特許第6382804号(P6382804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382804発光グレージングユニット、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382804
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】発光グレージングユニット、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20180820BHJP
   B60Q 3/62 20170101ALI20180820BHJP
   F21V 33/00 20060101ALI20180820BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20180820BHJP
   G09F 13/18 20060101ALI20180820BHJP
   F21W 106/00 20180101ALN20180820BHJP
   F21W 131/301 20060101ALN20180820BHJP
   F21W 131/305 20060101ALN20180820BHJP
   F21W 131/307 20060101ALN20180820BHJP
   F21W 131/308 20060101ALN20180820BHJP
   F21W 131/405 20060101ALN20180820BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180820BHJP
【FI】
   F21S2/00 434
   B60Q3/62
   F21V33/00 100
   F21V33/00 200
   F21S2/00 443
   F21V8/00 100
   G09F13/18 Z
   F21W106:00
   F21W131:301
   F21W131:305
   F21W131:307
   F21W131:308
   F21W131:405
   F21Y115:10
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-521038(P2015-521038)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公表番号】特表2015-529935(P2015-529935A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】FR2013051539
(87)【国際公開番号】WO2014009630
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】1256664
(32)【優先日】2012年7月11日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ベルジェ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ−ジュリアン ベルメルシュ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ソラルスキ
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−059723(JP,A)
【文献】 特表2007−522000(JP,A)
【文献】 特開2010−151876(JP,A)
【文献】 特開2004−345906(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129848(WO,A1)
【文献】 特開2008−064810(JP,A)
【文献】 特開2010−146831(JP,A)
【文献】 特開2010−177130(JP,A)
【文献】 特開昭61−013277(JP,A)
【文献】 特開2012−103590(JP,A)
【文献】 特開2008−287933(JP,A)
【文献】 特開平11−352900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 33/00
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含む発光グレージングユニット:
・少なくとも2つのグレージングエレメント、特に少なくとも2枚の透明ガラス板、
・該2つのグレージングエレメントの間の、任意選択的な少なくとも1つの積層中間層、
・少なくとも1つの導波路エレメントであって、特に該積層中間層の1つの面に及び/又は該2つのグレージングエレメントの間に位置しており、屈折率が隣接エレメントの屈折率よりも高い、少なくとも1つの導波路エレメント、
・少なくとも1つの光源であって、該導波路エレメントにそのエッジ面を介して光を照射するため特に該グレージングユニットのエッジに配置された、少なくとも1つの光源、及び、
・少なくとも1つの繊維構造体によって形成された少なくとも1つの光抽出手段であって、有利には少なくとも1つの布帛の形態をなし、該導波路エレメントのコア内に配置された、少なくとも1つの光抽出手段。
【請求項2】
前記繊維構造体が、前記導波路エレメントの厚さ内、又は2つの導波路エレメント間もしくは導波路エレメント部分間、又は該導波路エレメントのエッジ面、特に1つ又は2つ以上の前記光源を受容するエッジとは反対側の部分もしくは該エッジのうちの一方に配置されており、該繊維構造体の厚さが好ましくは該導波路エレメントのそれ以下であることを特徴とする、請求項1に記載の発光グレージングユニット。
【請求項3】
前記繊維構造体が、少なくとも2つの異なる方向に延在する繊維、特に絡み合った又は交じり合った繊維を、特に不織、製織又は編成構造体の形態でもって、含んでおり、特に少なくとも1つの繊維ベールであるか少なくとも1つの繊維ベールから形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発光グレージングユニット。
【請求項4】
前記導波路エレメントの屈折率と隣接した前記エレメントのおのおのの屈折率との差が少なくとも0.05であり、特に好ましくは少なくとも0.1であり、又は少なくとも0.2であることを特徴とする、請求項1から3までの1項に記載の発光グレージングユニット。
【請求項5】
前記導波路エレメントがポリカーボネート又はポリスチレンで作製されていることを特徴とする、請求項1から4までの1項に記載の発光グレージングユニット。
【請求項6】
前記抽出手段が少なくとも1種の結合剤及び/又は繊維封入媒体を更に含み、前記繊維構造体の繊維の屈折率と前記結合剤及び/又は封入媒体の屈折率との差の絶対値が0.05以上であることを特徴とする、請求項1から5までの1項に記載の発光グレージングユニット。
【請求項7】
請求項1から6までの1項に記載の発光グレージングユニットを製造する方法であって、少なくとも1つの導波路エレメントのコアに少なくとも1つの繊維構造体を加え、そしてこの集成体を少なくとも2つのグレージングエレメント及び任意選択的に積層中間層の間に積層することを含み、前記導波路エレメントの屈折率が隣接するエレメントの屈折率よりも高い、発光グレージングユニットの製造方法。
【請求項8】
前記繊維構造体を前記導波路を形成するためのプラスチックシート上に配置し、その後この集成体を該プラスチックが軟化して前記繊維が前記シート内に入り込むまで加熱するか、あるいは、該繊維構造体を該シートに押し付けることによって該繊維を該シート内に埋め込み、次いでこの集成体を少なくとも2つのグレージングエレメント及び任意選択的に1つ又は2つ以上の積層中間層の間に積層して、得られた積層ユニットを任意選択的に炉を通過させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維構造体を成形型内に配置してから、前記導波路と繊維構造体とを含む層を形成するため前記導波路エレメントを形成するためのポリマーを注入し、次いでこの集成体を少なくとも2つのグレージングエレメント及び任意選択的に1つ又は2つ以上の積層中間層の間に積層し、得られた積層ユニットを任意選択的に炉を通過させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維構造体を、該当する場合にはその結合剤及び/又は封入媒体と一緒に、2つの導波路部分の間又は導波路のエッジ面に配置してから、この集成体を少なくとも2つのグレージングエレメント及び任意選択的に1つ又は2つ以上の積層中間層の間に積層することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から6までの1項に記載の発光グレージングユニットを組み込んでいる自動車。
【請求項12】
