【文献】
飯田 栄俊,”6分間歩行試験時の歩行速度による呼吸・循環動態に関する研究”,日本臨床生理学会雑誌 Vol.28,No.3,1998年,163-168頁
【文献】
"ATS Statement:Guidelines for the Six-Minute Walk Test",AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRITICAL CARE MEDICINE VOL 166,2002年,pp.111-117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る歩行試験装置の一例である6分間歩行試験装置1に関して、図面を参照して説明する。
【0032】
[6分間歩行試験装置の構成]
図2に示すように、本実施形態における6分間歩行試験装置1は、本体部100と、本体部100に接続されるフローセンサ150またはこれに代えて接続される鼻孔カニューラ180若しくはフェイスマスク190、SpO
2プローブ160、および、本体部100に指令信号やイベント信号を送信するワイヤレスリモコン170からなる。本体部100の内部には、受信部101、温度センサ102、電池103、圧力センサ104、加速度/地磁気センサ105、SpO
2モジュール106、A/D変換部107、CPU110、RAM121、ROM122、電磁弁123、および、USBドライバ回路124が設けられている。また、
図2および
図3に示すように、本体部100の筐体は、ルアーコネクタ142,143、SpO
2コネクタ141、DCジャック145、USBコネクタ131、タッチパネル付液晶132、ブザー133、およびLED134を備えている。
【0033】
圧力センサ104は、圧力を検出するための2つの圧力ポートを有しており、各圧力ポートには極性が存在する。一方の圧力ポートに陽圧が印加されたときにはプラス電圧が出力され、他方の圧力ポートに陽圧が印加されたときにはマイナス電圧が出力される。本例における圧力センサ104は差圧センサであり、両圧力ポート間の差圧に比例したアナログ信号を出力するものである。一方の圧力ポートにはルアーコネクタ142が接続され、、他方の圧力ポートにはルアーコネクタ143が接続される。圧力センサ104は、ルアーコネクタ142,143間の差圧を検出し、該検出された差圧に比例した電圧を出力するための出力端子を備えている。
【0034】
図3に示される例では、ルアーコネクタ142から呼気が印加された場合には、圧力センサ104の出力端子からマイナスの電圧が出力され、ルアーコネクタ143から呼気が印加された場合には、圧力センサ104の出力端子からプラスの電圧が出力される。これは呼吸機能検査のときに、一般的に呼気がマイナス値(ボリュームの減少)として表示され、吸気がプラス値(ボリュームの増加)として表示されることに対応したものである。
【0035】
A/D変換部107には圧力センサ104の出力に対応するA/D変換器が設けられており、これによりアナログ信号からディジタル信号に変換された差圧がCPU110により読み込まれ、差圧に基づいて呼吸流量や呼吸容量等の計算が実行される。
【0036】
フローセンサ150について
図4を用いて詳述する。フローセンサ150の筐体となるフローセンサケース151の側面には、フィルタやマウスピースを接続するための接続口152が設けられている。フローセンサケース151の下部にはフローセンサケース151を把持するためのハンドル156が設けられている。
【0037】
このフローセンサケース151内の流管153内には呼吸抵抗を生ずる抵抗体としてスクリーン155が配置されている。このスクリーン155はメッシュ状物であって、気体の流れを遮るように配置されており、この流管153内に気体の流れが生じるとスクリーン155の前後に差圧が発生する。このスクリーン155の前後の圧力は、該スクリーン155の前後に配される圧力ポートの各々と接続されるチューブ157,158を介して、本体部100のルアーコネクタ142,143に伝達される構成となっている。即ち差圧チューブを構成する2本のチューブ157,158のうち、チューブ157がスクリーン前方(接続口152側)の圧力を当該チューブ端子157aと接続される一方のルアーコネクタ142に伝達し、チューブ158がスクリーン後方の圧力を当該チューブ端子158aと接続される他方のルアーコネクタ143に伝達する。本体部100側(圧力センサ104)ではこれら2つのルアーコネクタ間の差圧を検出することにより、流管153内を流れる気体の流速、即ち呼吸流量を計測することができる。この呼吸流量は、呼吸流速とも呼ばれる。なお、この方式のフローセンサは、いわゆる差圧式と呼ばれるものであり、広く使用されている。
【0038】
ルアーコネクタ142,143にフローセンサ150が接続されているときに、被測定者が接続口152に接続されたマウスピースを口に固定した状態で呼吸することで、CPU110においては検出される差圧に応じた呼吸流量(以下「フロー」と称する場合がある)が算出され、さらに呼吸流量の積分により呼吸容量(以下「ボリューム」と称する場合がある)が算出される。なお、被測定者がマウスピースを隙間が無いようにくわえて、ノーズグリップを装着した状態(鼻呼吸ができない状態)で呼吸を行うことで、呼気・吸気の全量をフローセンサ150で補捉することができる。このようにして測定されるフローおよびボリュームはCPU110により読み込まれ、その測定値に基づいて努力性肺活量(FVC)、1秒量(FEV1)、1秒率(FEV1%)、%1秒量(%FEV1)等が算出される。このようにして得られた各測定値は、タッチパネル付液晶132に表示される。
【0039】
また、本体部100にフローセンサ150を接続することにより、被測定者の一回換気量および分時換気量を測定することが可能である。前述したように差圧に基づいてフローを算出し、フローの時間積分により一回換気量および分時換気量を算出可能である。一回換気量は呼気または吸気一回あたりの換気量であり、呼気フローに基づいて呼気一回換気量を算出し、吸気フローに基づいて吸気一回換気量を算出する。また、分時換気量は1分間当たりの換気量である。
【0040】
ここでフローセンサ150は、被測定者が安静状態にあるときには使用可能であるものの、歩行中は使用することができないという問題がある。これは、歩行中に接続口152に接続されるマウスピースを口にくわえたまま歩行させて測定を行うことが困難であるためである。また、仮にこのような状態で測定を行う場合、マウスピースを含む流管153内の容量が大きいため、呼気がマウスピースからフローセンサ内にかけて滞留してしまい、その空間の二酸化炭素濃度が上がり、呼吸が継続できない状態になるためである。
【0041】
そこで、歩行開始前にフローセンサ150を用いて前述した努力性肺活量(FVC)や1秒量(FEV1)等を測定した後は、フローセンサ150をルアーコネクタ142,143から取り外して、
図5に示す鼻孔カニューラ180の端子181aをルアーコネクタ142(すなわち呼気を印加したときにマイナスの電圧が出力されるポート)に接続して、被測定者の呼気・吸気を捕捉する。
【0042】
本実施形態における鼻孔カニューラ180は、塩化ビニル製の軟質チューブであり、
図5に示すように、幹管181と、幹管181の分岐部から枝分かれした右分岐管182と左分岐管183、ならびに分岐部と対向する位置において右分岐管182と左分岐管183を連結すると共に、被測定者の右鼻孔に挿入される右挿入管186および被測定者の左鼻孔に挿入される左挿入管187とを備える装着部材185からなる。幹管181にはチューブ端子181aが1つ設けられており、この点は2端子を有するフローセンサ150と異なる構造となっている。
【0043】
幹管181より分岐した右分岐管182および左分岐管183と、これらを連結する装着部材185により環状形状体が形成されている。被測定者はその環状形状体に頭を通して、右分岐管182を右耳の上にかけ、左分岐管183を左耳の上にかけ、さらに、右挿入管186を右鼻孔に挿入し、左挿入管187を左鼻孔に挿入した状態で歩行する。このようにすることで、マウスピースをくわえた状態で呼吸を行わなければならないフローセンサ150のような制約がなく、また、呼気(二酸化炭素)の滞留による息苦しさや装着時の重さを感じることなく、被測定者は快適に歩行試験を行うことができる。
【0044】
ここで鼻孔カニューラ180の幹管181に備えられるチューブ端子181aをルアーコネクタ142に接続した場合、残りのルアーコネクタ143は大気開放されるため、圧力センサ104では、大気圧と、幹管181内の圧力との差圧が検出されることになる。このようにして測定される差圧はCPU110により読み込まれ、差圧の変動に基づいて後述する呼吸回数等が算出される。このようにして得られた各測定値は、タッチパネル付液晶132に表示される。
【0045】
ここで鼻孔カニューラ180を用いる場合には、ルアーコネクタ143が大気開放された状態でルアーコネクタ142における呼吸圧を検出することになり、また、被測定者が口呼吸をした場合には、呼気・吸気の全量を捕捉できないため、フローを正確に測定することができない。しかしながら、1ポートであっても呼吸圧の変化を捕捉することは可能である。
【0046】
具体的には、鼻孔カニューラが接続される1のポートにおける呼気側と吸気側の圧力測定の感度が同じであると仮定して、計測される呼吸圧の基準レベルに対してオフセット補正を実行する。例えば、ある基準レベルにおける呼吸圧の測定値が、呼気側で10(絶対値)であるのに対し、吸気側で8(絶対値)であるとすると、呼気側と吸気側の値を同じ(すなわち呼気量と吸気量とが同じ)とするように、基準レベルを呼気側に1(絶対値)分シフトしてオフセット調整を行う。そうすると、呼気側で9(絶対値)、吸気側で9(絶対値)というように同じ値となる。オフセット補正後の基準レベルにおける呼吸圧を、以下ではフロー相当と称し、前述したフローと区別するものとする。
