特許第6382753号(P6382753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382753
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 7/08 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   B62D7/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-48650(P2015-48650)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-168884(P2016-168884A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】青山 健一
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−087569(JP,A)
【文献】 特表2004−521291(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0262211(US,A1)
【文献】 米国特許第05538275(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 7/00 − 7/22
B62D 25/20
A01B 69/00 − 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッション側から左右横側方へ延出された前車軸ケースと、
前記前車軸ケースの延出端側に備えたキングピンを介して操向操作可能に連結された車輪支持ケースと、
前記前車軸ケースの前側に配設されたタイロッドとを備え、
前記車輪支持ケースには前記キングピンの軸心から離れた位置に軸心を有した連結軸が立設され、前記タイロッドには前記連結軸に外嵌するボス部が備えられていて、前記連結軸に前記ボス部を外嵌させることにより前記車輪支持ケースと前記タイロッドとが連結され、
前記ボス部とその下方側の前記車輪支持ケースとにわたって防塵用ブーツが装着され、
前記タイロッドの前記ボス部を設けた側の端部に、前記防塵用ブーツの前側を遮蔽するブーツガードが取り付けられており、
直進走行状態に操作された位置の前記タイロッドの前部を覆うタイロッドカバーが、前記タイロッド及び前記ブーツガードの前端よりも前方側に設けられている作業車。
【請求項2】
前記ブーツガードの大部分は、直進走行状態では前記タイロッドカバーの後側に隠れ、前記車輪支持ケースに装備された前輪のステアリング操作にともなって、旋回中心側における前記タイロッドカバーの横外側端部よりも横外方側へ突出するように設けられている請求項記載の作業車。
【請求項3】
前記ブーツガードの前記車輪支持ケース側の端部下方に、前記車輪支持ケースとの干渉を回避するための凹部が形成されている請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
トランスミッション側から左右横側方へ延出された前車軸ケースと、
前記前車軸ケースの延出端側に備えたキングピンを介して操向操作可能に連結された車輪支持ケースと、
前記前車軸ケースの前側に配設されたタイロッドとを備え、
前記車輪支持ケースには前記キングピンの軸心から離れた位置に軸心を有した連結軸が立設され、前記タイロッドには前記連結軸に外嵌するボス部が備えられていて、前記連結軸に前記ボス部を外嵌させることにより前記車輪支持ケースと前記タイロッドとが連結され、
前記ボス部とその下方側の前記車輪支持ケースとにわたって防塵用ブーツが装着され、
前記タイロッドの前記ボス部を設けた側の端部に、前記防塵用ブーツの前側を遮蔽するブーツガードが取り付けられており、
前記ブーツガードの前記車輪支持ケース側の端部下方に、前記車輪支持ケースとの干渉を回避するための凹部が形成されている作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前車軸ケースの延出端側に備えたキングピンを介して操向操作可能に連結された車輪支持ケースを備え、その車輪支持ケースを、前車軸ケースの前側に配設されたタイロッドに連結して操向操作自在に構成してある作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車としては、例えば、下記[1]に記載のものがある。
[1] 前車軸ケースの延出端側に備えたキングピンを介して操向操作可能に連結された車輪支持ケースを備え、その車輪支持ケースを、前車軸ケースの前側に配設されたタイロッドに連結して操向操作自在に構成してあるトラクタ(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−97237号公報(段落番号「0009」、「0010」、図1図2図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に示す従来の構造では、タイロッドが全体的に走行機体の前部側で外部に露出した状態で設けられている。そのため、タイロッド自体に雑草や作物が絡まる虞がある。
