(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382824
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】将来の退職費用指数およびファンド
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/06 20120101AFI20180820BHJP
【FI】
G06Q40/06
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-536987(P2015-536987)
(86)(22)【出願日】2013年10月14日
(65)【公表番号】特表2015-531528(P2015-531528A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】US2013064861
(87)【国際公開番号】WO2014059421
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年10月13日
(31)【優先権主張番号】61/713,589
(32)【優先日】2012年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/837,762
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515047172
【氏名又は名称】ブラックロック インデックス サービシーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アーノルド オハラ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エー.カスティーユ
【審査官】
成瀬 博之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07249077(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0281742(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0313796(US,A1)
【文献】
特開2002−334216(JP,A)
【文献】
特表2010−527061(JP,A)
【文献】
特開2011−248898(JP,A)
【文献】
特開2003−006432(JP,A)
【文献】
特開2011−118630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報ソースと通信するコンピュータによって実行される、将来の退職費用指数の指数レベルを決定する方法であって、
少なくとも1つの有価証券からの定期的収入の目標リターンを決定するステップであって、前記定期的収入は将来の投資日に開始されて終了日まで継続する複数の支払いを含み、前記終了日は前記少なくとも1つの有価証券についての償還日である、前記目標リターンを決定するステップを含み、
前記目標リターンを決定するステップは、
前記コンピュータが、前記情報ソースから前記少なくとも1つの有価証券についての金利を取得して利回り曲線を決定するステップであって、前記利回り曲線は前記将来の投資日から前記終了日までの前記複数の支払いの変動をモデル化する曲線であって前記金利の時間関数として表される、前記利回り曲線を決定するステップと、
前記コンピュータが、前記利回り曲線に基づいて前記複数の支払いのそれぞれを現在価値に変換する割引関数を前記定期的収入に適用するステップと、
前記コンピュータが、前記割引関数の適用により計算される前記現在価値に基づいて前記定期的収入の正味現在価値を前記目標リターンとして決定するステップと、
前記コンピュータが、前記終了日から開始される他の定期的収入を得るために必要とされる現在価値に対応する前記指数レベルを前記正味現在価値以下に設定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記割引関数は、
BBB格付けの社債の利回り曲線とAA格付けの社債の利回り曲線との相違の半分に等しい第1の値に、米国財務省長期証券の利回り曲線を加えて、第1の合計を求めるステップと、
誤差項の関数である第1の固定スプレッドを前記第1の合計から引くステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記割引関数は、死亡率の変動率に基づいて決定されるリスクチャージを考慮する演算要素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記割引関数は、
BBB格付けの社債の利回り曲線と、A格付けの社債の利回り曲線との相違の半分に等しい第1の値に、米国財務省長期証券の利回り曲線を加えて、第1の合計を求めるステップと、
誤差項の関数の第1の固定スプレッドを前記第1の合計から引くステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記割引関数は、死亡率の変動率に基づいて決定されるリスクチャージを考慮する演算要素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記終了日は、投資者の退職年齢に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記終了日は、投資者の老齢に相当し、前記老齢は80歳より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、