【0047】
フロー相当の時間積分により一回換気量相当および分時換気量相当を算出可能である。一回換気量相当はフロー相当を対象とした呼気または吸気一回あたりの換気量であり、呼気フローに基づいて呼気一回換気量相当を算出し、吸気フローに基づいて吸気一回換気量相当を算出する。また、分時換気量相当はフロー相当を対象とした1分間当たりの換気量である。
【0048】
なお、フローセンサ150を使用する場合と異なり、フローを正確に測定することができない条件下で得られた呼吸圧に基づいて一回換気量や分時換気量を測定しているため、以下では、このような条件下において測定された一回換気量を「一回換気量相当」と称し、分時換気量を「分時換気量相当」と称している。本実施形態において単に「換気量」と言う場合には、フローセンサ150を接続した状態で測定可能となる一回換気量および分時換気量、ならびに、鼻孔カニューラ180(あるいは後述するフェイスマスク190)を接続した状態で測定可能となる一回換気量相当および分時換気量相当の全てを含む概念である。
【0049】
ここで、被測定者に酸素を供給しながら歩行試験を行う場合には、
図6または
図7に示すような鼻孔カニューラを使用すると良い。このような鼻孔カニューラはデュアルルーメンカニューラと称されるものであり、2つのチューブから構成されている。例えば、
図6に示すように、断面が右挿入管186と同心円状となる内管186a、断面が左挿入管187と同心円状となる内管187aが設けられており、内管186aおよび187aは、酸素ボンベや酸素濃縮器に接続される酸素供給用チューブとなっている。これにより酸素は内管186a,187aから被測定者に供給される。また、右挿入管186および左挿入管187は、本体部100のルアーコネクタ142に接続される呼吸圧検出用チューブに連接されている。これにより、被測定者に酸素を供給しながら呼吸回数や換気量を測定することも可能となり、HOTを行っている被測定者に対して歩行試験を行うことも可能となる。
【0050】
また、
図7に示す例では、右挿入管186の断面を2領域に分割する壁部186b、左挿入管187の断面を2領域に分割する壁部187bが設けられている。壁部186bおよび壁部187bにより区分される1方の領域は、酸素ボンベや酸素濃縮器に接続される酸素供給用チューブに連接されている。また、壁部186bおよび壁部187bにより区分される他方の領域は、本体部100のルアーコネクタ142に接続される呼吸圧検出用チューブに連接されている。これにより、被測定者に酸素を供給しながら呼吸回数や換気量を測定することも可能となり、HOTを行っている被測定者に対して歩行試験を行うことも可能となる。
【0051】
SpO
2プローブ160は、被測定者の指先に装着されるトランスデューサであり、発光部と受光部(センサ)から構成されている。発光部からは赤色光および赤外光が発せられ、受光部(センサ)では、指先を透過した各光の透過光量(または指先で反射した各光の反射光量)を測定して電気信号として出力する。SpO
2プローブ160は、
図3に示す本体部100のSpO
2コネクタ141に接続される。SpO
2モジュール106は、SpO
2プローブ160から出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備えており、発光部から発生された赤色光および赤外光の光量に対しての各光の透過光量(または反射光量)に基づいてSpO
2を算出すると共に、脈波信号を生成し、各々を電気信号として出力する。CPU110は、SpO
2モジュール106から出力される拍動のある脈波信号により脈拍数を計数する。このようにして測定されるSpO
2や脈拍数はCPU110によりRAM121に記憶され、タッチパネル付液晶132に表示される。
【0052】
ワイヤレスリモコン170は、例えば複数のボタンが設けられた無線式のリモコンであり、操作されたボタンに応じた信号が出力される。受信部101は、例えば受信した信号をダウンコンバートしてA/D変換し、所定の形式でCPU110に出力し、CPU110では、出力信号に応じた制御を実行する。例えば、ワイヤレスリモコン170には、試験の状況や被測定者の状態に応じたイベントボタンや表示切替ボタンが設けられている。例えば「測定開始」のイベントボタンが操作された場合には、これに応じた信号を受信したCPU110がタッチパネル付液晶132に「安静呼吸して下さい」とのメッセージを表示することにより、被測定者に安静呼吸する旨を促す。また、表示切替ボタンが操作された場合には、タッチパネル付液晶132の表示内容を切り替える。
【0053】
温度センサ102は、本体100内部の温度を測定するものであり、例えばダイオードの順方向電圧に基づいて温度を測定可能なダイオード式の温度センサである。A/D変換部107には温度センサ102の出力に対応するA/D変換器が設けられており、これによりアナログ信号からディジタル信号に変換された電圧値がCPU110により読み込まれ、その電圧値に応じた温度が算出される。このようにして測定される温度はRAM121に記憶され、タッチパネル付液晶132に表示される。
【0054】
電池103は、本実施の形態では乾電池であり、本体部100への給電手段の1つである。A/D変換部107には電池103の両極電圧に対応するA/D変換器が設けられており、これによりアナログ信号からディジタル信号に変換された電圧値がCPU110により読み込まれ、その電圧値に応じた大まかな残量が判定される(例えば残量が「多い」あるいは「少い」程度)。このようにして判定される残量はRAM121に記憶され、タッチパネル付液晶132に表示される。なお、この実施の形態においては、
図3に示すように、本体部100にDCジャック145が設けられており、そのDCジャック145にAC/DCアダプタを介して家庭用電源から本体部100に給電可能である。また、後述するUSBコネクタ131からも本体部100に給電可能となっており、所謂3電源タイプの装置となっている。
【0055】
加速度/地磁気センサ105は、3軸加速度センサと3軸地磁気センサが一体化された6軸センサである。3軸加速度センサからは3軸方向の各加速度に応じた電圧が出力され、3軸地磁気センサからは3軸方向の各地磁気に応じた電圧が出力される。A/D変換部107には加速度/地磁気センサ105の6軸の電圧に対応するA/D変換器が設けられており、これによりアナログ信号からディジタル信号に変換された電圧値がCPU110により読み込まれる。このようにして測定される3軸方向の加速度、3軸方向の地磁気は、RAM121に記憶され、タッチパネル付液晶132に表示される。なお、このような6軸センサにA/Dコンバータが組み込まれたモジュールを使用するようにしても良い。また、CPU110は、後述するように、3軸加速度センサの出力および3軸地磁気センサの出力に基づいて被測定者の歩行距離を算出することができる。なお、本実施形態では、3軸加速度センサと3軸地磁気センサが一体化された6軸センサを用いているが、3軸加速度センサと3軸地磁気センサに加えて、さらに角速度センサまで一体化された9軸センサを用いるようにしても良い。
【0056】
CPU110は、ROM122に記憶されている6分間歩行試験プログラムをRAM121を作業領域として実行することにより、接続される各構成要素の動作を制御して、あるいは各構成要素からの信号を受信して各種の処理を行うものである。6分間歩行試験において測定される各データは、RAM121に蓄積され、6分間歩行試験が終了するとRAM121に蓄積されたデータがROM122に記憶される。
【0057】
不揮発性のメモリであるROM122は、上記のように測定データを記憶する他、6分間歩行試験プログラム等の測定プログラムも記憶している。電磁弁123は、図示しないトランジスタスイッチを介してCPU110により駆動される。本実施形態では、電磁弁123は、圧力センサ104に接続されており、電磁弁123が開放されることで圧力センサ104が大気圧を測定し、これによりゼロ点補正を行うことができる。
【0058】
図2および
図3に示すUSBコネクタ131は、PC2等の上位機器のUSBコネクタと接続され、上機機器とのインターフェイスを司るものである。USBドライバ回路124は、USBコネクタ131により接続された上位機器やCPU110との通信を制御する。例えば、USBコネクタ131に上位機器が接続されたことを検知して、これに応じたコマンドをCPU110に送信する。これに伴い、CPU110は、ROM122に記憶している測定データをUSBドライバ回路124に出力し、USB ドライバ回路124は入力された測定データをUSB規格に準拠した信号に変換して、上位機器に送信する。このように、USBインターフェイスを介してPC2等の上位機器に測定データを転送することが可能となっている。また、USBコネクタ131に接続された上位機器から本体部100に給電することが可能である。
【0059】
タッチパネル付液晶132は、例えば、TFT液晶と4線抵抗膜式のタッチパネルが一体化されたタッチパネル液晶モジュールである。タッチパネルがタッチされるとX軸用の抵抗膜とY軸用の抵抗膜が接触し、接触箇所の抵抗に応じた信号が出力される。この実施形態ではタッチパネル付液晶132はA/D変換器が含まれたモジュール形式のものであり、接触座標を示すX軸信号、Y軸信号がディジタル信号としてCPU110に入力され、接触座標に応じた処理が実行される。また、6分間歩行試験における測定データはTFT液晶に表示される。
【0060】
