特許第6382942号(P6382942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382942アンチモン及び鉄を含む触媒を用いたニトリルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382942
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】アンチモン及び鉄を含む触媒を用いたニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/843 20060101AFI20180820BHJP
   C07C 253/26 20060101ALI20180820BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20180820BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
   B01J23/843 Z
   C07C253/26
   C07C255/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-508219(P2016-508219)
(86)(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公表番号】特表2016-516803(P2016-516803A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】FR2014050924
(87)【国際公開番号】WO2014170604
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】1353478
(32)【優先日】2013年4月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(73)【特許権者】
【識別番号】515251621
【氏名又は名称】エコール サントラル ド リール
(73)【特許権者】
【識別番号】515253429
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デ シヨンス エ テクノロジー ド リール − リール1
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カトリニョク,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】デュメニル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】リービッヒ,カルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルデリッヒ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン シリル
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭28−001272(JP,B1)
【文献】 特開昭58−046054(JP,A)
【文献】 特公昭38−019111(JP,B1)
【文献】 英国特許第00983755(GB,B)
【文献】 Yan Huang et al.,The nature of antimony-enriched surface layer of Fe-Sb mixed oxides,APPLIED SURFACE SCIENCE,2006年,252(22),7849-7855
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C01G 49/00
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
SbFe (I)
[式(I)中、xは0.4〜1の範囲内であり、yは1.6〜4の範囲内である]で表される化合物の触媒としての使用であって、
前記触媒は、下記式(II):
CH=C(R)−CH−OH (II)
[式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す]で表されるアルコールのアンモ酸化反応を促進し、下記式(III):
CH=C(R)−C≡N (III)
[式(III)中、Rは前記式(II)中のそれと同義である]で表されるニトリルを生成するものであり、
前記反応は、少なくとも酸素及びアンモニアを含む気相中で行われる、使用。
【請求項2】
触媒の存在下でアルコールからニトリルを製造する方法であって、
下記式(II):
CH=C(R)−CH−OH (II)
[式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す]で表されるアルコールから、下記式(III):
CH=C(R)−C≡N (III)
[式(III)中、Rは前記式(II)中のそれと同義である]で表されるニトリルを得るアンモ酸化反応の段階を含み、
前記反応を、少なくとも酸素及びアンモニアを含む気相中、下記式(I):
SbFe (I)
