(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1拡散層の端部は、前記第1ゲート絶縁膜と前記第2ゲート絶縁膜との境界に接して設けられるか、あるいは、前記第2ゲート絶縁膜に接して設けられる、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記第1拡散層の端部は、前記第1ゲート絶縁膜と前記第2ゲート絶縁膜の境界に接して設けられるか、あるいは、前記第2ゲート絶縁膜に接して設けられる、請求項7または請求項8に記載の半導体集積回路装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、本実施形態によるアンテナスイッチング装置1およびその周辺の構成例を示すブロック図である。アンテナスイッチング装置1は、スイッチング部SWと、制御部CNTと、インタフェース部INTとを備えている。尚、アンテナスイッチング装置1は、1つの半導体チップとしてSOI(Silicon On Insulator)基板上に設けられた半導体集積回路装置でよい。
【0012】
インタフェース部INTは、制御信号Scntを生成するために用いられるシリアルデータを入力端子から入力し、そのシリアルデータをパラレルデータ(スイッチング信号)に変換する。このために、インタフェース部INTは、シリアル・パラレル変換回路を有し、高集積化された高速動作可能なデジタルLSI(Large Scale Integration)で構成されている。従って、インタフェース部INTに用いられるMISFETは、高集積化のために非常に小さいサイズ(チャネル長、チャネル幅)を有する。また、高集積化のためにMISFETのボディは基準電圧源に接続されていない。
【0013】
制御部CNTは、インタフェース部INTからパラレルデータ(スイッチング信号)を受け取り、このパラレルデータの電圧を所定電圧へ変換して制御信号Scntを生成し出力する。制御信号Scntは、スイッチング部SWのスイッチング素子をオン/オフ制御するために用いられる信号である。このため、制御部CNTは、パラレルデータの電圧を、スイッチング素子をオンさせるために充分に高い電圧へ昇圧し、制御信号Scntを生成する。従って、制御部CNTに用いられるMISFETは、パラレルデータを制御信号Scntへ昇圧できるように、充分に高い耐圧を有する必要がある。高耐圧を得るためにMISFETはボディ電極を有し、ボディ電極は基準電圧源(例えば、ソース電位、グランド)に接続されている。
【0014】
スイッチング部SWは、本実施形態においては、SPnT(Single Pole n Through(n=1、2、3・・・))型のアンテナスイッチング回路である。尚、
図1では、スイッチング部SWは、3つのスイッチング素子のみ示しているが、以下のようにn個のスイッチング素子を有し、n種類の高周波信号をスイッチングしてもよい。
【0015】
スイッチング部SWは、入出力ポートPと、入出力ポートPに接続されたスイッチング素子T1〜Tnとを備える。即ち、スイッチング素子T1〜Tnは、それぞれ1つのアンテナポートPとn個のRF信号ポートの間に接続されている。スイッチング素子T1〜Tnは、MISFETで構成されている。高耐圧を得るためにMISFETのボディ電極は基準電圧源(例えば、ソース電位、グランド)に接続されている。尚、シャントスイッチが各スイッチング素子T1〜Tnの一端と基準電圧源との間に設けられているが、ここでは、シャントスイッチの図示を省略している。
【0016】
スイッチング素子T1〜Tnは、高周波信号Srf1〜Srfnおよび制御信号Scntを入力する。スイッチング素子T1〜Tnは、制御信号Scntに基づいてオン/オフ制御され、高周波信号Srf1〜SrfnをアンテナANTへ接続しあるいは遮断する。例えば、スイッチング素子T1がオン状態になり、スイッチング素子T2〜Tnがオフ状態である場合、スイッチング素子T1は高周波信号Srf1をアンテナANTへ接続し、スイッチング素子T2〜Tnは高周波信号Srf2〜Srfnを遮断する。スイッチング素子T2がオン状態になり、スイッチング素子T1、T3〜Tnがオフ状態である場合、スイッチング素子T2は高周波信号Srf2をアンテナANTへ接続し、スイッチング素子T1、T3〜Tnは高周波信号Srf1およびSrf3〜Srfnを遮断する。