前記投資日以降の前記複数の支払いの各支払いに、所定の生活費調整を加えるステップと、
前記所定の生活費調整を含む前記複数の支払いに基づいて、前記指数レベルを再設定するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コンピュータが、
前記複数の支払いの各支払いから年金キャッシュフローを除去して、条件付き平均寿命を反映させるステップと、
前記除去の後に前記指数レベルを再設定するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータが前記少なくとも1つの有価証券を決定するステップであって、
前記情報ソースから、デュレーション、キーレートデュレーション、および、前記他の定期的収入を得るために前記終了日に購入されるモデル年金の定期的収入に対応する利回りについての情報を取得することと、
前記モデル年金のデュレーション、キーレートデュレーション、および、前記モデル年金の利回りに近い利回りを有する有価証券のセットを前記少なくとも1つの有価証券として決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
情報ソースと通信するコンピュータによって実行される、将来の退職費用指数に基づいた投資商品を提供する方法であって、
少なくとも1つの有価証券からの定期的収入の目標リターンを決定するステップであって、前記定期的収入は将来の投資日に開始されて終了日まで継続する複数の支払いを含み、前記終了日は前記少なくとも1つの有価証券についての償還日である、前記目標リターンを決定するステップを含み、
前記目標リターンを決定するステップは、
前記コンピュータが、前記情報ソースから前記少なくとも1つの有価証券についての金利を取得して利回り曲線を決定するステップであって、前記利回り曲線は前記複数の支払いの変動をモデル化した曲線であって前記金利の時間関数として表される、前記利回り曲線を決定するステップと、
前記コンピュータが、前記利回り曲線に基づいて前記複数の支払いのそれぞれを現在価値に変換する割引関数を前記定期的収入に適用するステップと、
前記コンピュータが、前記割引関数の適用により計算した前記現在価値に基づいて前記定期的収入の正味現在価値を前記目標リターンとして決定するステップと、
前記コンピュータが、前記終了日から開始される他の定期的収入を得るために必要となる現在価値に対応する指数レベルを前記正味現在価値以下に設定するステップと、
前記コンピュータが、前記投資商品として前記少なくとも1つの有価証券を決定するステップであって、
前記終了日に前記指数レベルに近い定期的収入を有する年金を前記終了日に購入するようにモデル化することと、
モデル年金のデュレーション、キーレートデュレーション、および、利回りについての情報を前記情報ソースから取得することと、
前記モデル年金の前記デュレーション、前記キーレートデュレーション、および、前記利回りに少なくとも部分的に基づいて有価証券のセットを前記少なくとも1つの有価証券として選択することと、を含む、前記少なくとも1つの有価証券を決定するステップと、
を含む、将来の退職費用指数に基づいた投資商品を提供する方法。
【請求項12】
前記割引関数は、
BBB格付けの社債の利回り曲線とAA格付けの社債の利回り曲線との相違の半分に等しい第1の値に、米国財務省長期証券の利回り曲線を加えて、第1の合計を求めるステップと、
誤差項の関数である第1の固定スプレッドを前記第1の合計から引くステップと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記割引関数は、
BBB格付けの社債の利回り曲線とA格付けの社債の利回り曲線との相違の半分に等しい第1の値に、米国財務省長期証券の利回り曲線を加えて、第1の合計を求めるステップと、
誤差項の関数である第1の固定スプレッドを前記第1の合計から引くステップと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記コンピュータが、
投資日以降の前記複数の支払いの各支払いに、所定の生活費調整を加えるステップと、
前記所定の生活費調整を含む前記複数の支払いに基づいて、前記指数レベルを再設定するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記コンピュータが、
前記複数の支払いの各支払いから年金キャッシュフローを除去して、条件付き平均寿命を反映させるステップと、
前記除去の後に前記指数レベルを再設定するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
情報ソースと通信するコンピュータによって実行される、将来の退職費用指数に基づいた投資商品を提供する方法であって、
少なくとも1つの有価証券からの定期的収入の目標リターンを決定するステップであって、前記定期的収入は将来の投資日に開始して終了日まで継続する複数の支払いを含み、前記終了日は前記少なくとも1つの有価証券についての償還日である、前記目標リターンを決定するステップを含み、
前記目標リターンを決定するステップは、
前記コンピュータが、前記情報ソースから取得される利回り曲線に基づいて前記複数の支払いのそれぞれを現在価値に変換する割引関数を前記定期的収入に適用するステップと、
前記コンピュータが、前記割引関数の適用により計算される前記現在価値に基づいて、前記定期的収入の正味現在価値を前記目標リターンとして決定するステップと、
前記コンピュータが、前記終了日から開始される他の定期的収入を得るために必要となる現在価値に対応する指数レベルを前記正味現在価値以下に設定するステップと、
前記コンピュータが、前記投資商品として前記少なくとも1つの有価証券を決定するステップであって、
