(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382866
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ドライブトレインおよびドライブトレインを駆動する方法
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20180820BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20180820BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20180820BHJP
B60K 6/38 20071001ALI20180820BHJP
B60K 6/44 20071001ALI20180820BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20180820BHJP
B60K 17/02 20060101ALI20180820BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20180820BHJP
B60L 11/14 20060101ALI20180820BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/26
B60K6/36
B60K6/38
B60K6/44
B60K6/54
B60K17/02 F
B60K17/04 G
B60L11/14
B60W10/08 900
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-23650(P2016-23650)
(22)【出願日】2016年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-147662(P2016-147662A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年2月12日
【審判番号】不服2017-13701(P2017-13701/J1)
【審判請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】10 2015 102 024.6
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】イモ スタチェ
(72)【発明者】
【氏名】レオ シュピーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク シュラーゲ
【合議体】
【審判長】
松下 聡
【審判官】
粟倉 裕二
【審判官】
水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−523504(JP,A)
【文献】
特開2010−31984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20-6/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両を駆動するためのドライブトレインであって、
前記自動車両の純粋な機械駆動を可能にする燃焼機関(12)と、
前記燃焼機関(12)から所定間隔をもって配置された、回転数を変える自動車両トランスミッション(16)であって、前記燃焼機関(12)に連結することができる自動車両トランスミッション(16)と、
前記自動車両の純粋な電気駆動を可能にする高電圧電気機械を少なくとも配置可能な大きさを有している設置空間を含み、前記燃焼機関(12)と前記自動車両トランスミッション(16)との間に設定されたリザーブ空間(18)と、
電気的に発生させた補助トルクを前記自動車両トランスミッション(16)に作用させるための、前記リザーブ空間に配置された、前記高電圧電気機械よりも小さい低電圧電気機械(32)と、
を有し、
前記低電圧電気機械(32)に替えて、高電圧電気機械を前記リザーブ空間(18)内に配置することにより、前記自動車両トランスミッション(16)を前記高電圧電気機械だけで、または前記高電圧電気機械と前記燃焼機関(12)との両方で駆動できるように構成され、
前記高電圧電気機械の電圧は、前記低電圧電気機械の電圧よりも高いことを特徴とするドライブトレイン。
【請求項2】
前記低電圧電気機械(32)は、定格動作電圧UがU<60Vであることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
前記リザーブ空間(18)は、前記燃焼機関(12)で発生したトルクのねじり異常を制振するねじり振動ダンパ(22)によって、エンジン側またはトランスミッション側の軸方向において区切られていることを特徴とする、請求項1または2に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
前記リザーブ空間(18)は、前記燃焼機関(12)および前記自動車両トランスミッション(16)に取り付けられたクラッチケース(20)によって、半径方向において区切られていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
前記低電圧電気機械(32)は、3相電流機械として具現化されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
3相電流機械として具現化された前記低電圧電気機械(32)に割り当てられたパワーエレクトロニクス装置が、前記リザーブ空間(18)に配置されることを特徴とする、請求項5に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
前記低電圧電気機械(32)は自動車両バッテリに電気的に接続されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項8】
前記燃焼機関(12)は、切換え可能な切り離し要素を用いて、前記ドライブトレインから切り離すことができることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のドライブトレイン(10)を駆動する方法であって、