以下同様である。このように、スイッチング部SWは、制御信号Scntに基づいて高周波信号Srf1〜SrfnをアンテナANTへ選択的に接続することができる。スイッチング素子T1〜Tnは、それぞれ送信または受信のいずれに用いてもよい。送信に用いられる場合、スイッチング素子T1〜Tnは、送信パワーアンプPAから高周波信号Srf1〜Srfnを受けて、その高周波信号Srf1〜SrfnをアンテナANTへ送る。受信に用いられる場合、スイッチング素子T1〜Tnは、アンテナANTから高周波信号Srf1〜Srfnを受けて、その高周波信号Srf1〜Srfnを受信アンプLNAへ送る。スイッチング素子T1〜Tnに用いられるMISFETの構成については後述する。
【0017】
送信パワーアンプPAは、高周波信号の電力を所望の電力へ増幅してアンテナスイッチング装置1へ出力する。受信アンプLNA(Low Noise Amplifier)は、アンテナANTで受信した高周波信号の電力を増幅する。
【0018】
高周波信号Srf1〜Srfnは、それぞれ異なる通信方式(例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)、GSM(Global System for Mobile)(登録商標)等)に用いられる高周波信号でよい。
【0019】
次に、スイッチング部SWに用いられるスイッチング素子T1〜Tnの構成を説明する。
【0020】
図2は、本実施形態によるスイッチング素子T1を構成するトランジスタの一例を示す断面図である。尚、スイッチング素子T2〜Tnの構成は、スイッチング素子T1と同じ構成でよいので、スイッチング素子T2〜Tnについての説明は省略する。
【0021】
スイッチング素子T1は、半導体層30と、ドレイン層Dと、ソース層Sと、エクステンション層EXTd、EXTsと、ゲート絶縁膜41、42d、42sと、ゲート電極Gと、側壁絶縁膜43と、スペーサ50とを備えている。
【0022】
スイッチング素子T1は、例えば、SOI基板またはSOS(Silicon On Sapphire)基板上に設けられたN型MISFETである。尚、本実施形態では、スイッチング素子T1は、一例としてSOI基板上に設けられているものとする。SOI基板は、支持基板10と、BOX(Buried Oxide)層20と、SOI層30とを備えている。スイッチング素子T1は、半導体層としてのSOI層30に形成されている。
【0023】
SOI層30は、例えば、単結晶シリコン等であり、P型不純物を含む半導体層である。
【0024】
第1拡散層としてのエクステンション層EXTdは、SOI層30内に設けられたN型不純物拡散層である。エクステンション層EXTdは、ゲート電極Gのドレイン側のSOI層30に設けられており、ドレイン層Dに隣接している。エクステンション層EXTdは、SOI層30の表面領域に設けられており、SOI層30の底部までは設けられていない。しかし、エクステンション層EXTdは、オン抵抗を低下させるために、或る程度深く形成されていても構わない。
【0025】
第2拡散層としてのエクステンション層EXTsは、SOI層30内に設けられたN型不純物拡散層である。エクステンション層EXTsは、ゲート電極Gのソース側のSOI層30に設けられており、ソース層Sに隣接している。エクステンション層EXTsは、SOI層30の表面領域に設けられており、SOI層30の底部までは設けられていない。しかし、エクステンション層EXTsは、オン抵抗を低下させるために、或る程度深く形成されていても構わない。
【0026】
尚、エクステンション層EXTd、EXTsを深くすると短チャネル効果が発生することが懸念される。しかし、高周波信号のスイッチングに用いられるスイッチング素子T1は、通常、線型領域で動作するため、飽和領域で動作するデジタル回路に用いられるトランジスタと比較して、短チャネル効果が問題とならない。
【0027】
第3拡散層としてのドレイン層Dは、エクステンション層EXTdに隣接しており、エクステンション層EXTd、EXTsと同様にN型不純物拡散層である。ドレイン層Dは、SOI層30の表面から底面まで設けられている。
【0028】
