(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書は、本発明をより良く規定し、そして本発明の実施において当業者を案内するために定義及び方法を提供する。特定の用語又は成句に対して定義を提供するかしないかが、何らかの具体的な重要性の有無と矛盾することにはならない。むしろ、そして特に断りのない場合には、用語は当業者によって従来の慣用法に従って理解されるべきである。
【0013】
本明細書中に使用される「第1」、及び「第2」などはいかなる順番、量、又は重要性をも示すものではなく、1つの要素を別の要素から区別するために使用される。また、“a”及び“an”という用語は、量の制限を意味するのではなく、言及されたものの少なくとも1つの存在を意味するものであり、そして「前」、「後ろ」、「下」、及び/又は「上」という用語は、特に断りのない場合、説明の便宜上使用するにすぎず、記載の部分を、いずれか1つの位置又は空間的方向に限定するものではない。
【0014】
範囲が開示される場合、同じ成分又は特性に関する全ての範囲の終点は包括的であり、独立して組み合わせ可能である(例えば「最大約25wt%、より具体的には約5wt%〜約20wt%」という範囲は、約5wt%〜約25wt%の範囲の終点及び全ての中間値を含める、など)。量との関連において使用される修飾語「約」は、言及された値を含み、そして文脈によって決定づけられる意味を有する(例えば、具体的な量の測定に関連するある程度の誤差を含む)。本明細書中に使用される転化率パーセント(%)は、入来流に対する、反応器内の反応物のモル流又は質量流の変化を示すのに対して、選択率パーセント(%)は、反応物のモル流量の変化に対する反応器内の生成物のモル流量の変化を意味する。言うまでもなく、本明細書中の「栓流」は、反応器が理想的な栓流に近いことを示しており、必ずしも理想的な栓流が達成されていることを示しているわけではない。
【0015】
明細書全体を通して「1つの態様」又は「態様」と言うときには、これは、或る態様との関連において記載された具体的な構成要件、構造、又は特徴が少なくとも1つの態様内に含まれる。このように、「1つの態様」又は「態様」という成句が明細書全体を通して種々の場所に現れたときには、これは同じ態様を必ずしも意味しない。さらに、具体的な構成要件、構造、又は特徴は、1つ又は2つ以上の態様において任意の好適な形で組み合わされることもある。
【0016】
本発明は、塩素化及び/又はフッ素化
されたプロペン
及びより高級なアルケンを製造するための連続気相フリーラジカルプロセスで使用するのに適した断熱栓流反応器を提供する。有利なことに、反応器は、反応器を詰まらされるおそれのある反応成分の分解生成物を含む副生成物の生成を最小化する設計を含む。そうすることで、反応器内部で行われる反応の転化率パーセントを所望の範囲内に維持することができる。例えばいくつかの態様では、所望の選択率が見られるように、転化率の増大が5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満になるようにすることができる。別の言い方をすれば、少なくとも約5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約20%の限定試薬転化率では、所望の生成物への選択率は、約70%、又は約75%、又は約80%、又は約85%以上もの高さであることが可能である。このようなものとして、本発明の管状栓流反応器は、転化率パーセントの増大が典型的には反応副生成物の生成増大を示し、ひいては選択率パーセントの低下を示すおそれのあるような反応を実施するのに特に適している。
【0017】
本明細書中に記載された反応器は、任意の連続気相フリーラジカルプロセスで利用することができ、そして具体的には、均一且つ発熱性でもあるような反応に適している。本明細書中に記載された反応はまた、反応物の枯渇からはほど遠い所望の転化率の少なくとも1種の限定反応物、例えば転化率80%未満、40%未満、又は20%未満の限定反応物を伴う反応のために特に好適に使用される。上述のように、本発明の反応器はまた、副生成物が特に形成されやすいような反応、及び反応選択率に対する副生成物の影響を受けやすいような反応、又は例えば反応又は分解することにより望ましくない副生成物を形成するおそれがある熱感受性成分を含むような反応に特に適している。熱感受性成分は、例えば反応物、生成物、触媒、及びさらに反応又は熱分解して他の副生成物を形成し得る副生成物を含んでよい。熱感受性成分の組み合わせを含む反応も、本発明の反応器内で実施されることから利益を見いだすことができる。限定試薬の転化率がこのように低いときでも、そして副生成物が形成されやすい反応を実施するために使用されるときでも、本発明は、少なくとも約70%、又は約75%、又は約80%、又は約85%以上の、所望の生成物への選択率を提供することができる。
【0018】
このような反応の一例としては、塩素化及び/又はフッ素化
されたプロペン
及びより高級なアルケンを製造する反応が挙げられる。好ましいアルケンは、炭素原子数約3〜約6のものを含む。模範的な反応は、式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)に従った塩素化及び/又はフッ素化プロペンを提供するために、式:CH
4-a-bCl
aF
b(式中、a及びbはそれぞれ独立して0〜3であり、そして4−a−bは0より大きい)を有するクロロメタン、フルオロメタン、又はクロロフルオロメタンを含むメタン
類;及びクロロエチレン又はクロロフルオロエチレンの反応を含む。特に模範的な反応は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの反応、1,1,2−クロロ−3−フルオロ−プロペンを提供するためのフッ化メチルとペルクロロエチレンとの反応、及び1,1,2,3−テトラフルオロプロペンを提供するためのフッ化メチルとトリフルオロクロロエチレンとの反応を含む。しかし、これらは一例に過ぎず、本明細書中に記載された概念を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0019】
