特許第6382758号(P6382758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382758
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】光学シート及び面発光装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20180820BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180820BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20180820BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20180820BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180820BHJP
【FI】
   F21S2/00 431
   G02F1/1335
   G02F1/13357
   G02F1/1333
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-59054(P2015-59054)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-178057(P2016-178057A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西坂 政輝
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−42633(JP,A)
【文献】 特開2005−135670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
G02F 1/1333
G02F 1/1335
G02F 1/13357
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1縁部に沿って一方向に並んで設けられた複数の孔部を有し、
前記複数の孔部のうち前記一方向の一端部に設けられた基準孔部以外の非基準孔部は、長孔であり、
前記非基準孔部のそれぞれは、前記基準孔部から遠い方の端部が近い方の端部よりも前記第1縁部の反対側の第2縁部に近付く方向に前記一方向に対して傾斜している、光学シート。
【請求項2】
前記非基準孔部は、前記基準孔部から遠い孔部ほど長い長孔である、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記第2縁部であって前記一方向における前記基準孔部が設けられた端部の反対側の端部に、重りを有する、請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記非基準孔部は、前記第1縁部側に凸となる円弧状である、請求項1から3のいずれかに記載の光学シート。
【請求項5】
光源と、
前記光源から発せられた光の指向性を変更する請求項1から4のいずれかに記載の光学シートとを備える、面発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置用バックライト装置等の面発光装置に備えられる光学シート及びこれを備える面発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライト装置等の面発光装置は、光源、及び光源から発せられた光の指向性を変更するように構成された光学シートを備える。例えば、光学シートは、光源から発せられて周囲へ広がる光を正面方向へ集光する。これによって面発光装置の輝度が高められる。大型の面発光装置に用いられる光学シートの中には、面発光装置のシャーシに吊り下げられるように構成されたものがある。このような吊り下げ型の光学シートは、上縁部に沿って複数の長孔を有し、長孔がシャーシのピンにそれぞれ引っ掛けられる。一例として、光学シートの2辺に設けられた全ての長孔の長手方向が放射中心点を通るように放射状にされた光学シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この従来の光学シートでは、上縁部に設けられた長孔は、上縁部に沿う方向即ち水平方向に長い。長孔にされているのは、光学シートが光源の光によって熱せられて熱膨張する場合にピンが長孔内を摺動するように意図されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−42633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の光学シートでは、光学シートが熱膨張する場合、ピンと上縁部に設けられた長孔の淵との間に摩擦力が働くので、熱膨張によって水平方向に延びようとする力だけでは光学シートは水平方向においてピンに引っ掛かってしまい、波打ち形状の皺が生じてしまう。光学シートに皺が生じると、面発光装置に波打ち状の輝度ムラが生じてしまう。
【0005】
この発明の目的は、熱膨張による皺の発生を抑制できる光学シート及びこれを備える面発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の光学シートは、第1縁部に沿って一方向に並んで設けられた複数の孔部を有する。複数の孔部のうち前記一方向の一端部に設けられた基準孔部以外の非基準孔部は、長孔である。非基準孔部のそれぞれは、基準孔部から遠い方の端部が近い方の端部よりも第1縁部の反対側の第2縁部に近付く方向に前記一方向に対して傾斜している。
【0007】
この構成では、第1縁部を上側にして光学シートを配置し、複数の孔部のそれぞれに面発光装置のシャーシのピンを挿通することで、非基準孔部は、基準孔部から遠い方の端部が近い方の端部よりも下側になるように傾斜する。このため、光学シートが熱膨張する際に、熱膨張によって光学シートが水平方向に延びようとする力に加えて、重力によって非基準孔部がピンと摺動することで水平方向へ移動する力も働く。