前記終了日に購入され、かつ、前記指数レベルにほぼ相当する定期的収入を有する年金をモデル化することと、
前記モデル化された年金のデュレーションおよびスプレッドについての情報を前記情報ソースから取得することと、
前記モデル化された年金のデュレーション×スプレッドを計算することと、
前記モデル化された年金の前記デュレーションと、前記デュレーション×スプレッドとに、少なくとも部分的に基づいて有価証券のセットを前記少なくとも1つの有価証券として選択することと、
を含む、前記決定するステップと、
を含む、将来の退職費用指数に基づいた投資商品を提供する方法。
【請求項17】
前記割引関数は、
BBB格付けの社債の利回り曲線とAA格付けの社債の利回り曲線との相違の半分に等しい第1の値に、米国財務省長期証券の利回り曲線を加えて、第1の合計を求めるステップと、
誤差項の関数である第1の固定スプレッドを前記第1の合計から引くステップと、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記割引関数は、
BBB格付けの社債の利回り曲線とA格付けの社債の利回り曲線との相違の半分に等しい第1の値に、米国財務省長期証券の利回り曲線を加えて、第1の合計を求めるステップと、
誤差項の関数である第1の固定スプレッドを前記第1の合計から引くステップと、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記コンピュータが、
前記投資日以降、前記複数の支払いの各支払いに、所定の生活費調整を加えるステップと、
前記所定の生活費調整を含む前記複数の支払いに基づいて、前記指数レベルを再設定するステップと、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記コンピュータが、
前記複数の支払いの各支払いから年金キャッシュフローを除去して、条件付き平均寿命を反映するステップと、
前記除去の後に前記指数レベルを再設定するステップと、
を、さらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には、金融サービスおよび金融商品に関し、詳細には、確定した収入の流れの将来費用に基づいた指数の作成と、その指数に基づいた金融商品(例えば、コレクティブトラストファンド、ミューチュアルファンド、上場投資信託、および、ラップ口座)の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2012年10月14日出願の米国仮特許出願番号61/713,589、および、2013年6月21日出願の米国仮特許出願番号61/837,762の利益を主張し、その全体を援用により、本明細書に組み込むものとする。
【0003】
人々が長生きをするようになるにつれて、資金不足の確定給付年金プログラムは、確定拠出年金プランと個人退職勘定(IRA)に置き換わり、退職計画の責任は、個人に移っている。将来の退職予定者の多くは、自分たちの目的にあった退職計画と、その資金準備の複雑さに対する備えができていない。この準備不足に加えて、退職が近付いた人々は、「退職問題」、すなわち、寿命の不確かさと、投資リターンの不確かさを考慮して、どうすれば財産を効率よく消費できるかという問題に直面する。投資リスク、死亡リスク、および、根深い行動的問題の3つの基本的課題が、この「退職問題」の一因となる。これらの課題は、退職者に個人レベルの問題を引き起こし得るだけではなく、ベビーブーム世代が退職に近づくと、7千万人のアメリカ人が今後20年以内に退職することになり、より大きな問題を引き起こすことになる。
【0004】
有効な退職計画には、不確かなリターンと不確かな寿命という、本来互いに関連のない2つの因子を管理する必要がある。さらに、「退職問題」は、利回りが低くなり、リターンが不安定になることが多い経済状況によって悪化し得る。これは、個人が自分の金融資産以上に長生きし得るという寿命の不確かさによって、さらに複雑になる。
【0005】
上記因子に加えて、望むような退職成果を達成するためには、良く知られた根深い行動の罠を適宜、克服しなければならない。これらの罠には、投資リスクと死亡リスクを混同し、退職消費の管理を誤り、長寿保険の保険金を誤解する傾向が含まれる。
【0006】
時として、投資者は、年金等の生涯収入を保証する投資手段を用いることによって、投資リスク、死亡リスク、および、行動の罠を管理する。年金は、通常、保険会社が提供し、生涯の収入保証のために最も良く使われる形であるが、年金を幅広く支持するには障害がある。その1つは、行動的なものである。個人が年金の利益を享受するのは容易ではない。例えば、ある個人が早逝すると、年金投資は、その個人の相続人には支払われないので、個人にとっては負の財政状況となる。この見方を抑えて考慮されないことが多いのは、通常は利益であると考えられる長寿は、個人が自分の金融資産以上に長生する可能性があり、老齢になって貧困に陥るということである。
【0007】
年金市場自体の不透明さも障害となる。大抵の個人は、年金の価格がどのように決まっているか理解しておらず、また、年金の価格情報を定期的に見ていない。さらに別の障害は、年金購入によって金融資産の流動性や管理を失うことである。
【発明の概要】
【0008】
将来収入の現在価値を定量化するのに使用可能な将来の退職費用指数について記載する。一実施形態においては、その指数は、将来の目標日に、生涯にわたって一定額の収入(例えば、月$1の年金支払い)を購入するのに必要となるだろう予測額を現在価値で追跡する。将来の退職費用指数の長所の1つは、退職後の確実な将来収入のための資金の現在費用を投資者が定量化する方法を提供するので、投資者にとってより分かり易いことである。
