特許第6382927号(P6382927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382927
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20180820BHJP
   B29C 47/14 20060101ALI20180820BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20180820BHJP
   B29K 105/14 20060101ALN20180820BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
   C08J5/18CER
   C08J5/18CEZ
   B29C47/14
   B29K101:12
   B29K105:14
   B29L7:00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-251804(P2016-251804)
(22)【出願日】2016年12月26日
(62)【分割の表示】特願2014-61827(P2014-61827)の分割
【原出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-52973(P2017-52973A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-185252(P2013-185252)
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雅哉
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−071287(JP,A)
【文献】 特開2015−073067(JP,A)
【文献】 米国特許第05522719(US,A)
【文献】 特公昭49−005901(JP,B1)
【文献】 特開平07−205252(JP,A)
【文献】 特開2004−160677(JP,A)
【文献】 特開2004−223742(JP,A)
【文献】 特開2001−310396(JP,A)
【文献】 特開平04−057302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
B29C 47/00−47/96
B29D 7/00− 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する上下方向の隙間Xの第一ギャップ及び上下方向の隙間Yの第二ギャップを有するTダイを用い(ただし、X<Y)、厚み方向に配向したフィラーを含む樹脂成形品を製造する方法であって、
前記フィラーを含む樹脂成形品の樹脂組成物を、前記第一ギャップ通過させて、面方向に配向した前記フィラーを含む樹脂成形前駆体を得る第一工程と、
前記第一ギャップの下流側において、前記第一ギャップを通過した前記樹脂成形前駆体の流れを押出方向に対して上下方向に変化させた後、前記第二ギャップを通過する際に、前記第一ギャップにおける流れの方向に対して略垂直な方向にフィラーが配向した前記樹脂成形前駆体を融着させて樹脂成形品を得る第二工程と、
を有し、
前記第一ギャップと前記第二ギャップとの間の上下少なくとも一方に傾斜面を有すること、
を特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記傾斜面の傾斜角度が10〜50°であることを特徴とする、請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第一ギャップが0.mm以上5.0mm以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物における前記フィラーの体積充填率が30〜70体積%であること、
を特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂成形品の製造方法に関し、より具体的には、樹脂シート等の樹脂成形品に熱伝導性、導電性、耐摩耗性等の機能を付与するためのフィラーを樹脂成形品の厚さ方向に配向させた樹脂成形品の好適な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度化・薄型化が急速に進み、ICやパワー部品、高輝度LEDから発生する熱の影響が重大な問題となっている。これに対し、発熱体と放熱体の間に熱を効率よく伝達する部材として、熱伝導性樹脂成形品(シート)の利用が進んでいる。また、熱伝導性樹脂シート以外にも機能性フィラーを厚さ方向に配向させた樹脂シートの例として、電気接点、ワイヤレス給電等に用いられる導電性シート、歩行時の滑り防止に用いるための滑り止めシート等が知られている。
【0003】
例えば、樹脂に高い熱伝導性の機能を付与する手段として、効率よく熱伝導パスを形成するために、熱伝導性フィラーを樹脂中に配向分散させることが知られている。例えば、特許文献1(特開平08−244094号公報)においては、樹脂及び/又はゴムと鱗片状粒子を含む混練物を複数の帯状可塑物に押出成型しながらそれらをリップで集成しシート化した後硬化させるか、又はシート化しながら硬化させる製造方法が提案されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2(特開2010−132866号公報)においては、黒鉛粒子及び/又は六方晶窒化ほう素粒子の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、熱伝導性樹脂シートの厚み方向に配向している熱伝導性樹脂シートが開示されている。
【0005】