ブザー133は、所定のブザー音を出力することにより報知を行うものであり、例えば被測定者の状態に応じてブザー音を発する。LED134は、所定態様で点灯または点滅することにより報知を行うものであり、例えば歩行試験装置の状態に応じた態様で点灯または点滅する。ブザー133の音出力制御、および、LED134の点灯・点滅制御はCPU110により行われる。スピーカ135は、音声出力制御用の制御基板である不図示の音声制御基板を介してCPU110と接続されている。音声制御基板には、CPU110からの制御データに基づき、スピーカ135から音声を出力するための音声信号処理を実行する処理回路などが搭載されている。
【0061】
[6分間歩行試験プログラムの実行]
(歩行開始前の測定)
6分間歩行試験の開始に先立って、タッチパネル付液晶132を使用して被測定者の年齢、性別、身長、体重等を入力する。そして、本体部100にフローセンサ150を接続して、安静状態の確認後、努力性肺活量(FVC)、1秒量(FEV1)、1秒率(FEV1%)、%1秒量(%FEV1)等を測定する。なお、1秒量の予測値は予めプログラム内に記憶されている式と入力されたデータに基づいて算出される。また、SpO
2プローブ160を被測定者の指先に装着して、歩行開始前のSpO
2および脈拍数を測定する。さらに、修正Borgスケールによる確認を行い、収縮期および拡張期を把握すべく血圧も測定しておく。
【0062】
(歩行中の測定)
次に、本体部100からフローセンサ150を取り外し、これに替えて鼻孔カニューラ180を接続すると共に、被測定者に装着する。また、SpO
2プローブ160を被測定者の指先に装着する。両機器の装着後、本体部100に給電されている状態でワイヤレスリモコン170に設けられている「測定開始」ボタンが操作されるか、または、タッチパネル付液晶132に表示された「測定開始」アイコンがタッチされると、6分間歩行試験プログラムの実行が開始される。これに伴い、CPU110は、タッチパネル付液晶132に「安静呼吸して下さい」のメッセージを表示して、被測定者に安静時換気を促すと共に、安静時換気が行われているか否かを確認する。例えば、平滑化した呼吸圧の微分値が正から負(または負から正)に切り替わる周期が所定回数連続して一定の範囲内(例えば5秒〜10秒の範囲)に収まったときに安静時換気を確認したものとする。
【0063】
CPU110は、安静時換気が行われていることと、SpO
2が予め設定した範囲であることを確認すると、「試験開始できます」のメッセージを表示して、測定者に試験が開始できることを通知し、測定者は被測定者の状態を確認した上で、被測定者に「準備ができたら歩行開始してください」と告げる。そして測定者は、被測定者が歩行を開始した時点で、ワイヤレスリモコン170に設けられている「歩行開始」ボタンを操作すると、これに応じた信号を受信したCPU110では6分間のカウントを開始する。これに伴い、検出される呼吸圧に基づいて、呼吸回数、一回換気量相当、および、分時換気量相当の各項目が測定される。また、SpO
2プローブ160の出力に基づいてSpO
2の記録が開始される。さらに加速度/地磁気センサ105の出力に基づいて歩数、歩行速度、および歩行距離が測定される。これら歩行データの測定方法に関しては後述する。
【0064】
なお、被測定者のSpO
2が所定幅以上低下した場合あるいは所定値以下に低下した場合には、ブザー133からブザー音が出力されることにより、被測定者のSpO
2が良好値ではない旨を報知する。これにより、医療スタッフは歩行試験の中止、あるいは休憩の必要性を判断することができる。例えば、在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy)を行っている被測定者は、通常は酸素ガスが供給されている状態であるが、呼吸機能検査において酸素ガスを供給しない大気環境下で、通常よりも低い酸素濃度で測定をすることがある。さらに呼吸機能検査においては、努力性肺活量等を測定する場合に、通常の呼吸よりも努力を要する呼吸を患者に行わせることになるため大きな負担となる。このような場合に、過度な負担が生じているか否かをSpO
2によって判定し、ブザー音で警告することにより被測定者が危険な状態に陥らないようにすることができる。また、酸素ボンベ等からデュアルルーメンカニューラあるいはフェイスマスクを介して被測定者に酸素ガスが供給される状態で歩行試験を行う場合にも、チューブのねじれや装着不備等によって適切に酸素ガスが供給されないケースがある。このような場合にも、SpO
2の低下を検出してブザー音で警告することにより、危険を防止することができる。
【0065】
また、6分間歩行試験装置1は、スピーカ135を介して、歩行試験中に被測定者に対して声掛けを行うことが可能に構成されている。具体的には、例えば、6分間の歩行試験中に、その時点での被測定者の歩行状態や身体状態を表す内容(例えば、『上手に歩けています』といった内容)を被測定者に報知することを目的とする声掛けや、歩行試験の残り時間を表す内容(例えば、『残り時間はあと×分です』といった内容)を被測定者に報知することを目的とする声掛けを行う歩行支援処理を実行するようにしてもよい。
【0066】
この場合は、被測定者が声掛けのタイミングを把握し易いように、例えば歩行試験中に一定時間間隔毎のタイミング(好適には1分毎のタイミング)で声掛けを行うようにするとよい。また、歩行試験終了の一定時間前のタイミング(好適には15秒前のタイミング)で、歩行試験の終了が近づいていることを声掛けやビープ音を音出力することによって被測定者に報知するとよい。なお、歩行試験の残り時間を表す内容の声掛けを行う場合において、『残り時間はあと×分です』の“×”の部分、つまり歩行試験終了までの残り時間(分)を表す数字の部分の音声のみを変えることとして、音声合成によって上記のメッセージを音出力させるようにしてもよい。
【0067】
また、上記の歩行支援処理として、一定のリズムでの歩行を促す音声を音出力させたり、一定のリズムでの歩行を促すように一定時間間隔でビープ音を音出力させるなどの制御を行うこととしてもよい。
【0068】
また、6分間歩行試験装置1は、歩行試験中に循環器系項目や呼吸器系項目の測定値が危険な状態を示す値となった場合に、被測定者に対して歩行試験の中断や中止を促す注意喚起報知処理を行うことが可能に構成されている。具体的には、例えば、SpO
2が所定の下限値を下回った場合や、脈拍数が所定の上限値を上回った場合や、呼吸回数が所定の上限値を上回った場合に、アラームや警告音、警告音声を出力するなどして、それ以上歩行試験を継続すると危険である旨を被測定者に報知する。
【0069】
「呼吸回数」(RRとも称される)は1分間における被測定者の呼吸回数であり、平滑化した呼吸圧の微分値が正から負(または負から正)に切り替わる回数をカウントすることにより測定される。また、「一回換気量」(VTとも称される)とは、安静時における呼吸1回あたりの換気量であり呼吸1回における呼吸圧の積分値として算出される。ただし、この実施形態においては前述したように鼻孔カニューラ180使用時には「一回換気量相当」を算出する。また、「分時換気量」(TEとも称される)とは、安静時における1分間あたりの換気量であり「一回換気量」×「呼吸回数」として算出される。ただし、この実施形態においては前述したように鼻孔カニューラ180使用時には「分時換気量相当」を算出する。
【0070】
また、SpO
2プローブ160の出力によりCPU110において脈波の波形(時系列データ)を構築可能であるため、これに基づいて「脈拍数」を算出することが可能である。「脈拍数」は1分間における被測定者の脈拍数であり、脈波の時系列データを平滑化した後、その微分値が正から負(または負から正)に切り替わる回数をカウントすることにより測定される。
【0071】
このようにして測定された呼吸回数、一回換気量相当、および分時換気量相当、ならびに脈拍数は、
図8〜
図10に示すように時系列データとして記録されると共に、タッチパネル付液晶132にグラフ形式で表示される。
図8〜
図10の例では、歩行試験開始からの経過時間を共通のX軸として、Y軸を呼吸回数、一回換気量相当、および分時換気量相当、ならびに脈拍数の各項目の測定値に対応させてグラフ形式で表示している。このように歩行試験開始からの経過時間を基準として、呼吸回数、一回換気量相当、および分時換気量相当、ならびに脈拍数を比較可能な態様で表示することにより、呼吸機能に係る項目である呼吸回数、一回換気量相当、および分時換気量相当と、循環機能に係る項目である脈拍数の時間推移を対比することができる。その結果、以下のような判定を行うことが可能となる。
【0072】
まず、
図8の例では測定開始からの時間経過に伴い、呼吸回数、分時換気量相当、および一回換気量相当の上昇が緩やかになり(3分経過時)、その後に脈拍数の上昇が緩やかになっている(4分経過時)。すなわち、循環器系の項目である脈拍数よりも、呼吸器系の項目である呼吸回数、分時換気量相当、および一回換気量相当の方が早く頭打ちになっていることにより、運動量の増加に対して呼吸器系の機能が追い付かず、その結果として歩行距離が抑制されるという事象を推定することができる。このように、歩行試験における被測定者の状態を定量的に評価することができ、運動制限因子が呼吸器系にあることを推定することができる。
【0073】
また、
図9の例では測定開始からの時間経過に伴い、まず脈拍数の上昇が緩やかになり(2分経過時)、その後に呼吸回数、分時換気量相当、および一回換気量相当の上昇が緩やかになっている(3分経過時)。すなわち、呼吸器系の項目である呼吸回数、分時換気量相当、および一回換気量相当よりも、循環器系の項目である脈拍数の方が早く頭打ちになっていることにより、運動量の増加に対して循環器系の機能が追い付かず、その結果として歩行距離が抑制されるという事象を推定することができる。このように、歩行試験における被測定者の状態を定量的に評価することができ、運動制限因子が循環器系にあることを推定することができる。
【0074】
また、
