(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382871
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】連結ロッドおよび内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 75/04 20060101AFI20180820BHJP
F02D 15/02 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
F02B75/04
F02D15/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-39599(P2016-39599)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-160940(P2016-160940A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】10 2015 103 206.6
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ポール
【審査官】
西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−196549(JP,A)
【文献】
特開2015−014286(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102005055199(DE,A1)
【文献】
特開昭58−093906(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0075125(US,A1)
【文献】
特開平02−163428(JP,A)
【文献】
実開昭59−040538(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第102010061359(DE,A1)
【文献】
米国特許第02989954(US,A)
【文献】
特開2015−152013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/04、75/32
F02D 15/02
F01M 1/06
F16C 3/00− 9/06
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトに取り付けるための大端部ベアリングアイ(11)と、シリンダのピストンに取り付けるための小端部ベアリングアイ(12)と、連結ロッド有効長を調整するための偏心調整装置(13)とを有する連結ロッド(10)であって、
前記偏心調整装置(13)は、前記偏心調整装置(13)の偏心レバー(14)と係合する偏心ロッド(15、16)を有し、前記偏心調整装置(13)は、前記偏心レバー(14)および前記小端部ベアリングアイ(12)の開孔内で案内され、ピストンピン(37)を収容するための開孔を有する偏心器(36)を有する、連結ロッド(10)において、
少なくとも2つの位置にて、前記小端部ベアリングアイ(12)と前記偏心器(36)との間に潤滑油膜を形成することを可能にする複数の潤滑油穴(38、39)が、前記小端部ベアリングアイ(12)に形成されることと、前記小端部ベアリングアイ(12)は、前記偏心器(36)を収容するように機能することと、前記小端部ベアリングアイ(12)の前記開孔に対する前記潤滑油穴(38、39)が、前記ベアリングアイに形成される領域において、前記ベアリングアイの隣接する領域の半径方向の壁厚よりも厚い半径方向の壁厚を有しており、
前記小端部ベアリングアイ(12)における、壁厚が異なる領域間の移行部は前記潤滑油穴(38、39)に向って、前記壁厚が連続的に且つ単調増加していることとを特徴とする連結ロッド(10)。
【請求項2】
前記小端部ベアリングアイ(12)の半径方向に延び、前記小端部ベアリングアイ(12)の周方向に離間した少なくとも2つの潤滑油穴(38、39)が、前記小端部ベアリングアイ(12)に形成され、前記小端部ベアリングアイ(12)は、前記潤滑油穴(38、39)が前記ベアリングアイに形成される領域において、前記小端部ベアリングアイ(12)の周方向に見て、前記領域間に配置された領域(43)の半径方向の壁厚よりも厚い半径方向の壁厚を有することを特徴とする、請求項1に記載の連結ロッド。
