【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、以下のステップ:
複数の医用画像における関心被験者の心臓の選択された部分の輪郭を描写し、選択された部分を複数のセグメントにセグメント化するステップと、
複数の医用画像から、選択された心筋像位置の強度をサンプリングし、心筋像位置の対応するサンプリングされた強度に、医用画像の各医用画像の取得の順序を表す指標を割当て、選択された心筋像位置のそれぞれに対し、強度曲線を得るステップと、
得られた強度曲線に基づいて、複数の心筋セグメントのうちの少なくとも心筋セグメントのサブセットのうち、時空間的灌流不均一性又は灌流脱位相を示す指数を計算するステップとを含む方法によって達成される。
【0008】
「心臓の選択された部分」との表現は、本願において使用される場合は、具体的に、心臓の任意の血管腔と理解されるものとし、また、左心室及び上行大動脈を含むと理解されるものとする。
【0009】
「医用イメージングモダリティ」との表現は、本願において使用される場合は、具体的に、心臓磁気共鳴(CMR)イメージングデバイス、心臓コンピュータ断層撮影(CCT)イメージングデバイス、冠動脈造影(CA)デバイス、CCT血管造影(CCTA)デバイス、血管内超音波(IVUS)デバイス、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)デバイス、ポジトロン放出断層撮影(PET)デバイス及び心エコー検査デバイスを含むものとする。
【0010】
「時空間的灌流不均一性」との表現は、本願では、「時空間的脱位相」とも表現され、具体的に、病理学的異常がある場合に、不均一な心筋血流の時間的及び空間的分布と理解されるものとする。
【0011】
心臓の選択された部分の輪郭を描写するステップは、手動で、半自動的に又は全自動的に行われてよい。適切なセグメント化技術は、当技術分野において知られており、市販されているので、本明細書では、より詳細には説明されない。
【0012】
心筋セグメントのサブセットは、灌流領域といった複数の心筋セグメントの厳密なサブセットを含んでも、心筋全体を含んでもよい。
【0013】
各医用画像の取得の順序を表す指標は、時間的尺度を参照してもよいし、時間そのものであってもよい。
【0014】
方法の1つの利点は、特定の心筋病変を、高速及び単純に特徴付けるために使用することができる、心臓の選択された部分の様々な領域への灌流の分布に関する追加の時間的情報が提供される点である。具体的には、計算された指数を、冠動脈疾患と微小血管疾患とを特性評価において区別するために使用することができる。
【0015】
方法のもう1つの利点は、非侵襲的方法によって、追加情報が提供される点であり、これにより、多くの場合、侵襲的な血管造影評価を回避することができる。
【0016】
心臓の選択された部分の輪郭を描写するステップを適用する前に、複数の医用画像は、関心被験者の呼吸動作に対し補正するために、画像位置合わせ技術が施されていてもよい。適切な位置合わせ技術は、当技術分野においてよく知られているため、本明細書では、詳細には説明されない。
【0017】
更に、得られた強度曲線は、より優れた結果のためにフィルタリングが施されていてもよい。当業者に適している任意のフィルタリング技術が採用されてよい。
【0018】
好適な実施形態では、方法は更に、複数のセグメントの各セグメントにおける心筋血流の定量化を行うステップを含む。心筋血流の定量化を行うステップは、例えばデコンボリューション方法といった背景技術のセクションにおいて提示された検討のための文献に説明されている従来技術の1つによって、又は、当業者が適切であると見なす任意の他の技術によって行われてよい。各セグメントにおける心筋血流の真の定量化は、心筋灌流病変の特性評価をするための補助的情報を提供する。
【0019】
