特許第6382815号(P6382815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382815
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】保湿剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9728 20170101AFI20180820BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20180820BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20180820BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180820BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20180820BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61K8/9728
   A61K8/34
   A61K31/047
   A61P17/06
   A61Q19/00
   A61Q7/00
   A61Q5/12
   A61K36/062
   A61K36/899
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-528256(P2015-528256)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2014069088
(87)【国際公開番号】WO2015012198
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2013/069747
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊明
(72)【発明者】
【氏名】上原 静香
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−140348(JP,A)
【文献】 特開平05−221821(JP,A)
【文献】 特開2008−120792(JP,A)
【文献】 特開2000−159653(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02826576(FR,A1)
【文献】 日光ケミカルズ株式会社,新化粧品ハンドブック,日本,2006年10月30日,p.95-101,503-517
【文献】 神保 和子,"肌性別化粧水の開発動向",FRAGRANCE JOURNAL,日本,1996年 9月15日,Vol.24, No.9,p.16-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 36/00− 36/05
A61K 36/07− 36/9068
A61K 35/00− 35/768
A61K 36/06− 36/068
A61P 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)クルイベロミセス属の酵母による糖発酵物
(B)グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコール
を含有する保湿剤。
【請求項2】
前記糖発酵物が、サトウキビ由来の糖発酵物である請求項1記載の保湿剤。
【請求項3】
成分(A)の乾燥固形分の含有量が、0.0001質量%以上0.09質量%以下である請求項1又は2に記載の保湿剤。
【請求項4】
成分(A)の乾燥固形分と成分(B)の含有量比率が、0.0000025〜0.009:1である請求項1から3のいずれか一項に記載の保湿剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
保湿成分は、皮膚表面の水分調整をして、皮膚、毛髪等に潤いのあるしっとり感を与える目的で、皮膚外用剤、化粧料や医薬部外品等に配合されている。
皮膚の表皮の最外層にある角質層の水分が減少し、保湿機能が低下すると皮膚バリア機能も低下しやすい。皮膚バリア機能が低下すると、例えば、乾燥肌、シワ、肌荒れ等の肌トラブルになりやすく、また皮膚炎症の改善が遅くなる。
このため、角質層の水分を増加及び保持することは、皮膚を柔軟に保ち、弾力性を持たせ、真皮を保護することに繋がることから、色々な目的での利用が期待されてきた。このような保湿成分としては例えば吸湿性が高いグリセリンなどが用いられてきた。しかしながら、これらの成分は周りの湿度に影響されやすく、乾燥肌においては十分な効果を発揮しないばかりか、肌の水分を奪い取り乾燥を促進させると言う問題があった。
このため、現在は、主に生体成分由来又は生体類似成分が注目されている。具体的にはNMF(NATURAL MOISTURIZING FACTOR)である乳酸ナトリウム、アミノ酸類(例えば、グリシン、β−アラニン等)やヒアルロン酸、可溶性コラーゲン等の高分子化合物、また、セラミド等が用いられている。