これを抑制するには、図示はしないが、他物との接触を避けられるように、タイロッドの前方側を覆うタイロッドカバーを、前車軸ケースなどに取り付けることが考えられる。このようなタイロッドカバーを用いれば、走行機体の前進作業中における雑草や作物との接触を抑制して、タイロッドに対する絡まりを回避し易い点では有用である。
【0005】
しかしながら、走行機体を旋回させる際には、タイロッドが車輪支持ケースをキングピン回りで旋回作動させるため、旋回内側に位置するタイロッド部分がタイロッドカバーの横外方側(旋回半径方向での内側)にはみ出した状態となる。このように、タイロッドの一部がタイロッドカバーの横外方側にはみ出すと、はみ出した部位ではタイロッドカバーによる接触抑制作用が受けられなくなる。
旋回時にタイロッドカバーの横外方側にはみ出すタイロッド部分は、車輪支持ケースに対して連結軸を介して相対回動自在に連結されている。そして、そのタイロッド部分と車輪支持ケースとの連結箇所は防塵用ブーツで覆われている。旋回時におけるタイロッド部分のはみ出しにともなって、この防塵用ブーツもタイロッドカバーの横外方側にはみ出してしまうので、雑草や作物との接触頻度が高い作業環境下では、防塵用ブーツが早期の内に損傷してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、タイロッドと車輪支持ケースとの連結箇所に設けられる防塵用ブーツが、旋回時に雑草や作物との接触により早期のうちに損傷することを回避できるようにして、防塵用ブーツの耐久性向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明における作業車の技術手段は、トランスミッション側から左右横側方へ延出された前車軸ケースと、前記前車軸ケースの延出端側に備えたキングピンを介して操向操作可能に連結された車輪支持ケースと、前記前車軸ケースの前側に配設されたタイロッドとを備え、前記車輪支持ケースには前記キングピンの軸心から離れた位置に軸心を有した連結軸が立設され、前記タイロッドには前記連結軸に外嵌するボス部が備えられていて、前記連結軸に前記ボス部を外嵌させることにより前記車輪支持ケースと前記タイロッドとが連結され、前記ボス部とその下方側の前記車輪支持ケースとにわたって防塵用ブーツが装着され、前記タイロッドの前記ボス部を設けた側の端部に、前記防塵用ブーツの前側を遮蔽するブーツガードが取り付けられているということである。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1にかかる本発明の構成によると、タイロッド側のボス部とその下方側の車輪支持ケースとにわたって装着された防塵用ブーツの前側を遮蔽するブーツガードが、タイロッドのボス部を設けた側の端部に取り付けられている。
したがって、操向操作に伴う車輪支持ケースの姿勢変化に拘わらず、ブーツガードが常に防塵用ブーツの前側に位置し、防塵用ブーツに対する雑草や作物の接触を抑制することができ、防塵用ブーツの耐久性向上を図り得る利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、直進走行状態に操作された位置の前記タイロッドの前部を覆うタイロッドカバーが、前記タイロッド及び前記ブーツガードよりも前方側に設けられているということである。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2によれば、直進走行状態におけるタイロッドの前部を覆うタイロッドカバーが、ブーツガードよりも前方側に設けられているので、直進状態でのブーツガードとタイロッドカバーとの干渉を避け、ブーツガードを常に防塵用ブーツの保護を行えるように配備できる利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ブーツガードの大部分は、直進走行状態では前記タイロッドカバーの後側に隠れ、前記車輪支持ケースに装備された前輪のステアリング操作にともなって、旋回中心側における前記タイロッドカバーの横外側端部よりも横外方側へ突出するように設けられているということである。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3によれば、ブーツガードの大部分は、直進走行状態ではタイロッドカバーの後側に隠れ、前輪のステアリング操作にともなってタイロッドカバーの端部から突出するので、そのブーツガードが存在する箇所もタイロッドカバーで覆われ、直進走行状態でのブーツガードが存在する箇所に対する雑草や作物の引っかかりなどを抑制し易い点で有利である。
【0013】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ブーツガードの前記車輪支持ケース側の端部下方に、前記車輪支持ケースとの干渉を回避するための凹部が形成されているということである。