多くのパラメータが、管状反応器内部の反応条件を調節する上で有用であることが化学技術分野で知られているが、しかしこのようなパラメータは、本明細書中に記載された本発明よりも前には、所望の転化率が見られるように副生成物形成の低減をもたらすような形で適用されることはなく、そして/又は特に副生成物形成の低減を必要とする反応に適用されることはなかった。すなわち、断熱栓流反応器内で行われる反応が所望の転化率パーセントを有するように、熱感受性反応成分、例えば塩素を含む触媒又は開始剤を含む連続気相フリーラジカル反応を実施する際の使用に適合しやすくするために、断熱栓流反応器をどのように設計すべきかが今発見されたわけである。熱感受性反応成分を含む連続気相フリーラジカル反応の実施に伴う化学的性質が独自のものであるため、化学技術分野における当業者であれば、断熱栓流反応器を、これらの反応を行う候補の中で良い候補とは必ずしも考えないであろう。
【0020】
例えば、塩素化及び/又はフッ素化プロペンを製造するプロセスは典型的には、コンベンショナルなハロゲン化プロセスよりも大量の反応副生成物を形成することがある。すなわち、コンベンショナルなフリーラジカル・ハロゲン化反応において、ジェット攪拌型反応器によって提供されるような、反応器で促進される逆混合又は再循環は、副生成物形成を同時に増大させることなしに、反応器の生産性を高めると典型的には考えられている[Liu他, Chemical Engineering Science 59 (2004) 5167-5176]。本発明のプロセスでは、このような逆混合又は再循環は結果として、許容できない量の副生成物の形成をもたらすことになる。
【0021】
大量の副生成物の形成は、次にプロセス容量及び転化率に不都合な影響を及ぼすだけでなく、多くの理由から問題となる場合がある。その最たるものは、反応器の詰まりを引き起こし得ることである。反応器の詰まりは、実施されるべき所望の反応のために利用可能な反応器容積を事実上低減するおそれがある。例えば商業的に許容し得るスループットがもやは可能でない程度にまで詰まった反応器のために必要とされるクリーニングによって、望ましくない時間又は費用がこのプロセスに追加されることもある。副生成物形成はコンベンショナルな連続気相フリーラジカル・ハロゲン化反応の場合には典型的には問題でないので、当業者であれば、本明細書中に記載された塩素化及び/又はフッ素化反応に適用できるように、逆混合又は再循環を低減又は排除することによる、このような副生成物を低減するための解決手段を期待することはないであろう。
【0022】
塩素化及び/又はフッ素化
されたプロペン又はより高級なアルケンを製造するための本発明の改善された反応器は、少なくとも反応器内で発生する逆混合及び/又は再循環の量を最小化又は排除することによって、副生成物形成を最小化する。コンベンショナルな連続気相フリーラジカル・ハロゲン化反応において、逆混合及び/又は再循環は有害ではなく、望ましいことすらある。それというのも限定試薬が100%の転化率を得るからである。逆に、本発明の反応器内で行われるプロセスの場合、限定試薬の転化率は80%未満、又は40%未満、又は20%未満であることすらある。このような反応の転化率が大幅に増大することは典型的には望ましくない。それというのもこのことは、所望の最終生成物形成の増大ではなく、副生成物の形成の増大をもたらし得るからである。限定試薬の転化率がこのように低いときでも、そして副生成物が形成されやすい反応を実施するために使用されるときでも、本発明は、少なくとも約70%、又は約75%、又は約80%、又は約85%以上の、所望の生成物への選択率を提供することができる。
【0023】
反応器内に入る前、又は該反応器から出る際に発生し得る逆混合中の副生成物形成を低減するために逆混合及び/又は再循環ゾーンの低減を促進する設計の一例は、ミキサ及び/又はコレクタのない反応器を使用すること、及び/又は逆混合を最小化するように望ましい状態で利用されるミキサ及び/又はコレクタを再設計することを伴う。すなわち、多くの管状反応器は、流体接続されるミキサ及び/又はコレクタを有して構成することができ、反応物が反応器に提供され、或いは場合によっては、反応器流出物が反応器からディスペンシングされる。このようなコンベンショナルなミキサ/コレクタ内で、及び/又は反応器に対して従来通りに配列されたミキサ/コレクタ内で、逆混合が典型的に発生し得る。逆混合が発生し得るコンベンショナルなミキサの一例を
図1に示す。
【0024】
より具体的には、
図1に示されたミキサ100は、入口102及び104と、導管106とを含むコンベンショナルなTミキサである。
図1はまた、反応器108、及び反応器とミキサ100との関係を示している。動作中、入口102及び104は、供給材料源(図示せず)に流体接続され、それぞれ例えば反応物及び/又は希釈剤の供給材料流110及び112を導管106に、そしてこの導管106を通して提供する。導管106は反応器108に流体接続されている。
【0025】
図示のように、供給材料流110は導管106内部で供給材料流112に接触する。入口102と入口104との垂直の関係によって構成された流体動力学的特性により、供給材料流110と供給材料流112との次善最適の混合状態が典型的には生じ得る。ミキサ100のA−A線で見た断面114は、典型的にはこのような次善最適の混合状態から生じる供給材料流110と供給材料流112との関係を示している。
【0026】