例えば、特許文献1には、リシル−β−アラニン又はその塩を含有する保湿剤が提案されている。
しかしながら、使用者は様々な保湿成分を求めているため、さらなる保湿成分の研究開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2008/126652号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明は、斯かる実情に鑑み、優れた保湿剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、保湿効果を示す物質について鋭意研究を行った結果、これまで保湿効果を示すと考えられていた所定の糖発酵物が、場合によっては保湿効果を全く示さないか若しくは低下させてしまうことが判明した。しかし、所定の比重を有する多価アルコールを併用することで、前記糖発酵物の配合量に関わらず、保湿効果を飛躍的に向上させることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、次の成分(A)及び(B);(A)クルイベロミセス属の酵母による糖発酵物(B)20℃での比重が1.02以上の多価アルコールを含有する保湿剤を提供する。
本発明に係る保湿剤において、前記糖発酵物としては、サトウキビ由来の糖発酵物を用いることができる。
本発明に係る保湿剤において、前記成分(A)の乾燥固形分の含有量は、0.0001質量%以上0.09質量%以下に設定することができる。
また、前記成分(A)の乾燥固形分と前記成分(B)の含有量比率は、0.0000025〜0.9:1に設定することができる。
本発明に係る保湿剤において、前記成分(B)の多価アルコールとしては、グリセリン、プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上を選択することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた保湿剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実験例1において、黒糖発酵液と多価アルコールの保湿効果(塗布前を1としたときの変化率)確認試験の結果を示す図である。
図2】実験例1において、黒糖発酵液と多価アルコールの保湿効果(多価アルコール水溶液との比較)確認試験の結果を示す図である。
図3】実験例2において、塗布前の水分量を1とした場合の60分後の水分量の変化率を示す図面代用グラフである。
図4】実験例3において、塗布前の水分量を1としたときの連続使用2週間後の水分量の変化率を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の保湿剤は、成分(A)クルイベロミセス属の酵母による糖発酵物と、成分(B)20℃での比重が1.02以上の多価アルコールと、を有効成分として含有するものである。
【0010】
本発明に用いられる「成分(A)クルイベロミセス属(Kluyveromyces)の酵母による糖発酵物」(以下、「成分(A)糖発酵物」ともいう)について説明する。
【0011】
本発明に用いる「クルイベロミセス属(Kluyveromyces)の酵母」は、特に限定されず、以下の例示の酵母種を1種又は2種以上選択して使用することができる。
前記「クルイベロミセス属(Kluyveromyces)酵母」として、例えば、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、クルイベロミセス・アフリカヌス(Kluyveromyces africanus)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロミセス・ファフィー(Kluyveromyces phaffii)、クルイベロミセス・ウォルティ(Kluyveromyces waltii)、クルイベロミセス・ウィッカーラミ(Kluyveromyces wickerhamii)、クルイベロミセス・ヤロウィ(Kluyveromyces yarrowii)等が挙げられる。
このうち、好ましくは、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)及びクルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、であり、より好ましくはクルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)である。
なお、これらの酵母は、古くからチーズ及びヨーグルト等の乳製品、ワイン、並びに漬物等の発酵食品の製造に使用されている。例えば、クルイベロミセス・サーモトレランスが、ワイン醸造やプラムジャム発酵物から単離される乳酸産生酵母として、その生化学的性質及び生理的性質と共に報告されている(参考文献1:The Yeasts.A Taxonomic Study,4th ed.Elsevier Science BV,Amsterdam.240-241(1998))。また、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)として、Kluyveromyces thermotolerans MA KT(NITE BP-1420)菌株が挙げられる。