輸送手段での、又は建築用グレージングユニットとしての、又は家具類のグレージングユニットとしての、又はプラナーランプとしての、請求項1から6までの1項に記載のグレージングユニットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建築用途、又は任意のプラナーランプもしくはエリアランプ用途向けの、発光(又は照明)グレージングユニットに関するが、しかし必要とされる場合には自動車用途に使用することもできる。特に、本発明はエッジ面を介して照明されるグレージングユニット、特に発光ダイオードを使用して照明されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、最初は懐中電灯で使用され、あるいは電子又は電気器具の表示灯として使用され、そして多年にわたって自動車用信号装置(信号灯など)の光源、方向指示灯又は側灯として、あるいは作業灯又は進路灯で採用されてきた。ダイオードは多くの利点、すなわち長い寿命、発光効率、信頼性、低い消費電力、及び小さなサイズを有しており、つまりこれらを採用するユニットはより信頼性が高く、保守の必要が少なくなる。
【0003】
最近では、発光ダイオードは建築用途又は自動車用途の照明グレージングユニットで使用されている。後者の分野では、例えば、国際公開第2010/049638号パンフレットに記載されているような、発光ダイオードによって照明されるパノラマルーフが知られている。ダイオードによって発せられた光は、グレージングユニットの、導波路を形成するその厚み部分へ、エッジ面を形成するその側面のうちの1つ又は2つ以上を介して導入され、その主面(「発光」面)のうちの一方及び/又は他方を介してグレージングユニットから光が抽出される。導波路部分は一般に、透明材料で作られた薄いシートの形態をなしており、グレージングユニットの1つの面又は表面を介した抽出は、導波路の1つの面又は厚さ部分に抽出領域を形成することによってなされる。
【0004】
この抽出領域は一般に、サンドブラスト処理、エッチング又は酸腐食によって、あるいはフランス国特許出願公開第2809496号明細書に記載されているように、スクリーン印刷によって被着されたエナメル散乱層で被覆することによって作られる。
【0005】
にもかかわらず、建築分野又は自動車分野では、これらの種々の方法にはそれぞれ制限がある。この制限は上記方法を、状況いかんでは特定の製品又は要件とやや不適合なものにしてしまう。
【0006】
具体的に述べるならば、サンドブラスト処理、エッチング又は酸腐食は一般に、小さな面積の処理にのみ適しており、及び/又は、工業的バッチ生産又は大量生産ラインとは相容れない長い処理時間を必要とし、あるいは使用されるガラスを弱くさせることもある。エナメル処理は、一方では均一な照明効果を得るのを可能にするものの、他方では外部面に配置された場合にエナメル層の密着性及び劣化に関わる問題を招く。そしてエナメルは、特定の所要機能と相容れず、又はこれを妨げることが分かっており、特にフィルムを含むグレージングユニットの問題をもたらすことがある。
【0007】
更に、グレージングユニット内にその側面を介して導入された光の一部は一般にガラスによって吸収され、ひいては得られた照明の明るさが基材全体にわたって箇所ごとに、光源からの距離に応じて変動することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、新規の発光又は照明グレージングユニット、特に、建築分野、とりわけプラナーランプによりよく適合した、発光ダイオードを使用したグレージングユニット、特に光の抽出の点で効果的であり、それでいて上記の欠点又は不適合性のないグレージングユニットを開発することであり、このグレージングユニットはシンプルであり、均一な明るさの照明を提供し、所望の場合には目標ゾーン内に魅力的な外観を有し、工業上の要件(製造のし易さ及び迅速さ、信頼性など)との相性がよく、可能な用途の範囲を有利に広げるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明による(積層)グレージングユニットによって達成される。このグレージングユニットは、
・少なくとも2つのグレージングエレメント(無機又は有機ガラス)、特に少なくとも2枚の透明ガラス板と、
・任意選択的な、前記2つのグレージングエレメントの間の少なくとも1つの(一般に有機材料で作製された)積層中間層と、
・少なくとも1つの導波路エレメントであり、屈折率が隣接するエレメント(中間層及び/又はグレージング)(すなわちその主面と接触するエレメント)の屈折率よりも高く、特に積層中間層の1つの面に及び/又は2つのグレージングエレメントの間に配置された、(有利には有機材料で作製された)少なくとも1つの導波路エレメントと、
・少なくとも1つの(特に可視線及び/又は紫外線)光源であり、特に導波路エレメントにそのエッジ面を介して光を照射するため当該グレージングユニットのエッジに配置された、少なくとも1つの光源と、
・少なくとも1つの繊維構造体によって形成された少なくとも1つの光抽出手段(又は抽出手段としての少なくとも1つの繊維構造体)であり、この構造体(繊維から形成された)は有利には少なくとも1つの布帛(又は少なくとも1つの布帛層又はウェブ)の形態をなし(又は形態をとっており)、この構造体(又は抽出手段)は導波路エレメントのコア内に配置されて(又は位置して)いる(又はコア内に組み込まれている)、少なくとも1つの光抽出手段と、
を含む。
【0010】
「導波路エレメントのコア内に配置された」という表現は、繊維構造体が、((本質的に)導波路エレメントの主面のうちの一方又は他方の表面上ではなく)導波路エレメントの厚さ内に(本質的に、すなわち体積で少なくとも90%又は100%が)位置しているか、又は2つの導波路エレメント(もしくは導波路エレメント部分)(それら2つの側方エッジ)の間に位置しているか、あるいは本質的に、導波路エレメントのエッジ面(導波路エレメントは前記抽出手段のところで終わる)に(すなわちその側方エッジの少なくとも1つに)、特に1つ又は2つ以上の光源を受容する側とは反対側の部分又はこれらの側のうちの1つに、位置していることを意味するものとする。特に、繊維構造体は導波路エレメントの厚さの範囲を越えないことが有利である(繊維構造体の厚さは本質的に導波路エレメントの厚さ以下である)。
【0011】
「主面」という表現は、(エッジ面とは対照的に)寸法が最大である面を意味するものとする。
【0012】
「布帛」という用語は、繊維(及び/又は糸)から形成された少なくとも1つの二次元構造体、すなわち少なくとも2つの異なる方向に延びる繊維、特に絡み合った又は交じり合った/混ざり合った繊維を、とりわけ交差する/絡み合った繊維の少なくとも1つの網状組織の形態で、あるいは、該当する場合ランダムに配置され、且つ任意選択的に場合により縫製又は接着結合によって一緒に固定された連続又は不連続(カットされた)繊維のウェブもしくはマットもしくはベールの形態(不織布構造)で、あるいは、製織又は編成構造体(織編した糸)の形態で、有する少なくとも1つの二次元構造体を意味するものとする。
【0013】
隣接シートよりも屈折率が高い導波路(特に、1つ又は2つ以上の光源によって発せられた光の内部反射による透過を保証し、これにより抽出領域に達するまで隣接層内への散乱による光の損失を最小化する)と、抽出手段としての繊維構造体(特に少なくとも1つの布帛層又はウェブから形成される)とを併用することと、導波路の本体内における前記繊維層の特定の位置とが、特に効果的且つ魅力的な発光又は照明グレージングユニットを得るのを可能にする。こうして得られる「繊維による」照明(繊維構造体と1つ又は2つ以上の発光パターンが表示される外面との間の層の透明度に応じて可変であるとともに、該当する場合には、繊維構造体とその封入媒体との屈折率差に応じて可変である)に加えて、布帛を上述のように配置することは、導波路のいずれの側における他の層の密着性にも不都合な影響を及ぼすことがなく(それが導波路の表面に位置する場合とは対照的であり、後者の場合には安全グレージングユニットがその安全特性を失うリスクがある)、それは導波路内により容易に組み込まれる(導波路は有利には有機材料で作製され、繊維材料をこのようなプラスチック材料中に組み込み、次いでその集成体を2枚のガラス板間に積層し、そしてこれら全てを曲げることは、ガラス板上に繊維材料を配置し、そしてこの集成体を曲げるよりも著しく簡単であり、それというのも後者の場合には繊維材料が動くリスクがあるからである)。本発明によるグレージングユニットは、特に効果的である一方で、製造しやすく、耐摩耗性である。
【0014】
本発明によるグレージングユニットは一般に、エッジ面と、2つの主面と、所与の厚さとを有している。それは、本発明に従って、1つ又は2つ以上の光源(放射線源)によって発せられた光を導くための導波路を形成する少なくとも1つの部分(この光を導くのは一般には当該部分の厚さを通した内部反射、特に全内部反射によってなされる)を含む複数の(積層)シートによって形成される。
【0015】