[式(I)中、xは0.4〜1の範囲内であり、yは1.6〜4の範囲内である]で表される化合物群から選択される固体触媒の存在下で行う、製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法において、前記Rが水素原子を表し、前記製造方法がアリルアルコールからアクリロニトリルを得るアンモ酸化反応の段階を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の製造方法において、前記触媒が、前記xが0.5〜0.8の範囲内である化合物群から選択されることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の製造方法において、前記式(I)で表される化合物が、前記xが0.6である化合物群から選択されることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の製造方法において、前記アンモ酸化反応を350℃〜450℃の温度で行うことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の製造方法において、反応温度及び反応圧力における、反応器に導入されたガスの総体積流量に対する前記触媒の体積の比が、0.05〜2sであることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の製造方法において、前記気相中、前記式(II)で表されるアルコール/アンモニアのモル比が1/1〜1/4であることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一項に記載の製造方法において、前記気相中、前記式(II)で表されるアルコール/酸素のモル比が1/1.5〜1/5であることを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の製造方法において、前記式(II)で表されるアルコール/酸素/アンモニアのモル比が1/3.5/3である気相を用いて、前記アンモ酸化反応を行うことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか一項に記載の製造方法において、前記式(I)で表される触媒が多孔質固体担体に支持されていることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチモン及び鉄を含み、ニトリル(特にアクリロニトリル)の生成を促進する触媒の使用に関し、また、気相中、このような触媒の存在下で、ニトリル(特にアクリロニトリル)を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
プロペンニトリル(CH=CH−C≡N)は、より一般的にはアクリロニトリルとして知られ、有機化学において、多くのポリマーを調製する際にモノマーとして使用可能な出発物質であり、特に、アクリル繊維やナイロン等の織物繊維、合成ゴム、ブタジエンと共重合した含窒素エラストマー、或いはブタジエン及びスチレンと共重合した高性能固体樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂)の調製に用いられる。
【0003】
今日、アクリロニトリルの工業生産はプロペン又はプロパンに依存している。プロペン及びプロパンはいずれも化石資源から得られる化合物である。具体的には、アクリロニトリルの合成は、通常、1960年代に開発され、例えばGB特許出願709337号に記載されている、ソハイオ法(スタンダード・オイル・オブ・オハイオ社(Standard Oil of Ohio)の名称に由来)に従って行う。この方法では、以下の反応:
【化1】
に従い、アンモニア存在下でプロペンの酸化(アンモ酸化)を行う。
【0004】
この反応は、流動層反応器内で、気相中、高温(通常350℃〜400℃)で、無水条件下、ビスマス及びモリブデンを含む触媒の存在下で行う。
【0005】
しかしながら、プロペンの価格は以前から上昇しており、上記方法はプロペンを使用する点で不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、プロペンに依存せず、優れた収率を示すアクリロニトリル調製方法が必要とされている。本発明者らは、特にアリルアルコールからアクリロニトリルを製造可能な方法を開発するという目標を設定した。アリルアルコールが経済的に有利であると証明されていないとしても、アリルアルコールは生物学的に調達可能であり、この方法は環境的に有利である。このような研究において、本発明者らは、アンチモン及び鉄を含む特定の触媒が、特に気相中で、アリルアルコールからアクリロニトリルを非常に良い収率で製造するための反応を促進可能であることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の対象は、
下記式(I):
SbFe (I)
[式(I)中、xは0.4〜1の範囲内であり、yは1.6〜4の範囲内である]で表される化合物の触媒としての使用である。
該触媒は、下記式(II):
CH=C(R)−CH−OH (II)
[式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す]で表されるアルコールのアンモ酸化反応を促進し、下記式(III):
CH=C(R)−C≡N (III)
[式(III)中、Rは式(II)中のそれと同義である]で表されるニトリルを生成するものであり、
上記反応は、少なくとも酸素及びアンモニアを含む気相中で行われる。
【0008】