前記前記低電圧電気機械(32)を、要求出力に応じて、純粋な電気駆動用として使用し、および/または前記燃焼機関(12)の始動用に使用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両を駆動することができるドライブトレインと、このドライブトレインを駆動する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)は、ハイブリッド自動車両用のドライブトレインを開示しており、このドライブトレインでは、ハイブリッド自動車両の純粋な電気駆動を可能にする電気機械を、内燃機関のクランクシャフトに連結されたねじりダンパ(トーションダンパ)と自動車両トランスミッションとの間で、自動車両トランスミッションのトランスミッション入力シャフトに連結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102 46 839A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド自動車両用に構成されたドライブトレインをコスト効率よく製造する必要性が絶えず存在する。
【0005】
本発明の目的は、ハイブリッド自動車両用に構成された、コスト効率のよいドライブトレインを使用可能にする方策を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題に対する解決策は、請求項1の特徴を有するドライブトレインと、請求項10の特徴を有する方法とを用いて、本発明によって提供される。本発明の好ましい改良は、従属請求項および以下の説明に明示され、この従属請求項および以下の説明は、それぞれ個別に、または組み合わせて、本発明の態様を構成する。
【0007】
本発明によれば、自動車両の純粋な機械駆動を可能にする燃焼機関と、燃焼機関との間でトルクを伝達するために、シャフトユニットを介して燃焼機関に連結することができる、回転数を変えるための自動車両トランスミッションと、自動車両の純粋な電気駆動を可能にする高電圧電気機械を配置するためにリザーブされた空間であって、燃焼機関と自動車両トランスミッションとの間に設けられ、シャフトユニットが貫通するリザーブ空間(Vorhaltevolumen)と、電気的に発生させた補助トルクを自動車両トランスミッションに作用させるための、リザーブ空間に配置された低電圧電気機械とを有する、自動車両を駆動するためのドライブトレインが提供される。
【0008】
ドライブトレインのリザーブ空間は、対応する容量のパワーエレクトロニクスを介して高電圧トラクションバッテリに接続された高電圧電気機械を備えるように構成され、その結果として、ドライブトレインは、基本的に、純粋な電気駆動であっても、高電圧電気機械によって、意図されたエンジン出力が利用可能になるハイブリッド自動車両に使用することができる。このドライブトレインは、ハイブリッド自動車両として構成されていない自動車両で使用することもでき、この場合に、高電圧電気機械、クラッチ、高電圧トラクションバッテリ、および付属する高電圧パワーエレクトロニクスを削除することができ、これにより、コストが削減される。これに関連して、同じドライブトレインは、自動車両のモデルに応じて、高電圧電気機械がリザーブ空間に配置されたり、または配置されなかったりするという点で、ハイブリッド機能があるもの、およびないものなどの様々な自動車両モデルに広範に使用することができる。これにより、様々なモデルに共通の同一部品点数が増え、その結果として、ドライブトレインは、大量生産で、よりコスト効率よく製造することができる。
【0009】
ハイブリッド自動車両の場合、リザーブ空間は、基本的に、高電圧電気機械およびクラッチによって占有される。対照的に、ハイブリッド自動車両として構成されていない自動車両の場合、リザーブ空間は、シャフトまたはシャフトユニットは別として、空き状態であり、使用されない。
【0010】
しかし、本発明のドライブトレインの改良では、リザーブ空間は、空き状態で未使用のままではなくて、その代わりとして、基本的に、低電圧電気機械にあてがわれる。高電圧電気機械によって使用されないリザーブ空間に配置される低電圧電気機械は、基本的に、このためのさらなる設置空間を必要としない。特に、低電圧電気機械は、自動車両を電気だけで駆動するために設けられる高電圧電気機械と比較して、かなり低い最大定格出力を利用可能にし、その結果として、低電圧電気機械は、よりコスト効率よく製造することができる。さらに、比較的低出力用の容量とされたパワーエレクトロニクスと、より小さい容量を付与されたバッテリとを設けることができ、その結果として、高電圧電気機械と比較して、コストを削減することができる。同時に、例えば、突然生じた出力ピーク要求(「トルク増強」)に対して、補強トルクを利用できるようにするために、低電圧機械が動力を自動車両トランスミッションに出力するのが可能である。さらに、要求された出力が十分に小さい場合に、自動車両が、低電圧電気機械によって、純粋な電気駆動で駆動されるのが可能であり、その結果として、高価な高電圧構成要素なしで、少なくともある程度まで、自動車両の電気駆動が可能である。これは、キットシステムとして構成されたドライブトレインにおけるさらなる選択肢として、コスト効率のよいある種の「初歩的ハイブリッド化」を可能にする。本来的には高電圧電気機械用に設けられたリザーブ空間を低電圧電気機械用に使用することで、コスト効率のよいハイブリッド機能を少なくともある程度まで利用することが可能であり、その結果として、ハイブリッド自動車両用に構成された、コスト効率のよいドライブトレインが可能になる。
【0011】