第4拡散層としてのソース層Sは、エクステンション層EXTsに隣接しており、エクステンション層EXTs、EXTdおよびドレイン層Dと同様にN型不純物拡散層である。ソース層Sは、SOI層30の表面から底面まで設けられている。
【0029】
ドレイン層Dおよびソース層SがSOI層30の表面から底面まで設けられていることによって、ドレイン層D、ソース層Sから延びる空乏層を制限し、オフ容量を低減させることができる。スイッチング素子T1のオフ容量を低減することによって、スイッチング素子T1は、オフ状態のときに高周波信号に対するインピーダンスを上昇させ、より確実に高周波信号の通過を抑制することができる。
【0030】
エクステンション層EXTdとエクステンション層EXTsとの間のSOI層30(ボディ部分)の表面にはスイッチング素子のチャネル領域CHが形成される。また、スイッチング素子T1のボディ部分は、高耐圧を得るために基準電圧源(例えば、ソース電位、グランド)に接続されている。
【0031】
第1ゲート絶縁膜41および第2ゲート絶縁膜42d、42sは、エクステンション層EXTdとエクステンション層EXTsとの間のSOI層30上に設けられている。第1ゲート絶縁膜41および第2ゲート絶縁膜42d、42sは、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン酸化膜よりも比誘電率の高い絶縁膜でよい。
【0032】
ゲート電極Gは、第1ゲート絶縁膜41および第2ゲート絶縁膜42d、42s上に設けられている。ゲート電極Gは、例えば、ドープトポリシリコン等である。
【0033】
ここで、第1ゲート絶縁膜41は、ゲート電極Gの中心部とSOI層30との間に設けられている。第2ゲート絶縁膜42d、42sは、ゲート電極Gの端部とSOI層30との間に設けられている。第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚は、第1ゲート絶縁膜41の膜厚よりも厚い。第2ゲート絶縁膜42d、42sは、バーズビーク状の形状を有し、第2ゲート絶縁膜42d、42sの厚みは、ゲート電極Gの両側から第1ゲート絶縁膜41へ向かって薄くなっている。例えば、スイッチング素子T1のゲート長が約100nm〜300nmであり、SOI層30の膜厚が約200nmである場合、第1ゲート絶縁膜41の膜厚(EOT(Equivalent Oxide Thickness))は、約6nm以下であり、第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚(EOT)は、約6nm〜12nmである。
【0034】
さらに、ドレイン側のエクステンション層EXTdの端部Eextdは、ゲート電極Gの下方にあり、かつ、第2ゲート絶縁膜42dの下方にある。即ち、半導体層30の上方から見たときに、エクステンション層EXTdは、ゲート電極Gと重複しているものの、ゲート電極Gの中心部まで延伸しておらず、ゲート電極Gの端部に重複している。従って、エクステンション層EXTdの端部Eextdは、第1ゲート絶縁膜41と第2ゲート絶縁膜42dとの境界よりもドレイン側にあり、かつ、ゲート電極端よりもソース側にある。従って、エクステンション層EXTdの端部Eextdは、第2ゲート絶縁膜42dに接して設けられる。端部Eextdは、第1ゲート絶縁膜41と第2ゲート絶縁膜42dとの境界直下にあってもよい。即ち、端部Eextdは、第1ゲート絶縁膜41と第2ゲート絶縁膜42dとの境界に接するように設けられていてもよい。スイッチング素子T1のゲート長方向において、エクステンション層EXTdのゲート電極Gの端部直下に対応する位置からエクステンション層EXTdの端部Eextdまでの長さ(
図5のLov)は、第2ゲート絶縁膜42dの長さ(
図5のLbp)以下である。
【0035】
このように、本実施形態において、第2ゲート絶縁膜42dの膜厚は、第1ゲート絶縁膜41の膜厚よりも厚く、かつ、エクステンション層EXTdの端部Eextdは第2ゲート絶縁膜42dの下にある。
【0036】
