(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382954
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】改善された光学式燃焼開始装置
(51)【国際特許分類】
F42B 3/113 20060101AFI20180820BHJP
C06C 7/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
F42B3/113
C06C7/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-512349(P2016-512349)
(86)(22)【出願日】2014年5月6日
(65)【公表番号】特表2016-524685(P2016-524685A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2014059261
(87)【国際公開番号】WO2014180860
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】1354195
(32)【優先日】2013年5月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリオ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ブラン,フランソワ
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−008325(JP,A)
【文献】
米国特許第03812783(US,A)
【文献】
特開昭63−311097(JP,A)
【文献】
米国特許第04917014(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 3/113
C06C 7/00
F42D 1/04
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼性充填剤(4)が装填されるキャビティー(3)を有する本体(2)と、
レーザー照射エネルギーを吸収することによって前記燃焼性充填剤を点火し、かつ、前記燃焼性充填剤(4)と接触するように設けられる点火手段と、
レーザー照射源と、
前記レーザー照射源からのレーザー照射エネルギーを前記点火手段へ導く光ファイバー(6)を有し、
前記点火手段は金属板(5)であり、前記金属板と前記レーザー照射源は、前記レーザー照射源からの前記レーザー照射エネルギーが前記金属板に吸収されて熱エネルギーに変換され、前記金属板から前記燃焼性充填剤への前記熱エネルギーの熱伝導によって前記燃焼性充填剤の点火が生じるように構成され、前記金属板は複数の貫通孔(10)を有し、前記貫通孔は、ブリッジ(12)によって互いに接続される複数の同一の構造物(11)が前記金属板内に区画されるように周期的に配置される、燃焼式充填剤(4)の光学式開始装置(1)。
【請求項2】
前記金属板(5)が白金、金、タングステン、あるいは前記金属のうち少なくとも2つの金属の合金から選択される金属で形成される、請求項1に記載の光学式開始装置。
【請求項3】
前記レーザー照射エネルギーの焦点を合わせるためのレンズをさらに有し、
前記レンズは前記光ファイバーの第1の端部(8)と前記点火手段との間に挟まれ、
前記光ファイバーのもう一方の端部(9)は前記レーザー照射源に接続され、
前記レンズは球面レンズと柱状レンズから選択される、請求項1または2のいずれかに記載の光学式開始装置。
【請求項4】
前記金属板(5)は0.02mmと0.1mmの間の厚さを有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光学式開始装置。
【請求項5】
前記金属板(5)は二色性被覆物によってカバーされる、請求項1乃至4のいずれかに記載の光学式開始装置。
【請求項6】
前記レーザー照射源は紫外光を照射する、請求項1乃至5のいずれかに記載の光学式開始装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼開始装置の分野に関連し、燃焼の開始(あるいはきっかけ)は光エネルギーによって誘起されるものである。こうした燃焼開始装置はまた、光学式燃焼開始装置として知られている。
【0002】
本発明は燃焼開始装置が用いられる全ての分野に適用可能であり、とりわけ、アクチュエーターとして宇宙分野や航空分野に、あるいは安全装置(バルブやノーキューパスなど)の分野などに適用することができる。
【背景技術】
【0003】
すでに知られているように、燃焼開始装置はキャビティーに内に装填された燃焼性充填剤を有し、この燃焼性充填剤は燃焼性充填剤を点火する手段と密着している。
【0004】
燃焼性充填剤は必要に応じ、爆発性の組成物、あるいは燃焼性の組成物とすることができる。前者の場合、燃焼開始装置は一般的に起爆装置と呼ばれ、後者では点火装置と呼ばれる。
【0005】