さらに、ミキサ導管106と反応器108との直径の差により、合体した供給材料流110及び112は、反応器108内に入るときにはほぼ円錐形のパターンを成して扇形に広がり、デッドスペース116及び118を形成し、これらのデッドスペース内部には望ましくない逆混合及び/又は再循環が発生し得ると予想される。デッドスペース116及び118内で発生し得る反応を低減するために、このようなコンベンショナルなミキサを含む反応器内で行われる多くのコンベンショナルなプロセス/反応は、望ましくない反応が発生しない、又は発生しても小規模で済む、低くされた入口温度に依存する。入口温度を下げるためには、反応容積の増大が必要となり、このことは多くの用途において望ましくない。
【0027】
いかなるこのような逆混合及び/又は再循環をも低減又は排除するために、本発明の反応器を、コンベンショナルなミキサ及び/又はコレクタなしで提供することができ、これにより反応物は反応器内にほぼ直接的に供給され、そして/又は反応器流出物は、反応器から直接に液体急冷ゾーンに渡される。或いは、反応器及び任意のミキサ及び/又はコレクタの直径/形状を、ほぼ同じになるように構成してもよく、これにより逆混合又は再循環の区域が、反応器とコレクタとの間の異種のジオメトリによって形成されるデッドスペース内に形成されることはない。このようなミキサ及び/又はコレクタは、反応器と同じ長手方向軸線の周りに配置されることが望ましく、これにより反応物及び反応器流出物は、長手方向軸線に対してほぼ平行な方向に流れる。
【0028】
逆混合又は再循環を最小化するミキサ設計を有する反応器を提供することによって、逆混合又は再循環を低減することもできる。このような設計の一例が
図2に示されている。図示のように、ミキサ200は概ねシェル及び管形態を有している。すなわち、ミキサ200は管206に流体接続された入口202を含む。入口202は供給材料源(図示せず)から反応器208へ供給材料流210を提供する。ミキサ200はまた入口204を含んでおり、この入口204はシェル216に流体接続されている。入口204は、供給材料源(図示せず)から反応器208へ供給材料流212を提供する。この形態の結果、供給材料流210及び212は、界面218で見た断面214によってさらに示されているように、
図1に示されたコンベンショナルなミキサ100によって可能になる混合よりも均一且つ最適に混合される。ミキサ200の設計は多くのコンベンショナルなミキサ内に存在するデッドスペース(
図1に示されるデッドスペース116及び118)を実質的に排除し、ひいてはこのようなデッドスペース内で発生し得る逆混合を実質的に排除する。このようなものとして、反応器入口における温度は、逆混合反応を最適化するために調節するというよりも、むしろ反応のために最適化することができる。
【0029】
いくつかの態様の場合、反応器は副生成物形成をさらに最小化するために、又は、構成されるいかなる副生成物の影響も低減又は排除するために、1つ又は2つ以上の他の設計構成要件を追加して含むことができる。より具体的には、本明細書中に提供された反応器は、i)反応器への熱移動及び/又は反応器からの熱移動を最小化する設計;ii)反応混合物と、少なくとも1つの反応器管壁の少なくとも一部との間の境界のところでの反応混合物流を最適化する設計;iii)反応器流出物の温度を、副生成物の実質的な形成が生じない温度未満に低下させるのを促進する設計;及び/又はiv)反応器内で行われる反応の生産速度が、反応器流出物の温度を制御することによって調節されるのを可能にする設計、のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。ここに記載された反応器設計は任意の数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の反応器は、反応器への熱移動及び/又は反応器からの熱移動を最小化することを促進する設計、すなわち実質的に断熱動作する反応器の能力を促進する設計を備えていてよい。本明細書中に記載された管状反応器に適用される「断熱」という用語は、外部源からの加熱又は冷却がほとんど又は全く提供されることなく、反応器内部の実質的な加熱又は冷却が、反応器内で行われている発熱又は吸熱反応によって提供されることを意味する。
【0031】
種々の方法を利用して、反応器への熱移動及び/又は反応器からの熱移動を最小化することができる。しかし任意の量の1つのタイプの断熱材、又は任意の数の層を成す複数タイプの組み合わせで反応器を断熱することは、熱移動を最小化する1つの模範的な方法にすぎない。例えば有効熱伝導率0.05W/M/℃の断熱材を利用すると、内径6フィートの反応器内で10%に近い試薬転化率を維持することが予想される。ほぼこのような有効熱伝導率値を有する断熱材の一例としては、木材、ファイバーグラスウール、カポック、ロックウール、バルサムウール、板紙、コルク板、シリカエアロゲル、経木、バルサ、石膏、珪藻土、又はこれらの組み合わせが挙げられる。このような態様の場合、それぞれの層が同じか又は異なる機能を有する複数の断熱層を使用することができる。例えば、本発明の反応器は、腐食を最小化するための炭素鋼、煉瓦、又はセラミックから成る断熱層、及び熱移動障壁を提供するためのあまり特殊ではなく、そして/又はあまり高価ではない材料、例えばグラスウールから成る断熱層を含んでよい。
【0032】
反応器への熱移動及び/又は反応器からの熱移動を最小化するように、反応器直径を最適化してもよい。このような態様の場合、反応器直径は、反応器への熱移動及び/又は反応器からの熱移動が最小化されるように、少なくとも約0.5フィート、又は少なくとも約4フィート以上であることが望ましい。
【0033】