【請求項3】
前記小端部ベアリングアイ(12)は、前記偏心調整装置(13)の伸長した前記偏心ロッド(15、16)と正反対に位置する、または伸長した前記偏心ロッド(15、16)に対向する領域において、前記潤滑油穴(38、39)が、前記小端部ベアリングアイ(12)に形成された領域の半径方向の壁厚よりも薄い半径方向の壁厚を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の連結ロッド。
【請求項4】
圧縮比が調整可能な内燃機関であって、少なくとも1つのシリンダと、少なくとも1つの連結ロッド(10)が係合したクランクシャフトとを有し、前記または各連結ロッド(10)は、前記連結ロッド(10)を前記クランクシャフトに取り付けるための大端部ベアリング穴(11)と、前記連結ロッド(10)をシリンダのピストンに取り付けるための小端部ベアリング穴(12)と、連結ロッド有効長を調整するための偏心調整装置(13)とを有し、前記偏心調整装置(13)は、偏心レバー(14)と相互作用する偏心器(36)と、偏心ロッド(15、16)とを有し、前記偏心ロッド(15、16)は、前記偏心レバー(14)と係合し、かつ前記偏心ロッド(15、16)と相互作用する油圧チャンバ(22、23)内に広がる油圧から作用を受ける、内燃機関において、前記または各連結ロッド(10)は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の通りに設計されることを特徴とする内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の連結ロッドおよび内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、(特許文献1)から公知の、圧縮比を調整可能な内燃機関の連結ロッド(コネクティングロッド)を示している。このように、連結ロッド10は、大端部ベアリングアイ11および小端部ベアリングアイ12を有し、大端部ベアリングアイ11は、連結ロッド10をクランクシャフト(
図1には示していない)に取り付けるために使用され、小端部ベアリングアイ12は、連結ロッド10を内燃機関のシリンダピストン(
図1には示していない)に取り付けるために使用される。連結ロッド10は、偏心器(偏心カム、図示せず)、偏心レバー14、および偏心ロッド15、16を有する偏心調整装置13をあてがわれている。偏心レバー14は、小端部ベアリングアイ12の中心17に対して偏心して配置された、中心18を有する開孔を有し、偏心レバー14の開孔は偏心器を収容し、偏心器の開孔は、ピストンピンを収容している。偏心調整装置13は、連結ロッド有孔長l
effを調整するために使用され、連結ロッド長は、大端部ベアリングアイ11の中心19から偏心レバー14の開孔の中心18までの距離を意味すると解釈すべきである。偏心本体14を回転させるために、ひいては、連結ロッド有効長l
effを変えるために、偏心ロッド15、16を移動させることができる。各偏心ロッド15、16は、案内されて油圧チャンバ22、23内を移動できるピストン20、21をあてがわれている。偏心ロッド15、16にあてがわれたピストン20、21に作用する油圧は、油圧チャンバ22、23内に広がり、偏心ロッド15、16は、油圧チャンバ内の油量に応じて、移動できたり、または移動できなかったりする。
【0003】
偏心調整装置13の調整は、内燃機関の動作サイクル時に、偏心調整装置13に作用する内燃機関の慣性力および負荷力の働きによって開始される。動作サイクル時に、偏心調整装置13に作用する力の作用方向は連続的に変わる。調整動作は、油圧油から作用を受けて、偏心ロッド15、16に作用するピストン20、21によって補助され、ピストン20、21は、偏心調整装置13に作用する力の、力の作用方向が変わることに起因する偏心調整装置13の戻りを妨げる。ピストン20、21と相互作用する偏心ロッド15、16は、両側で偏心本体14に取り付けられている。ピストン20、21が中で案内される油圧チャンバ22、23には、大端部ベアリングアイ11から油圧管24、25を介して油圧油を供給することができる。逆止弁26、27は、油圧油が油圧チャンバ22、23から油圧管24、25に逆流するのを防止する。切換弁29は、連結ロッド10の穴28に収容されており、切換弁29の切換位置により、油圧チャンバ22、23のどちらに油圧油を充填し、油圧チャンバ22、23のどちらを空にするかが決まり、偏心調整装置13の調整方向または回転方向はそれによって決まる。この場合に、油圧チャンバ22、23は、それぞれ流体管30、31を介して、切換弁29を収容した穴28と通じている。切換弁29の駆動手段32、ばね装置33、および制御ピストン34が、
