特許第6382785号(P6382785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382785
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】連続鋳造設備のタンディッシュ
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   B22D11/10 310F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-230581(P2015-230581)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-94371(P2017-94371A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】下山 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西岡 智則
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−264859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と底部を有する第1の鉄皮の内壁側に耐火物が配備され、前記耐火物の内側に溶鋼が収容可能とされた連続鋳造設備のタンディッシュであって、
前記第1の鉄皮の底部の上面、上方へ凸状とされた第2の鉄皮がさらに設置されており、
前記第2の鉄皮の上面に沿うように、耐火物が配備されている
ことを特徴とする連続鋳造設備のタンディッシュ。
【請求項2】
前記第2の鉄皮は、前記第1の鉄皮の上方に距離をあけて配備され、前記第2の鉄皮と第1の鉄皮との間に空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備のタンディッシュ。
【請求項3】
前記第2の鉄皮は、前記第1の鉄皮に比して厚みが薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造設備のタンディッシュ。
【請求項4】
前記第2の鉄皮と第1の鉄皮との間の空間には、前記第1の鉄皮に対して第2の鉄皮を支持する支持体が設けられており、
前記支持体は、水平方向よりも垂直方向に剛性が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の連続鋳造設備のタンディッシュ。
【請求項5】
前記支持体は、水平方向に距離をあけて配備された複数の棒状部材から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の連続鋳造設備のタンディッシュ。
【請求項6】
前記第1の鉄皮に、当該第1の鉄皮と第2の鉄皮との間に形成された空間に、前記第1の鉄皮の外側から連通する開口が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の連続鋳造設備のタンディッシュ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残鋼を極力抑えつつ溶鋼を排出することができる連続鋳造設備のタンディッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備は、精錬工程で精錬された溶鋼を取鍋からタンディッシュに払い出し、タンディッシュから鋳型に溶鋼を送りつつ連続してスラブなどを鋳造するものである。この連続鋳造設備に設けられるタンディッシュは、鉄皮といわれる有底の容器の内壁面に、耐火物貼り付けたものであり、耐火物のさらに内側に溶鋼を貯溜できるようになっている。
ところで、操業の効率を考えた場合、タンディッシュに収容された溶鋼は、原則としてなるべく残さないように鋳型に送られるのが好ましい。そのため、従来から、特許文献1〜特許文献5に示すようなタンディッシュが開発されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、タンディッシュの底部に勾配を設け、この勾配に沿って溶鋼を吐出口に集めることで、残鋼なく溶鋼を排出することができるタンディッシュが開示されている。この特許文献1のタンディッシュは、底側の鉄皮は平面状のままであるが、鉄皮の上に貼り付けられた耐火物の厚みが場所に応じて変化させられている。つまり、吐出口の近傍では耐火物の厚みが薄く、吐出口から遠ざかるにつれて耐火物の厚みが厚くなるようになっており、耐火物の上面に勾配が形成されている。このように耐火物の表面に勾配を設ける技術は、特許文献2や特許文献3にも同様なものが開示されている。