もし、第2ゲート絶縁膜42dが第1ゲート絶縁膜41とほぼ等しい膜厚を有し、あるいは、エクステンション層EXTdがゲート電極Gの中心部(第1ゲート絶縁膜41)の下方まで延びている場合、スイッチング素子T1がオフ状態であるときに、ゲート−ドレイン間の電圧差による比較的大きな電界がエクステンション層EXTdに集中する。これにより、ゲート電極Gの下方のエクステンション層EXTdの領域において、垂直方向(縦方向)の表面ポテンシャルが増大し、トンネル電流を発生させる。これは、上述の通り、GIDLを引き起こす原因となり、スイッチング素子T1のオフ耐圧を低下させる。
【0037】
これに対し、本実施形態によれば、第1ゲート絶縁膜41よりも厚い第2ゲート絶縁膜42dが、エクステンション層EXTdとゲート電極Gの端部との間に介在している。これにより、スイッチング素子T1がオフ状態であるときに、ゲート−ドレイン間の電圧差による電界がエクステンション層EXTdに集中することを緩和し、GIDLを引き起こし難くする。従って、ゲート−ドレイン間のスイッチング素子T1のオフ耐圧を上昇させることができる。その結果、スイッチング素子T1がオフ状態であるときのドレイン電圧を増大させることができるので、許容入力電力を上昇させることができる。
【0038】
一方、ゲート電極Gの端部において第2ゲート絶縁膜42d、42sが厚いと、スイッチング素子T1のオン抵抗が或る程度上昇すると考えられる。しかし、第2ゲート絶縁膜42d、42sは、ゲート電極Gの端部の一部に設けられているに過ぎず、オン抵抗の上昇は限定的である。また、本実施形態では、第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚を厚くすることによってGIDLを抑制しつつ、一方で、第1ゲート絶縁膜41の膜厚を充分に薄くすることができる。従って、第1ゲート絶縁膜41の膜厚の薄さを考慮すれば、スイッチング素子T1のオン抵抗を逆に低減させることもできる。勿論、第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚が厚すぎると、オン抵抗を上昇させるので、第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚には好適な範囲がある。第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚の好適な範囲については後述する。
【0039】
本実施形態によれば、スイッチング素子T1は、SOI基板またはSOS基板上に形成されている。ソース層Sおよびドレイン層Dは、SOI層30の表面からBOX層20に到達するように形成されている。これにより、上述の通り、オフ容量を低減させることができる。スイッチング素子T1のオフ容量を低減することによって、スイッチング素子T1は、オフ状態のときに高周波信号に対するインピーダンスを上昇させ、より確実に高周波信号の通過を抑制することができる。
【0040】
アンテナ用のスイッチング素子は、高周波信号の挿入損失が小さいこと(オン抵抗が低いこと)、オフ耐圧が高いこと(高い許容入力電力を有すること)、並びに、オフ容量が小さいこと(オフ状態での高周波信号のインピーダンスが高いこと)が要求される。本実施形態は、上述の通り、これらの要求を満たすことができ、これらの要求のトレードオフを解消することができる。
【0041】
尚、デジタルLSIに用いられるトランジスタは、飽和領域で用いられる。飽和領域でのドレイン電圧は、線型領域でのドレイン電圧より高いため、短チャネル効果を充分に考慮する必要がある。短チャネル効果を抑制するためには、トランジスタのゲート長を短くするに従って、ドレイン側のエクステンション層は浅く形成する必要がある。一方、バーズビークは、通常、エクステンション層の形成前にゲート側壁絶縁膜とともに酸化工程で形成される(
図3(C)参照)。この酸化工程では、ゲート側壁絶縁膜とともにエクステンション形成領域のSOI層上に酸化膜が形成される。従って、バーズビークを形成しようとすると、エクステンション形成領域の酸化膜も厚く形成される。この場合、エクステンション層を浅く形成することが困難となり、短チャネル効果の抑制が困難となる。従って、エクステンション層を浅く(薄く)する必要があるデジタルLSI用トランジスタには、バーズビークを設けることは好ましくない。
【0042】