図1に概略的に示されており、切換弁29のこれらの構成要素の動作は、(特許文献1)からすでに公知である。
【0004】
上記のように、油圧チャンバ22、23内で案内されるピストン20、21に作用する油圧油は、大端部ベアリングアイ11から油圧管24、25を介して、油圧チャンバ22、23に供給され、連結ロッド10は、連結ロッドベアリングシェル35が、クランクシャフト(
図1には示していない)、すなわち、クランクシャフトのクランクシャフトベアリングジャーナルと大端部ベアリングアイとの間に配置されるように、大端部ベアリングアイ11を用いてクランクシャフトと係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2010 016 037A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規の内燃機関および新規の連結ロッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の連結ロッドによって達成される。本発明によれば、小端部ベアリングアイと偏心器(偏心カム)との間に潤滑油膜を形成することを可能にする潤滑油穴が、小端部ベアリングアイに形成され、小端部ベアリングアイは、偏心器を収容するように機能する、小端部ベアリングアイの開孔に対する潤滑油穴が、前記ベアリングアイに形成された領域において、前記ベアリングアイの他の領域の壁厚よりも厚い壁厚を有する。
【0008】
本発明は、小端部ベアリングアイと、小端部ベアリングアイの開孔に収容された偏心器との間の接触領域の有益な潤滑を可能にする。潤滑油穴によってもたらされる小端部ベアリングアイの脆弱化を補償するために、前記ベアリングアイは、偏心器を収容するように機能する開孔に対する潤滑油穴が、前記ベアリングアイに形成された領域において、隣接する、または近接する領域の半径方向の壁厚よりも厚い半径方向の壁厚を有する。潤滑油穴が、小端部ベアリングアイに形成された領域以外の小端部ベアリングアイの領域の半径方向の壁厚を薄くすることにより、一方で、連結ロッドの重量を削減し、他方で、小端部ベアリングアイと偏心調整装置の偏心ロッドとの間に十分なすき間をもたらすことが可能である。
【0009】
発展形態によれば、小端部ベアリングアイは、偏心調整装置の伸長した偏心ロッドと正反対に位置する、または伸長した偏心ロッドに対向する領域において、潤滑油穴が、小端部ベアリングアイに形成された領域の半径方向の壁厚よりも薄い半径方向の壁厚を有する。これは、遠心ロッドと小端部ベアリングアイとの間にすき間をもたらし、重量を削減するのに寄与する。
【0010】
発展形態によれば、小端部ベアリングアイの半径方向に延び、小端部ベアリングアイの周方向に離間した少なくとも2つの潤滑油穴が、小端部ベアリングアイに形成され、小端部ベアリングアイは、潤滑油穴が、前記ベアリングアイに形成された領域において、これらの領域間で、小端部ベアリングアイの周方向に配置された領域の壁厚よりも厚い壁厚を有する。これは、特に、連結ロッドの重量の削減に寄与する。
【0011】
有益な発展形態によれば、小端部ベアリングアイにおける、壁厚が異なる領域間の移行部は、連続的に、したがって、不連続点のない態様で形成される。それにより、小端部ベアリングアイの壁厚の変化による応力のさらなる増大なしに、小端部ベアリングアイの材料に対する負荷を均一にすることが可能である。
【0012】
内燃機関は請求項5で規定される。
【0013】
本発明の好ましい発展形態が、従属請求項および以下の説明から明らかになるであろう。本発明の例示的な実施形態が、その実施形態に制限されることなく、図面を用いてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】圧縮比を調整可能な、先行技術から公知の内燃機関の連結ロッドを示している。
【
図3】本発明による連結ロッドの細部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