【0004】
一方、特許文献4や特許文献5には、耐火物ではなくタンディッシュの底部の鉄皮に勾配や段差を設け、耐火物厚みを略一定にしたままタンディッシュの底部に勾配を設ける技術が開示されている。つまり、特許文献4や特許文献5のタンディッシュは吐出口に近づくに連れて下がるような傾斜が底部の鉄皮に設けられており、底部の鉄皮の上面に耐火物がほぼ同じ厚みで形成されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4102152号公報
【特許文献2】特許第5195609号公報
【特許文献3】特開平01−118348号公報
【特許文献4】特開2000−334549号公報
【特許文献5】実開平04−33457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1〜特許文献3の技術は、耐火物の厚みを変化させることで、勾配を形成するものとなっている。そのため、勾配を付けるためには耐火物厚みを通常よりも厚くする必要がある。ところが、耐火物にかかる原料コストは連鋳機における操業コストの1/5〜1/3を占めると言われるほど高価であり、勾配をつけるために耐火物の厚みを厚くするのは経済的ではない。
【0007】
また、上述した特許文献4や特許文献5の技術は、耐火物の厚みを略一定にしたものであるので、経済的である反面、本来は平坦な底部の鉄皮に余計な屈曲を行ったものとなるため、タンディッシュの強度低下を招く可能性がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、稼働側(鉄皮の内側(溶鋼が接する側)の底面に勾配が設けてあるタンディッシュにおいて、鉄皮の構造を複雑化することなく耐火物の使用量を抑えることができる連続鋳造設備のタンディッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の連続鋳造設備のタンディッシュは、以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の連続鋳造設備のタンディッシュは、側壁と底部を有する第1の鉄皮の内壁側に耐火物が配備され、前記耐火物の内側に溶鋼が収容可能とされた連続鋳造設備のタンディッシュであって、前記第1の鉄皮の底部の上面、上方へ凸状とされた第2の鉄皮がさらに設置されており、前記第2の鉄皮の上面に沿うように、耐火物が配備されていることを特徴とする。
【0009】
なお、好ましくは、前記第2の鉄皮は、前記第1の鉄皮の上方に距離をあけて配備され、前記第2の鉄皮と第1の鉄皮との間に空間が形成されているとよい。
なお、好ましくは、前記第2の鉄皮は、前記第1の鉄皮に比して厚みが薄くなるように形成されているとよい。
なお、好ましくは、前記第2の鉄皮と第1の鉄皮との間の空間には、前記第1の鉄皮に対して第2の鉄皮を支持する支持体が設けられており、前記支持体は、水平方向よりも垂直方向に剛性が大きくなるように形成されているとよい。
【0010】
なお、好ましくは、前記支持体は、水平方向に距離をあけて配備された複数の棒状部材から構成されているとよい。
なお、好ましくは、前記第1の鉄皮に、当該第1の鉄皮と第2の鉄皮との間に形成された空間に、前記第1の鉄皮の外側から連通する開口が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連続鋳造設備のタンディッシュによれば、稼働側の底面に勾配が設けてあるタンディッシュにおいて、鉄皮の構造を複雑化することなく耐火物の使用量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態のタンディッシュが設けられた連続鋳造設備の装置構造を示した図である。
図2】第1実施形態のタンディッシュの平面図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4図3のB−B線断面図である。
図5】第2実施形態のタンディッシュの正面断面図である。
図6】第2実施形態の変形例の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以降では、本発明のタンディッシュの第1実施形態について、図面に基づき説明する。
まず、本発明のタンディッシュ1の説明に先立ち、本発明のタンディッシュ1が設けられる連続鋳造装置2について説明する。