ここで、発熱体から放熱体に効率よく熱を放出させるためには、厚さ方向に熱伝導性フィラーが高配向した熱伝導性樹脂シートを製造することが望ましい。例えば、特許文献3(特開昭60−219034号公報)においては、弾性体シート内に短繊維群をシート長手方向に配向埋設したシートを、シート幅方向にシート面より垂直方向に裁断して帯状小片群を形成し、当該帯状小片の側面同士を接合してなる厚さ方向にフィラーが配向したシートの製造方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献4(特開2012−23335号公報)においても、ポリマー、熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出すことにより、当該熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形する押出成形工程と、当該押出成形物を硬化させて硬化物を得る硬化工程と、当該硬化物を、超音波カッターを用いて押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する切断工程と、を少なくとも含む熱伝導性樹脂シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−244094号公報
【特許文献2】特開2010−132866号公報
【特許文献3】特開昭60−219034号公報
【特許文献4】特開2012−23335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献に記載されている従来技術においては、樹脂シートの製造工程が煩雑であり、積層工程や切断工程のために設備及び加工工数が増加してしまう。特に、積層工程ではプレスが必須であり、連続成型性が損なわれ、量産化に対応できないという問題があった。
【0009】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、フィラーを樹脂成形品の厚さ方向に配向させた樹脂成形品の効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく、樹脂成形品の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、Tダイ内部において、フィラーが配向した樹脂成形品を垂直方向に折り畳むことにより、厚み方向にフィラーが配向した成形品を効率的に得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、
連続する上下方向の隙間Xの第一ギャップ及び上下方向の隙間Yの第二ギャップを有するTダイを用い(ただし、X<Y)、厚み方向に配向したフィラーを含む樹脂成形品を製造する方法であって、
前記フィラーを含む樹脂成形品の樹脂組成物を、前記第一ギャップ通過させて、面方向に配向した前記フィラーを含む樹脂成形前駆体を得る第一工程と、
前記第一ギャップの下流側において、前記第一ギャップを通過した前記樹脂成形前駆体の流れを押出方向に対して上下方向に変化させた後、前記第二ギャップを通過する際に、前記第一ギャップにおける流れの方向に対して略垂直な方向にフィラーが配向した前記樹脂成形前駆体を融着させて樹脂成形品を得る第二工程と、
を有し、
前記第一ギャップと前記第二ギャップとの間の上下少なくとも一方に傾斜面を有すること、
を特徴とする樹脂成形品の製造方法を提供する。
【0012】
前記傾斜面の傾斜角度が10〜50°であることが好ましく、前記第一ギャップが0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0013】
フィラーは、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の材料を用いることができるが、樹脂組成物におけるフィラーの体積充填率が30〜70体積%であることが好ましい。また、フィラーの熱伝導率は高ければ高いほど好ましく、少なくとも、基材の樹脂よりは高いことが望まれる。また、フィラーを効率よく樹脂中に配向させるという観点から、フィラーのアスペクト比は2以上であることが好ましい。
【0014】
このような構成を有する製造方法によれば、Tダイ内部で、フィラーが面方向に配向した樹脂成形前駆体が押出し方向に対して略垂直な方向に折り畳まれながら融着し、極めて効率よくフィラーが厚さ方向に配向した樹脂成形品を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厚さ方向にフィラーが配向した樹脂成形品(例えば、シート、板材、棒材、チューブ、筐体等)の、効率的な製造方法を提供することができる。より具体的には、本発明によれば、厚さ方向にフィラーが配向した熱伝導性樹脂シート、導電性樹脂シート、又は、滑り止め樹脂シートの、効率的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の樹脂シートの製造方法の概念図(Tダイの側面図)である。
図2】実施例1で製造した樹脂シートの概観写真である。
図3】実施例1で製造した樹脂シートの断面SEM写真である。
図4】実施例2で製造した樹脂シートの断面SEM写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂成形品の製造方法の好適な実施形態のうちの、樹脂成形品が熱伝導性樹脂シートである場合について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0018】
図1は、本発明の樹脂シートの製造方法の概念図であり、押出機の先端部分及びTダイの断面概略図が示されている。熱伝導性フィラーを含む樹脂シートの樹脂組成物は、スクリュー2によって撹拌・混練され、流路8に沿って第一ギャップ4(隙間X)に導入される。
【0019】