【0014】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
〔解決手段4〕
上記の解決手段4によれば、ブーツガードの車輪支持ケース側の端部下方に、車輪支持ケースとの干渉を回避するための凹部を形成したことにより、旋回操作時に、旋回半径の外側に位置する車輪支持ケースが、ブーツガードと干渉することを回避し得る。
したがって、ブーツガードをできるだけ左右方向で車輪支持ケースに近づけて広範囲に配置でき、防塵ブーツに対する雑草や作物との接触をより確実に回避し易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】トラクタの全体側面図である。
図2】トラクタの全体平面図である。
図3】トラクタの全体正面図である。
図4】前車軸ケースとタイロッド、及びタイロッドカバーを示す分解斜視図である。
図5】直進走行状態におけるタイロッドとタイロッドカバー及びブーツガードを示す平面図である。
図6】旋回走行状態におけるタイロッドとタイロッドカバー及びブーツガードを示す平面図である。
図7】旋回走行状態における旋回内側の車輪支持ケースとブーツガードとを示す斜視図である。
図8】旋回走行状態における旋回外側の車輪支持ケースとブーツガードとを示す斜視図である。
図9】車輪支持ケースとタイロッドとの連結箇所、及びブーツガードを示す断面図である。
図10】ミッションケースから前輪駆動軸への出力箇所を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、以下の実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、以下のように記載している。つまり、機体の作業走行時における前進側の進行方向(図2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(図2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(図2における矢印L参照)が「左」である。
【0017】
〔全体構成〕
図1は、本発明における作業車の一例であるトラクタの全体側面を示している。
このトラクタは、機体フレーム10の前部に左右一対の前輪11を駆動及び操向操作自在に備え、後部に左右一対の後輪12を駆動自在に備えた自走機体1に、図外の作業装置を連結するための連結装置2を備えたものである。
機体フレーム10は、エンジンEを取り付け可能なエンジン搭載フレーム10Aと、エンジンEの後部側に一体連結されたクラッチハウジングCと、後部側のミッションケース7と、前記クラッチハウジングCとミッションケース7とを連結する伝動ケース10Bと、を一体的に連結したモノコック構造で構成されている。
【0018】
この機体フレーム10に対して、前部側にエンジンEを装備した原動部3が設置されている。そして、原動部3よりも後部側の機体フレーム10上に、ステアリングハンドル13及び運転座席14を有した運転部が装備されている。
運転部の後端部では、運転座席14の後側近くに配置された状態でロプスフレーム17が機体フレーム10に連結固定されている。また、前記機体フレーム10の後部を構成するミッションケース7の後部側には、ロータリ耕耘装置などの各種の作業装置(図示せず)を連結して昇降操作可能な前記連結装置2が装備されている。
【0019】
連結装置2は、ミッションケース7の後端側の下部に横軸心x1回りで上下揺動可能に連結された左右一対のロワーリンク20と、そのロワーリンク20を、前記横軸心x1回りで揺動させて作業装置を昇降操作するように吊り持ちする左右一対のリフトアーム21とを備えている。リフトアーム21は、ミッションケース7の上部に配設された単動型の油圧シリンダ22によって横軸心x2回りで左右同時に上下揺動可能に構成されている。
このように構成された連結装置2は、連結した作業装置の対機体高さを変更あるいは調節可能な昇降リンク機構として用いられるものである。
【0020】
ミッションケース7の後端側からは、前記エンジンEの駆動力を作業装置等に伝達するためのリヤPTO軸23が、後方側へ向けて突出するように配設されている。
リヤPTO軸23には、前述したロータリ耕耘装置などの、機体後方側に連結される各種作業装置へ動力が伝達され、ミッドPTO軸24には、前輪11側へ動力を伝達するための前輪駆動軸25など、ミッションケース7よりも前方側に装備される各種装置に対して動力が伝達される。
【0021】
原動部3には、水冷式のエンジンEを内装するエンジンボンネット30が設けられている。
エンジンボンネット30の内部空間であるエンジンルームには、前記エンジンEの他、図示はしないがラジエータ、エアクリーナ、作動油冷却用のオイルクーラ、バッテリ、などの各種エンジン関連機器が収容されている。