コンベンショナルな管状反応器を通る滞留時間が増大することも、望ましくない副生成物の形成を招くおそれがあり、そしてこのような副生成物形成は一般に、反応器管の内壁と、この管を流過する反応混合物との間の界面ところでの速度勾配層に起因して発生し得る。この層内の反応混合物の速度は典型的には、バルク速度における反応混合物の速度よりも低いのが典型的である。実際、速度勾配層の速度は、反応器壁でゼロに近づくことが可能である。このような低い速度により、この層内の反応物は、より長い滞留時間を被ることがある。このような長い滞留時間中には、望まれない副反応が発生するおそれがある。このような層を最小化することにより、反応器内部の反応成分の滞留時間を最適化し、ひいてはさもなければ生じるおそれのある副生成物形成を低減するのを助けることができる。
【0034】
そこで、本明細書中に提供された反応器の或る特定の態様では、反応器は、速度勾配層内部の反応成分流を最適化する設計を備えていてよい。1つの態様の場合、このことは、少なくとも約2100のレイノルズ数(Re)によって定義することができる乱流領域を反応器の少なくとも一部内に設けることによって達成できるように、層の深さ/厚さを最小化することによって達成することができる。ほぼ円形形態の場合、レイノルズ数は、等式:Re=4G/πDμ(式中、Gは質量流量(kg/s)であり、Dは管内径(m)であり、そしてμは粘度(1/kg/m/s)である)によって割り出すことができる。例えば1つのこのような態様は、内径約6フィート以下の反応器を通る約3.6MM#/dの流量を提供することを含むことができる。このような流量は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応に対して580,000を超えるレイノルズ数を示すと予想される。
【0035】
反応器管がほぼ円形ではない本発明の反応器の態様の場合、レイノルズ数は、水力直径D
hで除することによって決定することができ、D
hは流れ断面積を4倍して濡れ縁長さwで割り算される。このような態様ではレイノルズ数を決定するために使用される等式は、Re=4G/πD
hμ(式中、Gは質量流量(kg/s)であり、μは粘度(1/kg/m/s)であり、D
h=4A/wであり、ここでAは流れ断面積であり、wは濡れ縁長さである)となる。
【0036】
本発明の反応器は、反応器と接続された状態で設けられた任意のコレクタ内で副生成物を形成する反応、又は少なくとも1つの反応器管内部の反応ゾーンに先立って下流プロセスに反応流出物が提供されるのに伴って副生成物を形成する反応を阻止する温度で反応器流出物を提供するのを促進する設計を備えていてもよい。このような温度は、反応器内部で望ましく行われる反応に依存し、当業者であればこの温度を決定できることが予想される。例えば、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための模範的な反応の事例では、流出物温度は望ましくは350℃未満、又は270℃未満となり、これにより塩化メチルとペルクロロエチレンとは、副生成物、例えばテトラクロロブテン、グラファイト、他の炭素質堆積物、及び/又は塩化水素を提供するような反応をほとんど行わない。
【0037】
反応器流出物の温度は、望ましくは迅速に、すなわち大量のこのような副生成物が形成される機会を得る前に下げられる。大まかに言うと、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための模範的な反応の場合、反応器流出物の温度は、約5秒未満、又は約1秒未満で、350℃未満、又は約270℃未満まで冷却されるのが望ましい。別の言い方をすると、反応器流出物は約20℃/秒、又は50℃/秒、又は約100℃/秒の速度で冷却されるのが望ましい。
【0038】
所望の速度で冷却を行う好適な方法を用いて、所望の温度にすることができ、そしていくつかの態様の場合、所望の温度は液体急冷を介して達成することができる。このような態様の場合、急冷機能は、任意の好適な方法、例えば少なくとも1つのノズル、噴霧ノズル、又は堰型(weir)ノズルを介して温度調節流体を適用することによって発揮することができる。
【0039】
急冷機能で利用される温度調節流体は、所望の時間内で所望の温度を提供することができる任意の好適な流体となることができる。後で分離する必要がありひいてはプロセス費用を高くするさらなる成分がプロセスに添加されないように、温度調節流体は反応成分であると有利である。いくつかの態様の場合、急冷機能を発揮するために再循環反応生成物を利用してよく、そしてこの再循環反応生成物は、このように利用される前に例えば濾過を介して精製してよく、或いは精製しない形で利用してもよい。
【0040】
いくつかの態様の場合、本明細書中に提供された反応器は、反応器流出物の温度を制御することによって、生産速度が調節されるのを可能にする設計を含んでよい。このことを行う多くの方法が当業者に知られており、これらのうちのいずれも本反応器内で利用することができる。1つの模範的な方法は、1種又は2種以上の反応物、開始剤、並びに/又は希釈剤の流量及び/もしくは温度の個々の調節を可能にする設計を備えた反応器を提供することを含む。個々の流量調節は、調節されるのが望ましい反応成分のための別個の入口を設け、そしてさらに各入口に調節可能な弁を備えることによって行うことができる。そして制御又は調節されるのが望ましい各反応成分のための別々の温度制御方法を提供することにより、個々の温度調節を行うことができる。例えば、個々の温度調節が望ましいそれぞれの反応成分のために個々の予熱器を提供することができる。
【0041】
反応物、開始剤、ならびに/又は希釈剤に提供される流量及び/もしくは温度は、実施される具体的な反応、及びに達成されるべき所望の生産速度に依存する。大まかに言えば、生産速度約12〜約47KTA(1年当たりの千トン)で行われる例えば1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応のために、それぞれ約1.5〜約2.0MM#/d(1日当たりの百万ポンド)、及び約2.0〜約2.7MM#/dの塩化メチルとペルクロロエチレンとの流量が好適であることが予想される。開始剤、例えば塩素を含むものがこのプロセスにおいて使用されるのが望ましい場合、その流量は約0.20〜約0.25MM#/dであってよい。この特定の反応の反応物のためのこのような生産速度を達成するのに適した温度は、塩化メチルが約350℃〜約500℃(好ましくは400℃〜450℃)、ペルフルオロエチレンが約250℃〜約400℃(好ましくは300℃〜375℃)、そして開始剤を利用する場合には、四塩化炭素が約300℃〜約325℃である。
