特許第6382821号(P6382821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382821タービンエンジンケーシング及びロータホイール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382821
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】タービンエンジンケーシング及びロータホイール
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/08 20060101AFI20180820BHJP
   F01D 11/12 20060101ALI20180820BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20180820BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20180820BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   F01D11/08
   F01D11/12
   F04D29/08 E
   F01D9/04
   F02C7/28 A
   F02C7/28 E
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-533666(P2015-533666)
(86)(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公表番号】特表2015-531447(P2015-531447A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】FR2013052172
(87)【国際公開番号】WO2014049239
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】1258959
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】バンサン ポール ガブリエル ペロー
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン コション
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−174429(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01344895(EP,A2)
【文献】 特開平08−035402(JP,A)
【文献】 米国特許第05137419(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00−11/24
F02C 1/00− 9/58
F04D 1/00−13/16
17/00−19/02
21/00−25/16
29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンのケーシング(12)と、前記ケーシング内に配置されるブレード付きロータホイール(14)とを有し、前記ケーシング(12)の内壁(20)は、摩耗性材料からなる周方向ストリップ(24)を備えるアセンブリにおいて、
前記ブレードの先端に合せるようにして前記ケーシングは上流側に摩耗性材料からなるストリップを有すると共に、下流側に摩耗性材料から形成されていない周方向溝(30)を有し、摩耗性材料の前記ストリップは前記周方向溝(30)の上流側のみに位置しかつ下流側を前記周方向溝(30)によって定められ、周方向溝(30)の下流端は軸線方向においてブレード(18)の後縁(18B)に合わせるか、あるいは前記後縁よりも下流側に配置されることを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
摩耗性材料の前記ストリップによって形成された溝の面(32)とは別に、溝の軸線方向断面は凹状である請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記周方向溝の底部(34)は筒状部分を有する請求項1又は2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
摩耗性材料の前記ストリップによって形成された溝の面とは別に、溝(30)の軸線方向断面は、その上流側から下流側へと全ての地点において凹状である請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記周方向溝は、その下流側において、特に円形のアーチ状断面を有する凹状連結フィレット(36)により、ケーシングの内壁(20)に接続される請求項1〜4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記周方向溝は、その下流側において、実質的に円錐台形の面(36)により、ケーシングの内壁(20)に接続される請求項1〜3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