【0009】
この現在価値を定量化する指数を構築すると、1つまたは複数の資金(ファンド)を創ってその指数を追跡してよい。これらのファンドの実施形態によって、投資者は、将来、生涯にわたる確定した収入の流れを購入するのに必要な金額に近い資金を貯めることができる。ファンド自体は年金ではなく、年金を購入するのに十分な資産を獲得するのに用い得るツールに過ぎないので、これらのファンドによって、退職計画が容易になる。また、資産の流動性が確保されるので、投資者は、実際に年金を購入する前に資金にアクセスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ある実施形態において、年金購入日における投資者の年齢の関数として、収入1ドルの現在価値の範囲を示すグラフである。
【
図2A】ある実施形態において、年齢の関数として、条件付き生存確率で表された死亡率を示すグラフである。
【
図2B】ある実施形態において、年齢の関数として死亡率予測因子で表された死亡率を示すグラフである。
【
図3】ある実施形態において、時間の関数として将来のキャッシュフローを現在価値に変換する割引曲線を示すグラフである。
【
図4】ある実施形態において、将来の退職費用指数ファンドに含むべき投資を選択する方法を示すフロー図である。
【
図5】ある実施形態において、将来の退職費用指数ファンドを償還する方法を示すフロー図である。
【0011】
図面は、例示の目的で本開示の様々な実施形態を示す。当業者は、本明細書に記載の原理を逸脱することなく、本明細書に記載の構造および方法の別の実施形態を採用してよいことを以下の記載より容易に認識するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態において、将来収入の現在価値への定量化に使用可能な将来の退職費用指数を記載する。一実施形態においては、その指数は、将来の目標日に、生涯にわたる一定額の収入(例えば、月1ドルの年金支払い)の購入に必要であろう現在価値の予測額を追跡する。将来の退職費用指数の長所の1つは、投資者が退職後の確実な将来収入の資金を現在費用に定量化する方法を提供するので、投資者にとってより分かり易いことである。
【0013】
この現在価値を定量化する指数を構築すると、1つまたは複数の資金(ファンド)を作成して、将来の退職費用指数を追跡してよい。これらのファンドの実施形態によって、投資者は、将来、生涯にわたる確定した収入の流れを購入するのに必要な額に近い資金を貯めることができる。ファンド自体は、年金ではなく、年金の購入に十分な資産を獲得するのに使用し得るツールに過ぎないので、これらのファンドによって、退職計画が容易になる。また、資産の流動性が確保されるので、投資者は、年金を購入する前に資金にアクセスすることができる。
【0014】
将来の退職費用指数の例
将来の退職費用指数の例は、投資者の異なる計画対象期間に対して指数化された指数を含む。第1の指数は、おおよその、または、予測される退職年齢(例えば、62、65、67、72等)を収入の流れの開始点として用いて、決定してよい。指数の第2の実施形態は、購入者の指定した高齢(例えば、80、85、90等)を収入の流れの開始点として用いて、決定することができる。この後者の指数は、平均寿命より長い期間にわたる収入の現在費用を測るのに有用である。上述の年齢であっても、他の年齢であっても、選択した年齢は、退職収入の将来費用と、平均寿命より長い期間の収入の将来費用を計算する一因子として用いてよい。
【0015】
以下に記載するように、指数は、投資者が退職資金に必要な資産を貯めるのに使用可能な投資のポートフォリオ(株式、債券、デリバティブ、または、他の投資)を保持するファンドのベンチマークとして用いることができる。
【0016】
将来の退職費用指数レベルを決定
従来の投資指数は、典型的には、ベンチマークとして用いる有価証券または他の投資(株、不動産、債券、デリバティブ等)のグループを選択し、その後、選択した有価証券または他の投資の価値との比較で、指数レベルを設定する。この従来のシステムと違って、本発明の実施形態は、最初に指数レベルを決定し、次に、その指数レベルを達成するために有価証券または他の投資を決定する。その指数の指数レベルは、将来開始される生涯にわたる定期的な収入1ドル(または他の金額)を供給するのに必要な現在価値として設定される。便宜上、1ドルの定期的収入としているが、任意の金額であってもよく、生活費の増加に合わせて調整してもよい。同様に、以下の例の多くは、定期的収入は月々としているが、他の期間を用いてもよい。定期的収入は、年金の購入を通して保証されることが多い。年金収入は、投資者が選択した年齢(例えば、予測退職年齢、または、予想外に長い寿命を示す年齢)で始まり、投資者の死亡で終了する。
【0017】
図1は、年金購入日における投資者の年齢の関数として、現在価値の範囲を示す。現在価値は、年金提供者の利益幅因子や、死亡率推定の誤り因子など、年金購入に用いられる推定諸費用を組み込む因子も含む。
【0018】
指数レベルを設定する第1ステップは、償還時に、生涯にわたって月1ドルの収入を提供する将来の年金を購入するのに十分な、1つまたは複数の債権(または他の有価証券)からの投資期間を通しての(例えば、一連の定期的キャッシュフローの形の)リターンを決定することを含む。この投資期間は、投資者がファンドのシェア(持分)を購入する「投資日」に始まり、投資者がファンドのシェア(持分)を償還し、その収入を用いて、例えば、年金を購入する「償還日」で終了する。月収入は生涯にわたるので、必要な投資リターン(従って、年金額)は、死亡率に関する社会的予測、すなわち、収入の流れが年金者グループに払われる期間の長さによって、部分的に、決定される。死亡率によってプールされた投資を個人に提供するために、保険会社は、死亡率の平均分布を推定し、その後、サンプリング誤差、逆選択、および、誤った推定の他の潜在的原因を考慮しなければならない。将来のキャッシュフローは、一般集団の死亡率を用いて推定される。