【0042】
改善された設計概念のうちの1つ又は2つ以上を、連続気相フリーラジカルプロセスで使用するための反応器内に有利に使用することができ、そしてこれらの概念は、反応器内の、分解生成物を含む副生成物の生成を最小化すると予想される。例えば設計概念のうちのいずれか2つを使用してよく、設計概念のうちのいずれか3つを使用してよく、設計概念のうちのいずれか4つを使用してよく、或いは設計概念のうちの5つ全てを使用してもよい。反応器が含むのが設計概念のうちの1つであるか、2つであるか、3つであるか、4つであるか、又は5つ全てであるかとは関係なしに、反応器内部で行われる反応の転化率パーセントは所望の範囲内に維持することができる。例えば、転化率パーセントが所望の転化率から変動するのは、約2%未満、又は約1%未満ですらあり得るので、所望の選択率パーセントを見いだすことができる。
【0043】
このように、本発明の反応器は、転化率パーセントの増大が典型的には反応副生成物生成量の増大、ひいては選択率パーセントの低下を示すような反応を実施するのに特に適している。このような反応は典型的に、枯渇とはほど遠い所望の転化率、例えば転化率80%未満、40%未満、又は20%未満を有する少なくとも1種の限定反応物を含むことができる。別の言い方をすれば、少なくとも約5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約20%である限定試薬転化率では、所望の生成物への選択率は、約70%、又は約75%、又は約80%、又は約85%以上もの高率であることが可能である。有利なことには、副生成物生成量を低減することにより、反応器管壁の詰まりを低減し、これにより反応器容量、ひいては反応収率を維持することもできる。
【0044】
本発明の反応器内で有利に実施することができる連続気相フリーラジカルプロセスの一例は、炭素原子数約3〜約6の塩素化及び/又はフッ素化アルケンを製造するプロセス、具体的には触媒/開始剤を構成する塩素を利用するプロセスを含む。このような触媒は、熱感受性である可能性があり、分解するか又は望ましくない形で反応して反応器詰まりを招くことがある。さらに、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成するための塩化メチルとペルクロロエチレンとの模範的な反応において、反応生成物それ自体は熱不安定であるだけではなく、さらに反応物及び反応副生成物と反応することによって他の副生成物をなおも形成しやすい。
【0045】
より具体的には、1,1,2,3−テトラクロロプロペンは、塩化メチル及びペルクロロエチレンと370℃で反応性であり、400℃〜500℃で熱不安定性であり、そして、その生成のためのコンベンショナルな反応条件、すなわち約500℃〜約750℃の温度で特に不安定である。続いて生じる望まれない反応及び/又は分解は、高濃度の不純物をもたらし、そして最終的にはより高い温度で熱コークス化を招く。連続供給型の工業用反応器の場合、コークス化は、時間とともに反応器生産能力のさらなる損失をもたらすことがよく知られており、しばしばクリーニング及びメンテナンスのために反応器を停止することを必要とする。本発明がそのように限定されているわけではないが、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造するための反応、並びに同様の熱感受性を有する反応物、生成物、希釈剤、又は副生成物を含む他の同様の反応が、本明細書中に開示された原理を適用することから特定の利益を見いだすことができる反応の例である。
【0046】
少なくとも約5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約20%の限定試薬転化率で、所望の生成物への選択率を約70%、又は約75%、又は約80%、又は約85%以上もの高さに維持する一方で、副生成物及び/又は分解生成物の生成を最小化しながら、本発明の反応器内でプロセスを実施することが可能になる。例えば、塩化メチルとペルクロロエチレンとから1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成する場合、限定試薬ペルクロロエチレンは、少なくとも5%で転化されると、90%の選択率で所望の生成物へ転化すると予想される。こうして、塩素化及び/又はフッ素化
されたプロペン
及びより高級なアルケンを生成するための連続プロセスにおいて本発明の反応器を使用すると、時間及びコストを著しく節減することができる。
【0047】
本発明の反応器によって提供される効率はさらに、反応器内で生成された塩素化及び/又はフッ素化
されたプロペン
及びより高級なアルケンをさらなる下流プロセスへ提供することによって、さらに活用することができる。例えば、記載された反応器を使用して生成された1,1,2,3−テトラクロロプロペンを、ヒドロフルオロオレフィン、例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)を含む下流生成物をさらに提供するように処理することができる。ヒドロフルオロオレフィン、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)の改善された製造方法もこうしてここに提供される。
【0048】
ヒドロフルオロオレフィンを提供するための塩素化及び/又はフッ素化