溝の底部(34)の半径は、摩耗性材料の前記ストリップの最大半径よりも小さい請求項1〜6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
摩耗性材料の前記ストリップによって形成された溝の面は円錐台形であり、その円錐台の角度は少なくとも45°である請求項1〜7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記円錐台の角度は少なくとも60°である請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記周方向溝(30)は漏れ防止型の底部を有する請求項1〜9のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
摩耗性材料の前記ストリップは、前記ブレードの軸線方向広がりの30%〜70%に及ぶ請求項1〜10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のアセンブリを少なくとも1つ備えたタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンケーシングと、そのケーシング内に配置されたブレード付きロータホイールとを有するアセンブリに関する。
【0002】
ケーシングは、ケーシング内で回転するように取り付けられた1つ以上のロータホイールを収納する場合もある。
【背景技術】
【0003】
タービンエンジンの効率を最適化するために、ブレードは、通常、その先端がケーシングの内壁に可能な限り近接して通るように配置されている。
【0004】
このような配置の場合、特に航空機やヘリコプターの航空エンジンが作動する際の最初の数時間の間、ブレードが熱膨張したり、遠心力作用によってブレードが伸長したりして、ブレードの先端がケーシングの内壁に接触してしまうことが往々にしてある。
【0005】
ケーシングの壁面を損傷するこのような接触を回避するため、既知の方法では、タービンエンジンのケーシングの内面に摩耗性材料(即ち、摩耗を前提としてそこに置かれる材料)からなるストリップを取り付けることが度々あり、ストリップはブレード先端に合わせるようにケーシングの内側に配置される。
【0006】
この場合、ブレードの長さは、タービンエンジンがフルスピードで運転する時にブレードが摩耗性材料のストリップに接触するような長さに設定される。
【0007】
この摩擦力の影響下で、タービンエンジンの作動する最初の数時間の間に、摩耗性材料のストリップは、それがもはやブレードと接触しなくなる形状に到達するまですり減ることになる。このようにして得られた形状は、ブレード先端とケーシングの間のクリアランスを最小にするようなものである。
【0008】
それにもかかわらず摩耗性材料のストリップとブレード先端の間で生じる接触・摩擦は、結果として摩耗や振動、あるいは実際にタービンエンジンの寿命や良好な運転に好ましくない衝撃を引き起こすことにもなる。
【0009】
それ故、これらの事象の大きさを最小限に抑える必要がある。
【0010】
この目的のため、ある特許文献では、各ブレードの先端がそれらの上流端よりも下流端で実質的に短くなるように配置されたロータホイールを含むケーシングを記載している(例えば、特許文献1参照。)。この解決策により、少なくともブレード先端の下流部分とケーシングとの間には間隙が存在することが保証できるようになる。
【0011】
しかしながら、そのためにはブレードの表面積を減じなければならず、ひいては流体に対するブレードの仕事量が減り、それによってロータホイールの効率を減少させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2012/025357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、ブレードとケーシングの間の間隙を最小限に抑えることができ、ブレードとケーシングの間の接触・摩擦をできるだけ低く抑え、かつブレードに対し最大効率を保つ、ケーシング及び/又はブレードの配置構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、タービンエンジンのケーシングと、前記ケーシング内に配置されるブレード付きロータホイールとを有し、前記ケーシングの内壁は、摩耗性材料からなる周方向ストリップを備えるアセンブリにおいて、前記ブレードの先端に合わせる形で、前記ケーシングはその上流側に摩耗性材料からなるストリップを有すると共に、下流側に周方向溝を有し、摩耗性材料の前記ストリップは下流側を前記周方向溝によって定められ、周方向溝の下流端は軸線方向においてブレードの後縁に合せるか、あるいは前記後縁よりも下流側に配置されるアセンブリによって達成される。
【0015】
ブレードの先端に合せる形で上流側に摩耗性材料からなるストリップと、下流側に周方向溝とを備えた、以上に定義したケーシングとロータホイールのアセンブリは、以下の利点を有する。
【0016】
摩耗性材料からなるストリップは、各ブレードの先端に合せるようにして、それらの上流部分の真上に配置される。具体的に言えば、それは、減じられるべきブレード先端とケーシングの間の間隙にとって最も有効となるように、ブレード先端の上流部分の真上にある。