このように本発明に用いるクルイベロミセス属酵母は、人体に対して極めて安全な微生物であり、発酵原料である糖も食することが可能であることから、本発明の成分(A)糖発酵物は安全性が高いと考えられる。
【0012】
本発明において、成分(A)糖発酵物の原料に用いる「糖」は、特に限定されず、ショ糖が含まれるものが好ましい。「糖」は、粉体又は液体等のいずれの形態でもよい。
本発明において、成分(A)として、好ましくはサトウキビ由来の糖であり、より好ましくは、サトウキビ茎の搾り汁から得られるサトウキビ糖である。当該サトウキビ由来の糖として、例えば、和三盆、糖蜜、黒蜜、含蜜糖、粗糖、黒糖等の未精製糖;上白糖、グラニュー糖等の精製糖等が挙げられ、これらを1種又は2種以上選択することができる。このうち、上白糖にまで精製されていない未精製糖が好ましく、当該未精製糖のうち、黒糖が好ましい。黒糖は、サトウキビ茎の絞り汁を加熱し、濃縮して製造されたものであり、糖分の分離精製を行なっていないものが好適である。
本発明において、「サトウキビ」は、イネ科サトウキビ属の植物(砂糖黍、学名:Saccharum officinarum)であり、カンショ(甘蔗)ともいう。
【0013】
本発明において、成分(A)糖発酵物は、クルイベロミセス属酵母を糖含有培地にて培養して得た発酵物であるのが好適である。
本発明において、糖含有培地中の糖の含有量は、特に限定されないが、好ましくは3〜15質量%、より好ましくは4〜8質量%である。
また、本発明において、糖含有培地は液体であるのが好ましい。当該糖含有の液体培地として、例えば、上述した糖と水とを混合した糖水溶液等が挙げられる。当該水としては、特に制限されず、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、精製水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等が挙げられる。
さらに、前記糖含有培地は、通常酵母に使用される培地成分(例えば、炭素源、窒素源、無機塩類等)を含有させたものが、発酵物の生産性向上の点で、好適である。また、前記糖含有培地は、雑菌繁殖を防止する点で、殺菌処理(例えば加熱や膜処理)したものを使用するのが好適である。
【0014】
前記クルイベロミセス属酵母の培養方法は、通常酵母に使用される培養方法であれば、特に限定されず、公知の手法に従うことができる(例えば、参考文献1参照。)。
例えば、振盪培養、通気培養、静置培養、撹拌培養等が挙げられる。また、バッチ式や連続式の何れでもよい。これらを単独で又は2種以上組み合わせて行うことができる。
前記クルイベロミセス属酵母の培養条件(例えば、好気性、嫌気性、培地中のpH、溶存酸素、培養温度及び培養時間等)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
本発明において、成分(A)糖発酵物は、前培養したクルイベロミセス属酵母を接種した糖含有培地にて好気的培養を行い、調製するのが好適である。このとき、糖含有培地に対して前培養液1%を添加するのが好適である。また、培地pHを5〜7とし、15〜35℃で、1〜3日間好気的培養を行うのが好適である。当該好適培養として、好気的条件下にて振盪培養や撹拌培養を行うのが望ましい。なお、好気的条件の場合、空気(酸素20体積%程度)を除菌フィルターで処理したものを使用すればよい。
また、本発明において、糖発酵物の調製は、酒類製造のように積極的にエタノール発酵をさせるのではなく、調製終了後の糖発酵物中のエタノール濃度が1質量%未満(好適には0.1質量%以下)となるようにするのが、保湿効果の点で、好適である。
【0016】
本発明において、成分(A)糖発酵物は、上記調製後、そのままの状態で、又は乾燥させた状態で、使用することが可能である。また、糖発酵物の調製後、クルイベロミセス属酵母の菌体を遠心分離や膜処理等の常法にて除去してもよい。
また、本発明では、成分(A)糖発酵物を、目的に応じて、希釈液、濃縮液、乾燥物としてもよく、さらに分離精製した分離物や精製物としてもよい。希釈する際には、生理食塩液を用いてもよく、乾燥する際には、フリーズドライ方式やスプレイドライ方式を用いてもよい。分離精製する際には、不純物除去等を目的として、遠心分離法、沈殿法、クロマト法等の常法を用いてもよく、脱臭、脱色等を目的として、活性炭、吸着剤、イオン交換樹脂等を用いてもよい。
また、異なる酵母種で得られた糖発酵物を2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
本発明に用いられる「成分(B)20℃での比重(g/mL at20℃)が1.02以上の多価アルコール」(以下、「成分(B)多価アルコール」ともいう)について説明する。本発明において成分(B)は、以下の成分(B)多価アルコールの例示から1種又は2種以上選択し、調製することができる。
【0018】