樹脂組成物の流れは第一ギャップ4によって上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれ、薄い帯状となる。第一ギャップ4を通過する際、樹脂組成物にせん断力が作用し、樹脂中に混合されている熱伝導性フィラーが樹脂組成物の流れ方向に配向することとなる。この場合、熱伝導性フィラーは樹脂シート前駆体の面方向に配向する。
【0020】
ここで、第一ギャップ4の隙間は0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。第一ギャップ4の隙間が0.5mmよりも小さいと、押出し圧力が不必要に上昇するだけでなく、樹脂詰まりが発生してしまう。一方、第一ギャップ4の隙間が5.0mmよりも大きいと、樹脂シート前駆体の面方向に対する熱伝導性フィラーの配向度が減少する結果となる。
【0021】
樹脂組成物の流れ方向に熱伝導性フィラーが配向された厚さの薄い樹脂シート前駆体が、第一ギャップ4を完全に通過すると、流路8の断面積が拡大し、上下方向の長さが長くなるため、樹脂シート前駆体の流れは押出方向に対して上下方向に変化する。その後、当該樹脂シート前駆体は、第二ギャップ6を通過する際に、第一ギャップ4における流れの方向に対して略垂直な方向に折り畳まれながら融着し、樹脂シートが成型される。
【0022】
ここで、第二ギャップ6の隙間Yは第一ギャップ4の隙間Xの2倍以上20倍以下であることが好ましい。第二ギャップ6の隙間が第一ギャップ4の隙間の2倍よりも小さい場合は、樹脂シート前駆体が折り畳まれないために、熱伝導性フィラーが樹脂シートの厚さ方向に配向しない。これに対し、第二ギャップ6の隙間が第一ギャップ4の隙間の10倍よりも大きな場合も、樹脂シート前駆体がきれいに折り畳まれず、部分的に乱流した状況となり、樹脂シートの厚さ方向に配向する熱伝導性フィラーの割合が減少してしまう。なお、前記樹脂シート前駆体を厚さ方向に均等に折り畳みやすくする観点から、第一ギャップ4の隙間Xの厚さ方向中心と、第二ギャップ6の隙間Yの厚さ方向中心とを略同一の位置にすることが好ましい。
【0023】
第一ギャップ4における開口部の形状は、特に規定されないが、上流側側面は圧力損失が少ないように傾斜面とすることが好ましく、下流側側面については最も効率よく熱伝導性フィラーを樹脂シートの厚さ方向に配向させるために、傾斜角度を調整することが望ましい。当該傾斜角度としては、例えば、10°〜50°とすることができ、更には、20°〜25°であるのが好ましい。また、上下共に傾斜を有している必要はなく、どちらか一方のみが傾斜を有していてもよい。なお、第一ギャップ4及び第二ギャップ6の開口部の奥行(即ち、図1において紙面に略垂直な方向における第一ギャップ4及び第二ギャップ6の隙間)は、Tダイの全体にわたって略同一である。また、第一ギャップ及び第二ギャップにおける開口部の幅は特に規定されず、樹脂シートの製品幅に応じて種々の設計変更が可能である。
【0024】
樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、又はこれらのポリマーアロイ等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体;ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリアクリル酸又はそのエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体又はその水添ポリマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水添ポリマー等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、上述の樹脂に加え、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、老化防止剤、粘着付与剤、帯電防止剤、練り込み接着剤、難燃剤、カップリング剤等の一般的な配合・添加剤は任意に選択することができる。
【0027】
熱伝導性フィラーの例としては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の材料を用いることができ、例えば、窒化ホウ素(BN)、黒鉛、炭素繊維、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、二硫化モリブデン、銅、アルミニウムなどが挙げられるが、熱伝導効果が優れる点で、窒化ホウ素(BN)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)を用いることが好ましい。
【0028】
熱伝導性フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば鱗片状、板状、膜状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状などが挙げられるが、熱伝導パスを形成する観点及び樹脂中で配向しやすいとう観点から、アスペクト比が2以上であることが好ましい。また、樹脂に対する熱伝導性フィラーの割合は20〜80体積%とすることができ、必要とされる熱伝導率等に応じて、適宜決定することができる。なお、熱伝導性フィラーの割合が20体積%未満の場合は、熱伝導効果が小さくなる。また、熱伝導性フィラーの割合が80体積%を超えると、樹脂シート前駆体が第一ギャップを通過する際に、第一ギャップにおける流れの方向に対して略垂直方向に折り畳まれるものの、樹脂間が融着しづらくなるという不具合が生じる。したがって、樹脂シートの熱伝導効果を高めて、かつ押出成形を容易にするために、樹脂基材に対する熱伝導性フィラーの割合は30〜70体積%とすることが好ましく、50〜65体積%とすることがより好ましい。