【0017】
その結果、それは摩耗性材料のストリップの使用が最大に正当化されるようにブレード先端の上流部分に位置する。この領域では、ストリップがあることによりブレード先端とケーシングの間で最小の間隙を達成することができる。
【0018】
逆に、ブレード先端の下流部分では、ブレード先端とケーシングの間に間隙があることはそれほど重要ではない。本発明によれば、この領域においてはブレード先端とケーシングの間の衝突を回避することを優先することが好ましい。
【0019】
この目的のために、本発明では、ケーシングは、摩耗性材料のストリップのすぐ下流側に溝を有する。このため溝の底部は摩耗性材料のストリップよりも凹んでいる。言い換えれば、溝の半径は摩耗性材料のストリップ(具体的には、その内面)の半径よりも大きい。
【0020】
半径におけるこの差は、その前縁から後縁にかけて実質上一定なる半径を有するブレードが、タービンエンジンの使用中はブレードが周知の形でストリップを磨滅させるように摩耗性材料のストリップに非常に近い上流部分と、溝の面ひいてはケーシングの面と接触することは殆ど無いような上流部分とを備えた先端を持つことができることを意味している。
【0021】
ロータホイールの空気力学的効率を最適化するため、周方向溝の下流端をブレード先端の下流端に合わせるか、あるいは実質的に一致するように配置しても良い。
【0022】
変形例としては、ブレードとケーシングの間のどんな衝突をも回避するために、周方向溝の下流端をブレードの後縁よりも軸線方向下流側に配置することも可能である。
【0023】
その際、周方向溝の下流端は、ブレードの後縁からの軸線方向距離が、ブレード先端で測定されるブレードの軸線方向翼弦の5%〜20%となるような距離を隔てて配置されることが好ましい。この距離によって、周方向溝は、ブレードの先端に対し、それらの公称位置に対する移動に充分な範囲を与えることが可能になる。
【0024】
本発明により、ケーシングは最適化された接触面を提供し、好ましくは最小の軸線方向長さを持つ摩耗性材料のストリップを備えることでブレードとケーシングとの間の接触・摩擦を最小限に抑えることができる。
【0025】
以下に示すような様々な改善点を、それぞれ単独で、あるいは組み合わせた状態で有利に提供することができる。
・摩耗性材料のストリップによって形成された溝の面とは別に、溝は凹状の軸線方向断面を有してもよい。
・溝の底部は筒状部分を有してもよい。
・摩耗性材料のストリップによって形成された溝の面とは別に、溝は上流から下流への全地点において凹状となる軸線方向断面を有してもよい。
・溝は、その下流側において、特に円形のアーチ状断面を有する凹状連結フィレットにより、ケーシングの内壁に接続されてもよい。
・溝は、その下流側において、実質的に円錐台形の面により、ケーシングの内壁に接続されてもよい。
・溝の底部の半径は、摩耗性材料のストリップの最大半径よりも小さくてもよい。
・摩耗性材料のストリップによって形成されてもよい溝の面は円錐台形であってもよく、その円錐台の角度は少なくとも45°、好ましくは少なくとも60°であってもよい。延長により、摩耗性材料のストリップによって形成される溝のこの面は、ケーシングに対して横切る方向に延びる平面内に形成されてよく、ケーシングの軸線に対して垂直であってもよい。
・溝は漏れを生じないものであったり、漏れない底部を持ってもよい。言い換えれば、溝はガスや流体を通すためのダクトに接続されていない。それは、ガスの抽出や送達を可能にするものでなく、ブレードとケーシングとの間の衝突を回避することでブレード先端を自由に回転させる働きをするものでしかない、及び
・摩耗性材料のストリップはブレードの軸線方向広がりの30%〜70%に及ぶ。
【0026】
本発明は又、以上のように定義されたケーシング又はアセンブリ(ケーシング+ロータホイール)を備えたタービンエンジン用軸流コンプレッサを提供する。
【0027】
最後に、本発明は、以上のように定義されたケーシングを少なくとも1つ備えるタービンエンジンを提供する。
【0028】
非限定的例として与えられた各実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、本発明をより一層理解することができ、その利点もより明らかになる。その説明は以下の添付図面を参照するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】発明のケーシングを備えたコンプレッサの一部分の概略図である。
図2】本発明の第1実施形態において、ブレードを含むコンプレッサの一部分の概略的軸線方向断面図である。
図3】本発明の第2実施形態を示す、図2とそれに同様な断面図である。
図4】本発明の第3実施形態を示す、図2とそれに同様な断面図である。
図5】本発明の第4実施形態を示す、図2とそれに同様な断面図である。
図6】本発明の第5実施形態を示す、図2とそれに同様な断面図である。