本発明において、成分(B)「20℃での比重が1.02以上の多価アルコール」は、メチレングリコール、グルコール(エチレングリコール)、プロピレングリコール、プロパンジオール(1,3−プロパンジオール)、ジエチレングルコール、メチレンプロパンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソペンチルジオール、アミノエチルプロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブトキシジグリコール、エチルヘキサンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,10−デカンジオール、エクオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、1,2,6−ヘキサントリオール、フィタントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0019】
また、本発明において、成分(B)多価アルコールの比重(g/mL at20℃)は、1.02以上であればよいが、1.03以上の多価アルコールを選択することで、前記成分(A)糖発酵物と併用した際に保湿性をより向上させることができる。また、本発明において、多価アルコールの比重(g/mL at20℃)の上限は、特に限定されないが、保湿剤の過剰なべたつきを防止する観点から、2以下のものが好ましい。
前記成分(B)多価アルコールの炭素数は、好ましくは6以下、より好ましくは2〜4である。
前記成分(B)多価アルコールの屈折率は、好ましくは1.3〜1.6、より好ましくは1.4〜1.5である。
【0020】
前記成分(B)多価アルコールのうち、保湿性向上の観点から、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール及びグリセリンがより好適である。
【0021】
なお、本発明に係る保湿剤中には、成分(B)20℃での比重が1.02以上の多価アルコール以外に、通常の保湿剤に用いられる他の多価アルコールを併用することも自由である。成分(B)20℃での比重が1.02以上の多価アルコール以外の多価アルコールとしては、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、などが挙げられる。
【0022】
なお、多価アルコールの「20℃での比重」は、日本厚生労働省:医薬部外品原料規格2006(薬事日報社出版)に記載の比重測定法第1法にて測定した値である。
また、多価アルコールの「20℃の屈折率」は、日本厚生労働省:医薬部外品原料規格2006(薬事日報社出版)に記載の屈折率測定法にて測定した値である。
【0023】
本発明の保湿剤の調製は、前記成分(A)糖発酵物と前記成分(B)多価アルコールとを組み合わせるため、これらを混合させればよい。これらを組み合わせる際に、前記成分(A)糖発酵物は糖発酵液(好適には水溶液)を用いるのが好ましい。
【0024】
本発明に係る保湿剤中の前記成分(A)糖発酵物の含有量は、製剤の安定性及び保湿性の観点から、乾燥固形分として、好ましくは0.0001〜0.09質量%、より好ましくは0.001〜0.09質量%、さらに好ましくは0.005〜0.09質量%である。
本発明に係る保湿剤中の前記成分(B)多価アルコールの含有量は、安全性及び保湿性の観点から好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは1〜25質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。
【0025】
本発明の保湿剤における前記成分(A)糖発酵物と前記成分(B)多価アルコールの含有比率(乾燥固形分の質量部:質量部)は、特に限定されないが、保湿性向上の観点から、好ましくは0.0000025〜0.9:1、より好ましくは0.00004〜0.09:1、さらに好ましくは0.0005〜0.018:1である。
【0026】
なお、水を用いて保湿剤100質量%になるように調整することが可能である。
また、得られる本発明の保湿剤の形態は特に限定されないが、液状又は半固形状が好ましい。
【0027】
後記実施例に示すように、前記成分(A)糖発酵物及び前記成分(B)多価アルコールを含有させることによって、それぞれ単独の場合と比較して、保湿性が飛躍的に向上することが認められた。よって、前記成分(A)及び前記成分(B)の混合物は、非常に優れた保湿性を有することから、保湿のために使用してもよく、また保湿のための使用を目的とした各種製剤に使用することができ、これら各種製剤を製造するために使用することも可能である。
また、前記成分(A)及び前記成分(B)の組み合わせは、優れた保湿性を有するので、保湿によって、皮膚に関する各種症状や状態等の予防、改善及び/又は治療を図るための方法に使用することができる。この各種症状や状態としては、例えば、肌荒れ、シワ形成、皮膚老化、乾皮症、フケ症、等が挙げられる。また、前記成分(A)及び前記成分(B)の組み合わせは、対象物(例えば、皮膚、毛髪、食品等)にしっとり感を付与させることができる。例えば、前記成分(A)及び前記成分(B)の組み合わせは、毛髪にしっとり感やまとまり感を付与するために使用することができ、これにより、毛髪のぱさつき抑えることができる。