グレージングユニットは平面状であってもよいが、曲げられているか又は湾曲していてもよい(特に自動車用グレージングユニットの場合)。それは、長方形、又は正方形、又は任意の他の形状(円形、楕円形、多角形など)のシート又は主面を含む、平行六面体であってもよい。それは様々な寸法であることができ、そして特に、例えば0.5又は1m2を上回る面積を有する、大型のものであってもよい。それは厚さが一般に少なくとも0.7mm、とりわけ少なくとも1mmであり、特に2mmと20mmの間の厚さ、例えば3mmと5mmの間の厚さであり、導波路を形成する部分は厚さが一般に少なくとも0.3mmであり、特に0.7mmと3mmの間の厚さ、更には20mm以下の厚さである。
【0016】
基材は(同様に導波路も)、透明なエレメント(フィルム、ペイン、シート、層など)又は、透きとおったもしくは着色した、該当する場合には常温でのもしくは高温での結合により、とりわけ積層(積層したユニットあるいは積層したグレージングユニットのことを言っている)あるいは接着結合などによって、一緒に接合することができる材料(特にガラス質、無機又は有機材料)から形成されるのが有利である。「透明」(又は(半)透明)という用語は、少なくとも400nmと800nmの間の(有効)波長範囲において(特にグレージングユニットの内部シート又はフィルム、とりわけ積層中間層又は導波路について、又は光がそれを介して射出するようになっている外部シートについて)光透過率TLが少なくとも3%、特に少なくとも40%又は50%であることを意味するものとし、光透過率は光源D65下で測定される(周知の方法で、特に標準規格ISO 9050:2003に従って)。
【0017】
一般に、グレージングユニットの(少なくとも2つの)グレージングエレメントは、無機ガラス(厚さが約0.7mmから6mm以上)で作製されたシート(又はペイン)である。無機ガラスは、多くの利点を有し、特に良好な耐熱性(従ってそれを光源、例えばダイオードの近くに、これらが熱くなるという事実にかかわらず配置することができ、それはまた火災安全基準要件を満たす)、及び良好な強度を有する(従ってそれはクリーニングしやすく、耐引掻き性である)。この無機ガラスは、(所期の外観及び光学的効果に応じ、またグレージングユニットの用途などに応じて)透明ガラス(厚さ4mmの場合の光透過率TLが90%以上)、例えば標準的なソーダ石灰ガラス、例としてサン−ゴバン・ガラス社のPlanilux(商標)などや、又は超透明ガラス(TLが91.5%以上)、例えば0.05%未満のFe III又はFe23を含有するソーダ石灰ガラス、例としてサン−ゴバン・ガラス社のDiamant(商標)ガラス又はPilkington社のOptiwhite(商標)ガラス又はSchott社のB270(商標)ガラスなど、であることができ、あるいは、国際公開第04/025334号パンフレットに記載されたその他の組成のうちの1つを有してもよい。ガラスは暗色でもよく、またニュートラルカラー(無色)、又は(僅かに)色つき又は有色(サン−ゴバン・ガラス社のVenus又はTSAガラスなど)であってもよい。それは平滑であってもテクスチャ化されていてもよく(例としてサン−ゴバン・ガラス社のAlbarino(商標)ガラスなど)、また化学処理又は熱処理、例えば強靱化、アニーリング、テンパリング(特にその強度を高めるために)、又は曲げ加工処理が施されていてもよく、それは一般にフロート法によって得られる。それはまた、必要に応じて、ガラスセラミック、好ましくは低不透明度のガラスセラミック、特に透明ガラスセラミック、例えばEurokera社のガラスセラミックKeraLite、であってもよい。本明細書中、別段の指示がない限り、以下において「ガラス」という用語は無機ガラスを意味するものとする。
【0018】
上述の無機ガラスエレメントとは別に(又は所望によりそれに代えて)、基材は、有機材料を基礎材料とする、例えば透明プラスチックで作製されたエレメント、例としてポリカーボネート(PC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなど、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン(PU)、アクリルポリマー、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)など、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、イオノマー樹脂、コポリマー樹脂、などで作製された、エレメントを含んでもよい。必要な場合には、グレージングユニットは、体積及び/又は重量を減らすために、又はより多様な形状を作り出すのを可能にするために、本質的にプラスチック(有機シート)で作製してもよいが、しかしながらそれは一般には、上記のように少なくとも2枚の無機ガラス板を含む。
【0019】
本発明の定義において示されているように、グレージングユニットは特に、少なくとも1つの、有利には透明な積層中間層(あるいはエレメント又はフィルム)を、(少なくとも2つの)グレージングエレメント間に含むことができる。この積層中間層(あるいはエレメント又はフィルム)は有利には、有機材料(例えば、上述の材料から選択されたプラスチックフィルム、例としてPVB又は(軟質)PU又は可塑剤なしの熱可塑性材料(エチレンビニルアセテート(EVA)コポリマーなどで作られたプラスチックフィルム)から作製されている。このグレージングユニットの種々の(有機又は無機グレージング)エレメント又は層は、積層ユニット(あるいは任意選択的に、例えば集成体を空気を充填した空隙によって分離された別の層と組み合わせる場合には、複層グレージングユニット)を形成する。必要に応じ、グレージングユニットは前記中間層を少なくとも2つ含み、これらの間に導波路エレメントが配置される。各中間層の厚さは、例えば0.2mmと1.1mmの間、特に0.38mmと0.76mmの間である。
【0020】
例えば、グレージングユニットは、(順番に)第1の透明無機ガラス板又は任意選択的に有機ガラス板と、有機中間層(例えば、着色されているか否かにかかわらず、透明PVB製の)と、導波路エレメント(下述のように、1つ又は2つ以上の、特に平面状の、部分又は区分から形成される)であって、(1つの部分の内部、又は2つの部分の交差部に)少なくとも1つの繊維層を組み込んだ導波路エレメントと、任意選択的な別の有機中間層と、第2の無機又は有機ガラス板とによって形成された積層ユニットであること(あるいはこれを含むこと)ができる。光抽出のために設けた側に配置されたガラス板は、好ましくは透明ガラス板であり、他方のガラス板及び/又は1つ又は2つ以上の中間層は、場合によっては透明であり、及び/又はより暗色であるかあるいは色付きであり、且つ/又は装飾用フィルム及び/又は、特に太陽熱が逃れるのを防止するための、下記で説明する機能性フィルム(例えば低Eフィルムなど)を組み込んでいる。
【0021】
複層グレージングユニットの任意的な事例(例えば列車のためのグレージングユニット)では、グレージングユニットは、真空下にあるか又はガス(空気、希ガス又は不活性ガス、例えばアルゴンなど)入りの内部空間を有しており、この内部空間の高さは例えば10mm未満である。例えば、特にグレージングユニットの周縁部に位置するスペーサが、内部空間の境界を定め、このスペーサは場合によりストリップであり、必要な場合には一体式のストリップ、特にフレーム(とりわけC字形断面、閉じた断面、正方形断面、又は長方形断面を有する)であり、そして必要な場合には乾燥剤を収容している。内部空間は更に、周囲シーリングシステム、例えば国際公開第01/79644号パンフレットに記載されているようなブチルマスチックで作られたシールによって、範囲が定められていてもよい。
【0022】
本発明によれば、グレージングユニットは、(有機材料で作製された)少なくとも1つの(有利には透明な)導波路エレメントを含み、該導波路エレメントは隣接した(積層)エレメントの屈折率よりも高い屈折率を有し、このエレメントは場合により複数の(平面状グレージングユニットの場合には特に平面状の)部分又は区分で構成されていて、各部分は特に、光を透過させる機能を有しており、そして有利には少なくとも1つの光源が付随している。例えば、本発明によるグレージングユニットにおいて複数の別個のパターンを照明しようとする場合には、導波路エレメントが各被照明ゾーンに繊維構造体が組み込まれた(連続的な)シートの形態をとるか、又は複数の部分(又は導波路)を所与の平面(又は場合により複数の平面)に、あるいは積層ユニットの同じ層に設けてもよく、各部分は特に少なくとも1つの光源と連携し、被照明ゾーンの繊維エレメントへ通じている(繊維エレメントは場合によっては1つの部分の端部及び/又は2つの部分の交差部に配置される)。
【0023】
導波路エレメントは、隣接した(積層)エレメントの屈折率よりも高い屈折率を有する材料から形成されている。例えば、そして有利には(特に隣接エレメントが屈折率1.58未満の1又は2枚以上のガラス板である、及び/又は1つ又は2つ以上のPVBもしくはPUもしくはEVAもしくはPMMA中間層である場合には)、屈折率が約1.59のポリカーボネート(PC)又はポリスチレン導波路が使用される(従って、例えば、ユニットはガラス/PVB/PC/PVB/ガラス、又はガラス/PMMA/PC/PMMA/ガラスのサンドイッチ構造となる)。好ましくは、導波路の屈折率と(その各主面上の)隣接エレメントのそれぞれの屈折率との差は少なくとも0.05であり、特に好ましくは少なくとも0.1、又は少なくとも0.2である。屈折率は550nmで測定される(この測定は、標準的な方法で、特に分光偏光解析法によって、行われる)。