これに対し、本実施形態によるスイッチング素子T1は、高周波のスイッチングに用いられ、線型領域で動作するため、短チャネル効果が比較的問題とならない。従って、スイッチング素子T1は、ゲート絶縁膜の端部にバーズビークを有していても構わない。これにより、エクステンション層EXTd、EXTsは、比較的深く形成されても問題はない。むしろ、オン抵抗を低減させるために、エクステンション層EXTd、EXTsは或る程度深い方が好ましいと言える。
【0043】
また、エクステンション層EXTd、EXTsは、それぞれ第2ゲート絶縁膜42d、42sの下にあるSOI層30の表面全体に設けられてもよい。即ち、エクステンション層EXTdの端部Eextdは、第1ゲート絶縁膜41と第2ゲート絶縁膜42dとの間の境界の直下まで延びていてもよい。エクステンション層EXTsの端部Eextsは、第1ゲート絶縁膜41と第2ゲート絶縁膜42sとの間の境界の直下まで延びていてもよい。これにより、スイッチング素子T1のオフ耐圧を上昇させつつ、オン抵抗をさらに低下させることができる。
【0044】
尚、比較的高い電圧が印加される拡散層をドレインとすれば、スイッチング素子T1は高周波信号をスイッチングするので、ソースとドレインとはソース−ドレイン間に印加される電圧の符号によって高周波で入れ替わる。従って、スイッチング素子T1は、
図2の中心線CTRに関してソース側とドレイン側とで対称(左右対称)であることが好ましい。即ち、ソース層Sとドレイン層Dとは対称であり、エクステンション層EXTdとEXTsとは対称であり、第2ゲート絶縁膜42sと42dとは対称であることが好ましい。
【0045】
次に、本実施形態によるスイッチング素子T1の製造方法を説明する。
【0046】
図3(A)〜
図4(B)は、本実施形態によるスイッチング素子T1の製造方法の一例を示す断面図である。
【0047】
まず、SOI基板のSOI層30上に第1ゲート絶縁膜41を形成する。第1ゲート絶縁膜41は、例えば、シリコン酸化膜であり、SOI層30の表面を熱酸化することによって形成される。第1ゲート絶縁膜41の膜厚は、例えば、約6nmである。
【0048】
次に、第1ゲート絶縁膜41上にゲート電極Gの材料を堆積する。ゲート電極Gの材料は、例えば、ドープトポリシリコンである。次に、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、ゲート電極Gの材料をゲート電極Gのパターンに加工する。これにより、
図3(A)に示すように、ゲート電極Gが形成される。ゲート電極Gのゲート長は、例えば、約100nm〜約300nmである。第1ゲート絶縁膜41は、ゲート電極Gとともにゲート電極Gと同一パターンにエッチングされる。
【0049】
次に、ゲート電極Gの表面、ゲート電極Gの側面およびSOI層30の表面に側壁酸化膜43を形成する。このとき、ゲート電極Gの端部(第1ゲート絶縁膜41の端部)から酸素が侵入し、第1ゲート絶縁膜41の端部が厚くなる。これにより、
図3(B)に示すように、第1ゲート絶縁膜41の端部がバーズビーク状に形成される。ここで、第1ゲート絶縁膜41の端部において、第1ゲート絶縁膜41の中心部より厚く形成されたゲート絶縁膜を第2ゲート絶縁膜42d、42sとする。第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚は、例えば、約6nm〜約12nmである。
【0050】
次に、ゲート電極Gをマスクとして用いてN型不純物(燐または砒素)をイオン注入する。このとき、不純物イオンはSOI層30上の側壁絶縁膜43を通過してSOI層30の表面へ注入される。この不純物を活性化することにより、
図3(C)に示すように、エクステンション層EXTd、EXTsが自己整合的に形成される。
【0051】
次に、スペーサ50の材料が側壁絶縁膜43上に堆積される。次に、スペーサ50の材料をエッチバックすることによって、
図4(A)に示すように、スペーサ50がゲート電極Gの側面上に側壁絶縁膜43を介して形成される。
【0052】
次に、ゲート電極Gおよびスペーサ50をマスクとして用いて、N型不純物をイオン注入する。この不純物を活性化することにより、
図4(B)に示すように、ドレイン層Dおよびソース層Sが形成される。
【0053】
その後、層間絶縁膜IDL、コンタクト、配線層等を形成することによって、本実施形態によるスイッチング素子T1が完成する。
【0054】