エンジンボンネット30の後部側には、前記各種エンジン関連機器が収容されるエンジンルームの外側に位置させて、ステアリングハンドル13を装備した操縦部パネル15が、運転座席14との間に運転部ステップ16を介在させた状態で連設されている。
【0022】
エンジンボンネット30には、前部に前照灯31が装備され、前部近くの横側面33箇所に走行機体の前方下方を照射する作業灯32が装備されている。この作業灯32は、横側面33箇所の一部を凹入させて形成した通気用開口部34の周壁部分35の一部に、横側面33よりも外方へ突出しない状態で設けてある。通気用開口部34には多数の通気孔を有したグリルを装着してあり、作業灯32はLEDランプによって構成してある。
【0023】
〔前輪操向機構〕
操縦部パネル15の内部には、後述するパワステシリンダ40を伸縮操作して、前輪11の操向操作を行うためのパワーステアリング機構4が装備されている。
このパワーステアリング機構4は、ステアリングハンドル13のステアリング操作に基づいて、図3乃至図6に示すように、前車軸ケース18の前方側に配備されたパワステシリンダ40に圧油を給排し、前輪11の操向操作を行うものであり、全油圧式のオービットロールなどで構成されている。
【0024】
図3乃至図6に示すように、前車軸ケース18の前側に配備されたパワステシリンダ40は、左右方向での中央部に位置するシリンダケース41が、前車軸ケース18の前側に一体形成された取り付けボス部18Aに挿通された状態で、抱き込み支持されている。
このパワステシリンダ40は、シリンダケース41内で左右往復移動可能なシリンダロッド42を備え、そのシリンダロッド42の左右両端部側に、車輪支持ケース19と連結されるタイロッド5が、球継ぎ手50を介して屈折可能に連結されている。このように両端部にタイロッド5が連結されている左右往復移動可能なシリンダロッド42は、左右の車輪支持ケース19を同方向に操向操作するタイロッドを兼用するものである。
【0025】
タイロッド5は、シリンダロッド42の軸端部に備えられた球継ぎ手50に連なる軸杆部分51と、その軸杆部分51の前記球継ぎ手50とは反対側に設けられたボス部52とを備えている。
このボス部52は、前車軸ケース18の左右両端部に連結された車輪支持ケース19に対して、後述する連結軸19Cに嵌合して連結されるものである。
【0026】
前車軸ケース18は、機体フレーム10に対して、前後方向の水平軸心z1回りで左右ローリング作動可能に装着されている。そして、前車軸ケース18の左右両端側には、上下方向に沿うキングピン(図示せず)の軸心y1回りで操向操作自在な車輪支持ケース19が装着されている。
この車輪支持ケース19の取り付けハブ19Aに前輪11が装着されている。したがって、前輪11は、キングピンの軸心y1回りでの車輪支持ケース19の回動に伴って右又は左に操向操作される。
【0027】
車輪支持ケース19の前方側の上部には、その車輪支持ケース19の上面19Bよりも上方に向けて連結軸19Cが立設されている。この連結軸19Cには、パワステシリンダ40のシリンダロッド42の端部に球継ぎ手50を介して一端側が連結されているタイロッド5の他端側が連結される。
連結軸19Cの上部に対して、タイロッド5の他端側に設けたボス部52が嵌合連結されるのであるが、その連結軸19Cとボス部52との連結箇所は次のように構成されている。つまり、連結軸19Cの上部には、球面状の軸部19Dが備えられており、ボス部52の内面側には、その球面状の軸部19Dを支持するように球面状に凹入する軸受部52Aが形成されている。
これによって、タイロッド5と車輪支持ケース19との間で、上下方向あるいは水平方向での相対姿勢変化が生じても、支障なく連結状態を維持して、前輪11の操向操作を行い得るものである。
【0028】
図3及び図4に示すように、前車軸ケース18の前面側には、タイロッドカバー6が着脱可能に取り付けられている。つまり、タイロッドカバー6は、前車軸ケース18の上面側に一体形成された止め部18aに対して、タイロッドカバー6の上部に備えた止め孔6aを介して連結ボルト6bによって着脱可能に連結固定してある。
このタイロッドカバー6は、パワステシリンダ40のシリンダケース41の左右の端部と、直進走行状態における左右両側の前輪11との間を閉塞するように設けられている。
このように構成されているので、図3及び図5に示すように、前輪11が直進走行状態であれば、タイロッド5の左右方向での横外側端位置と、タイロッドカバー6の横外側端位置とは、タイロッドカバー6の横外側端が僅かに機体内方側に位置する程度で、ほぼ一致した状態である。
しかしながら、図6に示すように、前輪11が左旋回方向に操作されると、シリンダロッド42が左側に移動し、左側のタイロッド5は、タイロッドカバー6の横外側端よりも大きく横外方へ延出されて、タイロッドカバー6の横外側端からはみ出した状態となる。
【0029】
〔ブーツガード〕
図9に示すように、車輪支持ケース19の上面19Bと、その車輪支持ケース19の上面19Bに立設された連結軸19Cに対して嵌合連結されているタイロッド5の前記他端側に設けたボス部52とにわたって防塵用ブーツ53が装着されている。