【0024】
導波路は、有機シート(又はプラスチックシート)から形成されていると有利であるが、必要な場合には少なくとも1枚のガラス板から形成されていてもよく、あるいは積層されているか又は複層ユニットであってもよい。導波路、又はその層のそれぞれ(これらが有機であれもしくは無機であろうと、又は両タイプの層の集成体であろうと)は、隣接エレメントの屈折率よりも高い屈折率を有し、その層はまた例えば同様の屈折率(屈折率の差は特に0.03を上回らない)を有しているのが有利である。導波路は薄くても厚くてもよく(特に20mmほどの厚さ)、好ましくは透明である。それは色付きであってよいが、透明又は超透明であることが好ましい。更に、導かれる光の損失を制限するために、導波路は例えば、導かれる光の波長において線吸収係数が2.5m-1未満、好ましくは0.7m-1未満であるガラス又は有機材料で製作することができる。好ましくは、導波路の透過ピークの周囲の透過率(主面に対して垂直な)は50%以上、特に70%以上、又は80%以上である。
【0025】
導波路とは別に積層中間層が存在しない場合には、導波路(有利には有機材料で作製される)が、必要な場合には隣り合ったグレージングエレメント間の積層中間層(必要な場合には無機グレージングエレメントの集成を補助する)としても働く。しかしながら好ましくは、本発明によるグレージングユニットは少なくとも1つの積層中間層を含み、そして本発明による導波路及びグレージングエレメントに加えて、導波路の各側に少なくとも1つずつ積層中間層を含むことが有利である。
【0026】
本発明により規定されているとおり、グレージングユニットはまた、光を導波路内(その厚さ内)で(全内部反射により)伝搬するために、導波路に接続された少なくとも1つの光源(又は放射線源)を含んでいる。光源は、導波路のエッジ面と組み合わされるか又はそれに接続されると有利である。抽出手段(光源によって発せられた光/導かれた光を抽出するための)は、光のうちの少なくとも一部が主面の(少なくとも)1つを通って出てゆくのを可能にするために、導波路の厚さ内に配置されている。
【0027】
1つ又は2つ以上の光源(同一であってもそうでなくても)を、例えば電気的な光源及び/又は1つ又は2つ以上の発光デバイス(LEDなど)からなる光源を、使用することができる。1つ又は2つ以上の光源は単色(青、緑、赤などで発光する)であっても又は多色であってもよく、あるいは例えば白色光などを生じさせるように適合させられ又は組み合わされていてもよく、それらは連続又は不連続などであってもよい。
【0028】
グレージングユニットに導入される光は、特に可視光及び/又はUV(好ましくは近UV)の形で放射させることができ、光は場合によっては、特に後者の場合には、UV光を可視光に変換するための手段を用いて、例えば少なくとも1つの蛍光体層を通過させることによって、可視光に変換される。蛍光体層は光源に組み合わされるか、又は基材のエッジ面又は表面(特に抽出面)上に被着される。少なくとも1つの光源を、照明することが所望される面(一般には主面)の少なくとも1つのゾーンの照明を可能にする(グレージングユニットの他のエレメントと共働して)ために配置する。
【0029】
本発明により規定されているとおり、グレージングユニットはそのエッジ面を介して光が照射される発光グレージングユニットであるのが有利であり、1つ又は2つ以上の光源はグレージングユニットのエッジ面(又はエッジ)に沿って(特にその導波路部分のエッジ面に沿って)配置され、これらの1つ又は2つ以上の光源は場合により、通常の蛍光灯、比較的狭い間隔を置いたダイオード(LED)のライン、1つ又は2つ以上の光ファイバー(導波路の光導入エッジに沿って配置され、光の導入がファイバーからの側方抽出により行われる)などである。
【0030】
グレージングユニット/導波路のエッジ面、又は片面のコーナーもしくは端部は、凹部を含んでいてもよく、この凹部内には光源又はチップが配置され(例えば、そこにダイオードを収容するため、(テンパリング前に)シートの端部を切削することが可能である)、及び/又は光源又はチップを特にエッジ面に接着結合させてもよい(この場合、例えば、屈折率が導波路の屈折率と外部媒体又はレンズのそれとの中間である接着剤が選ばれる)。凹部ゾーンは、側方への取り付けを容易にするために、導波路に沿って複数の光源を収容するためのスロットを形成していてもよく、スロットは少なくとも1つの側面に姿を見せても見せなくてもよい。光源は、それらを保護し及び/又はそれらを凹部ゾーン内に保持するための手段内に、特に接着結合、スナップ留め、ボルトなどによって結合エッジ面に取り付けられて凹部ゾーンの一部又はほとんどを占有するU字形ストリップ中に、位置してもよい。
【0031】
エッジ面は、より広い抽出ゾーンへ向けて光の方向を変更するために傾斜していてもよく(少なくとも45°、特に少なくとも80°、そして90°未満の角度)、及び/又は、光源を支持するエッジ面及び/又は反対側のエッジ面が、導かれた光の最適な再利用を保証するため、例えば粘着金属テープ又は銀の被着物(ワニス又はラッカーによって酸化から保護された)によって反射性にされていてもよく、あるいはミラーを含んでいてもよい。
【0032】
準点光源(例えばLEDなど)を使用するのが有利であり(特にサイズ、環境、加熱などの理由から)、これらの光源は導波路のエッジ面に沿って配置される(光を導波路のエッジ面に導入するために)のが有利であって、この配置構成は簡単で経済的且つ効果的である。
【0033】
ダイオードは単純な半導体チップ(カプセル封止、コリメーションレンズなしの)でよく、例えば大きさが約100ミクロン又は1ミリメートル又は数ミリメートル(例えば幅1mm、長さ2.8mm、及び高さ1.5mm)であることができる。これらのチップは、ハンドリング中のチップを保護するため、又はチップ材料と他の材料との適合性を向上させるための、一時的又は永久的な保護パッケージを含んでいてもよく、及び/又はこれらのチップはカプセ封止されていてもよい(例として、チップをカプセル封止するとともにいろいろな機能、すなわち酸化及び湿分からの保護、散乱、集光又はコリメーション、波長変換など、を有する例えばエポキシ又はナイロン樹脂又はPMMAで製作したパッケージを含む体積の小さいカプセル封止SMD(表面実装デバイス))。
【0034】
ダイオードの総数は、被照明ゾーンの大きさと位置、所望される光強度、及び所要の照明の均一性によって規定される。
【0035】
例えば、電気接点が互いに対向する面上に位置するか又は同一面上に位置するという特徴のうちの一方及び/又は他方の特徴を有するダイオードは、横向きに(電気接点に対して平行に、チップの発光面に対して垂直な又は斜めの主発光方向に発光することによって、導波を促進することができ、あるいは、チップの発光面に対して斜めの2つの主発光方向に発光して、バットウイング形状をもたらすことができ、あるいはランバート発光パターンなどを有することができる。上述の2つの方向は、例えば20°と40°の間及び−20°と−40°の間の角度、又は60°と85°の間及び−60°と−85°の間の角度に集中し、又はその逆となる。
【0036】
各ダイオードの出力は一般に1W未満、特に0.5W未満である。各ダイオードは「高出力」ダイオード(0.2Wを上回る出力)であることができ、及び/又は5ルーメンを上回る光度を有することができ、及び/又は強力な光点を避けるとともに例えばバットウイング型ダイオードを選ぶのが好ましかろう。
【0037】
一般には、ダイオードは、同じ主発光方向を有するように(より簡素にするため)、そして同じ単色又は多色スペクトルを有するように(より均一な照明のため)選択される。これらのダイオード(のそれぞれ)は一般に、主面に対して実質的に平行な主発光方向を有し、この方向は特に抽出面に対して+5°又は−5°ほどである。グレージングユニットは場合によってはまた、ダイオードのための少なくとも1つの反射器を含んでいる。反射器は、抽出層に向かって及び/又はグレージングユニットの内面又は外面の方に向けて光の方向を変更するために配置されている。
【0038】