電気式燃焼開始装置や、特に熱線式開始装置では、点火手段は導電性材料で形成された素子(ワイヤーやレイヤー)からなる部品であり、その部品は発電機に接続されている。これに電流が流れるとジュール効果によって素子が加熱され、熱伝導によって素子と接触している燃焼性充填剤に熱が伝えられる。電気式燃焼開始装置の一例として、例えば文献1が挙げられる。
【0006】
電気式開始装置は電磁妨害に敏感であるため、寄生電磁放射に起因する静電放電や誘導電流によって偶発的に作動してしまうという欠点を有している。
【0007】
光学式燃焼開始装置の場合、ここでは燃焼性充填剤は電気的でなく光学的に開始されるので、電磁妨害に対して光学式燃焼開始装置が反応しないようにすることができる。通常光学式燃焼開始装置は、キャビティー内に装填された燃焼性充填剤、レーザー照射装置、および、レーザー照射装置からレーザー放射エネルギーを燃焼性充填剤に導入するための光ファイバーを有している。
【0008】
このタイプの装置の欠点は、起爆装置や点火装置に提供するために一般的に用いられる燃焼性充填剤がレーザー照射エネルギーを吸収しない、あるいはわずかしか吸収しないという点である。したがって、レーザー源に反応し、燃焼性充填剤を点火するための手段を見出す必要がある。
【0009】
文献2では、金属材料の粉末を添加することで燃焼性充填剤を光学的にドープするという解決法が提案されている。これにより、修飾された燃焼性充填剤がレーザー照射エネルギーを吸収することができ、点火臨界温度に達するまで加熱することができる。
【0010】
文献3では異なる解決法が提案されており、起爆タイプの開始装置について具体的に記載されている。この解決法では、レーザービームを導入する光ファイバーの末端と燃焼性充填剤との間に、粉状の還元性金属が光学的にドープされた燃焼性組成物の粉末の層を設置する。この時、この層は二次爆発物である。
【0011】
これらの二つの解決法では光学的ドーピングが提案されているが、大きな欠点はドープされた燃焼性組成物の感度バランスをとることが難しいことであり、レーザー照射エネルギーを効率よく吸収するための十分な感度が必要であるが、寄生熱や赤外光照射、あるいは熱伝導による熱を吸収してしまうほど高い感度を持たないようにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2508838号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1742009号公報
【特許文献3】仏国特許出願公開第2831659号明細書
【0013】
このように、電気式燃焼開始装置と比較すると光学式燃焼開始装置はより高い安全レベルを保証できるように見受けられるが、熱的条件が変動することによって不必要な起爆が誘起される可能性が残されている。
【発明の概要】
【0014】
したがって本発明の目的は、従来技術の実施形態に関連する上述した欠点を少なくとも部分的に解消することである。
【0015】
このため、発明の主題は燃焼性充填剤の光学式開始装置であり、
燃焼性充填剤が置かれるキャビティーを有する本体と、
前記充填剤に接して設けられ、レーザー照射エネルギーを吸収することによって前記充填剤を点火する手段と、
レーザー照射源と、
レーザー照射エネルギーを前記レーザー照射源から前記点火手段へ導入する光ファイバーを有し、
前記点火装置は金属板であり、前記金属板と前記レーザー照射源は、前記レーザー照射源から発せられたレーザー照射エネルギーが前記金属板に吸収されて熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーが前記金属板から前記燃焼性充填剤へ熱伝導することで前記燃焼性充填剤が点火されるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
金属板はレーザー照射エネルギーを吸収し、この吸収した照射光の光エネルギーを熱エネルギーに変換し、熱伝導によってこの熱エネルギーを燃焼性充填剤へ伝える。このように、本発明の原理によると、レーザーの波長を吸収可能な材料である金属板中に与えられたレーザーの光エネルギーを利用し、これにより金属板が急激に高温になり燃焼性充填剤と接触することで充填剤が点火される。
【0017】
本発明の主題である光学式燃焼開始装置は、従来技術の電気式開始装置と光学式開始装置の欠点を有さず、利点を兼ね備えるという点で特に優れている。すなわち、本発明に係る開始装置は、電磁波変動や熱変動に反応しないという点で優れている。これは、燃焼性充填剤を点火するための手段、すなわちレーザー照射エネルギーを吸収する金属板が火工技術的に不活性であるからである。従来技術と異なり、燃焼性充填剤は光学的にドープする必要がなく、レーザー照射エネルギーに対して反応しない、あるいはごく僅かしか反応しない。したがって、電気式開始装置で通常用いられるものと同じ燃焼性充填剤を用いることができる。
【0018】
燃焼性充填剤を点火するための手段である金属板は、開始装置を起動できる照射エネルギーに対して高い選択性を与えることがでる。これは、金属板がレーザー照射エネルギーを、とりわけ、金属板を構成する金属あるいは合金が吸収可能な波長範囲のレーザー照射エネルギーのみを特異的に吸収するからである。したがって、開始装置の安全性が改善される。