この防塵用ブーツ53は、ゴムなどの弾性材料で構成され、上下両端側が開放された筒状に形成されている。また、この防塵用ブーツ53は、車輪支持ケース19の上面19Bと、タイロッド5のボス部52の下面との間隔d1よりも上下方向で十分に長く形成されている。
【0030】
そして、防塵用ブーツ53の上端側がタイロッド5のボス部52の下部に外嵌して、リング状の固定金具54でボス部52と一体に回動するように連結されている。防塵用ブーツ53の下端側は、車輪支持ケース19の上面19Bに上方から押しつけられた状態で接触している。これによって、防塵用ブーツ53は、上下方向での中間部分が袋状に膨らんだ状態に弾性変形し、かつ自身の弾性復元力で車輪支持ケース19の上面19Bに対して下端側を弾性的に押しつけ付勢するように構成されている。
【0031】
上記のように構成された防塵用ブーツ53が存在する箇所の前方側には、その防塵用ブーツ53の前側を遮蔽するブーツガード55が取り付けられている。
このブーツガード55は、図4乃至図9に示すように、タイロッド5の前面側で、タイロッド5の軸杆部分51の途中位置と、ボス部52の前輪11に近い側の外周部とにわたって溶接固定された屈曲板状部材で構成されている。また、ブーツガード55は、図4乃至図8に示すように、防塵用ブーツ53の前側で、防塵用ブーツ53の左右方向幅の全体を遮蔽するように設けられている。
【0032】
このブーツガード55の上下方向幅L2は、図9に示すように、防塵用ブーツ53が設けられた箇所よりも高い位置から、防塵用ブーツ53が設けられた箇所よりも低い位置にわたって上下に長く形成されている。
つまり、装着された防塵用ブーツ53の上下方向幅L1は、車輪支持ケース19の上面19Bとタイロッド5のボス部52の下面との間隔d1よりも上下方向で長く形成され、その防塵用ブーツ53の上下方向幅L1よりもブーツガード55の上下方向幅L2がさらに長く形成されている。したがって、ブーツガード55は、防塵用ブーツ53の上下方向での全体を遮蔽するように上下方向でも幅広く設けられている。
【0033】
図2,3、及び図5に示すように、左右の前輪11が直進方向に向けられていると、ブーツガード55は、その大部分がタイロッドカバー6の背面側に隠れた状態となる。
この状態でも、ブーツガード55は防塵用ブーツ53の前側に位置して、防塵用ブーツ53を雑草や作物との接触から回避できるように保護する機能を有してはいる。しかし、そのブーツガード55の直前位置に、ブーツガード55よりも遙かに面積の大きいタイロッドカバー6が、ブーツガード55を全体的に遮蔽するように存在しているので、この直進状態に限っては、ブーツガード55による防塵用ブーツ53への保護機能よりも、タイロッドカバー6による保護機能の方が優先的に作用している。
【0034】
図6及び図7に示すように、パワステシリンダ40のシリンダロッド42が左右方向の何れかに突出して、前輪11が左右何れかに操向操作されると(図6図7では、左向きに旋回するように操向された状態である)、旋回中心側に位置する前輪11(図6では左側の前輪11)は、その前半部が、図6に示すようにタイロッドカバー6の横外側端位置から離れる方向に操舵される。
この図6に示す状態では、仮想線で示されるタイロッドカバー6の左端からタイロッド5が大きく旋回中心側に露出した状態となる。これに伴い、防塵用ブーツ53も当然に、タイロッドカバー6の左端から離れて旋回中心側に移行するので、ブーツガード55が存在しない場合には前側が露出した状態となる。
【0035】
この構造のものでは、上記のように操向操作された旋回中心側の前輪11の車輪支持ケース19とタイロッド5との連結箇所に取り付けられた防塵用ブーツ53に対しての保護を確実に行うことができる。つまり、タイロッド5の前面側で、そのタイロッド5の軸杆部分51とボス部52とにわたるブーツガード55が備えられていることにより、そのブーツガード55が、タイロッドカバー6の左端から離れて旋回中心側に移行した防塵用ブーツ53の前側を遮蔽して、雑草や作物との接触を回避できるようにしてある。
【0036】
また、ブーツガード55には、タイロッド5のボス部52に溶接固定されている部位の近くに、車輪支持ケース19との干渉を避けるための凹部55Aが形成されている。この凹部55Aは、図4及び図8に示すように、ブーツガード55の下縁側が、ボス部52に溶接固定された部位の近くで部分的に切除されて上方側へ凹入した形状となっている。
そして、図6及び図8に示すように、前輪11が左右何れかに操向操作されたとき、旋回外側に位置する前輪11(図6では右側の前輪11)は、その前半部が、図6に示すようにタイロッドカバー6の横外側端位置に近づく方向に操舵される。
【0037】
このとき、ブーツガード55に前記凹部55Aが存在していなければ、ブーツガード55が車輪支持ケース19と接触して、前輪11の操舵範囲を狭めてしまう虞があるが、前記凹部55Aを備えていることで、そのような不具合を招く虞も少なく、前輪11の操舵範囲を大きく確保し得る点で有利である。