【0019】
母集団の死亡率は、多くの死亡率分布データソースのうち任意のデータソースを用いて、決定することができる。例えば、米国アクチュアリー会RP−2000表Dは、男性と女性の割合が同じ(性別間の死亡率が異なるので重要)母集団を仮定する生命表で、所与の年の母集団の死亡率、または、所与の年齢の部分母集団の死亡率を予測するのに使用することができる。米国国立健康統計センター(NCHS)、米国社会保障庁(SSA)、民間ソース、および、州のアクチュアリーオフィスによる同様の表を用いてもよい。同様に、生命表(あるいは、「平均余命表」として知られる)は、経時的な寿命の改善、同齢集団の関数としての男女の人口比の変化、および、他の母集団の特徴などの、その生命表が行う仮定に基づいて使用するように選択することができる。これらの生命表または、平均寿命予測は、任意の種類の母集団(例えば、全世界、国別、地域別、地理的、年齢、民族、他の人口学的特徴、または、それらの組み合わせ)からのデータに基づいて決定することができる。一部の例においては、生命表は、一般集団、上記部分母集団のいずれか、もしくは、幾つかのデータ、および/または、年金を購入する人の集団に基づいている。これらの死亡率データの例を
図2Aおよび
図2Bに示す。
【0020】
さらに、年金(および、この例においては、将来の退職費用)を概算で見積もるために、保険会社は、死亡率の平均分布を推定し、サンプリング誤差、逆選択、および、誤った推定の他の潜在的原因を考慮しなければならない。
【0021】
次に、有価証券の投資日から償還日までの将来の投資リターンを決定し、これらのリターンの現在価値を、キャッシュフローに対して割引関数(「割引曲線」としても知られる)を用いて計算する。割引関数の目的は、(場合によっては、定期的、または、定期的にモデル化された)一連の将来のキャッシュフローを、時間関数として正確に現在価値に確実に変換することである。割引曲線の例を
図3に示す。
【0022】
割引関数は、1つまたは複数の年金提供者の利回り曲線(すなわち、所与の期間に関する時系列の投資リターンの曲線)に基づき(場合によっては、比例し)、年金を販売し、その収入を投資する年金提供者が予測する推定収益性尺度の関数でもある。一部の例においては、この推定収益性は、年金提供者が請求する「保険料」として特徴付けられる。割引関数の計算に使用される利回り曲線は、任意の種類の組み合わせの1つまたは複数の年金提供者を用いて決定することができる。
【0023】
利回り曲線(あるいは、クレジットカーブ)は、時間関数として有価証券の金利を特定する。利回り曲線を用いて、目標とする将来のキャッシュフローを現在のドル額に変換することによって、割引関数を計算する。言い換えれば、時間関数として既知の金利を有する所与の有価証券の定期的(年間、月間、一日あたり等)なキャッシュフローは、等式D(t)=l/(l+y
t)
tを用いて現在価値に変換される。式中、「y」は金利、「t」は時間、「D」は有価証券からの将来の定期的キャッシュフローを現在のドル額に変換するのに用いられる因子である。
【0024】
一部の実施形態においては、割引率は、死亡率の予期せぬ変化(または他の変化)、および/または、金利変動リスクのために課される保険料を反映するリスクチャージによってさらに調整される。例えば、医学もしくは医療技術、栄養、および/または、生活スタイルの向上により、経時的に、母集団の死亡率に影響を与えることがあり、それによって、寿命が延びた期間、年金提供者が年金所持者に支払う金額が増える。同様に、予期しない、または、不安定な経済状況による金利の変動は、年金提供者の収益性または支払い能力に悪い影響を与え得る。これらの変動を考慮してこのリスクチャージが適用される。一部の実施形態においては、リスクチャージは、年金提供者への調査によって経験的に決定される。別の例においては、リスクチャージは、リスクチャージモデルに、直接、経済的および統計的な入力(死亡率の変動率、インフレ率の予測など)を行って決定される。
【0025】
割引関数と割引関数の計算に用いられる利回り曲線の正確さは、現在の年金価格のみが知られている状態で、将来の年金の現在費用を計算するのに用いられるので、重要である。現在の年金価格に適用する割引関数にわずかでも誤差があると、5年後、10年後、20年後の年金価格の決定に使用されると、相当な誤差を生じ得る。
【0026】
将来の年金費用計算に使用される割引関数、および、その指数レベルは、部分的に、クレジット市場における変動を予測またはモデル化することができる。これによって、指数レベルは、生涯の収入の流れの将来価格を概算または追跡することができる。一実施形態においては、将来の収入フローを現在のドル額に正確に割引する(あるいは、将来の収入の流れの現在費用を推定する)割引関数は、米国財務省曲線+0.5(BBB格付けの社債利回り曲線−AA格付けの社債利回り曲線)−(固定スプレッド)を用いて構築される。別の例においては、割引関数は、米国財務省曲線+0.5(B格付けの社債利回り曲線−A格付けの社債利回り曲線)−(固定スプレッド)を用いて計算できる。割引関数は、何種類かの債権を含む追加もしくは他の有価証券、持分(エクイティ)指数、デリバティブ、他の有価証券もしくは有価証券指数、または、利回り曲線もしくはクレジットカーブの組み合わせを用いて、モデル化してもよい。
【0027】