上記式(I)で表される触媒を用いると、気相中で、式(II)で表されるアルコールのアンモ酸化反応を行い、式(III)で表されるニトリル(特にアクリロニトリル)を非常に良好な収率で得ることが可能になる。この反応では、副生成物として、アクロレイン(及びアクロレインが後に酸化されたアクリル酸)、アセトン、アセトアルデヒド、アセトニトリル、並びにプロピオンアルデヒドを得ることも可能である。これら副生成物は化学工業で広く使用される中間体であるため、これらもまた価値が高い。更に、これら生成物の沸点が異なることから(アセトアルデヒド:22℃、プロピオンアルデヒド:47℃、アクロレイン:52℃、アセトン:57℃、アクリロニトリル:77℃、アセトニトリル:82℃、アクリル酸:147℃)、例えば特定の複合的方法においても、これらを分離することは理論的に容易である。
【0009】
更に、上述のとおり、出発物質(式(II)で表されるアルコール)は再生可能資源から生成できる。そのため、式(III)で表されるニトリル(特にアクリロニトリル)を得るために、化石資源を使用する必要が無い。例えば、文献(特に国際出願WO2008/092115号及びWO2011/08509)に記載の気相中又は液相中での様々な触媒的方法に従い、グリセロールを、単独又はギ酸との混合物の形態で、アリルアルコールの生成に使用できる。
【0010】
一例として、上記式(I)で表される触媒は、特に、リ(Li K.-T.)ら、アプライド・キャタリシス・A:ジェネラル(Applied Catalysis A: General)、156、1997、117−130に記載の方法に従って調製できる。簡単に説明すると、この方法では、硝酸鉄等の鉄塩の酸性水溶液を約80℃で酸化アンチモン(Sb)と反応させた後、80℃〜90℃の温度に数時間保持して溶媒を蒸発させることでペースト状生成物を得て、約100℃で数日間乾燥する。得られた触媒粉末を後にペレット状にプレス成形し、粉砕して粉末を得る。好ましくは、この粉末を、静大気中、300℃〜700℃で30分間以上焼成する。
【0011】
本発明の他の対象は、触媒の存在下でアルコールからニトリルを製造する方法であって、
下記式(II):
CH=C(R)−CH−OH (II)
[式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す]で表されるアルコールから、下記式(III):
CH=C(R)−C≡N (III)
[式(III)中、Rは式(II)中のそれと同義である]で表されるニトリルを得るアンモ酸化反応の段階を含み、
該反応を、少なくとも酸素及びアンモニアを含む気相中、下記式(I):
SbFe (I)
[式(I)中、xは0.4〜1の範囲内であり、yは1.6〜4の範囲内である]で表される化合物群から選択される固体触媒の存在下で行うことを特徴とする製造方法である。
【0012】
バイオマスから出発物質(式(II)で表されるアルコール、特にアリルアルコール)を得ると、化石資源を用いることなく、本発明の方法を実施可能である。本発明の方法は実施が容易であり(一段階のみ)、非常に選択的である。本発明の方法では、式(III)で表されるニトリル、特にRがHであるアクリロニトリルが、80%を超える収率で得られる。反応の副生成物は、当業者に公知の技術に従って分離できる。副生成物が化学工業での有利な中間体として価値が高い場合もある。
【0013】
が水素原子を表すとき、式(II)で表されるアルコールはアリルアルコールであり、式(III)で表されるニトリルはアクリロニトリルである。
【0014】
がメチル基を表すとき、式(II)で表されるアルコールはメタリルアルコールであり、式(III)で表されるニトリルはメタクリロニトリルである。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態においては、Rは水素原子を表す。即ち、この好ましい実施形態では、本発明の方法は、アリルアルコールからアクリロニトリルを得るアンモ酸化段階を含む。
【0016】
上記触媒は、好ましくは、xが0.5〜0.8の範囲内である式(I)で表される化合物群から選択される。本発明において特に好ましい式(I)の触媒は、xが0.6である化合物群から選択される。
【0017】
アンモ酸化反応は、好ましくは約400℃以上の温度、より好ましくは約350℃〜450℃の範囲内の温度で行う。
【0018】
本発明の方法の好ましい一実施形態においては、大気圧下でアンモ酸化反応を行う。
【0019】
接触時間は、反応器に導入されたガスの総体積流量(ml/s)に対する触媒の体積(ml)の比として定義され、反応温度及び反応圧力において計算される。接触時間は、好ましくは約0.05〜2s、より好ましくは約0.05〜0.5sである。
【0020】
気相中、式(II)で表されるアルコール/アンモニアのモル比は、約1/1〜1/4であってよい。本発明の好ましい一実施形態においては、式(II)で表されるアルコール/アンモニアのモル比が約1/3である気相を用いてアンモ酸化反応を行う。
【0021】
気相中、式(II)で表されるアルコール/酸素のモル比は、約1/1.5〜1/5であってよい。本発明の好ましい一実施形態においては、式(II)で表されるアルコール/酸素のモル比が約1/3.5である気相を用いてアンモ酸化反応を行う。
【0022】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、式(II)で表されるアルコール/酸素/アンモニアのモル比が約1/3.5/3である気相を用いてアンモ酸化反応を行う。
【0023】
本発明の方法の特定の実施形態においては、アンモ酸化反応を十分に進行させるために必要なわけではないが、式(I)で表される触媒が多孔質固体担体で支持されていてもよい。この場合、多孔質固体担体は、シリカ、特にシリカゲル(キャリアクト(登録商標)型)又はメソ構造シリカ(例えば、SBA−15型メソ構造シリカ等)の形態のシリカを基材とする担体、ケイ素の混合酸化物(例えば、SiO−TiO、SiO−ZrO等)を基材とする担体、炭化ケイ素(SiC)からなる担体等から選択できる。