図1に示すように、連続鋳造装置2は、取鍋3から注入された溶鋼を一時的に貯留するタンディッシュ1と、溶鋼を鋳造する鋳型4と、鋳型4から出た鋳片を支えつつ移送する複数のサポートロール5と、を有している。この連続鋳造装置2は、転炉や二次精錬設備等から出鋼された溶鋼を取鍋3によってタンディッシュ1まで搬送し、搬送された取鍋3内の溶鋼をタンディッシュ1へ注入している。そして、タンディッシュ1に一時的に貯留された溶鋼の一部を浸漬ノズル6を介して鋳型4へ供給し(ここでは浸漬ノズル6を使用するケースを挙げているが、浸漬ノズル6を使用しないオープン注湯でも良い)、鋳型4に供給された溶鋼を鋳造し、表面側が凝固した鋳片を複数のサポートロール5で保持しながら鋳型4下部から引き抜くことで、溶鋼を連続的に鋳造する構成となっている。
【0014】
次に、上述した連続鋳造装置2に用いられるタンディッシュ1について、詳しく説明する。
なお、以降の説明では、図2に示すように、タンディッシュ1を平面視した状態において、図2の下側を前側といい、図2の上側を後側といい、その前後を奥行き方向という。また、図2の左右方向を、タンディッシュ1を説明する際の幅方向という。
【0015】
図2図4は、第1実施形態のタンディッシュ1を模式的に示したものである。図2図4に示すように、第1実施形態のタンディッシュ1は、上述した連続鋳造装置2に設けられて、取鍋3から注入された溶鋼を一時的に貯留する容器である。この第1実施形態のタンディッシュ1は、底部が平面状とされると共に有底箱状に形成された第1の鉄皮7と、第1の鉄皮7の内壁側に貼り付けられた耐火物8と、を備えている。
【0016】
第1の鉄皮7は、タンディッシュ1の外殻を構成するものであり、稼働側(内側)にはキャスタブルなどの耐火物8が施工されていて、溶鋼を収容可能とされている。また、第1の鉄皮7は、鋼板などを用いて耐火物8及び溶鋼の重量を支えられる程度の厚みに形成されている。具体的には、第1の鉄皮7の底部7aは、水平方向を向く板部材であり、上面視で左右方向に長い長方形状の外観を備えている。また、第1の鉄皮7の側壁7bは、第1の鉄皮7の底部7aにおける前端縁、後端縁、左端縁、右端縁から上方に向かって起立するように立ち上がる板部材であり、全体として左右方向に長尺な有底箱状に形成されている。
【0017】
なお、本実施形態ではタンディッシュ1として「I型」を例示しているが、本発明のタンディッシュ1はT型やH型のものであっても良い。
耐火物8は、上述した第1の鉄皮7の稼働側、より詳しくはタンディッシュ1の底部に設けられる第1の鉄皮7の上面、及びタンディッシュ1の側壁側に設けられる第1の鉄皮7の稼働面に設けられて、溶鋼の熱から鉄皮を保護する構成となっている。この耐火物8は、耐火レンガのような定形耐火物と、キャスタブル等の不定形耐火物とを組み合わせて形成されている。具体的には、耐火レンガやろう石などで形成された定形耐火物を第1の鉄皮7の上に積み上げ、積み上げられた定形耐火物の上側からキャスタブルなどの不定形耐火物を吹き付けるなどして、耐火物8は第1の鉄皮7の稼働側に層状に形成されている。
【0018】
本発明の連続鋳造設備のタンディッシュ1は、第1の鉄皮7の底部7aに、この第1の鉄皮7から上方へ凸状とされた第2の鉄皮9を有しており、この第2の鉄皮9の上面に沿うように耐火物8が配備されていることを特徴とする。つまり、本発明のタンディッシュ1は、底部において、第2の鉄皮9により耐火物8を貼り付ける貼り付け面を嵩上げしたものとなっている。
【0019】
次に、第1実施形態のタンディッシュ1の特徴である第2の鉄皮9について説明する。
図2図4に示すように、第2の鉄皮9は、第1の鉄皮7の底部7aに、この底部7aから上方へ凸状となるように形成されている。具体的には、第2の鉄皮9は、第1の鉄皮7に比して厚みが薄い鋼板の中央側を、上方に向かって膨らむように湾曲させた形状に形成されている。つまり、第2の鉄皮9は、平面のままとされた第1の鉄皮7に設けられて、耐火物8の稼働側(溶鋼に接する側)の形状に合わせた高低差と勾配を付与するものとなっている。
【0020】
そして、第2の鉄皮9の上面には、上面に沿ってほぼ同じ厚みで耐火物8が配備されている。つまり、第2の鉄皮9は第1の鉄皮7から上方に向かって距離をあけて配備されており、第2の鉄皮9と第1の鉄皮7との間には耐火物8がない空間10が形成されている。この第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との間に上述した空間10(耐火物8がない空間10)を設ければ、耐火物8の厚みを薄くすることができ、耐火物8の使用量を減らすことができるようになる。
【0021】