前述の「固定スプレッド」の項は、多くの因子を考慮して決定してよい。一例においては、固定スプレッドは、年金提供者の利益、逆選択(すなわち、年金に投資する集団の死亡率が、年金購入者に有利な方向に、一般集団から外れる傾向)、および、一般的誤差からなる。一般的誤差は、割引関数における非特定または出所不明の誤差である。例えば、一般的誤差項を用いて、割引関数を履歴データにより一致するように経験的に適合させることができ、それによって、将来のキャッシュフロー予測に適用する割引関数の精度を向上させる。別の例においては、一般的誤差項を用いて、データセットの標準偏差が原因の変動などの統計誤差、または、統計誤差の他の測定値を訂正することができる。
【0028】
一部の実施形態においては、指数(および、関連ファンド)は、満期日を有すことができ、満期日以降、その指数は、将来の退職収入(すなわち、投資者が65歳になるまで追跡される収入)の将来費用をもはや追跡せず、代わりに、生涯収入(すなわち、65歳以降、予測死亡日までの投資者の収入である退職収入)を購入する現在費用を追跡する。生涯収入購入のための現在費用の追跡は、上述のプロセスを少し変形した類似のプロセスを用いて行われる。
【0029】
一変形形態においては、死亡率仮定の側面は、より費用対効果の良いキャッシュフローの計算に変わる。投資者の年齢とともに条件付き平均寿命は長くなる(すなわち、70歳の人の平均寿命は、65歳の人の平均寿命より長くなる)が、年金費用に以前、含まれた65歳から70歳の年金キャッシュフローは、費用計算から除くことができる。これら2つの計算効果を控除すると、年金は経時的に安くなる。
【0030】
別の変形形態においては、指数は、退職後の各年の生活費調整を含むことができる。将来の退職収入を生涯収入に変換する費用を計算する時に、毎年、この調整を適用するので、他の全てが同じ場合、年金は経時的に高くなる。この調整は、固定のパーセンテージでもよく、消費者物価指数または他の同様の指数を追跡してもよい。
【0031】
さらに別の変形形態においては、今述べた2つの変形形態の両方を組み合わせることができる。異なる金利環境によって実際に費用は増加し得るが、正味の効果として、年金費用は全体として下がり得る。費用が減少する場合、および/または、ファンドの投資運用成績がファンド費用を上回る場合、その差額は、投資者に収入として支払われてもよく、(社会保障で見られる効果と同じように)年金投資者のための達成可能な収入額を増やすために、そのファンドに再投資されてもよい。
【0032】
これらの等式は、将来のキャッシュフローの割引や、年金の将来費用のモデル化に用いられるが、使用される実際の有価証券や他の投資を必ずしも反映する必要はない。
【0033】
前述のプロセスを用いて、所望の運用成績を時間関数としてモデル化する。運用成績モデルを構築すると、運用成績モデルにほぼ従い、指数として公開される最適債権(または、他の投資)ポートフォリオを特定する。そのポートフォリオは、複数の構成資産(例えば、債券)と、それらに対応する指数の重みを含んでよい。
【0034】
債権および、債券に関連付けた指数の重みを選択するために、債券のユニバースを、最初に特定し、その債権に対応する特徴を受信または特定する。選択に関連する債権の特徴には、債権発行者、金利、債券の表示通貨、経済セクター(中央政府、地方政府、企業等)、債券が非流動であるか否か、債券が証券化されるか否か、(ムーディーズ、S&P、フィッチ等の格付け機関が発行する)債券格付け、並びに、デュレーション、キーレートデュレーション、デュレーション×スプレッド、スプレッドデュレーション、および、他の類似の特徴などのキャッシュフローと利回り曲線由来の特徴を含む。これらの特徴は、例えば、投資データベース、投資格付け機関、または、投資特徴の他のソースと通信しているコンピュータデバイス、または、コンピュータデバイスを操作しているクライアントによって、特定または受信される。
【0035】
次に、債権のユニバースを適格な債権のリストに絞り込むのに使われる選択基準を定義する。選択基準は、指数管理者によって定義されてよく、リスク許容度(デフォルトリスクや、個々の通貨の特定の通貨のインフレリスクなど)、流動性、格付け、および、上記に必ずしも挙げていない他の基準を含んでよい。選択基準は、可能な選択基準の組み合わせが多様なことを考慮して、指数管理者の専門的判断と個人的裁量と、並びに、経験が果たす役割と個人の洞察力に依存してよい。
【0036】
選択基準は、定義されると、債権のユニバースに適用されてよく、それによって、ポートフォリオに使用するのに適確な債権のセットを決定する。ポートフォリオに含める予定または含めるのに必要な債権より多く適格な債権がある場合、管理者は、再び、専門的判断と個人的裁量を適用して、債権をさらに選択してよい。
【0037】
指数のために選択された債権は、次に、選択された各債権の重みを決定することによって最適化される。このように選択された債権を最適化する目的は、利回り曲線と割引関数モデルを用いて上記の時間関数として所望の運用成績に指数を一致させることである。上記パラメータの組み合わせは、この最適化を支援する様々な比率でマッチングされる。最終的な重みは、管理者の裁量であるが、ここで述べる最適化によって、選択が誘導される。さらに、債券の最終的な重み付けは、市場における債権間の相対的比率が、概ね維持されるように選択される。これによって、結果として生じる指数の投資可能性が向上する。
【0038】
指数の構成要素と、それらに関連付けられる重みを決定すると、結果として生じる指数は、下記のように、1つまたは複数のファンドのベンチマークとして用いることができる。
【0039】
