061】
そして、地図情報作成部17は、航測車両12又はダンプトラック7の軌跡情報に基づいて、ノード情報を生成する(S503)。具体的には、地図情報作成部17は、地図データ18Aにおける地図上の搬送路18dを作成する場合には、例えば、所定の時間間隔又は所定の距離間隔毎に、軌跡情報に含まれる航測車両12又はダンプトラック7の位置を位置データとして抽出し、その位置データをノード18d1の位置情報として設定する。そして、地図情報作成部17は、各ノード18d1を固有に識別する識別情報としてのIDを付与することにより、ノード情報を生成する。
【0062】
一方、地図情報作成部17は、地図データ18Aにおける積込場1、放土場2、及び駐機場3の各境界18a〜18c内の走行経路を作成する場合には、例えば、所定の手段を用いて積込場1、放土場2、及び駐機場3の各入口から油圧ショベル6の積込位置、ダンプトラック7の放土位置、及びダンプトラック7の停車位置までの走行経路を生成することにより、所定の距離間隔毎にノード(図示せず)の位置情報を設定してノード情報を生成する。
【0063】
次に、地図情報作成部17は、隣接するノード18d1を接続するリンク18d2の接続関係を示すリンク情報を生成する(S504)。具体的には、地図情報作成部17は、航測車両12又はダンプトラック7の軌跡情報に含まれる取得時刻に基づいて、取得時刻が近い2つのノード18d1を接続することによりリンク情報を生成する。このとき、取得時刻の差がある閾値内で近接する2つのノードは、同一のノードとみなす処理を行うことにより、交差点等の分岐がある道路構造をリンク18d2の接続関係によって表現することができる。
【0064】
このように、地図情報作成部17は、境界情報、ノード情報、及びリンク情報を生成して地図データ18Aを作成すると、作成した地図データ18Aを、通信部23を介してダンプトラック7へ送信し(S505)、地図情報作成部17による地図データ18Aの作成処理を終了する。
【0065】
次に、管制センタシステム10、油圧ショベル6、及びダンプトラック7の各動作について、図6を参照しながら詳細に説明する。特に、管制センタシステム10の管制制御部16、油圧ショベル6の制御部28、及びダンプトラック7の制御部38の間で行われる情報の伝達を中心として説明する。
【0066】
図6に示すように、まず油圧ショベル6の制御部28は、油圧ショベル6の積込位置の設定を行う(S601)。具体的には、制御部28は、油圧ショベル6の運転室内のオペレータによる操作を起点に、測位部26が取得したバケットの位置を積込位置に設定して積込位置情報を管制センタシステム10へ送信する。
【0067】
次に、管制センタシステム10の管制制御部16は、油圧ショベル6から受信した積込位置情報に基づいて、ダンプトラック7の目的地を決定する(S602)。その後、管制制御部16は、S602において決定した目的地までのダンプトラック7の走行経路を設定する(S603)。
【0068】
具体的には、管制制御部16は、ダンプトラック7の出発地から積込場1の入口までの走行経路として、地図情報記憶部18に記憶された地図データ18Aにおける搬送路18dのノード18d1の点列を指定することにより設定する。さらに、管制制御部16は、積込場1の入口からS602において決定した目的地、すなわち油圧ショベル6の積込位置までの走行経路として、ノード18d1の点列を動的に生成することにより設定する。
【0069】
次に、管制制御部16は、S603において設定した走行経路に基づいて、ダンプトラック7同士が干渉しないように、当該走行経路内においてダンプトラック7の走行可能な区間(以下、便宜的に走行許可区間と称する)を設定する(S604)。そして、管制制御部16は、通信部23を介してダンプトラック7の走行経路及び走行許可区間をダンプトラック7へ送信する。
【0070】
次に、ダンプトラック7の制御部38は、測位部36及びセンサ部37によって自車両の位置及び周辺の環境を認識し、管制制御部16から受信した走行経路及び走行許可区間を走行するようにダンプトラック7の動作を制御する。これにより、ダンプトラック7が出発地から目的地へ向かって往路側の走行経路を走行する(S605)。そして、ダンプトラック7が目的地である油圧ショベル6の積込位置に到着すると(S606)、制御部38は、ダンプトラック7が積込位置に到着した旨の到着通知を、通信部35を介して管制センタシステム10へ送信する。
【0071】
一方、油圧ショベル6の運転室内のオペレータが目視によりダンプトラック7の積込位置への到着を確認すると、油圧ショベル6は、オペレータの操作に従ってダンプトラック7への積込作業を開始する(S607)。そして、ダンプトラック7への積込作業が終了すると(S608)、制御部28は、積込作業が終了した旨の積込作業の終了通知を、通信部25を介して管制センタシステム10へ送信する。
【0072】
管制センタシステム10の管制制御部16は、積込作業の終了通知を受信すると、通信部23を介して油圧ショベル6の積込位置から次の目的地までの走行経路及び走行許可区間をダンプトラック7へ送信する。