図10の例では測定開始からの時間経過に伴い、脈拍数、並びに、呼吸回数、分時換気量相当、および一回換気量相当が継続的に上昇しており、
図8および
図9の例のように上昇が緩やかになっている時点を明確に把握できない。すなわち、呼吸器系の項目である呼吸回数、分時換気量相当、および一回換気量相当、ならびに、循環器系の項目である脈拍数が頭打ちになっていないが、歩行距離が短い場合には、運動量の増加に対して筋力系の機能が追いつかず、その結果として歩行距離が抑制されるという事象を推定することができる。このように、歩行試験における被測定者の状態を定量的に評価することができ、運動制限因子が筋力系にあることを推定することができる。
【0075】
(変曲点の算出)
図8〜
図10に示したように、呼吸器系および循環器系の各項目の時間推移を共通の時間軸でグラフ表示することにより、被測定者の歩行距離が呼吸器系、循環器系、あるいは筋力系のいずれの要因によって抑制されているかを推定することができるが、例えば以下のステップに基づいて各項目の変曲点を算出することにより、運動制限因子をより明確に把握することが可能となる。
【0076】
(1)変数の初期化:傾き変化フラグ(Ang=0)、傾き変化継続カウンタ(Cnt=0)を初期化する。
(2)移動平均の算出:Tv(m)をm個目のデータ、Tv(m-4)からTv(m)までの5個のデータの平均を移動平均Av(n)とする。Av(n)は、以下の式となる。n=m-4であり、Tv(5)以降からAv(n)を計算可能である。
【数1】
【0077】
(3)傾き変化フラグのセット・非セット:Av(n-1)とAv(n)の差をD(n)とし、D(n)が3%以下、すなわち、以下の条件が成立する場合には、傾き変化フラグをセット(Ang=1)する。以下の条件が成立しない場合には傾き変化フラグを非セット(Ang=0)とする。
【数2】
【0078】
(4)傾き変化フラグセット時・非セット時のカウント:次に測定したTv(m+1)に基づいて(2)(3)の計算を行う(Av(n+1)、D(n+1))。傾き変化フラグがセットされていれば(Ang=1)、傾き変化継続カウンタCntを1加算更新する(Cnt=Cnt+1)。傾き変化フラグがセットされていなければ(Ang=0)、傾き変化継続カウンタCntを1減算更新する(Cnt=Cnt-1)。
(5)平坦判定:その後に測定したTvに基づいて(2)(3)(4)の計算を行い、傾き変化継続カウンタが一定値に達した場合(例えばCnt=5となった場合)、すなわち増加率または減少率が小さい状態が所定時間以上継続した場合には、平坦フラグをセット(Pln=1)して、傾き変化継続カウンタをリセット(Cnt=0)し、最初の測定値であるTv(1)から今回取得したTv(n)までのデータを用いて線形回帰直線Aを求める。この時のnを変曲点としてInf=nとして記憶する。
ただし、この変曲点は回帰直線同士の交点ではないので、以下の(6)(7)(8)により、平坦領域における線形回帰直線Bを引いて、線形回帰直線Aとの交点を求めたものを真の変曲点とする。
【0079】
(6)傾き変化フラグセット時・非セット時のカウント:その後に測定したTvに基づいて(2)(3)の計算を行う。平坦フラグがセットされ(Pln=1)かつ傾き変化フラグAng=0(傾きが大きい)であれば、傾き変化継続カウンタCntを1加算更新する(Cnt=Cnt+1)。平坦フラグがセットされ(Pln=1)かつ傾き変化フラグAng=1であり、且つ、傾き変化継続カウンタCntが0でなければ(Cnt>0)、傾き変化継続カウンタCntを1減算更新する(Cnt=Cnt-1)。
(7)傾き変化判定:傾き変化継続カウンタが一定値に達した場合(例えばCnt=5となった場合)、すなわち増加率または減少率が大きい状態が所定時間以上継続した場合には、平坦フラグをリセット(Pln=0)して、傾き変化継続カウンタをリセット(Cnt=0)し、(5)で算出した変曲点Tv(Inf)から今回取得したTvまでのデータを用いて線形回帰直線Bを求める。
【0080】
(8)グラフ表示:線形回帰直線Aと線形回帰直線Bをグラフ上に表示すると共に、両直線の交点を変曲点として明確に表示する。例えば、各項目について傾き変化領域に係る線形回帰直線Aおよび平坦領域に係る線形回帰直線Bを表示すると共に、
図8および
図9に例示されるように各項目の変曲点からX軸に直交する(Y軸と平行な)直線を表示して、各項目の変曲点のX座標を明確に表示する。これにより、いずれの項目の変曲点が測定開始から早い時点で生じたか、あるいは変曲点が生じていないかを容易に確認することが可能となり、被測定者の歩行距離が呼吸器系、循環器系、あるいは筋力系のいずれの要因によって抑制されているかを推定することが容易になる。
【0081】
ここで(8)のグラフ表示を行った後、あるいはこれに代えて、運動制限因子をタッチパネル付液晶132に表示するようにしても良い。例えば、
図8に示す例においては、呼吸器系項目(呼吸回数、分時換気量相当、一回換気量相当)の変曲点が、循環器系項目(脈拍数)の変曲点よりも早い時点で確認されることに基づいて、「運動制限因子は呼吸器系です」と表示するようにすると良い。また、
図9に示す例においては、循環器系項目(脈拍数)の変曲点が、呼吸器系項目(呼吸回数、分時換気量相当、一回換気量相当)の変曲点よりも早い時点で確認されることに基づいて、「運動制限因子は循環器系です」と表示するようにすると良い。また、
図10に示す例においては、呼吸器系項目(呼吸回数、分時換気量相当、一回換気量相当)の変曲点、循環器系項目(脈拍数)の変曲点のいずれも認められないことから、「運動制限因子は筋力系です」と表示するようにすると良い。これにより、被測定者の歩行距離が呼吸器系、循環器系、あるいは筋力系のいずれの要因によって抑制されているかを推定することがさらに容易になる。
【0082】
上記に示した例では、呼吸器系の測定項目として、呼吸回数、分時換気量相当、および一回換気量相当、循環器系の測定項目として、脈拍数を測定しているがこれらの測定項目は呼吸圧および脈波波形に基づいて測定可能である。このように被測定者から容易に測定可能な項目に基づいて運動制限因子を推定することができる。
【0083】
(呼吸機能の解析)
前述したように、本実施形態に係る6分間歩行試験装置1においては,呼吸器系の項目として、圧力変化の他、呼吸回数、一回換気量相当、分時換気量相当、およびSpO
2の経時変化を測定している。これらの測定データについて、共通の時間軸(X軸)を用いたグラフ表示を行うことも可能である。
【0084】
また、この実施形態においては、
図11に示すように、呼吸回数と一回換気量相当の関係を示すグラフを作成することが可能である。この例ではX軸を呼吸回数とし、Y軸を一回換気量相当としたグラフを作成し、タッチパネル付液晶132に表示する。このグラフによって以下に示すような呼吸器系の解析が可能となる。
【0085】
まず、
図11(A)に示すように、健常人の場合には、運動量に伴う換気量の増加は、一回換気量の増加によってカバーするため、呼吸回数の増加は狭い範囲となる。この場合の有効肺胞換気量は高く、呼吸筋の負担は小さい。グラフは右肩上がりのパターンを示す(線形回帰直線(Y=AX+B)の係数Aが正となる)。これに対して、
図11(B)に示すように、COPD患者の場合には、過膨張により呼吸基準位が上昇して、一回換気量が減少し、その結果、換気量を維持しようとして呼吸回数が増加し、呼吸困難感が増大する。この場合の有効肺胞換気量は低く、呼吸筋の負担は大きい。グラフは右肩下がりのパターンを示す(線形回帰直線(Y=AX+B)の係数Aが負となる)。このような結果に基づいて、医療スタッフは、腹式呼吸等の呼吸指導により、呼吸筋負担の軽減と運動耐容能を改善する等の措置をとるべきである、また、呼吸困難感の改善によりQOL(quality of life)の改善を図るべきであるといったような判断をすることができる。このように、線形回帰直線によって被測定者の呼吸機能を判定することが可能であり、例えば、線形回帰直線(Y=AX+B)の係数Aが、所定範囲(例えば−2≦A≦2)である場合には、COPDの疑いがあると推定することができる。
【0086】
また、この実施形態においては、
図12に示すように、呼吸回数と分時換気量相当の関係を示すグラフを作成することが可能である。この例ではX軸を呼吸回数とし、Y軸を分時換気量相当としたグラフを作成し、タッチパネル付液晶132に表示する。このグラフによって以下に示すような呼吸器系の解析が可能となる。
【0087】
まず、
図12(A)に示すように、健常人の場合には、呼吸回数の変化が小さく、分時換気量相当の変化が大きくなるため、グラフの傾きが大きくなり、線形回帰直線(Y=AX+B)の係数Aの値が大きくなる。例えば係数Aは300以上となる。これに対して、
図12(B)に示すように、COPD患者の場合には、呼吸回数の変化が大きく、分時換気量相当の変化が小さくなるため、グラフの傾きが小さくなり、線形回帰直線(Y=AX+B)の係数Aの値が小さくなる。例えば係数Aは100未満となる。このように、線形回帰直線によって被測定者の呼吸機能を判定することが可能であり、例えば、線形回帰直線(Y=AX+B)の係数Aが、所定範囲(例えば100≦A≦300)である場合には、COPDの疑いがあると推定することができる。
【0088】
本実施形態の6分間歩行試験装置1は、上記のような呼吸機能の解析の他に、以下に示す複数の呼吸機能タイプのうち、被測定者がいずれの呼吸機能タイプに分類されるかを判定する呼吸機能タイプ分類処理を行い、その判定結果を表示可能に構成されている。
【0089】
図18は、この場合にCPU110が実行する呼吸機能タイプ分類処理の流れを示すフローチャートである。
まず、CPU110は、呼吸機能タイプを評価するための評価期間を設定する(A1)。評価期間は、歩行試験を行った期間(歩行試験期間)の全体の期間(6分間の期間)としてもよいし、歩行試験期間のうちの一部の期間(例えば前半や後半の3分間の期間)としてもよい。