方法の別の実施形態では、複数の医用画像は、関心被験者に造影剤を投与した後に、医用イメージングモダリティによって取得される。「造影剤」との表現は、本願において使用される場合は、具体的に、医用イメージングモダリティによって取得される場合に、造影剤を囲む関心被験者の組織よりも、ベースラインに比べてより大きい信号を生成する任意の造影剤と理解されるものとする。医用イメージングモダリティが、ガンマ線を使用する動作原理に基づいている場合、「造影剤」との表現は、放射性トレーサー物質も含むものとする。このようにすると、信号対雑音比が向上し、心筋灌流病変のより正確な特性評価が達成できる。
【0020】
一実施形態では、複数の医用画像は、関心被験者に造影剤を投与した後に、心臓を通る造影剤の初回通過の間に取得される。
【0021】
別の実施形態では、複数の医用画像は、関心被験者に造影剤を投与した後に、造影剤の濃度が、関心被験者内で定常状態に到達する時間の間に取得される。これは、負荷エコー灌流イメージングによって医用画像を取得する場合に、特に重要である。
【0022】
一実施形態では、複数の医用画像は、例えば動脈スピンラベリングといった内因性のコントラストを使用して、心臓を通る造影剤の初回通過の間に取得される。
【0023】
別の好適な実施形態では、方法は更に、心臓の選択された部分における基準場所を特定するステップを含み、指数を計算するステップにおいて、強度曲線は、特定された基準場所によって決定される基準時間を参照して評価される。これにより、指数を計算するための正確な基準が提供される。好適な基準場所は、左心室である。これは、左心室が、造影剤を、初回通過時に受け取り、選択された心筋像位置のそれぞれについて得られた強度曲線におけるアップスロープに先行する場所だからである。「アップスロープ」との表現は、本願において使用される場合は、具体的に、得られた強度曲線の強度が、造影剤の投与によって、所定の閾値を、造影剤がない強度に比べて、例えば10%超えた瞬間と理解されるものとする。
【0024】
別の好適な実施形態では、方法は更に、選択された心筋位置のそれぞれについて、心筋像位置のそれぞれのサンプリングされた強度の特徴の発生まで、特定された基準場所によって決定される基準時間に対する個々の期間を自動的に決定するステップを含む。個々の期間は、指数を計算するステップにおいて使用される。特徴は、強度上昇の開始の時点、ピーク強度の時点、又は、当業者に適切と思われる任意の他の特徴であってよい。このようにすると、時空間的灌流不均一性を示す指数が容易に自動的に計算できる。
【0025】
好適には、指数を計算するステップは、特定された基準場所における特徴の発生の時間に対する個々の心筋位置のそれぞれにおける特徴の発生までの時間の変動を示す統計的尺度の計算を含む。これにより、心筋セグメントのうち、時空間的灌流不均一性を記述する指数が、非常に顕著な方法で提供される。統計的尺度は、一組の数がどれだけ遠くまで広がっているかを示す尺度として統計学において習慣的に使用される分散の形を有してよい。この意味で、分散は、一組の数の標準偏差の二乗であってよい。一般に、統計的尺度は、個々の心筋位置のそれぞれにおける特徴の発生までの時間の変動を示すのに適していると当業者が考える任意の他の形式であってもよい。
【0026】
好適には、関心被験者の心臓の少なくとも一部の複数の医用画像を取得することは、関心被験者の心臓の周期動作と少なくとも部分的に同期される。例えば医用画像は、QRS群のRピークといった心電図における基準イベントの前又は後の固定時間量において取得される。方法のこの実施形態の利点は、複数の医用画像のすべての医用画像が、同様の心臓状態において取られるので、医用画像間に心筋心室の動きがほとんどなく、心筋が比較的静止した状態でレンダリングされる点である。
【0027】
方法の更に別の実施形態では、心筋像位置の強度をサンプリングするステップにおいて、心筋像位置は、心筋と平行な方向及び心筋を横断する方向において選択される。このようにすると、計算された指数は、心筋セグメントのうちの時空間的灌流不均一性を特に適切に表す。
【0028】