されたプロペン
及びより高級なアルケンの転化は大まかに言えば、式:C(X)
mCCl(Y)
n(C)(X)
mの化合物をフッ素化して、式:CF
3CF=CHZの少なくとも1つの化合物にすることを伴う単独反応、又は2つ又は3つ以上の反応を含むことができる(式中、それぞれX,Y及びZは独立して、H,F,Cl,I又はBrであり、そしてそれぞれのmは独立して1,2又は3であり、そしてnは0又は1である)。より具体的な例は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの原料を触媒気相反応においてフッ素化することによって、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのような化合物を形成する多工程プロセスを伴ってもよい。2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパンを次いで触媒気相反応を介して脱塩化水素することによって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンにする。
【実施例】
【0049】
本発明を例証する目的で下記例を示す。ただしこれらの例は本発明を何らかの形で限定しようとするものではない。本発明の範囲に含まれる例の種々様々な代替形及び変更形が当業者には明らかである。
【0050】
例1(比較)
1インチ内径のHastelloy反応器を約450℃〜約480℃に加熱する。塩化メチル及びペルクロロエチレンの流れをそれぞれ約50ml/hr〜約150ml/hr及び約180ml/hr〜約123ml/hrの液流で確立することにより、約10秒〜約23秒の滞留時間を達成する。
【0051】
液体供給材料を別々に蒸発させて予熱することにより供給ライン内で反応器温度と同じ温度にした後、反応器への供給前に1/2インチのライン内で混合した。反応器圧力を14.7psiaに設定する。1/2インチの供給ラインの後で、1インチ反応器の前区分(コンベンショナルな混合ゾーン)に、少なくとも近似栓流及び適正な混合を提供するために、深さ2インチのところにラッシング・リングを充填した。
【0052】
約3時間以内に約600℃のホットスポットが測定され、混合ゾーン内でグラファイトが形成され、これは反応器を塞いだ。コンベンショナルな混合領域(ここで1/2インチミキサが、ラッシング・リングを充填された1インチ整流器内に進入している)内に形成された温度、及び逆混合流又は再循環流プロフィールが、このゾーンに堆積される副生成物を生成する望まれない反応を引き起こしたと思われる。
【0053】
この例はこうして、反応器内の逆混合又は再循環の存在が、所望の生成物への極めて低い選択率、及びゼロに近い反応器生産力をもたらす。このことはこのプロセスを不経済にする。
【0054】
例2
この例では、開始剤四塩化炭素の存在においてペルクロロエチレンと塩化メチルとを反応させることにより、反応器内に1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供する。この反応器は、生産速度が反応器流出物の温度を制御することによって調節されるのを可能にする設計、及び断熱栓流反応器内に入る前の逆混合の低減を促進する設計、の両方を含む。より具体的には、反応器は、
図2に示された設計を有するミキサと、ペルクロロエチレン及び塩化メチルのための別々の蒸発器とを含む。
【0055】
温度約325℃及び供給速度約2.65MM#/dで、6フィート内径管状反応器内にペルクロロエチレンを導入する。塩化メチルを流量2.01MM#/d及び温度430℃で供給するのに対して、四塩化炭素を供給速度約0.25MM#/d及び温度325℃で反応器に提供する。ペルクロロエチレンが塩化メチル流よりも低い温度に設定されているので、反応流体は温度383℃で反応器に入り、反応器の圧力を260psigに維持する。反応物間の温度差並びにミキサの設計に基づいて、ミキサ内部の副生成物生成量は最小である。反応器生産力376gr/l/hrを提供するために、ペルクロロエチレンの転化率約10%とともに、1,1,2,3−テトラクロロプロペンへの選択率約90%を達成するための断熱温度上昇は27℃と予想される。この例から得られると予想される温度対反応器長さのデータを
図3に示す。
【0056】
例3
この例では、開始剤四塩化炭素の存在においてペルクロロエチレンと塩化メチルとを反応させることにより、反応器内に1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供する。この反応器は、生産速度が反応器流出物の温度を制御することによって調節されるのを可能にする設計、及び断熱栓流反応器内に入る前の逆混合及び/又は再循環の低減を促進する設計、の両方を含む。より具体的には、反応器は、
図2に示された設計を有するミキサと、ペルクロロエチレン/四塩化炭素及び塩化メチルのための別々の蒸発器を含む。
【0057】
それぞれ3500〜4500 SCCM、1400〜17000 SCCM、及び700〜980 SCCMの速度で、2インチ内径のInconel 600反応器に、塩化メチル、ペルクロロエチレン、及び四塩化炭素を供給することにより、260 psigにおいて約30〜40秒間の滞留時間を達成した。
【0058】
反応器には
図2に示されたミキサを備える。塩化メチル流を約340℃〜約370℃に予熱するのに対して、ペルクロロエチレン/四塩化炭素流を約310℃〜約360℃に予熱した。約405℃〜約415℃の反応器温度は結果として、ペルクロロエチレンの転化率約7.2%〜約9.6%、及び1,1,2,3−テトラクロロプロペン選択率約87%〜約90%をもたらした。反応器生産力は、80〜120gr/hr/lであることが判った。約7日間の連続運転の後、反応器を停止させて検査した。反応ゾーンは、僅かな炭素堆積物被膜を有するのが判った。