【0090】
次いで、CPU110は、評価期間における呼吸回数のばらつきを表す指標値として呼吸回数の標準偏差(以下、「呼吸回数標準偏差」という。)を算出する(A3)。同様に、CPU110は、評価期間における一回換気量のばらつきを表す指標値として一回換気量の標準偏差(以下、「一回換気量標準偏差」という。)を算出する(A5)。また、CPU110は、評価期間における分時換気量の増減傾向を判定する(A7)。
【0091】
その後、CPU110は、評価期間におけるIE比を測定する(A9)。IE比は、被測定者の呼気回数と吸気回数との比、または、呼気時間と吸気時間との比である。そして、CPU110は、呼吸機能タイプを判定した後(A11)、呼吸機能タイプ分類処理を終了する。
【0092】
図19は、A11における呼吸機能タイプの判定方法の説明図であり、判定条件と呼吸器機能タイプとを対応づけたテーブルを図示している。呼吸機能タイプには、呼吸回数補償型と、換気量補償型と、混合型と、IE比変化型との4つのタイプが定められている。
【0093】
呼吸回数補償型と判定するための判定条件には、「一回換気量標準偏差が閾値θ
α1を下回り、呼吸回数標準偏差が閾値θ
β1を上回り、分時換気量が継続的に増加したこと」が定められている。つまり、一回換気量は概ね一定であるが、呼吸回数が増加し、分時換気量も増加する傾向にある場合は、呼吸回数を増やすことで分時換気量を増加させる呼吸回数補償型と判定する。
【0094】
換気量補償型と判定するための判定条件には、「一回換気量標準偏差が閾値θ
α1を上回り、呼吸回数標準偏差が閾値θ
β1を下回り、分時換気量が継続的に増加したこと」が定められている。つまり、呼吸回数は概ね一定であるが、一回換気量が増加し、分時換気量も増加する傾向にある場合は、一回換気量を増やすことで分時換気量を増加させる換気量補償型と判定する。
【0095】
混合型と判定するための判定条件には、「一回換気量標準偏差が閾値θ
α1を上回り、呼吸回数標準偏差が閾値θ
β1を上回り、分時換気量が継続的に増加したこと」が定められている。つまり、呼吸回数が増加し、一回換気量が増加し、分時換気量も増加する傾向にある場合は、呼吸回数補償型と換気量補償型を混合したタイプである混合型と判定する。
【0096】
IE比変化型と判定するための判定条件には「安静時に測定されたIE比と負荷時に測定されたIE比との差が閾値θを上回ること」が定められている。つまり、安静時に測定されたIE比と負荷時(つまり歩行試験時)に測定されたIE比とに有意な差が生じている場合は、安静時と負荷時で呼吸のIE比が変化するタイプであるIE比変化型と判定する。
【0097】
(歩行諸量の測定・表示)
6分間歩行試験装置1は、被測定者の歩行距離、歩行速度および位置のうちの少なくともいずれかを含む歩行諸量を測定し、その測定値をタッチパネル付液晶132に表示させる。歩行諸量は、歩行試験中の被測定者の歩行に伴う被測定者の移動状態を示す諸量(移動諸量)と言うこともできる。以下、各歩行諸量の測定方法について説明する。
【0098】
(1)歩行距離の測定
従来より3軸加速度センサを利用した歩行距離の測定方法が知られている。3軸加速度センサにより3軸方向の各加速度が測定され、測定される加速度は1歩の歩行動作に伴って特徴的に変動するため、その波形から1歩の歩行動作が行われたことを判定可能であり、これにより歩数をカウントすることができる。この歩数測定方法は良く用いられている。また、歩数計に身長等を入力することにより、1歩あたりの歩幅を統計データあるいは予測式により決定し、決定した歩幅と測定された歩数に基づいて歩行距離を算出する技術も知られている。しかしながら、1歩あたりの歩幅には個人差があるため、上記のような方法では歩行距離を正確に測定することはできない。また、加速度を積分することにより歩行速度を算出し、さらに歩行速度を積分することにより歩行距離を算出する方法も存在するが、この場合には歩行姿勢によって歩行面に対する重力方向が変動するため、正確な歩行距離を算出することはできない。
【0099】
本実施形態では、3軸加速度センサのみならず3軸地磁気センサの出力信号を利用して正確に歩行距離を算出するようにしている。前もって測定地点の緯度および経度から測定地点における地磁気の伏角を計算しておき、3軸地磁気センサにより検出した地磁気の方向と算出された測定地点における伏角により、測定地点における歩行面を計算し、その歩行面のみの加速度成分に基づいて歩行速度を計算し、さらに歩行速度を積分することで歩行距離を算出する方法である。以下、詳細に説明する。
【0100】
図13に示すように、伏角分布は公開されており、6分間歩行試験を実行する測定地点の緯度および経度から、測定地点の伏角を計算することが可能となっている。予め、測定地点の伏角を計算しておく。例えば伏角の計算方法に関しては、
図14に示すように、本体部100が垂直姿勢(z軸のマイナス方向が重力方向となる姿勢であり、以下、これを標準姿勢と呼ぶ)の時の地磁気センサの3軸のセンサ出力をx
0,y
0,z
0として、地磁気方向を(x
0,y
0,z
0)と表し、歩行している時に標準姿勢から傾いた姿勢(以下、これを歩行姿勢と呼ぶ)で計測された地磁気方向を(x
1,y
1,z
1)と表す。標準姿勢の時の伏角をα
0すると、α
0はxy平面となす角なので、以下の式が成立する。
【数3】
【0101】
歩行姿勢での地磁気の方向を(x
1,y
1,z
1)とし、伏角をα
1とすれば、以下の式が成立する。
【数4】
【0102】
この場合の本体部100の傾きは、α
0-α
1で表され、次式となる。
【数5】
【0103】
したがって、3軸加速度センサのデータにおいてxy平面をα
0-α
1傾けた面が歩行面となり、歩行面における加速度が歩行による加速度である。また、歩行による加速度を積分することで速度が計算でき、更に積分することで距離を精度良く計算することができる。具体的には、CPU110により以下に示す座標変換式を計算することによって、歩行面における加速度を計算することが可能である。
【0104】
標準姿勢での3次元地磁気センサのデータを(x
0,y
0,z
0)、歩行姿勢での3次元地磁気センサのデータを(x
1,y
1,z
1)とし、a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3を、座標変換をする式の係数として表現すると、以下の式が成立する。
【数6】
【0105】
これを行列式により以下のように表現する。
【数7】
【0106】
上記逆行列を求めれば、歩行姿勢から標準姿勢に変換することができる。同様に、歩行姿勢での3次元加速度データに上記逆行列を掛けることで座標変換すれば、本体部100を標準姿勢にすることができ、xy平面の加速度が歩行面の加速度として計算できる。標準姿勢での3次元加速度データを(X
0,Y
0,Z
0)、歩行姿勢での3次元加速度データを(X
1,Y
1,Z
1)とすれば、以下の式により(X
0,Y
0,Z
0)が求まる。
【数8】
【0107】
歩行面での加速度をa
wとすると、xy平面の加速度は以下の式により算出される。
【数9】
【0108】
算出されるa
wを積分すれば歩行速度、更にもう一度積分すれば歩行距離を計算できる。このようにして算出される歩行面での加速度および、前述した呼吸系項目および循環器系測定項目は、
図15に示すように各々測定開始からの経過時間に応じた時系列データとして表示される。横軸の経過時間のスケールを各項目共通とすることにより、経過時間に応じて各項目値がどのように推移したのかを容易に把握可能である。
【0109】
(2)歩行速度/位置の測定
GPSに代表される衛星測位システム(他には、WAASやGLONASS、GALILEO、Beidou等)を利用することで、被測定者の歩行速度や位置を測定することができる。この場合、例えば、6分間歩行試験装置1にGPS受信装置(GPSユニット)を具備させておき、擬似距離を利用した擬似距離測位やドップラー周波数を利用したドップラー測位を行って、被測定者の位置を測定する。また、ドップラー周波数を利用した速度演算を行って、被測定者の歩行速度を測定する。
【0110】
また、衛星測位システムではなく、慣性航法演算を行って被測定者の歩行速度や位置を測定することも可能である。この場合、例えば、6分間歩行試験装置1に慣性センサとして加速度センサおよび角速度センサ(ジャイロセンサ)を具備させておき、加速度センサおよび角速度センサから出力される加速度信号および角速度信号を利用した慣性航法演算を行って、被測定者の歩行速度および位置を測定する。
【0111】
この場合において、3軸加速度センサおよび3軸角速度センサを含む慣性計測装置(IMU(Inertial Measurement Unit))を6分間歩行試験装置1に具備させておき、慣性計測装置から出力される加速度信号および角速度信号を利用してCPU110が慣性航法演算を行うようにしてもよいし、自立的に慣性航法演算を行って位置や速度を出力する慣性航法装置(INS(Inertial Navigation System))を6分間歩行試験装置1に具備させることとしてもよい。
【0112】
なお、衛星測位システムを利用した位置演算/速度演算と慣性航法演算とを併用して被測定者の位置や歩行速度を測定することとしてもよい。例えば、衛星測位システムを利用して測定した位置/速度と、慣性航法演算を行って測定した位置/速度とを平均演算する平均処理(単純平均処理、加重平均処理)を行って、被測定者の位置や歩行速度を測定するようにしてもよい。
【0113】