従って、前記成分(A)糖発酵物及び前記成分(B)多価アルコールは、保湿性を向上又は付与させるために、皮膚外用剤、化粧料、医薬部外品、医薬品、食品や機能性食品(例えば特定保健用食品)等(以下、「製剤」ともいう)等に含有させることが可能である。本発明の保湿剤は、上述の皮膚外用剤、化粧料、食品等とすることができる。また、本発明の前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する保湿剤をこれら製剤に含有させてもよい。
【0028】
本発明の保湿剤は、特に皮膚外用剤、化粧料、医薬部外品等に用いるのが好適であり、皮膚及び毛髪に塗布等接触させる製剤が好適である。皮膚外用剤、化粧料として、例えば、化粧水、乳液(水中油型等)、クリーム(水中油型)、パック化粧料、リキッドファンデーション、軟膏剤、養毛料、毛髪保護料等が挙げられる。
【0029】
なお、本発明の保湿剤及び本発明の製剤には、本発明の前記成分(A)糖発酵物及び前記成分(B)多価アルコールの他、本技術の効果を損ねない範囲で、必要に応じて任意の成分を組み合わせて使用してもよい。他の成分としては、薬学的に許容される成分であればよく、例えば、防腐剤、細胞賦活剤、抗酸化剤、保湿剤、紫外線防止剤、溶剤(水、アルコール類等)、油剤、界面活性剤、増粘剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、乳化剤、安定化剤、着色剤、光沢剤、矯味剤、矯臭剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、香料等が挙げられ、これらを目的とする製剤に応じて配合すればよい。
また、前記製剤の形態は、特に限定されず、液状、ペースト状、ゲル状、固形状、粉末状等の何れの形態でもよい。
製剤中において、本発明の保湿剤の量としては、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.1〜25質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
【0030】
なお、本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕次の成分(A)及び(B);(A)クルイベロミセス属の酵母による糖発酵物(B)20℃での比重が1.02以上の多価アルコールを含有する保湿剤。
〔2〕前記糖発酵物が、サトウキビ糖由来の発酵物である前記〔1〕記載の保湿剤。
〔3〕前記糖発酵物が、エタノール濃度1質量%未満のものである前記〔1〕又は〔2〕記載の保湿剤。
〔4〕成分(A)の乾燥固形分の含有量が、0.0001質量%以上0.09量%以下である前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の保湿剤。
〔5〕成分(A)の乾燥固形分と成分(B)の含有量比率が、0.0000025〜0.9:1である前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の保湿剤。
〔6〕成分(B)の多価アルコールが、グリセリン、プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上のものである前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の保湿剤。
【0031】
〔7〕前記クルイベロミセス属の酵母が、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)及びクルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)から選ばれる1種又は2種以上のものである前記〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の保湿剤。
〔8〕成分(A)糖発酵物は、クルイベロミセス属酵母を糖(好適には未精製糖)含有培地にて培養して得た発酵物である前記〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の保湿剤。
【実施例】
【0032】
以下、実施例、参考例、比較例、試験例、製造例等を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0033】
<調製例1:クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)による黒糖発酵液の調製>
〔前培養〕
クルイベロミセス・サーモトレランス MA KT(NITE BP-1420)をYPD培地(pH6.0)を用いて液体培養を行った。前記液体培養液を1白金耳とり、YM培地(固体培地)に植菌し、2日間、25℃で前培養を行った。なお、YPD(Yeast Extract-Peptone-Dextrose)培地及びYM(Yeast Mold)培地は、DifcoTM&BBLTM Manual,2nd Editionに記載されている内容に従って作成したものである。