ダイオードは、給電トラックを備えた1つ又は2つ以上の基材(プリント回路板(PCB))上又は支持体上に(予め)まとめて取り付けることができる。これらの基材又は支持体は場合によっては、他の支持体(ストリップなど)に固定される。ダイオードの各基材/支持体は、グレージングユニットの縁に位置して、そしてはさみ付けによる取り付け、相互のはめ込み、クリップでの固定、ねじ留め、接着結合、又は両面テープ接合などによって(特にグレージングシート及び/又は導波路に)固定される。基材/支持体は一般に薄く、特に3mm、1mm、又は0.1mm以下の厚さであり、あるいは必要な場合には積層中間層の厚さよりも薄い。特に被照明ゾーンが極めて離れている場合には、いくつかの支持体を設けてよい。基材は、可撓性、誘電性、又は導電性の材料(金属、例えばアルミニウムなど)で作製することができ、複合体、プラスチックなどで作製してもよい。ダイオードは、基材から電気的に絶縁されたトラックに、及び/又はプラスチック基材上のサーマルパッドにはんだ付けしてもよい。あるいは、電気絶縁性で熱伝導性の材料(サーマルグリース、熱伝導性接着剤、テープ、片面粘着テープ、両面粘着テープなど)を挿入して、熱放散及び発光効率を改善し、ダイオードの寿命を延ばすことができる。全長L0の1つ又は2つ以上のダイオード基材(又は支持体)の場合、加熱を制限しひいてはダイオードの寿命を長くするため、ダイオード群の総出力は好ましくは30[W/m]×L[m]以下である。発光効率を高めるために、基材は、ダイオードの周りに(平らな又は斜めの)散乱面を、例えばラッカー又は塗料の塗膜及び/又は白色反射器などを、有していてもよい。
【0039】
グレージングユニットは、チップを保護することができる、流体に対するシーリング手段を含んでいてもよく、及び/又はチップ支持体に穴を形成して、チップを接着剤に埋め込むことができるようにしてもよい。
【0040】
グレージングユニットは、複数のダイオード群(及び1つ又は2つ以上の発光ゾーン)を含んでいてもよい。同一の光源又は種々の波長を発する光源を種々の形態及び/又は数で組み合わせることによって、様々な色又は種々の形状の発光ゾーンを作ることもできる。
【0041】
グレージングユニットは、照明ダイオードの遠隔制御を可能にするために、制御信号(特に赤外線の)を受信するダイオードを含んでもよく、及び/又は照明ダイオードを、種々異なる強度、所定の色又は種々の色などが永続的又は間欠的に発せられるのを可能にする制御手段に接続してもよい。
【0042】
必要な場合には、任意選択的にダイオード以外の光源を、この目的のために設けられた凹部内で又は付属のエレメント上で使用することができる。これらの他の光源は例えば、別の基材、特に透明基材(ガラスなど)に、積層中間層、特に超透明積層中間層を使用して、接着結合又は積層することができる。
【0043】
例えば、UV(特に近UV、約360〜400nm)領域で又は可視領域で励起させることができるフォトルミネセント層、特に実質的に透明なフォトルミネセント層を、好ましくは発光デバイス(LED、発光層など)と組み合わせて、使用することができる。このフォトルミネセント層は、例えば、白色光を生成するように任意選択的に組み合わされた、蛍光体粒子(CaS:Eu、Tm2+、SrAl24:Eu2+、Y3Al512:Ceなど)、又はコアシェル粒子(例えばZnSがシェルに対応し、CdSeがコアに対応する)をベースとし、励起放射線を生成する。これらの粒子は場合によっては、マトリクス(例として、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)などのケイ素アルコキシド重合生成物を含む無機マトリクス)中に分散される。フォトルミネセント層は場合によっては、必要に応じて、1つ又は2つ以上の他の光源の波長を変換する(例えば可視光ダイオードをUVへと)。
【0044】
どのような光源を使用するのであれ、光源は薄いと有利であり、場合によっては数ナノメートルもの薄さであり、あるいは特に数十ナノメートルの厚さである。
【0045】
1つの有利な実施形態では、環境及び/又はグレージングユニットにつながる1つ又は2つ以上のセンサを、前記グレージングユニットの光源及び/又は給電システムと組み合わせることができる。例えば、光検出器(フォトダイオードなど)又は温度センサ(外部又は内部の温度センサ、ガラス又は光源上のセンサ)を使用することができる。センサは、例えば、中央処理ユニットを介して光源の給電部を制御するために使用される。センサに対して、グレージングユニットの機能のうちの1つ(特に光抽出又は光源の動作)がそれを上回ると停止される測定値(例えば最大の明るさ)を規定することができる。例えば、値が高くなると、グレージングユニットの給電を停止し、そして値が低くなると、グレージングユニット又はその機能(例えばその明るさレベル)のうちの1つを、1つ又は2つ以上のセンサから受信された情報を使用して制御することができる。使用者は、センサを無効化することによってグレージングユニットの動作を「強制」することもできる。
【0046】
センサは、内側(例えば乗り物の)にあってもよく、又は外側にあってもよい。外部環境に応じてグレージングユニットを制御することによって、例えば、光源及び他の構成部品(ポリマー、電子構成部品など)の寿命を長くすることができる。明るい光及び/又は高温条件下での光源の動作を制限することによって、特に、製品の使用中にそれらが曝露されることがある最高温度を有意に低下(少なくとも10〜20℃)させる一方、発光グレージングユニットの機能を維持することが可能になる。この組み合わせはまた、使用者が何らかの措置を講じることなしに、グレージングによって提供される照明の明るさを自動的に変化させて外部の明るさ条件に適合させることを可能にする。
【0047】
自動車用グレージングユニットの場合、光源の給電部を例えば自動車の中央処理ユニットによって制御して、例えばフロントガラスの上方部分又はサンルーフなどのグレージングユニットに配置された光センサから受信する情報に応じてそれらのスイッチがオンになるのを許可又は防止することができる。明るさが強い時(昼間)には、明るさレベルは最大値を超え、光源はオフのままである。明るさが弱い条件(夜間)では、最大値に達せず、光源のスイッチが入る。光源のスイッチがオンになるかオフになるかは、温度センサ(グレージングユニット上又は光源上などに設けられた)によって制御してもよい。
【0048】
本発明の定義によれば、グレージングユニットのベースを形成する種々のシート又は層(あるいはエレメント)及び上述の1つ又は2つ以上の光源(又は放射線源)とは別に、グレージングユニットは、少なくとも1つの繊維構造体(又は「布帛」)の形態をなす抽出手段が存在することを特徴とし、この抽出手段は、基材の面のうちの少なくとも1つの面(特に主面)上に発光ゾーンを形成するように配置され、そして(一般に被照明ゾーンの下の)導波路エレメントのコア(又は中心部又は主部)に位置する。上記のように、この構造体は導波路エレメント内に配置されてもよく、あるいは導波路エレメントの2つの(別個のものであるが、しかし必ずしも分離されてはいない)の部分の中間に配置されてもよく、及び/又は導波路エレメントの1つの部分のエッジ面に配置されてもよい。
【0049】
この繊維構造体は、好ましくはガラス繊維及び/又は任意選択的にポリマー(又はプラスチック)繊維を含む。繊維を形成するために使用されるガラスは、繊維にすることができるいかなるガラスであってもよく、特にE−ガラスでよい。ポリマー繊維の場合には、これらは特にポリエステル繊維、又はポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなど、で製作された繊維でよい。繊維は、同じ又は異なる性質、同じ又は異なる長さ、及び同じ又は異なる直径を有していてよく、繊維構造体の密度及び重量は様々であることができる。
【0050】
有利には、繊維構造体は、単位面積当たり重量が10g/m2と500g/m2の間、好ましくは10g/m2と100g/m2の間であり、そして繊維構造体は直径が1μmと20μmの間、特に5μmと15μmの間の繊維を含む。好ましくは、繊維構造体は、厚さが10μmと1mmの間であり、そして繊維構造体は1又は複数の繊維層からなる。
【0051】
好ましくは、繊維構造体の光透過率TLは45%を上回り、好ましくは60%を上回る。光透過率は、光源D65下で測定される。
【0052】
繊維構造体は、織られていても、又は織られていなくても、又は編まれていてもよく(全体的に又は部分的に、例えば模様を織るか、又は異なるメッシュサイズの網状組織を形成することが可能である)、あるいはエンボス加工されていてもよく(3D効果を生み出すために)、繊維は場合によっては、六角形、正方形又はダイヤモンド形のメッシュなどを有する網状組織を形成する。1つの有利な実施形態の場合、繊維構造体は1つのベール(あるいは同じ密度又は異なる密度の同一又は異なる複数のベールなど)であるのが有利であり、これにより抽出層内の繊維のランダムな分布を保証する。慣例的に、「ベール」という用語は、完全分散されたフィラメントから形成された不織布を意味するものと理解される。このようなベールを用いて、層の特性を、特に光透過率に関して、全体を通して均一にすることができる。加えて、ベール(より一般には繊維構造体)は着色し、種々の形状にカットしてもよい(特に、繊維構造体のスタックを迅速にカットするために中空パンチなどを使用することが可能である)。従って、抽出領域は連続又は不連続であることが可能であり、また照明パターンは互いに規則的又はランダムに配置することが可能である。
【0053】