圧縮比が調整可能な内燃機関は、少なくとも1つのシリンダ、好ましくは複数のシリンダを有する。各シリンダは、連結ロッド10によって内燃機関のクランクシャフトに連結されるピストンを有する。各連結ロッド10は、一端に小端部ベアリングアイ12、および反対側の端部に大端部ベアリングアイ11を有する。それぞれの連結ロッド10は、連結ロッドベアリングシェルが、クランクシャフトベアリングジャーナルと大端部ベアリングアイとの間に配置されるように、大端部ベアリングアイ11を用いて、クランクシャフトベアリングジャーナルと係合し、潤滑油膜は、連結ロッドベアリングシェルとクランクシャフトベアリングジャーナルとの間に形成することができる。
【0016】
圧縮比が調整可能な内燃機関は、それぞれの連結ロッド10の連結ロッド有効長を調整するために、各連結ロッド10の領域に偏心調整装置13を有する。
【0017】
偏心調整装置13は、偏心器、偏心レバー14、および偏心ロッド15、16を有し、偏心ロッド15、16は、圧縮比を調整するために、偏心ロッドと相互作用する油圧チャンバ内に広がる油圧に従って移動することができる。偏心ロッド15、16と相互作用する油圧チャンバには、それぞれの連結ロッドの大端部ベアリングアイ11から油圧油を供給することができる。偏心調整装置の調整は、内燃機関の慣性力および負荷力の働きによって開始される。
【0018】
偏心レバー14および小端部ベアリングアイ12はそれぞれ、偏心器36を収容する開孔または穴を有し、偏心器36としては、ピストンピン37を収容するように機能する開孔または穴を有する。
【0019】
少なくとも小端部ベアリングアイ12と偏心器36との間で潤滑油膜が形成されるのを可能にする潤滑油穴38、39と、好ましくは、偏心器36とピストンピン37との間で同様に潤滑油膜が形成されるのを可能にする潤滑油穴40、41とが、小端部ベアリングアイ12、および、好ましくは、さらに偏心器36に形成される。偏心調整装置13の終端位置において、および偏心調整装置13の調整時に、潤滑油穴38、39、40、41は、小端部ベアリングアイ12と偏心器36との間、および、好ましくは偏心器36とピストンピン37との間の接触点の良好な潤滑を可能にする。
【0020】
図2および
図3によれば、2つの潤滑油穴38、39は、小端部ベアリングアイ12に形成され、2つの潤滑油穴40、41は、偏心器36に形成されている。
【0021】
潤滑油穴38、39、40、41は、偏心器36または偏心調整装置13の第1の終端位置において、偏心器36の第1の潤滑油穴40が、小端部ベアリングアイ12の第1の潤滑油穴38と一列に整列するように、小端部ベアリングアイ12および偏心器36に形成され、その結果として、第1の終端位置(
図2を参照のこと)にある前記穴によって、偏心器36とピストンピン37との間に潤滑油膜を形成することができる。潤滑油穴38、39、40、41は、さらに、偏心器36または偏心調整装置13の第2の終端位置において、偏心器36の第2の潤滑油穴41が、小端部ベアリングアイ12の第2の潤滑油穴39と一列に整列するように、小端部ベアリングアイ12および偏心器36に形成され、潤滑油膜が、第2の終端位置にある前記穴によって、偏心器36とピストンピン37との間に形成されるのを可能にする。偏心器36または偏心調整装置13の第1の終端位置では、偏心器36の第2の潤滑油穴41は、小端部ベアリングアイ12の第2の潤滑油穴39と一列に整列せず、したがって、この場合に、潤滑油膜は、第1の終端位置にある小端部ベアリングアイ12の第2の潤滑油穴39によって、小端部ベアリングアイ12と偏心器36との間に形成することができる。偏心器36または偏心調整装置13の第2の終端位置では、偏心器36の第1の潤滑油穴40は、小端部ベアリングアイ12の第1の潤滑油穴38と一列に整列せず、したがって、この場合に、潤滑油膜は、第2の終端位置にある小端部ベアリングアイ12の第1の潤滑油穴38によって、小端部ベアリングアイ12と偏心器36との間に形成することができる。偏心調整装置13の終端位置において、および偏心調整装置13の調整時に、潤滑油穴38、39、40、41は、小端部ベアリングアイ12と偏心器36との間、および偏心器36とピストンピン37との間の接触点の特に有益な潤滑を可能にする。
【0022】
小端部ベアリングアイ12の潤滑油穴38、39と、好ましくは偏心器36に存在する潤滑油穴40、41とは、それぞれ、偏心器36の半径方向および小端部ベアリングアイ12の半径方向に延びている。偏心器36の第1の潤滑油穴40および小端部ベアリングアイ12の第1の潤滑油穴38は、同じ直径を有するのが好ましい。偏心器36の第2の潤滑油穴41および小端部ベアリングアイ12の第2の潤滑油穴39は、同様に、同じ直径を有するのが好ましい。