【0059】
例4
式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを、反応器への熱移動及び/又は反応器からの熱移動を最小化する設計を有する反応器を使用して、そして例2及び3に従って調製する。例2に記載されているのと同様の全反応器容積とともに、表1は、有効熱伝導率0.05W/M/℃の少なくとも10cmの断熱材が、6フィート内径の反応器内で10%に近い試薬転化率を維持すると予想されることを示している。
【0060】
表1はまた、断熱材を取り除き、Inconelの反応器金属壁をそのままにする結果、有効熱伝導率が20W/M/℃になることを示しており、これは、同じ反応器長さが使用される場合には、転化率又は生産力を50%超だけ低下させると予想される。反応器直径を小さくして1フィートにし、反応器容積及び断熱材厚さを同じに保つと、反応器生産力が約10%低下する。断熱材厚さを150%だけ増大させると、生産力を5%だけ取り戻すと予想される。
【0061】
【表1】
【0062】
例5
式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを、表2に示されているような、反応器への熱移動及び/又は反応器からの熱移動を最小化する設計を有する反応器を使用して、例2及び3に従って調製する。表2及び残りの表において、「Conv」は転化率を意味し、「Sel」は選択率を意味する。
【0063】
【表2】
【0064】
例6
式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを、速度勾配層内部の反応成分流を最適化する設計を有する反応器を使用して、そして例2に従って調製する。表3に示すように、2100未満のレイノルズ数を維持し、そして例2で使用されたのと同様の反応器容積及びこれとは異なる動作条件を用いて100分の1の低さの生産速度でも層流条件を達成するためには、大きい反応器内径を使用しなければならない。この大型直径の反応器及び連携するミキサは、より高い製造コストを必要とする可能性が高い。加えて、層流領域で動作する反応器内に速度プロフィールの著しい変動が存在することにより、乱流領域で動作する反応器よりも選択率が著しく低くなる[R. Bird他,“Transport Phenomena”, J. Wiley 1960]。
【0065】
【表3】
【0066】
例7
式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを、表4に示されているような速度勾配層内部の反応成分流を最適化する設計を有する反応器を使用して、そして例2に従って調製する。
【0067】
【表4】
【0068】
例8
式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを、例3に基づく反応器及び動作条件を用いて調製する。
【0069】
例8A(比較)
反応器流出物は温度が約410℃〜約420℃であり、これを約10秒未満の滞留時間で約270℃〜約350℃の温度まで冷却した後、約80℃未満の温度で内径0.5インチの冷却コイル内で凝縮する。約3.8%〜約5.0%の低いペルクロロエチレン転化率での1週間のランタイム後、反応器は冷却ゾーン内及び凝縮コイル内で重度に詰まり、閉塞により停止させられる。
【0070】
例8B
冷却ゾーン及び凝縮コイルを液体急冷チャンバで置き換えることにより、2倍の限定試薬転化率で、2週間を上回るランタイムをもたらした。反応器を開いても、噴霧急冷チャンバ内に詰まりは見られない。このことは、15℃/sを上回る急冷が、生成物急冷ゾーンにおける詰まりを最小化することを示す。
【0071】
例9
式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを、表5に示すような、副生成物を形成する反応を阻止する温度で反応器流出物を提供するのを促進する設計を有する反応器を使用して、そしてまた例3に従って調製する。
【0072】
【表5】
【0073】
所与の容積を有し、そして生産速度が反応器流出物の温度を制御することによって調節されるのを可能にする設計を有する反応器を使用して、また例2に従って、式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを、調製する。下記表6が示すところによれば、生産速度は、出口反応器温度を調節することによって独立して調節されると予想できるのに対して、生成物への選択率は温度が高くなるほど下降する傾向がある。実際に、温度が500℃よりも高くなると、選択率は、生産速度が下降し始めるほど低くなることが予想される。このように、低い原材料コストを可能にするために、約70%よりも高い選択率を維持するように450℃未満で作業することが望ましい。また、450℃未満の出口反応器温度において、所望の生成物への高い選択率を維持しつつ所望の生産速度を得るために、塩化メチル(R1)及びペルクロロエチレン(R2)の流量、及びこれらの対応する温度を調節することもできることを、表6は示している。これは
図4によっても示されている。
【0074】
【表6】
【0075】
例11
所与の容積を有し、そして生産速度が反応器流出物の温度を制御することによって調節されるのを可能にする設計を有する反応器を使用して、そしてまた例2に従って、式:CH
2-c-gCl
cF
g=CH
1-d-hCl
dF
h−CH
3-e-fCl
eF
f(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する塩素化及び/又はフッ素化プロペンを調製する。例7A〜7Cの場合、反応物1(R1)はCH
4-a-bCl
aF
bであり、また反応物2(R2)はクロロフルオロエチレンである。
【0076】
【表7】
【0077】
例12