次に、第2ゲート絶縁膜42dの厚みについて考察する。
【0055】
図5(A)〜
図5(C)は、それぞれスイッチング素子T1のゲート端部の観察結果を示す断面図である。
図5(A)〜
図5(C)において、第2ゲート絶縁膜42dの厚みがそれぞれ異なる。例えば、
図5(A)に示す第2ゲート絶縁膜42dの厚みは約6nmであり、
図5(B)に示す第2ゲート絶縁膜42dの厚みは約9nmであり、
図5(C)に示す第2ゲート絶縁膜42dの厚みは約12nmである。
【0056】
ここで、第1ゲート絶縁膜41の膜厚は、約6nm以下とした。エクステンション層EXTdの拡散距離(側壁絶縁膜43の側面F43からエクステンション層EXTdの端部Eextdまでの距離)を約20nmとした。ゲート電極Gの端部Egからエクステンション層EXTdの端部Eextdまでの距離(ゲート電極Gの底面と対向するエクステンション層EXTdのチャネル長方向の距離)を重複距離Lovとする。この場合、重複距離Lovは、
図5(A)において、約14nm(20nm−6nm)となり、
図5(B)において、約11nm(20nm−9nm)となり、
図5(C)において、約8nm(20nm−12nm)となる。
【0057】
バーズビークの長さ(第2ゲート絶縁膜42dのチャネル長方向の長さ)をLbpとすると、
図5(A)に示すように、第1ゲート絶縁膜41の膜厚が約6nmである場合、バーズビークの長さLbpは、約0nmであった。
図5(B)に示すように、第1ゲート絶縁膜41の膜厚が約9nmである場合、バーズビークの長さLBPは、約10nmであった。
図5(C)に示すように、第1ゲート絶縁膜41の膜厚が約12nmである場合、バーズビークの長さLBPは、約13nmであった。
【0058】
図5(A)のように第2ゲート絶縁膜42dの膜厚が第1ゲート絶縁膜41の膜厚とほぼ等しい場合、バーズビークは、第1ゲート絶縁膜41の端部にほとんど形成されない。この場合、スイッチング素子T1のオン抵抗は低くなるものの、GIDLが発生するため、オン耐圧が低下し、許容入力電力が低下するおそれがある。
【0059】
図5(B)のように、第2ゲート絶縁膜42dの膜厚が第1ゲート絶縁膜41の膜厚より厚く、バーズビークの長さLbpが重複距離Lovとほぼ等しい(約10nm〜約11nm)場合、GIDLの発生を抑制し、オン耐圧を高く維持することができる。よって、許容入力電力も高く維持することができる。尚、重複距離Lovは、GIDLの抑制のためにバーズビークの長さLbp以下であることが好ましい。しかし、
図5(B)のように、重複距離Lovは、バーズビークの長さLbpより多少大きくてもよい。この場合であっても、GIDLは抑制され得るからである。また、第2ゲート絶縁膜42dの下方全体にエクステンション層EXTdが存在し、第2ゲート絶縁膜42dの下にはチャネル領域CHはほとんど無い。よって、オン抵抗の上昇を効果的に抑制することができる。即ち、LbpとLovとをほぼ等しくすることによって、許容入力電力の維持とオン抵抗上昇の抑制との両方を実現することができる。
【0060】
図5(C)のように、第2ゲート絶縁膜42dの膜厚が第1ゲート絶縁膜41の膜厚よりかなり厚く、バーズビークの長さLbpが重複距離Lovより長い場合、GIDLの発生を抑制し、オン耐圧を高く維持することができる。よって、許容入力電力も高く維持することができる。一方、バーズビークの長さLbpが長すぎると、第2ゲート絶縁膜42dの下方にあるチャネル領域CHの長さが長くなり過ぎる。これはオン抵抗の上昇を招致する。
【0061】
以上から、スイッチング素子T1の構成にも依存するが、第2ゲート絶縁膜42dのチャネル長方向の長さ(即ち、バーズビークの長さLbp、側壁絶縁膜43の厚み)には、適切な範囲がある。上記具体例では、バーズビークの長さLbpは、約6nm〜約12nmの範囲内であることが好ましい。通常、アンテナスイッチング装置1に用いられるスイッチング素子1は、約100nm〜300nmのゲート長、約6nm以下の第1ゲート絶縁膜41の膜厚(EOT)を有する。よって、現状のスイッチング素子1は、約6nm〜12nmの第2ゲート絶縁膜42d、42sの膜厚(EOT)を有することが好ましいと言える。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。