Kluyveromyces thermotoleransMA KT(NITE BP-1420)菌株は、原産国:日本/分離源:樹液で採取され、形態観察及び細菌学的性質からLachancea (Kluyveromyces) thermotoleransと分類され、MA KT菌株と命名されたものである。当該菌株は、寄託先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に、丸善製薬株式会社によって2012年9月13日に寄託されているものである。
【0034】
〔黒糖水溶液の調製〕
黒糖25質量部に純水500質量部を添加し、5質量%黒糖水溶液とした。前記5質量%黒糖水溶液を、通気攪拌型発酵槽とともに殺菌後、適温に調節した。
なお、黒糖としては、鹿児島県産のサトウキビ茎の絞り汁を加熱し、濃縮して製造された市販品を使用した。
【0035】
〔発酵工程〕
前記クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)の前培養により得られたコロニーを生理的食塩水で懸濁して、1.0×109CFU/mL〜1.0×1010CFU/mLとなるよう調製した懸濁液を、前記5質量%黒糖水溶液に、前記5質量%黒糖水溶液の全量の1質量%を添加し、30℃で2日間、振とう培養(振とう条件:100rpm)を行った。振とう培養後の培養液をオートクレーブ(条件:121℃、15分)で滅菌した後、ろ過により不純物や残渣物などを除去した。その後、精製水とフェノキシエタノールを添加し、固形分濃度0.1質量%の、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)の黒糖発酵液を調製した。エタノール含量は0.01%であった。
【0036】
[実験例1]
実験例1では、糖発酵物の保湿効果及び各種多価アルコールと組み合わせた場合の保湿効果について、検討を行った。
【0037】
<サンプル1〜19の保湿剤の製造>
多価アルコールとして、下記表1に示す多価アルコールを使用した。
比重は、日本厚生労働省:医薬部外品原料規格2006(薬事日報社出版)に記載の比重測定法第1法にて測定した。
【0038】
【表1】
無印:医薬部外品原料規格2006
#1 MERCK INDEX ELEVENTH EDITION
#2 化学便覧基礎編I(日本化学会改訂4版)
【0039】
調製例1にて調製した黒糖発酵液90質量%(乾燥固形分濃度0.09質量%)又は精製水、及び図1に示す量の各種多価アルコールを混合し、サンプル1〜19の保湿剤を製造した。なお、残量は精製水で調製した。
【0040】
<保湿効果の測定>
保湿効果は、下記の方法により測定した。
前腕内側部を洗浄後、測定部位(2cm×2cm)をマーキングした。気温20℃、湿度50%下にて20分馴化し、Skicon200(I.B.S.Co.Ltd.)にて水分量を測定した。この値を塗布前の値とした。その後、2cm×2cmのティッシュペーパーに試料を100μL含浸させてから、測定部位にのせ、5分間静置した。ティッシュペーパーを剥がして、指で試料を皮膚に塗布した。塗布完了から60分後にSkicon200(I.B.S.Co.Ltd.)にて水分量を測定した値を60分後の値とした。
【0041】
<結果>
保湿試験の結果を図1及び図2に示す。
図1は、塗布前の水分量を1とした場合の60分後の水分量の変化率を示す図面代用グラフである。
図2は、図中に示す各種多価アルコールを併用した場合の黒糖発酵液の変化率/精製水の変化率を示す図面代用グラフである。同量の多価アルコール水溶液の変化率を1としたときの黒糖醗酵液を併用した場合の変化率を並列して示したものである。
【0042】
図1に示すように、全てのサンプル1〜19を塗布した場合において、塗布前に比べて塗布60分後の水分量が向上することが分かった。しかしながら、精製水のみの塗布であっても塗布前に比べ塗布60分後の水分量の方が向上することも分かった(コントロール参照)。そして、精製水のみのコントロールと精製水+黒糖発酵液のサンプル1とを比較すると、黒糖発酵液を加えたサンプル1の方が、保湿効果が劣ることが判明した(図2参照)。
同様に、図2に示すように、精製水+各種多価アルコールと黒糖発酵液+多価アルコールとを比較すると、20℃での比重が1.02未満の多価アルコールを用いたサンプル12〜19では、黒糖発酵液の併用の有無でそれほど保湿効果に差は見られなかったが、20℃での比重が1.02以上の多価アルコールを用いたサンプル2〜11では、黒糖発酵液の併用により、保湿効果が顕著に向上することが認められた。
【0043】
以上の結果から、糖発酵物は、保湿効果を全く示さないか若しくは低下させてしまう場合があるが、20℃での比重が1.02以上の多価アルコールを併用することにより、糖発酵物の保湿効果を回復させるのみならず、配合する化粧料等の製剤の保湿効果を顕著に向上させることが分かった。即ち、成分(A)糖発酵物と成分(B)多価アルコールとを併用することで、それぞれの単独での保湿効果を合わせた以上の相乗的な保湿効果を発揮することが分かった。