【0024】
このような多孔質固体担体は、好ましくは0.1〜2.0m/g、より好ましくは0.5〜1.5cm/gの平均空隙率を示す。
【0025】
反応が終了したとき、当業者に公知の適当な技術(蒸留等)によって、反応の副生成物を分離できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【実施例】
【0027】
実施例では、以下の出発物質を使用した。
・97%シュウ酸(フルカ社)、
・硝酸鉄九水和物(シグマアルドリッチ社)、
・酸化アンチモン(III)(シグマアルドリッチ社)、
・99%アリルアルコール(フルカ社)、
・アンモニア(プラクスエア社)、
・酸素(アルファガス社)。
【0028】
これら出発物質から、xが0.4〜1の、式(I)で表される触媒を調製した。各触媒のyの値は、電気的中性度及び/又は元素の価数に従って決定され、実験的には測定しなかった。
【0029】
15mmの直径及び120mmの長さを有する管状固定床反応器内で、気相中、アクリロニトリルを合成した。熱電対を用いて反応器の温度を正確に調整・制御した。
【0030】
実施例1
式(I)で表される触媒(x=0.6)の合成
80℃で攪拌しながら、2.21gのシュウ酸を500mlの水に溶解させ、0.05M溶液を調製した。溶解が完了した時点で、80℃の温度を維持しながら、シュウ酸溶液に140.97gの硝酸鉄九水和物を加えた。硝酸鉄九水和物の溶解が完了した後、30.51gの酸化アンチモン(III)を加えた。80℃の温度を維持しながら得られた溶液を攪拌し、粘性溶液が得られるまで蒸発させた。その後、オーブン中、120℃で72時間、溶液を乾燥した。乾燥後、得られた生成物をペレット状にプレス成形し、次いで粉砕して、250〜630μmの粒子を含む粉状生成物を得た。得られた粒子を、静大気中で、1℃/分の温度上昇勾配を観測しながら大気温度から500℃まで加熱し、その後500℃で8時間保持して、焼成した。続いて、温度が50℃に戻るまで触媒をオーブン中に静置した。Sb/Fe比0.6(即ち、x=0.6)の触媒が得られた。
【0031】
実施例2
式(I)で表される触媒(x=0.8)の合成
2.21gのシュウ酸、27.7gの硝酸鉄九水和物、及び8gの酸化アンチモン(III)を用いて、上記実施例1と同様の手順により、x=0.8の式(I)で表される触媒を調製した。
【0032】
実施例3
式(I)で表される触媒(x=0.4)の合成
2.21gのシュウ酸、87.3gの硝酸鉄九水和物、及び12.6gの酸化アンチモン(III)を用いて、上記実施例1と同様の手順により、x=0.4の式(I)で表される触媒を調製した。
【0033】
実施例4
式(I)で表される触媒(x=1.0)の合成
2.21gのシュウ酸、22.2gの硝酸鉄九水和物、及び8.0gの酸化アンチモン(III)を用いて、上記実施例1と同様の手順により、x=1.0の式(I)で表される触媒を調製した。
【0034】
実施例5
アリルアルコールからのアクリロニトリルの合成
実施例1で調製した触媒5gを固定床反応器に入れた。7.2重量%のアリルアルコール水溶液を用いて反応を行った。大気圧下、反応器を400℃に加熱した後、反応物(アリルアルコール/O/NH)を供給した。反応物の触媒との接触時間は0.1sのオーダーとし、反応時間は5時間とした。
【0035】
この反応で得られた生成物を、反応器出口で低温(−4℃)に維持したバブラー中に回収し、分析した。得られた液体を、フレームイオン化検出器を有するガスクロマトグラフで分析した。
【0036】
使用した操作条件を下記表Iにまとめる。
【0037】
【表1】
【0038】
これらの結果は、第1に、アンモニア及び酸素の存在下でアリルアルコールからアクリロニトリルへのアンモ酸化反応を行うためには、本発明の触媒が必要であることを示している。更に、同じ操作条件では、本発明の触媒が存在することによって、アリルアルコールの変換率が上昇し(14%から87%)、アクリロニトリル及びアクロレインの選択性も向上する(0%及び24%から17%及び52%)ことを示している。加えて、本発明の方法の好ましい一実施形態においては、NH/アリルアルコールのモル比が高くなると、アクリロニトリル選択性及びアリルアルコール変換率が更に改善され得ることが判る。この実施例の最適実施条件下では、アクリロニトリル選択性は63%であり、アリルアルコール変換率は99%であった。
【0039】
実施例6
アリルアルコールからのアクリロニトリルの合成
この実施例では、実施例5で詳述した方法に従い、アリルアルコールを完全に変換可能な操作条件下で、実施例1で調製した触媒を使用し、異なるアリルアルコール/NHモル比を用いて、400又は450℃の温度でアリルアルコールのアンモ酸化反応を行った。
反応時間は5時間とした。
【0040】
実施例5と同様、上記反応の生成物を反応器出口で低温(−4℃)に維持したバブラー中に回収して分析した。次いで得られた液体を、フレームイオン化検出器を有するガスクロマトグラフで分析した。
【0041】
使用した操作条件を下記表II及び表IIIにまとめる。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
これらの試験は、450℃、接触時間0.1s、アリルアルコール/NHモル比1/3で行った試験8で、アクリロニトリル形成の選択性に関して最良の結果が得られたことを示している。アリルアルコールが完全に変換され、83%のアクリロニトリル収率が得られる。