方法は更に、灌流図を生成し、灌流図をユーザに表示するステップを含む。「灌流図(perfusogram)」との用語は、本願において使用される場合は、具体的に、位置及び時間の関数として、心筋における像位置の強度のカラー表現と理解されるものとする。灌流図の水平軸は、時間を表し、垂直軸は、心筋における位置(即ちセグメント)を表す。「灌流図」は、例えばMarcel Breeuwerによる「Comprehensive visualization of first-pass myocardial perfusion: The uptake movie and the perfusogram」(International Society for Magnetic Resonance in Medicine:ISMRM2002)である先の出版物において、心筋灌流を可視化するための有用なツールであると説明されている。例えば灌流図は、複数の医用画像を取得するために用いた医用イメージングモダリティに通常あるモニタユニット上に表示される。
【0029】
更に、方法は、少なくとも1つの特徴位置及び/又は少なくとも1つの特徴時点を示す少なくとも1つのマーカーを灌流図内に組み込むステップを含むことが好適である。ユーザに素早く灌流図内に含まれる情報を伝達できるこのようなマーカーの例は、冠動脈灌流領域の位置、(例えばAHA17セグメントモデルによる)左心室のセグメントの境界、並びに、開始時間及びピーク時間といった造影剤の通過時間における特徴的な瞬間である。マーカーは、直線、曲線、又は、心筋の領域をマーク付けする閉ループとして形成されてよい。
【0030】
別の好適な実施形態では、方法は更に、複数のコンピュータリンクを組み込むステップを含み、複数のコンピュータリンクの各コンピュータリンクは、灌流図内のある場所に割当てられ、複数のコンピュータリンクの各コンピュータリンクは、複数の医用画像の1つの医用画像を表すデータセットにリンク付けされる。このようにすると、心筋血流に関する詳細情報が、ユーザ、通常は、医療スタッフメンバーに容易に提供される。
【0031】
本発明は、関心被験者の心臓の少なくとも一部の複数の医用画像を解析することによって、心筋灌流病変の特性評価をするシステムを提供することをもう1つの目的とする。複数の医用画像は、医用イメージングモダリティによって連続的に取得される。当該システムは、
複数の医用画像における関心被験者の心臓の選択された部分の輪郭を描写し、選択された部分を複数のセグメントにセグメント化する描写ユニットと、
強度サンプリング及び解析ユニットとを含む。
【0032】
強度サンプリング及び解析ユニットは、
複数の医用画像から、心筋像位置の強度をサンプリングし、心筋像位置の対応するサンプリングされた強度に、複数の医用画像の各医用画像の取得の順序を表す指標を割当て、
複数の心筋セグメントのうちの少なくとも心筋セグメントのサブセットのうち、時空間的灌流不均一性又は灌流脱位相を示す指数を計算する。システムは、方法について上記された利点と同じ利点を提供できる。
【0033】
本発明の別の態様では、心筋灌流病変の特性評価をするシステムは、複数の医用画像を取得するために用いられた医用イメージングモダリティの一体部分である。好適には、医用イメージングモダリティは、磁気共鳴イメージング装置としてデザインされる。磁気共鳴イメージング装置は、有利には、医用画像の取得を、関心被験者の心臓の周期動作に同期させる同期化手段を含む。
【0034】
本発明の更に別の態様では、上記された心筋灌流病変の特性評価する方法の何れかの一実施形態又はその組み合わせを実行するためのソフトウェアモジュールが提供される。行われるべき方法のステップは、ソフトウェアモジュールのプログラムコードに変換され、プログラムコードは、医用イメージングモダリティの制御ユニットのメモリユニットに実装可能であり、医用イメージングモダリティの制御ユニットのプロセッサユニットによって実行可能である。
【0035】
制御ユニットは、医用イメージングモダリティの制御機能に通常使用される制御ユニットであってよい。或いは、制御ユニットは、方法ステップを実行するように、特別に割当てられた追加の制御ユニットであってもよい。
【0036】
ソフトウェアモジュールは、方法のロバストで信頼できる実行を可能にし、また、方法ステップの高速変更及び/又は画像位置合わせアルゴリズムの適応を可能にする。