ガラス繊維の不織布ベールは一般に、繊維を結合させベールを扱いやすくするのに十分固くする結合剤(場合によっては、1種又は2種以上の添加剤、例えば可視光又は赤外線に応答する顔料、あるいは蛍光顔料又は抗UV顔料などを含む)を含有している。慣習的に繊維を結合し得る少なくとも1種のポリマー(下記に例を挙げる)を含むこの結合剤は、透明であると有利であり(必要な場合には色素を含んでもよい)、周知の好適なタイプのものでよい。好ましくは、この結合剤は、抽出層を通過する光線が下記で説明するように繊維と結合剤、又は特に繊維を封入する別の媒体との界面に達するように、繊維の表面を完全には被覆しない。結合剤は好ましくは、ベールの約5〜30wt%(特にガラスベールの場合)、又はより好ましくは5〜20%である。「繊維を封入する」という表現は、繊維の少なくとも一部分を被覆する/カバーする/埋め込むことを意味するものとする。従って、繊維の材料と封入媒体の材料との間に界面が存在する。
【0054】
繊維構造体は、任意選択的に、繊維を例えば封入媒体を形成する媒体(特にポリマーマトリクス)上に配置し、それらが混ざり合ってベールを形成し、このベールが封入媒体以外の結合剤を有しないようにして作製してもよい。
【0055】
一般に、繊維構造体はこのように、結合剤及び/又は封入媒体と一緒にし又はそれに埋め込むことによって、特にその取り扱いを可能にし繊維を保護することができる。繊維構造体と、該当する場合にはその結合剤又は封入媒体とは、(半)透明集成体を形成する。散乱及び抽出にとって有利とするために、繊維構造体の繊維の屈折率と、封入媒体(該当する場合、それは下記で説明するように導波路であってもよい)の屈折率及び/又は該当する場合結合剤の屈折率(結合剤が、特に構造体の1種又は2種以上の繊維のうちの少なくとも1種の周りに、十分な厚さを有している場合)との差の絶対値は、0.05以上であることが好ましい。
【0056】
繊維を封入する媒体は、有利にはポリマーでよい。特に、それは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタンを基礎材料とするものでよく、ポリオレフィンを基礎材料とする又は1種又は2種以上の透明熱可塑性材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミドなど、を基礎材料とするイオノマー又は接着剤でよく、フルオロポリマー、例えばエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など、を基礎材料とするものでよい。1つの変更実施形態よれば、この封入媒体は、ポリマーマトリクスの代わりに、空気によって、又は適切な屈折率を有する液体によって形成されてもよい。
【0057】
繊維を組み込んだ封入媒体はまた、該当する場合には、導波路エレメントのコア内にあるのが有利である。それは同一又は異なる材料で作製することができ(導波路自体であってもよい)、あるいは導波路の屈折率と同一又は異なる屈折率を有することができる。一般に、封入媒体は、特に導波路、ポリマー積層中間層、又は熱可塑性基材によって形成された、ポリマーマトリクスである。好ましくは、繊維封入媒体は、1つ又は2つ以上の導波路のうちの1つと同じ材料から形成されるか、又は導波路自体である。封入媒体は一般に、繊維構造体の厚さ以上の厚さを有している。封入媒体が導波路と異なる場合には、封入媒体を含めた繊維構造体(この集成体は、該当する場合には抽出手段を形成する)は、導波路の厚さ以下の厚さを有すると有利である。導波路は、場合によっては、1つの側又は2つの側で繊維構造体(及び該当する場合にはその封入媒体)を越えて延在する。
【0058】
繊維層の抽出特性は、特に繊維構造体の単位面積当たりの重量、繊維の直径、繊維の長さ、繊維の組成、及び(該当する場合には)封入媒体の組成、のうちの1つ又は2つ以上のパラメータを変更することによって調節することができる。非常に周期的で均一な構造が望まれる場合には、織布を使用することができる。抽出層の全光透過率は80%以上であるのが有利である。直接光透過率と散乱光透過率とを含む全光透過率は、上記のように、ISO標準規格9050:2003により定義される。必要な場合には、抽出層は特にまた、40%以上の曇り度の値を有する。百分率で表されるエレメントの曇り度の値は、光を散乱させるこのエレメントの能力を示し、この場合にはASTM標準規格D1003に従って曇り度計を使用して測定される。
【0059】
本発明に従って使用される繊維構造体(該当する場合、その結合剤を含み及び/又は封入媒体が導波路と異なるときにはそれ含む)は、2つの導波路エレメント(又はエレメント部分)の間に挿入することができ、あるいは導波路エレメントのエッジにあることができ、あるいは導波路エレメントの内部に挿入することができ、この場合この集成体をグレージングユニットの他のエレメントと積層することができる。特に、導波路を形成するように意図されたプラスチックシート上に繊維構造体を配置することができる。このプラスチックシートは、想定される積層ユニットよりも大きくてよい(特に光が導波路内により容易に導入されるのを可能にするために)。その後、プラスチックが軟化して繊維がポリマー内に入り込むまで集成体を加熱し、次いでこの集成体を慣用的な積層法を用いて2枚のガラス板(又は少なくとも2つのグレージングエレメント)及び1つ又は2つ以上の積層中間層の間に単純に積層する。あるいは、導波路を形成するように意図されたポリマーを注入する前に繊維構造体を成形型内に入れることにより、導波路を含む層と繊維層とを有利に形成することができる。あるいは、ガラス板及び該当する場合には積層中間層の間に積層する前に、繊維構造体を2つの導波路部分の中間に、又は導波路のエッジ面に、配置してもよい。
【0060】
抽出手段は、接合された又は分離した1つ又は2つ以上の繊維層(及び場合によっては少なくとも1種の結合剤、及び/又は特に導波路以外の少なくとも1種の封入媒体)を含むことができる。こうして、1つ又は2つ以上の繊維層が導波路の厚さ内に配置されるので、それらは保護される。そしてこの場合、外部環境と接触するグレージングユニットの外部面は平滑でよく、容易にクリーニングすることができる。抽出手段は、第1繊維層(可視光及び/又はUV光を散乱する)と、可視光を散乱する粒子及び/又はUV光によって励起され可視光を放射する蛍光体をベースとする第2層、例えば外側層、とを含んでいてもよい。必要な場合には、更なる抽出手段を設けてもよく、例えばガラスの抽出面に艶消し、サンドブラスト、スクリーン印刷などを施してもよく、あるいは導波路の厚み部分にエッチングなどを施してもよい。
【0061】
抽出手段として使用される1つ又は2つ以上の繊維層は、所期の照明又は効果に応じてグレージングユニットの面積の制限された又は比較的広い1つ又は2つ以上のゾーン(又は部分)を覆うことができる(それらは、発光フレームを形成するため周縁部に位置するストリップの形態をなすことができ、又はロゴや模様などを形成することができる)。より一層均一な照明を提供するために、繊維によって覆われた部分の面積を、光源からの距離とともに増大させてもよく、例えば光源の近くでは5%で、そして光源から離れたところでは16%〜55%とすることができる。
【0062】
既に述べたように、抽出手段は複数の部分にあってもよく、これらの部分は、例えば、場合により任意の幾何学的形状(長方形、正方形、三角形、円形、楕円形など)の、同一の又は異なる、連続又は不連続のパターンを形成してもよく、及び/又は図形もしくは符号(矢印、文字など)を形成してもよい。品質をチェックすることができ、工業的に再現し得るゾーンを画定することは容易である。グレージングユニットはこのように、複数の抽出ゾーン(繊維層)を含むことにより、グレージングユニットに複数の発光ゾーンを形成することができる。上述のように、1つ又は2つ以上の発光ゾーンはグレージングユニットの(機能的な、可視の)表面の全て又は一部を覆うことができる。従って複数のゾーンが、同時であるか否かとは無関係に、あるいはそれらの制御が独立して行われるか否かとは無関係に、発光することができる。グレージングユニットは、差異化された照明を行うことができ、例えば建築用と装飾用の両方の照明、又は建築用の照明、及び標識又は建築用の照明、及び表示(例えば図形、ロゴ、文字符号など)を行うことができ、又は読書灯などを製造することができる。更に、光源(特にLED)によって、また繊維構造体の繊維を着色することによっても、種々の色を得ることができる。
【0063】
好ましくは、光(特に繊維層ゾーンに達する光)のほとんど、又は少なくとも80%又は90%が、繊維層によって抽出される。繊維をばらばらに又はランダムに分布させることの利点は、光源がオフにされると導波路が透明に見え、はっきりと見通すことができる(面及び符号のような形を認識して識別することができる)ことである。このことは自動車用途において特に有利である。
【0064】
1つの実施形態では、光源がオフにされると、グレージングユニットは透明に見え、又は概ね透明(繊維のメッシュのために)に見え、特に20%を上回る光透過率TL、好ましくは50%以上、更には70%以上の光透過率TLを有するとともに、50%以下、好ましくは30%以下の光反射率TLを有する(例えば照明窓の場合、光の透過が損なわれると室内の照明は改善されない)。