【0073】
そして、ダンプトラック7の制御部38は、測位部36及びセンサ部37によって自車両の位置及び周辺の環境を認識し、管制制御部16から受信した走行経路及び走行許可区間を走行するようにダンプトラック7の動作を制御する。これにより、ダンプトラック7が油圧ショベル6の積込位置から次の目的地へ向かって復路側の走行経路を走行する(S609)。
【0074】
一方、油圧ショベル6の制御部28は、S601において設定した積込位置の設定を解除する(S610)。次に、制御部28は、作業機械情報蓄積部30に蓄積された油圧ショベル6の位置データ6Aを送信すると(S611)、この位置データ6Aは管制センタシステム10の作業機械情報蓄積部19に蓄積される。そして、制御部28は、作業機械情報蓄積部30に蓄積された油圧ショベル6の稼働データ6Bを送信すると(S612)、この稼働データ6Bは管制センタシステム10の作業機械情報蓄積部19に蓄積される。
【0075】
次に、管制センタシステム10の稼働域演算処理部21による油圧ショベル6の稼働域の演算処理について、図7図8を参照しながら詳細に説明する。
【0076】
図7に示すように、稼働域演算処理部21は、作業機械情報蓄積部19に蓄積された油圧ショベル6の稼働データ6Bを読込み(S701)、作業機械情報蓄積部19に蓄積された油圧ショベル6の位置データ6Aを読込む(S702)。次に、稼働域演算処理部21は、稼働データ6Bのうち油圧ショベル6の所定の稼働状態、及び位置データ6Aのうち当該所定の稼働状態に関連付けられた油圧ショベル6の位置から油圧ショベル6の稼働域を演算する。
【0077】
すなわち、位置データ6A及び稼働データ6Bは取得時刻6A1,6B1により関連付けられているので、稼働域演算処理部21は、稼働データ6Bに含まれる取得時刻6B1をキーにして、図8に示すように、取得時刻6B1と同じ取得時刻6A1から所定の時間間隔の範囲内に存在する油圧ショベル6の位置データ6Aの位置座標6A3を検索することにより、油圧ショベル6の稼働域を演算する(S703)。
【0078】
具体的には、稼働域演算処理部21は、例えば、油圧ショベル6の積込作業が終了した旨が通知された時刻から所定の時間間隔の範囲内に存在する油圧ショベル6の位置データ6Aの位置座標6A3を検索することにより、油圧ショベル6の所定の稼働状態として、油圧ショベル6の積込作業が終了する時刻付近の状態における油圧ショベル6の稼働域を迅速に求めることができる。
【0079】
次に、稼働域演算処理部21は、S703において演算した油圧ショベル6の稼働域の所定の基準点として、例えば、S703において検索した位置座標6A3の重心位置Gを演算して求める(S704)。そして、稼働域演算処理部21は、S704において求めた重心位置Gと、地図情報記憶部18に記憶された地図データ18Aにおける積込場1の境界18aのうち、当該重心位置Gに最も近接する点P(以下、便宜的に最近接点と称する)との距離Lが所定の閾値以上であるかどうかを判定する(S705)。
【0080】
このとき、稼働域演算処理部21は、S704において求めた重心位置Gと、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの最近接点Pとの距離Lが所定の閾値未満であると判定すると(S705/No)、稼働域演算処理部21による油圧ショベル6の稼働域の演算処理を終了する。一方、S705において、稼働域演算処理部21は、S704において求めた重心位置Gと、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの最近接点Pとの距離Lが所定の閾値以上であると判定すると(S705/Yes)、地図情報更新部22による地図データ18Aの更新処理へ進み(S706)、稼働域演算処理部21による油圧ショベル6の稼働域の演算処理を終了する。
【0081】
次に、管制センタシステム10の地図情報更新部22による地図データ18Aの更新処理について、図9図10を参照しながら詳細に説明する。
【0082】
図9に示すように、地図情報更新部22は、S703において稼働域演算処理部21が検索した位置座標6A3の外接矩形F(図10参照)を設定する(S901)。次に、地図情報更新部22は、S704において稼働域演算処理部21が求めた重心位置Gが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置しているかどうかを判定する(S902)。
【0083】
このとき、地図情報更新部22は、S704において稼働域演算処理部21が求めた重心位置Gが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置していると判定すると(S902/Yes)、S901において設定した外接矩形Fの端点p(図10参照)が地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置しているかどうかを判定する(S903)。