つまり、上述したような第2の鉄皮9を用いれば、底部の厚みを厚くしたい部分に対しても、第1の鉄皮7とほぼ同じ厚さの耐火物8を施工するのみで済み、耐火物8の厚みが特段厚くしなくても良いので、耐火物8の使用量が増大することはない。また、第2の鉄皮9が新たに設けられているとはいえ、平面状とされた第1の鉄皮7はそのまま残されているので、タンディッシュ1の強度が低下することもなく、また鉄皮の構造が複雑になることもない。
【0022】
なお、上述した第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との間の空間10には、この空間10を上下に貫通するように第1の鉄皮7に対して第2の鉄皮9を支持する支持体11が設けられている。
支持体11は、水平方向よりも垂直方向に剛性が大きくなるように形成された部材であり、左右方向及び前後方向に所定の距離をあけて複数並設されている。このような支持体11には、上下方向に長尺とされた棒状部材などが用いられている。
【0023】
このような支持体11を小間隔で多数配置すれば、言い換えれば支持体11の配置間隔を密にすれば、支持体11の設置数が増えて第2の鉄皮9の剛性(支持強度)が高くなる。その結果、第2の鉄皮9の肉厚を小さくしても、耐火物8や溶鋼の重さを十分に支えることが可能になり、第2の鉄皮9を薄肉化することも可能となる。
第1の鉄皮7に、この第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との間に形成された空間10に連通する開口12が設けられている。具体的には、この開口12は、上述した複数の支持体11のうち、左右方向に隣り合った支持体11の中間であって、且つ前後方向に隣り合った支持体11の中間となる位置に形成されている。このような開口12を第1の鉄皮7に設ければ、この開口12を通じて第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との間の空間10の熱が空間10の外部に排出される。その結果、第2の鉄皮9の温度上昇が抑制され、第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との温度差が緩和され、両鉄皮の温度差により生じる熱応力を緩和することが可能となる。
【0024】
上述した第1実施形態のタンディッシュ1では、第1の鉄皮7の上に第2の鉄皮9を設け、さらに第2の鉄皮9の上に耐火物8を一定の厚さで設けているので、第1の鉄皮7の上に耐火物8を直に設けるのに比べれば耐火物8の厚みを薄くすることができる。その結果、コスト高騰の原因となる耐火物8の使用量を削減することが可能となり、操業コストの削減が可能となる。
【0025】
また、第1実施形態のタンディッシュ1では、タンディッシュ1の底部に設けられた第1の鉄皮7は平面状のまま、第1の鉄皮7の上に第2の鉄皮9を設けている。そのため、第1の鉄皮7の構造は複雑にならず、平面状のままとなるので、タンディッシュ1の強度を損なうこともない。
第2の鉄皮9は、第1の鉄皮7に比して厚みが薄いものとされており、第1の鉄皮7ほど大きな剛性は備えていない。そのため、熱膨張した第2の鉄皮9が第1の鉄皮7、特に底部や側壁部(側部)の第1の鉄皮7に大きな影響を及ぼすことはなく、第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との温度差によって生じた応力(熱応力)により第1の鉄皮7が破損することはない。
【0026】
つまり、この熱応力と第2の鉄皮9との関係を説明すると以下のようなものとなる。
まず、第1の鉄皮7と第2の鉄皮9とを同じ肉厚とした場合を考える。耐火物8の稼働側は溶鋼と接し、耐火物8内を熱伝導して第2の鉄皮9も昇温する。第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との間の空気が断熱層になって第2の鉄皮9から第1の鉄皮7へ熱移動は小さい。一方、第1の鉄皮7は外気と接しているので比較的温度は低い。このため、第1の鉄皮7の底部7aと第2の鉄皮9との間には比較的大きな温度差が生じ、第2の鉄皮9の熱膨張量は第1の鉄皮7の底部7aの熱膨張量よりも大きくなり、熱膨張量の違いから第1の鉄皮7の底部7aと第2の鉄皮9との間に熱応力が発生する。また、底部7aでなく第1の鉄皮7の側壁7bと第2の鉄皮9との間にも同様な理由から温度差が生じ、熱応力が発生する。このようにして発生した熱応力は、第1の鉄皮7の底部7aや側壁7bに加わる。このとき、第2の鉄皮9を第1の鉄皮7と同じ肉厚とした場合には熱応力は無視できないほど大きなものとなり、タンディッシュ1全体の強度に影響を及ぼす可能性がある。