【0044】
[実験例2]
実験例2では、糖発酵物と20℃での比重が1.02以上の多価アルコールの配合量の違いによる保湿効果への影響を検討した。なお、本実験例では、20℃での比重が1.02以上の多価アルコールの一例として、グリセリンを用いた。
【0045】
<サンプル20〜24の保湿剤の製造>
調製例1にて調製した黒糖発酵液を用いて下記表2の処方に従ってサンプル20〜24の保湿剤を製造した。
【0046】
<保湿効果の測定>
前記で製造したサンプル20〜24の保湿剤について、実験例1と同様の方法で保湿効果を測定した。
【0047】
<結果>
結果を下記の表2及び図3に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2及び図3に示す通り、グリセリンを配合しないサンプル20は、ほとんど保湿効果を示さなかった。
一方、サンプル22及びサンプル23は、サンプル20よりも黒糖発酵液の量が少ないにも関わらず、黒糖発酵液を配合しないサンプル21とグリセリンを配合しないサンプル20の保湿効果を合わせた以上の保湿効果を示すことが確認できた。また、サンプル20と同等の黒糖発酵液を配合するサンプル24については、飛躍的に保湿効果が高いことが確認できた。
【0050】
以上の結果から、単独では保湿効果をほとんど示さない量の糖発酵物であっても、20℃での比重が1.02以上の多価アルコールを併用することにより、飛躍的に高い保湿効果が得られることが分かった。即ち、20℃での比重が1.02以上の多価アルコールを併用することで、糖発酵物の配合量に関わらず、保湿効果を飛躍的に向上させることが可能であることが分かった。
【0051】
[実験例3]
実験例3では、本発明に係る保湿剤を連続使用した場合の保湿効果について検討した。本発明に係る保湿剤として実験例2で製造したサンプル24の保湿剤を、比較として実験例2で製造したサンプル21を、それぞれ用いた。
【0052】
<保湿効果の測定>
2週間連続使用による保湿効果を下記の方法により測定した。
前腕内側部を洗浄後、測定部位(2cm×2cm)をマーキングした。気温20℃、湿度50%下にて20分馴化し、Skicon200(I.B.S.Co.Ltd.)にて水分量を測定した。この値を塗布前の値とした。その後、朝と夜1日2回2週間、測定部位にサンプル24又はサンプル21を塗布した。連続使用開始2週間後に、気温20℃、湿度50%下にて20分馴化し、Skicon200(I.B.S.Co.Ltd.)にて水分量を測定した値を2週間後の値とした。
【0053】
<結果>
結果を図4に示す。塗布前の水分量を1としたときの連続使用2週間後の水分量の変化率を図4に示す。グリセリンと精製水とを組み合わせたサンプル21に比べてグリセリンと黒糖発酵液とを組み合わせたサンプル24の方が、より水分量の向上が観察された。これは保湿効果に加え、連続使用により肌が改善し、肌そのものの水分量が上がり、肌荒れ改善していることを示したものである。
【0054】
[実験例4]
実験例4では、本発明に係る保湿剤を用いて、可溶化型化粧水、乳化化粧水、乳液、養毛料、毛髪トリートメント、及び軟膏を製造した。
【0055】
〔処方例1:可溶化型化粧水〕
(成分) (質量%)
1.POE(40モル)硬化ヒマシ油 0.5
2.POE(12モル)ジオレエート 0.3
3.アスタキサンチン 0.025
4.1,3−ブチレングリコール 2.0
5.グリセリン 2.0
6.エタノール 15.0
7.トラネキサム酸 2.0
8.調製例1の黒糖発酵液(固形分濃度0.1質量%) 10.0
9.乳酸ナトリウム 0.2
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
11.精製水 残 量
【0056】
(製造方法)
A.成分1〜6を混合溶解する。
B.成分7〜11を混合溶解する。
C.BにAを加え、化粧水を得た。
本処方例1の化粧水は、肌に潤いを与え、長時間にわたって皮膚の乾燥を防ぎ、保湿効果に優れたものであった。
【0057】
〔処方例2:乳化化粧水〕
(成分) (質量%)
1.大豆由来水素添加リン脂質 0.5
2.セトステアリルアルコール 0.1
3.ポリオキシエチレン(10モル)コレステロールエーテル 0.2
4.酢酸−dl−α−トコフェロール 0.1
5.スクワラン 0.1
6.ヒドロキシエチルセルロース 0.03
7.精製水 残量
8.コウジ酸 2.0
9.調製例1の黒糖発酵液(固形分濃度0.1質量%) 5.0
10.リン酸一水素二ナトリウム 0.1
11.リン酸二水素一ナトリウム 0.1
12.グリセリン 3.0
13.ジプロピレングリコール 2.0
14.エタノール 7.0
15.香料 適量
【0058】
(製造方法)
A.成分1〜5を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
B.成分6、7を75℃に加熱し、均一に混合溶解する
C.AにBを添加し、乳化する。
D.Cを冷却し、成分8〜15を添加し、乳化型化粧水を得た。
本処方例2の化粧水は、肌に潤いを与え、長時間にわたって皮膚の乾燥を防ぎ、保湿効果に優れたものであった。
【0059】