【0084】
S903において、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの端点pが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置していないと判定すると(S903/No)、後述のS905の処理が行われる。一方、S903において、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの端点pが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置していると判定すると(S903/Yes)、地図情報更新部22の境界修正部22Aは、地図データ18Aの積込場1の境界18aを形成する点として、当該端点pを仮の地図データ18Aに追加する(S904)。
【0085】
そして、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの全ての端点pについて、S903の判定を行ったかどうかを確認する(S905)。このとき、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの全ての端点pについて、S903の判定をまだ行っていないことを確認すると(S905/No)、S903からの処理が繰り返される。
【0086】
S905において、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの全ての端点pについて、S903の判定を行ったことを確認すると(S905/Yes)、境界修正部22Aは、S904において仮の地図データ18Aに追加した外接矩形Fの端点pを通るように、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aを修正して地図データ18Aを更新する(S906)。これにより、図10(a)に示すように、地図データ18Aにおける積込場1の領域が縮小する。
【0087】
一方、S902において、地図情報更新部22は、S704において稼働域演算処理部21が求めた重心位置Gが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置していない、すなわち重心位置Gが地図データ18Aにおける積込場1の境界18a上及び境界18aの外側に位置していると判定すると(S902/No)、S901において設定した外接矩形Fの端点pが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの外側に位置しているかどうかを判定する(S907)。
【0088】
S907において、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの端点pが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの外側に位置していないと判定すると(S907/No)、後述のS909の処理が行われる。一方、S907において、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの端点pが地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの外側に位置していると判定すると(S907/Yes)、地図情報更新部22の境界修正部22Aは、地図データ18Aの積込場1の境界18aを形成する点として、当該端点pを仮の地図データ18Aに追加する(S908)。
【0089】
そして、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの全ての端点pについて、S907の判定を行ったかどうかを確認する(S909)。このとき、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの全ての端点pについて、S907の判定をまだ行っていないことを確認すると(S909/No)、S907からの処理が繰り返される。
【0090】
S909において、地図情報更新部22は、S901において設定した外接矩形Fの全ての端点pについて、S907の判定を行ったことを確認すると(S909/Yes)、積込場1の境界1Aを確認させる確認指令を、例えば、通信部23を介して鉱山内における有人の作業車両11へ送信する。作業車両11は、管制センタシステム10から確認指令を受信すると、運転室内のオペレータが目視により確認作業を行った後、その確認作業が終了した旨の確認作業の終了通知を管制センタシステム10へ送信する。
【0091】