以上の記載は、指数を決定する方法であるが、この方法はほんの一例に過ぎない。実際、指数の決定に用いられる方法は、指数の構築、利回り曲線の計算、割引関数の決定に用いられる方法、および、上記方法の他の側面が様々であることを考えると、最終的には、管理者の判断と裁量による。
【0040】
ファンドに含める有価証券または他の投資の決定
上記の利回り曲線と割引関数を用いて指数レベルを構築し、次に、同じ、または、類似の確定収入特性を有するような有価証券または他の投資(例えば、債券、株式、デリバティブ)のポートフォリオを選択することによって、指数のリターンに近いファンドリターンを達成する。指数を構成する債権(または、他の投資)、および/または、それらに関連付けられた重みを、投資者がすぐにまたは都合よく入手できない場合があるので、このステップは有用である。このように、所望の運用成績、および/または、指数の特徴にほぼ一致し、かつ、投資者がアクセス可能なファンドを作成する。
【0041】
上記のように、指数レベルは、将来の月間収入1ドルの現在価値によって設定され、将来のある時点で生涯収入を購入するのに関連付けられた価格の変化を追跡する。この指数レベルは、投資者が、将来、年金を購入するのに十分な資金を有することができるようなファンドの有価証券または他の投資のポートフォリオを特定するプロセスの一部として使用される。ファンドが保持すべき有価証券または他の投資のポートフォリオを決定する方法の例を3つ以下に述べる。
【0042】
ファンドが保持すべき有価証券または他の投資のポートフォリオを決定する第1の方法は、(上記生命表を用いて)デュレーション、予測年金キャッシュフローの利回りとキーレートデュレーションを計算することである。これらが決定すると、次に、モデル年金のデュレーション、利回り、キーレートデュレーションに最も一致する債権、株式、デリバティブ、または、他の投資のポートフォリオを特定する。キーレートデュレーションは、所与の満期に関して、有価証券の価格(または、ポートフォリオの価値)の、有価証券の利回り(または、ポートフォリオの利回り)の変化に対する感応度を指す。
【0043】
ファンドが保持すべき有価証券または他の投資のグループを決定する第2の方法は、将来の異なる期間(例えば、5年から7年、7年から10年)から年金キャッシュフローのグループのデュレーション×スプレッド(「DTS」)を計算することである。次に、これらの値を、候補債権セットから選択した債権の等価値に一致させる。
【0044】
ファンドが保持すべき有価証券または他の投資のグループを決定する第3の方法は、上記のように計算した年金からのキャッシュフローを、有価証券または他の投資の候補のユニバース選択からのキャッシュフローに可能な限り近く、一致させることである。有価証券または他の投資の候補の特定を以下に記載する。
【0045】
この投資選択方法の例において、選択に利用可能な投資のユニバースは、幅広い範囲で開始してよい。例えば、ユニバースは、ソブリン債、米国財務省証券、株式、デリバティブ、および、他の流動性のクレジットの候補を最初は含んでよい。一部の例においては、次に、許容可能な流動性の程度に関して、例えば、確定利付有価証券分析に用いたモデルを使って投資候補をスクリーニングすることによって、ユニバースの候補を狭めることができる。他の例においては、投資の性質、例えば、投資は地方債か否か、投資は不動産抵当負債を含むか否か、および、他の因子を含む、他の基準を用いて、候補を狭めることができる。他の例においては、満期および流動性を用いて、債権の候補グループを選択または狭める。例えば、2年以上の満期を有する債権が、投資の最初の候補クループとして用いられる。この候補グループは、投資に適格な債権、および/または、オプション契約、抵当権を含まない債権、または、証券化債権のみを含むことによって、さらに制限することができる。
【0046】
ファンドのポートフォリオの所望の多様性を保持するために、このスクリーニング後、候補は、その経済的特徴、または、産業セクターに基づいて評価される。多様性因子は、社債を供給する事業の財政規模(年間収入または年間利益)、事業の投資特徴(成長、価値、中型株)、経済セクター(ヘルスケア、製造、鉱物、採鉱など)、および、他の因子を含んでよい。
【0047】
一部の例においては、米国ドル建ての有価証券のみを考慮する。他の例においては、ソブリン債のみを考慮する。後者の例においては、デフォルトリスクが一定レベルを下回るソブリン債のみを考慮する。他の類似のスクリーニング、および、それらの組み合わせを用いて、ポートフォリオのために考慮される投資を制限してよい。
【0048】
上記方法およびスクリーニングの適用において、選択された投資のポートフォリオは、限られた数の市場エリア(地理的地域、債券種類、債券満期、リスクレベル等)に集中する場合がある。ファンドは、指数の運用成績を追跡する指数ファンドを意図しているので、特定の市場エリアへの投資の集中は、ファンドの意図する運用成績を相殺し得る。集中を減らすために、投資をスクリーニングする方法の1つは、最初に、流動性に関して適確な投資のスクリーニングを行い、次に、上記DTS値を用いて、上述の死亡率データや他の因子を用いて計算した目標キャッシュフローに、1つまたは複数の投資を一致させることを含む。この方法は、「年金負債対応投資」で用いられる技術に類似している。
【0049】
これらの技術を適用することで、将来における(年金提供者の財務実績を含む)年金供給費用をモデル化する。次に、この将来費用を用いて、将来、確定した月間収入の流れを得るための年金を購入する費用を推定する。投資のキャッシュフローをモデル化することによって、この将来費用に一致する投資を購入するのに必要な現在価値を計算することができ、それによって、十分な資金のある退職のための将来の退職者の計画を支援する。
【0050】