【0027】
そのため、上述した第1実施形態のタンディッシュ1では、第2の鉄皮9を第1の鉄皮7より薄くして、第2の鉄皮9の剛性を低下させることで、熱応力がタンディッシュ1全体の強度に大きな影響を与えることを回避している。
つまり、第2の鉄皮9を第1の鉄皮7より薄肉とした場合を考えると、熱膨張量の違いから第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との間に同様に熱応力は発生するものの、発生する熱応力は小さいものとなり、タンディッシュ1全体の強度を考えると無視できる程度に小さくなる。そのため、第2の鉄皮9の厚みを第1の鉄皮7より薄くして剛性を低下させれば、熱応力がタンディッシュ1全体の強度に大きな影響を与えることを回避することが可能となる。
【0028】
なお、第2の鉄皮9にも耐火物8を介して溶鋼からの重量が静圧力として作用するが、この溶鋼からの静圧力に耐えられる程度の厚みに第2の鉄皮9を形成すれば、第2の鉄皮9が静圧力により破損することはない。
なお、第2の鉄皮9の平面視の領域(上方から見た第2の鉄皮9の大きさ)が大きくなると、第2の鉄皮9に加わる圧力(静圧力)も大きなものとなり、第2の鉄皮9が圧力(溶鋼の重量)に耐えらなくなる可能性がある。そのような場合は、縦方向(上下方向)が高剛性で水平方向には低剛性な支持体11を用いて第2の鉄皮9を支持することにより、第2の鉄皮9の支持強度を高くすることができ、第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との温度差により熱応力が生じても、生じた熱応力が第2の鉄皮9を変形させることがなくなる。
【0029】
つまり、第2の鉄皮9に加わる溶鋼からの圧力は支持体11を介して第1の鉄皮7に伝達され、元々存在していた第1の鉄皮7で支持される。このとき、支持体11を配置するピッチを小さくすれば、第2の鉄皮9の厚みをより薄くすることができる。第2の鉄皮9の厚みをより薄くすれば、第1の鉄皮7の底部7aや側壁7bへの熱応力の影響を緩和することが可能になる。なお、薄くされた第2の鉄皮9は第1の鉄皮7に固定された状態で熱応力を受けることになるが、第2の鉄皮9に加わる熱応力はタンディッシュ1全体の強度に影響するほどではないので、実用上は支障が出ることはない。
【0030】
また、上述した開口12を第1の鉄皮7に設ければ、上述した空間10内の熱を排出することができ、更に開口12を介して第2の鉄皮9が外気と接することによって、第2の鉄皮9の温度上昇を緩和することができる。この開口12は第1の鉄皮7の支持強度を低下せしめるほど大きなものではないので、タンディッシュ1全体強度を低下させることはない。
[第2実施形態]
図5に示すように、第2実施形態のタンディッシュ1は、第1の鉄皮7の底部7aの上面に上方に向かって角状に突出した第2の鉄皮9を設けたものとなっており、外観的には階段状の段差を備えた鉄皮の上面を耐熱物が被覆しているような形状となっている。具体的には、第2実施形態のタンディッシュ1に設けられた第1の鉄皮7の底部7aには、上方に向かって突出する第2の鉄皮9が設けられている。この第2実施形態のタンディッシュ1でも、第2の鉄皮9の上面に耐火物8を設けた場合には、第1の鉄皮7と第2の鉄皮9との間に形成された空間10の分だけ耐火物8の使用量が減り、操業コストの削減が可能となる。一方で、第1の鉄皮7は平面状のままであり、タンディッシュ1自体の強度は低下しない。それゆえ、第2実施形態のタンディッシュ1においても、鉄皮の構造を複雑化することなく耐火物8の使用量を抑えることが可能となる。
【0031】
また、図6に示すように、第2実施形態の変形例のタンディッシュ1は、上方に向かって台形状に突出した第2の鉄皮9を設けたものとなっており、図5のものに比べてなだらかに広がるような外観を呈している。このような第2の鉄皮9を設けても、「鉄皮の構造を複雑化することなく耐火物8の使用量を抑える」という本発明の作用効果を奏することができる。
【0032】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0033】
1 タンディッシュ
2 連続鋳造装置
3 取鍋
4 鋳型
5 サポートロール
6 浸漬ノズル
7 第1の鉄皮
7a 第1の鉄皮の底部
7b 第1の鉄皮の側壁
8 耐火物
9 第2の鉄皮
10 空間
11 支持体
12 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6