【0008】
上述の構成において、非基準孔部は、基準孔部から遠い孔部ほど長い長孔であることが好ましい。
【0009】
この構成では、基準孔部から遠い箇所ほど基準孔部からの累計の延びが大きくなるので、非基準孔部をそれぞれの箇所における熱膨張による延びの大きさに応じた長さの長孔にすることで、熱膨張による延びの大きさよりも長孔の長さの方が短いために光学シートが引っ掛かって皺が生じるといった事態を防止でき、また過剰に長い長孔を形成することによる生産効率の低下を防止することができる。
【0010】
また、第2縁部であって前記一方向における基準孔部が設けられた端部の反対側の端部に、重りを有するように構成することができる。
【0011】
この構成では、重りを設けることで、光学シートが基準孔部を中心として、基準孔部が設けられた端部の反対側の端部が下降する方向に回転する力を大きくすることができる。このため、光学シートが熱膨張する際に、非基準孔部がピンに対して非基準孔部の長手方向へ摺動する力を大きくすることができる。
【0012】
さらに、非基準孔部は、第1縁部側に凸となる円弧状であるように構成することができる。
【0013】
この構成では、非基準孔部のうち基準孔部から遠い方の端部の方が近い方の端部よりも水平方向に対する傾斜が大きくなるので、光学シートの熱膨張による延びが小さいときに、重力によって非基準孔部がピンと摺動しやすくすることができる。
【0014】
この発明の面発光装置は、光源と、光源から発せられた光の指向性を変更する上述のいずれかに記載の光学シートとを備える。
【0015】
この構成では、第1縁部を上側にして光学シートを配置し、複数の孔部のそれぞれに面発光装置のシャーシのピンを挿通することで、非基準孔部は、基準孔部から遠い方の端部が近い方の端部よりも下側になるように傾斜する。このため、光学シートが熱膨張する際に、熱膨張によって光学シートが水平方向に延びようとする力に加えて、重力によって非基準孔部がピンと摺動することで水平方向へ移動する力も働く。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、熱膨張による皺の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の第1実施形態に係る光学シートを備えた液晶表示装置の概略の構成を示す分解斜視図である。
図2】(A)は熱膨張していない状態の光学シートを示す正面図であり、(B)は熱膨張した状態の光学シートを示す正面図である。
図3】(A)は比較例に係る熱膨張した状態の光学シートの正面図であり、(B)は(A)に示すA1−A2線における断面図である。
図4】第2実施形態に係る光学シートの正面図である。
図5】第3実施形態に係る光学シートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、この発明の第1実施形態に係る光学シート10は、面発光装置1に備えられる。面発光装置1は、液晶表示装置100にバックライト装置として搭載されている。一例として、面発光装置1は、エッジライト方式である。
【0019】
液晶表示装置100は、前フレーム101、液晶パネル102、面発光装置1、補強用アングル103、及び後キャビネット104を備え、これらの部材が前方Fから後方Rへこの順序で互いに重なる位置に配されている。
【0020】
面発光装置1は、光学シート10,20,30、導光板40、反射シート50、シャーシ60、及び光源基板71,72を備えている。
【0021】
シャーシ60は、矩形に形成されている。導光板40は、シャーシ60の所定位置に位置決めされ、シャーシ60に支持されている。シャーシ60は、上端部及び下端部に、前方F側へ突き出た側壁部を有している。光源基板71は、シャーシ60の上端部の側壁部に支持され、光源基板72は、シャーシ60の下端部の側壁部に支持されている。光源基板72は、光源基板71と実質的に同様に構成されている。
【0022】
光源基板71は、一列に配された複数の光源を保持している。光源として、点状光源が用いられている。一例として、点状光源はLED(Light Emitting Diode)である。光源は、導光板40の入射面即ち上下の側面のそれぞれに対向している。
【0023】
シャーシ60の前方Fに、反射シート50、導光板40、光学シート30,20,10、及び液晶パネル102が、この順序で重なるように配置されている。
【0024】
光源から発せられた光は、導光板40に導かれ、反射シート50で前方Fへ反射され、光学シート10〜30を後方Rから前方Fへ透過する。光学シート10〜30を透過する光の指向性は一定ではないが、光学シート10〜30は、透過する光の指向性を変更して前方Fへ集光する。
【0025】
図2に示すように、光学シート10は、上端部に複数の孔部11,12,13,14を備えている。孔部11〜14は、光学シート10の上縁部15に沿った一方向である配列方向Xに並んで設けられている。孔部11〜14同士の間には、他の部材を配置可能なように切り欠き部16,17,18が形成されている。上縁部15は第1縁部である。
【0026】
複数の孔部11〜14のうち配列方向Xの一端部に設けられた孔部11は、基準孔部である。孔部11は、真円に形成されている。複数の孔部11〜14のうち孔部11以外の孔部12,13,14は、非基準孔部である。孔部12〜14は、長孔に形成されている。
【0027】
孔部12は、孔部11から遠い方の端部121が近い方の端部122よりも上縁部15の反対側の下縁部19に近付く方向に配列方向Xに対して傾斜している。孔部13,14も、孔部12と同方向に配列方向Xに対して傾斜している。一例として、孔部12〜14は、配列方向Xに対して58度傾斜している。下縁部19は第2縁部である。
【0028】
孔部12〜14は、孔部11から遠い孔部ほど長い長孔に形成されている。
【0029】
シャーシ60は、孔部11〜14のそれぞれに対応する位置に、前方Fへ突起するピン61,62,63,64を備えている。孔部11〜14にピン61〜64を挿通させることで、光学シート10はシャーシ60に吊り下げられる。
【0030】