また、歩行試験は通常屋外(アウトドア環境)で行うことが想定されるが、屋内(インドア環境)で歩行試験を行う場合も考えられる。この場合、インドア環境ではGPS受信装置がGPS衛星信号を受信することが困難である場合が多く、GPSを利用した歩行速度や位置の測定を行うことができなくなるおそれがある。そこで、歩行試験が行われる建物や施設内に屋内発信器(屋内基地局)を設置し、この屋内発信器から発信される信号に基づいて三角測量を行うなどして、被測定者の位置を測定してもよい。また、屋内発信器として擬似衛星を設置することとしてもよい。擬似衛星は、衛星測位システムにおける測位用衛星を模擬した擬似的な衛星であり、例えば、測位用衛星から送信される衛星信号が伝送する航法メッセージに含まれる情報に類する情報や、当該擬似衛星が設置されている設置位置といった情報を含む擬似衛星信号を送信可能に構成されている。この擬似衛星から受信した擬似衛星信号に基づいて、被測定者の位置を測定または特定してもよい。
【0114】
図15においては、呼吸回数(RR)、吸気一回換気量相当(vTi)、呼気一回換気量相当(vTe)、脈拍数(PR)、および、SpO
2の時間推移が、いずれも共通の時間軸上に表示されており、6分間の試験中およびその前後における各項目の時間推移を容易に比較可能である。そして循環器系測定項目である脈拍数と、呼吸器系測定項目である呼吸回数、一回換気量相当、および分時換気量相当との比較から、運動制限因子を推定することができる。なお、
図8〜
図10に示したように、1のグラフのX軸を共通スケールの時間軸として、循環器系測定項目と呼吸器系測定項目とを同じグラフ上に(Y軸のスケールが項目に応じて異なるように)表示しても良く、
図15のように、各項目のグラフを、時間軸を共通のスケールにして上下に並べて表示するようにしても良い。
【0115】
従来の6分間歩行試験装置では、試験中の患者の歩行状態を記録する手段を有していなかったため、歩行試験中に立ち止まった場合には、別途観察者がイベントとして記録を取る必要があった。本実施形態に係る6分間歩行試験装置では、歩行面における加速度が測定データとして記録されることにより、歩行試験中における歩行状態を詳細に把握可能であり、仮に被測定者が立ち止まったとしても、その動作や停止状態が加速度データに反映されるため、別途歩行状態の記録を取っておく必要はない。歩行開始および歩行停止は自動的に記録されることになる。また、上述した方法により経過時間に応じて正確に歩行速度や歩行距離を算出可能であるため、測定後に歩行速度の低下や歩行距離の停滞も識別可能である。そのため医療スタッフ等の観察者は、被測定者の状態を観察することに専念できる。
【0116】
また、歩数をカウントして1歩あたりの距離(歩幅)を計算することも可能であるため、例えば試験開始時の歩幅と試験終了時の歩幅の比率(試験終了時の歩幅/試験開始時の歩幅)により疲労度を定量化することも可能である。また、歩行速度の経時変化を測定可能であるため、例えば試験開始時の歩行速度と試験終了時の歩行速度の比率(試験終了時の歩行速度/試験開始時の歩行速度)により疲労度を定量化することも可能である。
【0117】
(歩行終了前の測定)
前述したように、6分間歩行試験装置1は、歩行試験の開始に先立って前安静状態においてフローセンサを用いて努力性肺活量(FVC)や1秒量(FEV1)、1秒率(FEV1%)、%1秒量(%FEV1)を測定するとともに、SpO
2プローブを用いてSpO
2や脈拍数を測定する。また、鼻孔カニューラを用いて被測定者により安静時喚起が行われているか否かを確認する。この前安静状態における測定を行う前安静期間(例えば3分間の期間)を設定し、この前安静期間の経過後に、歩行試験を開始するようにすることも可能である。
【0118】
また、この場合、健常者や呼吸器系や循環器系にそれほど重大な問題を抱えていない非測定者である場合は、3分間という前安静期間を待たずとも循環器系項目や呼吸器系項目の測定値が安定する傾向にある。そこで、これらの測定値の一部又は全部のばらつきが所定の設定値以下となった場合に、前安静期間の経過を待たずに、前安静状態での測定を自動終了して、歩行試験を開始させるようにすることも可能である。
【0119】
(歩行終了後の測定)
歩行開始から6分を経過したときには、ブザー133が鳴るとともに、タッチパネル付液晶132に「6分経過」と表示される。これに伴い、被測定者は歩行を終了する。そして、鼻孔カニューラ180を本体部100から取り外し、これに替えて、再度、本体部100にフローセンサ150を接続し、歩行開始前と同様に、努力性肺活量(FVC)、1秒量(FEV1)、1秒率(FEV1%)、および%1秒量(%FEV1)等を測定する。また、SpO
2および脈拍数を測定する。さらに、修正Borgスケールによる確認を行い、収縮期および拡張期を把握すべく血圧も測定する。これらの歩行終了後に測定された各項目の値は、歩行開始前の各項目の値とともに記憶され、両者は対比可能にタッチパネル付液晶132に表示される。
【0120】
また、6分間歩行試験装置1は、歩行試験を開始する前の安静状態(前安静状態)と、歩行試験を終了した後の安静状態(後安静状態)とにおける循環器系項目や呼吸器系項目の測定値を取得し、前安静状態に対する後安静状態での各項目の回復状況を判定して表示する。
【0121】
後安静状態において前安静状態における測定値に回復するまでどのくらいの時間が要したかを計測することが考えられるが、これには一定の時間がかかるという問題がある。健常者であれば、運動後、3分間程度の時間で呼吸器系項目や循環器系項目の測定値が前安静状態における測定値まで回復する傾向がある。そこで、後安静状態の3分間の期間で前安静状態の何%まで各項目の測定値が回復したかを示す回復係数を算出し、この回復係数を回復状況として表示する。
【0122】
また、SpO
2や脈拍数といった循環器系項目の測定値や、分時換気量といった呼吸器系項目の測定値が前安静状態における測定値まで回復する時間を回復時間として測定し、この回復時間を回復状況として表示する。
【0123】
[6分間歩行試験装置の他の機能]
上述したように、6分間歩行試験装置1の主要機能について説明したが、本実施形態に係る6分間歩行試験装置1は、以下に説明する各機能を有している。
【0124】
前述したように、鼻孔カニューラを用いて被測定者に酸素を供給しながら歩行試験を行う場合がある。この場合、歩行試験開始前に酸素供給器(酸素供給手段)に対して設定した酸素流量(以下、「設定酸素流量」という。)が適正であるか否かを判定したり、歩行試験中に被測定者に対して適切に酸素が供給されているか否かの判定を行うことが可能である。
【0125】
図20は、この場合にCPU110が実行する歩行試験前判定処理の流れを示すフローチャートである。なお
図20に示す処理を、歩行試験後においても同様に実行するようにしても良い。 まず、CPU110は、適正酸素流量を取得する(B1)。適正酸素流量は、例えば、被測定者やオペレータが設定酸素流量として認識している(実際に設定したかどうかは定かでは無い)酸素流量であり、適正と考えられる酸素流量を操作部(例えばタッチパネル付液晶132)から入力させることで取得することができる。また、被測定者やオペレータに被測定者のパラメータ(年齢、体重、性別等)を入力させて、入力されたパラメータに基づいて決定される適切な酸素流量を適正酸素流量とするようにしても良い。次いで、CPU110は、適正酸素流量に基づいて、酸素流量に基づく圧力のオフセット値を推定し、推定オフセット値としてRAM121に記憶させる(B3)。酸素流量に基づく圧力のオフセット値は酸素流量にほぼ比例する。そこで、適正酸素流量とオフセット値との相関関係を定めた相関データ(相関式や相関テーブル)をあらかじめROM122に記憶させておき、当該相関データに基づいて、B1で取得した適正酸素流量に対応するオフセット値を求めて、これを推定オフセット値とする。例えば、推定オフセット値を100としてRAM121に記憶するようにすると良い。次いで、CPU110は、供給されている酸素流量が適正範囲であるか否かを判定する判定処理を行う(B5)。
【0126】
図21は、判定処理の流れを示すフローチャートである。
CPU110は、酸素供給器から被測定者に酸素が供給された状態での被測定者の呼吸波形を取得する(C1)。ここで言う呼吸波形とは、被測定者の呼吸圧の時系列データである。そして、CPU110は、取得した呼吸波形に基づいてオフセット値を測定し、測定オフセット値としてRAM121に記憶させる(C3)。測定オフセット値は、例えば、被測定者の呼吸波形(呼吸圧の時系列データ)から交流成分(AC成分)をカットするフィルタ処理を行うことで取得することができる。例えば、前述した推定オフセット値を100としたときの測定オフセット値を算出してRAM121に記憶するようにすると良い。
【0127】
次いで、CPU110は、RAM121に記憶されている推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が所定の第1閾値を超えているか否かを判定する(C5)。ここで用いる第1閾値は、例えば推定オフセット値を100とした場合に10〜20の範囲とすると良く、例えば酸素供給器が供給する酸素流量の誤差範囲に基づいて決定すると良い。例えば、酸素供給器から被測定者に対して供給される酸素流量の誤差が概ね設定値の±10%であることを想定すると、推定オフセット値(ここでは100とする)と測定オフセット値との差の絶対値が10を超えている場合には、実際の酸素流量が適正と考えられる酸素流量から乖離していることになる。そのため、この場合には、閾値を10とすると良い。
【0128】
そして、推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が、第1閾値を超えていると判定した場合は(C5;Yes)、供給酸素流量を不適正と判定するとともに、不適正と連続して判定された時間である不適正時間(または不適正と連続して判定された回数である不適正回数)を更新する(C7)。そして、CPU110は、不適正時間(または不適正回数)が所定の第2閾値を超えているか否かを判定する(C9)。そして、第2閾値を超えていると判定した場合には(C9;Yes)、酸素流量が不適正である旨を報知する(C11)。例えば、アラームやビープ音を鳴らすなどして、酸素流量が不適正である旨を報知する。また、「設定された酸素流量が適正ではありません」というメッセージを画面に表示するようにしても良い。