図7】本発明の第6実施形態を示す、図2とそれに同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1はタービンエンジンの軸流コンプレッサを示している。この軸流コンプレッサは、内部にロータホイール14を搭載するケーシング12を有している。従来と同様に、ロータホイール14それ自体はロータディスク16を有し、同ディスクには軸対称な形で放射状ブレード18が固定されている。ロータホイールはケーシング12内で回転軸線Aの周りを回転できるように配置されている。
【0031】
ケーシング12はガス流路を形成する内壁20を有する。この内壁は、通常は実質的に円錐形の回転面を形成し、本例の場合、それは軸線方向でロータホイール14に合わせた筒状である。
【0032】
本発明によるブレード18とケーシング12の内壁20の配置構造は、図2図7の様々な実施形態として示される。
【0033】
種々の図面において、同一または類似の要素には同じ参照番号が付されている。さらに、図3図7に夫々示された様々なケーシングは、本文に記載する相違点を除いて図2に示すものと同一である。
【0034】
図2図7の各々において、ケーシング12の上流端(ケーシングを通るガスの意図的流動方向において)は図面の左側に位置する。
【0035】
ブレード18の各々は、前縁18A、後縁18B及び先端19を有している。
【0036】
ロータホイール14に対し軸線方向に合わせた形で、ケーシング12の半径方向内方部分は主に2つの部分、即ち金属又は金属合金(チタン、アルミニウム、スチール等、…合金)からなる実質的に筒状のスリーブ22と、スリーブ22の金属とは異なり、例えばAl−Si系合金からなるような摩耗性材料のストリップ24とから構成される。
【0037】
ブレード18の上流側及び下流側で、スリーブ22の半径方向内方面23は実質的に筒状である。この面の半径Rは、ブレード18の先端で測定してロータホイール15の最大半径よりも若干大きい。スリーブ22にはロータホイール14を通ったガス流れを運ぶための内部チャネルや通路を備えていない。
【0038】
ブレード18の端部に合わせるか対面するようにしてスリーブ22はハウジング26を備える。このハウジングはスリーブ22内を空洞化したものであって、軸線A周りに回転面を持つ円周方向溝の形態をとる。このハウジング26の底面27は通常、略筒状である。
【0039】
同様にスリーブの形態なるストリップ24はハウジング26内に配置され、その上流部分を占有する。
【0040】
この結果、ブレード18の先端に対面してケーシングは、その上流側に摩耗性材料からなるストリップ24を有し、その下流側に単なるハウジング26の下流部分である周方向溝30を有する。
【0041】
ストリップ24は半径方向内方面25を有する。スリーブ24の厚さ(半径方向)は、スリーブ24がハウジング26内に配置された状態でスリーブ22の内側面23とストリップ24の内側面25が互いに連続し合い、同じ半径R(図2)を提供するように決定される。ストリップ24の高さ位置での面23(スリーブ22の内側)とハウジング26の底部27の面との間の半径差はストリップ24の厚さに等しい。
【0042】
ストリップ24の面25の上流端は、軸線方向においてブレード18の前縁18Aと実質的に一致するか、あるいはそれよりも若干上流側に配置される。
【0043】
本発明との関連において、ストリップ24の面25は、面23に対して不連続(位置的及び/又は接線方向的に)となる場合もあることを留意されたい。例えば、ストリップ24の内方半径はスリーブ22の面23の半径よりも僅かに小さかったり、僅かに大きい場合もあり得る。
【0044】
ストリップ24の下流端はブレード18の前縁18Aと後縁18Bの間で軸線Aに沿ってその中間に位置している。一般に、摩耗性材料からなるストリップ24は、ブレードの軸線方向広がりの少なくとも30%に及ぶことが好ましい。更に、ブレードの軸線方向広がりの70%以上を占有することにはあまり意味がない。
【0045】
ストリップ24のすぐ下流側には溝30がある。溝の上流側はストリップバンド24によって定められ、その底部と下流側はスリーブ22によって定められる。
【0046】
一般に、その上流側から下流側にかけて、溝30は3つの連続した部分、即ち、ストリップ24によって定められた上流部分32、底部34、及び下流部分36を有している。
【0047】
上流部分はストリップ24の下流側面によって形成される。逆に、底部34と下流部分36は摩耗性材料から形成されていない。
【0048】
それらはスリーブ22内に直接、形成されている。
【0049】
図2図6に示す各実施形態では、この面は、ケーシング12の軸線Aを横切る平面内に配置されている。その結果、上流側面32は、溝30の上流端において、流体通路の径が突然に増加する“外方”段差部を形成する。
【0050】
底面34はハウジング26の底面の一部分である。図2図4及び図7の各実施形態では、ハウジング26は筒状の底面を与え、このためこれらの実施形態では、底面27は筒状である。
【0051】
最後に、面32のように、溝30の下流側面36は、ケーシング12の軸線Aを横切る平面内に配置されるようにしても良い(図2に示した実施形態)。その結果、溝30の下流側面36は、溝の下流端において流体通路の径が突然に減少する“内方”段差部を形成し、再び部品22の内面の径と等しくなる。
【0052】