孔部11には、ピン61が挿通される。孔部11の径は、ピン61の径と略同じである。
【0031】
孔部12〜14には、ピン62〜64がそれぞれ挿通される。光学シート10が熱膨張していない状態では、孔部12において孔部11から遠い方の端部121にピン62が配置される。同様に、光学シート10が熱膨張していない状態では、孔部13において孔部11から遠い方の端部にピン63が配置され、孔部14において孔部11から遠い方の端部にピン64が配置される。光学シート10が熱膨張していない状態において、光学シート10は上縁部15が水平方向となるように配置される。このため、光学シート10が熱膨張していない状態において、配列方向Xは水平方向に平行である。
【0032】
孔部12〜14の長手方向は重力方向Yに平行ではないので、光学シート10が熱膨張していない状態では、ピン62が孔部12に対して孔部11に近い方の端部122へ摺動することはない。孔部13,14についても孔部12と同様である。
【0033】
光学シート10が光源の光によって熱せられると、光学シート10は、孔部11を基準位置として孔部11から遠ざかる方向へ熱膨張する。即ち、光学シート10は、配列方向X及び重力方向Yの両方に熱膨張する。
【0034】
図3(A)及び図3(B)に示す比較例のように、孔部12P,13P,14Pが配列方向Xに平行に長く形成されている場合は、光学シート10Pが熱膨張する際に、熱膨張によって光学シート10Pが配列方向Xに延びようとする力が光学シート10Pに働くのに対して、孔部12P〜14Pの淵とピン62〜64との間に摩擦力も働く。このため、光学シート10Pは、熱膨張した際に、配列方向Xにおいて波打ち形状に弛みが生じ、皺が寄る虞がある。
【0035】
これに対して、図2(A)及び図2(B)に示すように、第1実施形態に係る光学シート10では、上述のように、孔部12〜14は孔部11から遠い方の端部が近い方の端部よりも下側になるように傾斜している。このため、光学シート10に働く重力は、孔部12〜14の長手方向に働く力と長手方向に直交する方向に働く力とに分解できる。よって、光学シート10が熱膨張する際に、熱膨張によって光学シート10が配列方向Xに延びようとする力に加えて、重力によって孔部12〜14がピン62〜64と摺動する力も働く。このため、孔部12〜14の淵とピン62〜64との間に摩擦力が働くにも関わらず、孔部12〜14がピン62〜64に対して移動しやすくなる。したがって、光学シート10が熱膨張する際に、光学シート10の各部は配列方向Xへ移動しやすくなり、熱膨張による光学シート10の皺の発生を抑制することができる。
【0036】
なお、光学シート10が熱膨張すると、ピン62〜64が孔部12〜14内をそれぞれの孔部11に近い方の端部へ相対移動するので、光学シート10は水平方向に対して若干傾斜することになる。このため、光学シート10の熱膨張の傾斜による縁部の移動寸法は、液晶表示装置100の額縁の寸法内に収まるように構成することが好ましい。
【0037】
孔部12〜14は、孔部11から遠い孔部ほど長い長孔であることが好ましい。
【0038】
光学シート10において孔部11から遠い箇所ほど孔部11からの累計の延びが大きくなるので、孔部12〜14をそれぞれの箇所における熱膨張による延びの大きさに応じた長さの長孔にすることで、熱膨張による延びの大きさよりも長孔の長さの方が短いために光学シート10が引っ掛かって皺が生じるといった事態を防止でき、また過剰に長い長孔を形成することによる生産効率の低下を防止することができる。
【0039】
図4に示すように、第2実施形態に係る光学シート10Aは、下縁部19であって配列方向Xにおける孔部11が設けられた端部81の反対側の端部82に、重り83を有する点に特徴を有し、この点を除いて光学シート10と実質的に同様に構成される。
【0040】
重り83を設けることで、光学シート10Aに働く重力が大きくなり、光学シート10Aが孔部11を中心として端部82が下降する方向に回転する力が大きくなる。このため、光学シート10が熱膨張する際に、孔部12〜14がピン62〜64に対して孔部12〜14の長手方向へ摺動する力が大きくなる。よって、孔部12〜14の淵とピン62〜64との摩擦力によって孔部12〜14がピン62〜64に引っ掛かることが抑制される。したがって、光学シート10Aが熱膨張する際に、光学シート10の各部は配列方向Xへより移動しやすくなり、熱膨張による光学シート10Aの皺の発生をより抑制することができる。
【0041】
図5に示すように、第3実施形態に係る光学シート10Bは、孔部12〜14が上縁部15側に凸となる円弧状である点に特徴を有し、この点を除いて光学シート10と実質的に同様に構成される。
【0042】
孔部12Bのうち孔部11から遠い方の端部121Bの方が近い方の端部122Bよりも配列方向X即ち水平方向に対する傾斜が大きくなる。このため、光学シート10Bの熱膨張による延びが小さいときに、重力によって孔部12Bがピン62と摺動しやすくすることができる。孔部13B,14Bについても孔部12Bと同様である。
【0043】
なお、ピン61〜64は、円柱形であることが好ましい。また、ピン62〜64は、孔部12〜14,12B〜14Bとの接触部に、コロを有することがより好ましい。孔部12〜14,12B〜14Bとピン62〜64との摩擦力が低下することで、熱膨張による光学シート10Aの皺の発生をより抑制することができる。
【0044】
また、上述の説明では光学シート10について説明したが、この発明の特徴部分について光学シート20,30を光学シート10と同様に構成することができる。
【0045】
上述の実施形態のそれぞれの技術的特徴を互いに組み合わせることで、新たな実施形態を構成することが考えられる。
【0046】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1…面発光装置
10,20,30,10A,10B…光学シート
11…孔部(基準孔部)
12〜14,12B〜14B…孔部(非基準孔部)
15…上縁部(第1縁部)
19…下縁部(第2縁部)
83…重り
100…液晶表示装置
X…配列方向(一方向)
Y…重力方向
図1
図2
図3
図4
図5