これにより、地図情報更新部22が地図データ18Aにおける積込場1の領域を拡大させる更新を行う前に、ダンプトラック7が一度も走行していない領域を実際に確認しない状態でダンプトラック7を自律走行させるのを回避することができる。従って、鉱山内で自律走行するダンプトラック7の安全性を十分に高めることができる。なお、上述した確認指令の送信は、管制センタシステム10から作業車両11へ自動的に配信したり、あるいは管制センタシステム10内のオペレータが作業車両11に対して通話することにより行ってもよい。また、管制センタシステム10からの上記確認指令の送信は、作業車両11以外の油圧ショベル6等の有人の作業機械に対して行ってもよい。さらに、上述したS910及びS911の処理は省略してもよい。
【0092】
次に、地図情報更新部22は、作業車両11からの確認作業の終了通知の有無に応じて、作業車両11による確認作業が終了しているかどうかを判定する(S911)。このとき、地図情報更新部22は、作業車両11からの確認作業の終了通知を受信し、作業車両による確認作業が終了していると判定すると(S911/Yes)、境界修正部22Aは、S908において仮の地図データ18Aに追加した外接矩形Fの端点pを通るように、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aを修正して地図データ18Aを更新する(S906)。これにより、図10(b)に示すように、地図データ18Aにおける積込場1の領域が拡大する。
【0093】
一方、S911において、地図情報更新部22は、例えば、作業車両11からの確認作業の終了通知を所定の時間内に受信せず、作業車両11による確認作業が終了していないと判定すると(S911/Yes)、地図データ18Aの更新を行うことなく、地図情報更新部22による地図データ18Aの更新処理を終了する。
【0094】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、地図情報更新部22は、地図情報記憶部18Aに記憶された地図データ18Aに対して、稼働域演算処理部21によって演算された油圧ショベル6の稼働域を照合することにより、地図データ18Aを更新する際に油圧ショベル6の稼働状態が考慮されているので、油圧ショベル6の稼働状態に応じて変化する地図データ18A上の境界18aを適切に修正することができる。これにより、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの抽出精度を向上させることができるので、鉱山内において行われる油圧ショベル6及びダンプトラック7の作業の安全性を高めることができる。
【0095】
また、本発明の第1実施形態では、地図情報更新部22は、稼働域演算処理部21によって演算された油圧ショベル6の稼働域の所定の基準点、すなわち油圧ショベル6の所定の稼働状態における位置データ6Aの位置座標6A3の重心位置Gと、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aとの位置関係に応じて、地図データ18Aにおける積込場1の領域を縮小させたり、あるいは拡大させることができる。これにより、油圧ショベル6の稼働状態を地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの修正に十分に反映させることができる。
【0096】
従って、油圧ショベル6が積込場1内で積込作業等を行っている場合には、地図情報更新部22によって地図データ18Aにおける積込場1の領域が縮小することにより、ダンプトラック7が積込場1の走行経路に沿って自律走行しても、積込場1内の油圧ショベル6に接触することを確実に防止することができる。一方、油圧ショベル6が積込場1の境界1Aを越えて鉱物や表土層を掘削している場合には、地図情報更新部22によって地図データ18Aにおける積込場1の領域が拡大することにより、油圧ショベル6の掘削作業が終了した後にダンプトラック7が積込場1の領域のうち拡大した場所を走行できるようになるので、積込場1におけるダンプトラック7の走行経路を増加させることができる。これにより、ダンプトラック7の積荷の運搬作業を効率良く行うことができる。
【0097】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、前述した第1実施形態の構成に加え、例えば、稼働域演算処理部21は、さらに作業機械情報蓄積部19に蓄積された位置データ7Aのうち所定の稼働状態に関連付けられたダンプトラック7の位置からダンプトラック7の稼働域を演算し、地図情報更新部22は、地図情報記憶部18に記憶された地図データ18Aに対して、稼働域演算処理部21によって演算された油圧ショベル6及びダンプトラック7の稼働域を照合することにより、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aを修正して地図データ18Aを更新するようにしている。その他の第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであり、同一又は対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0098】
次に、本発明の第2実施形態に係る管制センタシステム10、油圧ショベル6、及びダンプトラック7の各動作について、図11を参照しながら詳細に説明する。