【0129】
例えば、酸素流量の一時的な変動に伴い測定オフセット値の瞬時値が大きく変化したことに起因して、推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が第1閾値を超えるケースも想定される。このような場合にその瞬時値を以て設定流量が不適正であると直ちに報知することは、歩行試験の円滑な進行を阻害する要因にもなり得る。従って、この例では、不適正時間(または不適正回数)が第2閾値を超えている場合に、酸素流量が不適正である旨を報知するようにしている。ここで用いる第2閾値は、例えば、酸素供給器の酸素流量を設定した後に酸素流量が安定するまでの時間(またはその時間に応じた判定回数)、何らかの要因により一時的に酸素流量が変動した場合に酸素流量が安定するまでの時間(またはその時間に応じた判定回数)、あるいは酸素流量が変動したとしても被測定者や歩行試験に重大な影響を及ぼさない程度の時間(またはその時間に応じた判定回数)等にすると良い。
【0130】
一方、推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が、第1閾値を超えていないと判定した場合は(C5;No)、不適正時間(または不適正回数)をクリアする(C13)。従って、不適正時間(または不適正回数)が閾値を超える前に推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が閾値以下になったときには、流量不適正報知が行われるより前にその不適正時間(または不適正回数)がクリアされる。そして、CPU110は、所定の判定時間が経過したか否かを確認する(C15)。そして、判定時間を経過していれば(C15;Yes)、判定処理を終了し、判定期間を経過していなければ(C15;No)、C1に戻って判定処理を続行する。また、不適正時間(または不適正回数)が第2閾値以下である場合には(C9;No)、酸素流量が不適正である旨を報知することなく、C15に移行する。
【0131】
図20に戻り、CPU110は、酸素流量が不適正である旨の報知が行われているか否かを確認する(B7)。酸素流量が不適正である旨の報知が行われていなければ(B7;No)、歩行試験前判定処理を終了する。これに伴い、被測定者は歩行試験に移行することになる。一方、酸素流量が不適正である旨の報知が行われていれば(B7;Yes)、CPU110は、酸素流量の再設定および適正判定のやり直しを行うための再設定操作(例えばタッチパネル付液晶132に表示されたキャンセルボタンの選択)がなされたか否かを判定し(B9)、なされたと判定したならば(B9;Yes)、酸素流量が不適正である旨の報知を終了して(B13)、歩行試験前判定処理を終了する。これに伴い、被測定者やオペレータは、酸素供給器に対して酸素流量を再設定することになる。また、必要に応じて適正酸素流量やパラメータの再入力を行う。一方、再設定操作がなされなかったと判定したならば(B9;No)、酸素流量が不適正である旨の報知を継続して(B11)、B9に戻る。
【0132】
なお、この例では、再設定操作がなされるまでは、流量不適正報知が継続されるようにしているが、再設定操作がなされることなく所定時間を経過すると流量不適正報知が終了するようにしても良い。また、流量不適正報知が実行されている期間も
図21の判定処理を実行可能としておき、推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が、第1閾値を超えていないと判定した場合は(C5;No)、流量不適正報知が終了するようにしても良い。
【0133】
図22は、歩行試験中において酸素供給器から被測定者に対して供給される酸素流量の異常を検出する歩行試験中判定処理の流れを示すフローチャートである。
CPU110は、
図20に示した判定処理と同様の処理を実行する(D5)。すなわち歩行試験中の被測定者の呼吸波形に基づいて、供給されている酸素流量が不適正であるか否かを確認して、不適正である場合にはその旨を報知するようにしている。なお、歩行試験中判定処理における
図21の判定処理では、C15で試験時間が経過したか否か(例えば、試験開始から6分間を経過したか否か)を確認するようにしている。
【0134】
CPU110は、酸素流量が不適正である旨の報知が行われているか否かを確認する(D7)。酸素流量が不適正である旨の報知が行われていなければ(D7;No)、歩行試験中判定処理を終了する。一方、酸素流量が不適正である旨の報知が行われていれば(D7;Yes)、CPU110は、歩行試験を中止するための中止操作(例えばタッチパネル付液晶132に表示されたキャンセルボタンの選択)がなされたか否かを判定し(D9)、なされたと判定したならば(D9;Yes)、酸素流量が不適正である旨の報知を終了して(D13)、歩行試験中判定処理を終了する。一方、中止操作がなされなかったと判定したならば(D9;No)、酸素流量が不適正である旨の報知を継続して(D11)、D9に戻る。
【0135】
なお、この例では、中止操作がなされるまでは、流量不適正報知が継続されるようにしているが、中止操作がなされることなく所定時間を経過すると流量不適正報知が終了するようにしても良い。また、流量不適正報知が実行されている期間も
図21の判定処理を実行可能としておき(すなわち歩行試験を継続可能としておき)、推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が、第1閾値を超えていないと判定した場合は(C5;No)、流量不適正報知を終了させて、歩行試験を継続するようにしても良い。
【0136】
上記の例では、推定オフセット値と測定オフセット値との差の絶対値が、第1閾値を超えているか否かに基づいて酸素流量が不適正であるか否かを確認するようにしているが、このような形態に限らず、例えば、推定オフセット値に対しての測定オフセット値の割合に基づいて酸素流量が不適正であるか否かを確認するようにしても良い。例えば、推定オフセット値に対しての測定オフセット値の割合が80%以下であれば流量不適正報知を行うようにしても良い。
【0137】
また、歩行試験中判定処理において推定オフセット値に対しての測定オフセット値の割合が経時的に低下しているか否かを確認するようにしておき(例えば所定時間毎にこの割合を算出するようにしておき)、経時的に低下していることが確認されたときには(例えば1回目に算出した割合から所定の閾値以上低下したときには)酸素供給器の残量が低下している旨を報知するようにしても良い。また、推定オフセット値を用いること無く測定オフセット値のみの経時変化によって酸素流量の変動を検出して、その変動に基づいて異常を検出するようにしても良く、例えば、測定オフセット値が経時的に低下していることに基づいて酸素供給器の残量が低下していると推定するようにしても良い。
【0138】
(スパイロメータ機能による最大換気量測定)
歩行開始前に本体部100にフローセンサ150を接続したときに、努力性肺活量や1秒量等を測定することが可能であるが、フローを正確に測定可能である(所謂スパイロメータ機能を有している)ことから、これらの項目と共に最大換気量(MVVとも称する)を測定することも可能となる。そして、歩行中は前述したように鼻孔カニューラ180を用いて一回換気量相当や分時換気量相当を測定することが可能である。従って、歩行開始前に最大換気量を測定しておくことで、例えば、歩行試験中に、最大換気量に対しての換気量(一回換気量相当または分時換気量相当)が、所定の割合以上となる状態が所定時間以上継続した場合には、被測定者が自分の限界を意識せずに無理をしている状況であるとして、例えばブザー133による警告を行い、歩行を中止させるようにすることが可能である。
【0139】
(歩行距離の予測)
前述したように、試験を開始するときにタッチパネル付液晶132から被測定者の性別、年齢、体重、および身長を入力するようにしている。本実施形態の歩行試験装置1では、入力された年齢、体重、および身長から被測定者の歩行距離の予測値を算出することが可能である。例えば、非特許文献2に示されるように、{[454−0.87×年齢(才)−0.66×体重(kg)]×±82m(2SD)}×身長(m)により得られる値を歩行距離の正常域とし、測定された歩行距離が正常域内であるか否かの判定を実行して、判定結果を表示するようにすることも可能である。
【0140】
また、歩行距離の予測値は、上記の式に限らず、以下の式に基づいて算出するようにしても良い。
[男性]6MWT(m)=(7.57×身長cm)−(5.02×年齢)−(1.76×体重kg)−309m
[女性]6MWT(m)=(2.11×身長cm)−(2.29×年齢)−(5.78×体重kg)+667m
【0141】
なお、被測定者の最大酸素摂取量(peakVO
2)は、以下の式に基づいて算出することが可能である。ここで1ft=0.3048mとする。
peakVO
2=0.006×歩行距離(ft)+7.38
【0142】
(BODE indexの表示機能)
特許文献1に例示されるように、1秒量等に基づいてCOPDの重症度を判定するスパイロメータが知られているが、非特許文献2に示されているように、1秒量等のみならず、他の指標からCOPDの重症度を評価する手法も用いられている。この非特許文献2には、以下に示す各項目に基づいてCOPDの重症度を判定する方法が示されている。
1.B(Body Mass Index,BMI)
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出する。例えば、160cm,75kgであればBMI=75÷1.6÷1.6=29となる。