【0065】
別の実施形態では、光源がオフにされると、グレージングユニットは半反射性又は反射性になり、あるいはミラーを形成する(基材の面の1つに取り付けたミラーによって、あるいは基材の面の1つ(一般には発光/抽出面とは反対側の)に配置した、例えばステンレス鋼製の金属シートもしくはプレート、又は金属フィルム、特に銀フィルムによって)ことができる。グレージングユニットはまた場合によっては、光源がオンにされるとミラーを形成する。
【0066】
グレージングユニットのエレメントのうちの1つ及び/又は他のものに、実際のところ1つ又は2つ以上の他のゾーンが存在していてもよい。例えば、(半)透明ゾーン、及び/又はミラーを形成する反射ゾーン(反射性コーティングを被着することによって製造される)であって、必要な場合にはそのミラーをエッチングすることにより形成された付加的な散乱手段を有する反射ゾーン、及び/又は例えばグレージングエレメントをテクスチャ化することによって得られる半透明又は艶消しゾーン(プライバシー保護など)、及び/又は不透明及び/又は有色コーティングで装飾されたゾーン、もしくは厚さ全体を通して色付けされたグレージングエレメントで装飾されたゾーンなど、が存在してもよい。
【0067】
本発明によるグレージングユニットは、工業的な要件を満たし(収率、コスト、生産速度、自動化などの点で)、ひいては性能を犠牲にすることなしにユニットの「低コスト」生産を可能にする。それは外部及び内部の両方に使用することができる。
【0068】
1つの単純な実施形態では、グレージングユニットは例えば、外側シート(照明されるように意図されたもの)と、繊維の内部層を組み込んだ中央の透明な導光シート(本発明に基づいて説明したような導波路シート)と、もう一つの外側シートとを含むことができる。光源は、積層ユニットのシートのエッジ面に固定された側方支持体に取り付けた複数の発光ダイオードであり、必要な場合には、ダイオードを収容するために中央シートに凹部が設けられる。
【0069】
既述のエレメントは別として、グレージングユニットは他のエレメント及び/又は層、例えば光反射器(必要な場合には内部空間に、反射面と一緒に取り付けられた部品であって、この反射器によって中心の光線が面に向けて反射され、これにより、必要な場合には、より高い光学効率を保証し、及び/又はこの反射器は、散乱手段によって後方散乱された光、及び/又は1つ又は2つ以上のダイオード基材に向けて反射され及び/又はスペーサに向けて反射された光を再利用する)を含んでいてもよい。グレージングユニットはまた、1種又は2種以上の透明な接着剤樹脂(エレメントを接着結合するためのもの、例えば外部接着剤を形成する層、特に加熱によって軟化すると接着するようになる材料(例えばPVB)で作られた層、又は接着面を有する材料、例えばPE,PU,PETなどで作られた層)、1つの面の周縁部に設けられた又は前記面上に延在する保護層(シート、フィルム、被着物など)(例えば、場合によりアクリルを使用して結合される、軟質のPU、PE又はシリコーン層)、1つ又は2つ以上の機能、例えば放射線(IR、UV)からの保護、日照制御、低E、耐引掻き性、審美機能(色、パターンなど)、などを有する層(必要な場合には導電層)を含んでいてもよい。本発明によるグレージングユニットの利点は、他の層を使用することとの相性がよいことであり、これは自動車用途の場合において特に有利である。
【0070】
このように、グレージングユニット又はそのエレメントのうちの1つに、所与の機能を有するコーティング、例えば赤外線ブロッカー(例えば、誘電体フィルム、又は窒化物フィルム、例としてTiN又はZrNフィルムなどと隣接する、又は金属酸化物又は鋼のフィルム、又はNi−Cr合金製のフィルムと隣接する銀フィルムをベースとする)、又は低Eコーティング(例えば、ドープ型金属酸化物、例としてSnO2:Fもしくはインジウム錫酸化物(ITO)など、又は1つ又は2つ以上の銀フィルムから作られる)、又は曇り止めコーティング(親水性フィルム)、又は防汚コーティング(少なくとも部分的に結晶化したアナターゼ形のTiO2を含む光触媒コーティング)、又は反射防止多層コーティング(例えばSi34/SiO2/Si34/SiO2)、疎水性/疎油性層又は親油性フィルム、熱反射(日照制御)又は赤外線反射(低E)のための多層、などを組み込むことが有利な場合がある。このように、このモジュールは、グレージング材分野において知られている任意の機能性を組み込むことができる。
【0071】
機能的又は審美的な理由(例えばまぶしさを防止するため)などから、表面を、特にサンドブラスト処理、酸エッチング、又はスクリーン印刷によって、テクスチャ化することも可能である。
【0072】
本発明によるグレージングユニットを使用して、装飾用の照明、読書用の照明、建築用の照明、表示などを行い、標識を形成することなどができる。それは、例えば以下のもの、すなわち、
・有利には自動車又は輸送手段向けの、発光グレージングルーフ又は発光ウィンドウ(リアウィンドウ、サイドウィンドウ、フロントガラス)として使用され、特に公共輸送機関(列車、地下鉄、路面電車、バス)又は水上輸送機関又は空中輸送機関(航空機)において、発光ガラスドアとして使用され、又は公道又は都市の照明のために使用されるもの、
・建築用グレージング向けに使用されるもの、例えば照明(又は発光)壁パネル、照明窓、天井、発光性の床又は壁タイル、発光ガラスドア、発光パーティション、又は階段などを形成するために使用されるもの、
・都市設備向けに使用されるもの、例えばバス待合所、手すり、展示ケース、店舗のショーウィンドウ、棚エレメント、温室、宝石陳列ケース、水槽、柵、階段の蹴上げ板、台座などのための発光ガラス部分に使用されるもの、
・内装設備向けに使用されるもの、例えば発光性の浴室壁、発光ミラー、家具部品の発光ガラス部分、キッチン調理台、はねよけ板、調理用フードのバックパネル、床又は壁のタイル、冷蔵庫部品(棚)などに使用されるもの、あるいは、
・家庭用又は業務用の冷蔵庫、冷凍庫、又は調理機器(例えばガラスセラミックプレート)などに使用されるもの、
であることができる。
【0073】
グレージングユニットをプラナーランプとして使用することも可能である。これらのプラナーランプは、場合によっては、液晶ディスプレイを照明するためにフラットスクリーン型コンピュータモニターに採用されるバックライトであり、あるいは、天井、床又は壁に使用されるか、又は広告板、あるいは場合によっては店舗のショーウィンドウの棚又は背景などを構成するランプである。「プラナーランプ」という表現は一般に、グレージングユニットが、ランプを形成する種々の層(例えば誘電体で被覆された銀電極、アルミニウムフィルム及び蛍光体フィルムなど)が被着された2つの実質的に平面的な基材、例えばガラス板からなっている場合に用いられる。
【0074】
照明/抽出は、周囲照明、読書用光、発光標識、夜間照明、又は任意のタイプの表示情報、すなわち図形、ロゴ、文字符号あるいはその他の記号、安全標識などの照明を得るように調節することができ、また遠隔作動させてもよい(駐車場などにおける車両の検出、ドアの解錠・施錠の表示)。光は、連続的及び/又は間欠的でもよく、単色及び/又は多色でもよく、白色などでもよい。
【0075】
グレージングユニットは、良好な均一性の照明を提供し、申し分のない抽出効率を有する。布帛を挿入することにより、品質を容易に制御して工業的に再現し得るゾーンが形成され、抽出がより制御しやすくなる。ダイオードの信頼性はまた集中的な使用用途にも有利である。既述のように、繊維構造体を自動車グレージング用途において抽出領域として使用することは更に、ガラス上で薄いフィルムを使用することとスクリーン印刷能力のない生産ラインとに適合し、他の抽出手段を用いては得られない表現及び外観をも可能にし、そして平滑な外面を有するグレージングユニットの要件に適合する。それは更に、広い面積にわたって使用される場合、グレージングを強化する。
【0076】
本発明はまた、上記のグレージングユニットを組み込む(又は含む)輸送手段にも関する。
【0077】
最後に、本発明は、上記のようなグレージングユニットを製造する方法であって、少なくとも1つの導波路エレメントのコアに少なくとも1つの繊維構造体(抽出手段を形成する)を加え、そしてこの集成体を少なくとも2つのグレージングエレメント及び任意選択的に積層中間層の間に積層することを含み、前記導波路エレメントの屈折率が、それが間に積層されたされた隣接中間層及び/又はグレージングエレメントの屈折率よりも高い、グレージングユニットの製造方法に関する。
【0078】