【0099】
図11に示すように、本発明の第2実施形態に係る管制センタシステム10、油圧ショベル6、及びダンプトラック7の動作については、上述した図6に示すS601〜S612の動作と基本的に同じであるが、S609の動作の後にS1101の動作が行われる。具体的には、S609において、ダンプトラック7が油圧ショベル6の積込位置から次の目的地へ向かって復路側の走行経路を走行し、次の目的地に到着すると、S1101において、ダンプトラック7の制御部38は、作業機械情報蓄積部41に蓄積されたダンプトラック7の位置データ7Aを、通信部35を介して管制センタシステム10へ送信する。
【0100】
次に、本発明の第2実施形態に係る管制センタシステム10の稼働域演算処理部21による油圧ショベル6及びダンプトラック7の稼働域の演算処理について、図12図13を参照しながら詳細に説明する。
【0101】
図12に示すように、本発明の第2実施形態に係る管制センタシステム10の稼働域演算処理部21による油圧ショベル6の稼働域の演算処理については、上述した図7に示すS701〜S706の動作と基本的に同じであるが、S703〜S705の処理の代わりに、S1201〜S1204の処理が行われる。
【0102】
具体的には、S702の処理が行われた後、稼働域演算処理部21は、作業機械情報蓄積部19に蓄積されたダンプトラック7の位置データ7Aを読込む(S1201)。そして、稼働域演算処理部21は、作業機械情報蓄積部19に蓄積された油圧ショベル6の稼働データ6Bに含まれる取得時刻6B1をキーにして、図13に示すように、取得時刻6B1と同じ取得時刻6A1から所定の時間間隔の範囲内に存在する油圧ショベル6の位置データ6Aの位置座標6A3及びダンプトラック7の位置データ7Aの位置座標7A3を検索することにより、油圧ショベル6及びダンプトラック7の稼働域を演算する(S1202)。
【0103】
次に、稼働域演算処理部21は、S1202において演算した油圧ショベル6の稼働域の所定の基準点として、例えば、S1202において検索した位置座標6A3の重心位置G1及びダンプトラック7の位置データ7Aの位置座標7A3の重心位置G2を演算し、これらの重心位置G1,G2を平均した平均位置GAを求める(S1203)。そして、稼働域演算処理部21は、S1203において求めた平均位置GAと、地図情報記憶部18に記憶された地図データ18Aにおける積込場1の境界18aのうち、当該平均位置GAに最も近接する点(以下、便宜的に最近接点と称する)PAとの距離LAが所定の閾値以上であるかどうかを判定する(S1204)。
【0104】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる他、地図データ18Aの更新処理において、油圧ショベル6の稼働域だけでなく、ダンプトラック7の稼働域についても考慮されているので、地図情報更新部22は、稼働域演算処理部21によって演算された油圧ショベル6の稼働域の所定の基準点が地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの内側に位置しているかどうかの判定を精度良く行うことができる。これにより、地図データ18Aにおける積込場1の境界18aの抽出に対してダンプトラック7の動きを考慮した優れた精度を得ることができる。
【0105】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態に係る地図情報更新部22は、地図情報記憶部18に記憶された地図データ18Aにおける積込場1の境界18aを修正して地図データ18aを更新したのに対して、第3実施形態に係る地図情報更新部22は、例えば、図14に示すように、地図情報記憶部18に記憶された地図データ18Aに対して、稼働域演算処理部21によって演算されたダンプトラック7の稼働域を照合することにより、地図データ18Aにおける放土場2の境界18b(図3参照)を修正して地図データ18Aを更新するようにしたことである。
【0106】
この場合には、ダンプトラック7のデータ収集部39は、管制センタシステム10の管理システム101からダンプトラック7へ送信される稼働指令として、例えば、駐機場3の管制センタ9内で待機するオペレータのダンプトラック7に対する指示情報や操作情報を記録することにより、ダンプトラック7の稼働データ7Bを収集する。そして、作業機械情報蓄積部41は、ダンプトラック7の位置データ7Aの他に、データ収集部39によって収集されたダンプトラック7の稼働データ7Bを蓄積する。
【0107】
図15に示すように、ダンプトラック7の稼働データ7Bは、上述した図4(b)に示す油圧ショベル6の稼働データ6bの構成と基本的に同じであり、取得時刻7B1、作業機械ID7B2、及び稼働状態7B3から構成されているが、作業機械ID7B2は、鉱山内のダンプトラック7毎に予め指定され、ダンプトラック7を識別するためのものである。また、稼働状態7B3の具体例として、ダンプトラック7が放土位置に到着した状態、荷台(ボディ)を上方へ回動させている状態、荷台を下方へ回動させている状態等が挙げられる。