2.O(obstruction)
肺機能による気道の閉塞の程度を示す指標であり、1秒率の予測値が用いられる。
3.D(Dyspnea)
主観的な呼吸困難感を示す指標であり、MRC呼吸困難感スケールを用いて被測定者にヒアリングした上で呼吸困難感の値(0〜4)を決定する。
4.E(excercise)
運号能力を示す指標であり、6分間歩行試験における歩行距離が用いられる。
【0143】
上記項目のうち、MRC呼吸困難感スケールのみは主観的な指標であるが、その他の項目は、6分間歩行試験装置1により算出または測定される。従って、MRC呼吸困難感スケールの値を被測定者にヒアリングして決定し、6分間歩行試験装置1に入力することで、
図16に示されるように、上記1〜4の各項目の範囲に基づいてBODE indexが決定され、6分間歩行試験装置1に表示される。これによりCOPDの重症度が容易に判定される。
図16の例において、BODE indexが0,1,2,3と増加するに従って、COPDの重症度が上がる。
【0144】
(リスク表示)
また、本実施形態の6分間歩行試験装置1において、測定された6分間の歩行距離に基づいて、統計データとの比較から入院リスクを表示することも可能である。具体例としては、歩行距離が357m以下の場合には入院リスクが高まるとの統計データに基づいて、測定された歩行距離が357m以下である場合に、入院リスクが高いことを表示することが可能である。
【0145】
[他の実施形態]
最後に、上記の実施形態とは異なる他の実施形態の一例について説明する。本発明を適用可能な実施形態は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。なお、上記の各実施形態と同一の構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0146】
[歩行試験システム]
上記の実施形態において、歩行試験中の測定データを、タブレット端末や多機能リモコン、パソコンといった情報通信機器(通信装置)に送信する歩行試験システムを構成することとしてもよい。
【0147】
図17は、この場合における歩行試験システム1000のシステム構成の一例を示す図である。
歩行試験システム1000は、6分間歩行試験装置1と、タブレット端末3と、プリンタ5とを備えて構成される。
【0148】
6分間歩行試験装置1は、無線通信部11を備え、無線通信を利用して歩行試験中の測定データをタブレット端末3に送信することが可能に構成されている。タブレット端末3は、タブレット型の持ち運び可能(携行可能)な情報通信機器であり、無線通信部31を備え、6分間歩行試験装置1から送信される測定データを受信可能に構成されている。無線通信の方式としては、Bluetooth(登録商標)やWiFiといった公知の無線通信方式を適用することができる。
【0149】
タブレット端末3は、無線通信部31や、タッチパネルと液晶表示器とが一体的に構成されたタッチスクリーン33を備え、この無線通信部31により6分間歩行試験装置1から受信した測定データをタッチスクリーン33に表示させることで、歩行試験の担当者や医師、看護師といった管理者が測定データを随時確認したり、歩行試験終了後に被測定者が測定データを確認可能に構成されている。また、タブレット端末3とプリンタ5を通信接続してタブレット端末3から測定データをプリンタ5に出力することで、測定データを印刷することが可能に構成されている。
【0150】
6分間歩行試験装置1からは、呼吸器系項目(呼吸回数、一回換気量相当、分時換気量相当、SpO
2)の測定値や、循環器系項目(脈拍数、SpO
2)の測定値が測定データとして送信される。この場合、上記の無線通信方式において、各項目の測定値のリアルタイムの波形データを送信すると転送時間が間に合わないため、6分間歩行試験装置1は、定期的なタイミング(例えば1秒や30秒、1分に1回のタイミング)や間欠的なタイミングで、当該タイミングにおける測定値をタブレット端末3に送信する。
【0151】
なお、定期的なタイミングや間欠的なタイミングではなく、特定のタイミングで、タブレット端末3に測定値を送信するようにしてもよい。具体的には、呼吸器系項目や循環器系項目に含まれる複数の項目のうちの少なくともいずれかの項目の測定値が、被測定者に歩行試験を継続させることが危険な状態であることを示す危険条件を満たしたタイミングで、タブレット端末3に測定値を送信するようにしてもよい。例えば、SpO
2が所定の下限値を下回った場合や、呼吸回数や脈拍数が所定の上限値を上回った場合に、危険条件が成立したとして、そのタイミングにおける測定値をタブレット端末3に送信するようにしてもよい。
【0152】
また、被測定者の息切れの度合を示す息切れ係数を算出し、この息切れ係数を上記の送信タイミングでタブレット端末3に送信するようにしてもよい。息切れ係数は、呼吸器系項目の測定値に基づいて算出することが可能である。COPD患者においては、歩行試験等の運動による一回喚起量の増加が低値で制限され、頭打ちとなる傾向がある。そこで、所定段階数(例えば10段階)の息切れ係数を定めておき、測定した一回喚起量相当の増加率や頭打ちとなった値に基づいて、息切れ係数を判定する。判定した息切れ係数は、6分間歩行試験装置1で表示させたり、上記のタブレット端末3に送信して表示させたり、プリンタ5で印刷するなどすることができる。
【0153】
また、歩行試験として、コーンなどを配置した所定の歩行区間を被測定者に往復させる歩行試験を行う場合がある。この場合、例えば、6分間歩行試験装置1にカウントアップ用の操作ボタンを具備させておき、歩行試験中にコーンの配置位置で被測定者がターンするたびに操作ボタンを押下させることで、ターン回数を6分間歩行試験装置1に入力するようにしてもよい。そして、ターン回数を循環器系項目や呼吸器系項目の測定値と併せてタブレット端末3に送信するようにしてもよい。
【0154】
また、タブレット端末3のタッチスクリーン33に、歩行試験に係る各種のイベントを示す複数種類のイベントボタン(アイコン)およびイベントの内容を表示させ、タッチスクリーン33に表示されたイベントボタンがタップされたことを契機として、その時刻における被測定者の測定データに、対応するイベントを識別するための識別情報を対応付けて記憶させるようにしてもよい。ここで、歩行試験に係るイベントとは、歩行試験の方法やデータの測定方法等に基づき設定されるイベントであり、例えば、「1.歩行停止」、「2.蛇行歩行」、「3.カニューラ外れ」といった複数種類のイベントを設定しておくことができる。この場合は、各イベントに割り当てられた番号を識別情報として、測定データに対応付けて記憶させることができる。なお、イベントの種類および内容は、歩行試験の方法やデータの測定方法、歩行試験が行われる施設の設備等に応じて自由に設定することが可能である。
【0155】
上記の実施形態では、歩行試験中の呼吸圧測定に鼻孔カニューラ180を用いた例について説明したが、鼻孔カニューラ180に限らず、鼻孔と口を覆うフェイスマスク190を使用するようにしても良い。フェイスマスク190も、鼻孔カニューラ180と同様に1端子であり、その端子をルアーコネクタ142(すなわち呼気を印加したときにマイナスの電圧が出力されるポート)に接続して、被測定者の呼吸圧の変化を捕捉することが可能である。ここで、前述したように鼻孔カニューラ180は鼻孔に挿入するため、被測定者が口呼吸をしてしまった場合には、呼気・吸気を完全には捕捉できない問題がある。これに対して、フェイスマスク190を使用した場合には、鼻孔および口の両方が覆われることになるため、呼気・吸気を捕捉して換気量をより正確に測定することが可能となる。
【0156】
なお、フェイスマスク190を用いる場合には、フェイスマスク190内における二酸化炭素の滞留が問題となるが、これについては、フェイスマスク190の左右側方(被測定者が装着したときに頬に相当する位置)に呼気を逃がす孔を設けておくようにすると良い。このような孔を設けた場合にも、呼吸の圧力変動を正確に取得することができる。いずれを使用するかは、被測定者の状態や目的に応じて使い分けるようにすると良い。
【0157】
上記の実施形態では、呼吸器系の測定項目が呼吸回数、一回換気量相当、分時換気量相当、およびSpO
2であり、循環器系の測定項目が脈拍数およびSpO
2である例について説明したが、呼吸器系の測定項目および循環器系の測定項目はこれらに限られない。また、
図8〜
図10に示した例において、SpO
2の経時変化も併せてグラフ化するようにしても良い。
【0158】
上記の実施形態では、線形回帰直線に基づいて変曲点を算出する例について説明したが、これに限らず、例えば、各項目の微分値が所定の範囲内に収束している範囲を平坦領域と判定して、その平坦領域の開始点を変曲点と決定するようにしても良い。各項目の時間変化量の減少に基づいて変曲点を判定するようにすると良く(例えば10秒間あたりの脈拍数の増加が2以下となった点を変曲点とするようにしても良く)、その手法については限定されない。
【0159】
上記の実施形態では、6軸センサの出力信号に基づいて歩行面内の加速度を計算し、これに基づいて歩行速度および歩行距離を算出する例について説明したが、加速度センサの出力信号に基づいて歩行動作(1歩)を検出することにより歩数をカウントし、身長等の入力情報に基づいて計算された歩幅あるいは入力情報から統計値に基づいて特定される歩幅を歩数に乗じることによって歩行距離を算出するようにしても良い。
【0160】
上記の実施形態では、歩行試験装置が6分間の歩行時間を対象とした6分間歩行試験装置である例について説明したが、歩行試験の時間については6分間に限られない。本発明の歩行試験装置は、任意の歩行時間を対象とするものであることはいうまでもない。