低電圧電気機械を使用する場合、シャフトユニットは、自動車両トランスミッションのトランスミッション入力シャフトに連結することができ、または自動車両トランスミッションのトランスミッション入力シャフトと一体で具現化することもできる。燃焼機関は、特に、内燃機関として構成される。シャフトユニットは、分離要素、特に、クラッチを有することができ、燃焼機関、特に、クランクシャフトとして構成された燃焼機関のモータシャフトは、トルクを伝達するために、クラッチを介してシャフトユニットに連結することができる。シャフトユニットの一部は、切り離し要素によって、例えば、ねじり振動ダンパを介して、自動車両エンジンに連結することができ、一方、低電圧電気機械は、純粋な電気駆動で自動車両を駆動する、かつ/または制動エネルギを回収するために、シャフトユニットの他の部分によって連結される。ドライブトレインは、特に、パラレルハイブリッドとして構成される。シャフトユニットは、単独で取り外し可能なように構成されるのが特に好ましく、その結果として、基本的に、リザーブ空間をなくす作業工程において、シャフトユニットを取り外した状態で、低電圧電気機械を間に連結しない形で、燃焼機関を自動車両トランスミッションに連結することが可能である。ドライブトレインは、結果として、他の構造用のキットの態様で容易に使用することができる。低電圧電気機械は、低電圧電気機械用に構成されたパワーエレクトロニクスに連結することができ、パワーエレクトロニクスは、リザーブ空間内に、またはリザーブ空間の外に、全体的に、または部分的に配置することができる。
【0012】
低電圧電気機械は、直接接触保護限界未満の定格動作電圧Uを有するのが好ましい。これは、特に、従来の構成要素および工具の使用、さらには通常の作業員の使用を可能にする、すなわち、材料および人員の観点から高価で費用のかかる、高電圧絡みの方策を回避できるようにする。このような直接接触保護限界は、例えば、定格動作電圧U<60Vとして想定することができ、この場合に、それよりも多少高い、または低い値も可能である。ただし、いずれにせよ、低電圧電気機械は、12Vスタータモータよりも強力である。同時に、低電圧電気機械の電圧は、コスト効率のよいエネルギ供給および/またはコスト効率のよいパワーエレクトロニクスが可能になるほど十分に低い。
【0013】
リザーブ空間は、燃焼機関で発生したトルクのねじり異常を制振するねじり振動ダンパによって、エンジン側またはトランスミッション側で軸方向において区切られているのが特に好ましい。ねじり振動ダンパは、例えば、リザーブ空間を軸方向において制限するフライホイールを有することができる。ねじり振動ダンパが、エンジン側で軸方向に配置されると、リザーブ空間は、自動車両トランスミッションのカバーまたはトルクコンバータにより、トランスミッション側の軸方向において制限することができる。
【0014】
リザーブ空間は、燃焼機関および自動車両トランスミッションに取り付けられたクラッチケースによって、半径方向において区切られているのが好ましい。低電圧電気機械は、特に、クラッチケースに連結することができるステータを有することができ、一方、低電圧電気機械のロータは、トランスミッション入力シャフトに直接的に、または間接的に連結することができる。
【0015】
特に、低電圧電気機械は、必要な電圧を利用可能にするために、自動車両バッテリに電気的に接続される。低電圧電気機械には、結果として、自動車両の別の構成要素にエネルギを供給するためにすでに存在する自動車両バッテリ、例えば、48Vバッテリから給電することができ、低電圧電気機械のために、別のトラクションバッテリを自動車両に設けることが不要になる。
【0016】
燃焼機関は、切換え可能な切り離し要素を介して、自動車両トランスミッションに連結できるのが好ましい。燃焼機関は、結果として、シャフトユニットから容易に切り離すことができ、その結果として、燃焼機関は、任意の不要な抵抗トルクを発生させない。同時に、これは、自動車両の純粋な電気駆動を可能にする。
【0017】
本発明はまた、上記のように具現化し、発展させることができるドライブトレインを駆動する方法に関し、このドライブトレインを使用する方法において、燃焼機関の定格最大出力未満の出力範囲で、自動車両を純粋に電気駆動するために、および/または燃焼機関を始動させる、さらに低温始動させるために、低電圧電気機械が使用される。本来的には高電圧電気機械用に設けられたリザーブ空間を低電圧電気機械用に使用することで、コスト効率のよいハイブリッド機能および/または低温始動機能を利用可能にすることが、少なくともある程度まで可能であり、その結果として、ハイブリッド自動車両用に構成されたコスト効率のよいドライブトレインが使用可能になる。
【0018】
本発明はまた、添付の図面を参照して、かつ好ましい例示的な実施形態を用いて、下記に例として説明され、下記に提示される特徴部は、それぞれ個別に、または組み合わせて、本発明の態様を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ドライブトレインの概略的で部分的な側方断面図を示している。
【
図2】
図1のドライブトレインの第1の実施形態の概略的なブロック図を示している。
【
図3】
図1のドライブトレインの第2の実施形態の概略的なブロック図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すドライブトレイン10は、内燃機関として構成され、シャフトユニット14を介して自動車両トランスミッション16に連結することができる燃焼機関12を有する。シャフトユニット14は、ハイブリッド自動車両用のドライブトレイン10を使用する場合に、高電圧電気機械が設けられるリザーブ空間18を貫通している。
【0021】
リザーブ空間18は、クラッチケース20によって、外側で半径方向において制限されている。軸方向においては、リザーブ空間18は、エンジン側でねじり振動ダンパ22によって、トランスミッション側で自動車両トランスミッション16のカバーによって制限されている。
【0022】
図2に概略的に示すように、リザーブ空間18は、スタータ28および低電圧電気機械32によって使用されている。燃焼機関12は、切り離し要素34を用いて、シャフトユニット14から切り離すことができ、その結果として、対応する低出力が要求された場合に、自動車両は、燃焼機関12の抵抗トルクに打ち勝つ必要なく、低電圧電気機械32によって、電気だけで駆動することができる。
図3に示すように、スタータ28は、リザーブ空間18の外に配置することもでき、例えば、燃焼機関の、自動車両トランスミッション16から離れる方向に向いた側で係合することができる。いずれにせよ、スタータ28は、スタータリング30とかみ合っている。低電圧電気機械32を使用して、燃焼機関12を始動させることも可能であり、スタータ28をなくすことが可能になる。
【符号の説明】
【0023】
10 ドライブトレイン
12 燃焼機関
14 シャフトユニット
16 自動車両トランスミッション
18 リザーブ空間
20 クラッチケース
22 ねじり振動ダンパ
32 低電圧電気機械
34 切り離し要素