【0108】
また、本発明の第3実施形態では、図14に示すように、稼働域演算処理部21は、ダンプトラック7による積荷の放土作業の種類に応じて、地図情報更新部22による地図データ18Aの更新を行うかどうかを判定する更新判定部21Aを含んでいる。この場合、更新判定部21Aは、例えば、ダンプトラック7が放土場2の同一地点で積荷の放土を所定の回数行った場合に、地図データ18Aの更新を行い、ダンプトラック7が放土場2の同一地点で積荷の放土を所定の回数行わなかった場合に、地図データ18Aの更新を行わないようにしている。その他の第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであり、同一又は対応する部分には同一の符号を付している。
【0109】
次に、本発明の第3実施形態に係る管制センタシステム10及びダンプトラック7の各動作について、図16を参照しながら詳細に説明する。特に、管制センタシステム10の管制制御部16及びダンプトラック7の制御部38の間で行われる情報の伝達を中心として説明する。なお、図16に示すS1502〜S1504、及びS1508の動作は、上述した図6に示すS603〜S605、及びS609とそれぞれ同様であるので、重複する説明を省略する。
【0110】
図16に示すように、まず管制センタシステム10の管制制御部16は、ダンプトラック7の目的地及びパドックダンピング等の放土作業の種類を決定することにより、放土作業の指示情報を作成する(S1501)。次に、S1502〜S1504の動作が行われた後、ダンプトラック7が目的地である放土位置に到着すると(S1505)、制御部38は、ダンプトラック7が放土位置に到着した旨の到着通知を、通信部35を介して管制センタシステム10へ送信する。
【0111】
次に、ダンプトラック7は、S1501において管制センタシステム10の管制制御部16によって作成された指示情報に従って放土作業を開始する(S1506)。そして、ダンプトラック7の放土作業が終了すると(S1507)、制御部38は、放土作業が終了した旨の放土作業の終了通知を、通信部35を介して管制センタシステム10へ送信する。
【0112】
その後、管制センタシステム10の管制制御部16は、放土作業の終了通知を受信すると、通信部23を介して放土位置から次の目的地までの走行経路及び走行許可区間をダンプトラック7へ送信する。
【0113】
次に、S1508の動作が行われた後、ダンプトラック7の制御部38は、作業機械情報蓄積部41に蓄積されたダンプトラック7の位置データ7Aを送信すると(S1509)、この位置データ7Aは管制センタシステム10の作業機械情報蓄積部19に蓄積される。そして、制御部38は、作業機械情報蓄積部41に蓄積されたダンプトラック7の稼働データ7Bを送信すると(S1510)、この稼働データ7Bは管制センタシステム10の作業機械情報蓄積部19に蓄積される。
【0114】
次に、本発明の第3実施形態に係る管制センタシステム10の稼働域演算処理部21によるダンプトラック7の稼働域の演算処理について、図17図18を参照しながら詳細に説明する。なお、図17に示すS1707及びS1708の処理は、上述した図7に示すS705及びS706の処理とそれぞれ同様であるので、重複する説明を省略する。
【0115】
図17に示すように、稼働域演算処理部21は、作業機械情報蓄積部41に蓄積されたダンプトラック7の稼働データ7Bを読込み(S1701)、作業機械情報蓄積部41に蓄積されたダンプトラック7の位置データ7Aを読込む(S1702)。次に、稼働域演算処理部21は、作業機械情報蓄積部41に蓄積されたダンプトラック7の稼働データ7Bに含まれる取得時刻7B1をキーにして、図18に示すように、取得時刻7B1と同じ取得時刻7A1から所定の時間間隔の範囲内に存在するダンプトラック7の位置データ7Aの位置座標7A3を検索することにより、ダンプトラック7の稼働域を演算する(S1703)。
【0116】
次に、稼働域演算処理部21は、S1703において演算したダンプトラック7の稼働域の所定の基準点として、例えば、S1703において検索した位置座標7A3の重心位置Gを演算して求める(S1704)。そして、稼働域演算処理部21の更新判定部21Aは、放土作業の種類がパドックダンピングであるかどうかを判定する(S1705)。このとき、更新判定部21Aは、放土作業の種類がパドックダンピングでないと判定すると(S1705/NO)、稼働域演算処理部21によるダンプトラック7の稼働域の演算処理を終了する。
【0117】
一方、S1705において、更新判定部21Aは、放土作業の種類がパドックダンピングであると判定すると(S1705/Yes)、ダンプトラック7が放土場2の同一地点で積荷の放土を所定の回数行ったかどうかを判定する(S1706)。なお、この判定は、例えば、管制センタシステム10が同一地点のダンプトラック7からの放土作業の終了通知を受信した回数を計数することにより行われる。