上記のように、繊維構造体は、特に、(予備工程において)導波路エレメント(又はポリマー/プラスチック封入層又はシート)に封入されてもよい。繊維構造体は、場合によっては、繊維構造体を成形型内に配置し、次いでポリマー(特に熱可塑性材料、例えば導波路の場合にはポリカーボネート)を成形型へ注入することによって、当該層の成形中に封入される。あるいは、繊維層を作製したならこれをプラスチックシートに押し付けることによって、当該(プラスチック)シート/層に埋め込むこともでき、あるいはプラスチックシートに被着させた繊維層(によって形成された集成体)を、プラスチックが軟化して繊維がポリマー中に入り込むのが可能になるまで加熱してもよい。あるいはまた、繊維構造体(及び該当する場合にはその結合剤及び/又は封入媒体)を2つの導波路部分間に又は導波路のエッジ面に加えること(配置する、接着結合させる、貼り付けることなど)もできる。その後、各繊維構造体(及び該当する場合にはその封入媒体)及び1つ又は2つ以上の関連導波路によって形成された集成体を、慣用的な積層中間層の場合と同様に、グレージングユニット内に導入し、そしてこの積層構造体を好ましくは炉(例えば約120℃の温度で加圧下にある)を通過させて、グレージングユニットの種々の構成層の間の結合を良好にする。
【0079】
ガラス繊維ベールが使用される場合、このベールは「乾式」法又は「湿式」法を用いて形成することができる。このようなガラス繊維ベール製造方法は当業者によく知られており、これについてここに詳述することはしない。
【0080】
本発明は、以下の図面によって例示される本発明による典型的な発光グレージングユニットに関する説明を読むことでよってよく理解され、また本発明の他の詳細及び有利な特徴も明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】本発明の第1実施形態によるグレージングユニットの模式断面図である。
図2】本発明の第2実施形態によるグレージングユニットの模式断面図である。
図3a】本発明の一実施形態によるグレージングユニットの模式正面図である。
図3b】本発明の一実施形態によるグレージングユニットの模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
明確さを期すために、図示のものの種々のエレメントは必ずしも原寸に比例しては示されていないことに注意すべきである。同じタイプのエレメントには、種々の図において同じ符号を付している。
【0083】
図1において、本発明によるグレージングユニットは、第1透明シート2と、第2ガラス板2’と、ポリカーボネートシート6(約1.59の屈折率を有する)とを含む積層グレージングユニット1であって、
・第1透明シート2は、例えば無機ガラスから作製された長方形のシート(例えば面積300mm×300mm)であり、第1主面3と、第2主面4と、好ましくは丸みを帯びた(フレーキングを回避するために)エッジ面5とを有し、例として、厚さが例えば2.1mmで屈折率が1.51のPlanilux(商標)ソーダ石灰シリカガラス板(サン−ゴバン・グラス社により販売される)であり、
・第2ガラス板2’は、第1シートと同じ組成及び寸法を有するか、又は任意選択的に日照制御機能をもたらす着色組成を有し(例えば、サン−ゴバン・グラス社によって販売されるVenus(商標) VG10又はTSA 4+ガラス)、及び/又は日照制御コーティングで被覆されていて、屈折率が1.51であり、面4と対向する主面4’と、もう一つの主面3’と、エッジ面5’とを有しており、そして、
・ポリカーボネートシート6は、導波路エレメントを構成しており、このシートは、積層ユニットの他のエレメントよりもサイズが大きく、第1主面7と第2主面8とエッジ面9とを有していて、そのコア/主部内に屈折率1.57の繊維構造体10を組み込んでおり、そして積層ユニットから突出する2つの側端部のそれぞれに、発光ダイオードによって形成された1つ又は2つ以上の光源11を有している。
【0084】
グレージングユニットのガラス板は好ましくは、可視光領域において2.5m-1以下の線吸収係数を有している(例えば、それらは可視線又は近UV領域において線吸収係数が0.7m-1未満の超透明ソーダ石灰ガラス製である)。
【0085】
発光ダイオード11を支持するストリップは、グレージングユニットに隣接して位置しており、導波路シートのエッジ面9(必要な場合にはノッチを含む)に固定されている(光源の発光面はこのエッジ面に面しており、そして必要な場合には封入作業中にチップをシールするため、チップに接着剤が被着されている)。この支持体は単一の金属片(ステンレス鋼、アルミニウム)でよく、あるいは例えば厚さ0.2mmの薄いポリイミド層で作製してもよい。各群のダイオードはそれぞれ、第1面に対して実質的に平行な、例えば第1面及び第3面から等距離の、所与の主発光方向を有している。例えば(約20個の)ダイオードが、それぞれ(約)0.4Wの出力を有し、そして450mmの長さL0にわたり位置して、20.5W/mの出力をもたらす。
【0086】
光は、導波路の(あるいは該当する場合には、導波路の一部分の、又は複数の導波路のそれぞれの)厚さ内で反射によって導かれ、そして繊維層10によって第1面3から抽出される。繊維層はE(タイプ)ガラス繊維の透明ベールであると有利である。使用し得る典型的なガラス繊維ベールは、単位面積当たりの質量が50g/m2の、Saint−Gobain Technical Fabrics社によって販売されるU50ベールである。
【0087】
図1のグレージングユニットは、例えば、外側から取り付けられる、陸上輸送手段の固定型パノラマルーフを形成することができる。第1シートが輸送手段の内側に位置し、抽出は好ましくは、面3(例えば輸送手段の搭乗室に向けられた)を介して行われる。ダイオードをオフにすると、発光グレージングユニットは概ね透明となり(図3a)、全光透過率TLは約85%、光反射率RLは約15%になる。ダイオードをオンにすると、抽出された光が、図3bに示されているような発光図形12(該当する場合には繊維による美的外観を有する)、例えばロゴ又は商標、を形成することができ、ベールはこれを目的として所望の表象を現出するために所望パターンの形状を有している。
【0088】
ここでは、抽出手段を形成する繊維構造体を導波路シート6の厚さ内の所望の位置に挿入することにより(例えば上記のように高温で)、発光ゾーンを形成する。その厚さは導波路シートのそれを超えない(この繊維構造体は単独で、又は結合剤とともに使用されるか、あるいは該当する場合にはポリカーボネート又は別のポリマー中に既に封入されるか埋め込まれている。繊維構造体の繊維の屈折率と結合剤及び/又は封入媒体の屈折率との差の絶対値は、該当する場合、0.05以上である)。ベール、及び該当する場合、抽出手段を形成するその最初の被覆材料(結合剤、封入媒体)は、導波路の厚さの一部だけに封入されてもよく、あるいは同じ厚さであってもよい。ベールの繊維と封入マトリクス(導波路又は他の中間媒体)との屈折率差が、ベールの繊維とマトリクスとの界面での光の抽出に寄与する。ベールと機能停止時の層の良好な光透過率との両方の影響を受ける抽出を、特にベールの単位面積当たりの重量、ベールの繊維の直径、ベールの繊維の組成、及びポリマーマトリクスの組成のうちの1つ又は2つ以上のパラメータを変更することにより調節して、曇り度と光透過率との折り合いを付けるのに有利な層を得ることができる。
【0089】
変更実施形態として、グレージングユニットは、複数の導波路部分又は複数の別個の導波路6a、6bを含んでいてもよく、これらの合わさるところに(又はこれらの、光源を受容するエッジ面とは反対側のエッジ面9’に)、繊維構造体10が配置されている。これらの導波路又は導波路部分は特に、同一平面に(且つ繊維構造体と同じ平面に)位置している。グレージングユニットは、変更実施形態として、複数の被照明ゾーンを有していてもよく、この発光ゾーンは例えば、少なくとも1つの面の面積の少なくとも50%、場合によっては80%を占め、装飾用照明を行うために所与の幾何学的形状(長方形、正方形、円形など)を有し及び/又は規則的に分布している。一般に、グレージングユニットは有利には単一の照明面3を有しており、例えば照明器具を構成する。後方窓ガラスと向き合わせてミラーを配置することも可能である。グレージングユニットはこのように、昼間はミラーとして働き(特にグレージングユニットが建築用途を対象としている場合)、そして夜間には光源として働くことができる。
【0090】
図2のグレージングユニットは、次の技術的特徴によって、すなわち、ガラス板2とガラス板2’(これは所望に応じて異なる大きさ又は形状を有する)とが2つの積層中間層(又は中間層部分)13、13’、例えば好ましくは(超)透明PVB層(又は一方の層が透明であって、他方の層が着色されたものであってもよい)を用いて積層されており、これらの中間層のそれぞれが例えば0.38mmの厚さがであり、これらの中間層は更に屈折率が1.48であり、導波路6及び繊維構造体10がそれらの間に位置していることによって、前述のユニットとは異なっている。
【0091】
本発明によるグレージングユニットは多くの用途において、特に自動車用途において(一般に積層型又は一体型グレージングユニットの形態で)、使用することができるが、場合によっては内装及び外装両方の建築用途においても(特に、例えば建造物の外面の照明などのために、絶縁複層グレージングユニットの形態で)、プラナーランプなどにおいても、使用することができる。
図1
図2
図3a
図3b