【0023】
すでに説明したように、小端部ベアリングアイ12と偏心器36との間に潤滑油膜を形成することを可能にする潤滑油穴38、39は、小端部ベアリングアイ12に形成されている。
【0024】
本発明によれば、
図3から分かるように、小端部ベアリングアイ12は、偏心器36を収容するように機能する、小端部ベアリングアイ12の開孔または穴に対する潤滑油穴38、39が、前記ベアリングアイ12に形成された領域において、その領域に隣接する、または近接する領域の半径方向の壁厚よりも厚い半径方向の壁厚を有するとさらに想定されている。
【0025】
半径R1によって、
図2は、偏心器36を収容した、小端部ベアリングアイ12の穴または開孔の半径を示し、半径R2によって、
図2は、小端部ベアリングアイ12の半径を示しており、
図2では、半径R1、R2間の差、したがって、半径方向に見た小端部ベアリングアイ12の壁厚は、小端部ベアリングアイ12の外周にわたって、ほとんど完全に同じであり、連結ロッド10の連結ロッド本体への移行領域のみ変わっている。
【0026】
本発明によれば、
図3から分かるように、小端部ベアリングアイ12は、
図2とは異なる輪郭を有し、したがって、潤滑油穴38、39が、前記ベアリングアイに形成された領域の小端部ベアリングアイ12の半径方向の壁厚は、その領域に隣接する、または近接する領域の半径方向の壁厚よりも厚い。
【0027】
それと共に、
図3は、2つの潤滑油穴38、39が小端部ベアリングアイ12に形成され、前記穴はそれぞれ、小端部ベアリングアイ12の半径方向に延び、小端部ベアリングアイ12の周方向に離間することを示している。小端部ベアリングアイ12のうちの潤滑油穴38、39が前記ベアリングアイに形成された領域では、小端部ベアリングアイ12は、小端部ベアリングアイ12の周方向に見て、これらの領域間に配置された領域43の半径方向の壁厚よりも厚い半径方向の壁厚を有する。したがって、
図3から分かるように、ベアリングアイの外形は、周方向に見て、潤滑油穴38、39間に配置された小端部ベアリングアイ12の領域43で、半径R2に対して半径方向内側に後退することができる。
【0028】
図3では、小端部ベアリングアイ12は、それぞれの偏心ロッド15、16が伸長した状態で、それぞれの偏心ロッド15、16の正反対に位置する、またはそれらの偏心ロッド15、16に対向する領域44、45において、潤滑油穴38、39が、小端部ベアリングアイ12に形成された領域の半径方向の壁厚よりも薄い半径方向の壁厚を有するとさらに想定されている。これらの領域44、45では、小端部ベアリングアイ12の外形は、半径R2に対して半径方向内側に後退している。
【0029】
領域44、45の小端部ベアリングアイ12の壁厚をより薄くすることは、特に、偏心ロッド15、16に十分なすき間をもたらし、さらに、重量を削減するのに寄与する。領域43の小端部ベアリングアイ12の壁厚をより薄くすることは、重量を削減するのに寄与する。
【0030】
本発明によれば、小端部ベアリングアイ12の壁厚は、負荷に対して最適化した態様で適宜具現化され、小端部ベアリングアイ12の厚い方の半径方向の壁厚は、潤滑油穴38、39の領域に隣接する領域よりも潤滑油穴38、39の領域に付与される。それにより、潤滑油穴38、39の領域において、小端部ベアリングアイ12および連結ロッド10の十分な強度または安定性が保証され、さらに、連結ロッド10に対して低重量が保証され、他方で、小端部ベアリングアイ12に対する十分なすき間が偏心ロッド15、16にもたらされる。
【0031】
小端部ベアリングアイ12における、半径方向の壁厚が異なる領域間の移行部は、連続的に、したがって、不連続点のない態様で形成されるのが好ましい。結果的に、小端部ベアリングアイ12における、半径方向の壁厚が異なる領域間の不連続な移行が回避される。それにより、壁厚の変化による応力のさらなる増大なしに、小端部ベアリングアイ12の材料に対する負荷を均一にすることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 連結ロッド
11 大端部ベアリングアイ
12 小端部ベアリングアイ
13 偏心調整装置
14 偏心レバー
15 偏心ロッド
16 偏心ロッド
22 油圧チャンバ
23 油圧チャンバ
36 偏心器
37 ピストンピン
38 潤滑油穴
39 潤滑油穴
43 領域
44 領域
45 領域