【0019】
一般的なこととして、本発明に係る開始装置は、爆発物を起爆することもでき、火薬や装薬を起爆することもでき、また、最終的には燃焼性充填剤(発煙装置など)を点火することができる。
【0020】
特に、燃焼性充填剤は燃焼性組成物(この場合、本発明の主題である燃焼開始装置は点火装置となる)や爆発性組成物(開始装置は起爆装置となる)であって良い。
【0021】
燃焼性組成物は例えば発光性、追跡性、発煙性組成物などから選ばれる。
【0022】
燃焼性組成物は、例えばアジ化合物やフルミナート、テトラセンなどの一次爆薬や、四硝酸ペンタエリスリット(PETN)やシクロトリメチレントリニトアミン(RDX)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)などの二次爆薬であって良い。
【0023】
金属板は複数の貫通孔を有していることが好ましい。これにより、加熱される金属の重量を減らすことができ、金属板が燃焼性充填剤と接触する面を減少させることなく―重量を極端に減少させることで―、金属板の加熱速度を増大させることができる。
【0024】
貫通孔は周期的に配置され、ブリッジによって接続される複数の同一の構造物が金属板に区画されるようにするのがより好ましい。貫通孔をこのように周期的に設ける目的は、構造物(サブターゲット)を分離することによって、レーザーが加熱する金属板(ターゲット)のサイズを小さくし、ブリッジによって構造物間の熱伝導を最小化することであり、周期的に貫通孔を配置すること自体、全てのサブターゲットを一つの構成物として構造的に統合するという役割を持っている。サブターゲットを設ける利点は加熱される金属の重量を減らすことができる点であり、その結果、加熱時間を減少させることができ、燃焼性充填剤の点火の原動力を増大することができる。さらに、貫通孔のパターンは金属板全体にわたって繰り返されるため、周期的に貫通孔を形成することで、金属板上でレーザービームの焦点のアライメントがずれても熱輸送に対して重大な影響を与えないという利点が得られる。
【0025】
ブリッジは構造物(サブターゲット)間の熱伝導を減少させる。ブリッジは、最大面積を有する貫通孔よりもかなり小さい幅を有している。
【0026】
予想される一つの形態によると、貫通孔は隣接した六角形の頂点に位置し、好ましくはハニカムパターンを形成するように配置される。ハニカムパターンを形成すると、この特異的な幾何構造によってサブターゲットのサイズを最適化できるという利点が生じ、このため、ターゲットの全体的な効率が最適化される。
【0027】
なお、金属板はレーザー照射エネルギーを吸収することによって燃焼性充填剤を点火する手段であり、したがって、金属板を形成する金属や合金は当然レーザーの波長を吸収する必要がある。金属板は白金、金、タングステン、あるいはこれらのうちの少なくとも二つの金属の合金から選択された金属であることが好ましい。より一般的には、他の金属と比較して、ターゲットを加熱するために有利な比熱容量を持ち、照射エネルギーの吸収容量、特にUV領域における吸収容量に優れている重金属が選ばれる。これは鉄やアルミニウムの使用を避けるのが好ましい理由であり、なぜならこれらは良い吸収容量特性を持たないからである。
【0028】
光学式開始装置はさらにレーザー照射エネルギーをフォーカスするレンズを有することが好ましい。レンズは光ファイバーの第1の端部と点火手段の間に挟まれ、光ファイバーのもう一方の端部はレーザー照射源に接続され、この焦点レンズは球面レンズ、柱状(棒状)レンズから選ばれる。金属板上でレーザービームのフォーカスを改善することにより、燃焼の開始効率が改善される。
【0029】
金属板の厚さは0.02mmと0.1mmの間にするのが好ましく、また、金属の純度を上げることで加熱される金属の重量を減らすことができ、したがって、より速やかに温度を変化させることができる。金属板は一次起爆剤の大きさにほぼ対応する約3mmの直径を有することが好ましい。
【0030】
予想される一つの形態によると、金属板は二色性被覆物でカバーされる。これにより、レーザー源からのレーザー照射エネルギーに対する金属板の吸収容量が最大化されてレーザー照射エネルギーの金属板による吸収が改善され、かつ金属板の反射が制限され、その結果、レーザー源から金属板へのエネルギー移動、ならびに金属板から燃焼性充填剤へのエネルギー移動の効率が増大する。金属板上の二色性被覆物は、金属板のレーザービームに晒される部分に、より適切な金属の一つ(例えばレーザー照射エネルギーの吸光係数が金属板よりも大きな金属)を蒸着することによって得られる。
【0031】
レーザー源と光ファイバーは従来の光学式開始装置で通常用いられるものと同様である。レーザー源はレーザーダイオードでよく、このタイプのレーザー源は非常にコンパクトであるという利点がある。レーザー源は赤外領域(つまり、1000μmから700nmの領域)で発光するものでよいが、紫外光(つまり、400nmから200nmの領域)を照射するレーザー源を用いることが好ましいと考えられる。UV照射エネルギーは一般的にIR照射エネルギーよりも金属に吸収されやすい。
【0032】