〔処方例3:乳液〕
(成分) (質量%)
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.0
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
3.トリオクタン酸グリセリル 0.5
4.ホホバ油 0.5
5.スクワラン 0.5
6.精製水 残量
7.エデト酸二ナトリウム 0.1
8.メチルパラベン 0.2
9.フェノキシエタノール 0.5
10.グリセリン 5.0
11.プロパンジオール 1.0
12.プロピレングリコール 2.0
13.乳酸ナトリウム 0.5
14.2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸 1.0
15.調製例1の黒糖発酵液(固形分濃度0.1質量%) 20.0
16.キサンタンガム 0.05
17.精製水 10.0
18.エタノール 3.0
19.香料 適量
【0060】
(製造方法)
A:成分16を70℃に加熱した成分17で膨潤する。
B:成分1〜5を70℃で加熱混合する。
C:成分6〜13を70℃で加熱溶解後、Bに添加し、乳化する。
D:Cを室温まで冷却後、成分14、15、18、19とAを添加し、美容液を得た。
本処方例3の乳液は、肌に潤いを与え、長時間にわたって皮膚の乾燥を防ぎ、保湿効果に優れたものであった。
【0061】
〔処方例4:養毛料〕
(成分) (質量%)
1.スエルチアニン 1.5
2.イチョウエキス 0.5
3.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
4.調製例1の黒糖発酵液 (固形分濃度0.1質量%) 1.0
5.グリセリン 2.0
6.精製水 残量
7.D−パントテニルアルコール 0.3
8.ヒノキチオール 0.02
9.セファランチン 0.001
10.酢酸トコフェロール 0.01
11.L−メントール 0.2
12.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
13.エタノール 60
【0062】
(製造方法)
A.成分1〜6を混合溶解する。
B.成分7〜13を混合溶解する。
C.AにBを加え、養毛料を得た。
本処方例4の養毛料は、頭皮・頭髪に潤いを与え、長時間にわたって乾燥を防ぎ、保湿効果に優れたものであった。
【0063】
〔処方例5:毛髪トリートメント〕
(成分) (質量%)
1.精製水 残量
2.エタノール 10.0
3.プロピレングリコール 2.0
4.リン酸1水素ナトリウム 0.03
5.ヒドロキシエチルセルロース 0.01
6.エタノール 5.0
7.塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.32
8.ホホバ油 0.01
9.椿油 0.01
10.パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル 0.2
11.ミリスチン酸イソプロピル 0.2
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.05
13.イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
14.ピロリドン酸カルボン酸ナトリウム 0.1
15.ソルビトール 0.3
16.調製例1の黒糖発酵液(固形分濃度0.1質量%) 3.0
17.精製水 1.0
【0064】
(製造方法)
A.成分1〜5を混合溶解する。
B.成分6〜13を混合溶解する。
C.AにBを加え、14〜17を添加して毛髪トリートメントを得た。
本処方例5の毛髪トリートメントは、頭皮・頭髪に潤いを与え、長時間にわたって乾燥を防ぎ、毛髪をしっとりさせ、まとまり感を付与する効果に優れたものであった。
【0065】
〔処方例6:軟膏〕
(配合成分) (質量%)
1.ステアリルアルコール 18.0
2.モクロウ 20.0
3.ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸エステル 0.25
4.グリセリンモノステアリン酸エステル 0.3
5.ワセリン 40.0
6.精製水 残量
7.グリセリン 10.0
8.1,2−ペンタンジオール 2.0
9.調製例1の黒糖発酵液(固形分濃度0.1質量%) 15.0
【0066】
(製造方法)
A.1〜5を70℃で均一に混合する。
B.6〜8を70℃に加温する。
C.AにBを加え、乳化する。
D.Cを冷却し、9を添加し、軟膏を得た。
本処方例6の軟膏は、肌に潤いを与え、長時間にわたって皮膚の乾燥を防ぎ、保湿効果に優れたものであった。
【受託番号】
【0067】
MA KT(NITE BP-1420)菌株/分類:Lachancea (Kluyveromyces) thermotolerans/寄託先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)/受託日:2012年9月13日/寄託者:丸善製薬株式会社。
なお、前記菌株は、寄託者の承諾を得ることにより自由に分譲可能である。
図1
図2
図3
図4