指数のための債権および他の投資を選択するプロセスと同様に、ファンドのための選択方法の一部は、コンピュータデバイスで行ってよい。例えば、投資のユニバースの定量化可能な特徴(経済セクター、金利、格付け等)は、コンピュータデバイスを用いて、そのような情報ソース(例えば格付け機関)から受信して、最初にスクリーニングしてよい。しかし、ファンドポートフォリオのための債権および他の投資の最終的な選択は、ファンドポートフォリオマネジャーの裁量と判断によってよい。例えば、ファンドの目的は指数の運用成績を追跡することである一方、ファンドポートフォリオマネジャーは、自分の専門的判断で、その指数と比較してファンドに様々な債権または他の投資を使用する判断をし、それらに異なる重みを付け、リスクレベルや投資多様性に関する決定、または、コンピュータデバイスによって計算、定量化できない、他の決定を行ってよい。
【0051】
適用
ファンドのシェア(持分)は、任意の適切な投資商品によって投資者に利用可能であってよい。
図4および
図5は、一実施形態に従った、ファンドへの出資および引出プロセスを簡略化して示す。この場合、記載しているファンドは、コレクティブトラストファンド(「CTF」)であるが、別の種類のファンドまたは勘定であってもよい。以下の記載では、便宜上、CTFを用いているが、ミューチュアルファンド、上場投資信託、ラップ口座等の他の投資手段を用いてもよい。
【0052】
投資者は、CTF受託者に出資または償還注文を出す。例えば、投資者は、CTF単位の購入に用いられる資金を出資することによって、CTFに出資することができる。別の例においては、投資者は、CTFの単位を償還するようにCTF受託者に指示して、CTFの単位をその単位の価値と等しい金額の資金と交換し、最終的に、その資金が投資者に分配される。
【0053】
どちらの場合でも、CTF受託者が、ポートフォリオの有価証券または他の投資の市場(「流通市場」として
図5に示す)でCTFポートフォリオ取引を行う。流通市場は、取引所または店頭で取引することによって参加可能な市場である。
【0054】
出資または引出の注文の実行に応じて、CTFポートフォリオは、CTF投資者がCTF受託者に行った出資または引出の注文に従って、資産の追加または資産の減少を反映するように更新される。同様に、CTF投資者の口座は、償還の場合には、キャッシュの追加と、CTF単位の減少を反映し、CTFに出資の場合は、キャッシュの減少とCTF単位の追加を反映するように更新される。
【0055】
追加の考慮事項
本開示の実施形態に関するこれまでの記載は、例示目的であり、全てを網羅する意図はなく、厳密に開示した形態に請求項を限定するものでもない。関連分野の当業者は、上記開示を考慮して、多くの修正および変更が可能なことを理解されよう。
【0056】
本明細書の記載の一部は、情報に関する操作をアルゴリズムや記号で表現して実施形態を記載する。これらのアルゴリズムによる記載や表現は、自分たちの作業の内容を有効に他の当業者に伝えるために、データ処理技術分野の当業者が一般に用いるものである。機能的、コンピュータ的、または、論理的に記載したこれらの操作は、コンピュータプログラム、または、同等の電気回路、マイクロコード等によって実施されることは理解される。さらに、一般性を損なうことなく、これら一連の操作をモジュールと呼ぶと、時には、便利であることも分かった。記載した操作および操作に関連するモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、または、それらの任意の組み合わせで実現してよい。
【0057】
本明細書に記載のステップ、操作、またはプロセスはいずれも1つまたは複数のハードウェアまたはソフトウェアモジュールを用いて、単独、または、他の装置と組み合わせて実行または実施してよい。一実施形態においては、ソフトウェアモジュールは、コンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品で実施してよく、記載のステップ、操作、または、プロセスのいずれか、または、全てを実行するために、コンピュータプロセッサがコンピュータプログラムコードを実行することができる。
【0058】
実施形態は、本明細書の操作を行うための装置に関連してもよい。この装置は、記載の目的のために特に構築されてよく、および/または、コンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動または再構成される汎用目的のコンピュータデバイスを含んでよい。このようなコンピュータプログラムは、非一時的な、有形のコンピュータ可読記憶媒体、または、電子命令の記憶に適した任意の種類の媒体に記憶されてよく、それらの媒体は、コンピュータシステムバスに接続されてよい。さらに、本明細書で言及したコンピュータシステムはいずれも、単一のプロセッサを含んでもよく、コンピュータ能力を向上させるために、複数のプロセッサ設計を採用するアーキテクチャであってもよい。
【0059】
実施形態は、また、本明細書に記載のコンピュータプロセスによって生産される製品に関する。このような製品は、コンピュータプロセスの結果生じる情報を含んでよく、その情報は、非一時的な、有形のコンピュータ可読記憶媒体に記憶され、本明細書に記載のコンピュータプログラム製品または他のデータの組み合わせの任意の実施形態を含んでよい。
【0060】
最後に、本明細書で使用した言葉は、主に、読みやすさと説明目的で選んだものであり、発明の主題の画定や限定のために選んだものではない。よって、本開示の範囲は、この発明の詳細な説明に限定されず、本明細書に基づいた出願書類の請求項に限定される。従って、実施形態の開示は、例示的なものであり、発明の範囲を制限するものではない。発明の範囲は、請求項に記載される。