【0118】
S1706において、更新判定部21Aは、ダンプトラック7が放土場2の同一地点で積荷の放土を所定の回数行っていないと判定すると(S1706/No)、地図情報更新部22による地図データ18Aの更新処理を行うことなく、稼働域演算処理部21によるダンプトラック7の稼働域の演算処理を終了する。S1706において、更新判定部21Aは、ダンプトラック7が放土場2の同一地点で積荷の放土を所定の回数行ったと判定すると(S1706/Yes)、S1707及びS1708の処理を行い、稼働域演算処理部21によるダンプトラック7の稼働域の演算処理を終了する。
【0119】
このように構成した本発明の第3実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる他、稼働域演算処理部21の更新判定部21Aは、ダンプトラック7による積荷の放土作業の種類に応じて、地図情報更新部22による地図データ18Aの更新を行うかどうかを判定することにより、積荷の放土作業の種類を判別した上で地図データ18Aの更新処理へ移行することができる。これにより、地図生成装置100における地図データ18Aの生成の効率性を高めることができる。
【0120】
また、本発明の第3実施形態は、更新判定部21Aによって積荷の放土作業の種類がパドックダンピングであると判定された後、ダンプトラック7が放土場2の同一地点で積荷の放土を所定の回数行った場合に限って、地図情報更新部22による地図データ18Aの更新処理を行うことにより、パドックダンピングに伴う変化を考慮しつつ、地図データ18Aに対してダンプトラック7の稼働域を的確に照合することができる。これにより、地図データ18Aにおける放土場2の境界18bの抽出精度を向上させることができる。
【0121】
なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【0122】
また、本発明の第1実施形態では、図9に示すように、S901において、地図情報更新部22は、図7に示すS703において稼働域演算処理部21が検索した位置座標6A3の外接矩形Fを設定し、S904において、地図データ18Aの積込場1の境界18aを形成する点として外接矩形Fの各端点pを仮の地図データ18Aに追加した場合について説明したが、この場合に限るものではない。例えば、地図情報更新部22は、地図データ18Aの積込場1の境界18aを形成する点として、所定の手段により当該位置座標6A3の最も外側の点を結ぶポリゴンデータを仮の地図データ18Aに追加してもよい。
【0123】
また、本発明の第3実施形態では、ダンプトラック7のデータ収集部39は、管制センタシステム10の管理システム101からダンプトラック7へ送信される稼働指令として、駐機場3の管制センタ9内で待機するオペレータのダンプトラック7に対する指示情報や操作情報を記録することにより、ダンプトラック7の稼働データ7Bを収集した場合について説明したが、この場合に限るものではない。
【0124】
例えば、管制センタシステム10のデータ収集部20が、駐機場3の管制センタ9内で待機するオペレータのダンプトラック7に対する指示情報や操作情報を記録することにより、ダンプトラック7の稼働データ7Bを収集する稼働情報収集部として機能し、収集した稼働データ7Bを作業機械情報蓄積部19に蓄積するようにしてもよい。これにより、ダンプトラック7の稼働データ7Bを作業機械情報蓄積部19に効率良く蓄積できるので、管制センタシステム10におけるデータ処理の負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 積込場(作業場)
1A 境界
2 放土場 (作業場)
2A 境界
3 駐機場
3A 境界
6 油圧ショベル(作業機械、積込機)
6A,7A 位置データ(位置情報)
6A1 取得時刻
6A2 作業機械ID
6A3,7A3 位置座標
6B,7B 稼働データ(稼働情報)
6B1,7B1 取得時刻
6B2,7B2 作業機械ID
6B3,7B3 稼働状態
7 ダンプトラック(作業機械、運搬車両)
9 管制センタ
10 管制センタシステム
11 作業車両
16 管制制御部
17 地図情報作成部
18 地図情報記憶部
18A 地図データ(走行可能地図情報)
18a〜18c 境界
19 作業機械情報蓄積部
20 データ収集部(稼働情報収集部)
21 稼働域演算処理部(稼働域演算部)
21A 更新判定部
22 地図情報更新部
22A 境界修正部
26 測位部
27 センサ部
28 制御部
29 データ収集部
30 作業機械情報蓄積部
36 測位部
37 センサ部
38 制御部
39 データ収集部
40 地図情報記憶部
41 作業機械情報蓄積部
100 地図生成装置
101 管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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