例1〜4に従って調製された塩素化及び/又はフッ素化プロペンから、当業者に知られているいくつかの方法のうちのいずれかによって、ヒドロフルオロオレフィンを調製する。例えば、クロム/コバルト系触媒とともにHFを使用して、1,1,2,3−テトラクロロプロペンをHFO−1234yfに転化することは、国際公開第2008/054781号パンフレットに記載された方法に従って行うことができる。国際公開第2009/003084号パンフレットには、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの原料を液相中で触媒なしで、続いて触媒気相反応においてフッ素化することによって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)を形成する多工程プロセスが記載されている。このプロセスも好適である。米国特許出願公開第2009/0030244号明細書には、HCFC−1233xfを中間体として、HFによる触媒プロセスを用いて、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを使用してHFO1234yfを生成することが記載されている。このプロセスを用いてもよい。最後に米国特許出願公開第2009/0099396号明細書には、HFC−245ebを中間体として、1,1,2,3−テトラクロロプロペンをHVと好適に液相触媒反応させ、続いて気相反応させることが記載されている。これらの特許明細書は、あらゆる目的のためにその全体を参照することによって、ここに組み込まれる。
【0078】
本発明の特定の特徴だけを例示して明細書に具体的に説明し、記載してきたが、当業者には数多くの改変形及び変更形が明らかであろう。従って、添付の請求項は、本発明の真の思想の中に含まれるような改変形及び変更形全てに範囲が及ぶものとする。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
塩素化及び/又はフッ素化アルカンと塩素化及び/又はフッ素化アルケンの反応から、塩素化及び/又はフッ素化されたプロペン及びより高級なアルケンを製造するための連続気相フリーラジカルプロセスで使用するのに適した断熱栓流反応器であって、該反応器が、該反応器内に入る前、又は該反応器から出る際の逆混合及び/又は再循環の低減を促進する設計を含む、断熱栓流反応器。
[態様2]
該逆混合の低減を促進する設計が、該反応器からの反応器流出物を受容するように構成され、そしてさらに逆混合及び/又は再循環を最小化するように構成されたコレクタを含む、上記態様1に記載の反応器。
[態様3]
該逆混合及び/又は再循環の低減を促進する設計が、1種又は2種以上の反応物、開始剤及び/又は希釈剤を受容するように構成され、そして該反応物、開始剤及び/又は希釈剤の、逆混合及び/又は再循環を最小化するようにさらに構成されたミキサを含む、上記態様1に記載の反応器。
[態様4]
該反応器内への進入前に発生し得る逆混合及び/又は再循環時の副生成物の形成の低減を促進する設計が、低くても370℃の入口温度、又は少なくとも40gr/hr/lの反応器生産力を提供するための入口温度を含む、上記態様1に記載の反応器。
[態様5]
該反応器が、所望の転化率での副生成物生成を最小化する設計を含み、該反応器設計が、
i)該反応器への熱移動及び/又は該反応器からの熱移動を最小化する設計;
ii)該反応混合物と、少なくとも1つの反応器管壁の少なくとも一部との間の境界のところでの該反応混合物の流れを最適化する設計;
iii)反応器流出物の温度を、副生成物の実質的な形成が生じない温度未満に低下させるのを促進する設計;及び/又は
iv)該反応器内で行われるプロセスの生産速度が、該反応器流出物の温度を制御することによって調節されるのを可能にする設計、のうちの1つ又は2つ以上を含む、上記態様1に記載の反応器。
[態様6]
i)該反応器への熱移動及び/又は該反応器からの熱移動を最小化する設計;
ii)該反応混合物と、少なくとも1つの反応器管壁の少なくとも一部との間の境界のところでの反応混合物の流れを最適化する設計;
iii)反応器流出物の温度を、副生成物の実質的な形成が生じない温度未満に低下させるのを促進する設計;及び
iv)該反応器内で行われるプロセスの生産速度が、該反応器流出物の温度を制御することによって調節されるのを可能にする設計、を含む、上記態様5に記載の反応器。
[態様7]
上記態様1に記載の反応器を使用して、式:CH2−c−gClcFg=CH1−d−hCldFh−CH3−e−fCleFf(式中、cは0〜2であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、そしてgは0〜2であるが、c+g≦2、d+h≦1、そしてe+f≦3である)を有する、塩素化及び/又はフッ素化プロペン並びにより高級なアルケンを製造するプロセス。
[態様8]
該塩素化及び/又はフッ素化アルカンと塩素化及び/又はフッ素化アルケンが、式:CH4−a−bClaFb(式中、a及びbはそれぞれ独立して0〜3であり、そして4−a−bは0より大きい)を有するメタン、クロロメタン、フルオロメタン、又はクロロフルオロメタンを含む、上記態様7に記載のプロセス。
[態様9]
上記態様7に記載の方法を用いて調製された塩素化及び/又はフッ素化プロペン、又はより高級なアルケンを利用して、下流生成物を調製するプロセス。
[態様10]
上記態様7に記載の方法によって調製された1,1,2,3−テトラクロロプロペンを2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)に転化することを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)又は1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)を製造するプロセス。