本発明の他の利点や特徴は、以下の記述から、それに制限されることなく、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付図面に関しての記述を以下に示す。
【
図1】本発明に係る光学式開始装置の長さ方向の断面の模式図。
【
図2】本発明の第1の好ましい実施形態に係る多孔板の前面図。
【
図3】本発明の第2の好ましい実施形態に係る多孔板の前面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、
図1ではキャビティー3が設けられた本体2を有する開始装置1が図示されており、燃焼性充填剤4とこれに接する金属板5が配置されている。
【0035】
光ファイバー6はレーザー源(図示せず)からのレーザービームを金属板5へ導く。
【0036】
公知の方式と同様に、接続ピース7は光ファイバー6のサポートとして働き、光ファイバーの一方の端部8を金属板5と接触させることができる。光ファイバーのもう一方の端部9はレーザー源に接続される。ここでは接続ピースにネジ山が設けられており、これによって容易に本体2へ接続される。
【0037】
また、光ファイバーの端部8と金属板5の間に焦点レンズ(図示せず)を設置することで、金属板上におけるレーザービームの焦点合わせを改善して光学式開始装置の効率を増大させることができる。
【0038】
公知の方式と同様に、開始装置は燃焼の連鎖を形成するために機能し、開始装置の本体は引き続き連鎖の第一段階を形成する。燃焼連鎖の第二段階、第三段階などは、開始装置の充填剤よりも次第に感度が低く、活性が高い燃焼性充填剤を含む。
【0039】
レーザービームはコヒーレントなビームであり、小さい直径のレーザースポットを形成するので、金属板を大きくする必要はない。実際、レーザービームによる加熱を加速するため、金属板は小さい方が好ましい。しかしながら、レーザービームを金属板上にアライメントしやすくする程度に十分な大きさを有することが好ましい。同様に、金属板の厚さは小さいほどレーザービームによる加熱が速くなり、一方、取り扱いしにくくなる。最終的には、金属板の面積は、金属板の加熱速度、レーザービームのアライメントのしやすさ、および金属板の取り扱いやすさを考慮して選択される。例えば直径が1mmのレーザースポットを有するレーザービームの場合、直径が約3mm、厚さが約100分の80ミリメートルのペレット状の金属板を選択することができる。
【0040】
なお、金属板の厚さは用いるレーザー源のパワーにも依存する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、金属板は周期的に配置された複数の貫通孔を有する。貫通孔の幾何構造として考えられる二つの例を
図2と3に示す。
【0042】
図2を参照すると、金属板5は円形のペレットであり、貫通孔10は互いに同一の円形であり、隣接した六角形の頂点に位置してハニカム構造を形成している。こうすることで、材料のブリッジ12あるいは帯で互いに接続された同一構造の構造物11が得られる。中心スポット13は円形の焦点を表し、例えば球面レンズを用いることで得られる。
【0043】
貫通孔の他の考えられる構造を
図3に示す。ここでは
図2と異なり、貫通孔10は三つの分岐が交差して得られる形状を有しており、各分岐は六角形の壁方向に沿って伸びている。中心のバー14は金属板上でのレーザーの衝撃エリアを表し、ここでは、例えばレーザービームを柱状レンズを通して得られる長方形の焦点である。
【0044】
貫通孔は金属板をレーザー加工、あるいは光エッチングすることで得ることができる。なお、
図3の貫通孔と比較し、
図2の円形形状の方が形成しやすい。
【0045】
金属板の貫通孔の目的は、構造物11を分離することによって、レーザーが加熱すべき金属板の表面積を低減し、ブリッジ12によって構造物間の熱伝導を最小化することであり、その役割は全ての構造物11を単一の板5として構造的に統合することである。このようにして金属板5に形成される構造物11の利点は、加熱される金属量を減らすことができ、その結果加熱時間が低減され、金属板5と接触する燃焼性充填剤の点火の原動力が増大することである。加熱される構造物11を多数設けることで、燃焼性充填剤を構成する火薬の粒子数を増大させることがでる。火薬粒子は点火温度、すなわち反応する温度まで加熱される。したがって、燃焼性充填剤の燃焼の開始は点状となりにくく、より均一となり、開始の信頼性が高まり、長時間燃焼するという危険性が低下する。
【0046】
複数の貫通孔を周期的に設けることで得られる他の利点は、貫通孔のパターンは金属板の全面で繰り返されるため、構造物11やブリッジ12が全て同一構造になるという点である。その結果、焦点がずれても熱輸送に重大な影響を与えない。例えば
図2では、7個の構造物11あるいはサブターゲットがレーザービームの焦点に晒されている(熱伝導を制限するブリッジ12があるため、晒されていない構造物11は加熱されない)。焦点がずれたとしても、なお7つのサブターゲットと同等のものが照射されることになる。したがって、光学的なずれが生じても、燃焼性組成物は同様に加熱される。
図3では、8つの構造物が照射され、レーザービームの軸や角度がずれても8つのサブターゲットは常に照射されることになる。