この凹部55Aは左右のブーツガード55のそれぞれに形成されている。
【0038】
〔ミッドPTO〕
図1及び図10に示すように、ミッションケース7の前部には、ミッドPTO軸24が前方側へ向けて突出する状態で装備されている。
このミッドPTO軸24の支持構造について説明する。
このミッドPTO軸24は、一本の引き抜き材によって構成され、かつ、その前端側と後端側とのそれぞれにスプライン部24A,24Aを刻設してある。そして、両端側のスプライン部24Aと同径、もしくは両スプライン部24Aよりも径の大きい軸中間部24Bが、ミッションケース7の前ケース壁70に形成した支持ボス71に支持されている。
【0039】
支持ボス71の内周側には、ミッドPTO軸24を回動可能に支持する軸受け用のベアリング72が設けられている。このベアリング72は、そのアウターレース72Aのミッションケース7の内方側が、支持ボス71の内周側に形成された段部71Aによって、ミッドPTO軸24の軸線方向での移動を不能な状態で取り付けられている。
また、ベアリング72のインナーレース72Bは、ミッションケース7の内方側への移動が、ミッドPTO軸24の外周面に装着したサークリップ73によって阻止されている。インナーレース72Bのミッションケース7の外方側への移動は、位置決め用スリーブ74と、その位置決め用スリーブ74のミッションケース7の外方側への移動を阻止するように、ミッドPTO軸24の外周面に装着したサークリップ75とによって規制されている。
【0040】
位置決め用スリーブ74は、金属製の筒状部74Aの内方側にゴム製の摩擦部材74Bを貼着させてあり、軸線方向での一端側をインナーレース72Bに当てつけ、他端側をサークリップ75に当てつけて、ミッドPTO軸24の軸線方向移動を規制するように構成されている。
位置決め用スリーブ74の外周側には、支持ボス71の内周側との間で、外部からの異物の侵入を阻止するための環状のシール材76が装着されている。
このシール材76は、ミッションケース7の内方側の端部が、環状のカラー77を介してベアリング72のアウターレース72Aに当接し、ミッションケース7の外方側の端部が支持ボス71の内周側に装着したサークリップ78に当接することにより位置決めされている。
【0041】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、ブーツガード55として、防塵用ブーツ53の前側にのみ設けた構造のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、ブーツガード55を、防塵用ブーツ53の前側のみならず後側でも、タイロッド5の軸杆部分51とボス部52とにわたって設けることにより、防塵用ブーツ53の前側と後側とが遮蔽された構造となるように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0042】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、左右の前輪11が直進方向に向けられていると、ブーツガード55の大部分がタイロッドカバー6の背面側に隠れた状態となるように構成した構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、左右の前輪11が直進方向に向けられている状態で、タイロッドカバー6の横外側に並ぶ状態でブーツガード55が設けられた構造のものであってもよい。
また、タイロッドカバー6を省略したものであっても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0043】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態では、ブーツガード55に、車輪支持ケース19との干渉を回避するための凹部55Aが形成された構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、ブーツガード55のうち、車輪支持ケース19と干渉する部位を部分的に可撓性のあるゴム垂れなど形成したり、車輪支持ケース19との接触によって、操向作動方向とは反対側へ逃げるように揺動可能に構成するなど、適宜構造を採用することもできる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、トラクタに限らず、乗用型田植機や、乗用型直播機、芝刈り機、ステアリング操作式のコンバイン等の各種農機、あるいは、運搬作業車など、各種の作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
5 タイロッド
6 タイロッドカバー
18 前車軸ケース
19 車輪支持ケース
19C 連結軸
y1 軸心
y2 軸心
52 ボス部
53 防塵用ブーツ
55 ブーツガード
55A 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10