【0029】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更も本発明に含まれる。例えば、熱伝導性以外の種々の特徴を有するフィラーを樹脂シートの厚さ方向に配向させるためにも当然に用いることができる。以下において、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0030】
≪実施例1≫
表1に記載の配合にて、フッ素ゴム(旭硝子:アフラス150L 100重量部)に対して窒化ホウ素(BN)フィラー(モメンティブ:TP110)、パーオキサイド架橋剤(日本油脂:ペロキシモンF100 5重量部)、及び架橋促進剤を2本ロールで練り込み、リボンシートを作製した。フッ素ゴムに対する窒化ホウ素(BN)フィラーの体積分率は60%とした。なお、窒化ホウ素(BN)フィラーのサイズ最大値は150μmであった。ここで、窒化ホウ素(BN)フィラーのサイズ最大値とは、フィラー直径の最大値を意味する。
【0031】
次に、当該リボンシートをゴム用短軸押出機にて、1mmの第一ギャップ及び10mmの第二ギャップを有する垂直配向金型を用いて、厚さ10mmのシートを作製し、180℃で10分間の架橋処理を施した。当該シートをスライス加工し、厚さ100μmの熱伝導測定用シートを作製した。なお、シートの熱伝導率はアイフェイズ社製のアイフェイズ・モバイル1μにて測定した。得られた熱伝導率は表1に示す通りである。なお、熱伝導率はシート厚みに依存しない(熱抵抗は厚さに反比例する。)。
【0032】
上記垂直金型通過後のシート概観を図2に示す。第一ギャップを通過したシートが第二ギャップを通過する際に、第一ギャップにおける流れの方向に対して略垂直な方向に折り畳まれながら融着し、樹脂シートが成型されていることが確認できる。
【0033】
実施例1で得られたシートの断面SEM写真を図3に示す。シートの厚さ方向(SEM写真の上下方向)に窒化ホウ素(BN)フィラーが配向しており、厚さ方向にフィラーが高配向したシートが得られていることが確認できる。なお、SEM観察にはHITACHI製の走査型電子顕微鏡(S−4800)を用いた。
【0034】
≪実施例2≫
表1に記載の配合にて、H−NBR(ZEON・Zetpol1036 50%)に対して炭素繊維(CF、帝人(株):ラヒーマRA301)、架橋剤、及び架橋促進剤を2本ロールで練り込み、リボンシートを得た。ベースポリマーに対する炭素繊維の体積分率は50%とした。なお、炭素繊維のサイズ最大値は800μmであった。ここで、炭素繊維のサイズ最大値とは、繊維長手方向の最大値(繊維長)を意味する。
【0035】
次に、当該リボンシートをゴム用短軸押出機にて、0.5mmの第一ギャップ及び1mmの第二ギャップを有する垂直配向金型を用いて、厚さ1mmのシートを作製し、180℃で10分間の架橋処理を施した。当該シートをスライス加工し、厚さ100μmの熱伝導測定用シートを作製した。なお、シートの熱伝導率はアイフェイズ社製のアイフェイズ・モバイル1μにて測定した。得られた熱伝導率は表1に示す通りである。
【0036】
実施例2で得られたシートの断面SEM写真を図4に示す。シートの厚さ方向(SEM写真の上下方向)に炭素繊維が配向しており、厚さ方向にフィラーが高配向したシートが得られていることが確認できる。なお、SEM観察にはHITACHI製の走査型電子顕微鏡(S−4800)を用いた。
【0037】
≪実施例3≫
表1に記載の配合にて、アクリルゴム(NOK社:A5098 100重量部)に対して炭素繊維(CF、日本グラファイトファイバー(株):グラノック XN100(3mm))、パーオキサイド架橋剤(大内新興化学工業(株):バルノックABS 2重量部)、及び架橋促進剤を2本ロールで練り込み、リボンシートを得た。ベースポリマーに対する炭素繊維の体積分率は60%とした。なお、炭素繊維のサイズ最大値は3mmであった。ここで、炭素繊維のサイズ最大値とは、繊維長手方向の最大値(繊維長)を意味する。
【0038】
次に、当該リボンシートをゴム用短軸押出機にて、0.5mmの第一ギャップ及び1mmの第二ギャップを有する垂直配向金型を用いて、厚さ1mmのシートを作製し、180℃で10分間の架橋処理を施した。当該シートをスライス加工し、厚さ100μmの熱伝導測定用シートを作製した。なお、シートの熱伝導率はアイフェイズ社製のアイフェイズ・モバイル1μにて測定した。得られた熱伝導率は表1に示す通りである。
【0039】
≪実施例4≫
表1に記載の配合にて、シリコーン樹脂(東レダウコーニング株式会社製のシリコーンゴム DY32 1005U 100重量部)に対して炭素繊維(CF、日本グラファイトファイバー(株):グラノック XN100(3mm))及び架橋剤(東レダウコーニング株式会社製のRC−4 50P FD 5重量部)を2本ロールで練り込み、リボンシートを得た。シリコーン樹脂に対するピッチ系炭素繊維フィラーの体積分率は65%とした。なお、用いたピッチ系炭素繊維フィラーの長さは3000μmであった。
【0040】
次に、当該リボンシートをゴム用短軸押出機にて、1.0mmの第一ギャップ及び10mmの第二ギャップを有する垂直配向金型を用いて、厚さ1mmのシートを作製し、180℃で10分間の架橋処理を施した。当該シートをスライス加工し、厚さ100μmの熱伝導測定用シートを作製した。なお、シートの熱伝導率はアイフェイズ社製のアイフェイズ・モバイル1μにて測定した。得られた熱伝導率は表1に示す通りである。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すシートの厚さ方向における熱伝導率は15〜80W/mKと高い値を有しており、本発明を用いてフィラーをシートの厚さ方向に効率よく配向させることで、高熱伝導率を有する放熱シートを簡易に作製できることがわかる。
図1
図2
図3
図4