溝30の面36の下流端は、軸線方向においてブレード18の後縁18Bに実質的に一致するか、あるいはそれよりも若干下流側に位置するように配置される。
【0053】
このようにして溝30は凹状の軸線方向断面を有する。
【0054】
図3図7は溝30の様々な実施形態を示している。
【0055】
図3及び図4の実施形態は、溝30の下流側面36の配置構造という点で図2の実施形態と異なる。即ち、
図3では、下流側面36は軸線A周りで円錐台形状となっている。即ち、溝30は、その下流端において、実質的に円錐台の面を介してケーシングの内壁20に接続され、底部34を壁20に接続する軸線方向一定なる傾斜部を形成している。この形状はブレード18の先端の下流端における乱流形成を有効に制限している。
図4では、下流側面36は円弧状断面を有する凹状連結フィレットある。この連結フィレットの上流端は、溝30の底部34と位置的、かつ接線方向的に連続している。
【0056】
加えて、これら2つの実施形態では、底面34の軸線方向広がりは第1の実施形態よりも小さく、逆に下流側面36の軸線方向広がりは大きい。これらの実施形態では、面34はブレード18の後縁よりも上流側で終端し、後縁と合わせた形ではない。即ち、溝30の下流側面36は、ブレード18の後縁の上流側において底面34の下流端から、軸線方向後縁に至るまで、あるいはそれよりも下流側まで延びる。
【0057】
更に、図3図4および図6の実施形態では、周方向溝の下流端は、ブレード18の後縁18Bに合わせるように配置されず、それよりも下流側に位置している。
【0058】
従って、これらの様々な実施形態では周方向溝の下流端は、軸線Aに沿ってブレードの後縁18Aから測定して、ブレード先端でのブレード軸線方向翼弦の5〜20%の範囲の軸線方向距離を隔てて配置される。そのブレードの“軸線方向翼弦”の値は、図示したように、軸線Aに沿ったブレードの前縁18Aと後縁18Bとの間の距離に対応している。
【0059】
図5の実施形態は図4のそれと類似している。唯一の違いは、ハウジング26の底部の形状にある。
【0060】
図2図4の実施形態とは異なり、図5の実施形態ではハウジング26の底部は2つの部分、即ち、ストリップ24を受容する上流部分と溝30を形成する下流部分とに分割される。これら2つの部分は双方共、形状は筒状であり、上流部分は下流部分よりも大きな内径を有し、その結果、これらの2部分は肩部38によって分離されている。
【0061】
肩部38は、ストリップ24を特に軸線方向において予め定めた位置で保持する働きをする。
【0062】
図6は、底面24と下流側面36が連続した状態の実施形態を示しており、それらの間に認知できる程の境界は存在していない。
【0063】
総じて、面34と面36は単一の面40を構成する。
【0064】
この面40は、上流側から下流側にかけてのあらゆる地点において場所的に完全に凹状の軸線方向断面を呈するため、その結果としてこの面部分には如何なる直線区分を持たない。その形状は任意性のあるものでも良いが、理想的には、タービンエンジンの全ての動作モードにおいて面34及び面36(ひいては面40)がブレード18と接触されないままであることが確実となるべく、実験的あるいは計算によって決定されるべきである。
【0065】
最後に、図7は、溝30の上流側面32の形状という点で、図3に示されるそれとは異なる実施形態を示している。
【0066】
ケーシングの軸線Aに垂直となるこの上流側面の代わりに、上流側面32は軸線Aの周りで円錐台形状である。この軸線に対し、その面は頂点αにおいて45°に等しい角度を成す。
【0067】
摩耗性材料のストリップ24の不必要な過大寸法化を回避するために、角度αは45°以下でないことが好ましい。
【0068】
記述した様々な実施形態では、ブレード18の先端19はきっちりと壁20の半径方向内側に位置している。加えて、ブレードの長さ(半径方向に測定した場合)一定である。
【0069】
これら2つの特徴のいずれも、本発明にとって必須なものではない。
【0070】
本発明に関連して、ブレードはロータホイールの軸線に沿った位置に応じて変化する長さ(半径方向に測定した場合)を有しても良い。従って、ブレードは全半径(ロータホイールに取り付けられた状態でのブレードの総半径)が軸線方向に可変するものでも良い。
【0071】
本発明に関連して、ブレードの全半径は又、ロータホイールのすぐ上流側又は下流側にあるケーシングの内面の半径よりも、場合によっては大きくても良く、あるいはブレードの全半径はその半径よりも少なくとも局部的に(即ち、ロータホイールの軸線方向に沿う、ある軸線方向範囲だけに亘って)大きくても良い。この場合、ブレードの先端はケーシングの壁の中へと、少なくとも局部的に貫入する。
【0072】
またブレードは、特に上述した実施形態に示したように、ケーシングに対して不均一な半径方向間隙を与えるものでも良い。
【0073】
この結果、ブレードの全半径は、ブレードのすぐ上流側又は下流側でのケーシングの面の内径(R)よりも小さくても大きくても良い。ブレードの全半径は又、ロータホイールの軸線に沿った位置に応じて、これら2つの形態の間で変化するものでも良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7